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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】圧縮機及び圧縮機システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
F04B39/06 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020148513
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042869
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆成
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0323101(US,A1)
【文献】米国特許第04006602(US,A)
【文献】特開昭60-122289(JP,A)
【文献】特開2011-163192(JP,A)
【文献】特表2010-514969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0301109(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02545279(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015225069(DE,A1)
【文献】米国特許第03300997(US,A)
【文献】中国実用新案第202073751(CN,U)
【文献】国際公開第01/075306(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0203304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0115367(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101331319(CN,A)
【文献】特開2010-053765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F04B 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内で往復可能に構成されたピストンと、
前記シリンダおよび前記ピストンにより形成される作動室に連通可能な吸入空間と、
前記作動室に連通可能な吐出空間と、
前記作動室を取り囲むように配置され、前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する隔壁部と、
前記隔壁部に形成された冷却媒体路と、
前記吸入空間と前記作動室との連通状態を切り替えるための吸入弁と、
前記吐出空間と前記作動室との連通状態を切り替えるための吐出弁と、
前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する前記隔壁部として機能する部位を有し、前記吸入弁および前記吐出弁を保持するためのバルブプレートと、
を備え、
前記冷却媒体路は、前記バルブプレートのうち前記隔壁部として機能する前記部位に形成されている
圧縮機。
【請求項2】
前記吸入空間を有し、前記シリンダおよび前記ピストンを収容するための圧縮機ケーシングを備え、
前記バルブプレートは、前記圧縮機ケーシング側の表面に第1流路溝が形成され、
前記冷却媒体路の少なくとも一部は、前記第1流路溝によって形成される
請求項に記載の圧縮機。
【請求項3】
シリンダと、
前記シリンダ内で往復可能に構成されたピストンと、
前記シリンダおよび前記ピストンにより形成される作動室に連通可能な吸入空間と、
前記作動室に連通可能な吐出空間と、
前記作動室を取り囲むように配置され、前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する隔壁部と、
前記隔壁部に形成された冷却媒体路と、
前記吸入空間と前記作動室との連通状態を切り替えるための吸入弁と、
前記吐出空間と前記作動室との連通状態を切り替えるための吐出弁と、
前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する前記隔壁部として機能する部位を有し、前記吸入弁および前記吐出弁を保持するためのバルブプレートと、
前記シリンダおよび前記ピストンを収容するための圧縮機ケーシングと、
を備え、
前記圧縮機ケーシングは、前記バルブプレートのうち前記隔壁部として機能する前記部位に対向する前記バルブプレート側の表面に第2流路溝が形成され、
前記冷却媒体路の少なくとも一部は、前記第2流路溝によって形成され
縮機。
【請求項4】
前記バルブプレートと前記圧縮機ケーシングとの当接面に介装された断熱性ガスケットを備える
請求項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記バルブプレートと共に前記吐出空間を形成するヘッドカバーを備え、
前記バルブプレートの外周縁部が前記圧縮機ケーシングの外周縁部と前記ヘッドカバーの外周縁部との間に介装されている
請求項2乃至4の何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧縮機と、
前記圧縮機の前記吸入空間と前記吐出空間とに連通する冷媒循環路と、
前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、
前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記冷却媒体路に連通する少なくとも一つの分岐路と、
前記分岐路に設けられた液ポンプと、
を備える圧縮機システム。
【請求項7】
前記圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路を備え、
前記冷媒排出路が、前記圧縮機と前記凝縮器との間の前記冷媒循環路に接続される請求項に記載の圧縮機システム。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧縮機と、
前記圧縮機の前記吸入空間と前記吐出空間とに連通する冷媒循環路と、
前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された前記吐出ガスの凝縮液を減圧する膨張弁と、
前記凝縮器と前記膨張弁との間の前記冷媒循環路から分岐し前記冷却媒体路に連通する少なくとも一つの分岐路と、
前記圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記膨張弁と前記圧縮機との間の前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路と、
を備える圧縮機システム。
【請求項9】
冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機及び高段圧縮機と、
前記高段圧縮機の前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、
を備え、
前記低段圧縮機は、請求項1乃至の何れか一項に記載の圧縮機で構成され、
前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記低段圧縮機の前記冷却媒体路に連通する分岐路と、
前記低段圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記低段圧縮機と前記高段圧縮機との間の前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路と、
を備える圧縮機システム。
【請求項10】
冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機及び高段圧縮機と、
前記高段圧縮機の前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、
を備え、
前記高段圧縮機は、請求項1乃至の何れか一項に記載の圧縮機で構成され、
前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記高段圧縮機の前記冷却媒体路に連通する分岐路と、
前記分岐路に設けられた液ポンプと、
前記高段圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路と、
を備える圧縮機システム。
【請求項11】
冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機及び高段圧縮機と、
前記高段圧縮機の前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、
を備え、
前記高段圧縮機は、請求項1乃至の何れか一項に記載の圧縮機で構成され、
前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記高段圧縮機の前記冷却媒体路に連通する分岐路と、
前記高段圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記低段圧縮機と前記高段圧縮機の間に設けられた前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路と、
を備える圧縮機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及び圧縮機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
往復動型圧縮機では、一般的にケーシング内に吸入ガス通路及び吐出ガス通路が設けられている。そのため、高温の吐出ガスと低温の吸入ガスとがケーシングの壁面を介して熱交換し、吸入ガスがシリンダに吸入される前に、吸入ガスの温度が上昇してしまう場合がある。これによって、吸入ガスがシリンダに吸入される前に膨張して比体積が大きくなり、吐出ガスの質量流量が無視できないほど減少する場合がある。従って、圧縮機で体積効率の低下をまねき、往復動型圧縮機が冷凍システムに組み込まれた場合には、冷凍能力の低下をきたす場合がある。
【0003】
そのため、圧縮機の過熱を抑制する手段として、例えば、クランクケースやヘッドカバーの内部に冷却水を流す配管を設けることが行われている。特許文献1、2には、ヘッドカバー内の吐出空間に冷媒液を噴射し、冷媒液の蒸発潜熱で圧縮後の吐出ガスを冷却することによって、吸入ガスの過熱を抑制する構成が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-53765号公報
【文献】特開2011-163192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2が開示する構成によれば、吐出ガスを冷却することで、吸入ガスの過熱を抑制することが可能となる。しかし、吐出ガスの冷却の影響により、圧縮機の表面(例えばヘッドカバーやケーシングの表面)に大量の霜が発生する虞がある。このような大量の霜が発生する構成は好ましくない。
【0006】
本開示は、上述する課題に鑑みてなされたもので、圧縮機表面の霜の付着リスクを低減しながら、吐出空間から吸入空間への入熱を抑制し、吐出空間から吸入空間への入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る圧縮機は、シリンダと、前記シリンダ内で往復可能に構成されたピストンと、前記シリンダおよび前記ピストンにより形成される作動室に連通可能な吸入空間と、前記作動室に連通可能な吐出空間と、前記作動室を取り囲むように配置され、前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する隔壁部と、前記隔壁部に形成された冷却媒体路と、を備える。
【0008】
また、本開示に係る圧縮機システムは、上述の圧縮機と、前記圧縮機の前記吸入空間と前記吐出空間とに連通する冷媒循環路と、前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器と、前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記冷却媒体路に連通する分岐路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る圧縮機によれば、吸入空間と吐出空間とを区画する隔壁部に形成された冷却媒体路に冷却媒体を供給するため、圧縮機表面への霜の付着リスクを低減しながら、吐出空間から吸入空間への入熱を抑制し、吐出空間から吸入空間への入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を防止できる。また、本開示に係る圧縮機システムは、上記作用効果に加えて、冷凍システムやヒートポンプシステムに適用された場合、COPの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る往復動型圧縮機の正面視断面図である。
図2】一実施形態に係る往復動型圧縮機の正面視断面図である。
図3】一実施形態に係る往復動型圧縮機の正面視断面図である。
図4】一実施形態に係る圧縮機システムの系統図である。
図5】一実施形態に係る圧縮機システムの系統図である。
図6】一実施形態に係る圧縮機システムの系統図である。
図7】一実施形態に係る圧縮機システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1図3は、幾つかの実施形態に係る圧縮機10(10A、10B、10C)の正面視断面図である。図1図3において、圧縮機10(10A~10C)は、シリンダ12と、シリンダ12内で往復可能に構成されたピストン14とを備え、シリンダ12とピストン14とにより作動室Scを形成している。また、夫々作動室Scに連通可能な吸入空間Si及び吐出空間Svを備えている。さらに、作動室Scを取り囲むように隔壁部16が設けられ、隔壁部16は吸入空間Siと吐出空間Svとを区画している。隔壁部16には、吸入空間Siと作動室Scとの連通状態を切り替えるための吸入弁20と、吐出空間Svと作動室Scとの連通状態を切り替えるための吐出弁22とが設けられ、かつ冷却媒体を流すための冷却媒体路18が形成されている。
【0013】
上記実施形態において、吸入空間Siに吸入された吸入ガスは、吸入弁20によって開閉される通路を通って作動室Scに吸入され、ピストン14によって圧縮される。圧縮されて高温高圧となった吸入ガスは、吐出弁22によって開閉される通路を通って吐出空間Svに吐出される。吸入空間Siと吐出空間Svとを区画する隔壁部16に形成された冷却媒体路18に冷却媒体を流すことで、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱を抑止できるため、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱に起因した圧縮機10の体積効率の低下を抑制できる。一方、圧縮機10内に設けられた隔壁部16は、圧縮機表面とは離れているため、圧縮機表面の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0014】
図1図3に示す実施形態は、いわゆる往復動型圧縮機を構成している。下部にクランク軸24が設けられ、ピストン14はコネクティングロッド26を介してクランク軸24に連結されている。クランク軸24の回転によってピストン14はシリンダ12の内部で往復動する。図1図3に示す例示的な往復動型圧縮機は、2個のシリンダ12がクランク軸24に対して並列に設けられ、各々のピストン14は、180°異なる位相角で往復動するようにクランク軸24に連結されている。シリンダ12の上面はバルブケージ28によって塞がれ、隔壁部16の上方には、吐出空間Svを形成するためのヘッドカバー46が設けられている。ヘッドカバー46には吐出ガスを送り出す開口46aが形成されている。
【0015】
冷却媒体路18に供給される冷却媒体は、例えば、冷却水、不凍液等を用いることができる。また、圧縮機10が冷凍システムやヒートポンプシステムに組み込まれる場合、これらシステムの作動流体としての冷媒液を用いることができる。
【0016】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、隔壁部16は、吸入弁20及び吐出弁22を保持するためのバルブプレート30を含み、冷却媒体路18はバルブプレート30に形成されている。冷却媒体路18に冷却媒体を流すことで、バルブプレート30が冷却され、これによって、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱を抑止できる。これによって、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱に起因した圧縮機10の体積効率の低下を抑制できる。一方、バルブプレート30と圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)との間には吐出空間Svなどが介在しているため、圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0017】
一実施形態では、図1図3に示すように、圧縮機10(10A~10C)は、吸入空間Siを内蔵し、シリンダ12及びピストン14を収容するための圧縮機ケーシング32を備えている。図1及び図2に示す実施形態では、バルブプレート30には、圧縮機ケーシング32側に開口31aを有する第1流路溝31が形成され、冷却媒体路18は第1流路溝31によって構成されている。
【0018】
この実施形態によれば、冷却媒体路18が第1流路溝31で構成されるため、バルブプレート30に深孔を形成する必要がなくなり、冷却媒体路18はバルブプレート30の表面からの切削加工で形成できる。これによって、バルブプレート30に冷却媒体路18を形成するための加工が容易になる。また、第1流路溝31は圧縮機ケーシング32側に開口31aを有するため、冷却媒体路18を流れる冷却媒体によって吸入空間Siを冷却できる。
【0019】
一実施形態では、第1流路溝31は、シリンダ12の周囲を取り巻くように円形に形成される。図1に示す例示的な実施形態では、バルブプレート30の外周縁部がヘッドカバー46の外側に露出している。冷却媒体路18は該該周縁部の端面に開口する貫通孔33を有し、貫通孔33に冷却媒体を噴射するための噴射ノズル50が装着されている。さらに、噴射ノズル50に冷却媒体を供給するための供給管52が接続される。噴射ノズル50から霧状に噴霧される冷却媒体によって、バルブプレート30を均一に冷却できる。また、冷却媒体の供給側と圧縮機本体の反対側に、バルブプレート30の隔壁に冷却媒体路18と吐出空間Svとに連通する連通路62が形成され、冷却媒体は連通路62を通って吐出空間Svに排出される。
【0020】
図2に示す例示的な実施形態では、圧縮機ケーシング32の壁部に、冷却媒体を第1流路溝31に供給する供給路36が形成され、供給路36に冷却媒体を供給するための供給管38が接続されている。このように、圧縮機ケーシング32の壁部に供給路36を形成することで、冷却媒体を第1流路溝31に供給するための供給路の形成が容易になる。また、供給管38から供給路36に供給された冷却媒体が冷却媒体路18に開口する出口に絞り39が設けられる。冷却媒体は絞り39を通ることで霧状になって冷却媒体路18に噴霧される。絞り39は、例えば、供給路36と冷却媒体路18とに連通する複数の小径貫通孔を有するプラグで構成される。別な実施形態では、絞り39を設ける代わりに、供給路36の出口開口径を小径とすることで、絞り機能をもたせるようにしてもよい。一方、供給路36に対して圧縮機本体の反対側の圧縮機ケーシング32には、冷却に供された後の冷却媒体を第1流路溝31から排出するための排出路58が形成され、排出路58の外側開口に冷媒排出路60が接続されている。
【0021】
図2に示す圧縮機10(10B)では、メンテナンスの際にヘッドカバー46を取り外す必要があるときでも、供給管38を圧縮機ケーシング32から取り外す必要がないため、メンテナンス作業が容易になる。
【0022】
図1図3に示す例示的な実施形態では、圧縮機ケーシング32はクランクケースを兼ねており、圧縮機ケーシング32の内部にクランク軸24が収容されている。
【0023】
一実施形態では、バルブプレート30と圧縮機ケーシング32との積層部との間に断熱性のガスケットを挿入してもよい。但し、この場合、第1流路溝31の領域にガスケットを設けると、吸入空間Siを流れる吸入ガスの冷却効果が阻害されるため、開口31aにはガスケットを設けないようにする。
【0024】
一実施形態では、図3に示すように、圧縮機ケーシング32のバルブプレート30側の表面に第2流路溝34が形成され、冷却媒体路18は第2流路溝34によって形成される。この実施形態によれば、冷却媒体路18に冷却媒体を流すことで、バルブプレート30を含む隔壁部16を冷却できるため、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱を抑止できる。これによって、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱に起因した圧縮機10の体積効率の低下を抑制できる。一方、冷却媒体路18に冷却媒体を流してもバルブプレート30と圧縮機表面との間には吐出空間Svなどが介在しているため、圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。さらに、冷却媒体路18を圧縮機ケーシング32の表面を切削して形成できるため、冷却媒体路18の形成が容易になる。
【0025】
一実施形態では、図3に示すように、第2流路溝34に冷却媒体を供給するために、圧縮機ケーシング32に供給路36が形成され、供給路36の外側開口に供給管38が接続される。一方、供給路36に対して圧縮機本体の反対側の圧縮機ケーシング32には、冷却に供された後の冷却媒体を第2流路溝34から排出するための排出路40が形成され、排出路40の外側開口に冷媒排出路42が接続されている。
【0026】
一実施形態では、図3に示すように、バルブプレート30と圧縮機ケーシング32とが互いに当接する当接面に、断熱性ガスケット44が介装される。断熱性ガスケット44は、例えば、第2流路溝34が形成された領域を含めて、バルブプレート30と圧縮機ケーシング32との当接面全面に介装される。断熱性ガスケット44を設けることで、吐出空間Svから圧縮機ケーシング32の内部に存在する吸入空間Siへの入熱を効果的に抑制できる。
【0027】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、バルブプレート30の外周縁部が圧縮機ケーシング32の外周縁部とヘッドカバー46の外周縁部との間に介装されている。これによって、ヘッドカバー46、バルブプレート30及び圧縮機ケーシング32の3層の外周縁部をボルトなどの締結具で共締めすることで、圧縮機本体へのバルブプレート30の取付けが容易になる。また、図1に示す実施形態では、バルブプレート30の外周縁部の端面が圧縮機10の外部に露出するため、冷却媒体路18に連通する貫通孔33の開口に噴射ノズル50を設けるのが容易になる。
【0028】
図1及び図3に示す例示的な実施形態では、ヘッドカバー46、バルブプレート30及び圧縮機ケーシング32の外周縁部がボルト48で共締めされている。図2に示す圧縮機10(10B)は、ヘッドカバー46の外周縁部と圧縮機ケーシング32の外周縁部とがボルト54で結合され、バルブプレート30の外周縁部はヘッドカバー46の内側に設けられている。
【0029】
図4及び図5は、幾つかの実施形態に係る圧縮機システム70(70A、70B)を示す系統図である。圧縮機システム70(70A、70B)の冷媒循環路72には、上記実施形態に係る圧縮機10(10A~10C)が設けられている。圧縮機システム70は、圧縮機10の吸入空間Siと吐出空間Svとに連通する冷媒循環路72を備えている。冷媒循環路72には、吐出空間Svから吐出された冷媒ガスを凝縮するための凝縮器74と、凝縮器74の下流側で冷媒循環路72から分岐し冷却媒体路18に連通する分岐路76と、を備えている。
【0030】
圧縮機システム70(70A、70B)は冷凍システムを構成する。吐出空間Svから吐出された冷媒ガスは、凝縮器74で冷却されて液化し、液化冷媒の大部分は冷媒循環路72に設けられた膨張弁79で減圧され、蒸発器80で蒸発して負荷媒体wを冷却する。蒸発器80で気化した冷媒ガスは圧縮機10の吸入空間Siを形成する吸入室82に吸入される。吸入室82に吸入された冷媒ガスは、圧縮機10で加圧され、吐出空間Svを形成する吐出室84を経て冷媒循環路72に吐出される。凝縮器74の下流側において、冷媒循環路72から分岐した分岐路76が設けられる。分岐路76は圧縮機10の隔壁部16に形成された冷却媒体路18に連通している。冷媒循環路72を流れる冷媒液の一部は分岐路76を経て冷却媒体路18に供給され、隔壁部16を冷却する。
【0031】
図4及び図5に示す例示的な実施形態では、圧縮機10から吐出された冷媒ガスから冷凍機油を分離するオイルセパレータ86と、凝縮器74で凝縮した冷媒液を一時貯留する受液器88が設けられている。また、圧縮機10は往復動圧縮機で構成されている。
【0032】
図4に示す圧縮機システム70(70A)の分岐路76には、液ポンプ77が設けられている。圧縮機システム70(70A)に図1に示す圧縮機10(10A)が用いられる場合、分岐路76と吐出空間Svとは同圧となるため、分岐路76から冷却媒体路18に冷媒液を供給するために、液ポンプ77が必要となる。液ポンプ77によって分岐路76を流れる冷媒液を加圧することで、冷媒液を冷却媒体路18に供給できる。必要に応じて、液ポンプ77の下流側に圧力調整弁78を設けることで、分岐路76を流れる冷媒液の圧力を調整できる。分岐路76より低圧な冷却媒体路18に流入した冷媒液は低圧下で蒸発し、周囲から蒸発熱を吸収するため、隔壁部16を冷却できる。
【0033】
これによって、吐出空間Svから吸入空間Siへの入熱を抑制できると共に、該入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を抑制できる。また、圧縮機10が圧縮機システム70(70A、70B)のように、冷凍システムやヒートポンプシステムに適用された場合、これらシステムのCOPの低下を抑制できる。また、隔壁部16と圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)との間には吐出空間Svなどが介在し、隔壁部16は圧縮機表面とは離れているため、圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0034】
図4に示す圧縮機システム70(70A)は液ポンプ77を備えるため、圧縮機10として、図2に示す圧縮機10(10B)又は図3に示す圧縮機10(10C)が用いられる場合、液ポンプ77による加圧力を適宜に設定することで、冷媒排出路42又は60を冷媒循環路72の任意の場所に接続できる。好ましくは、凝縮器74の上流側の冷媒循環路72(例えば、オイルセパレータ86と凝縮器74との間の冷媒循環路72)に冷媒排出路42又は60を接続することで、隔壁部16の冷却に使用した冷媒を膨張弁79より下流側の冷媒循環路72に戻さなくて済む。従って、冷却媒体路18への冷媒の供給が圧縮機の能力低下とならない。なお、高圧液からのインジェクションであり、冷媒量は少量であるため、液ポンプによる動力増加の影響は小さい。
【0035】
図5に示す圧縮機システム70(70B)は、圧縮機10として図2又は図3に示す圧縮機10(10B、10C)が用いられる場合の実施形態である。この実施形態では、分岐路76に液ポンプ77が設けられておらず、冷媒排出路42又は60は、膨張弁79と圧縮機10(10B、10C)との間の冷媒循環路72に接続されている。この領域の冷媒循環路72は分岐路76より低圧であるため、分岐路76に液ポンプ77が設けられていなくても、分岐路76から冷却媒体路18に供給される冷媒液は、冷媒排出路42又は60を介してこの領域の冷媒循環路72に排出できる。なお、冷却媒体路中で完全に気化させるといった制御を行うことで液バックの発生を防ぐことができる。
【0036】
図6及び図7に示す圧縮機システム70(70C、70D)は、冷媒循環路72に直列に設けられた低段圧縮機10a及び高段圧縮機10bを備えている。低段圧縮機10aの吐出室84から吐出された冷媒ガスは、低段圧縮機10aと高段圧縮機10bとの間に設けられた冷媒循環路72(中間路72(72a))を通って高段圧縮機10bの吸入室82に供給される。高段圧縮機10bの吸入室82に供給された冷媒ガスは、さらに圧縮されて吐出室84から冷媒循環路72に吐出される。
【0037】
図6及び図7に示す圧縮機システム70(70C、70D)は冷凍システムを構成し、膨張弁79で減圧された冷媒は蒸発器80で蒸発し、負荷媒体wから蒸発潜熱を奪って冷却する。図6及び図7に示す例示的な実施形態では、圧縮機10(低段圧縮機10a及び高段圧縮機10b)から吐出された冷媒ガスから冷凍機油を分離する2つのオイルセパレータ86と、凝縮器74で凝縮した冷媒液を一時貯留する受液器88が設けられている。また、低段圧縮機10a及び高段圧縮機10bは往復動圧縮機で構成されている。
【0038】
低段圧縮機10aの隔壁部16を冷却する実施形態では、凝縮器74の下流側でかつ膨張弁79の上流側の冷媒循環路72から分岐し、低段圧縮機10aの冷却媒体路18に連通する分岐路76aを備える。低段圧縮機10aとして、図1図3に示す圧縮機10(10A~10C)を用いることができる。圧縮機10(10B、10C)を用いる場合、冷媒排出路42a又は60aは、中間路72(72a)に接続される。中間路72(72a)は分岐路76aより低圧である。そのため、冷媒循環路72から分岐路76aに分流した冷媒液は、分岐路76aと中間路72(72a)との差圧により、圧縮機10(10A)の場合、冷却媒体路18と連通路62とを経て中間路72(72a)に排出され、圧縮機10(10B、10C)の場合、冷却媒体路18と冷媒排出路42a又は60aとを経て中間路72(72a)に排出される。
【0039】
高段圧縮機10bの隔壁部16を冷却する実施形態のうち、図6に示す実施形態では、凝縮器74の下流側でかつ膨張弁79の上流側の冷媒循環路72から分岐し、高段圧縮機10bの冷媒循環路72に連通する分岐路76bが設けられる。高段圧縮機10bとして、図1図3に示す圧縮機10(10A~10C)を用いることができる。分岐路76bには液ポンプ77と、必要に応じて圧力調整弁78が設けられる。圧縮機10(10B,10C)を用いる場合、冷却媒体路18で隔壁部16を冷却した後の冷媒が排出される冷媒排出路42b又は60bは、冷媒循環路72の任意の場所に接続される。冷媒循環路72から分岐路76に分流した冷媒液は、液ポンプ77によって加圧されるため、高段圧縮機10bの冷却媒体路18に供給できる。隔壁部16を冷却した後の冷媒は、冷媒排出路42b又は60bを経て冷媒循環路72に戻される。
【0040】
好ましくは、冷媒排出路42b又は60bは、凝縮器74の上流側の冷媒循環路72(例えば、オイルセパレータ86と凝縮器74との間の冷媒循環路72)に接続される。これによって、隔壁部16の冷却に使用した冷媒を膨張弁79より下流側の冷媒循環路72もしくは中間路72(72a)に戻さなくて済む。従って、冷却媒体路18への冷媒の供給が圧縮機の能力低下とならない。
【0041】
高段圧縮機10bの隔壁部16を冷却する実施形態のうち、図7に示す実施形態では、分岐路76bに液ポンプ77及び圧力調整弁78を設ける必要はない。代わりに、冷媒排出路42b又は60bは、中間路72(72a)に接続される。中間路72(72a)の圧力は分岐路76bの圧力より低いため、分岐路76bから冷却媒体路18に供給された冷媒は、冷媒排出路42b又は60bを介してスムーズに中間路72(72a)に排出できる。
【0042】
図6及び図7に示す実施形態は、低段圧縮機10a及び高段圧縮機10bの両方に圧縮機を冷却する手段を備えているが、低段圧縮機10a又は高段圧縮機10bのどちらか一方のみに冷却手段を設けるようにしてもよい。
【0043】
さらに、別な実施形態では、圧縮機システム70を単機2段圧縮機に適用することができる。圧縮機システム70が冷凍システムに適用された場合、冷凍能力に最も影響するのは低段圧縮機の冷却効果である。単機2段圧縮機は、低段圧縮機と高段圧縮機とが1個のケーシング内に収納されている。従って、低段圧縮機は高段圧縮機による温度上昇の影響を受けやすい。圧縮機システム70を単機2段圧縮機に適用することで、冷凍能力を高く維持できる。
【0044】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0045】
1)一態様に係る圧縮機(10)は、シリンダ(12)と、前記シリンダ内で往復可能に構成されたピストン(14)と、前記シリンダおよび前記ピストンにより形成される作動室(Sc)に連通可能な吸入空間(Si)と、前記作動室に連通可能な吐出空間(Sv)と、前記作動室を取り囲むように配置され、前記吸入空間と前記吐出空間とを区画する隔壁部(16)と、前記隔壁部に形成された冷却媒体路(18)と、を備える。
【0046】
このような構成によれば、吸入空間と吐出空間とを区画する隔壁部に冷却媒体路を形成し、該冷却媒体路に冷却媒体を流すことで、吐出空間から吸入空間への入熱を抑止でき、これによって、吐出空間から吸入空間への入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を抑制できる。一方、圧縮機内に設けられる隔壁部は、圧縮機表面と離れているので、圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0047】
2)別な態様に係る圧縮機(10)は、1)に記載の圧縮機(10)であって、前記吸入空間(Si)と前記作動室(Sc)との連通状態を切り替えるための吸入弁(20)と、前記吐出空間(Sv)と前記作動室との連通状態を切り替えるための吐出弁(22)と、前記吸入弁および前記吐出弁を保持するためのバルブプレート(30)と、を備え、前記冷却媒体路(18)は、前記隔壁部(16)としての前記バルブプレートに形成されている。
【0048】
このような構成によれば、上記バルブプレートに冷却媒体路を形成し、冷却媒体路を冷却することで、吐出空間から吸入空間への入熱を抑止できるため、吐出空間から吸入空間への入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を抑制できる。一方、圧縮機内に設けられるバルブプレートは、圧縮機表面と離れているので、圧縮機表面(例えばヘッドカバー46の表面)の温度低下は抑えられる。従って、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0049】
3)さらに別な態様に係る圧縮機(10)は、2)に記載の圧縮機であって、前記吸入空間(Si)を有し、前記シリンダ(12)および前記ピストン(14)を収容するための圧縮機ケーシング(32)を備え、前記バルブプレート(30)は、前記圧縮機ケーシング側の表面に第1流路溝(31)が形成され、前記冷却媒体路(18)の少なくとも一部は、前記第1流路溝によって形成される。
【0050】
このような構成によれば、冷却媒体路の少なくとも一部が上記第1流路溝で形成されるため、バルブプレートに冷却媒体路を形成する場合、バルブプレートに深孔を形成する必要がなくなる。そのため、冷却媒体路を形成する加工が容易になる。また、第1流路溝は圧縮機ケーシング側に開口を有するため、冷却媒体路を流れる冷却媒体によって吸入空間を冷却できる。
【0051】
4)さらに別な態様に係る圧縮機(10)は、1)に記載の圧縮機であって、前記吸入空間(Si)と前記作動室(Sc)との連通状態を切り替えるための吸入弁(20)と、前記吐出空間(Sv)と前記作動室との連通状態を切り替えるための吐出弁(22)と、前記吸入弁および前記吐出弁を保持するためのバルブプレート(30)と、前記シリンダおよび前記ピストンを収容するための圧縮機ケーシング(32)と、を備え、前記圧縮機ケーシングは、前記バルブプレート側の表面に第2流路溝(34)が形成され、前記冷却媒体路(18)の少なくとも一部は、前記第2流路溝によって形成される。
【0052】
このような構成によれば、上記冷却媒体路は圧縮機ケーシング表面の切削加工によって形成できるため、冷却媒体路の形成が容易になる。
【0053】
5)さらに別な態様に係る圧縮機(10)は、4)に記載の圧縮機であって、前記バルブプレート(30)と前記圧縮機ケーシング(32)との当接面に介装された断熱性ガスケット(44)を備える。
【0054】
このような構成によれば、上記断熱性ガスケットを備えることで、吐出空間から圧縮機ケーシング側にある吸入空間への入熱をさらに抑制できる。
【0055】
6)さらに別な態様に係る圧縮機(10)は、3)乃至5)の何れかに記載の圧縮機であって、前記バルブプレート(30)と共に前記吐出空間(Sv)を形成するヘッドカバー(46)を備え、前記バルブプレートの外周縁部が前記圧縮機ケーシング(32)の外周縁部と前記ヘッドカバーの外周縁部との間に介装されている。
【0056】
このような構成によれば、ヘッドカバー、バルブプレート及び圧縮機ケーシングの3層の外周縁部をボルトなどの締結具で共締めすることで、バルブプレートの取付けが容易になる。また、バルブプレートの外周縁部が外部に露出するので、バルブプレートに形成された冷却媒体路に外部から冷媒供給管を接続しやすくなる。
【0057】
7)一態様に係る圧縮機システム(70)は、上述の圧縮機(10(10A、10B、10C)))と、前記圧縮機の前記吸入空間(Si)と前記吐出空間(Sv)とに連通する冷媒循環路(72)と、前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器(74)と、前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記冷却媒体路(18)に連通する少なくとも一つの分岐路(76)と、前記分岐路に設けられた液ポンプ(77)と、を備える。
【0058】
このような構成によれば、上記分岐路を流れる冷媒液は液ポンプによって加圧されるため、冷媒液は冷却媒体路に供給できる。これによって、圧縮機内に設けられる隔壁部が冷却されるため、吐出空間から吸入空間への入熱に起因した圧縮機の体積効率の低下を抑制できる。そのため、本圧縮機システムが冷凍システムやヒートポンプシステムに適用された場合、COP(成績係数)の低下を抑制できる。また、圧縮機内に設けられる隔壁部は圧縮機表面と離れているので、圧縮機表面の温度低下は抑えられる。これによって、圧縮機表面に霜が発生するのを抑制できる。
【0059】
8)別な態様に係る圧縮機システム(70)は、7)に記載の圧縮機システムであって、前記圧縮機(10(10A、10B))の前記冷却媒体路(18)から排出された冷却媒体を前記冷媒循環路(72)に戻す冷媒排出路(42、60)を備え、前記冷媒排出路が、前記圧縮機と前記凝縮器(74)との間の前記冷媒循環路に接続される。
【0060】
このような構成によれば、液ポンプで加圧され冷却媒体路に供給された冷媒液は、圧縮機と凝縮器間の高圧側の冷媒循環路に戻すことができる。これによって、隔壁部の冷却に使用した冷媒を圧縮機の作動冷媒として用いることができるため、冷却媒体路への冷却のための冷媒の供給が圧縮機の能力低下とならない。
【0061】
9)一態様に係る圧縮機システムは、上述の圧縮機(10(10B、10C))と、前記圧縮機の前記吸入空間(Si)と前記吐出空間(Sv)とに連通する冷媒循環路(72)と、前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器(74)と、前記凝縮器で凝縮された前記吐出ガスの凝縮液を減圧する膨張弁(79)と、前記凝縮器と前記膨張弁との間の前記冷媒循環路から分岐し前記冷却媒体路(18)に連通する少なくとも一つの分岐路(76)と、前記圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記膨張弁と前記圧縮機との間の前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路(42,60)と、を備える。
【0062】
このような構成によれば、膨張弁と圧縮機との間の冷媒循環路は分岐路より低圧であるため、分岐路に液ポンプを設けなくても、冷却媒体路に供給された冷媒を冷媒排出路を介して該低圧領域の冷媒循環路に戻すことができる。
【0063】
10)一態様に係る圧縮機システム(70)は、冷媒循環路(72)と、前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機(10a)及び高段圧縮機(10b)と、前記高段圧縮機の前記吐出空間から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器(74)と、を備え、前記低段圧縮機は上述の圧縮機(10(10A~10C))で構成され、前記凝縮器(74)の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記低段圧縮機の前記冷却媒体路に連通する分岐路(76a)と、前記低段圧縮機の前記冷却媒体路(18)から排出された冷却媒体を前記低段圧縮機と前記高段圧縮機との間の前記冷媒循環路(中間路72(72a))に戻す冷媒排出路(42a、60a)と、を備える。
【0064】
このような構成によれば、上記中間路は、分岐路76aより低圧であるため、低段圧縮機の冷却媒体路で隔壁部を冷却した後の冷媒ガスを冷媒排出路を介して中間路に戻すことができる。
【0065】
11)一態様に係る圧縮機システム(70)は、冷媒循環路(72)と、前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機(10a)及び高段圧縮機(10b)と、前記高段圧縮機の前記吐出空間(Sv)から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器(74)と、を備え、前記高段圧縮機は上述の圧縮機(10(10A~10C))で構成され、前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記高段圧縮機の前記冷却媒体路(18)に連通する分岐路(76b)と、前記分岐路に設けられた液ポンプ(77)と、前記高段圧縮機の前記冷却媒体路から排出された冷却媒体を前記冷媒循環路に戻す冷媒排出路(42b、60b)と、を備える。
【0066】
このような構成によれば、上記分岐路から高段圧縮機の冷却媒体路に供給される冷媒液は液ポンプによって加圧されるため、高段圧縮機の冷却媒体路に供給できると共に、該冷媒排出路で隔壁部を冷却した後の冷媒は冷媒排出路を介して冷媒循環路に戻すことができる。
【0067】
12)一態様に係る圧縮機システム(70)は、冷媒循環路(72)と、前記冷媒循環路に直列に設けられた低段圧縮機(10a)及び高段圧縮機(10b)と、前記高段圧縮機の前記吐出空間(Sv)から吐出された吐出ガスを凝縮するための凝縮器(74)と、を備え、前記高段圧縮機は上述の圧縮機(10(10B、10C))で構成され、前記凝縮器の下流側で前記冷媒循環路から分岐し前記高段圧縮機の前記冷却媒体路に連通する分岐路(76b)と、前記高段圧縮機の前記冷却媒体路(18)から排出された冷却媒体を前記低段圧縮機と前記高段圧縮機の間に設けられた前記冷媒循環路(中間路72(72a))に戻す冷媒排出路(42b、60b)と、を備える。
【0068】
このような構成によれば、上記分岐路を流れる冷媒液は上記中間路より高圧であるため、分岐路から高段圧縮機の冷却媒体路に供給された冷媒液は、隔壁部を冷却した後冷媒排出路を介して中間路に戻ることができる。
【符号の説明】
【0069】
10(10A、10B、10C、10a、10b) 圧縮機
10a 低段圧縮機
10b 高段圧縮機
12 シリンダ
14 ピストン
16 隔壁部
18 冷却媒体路
20 吸入弁
22 吐出弁
24 クランク軸
26 コネクティングロッド
28 バルブケージ
30 バルブプレート
31 第1流路溝
31a 開口
32 圧縮機ケーシング
33、56 貫通孔
34 第2流路溝
36 供給路
38、52 供給管
39 絞り
40、58 排出路
42、42a、42b、60、60a、60b 冷媒排出路
44 断熱性ガスケット
46 ヘッドカバー
46a 開口
48、54 ボルト
50 噴射ノズル
62 連通路
70(70A、70B) 圧縮機システム
72 冷媒循環路
74 凝縮器
76、76a、76b 分岐路
78 膨張弁
80 蒸発器
82 吸入室
84 吐出室
Sc 作動室
Si 吸入空間
Sv 吐出空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7