(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】搬送方法及び処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240830BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020159632
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中込 渉
(72)【発明者】
【氏名】村川 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直之
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 史孝
(72)【発明者】
【氏名】向山 達也
(72)【発明者】
【氏名】窪田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平出 圭介
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008954(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168006(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所望の処理を施す少なくとも1つの処理部と、前記処理部に対して基板を搬送する搬送部と、を備える処理システムにおいて、連続的に処理される複数の基板を前記搬送部から前記処理部に搬送する方法であって、
複数の前記基板のそれぞれには、当該基板に対する処理時間を任意に変更するための調整値が予め割り当てられ、
今回処理される第1の基板に割り当てられた前記調整値を取得する工程と、
前記第1の基板よりも前に処理された基準基板に割り当てられた基準調整値を取得する工程と、
前記基準基板に対して行われた実際の処理時間である実績時間を取得する工程と、
前記実績時間に前記第1の基板に割り当てられた前記調整値と前記基準調整値との差分を反映させることにより、第1の基板の予測処理時間を算出する工程と、
算出された前記予測処理時間に基づいて、前記第1の基板よりも後に処理される第2の基板の搬送タイミングを調整する工程と、を含む、搬送方法。
【請求項2】
前記第2の基板の搬送タイミングの調整に際しては、
前記予測処理時間から算出される、処理モジュールにおける前記第1の基板に対する処理の終了予測時間と、
前記第2の基板の前記処理モジュールまでの搬送時間と、
を比較することにより、前記第2の基板の搬送開始のタイミングが調整される、請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記終了予測時間の前後5秒以内に、前記第2の基板が前記処理モジュールに搬送されるように、前記搬送開始のタイミングが調整される、請求項2に記載の搬送方法。
【請求項4】
前記処理システムには、前記基板に各種処理を施すための複数の処理モジュールが設けられ、
前記搬送開始のタイミングが調整される前記処理モジュールは、複数の前記処理モジュールの内、前記基板に対する処理時間が長く、処理システムにおける前記基板の処理に律速が生じる処理モジュールである、請求項2又は3に記載の搬送方法。
【請求項5】
前記第1の基板に対する処理の終了後、前記第1の基板に割り当てられた前記調整値を、前記基準調整値として上書きして更新する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送方法。
【請求項6】
複数の基板を連続的に処理する処理システムであって、
基板に所望の処理を施す少なくとも1つの処理部と、
前記処理部に対して基板を搬送する搬送部と、
前記搬送部から前記処理部に対する基板の搬送動作を制御する制御部と、を備え、
複数の前記基板のそれぞれには、当該基板に対する処理時間を任意に変更するための調整値が予め割り当てられ、
前記制御部は、
今回処理される第1の基板に割り当てられた前記調整値を取得する工程と、
前記第1の基板よりも前に処理された基準基板に割り当てられた基準調整値を取得する工程と、
前記基準基板に対して行われた実際の処理時間である実績時間を取得する工程と、
前記実績時間に前記第1の基板に割り当てられた前記調整値と前記基準調整値との差分を反映させることにより、第1の基板の予測処理時間を算出する工程と、
算出された前記予測処理時間に基づいて、前記第1の基板よりも後に処理される第2の基板の搬送タイミングを調整する工程と、を行うように前記基板の搬送動作を制御する、処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の基板の搬送タイミングの調整に際して、
前記予測処理時間から算出される、前記処理部における前記第1の基板に対する処理の終了予測時間と、
前記第2の基板の前記処理部までの搬送時間と、
を比較することにより、前記第2の基板の搬送開始のタイミングを調整する、請求項6に記載の処理システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記終了予測時間の前後5秒以内に、前記第2の基板が前記処理部に搬送されるように、前記搬送開始のタイミングが調整する、請求項7に記載の処理システム。
【請求項9】
前記搬送部に隣接して複数の前記処理部が設けられ、
前記搬送開始のタイミングが調整される前記処理部は、複数の前記処理部の内、前記基板に対する処理時間が長く、処理システムにおける前記基板の処理に律速が生じる処理部である、請求項7又は8に記載の処理システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1の基板に対する処理の終了後、前記第1の基板に割り当てられた前記調整値を、前記基準調整値として上書きして更新する、請求項6~9のいずれか一項に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の搬送方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に収容した基板に対して所望のガス処理を施すチャンバと、前記チャンバに対し複数の基板を連続的に搬送する搬送機構と、基板を前記チャンバに搬入する前に処理ガスを前記チャンバに導入させ、所定時間後に前記チャンバ内に基板を搬入させるように前記処理ガスの導入と前記搬送機構の動作とを制御する制御機構と、を具備するガス処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理装置において連続的に処理される複数の基板の搬送タイミングを適切に調整し、該基板処理装置における基板処理を効率的に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板に所望の処理を施す少なくとも1つの処理部と、前記処理部に対して基板を搬送する搬送部と、を備える処理システムにおいて、連続的に処理される複数の基板を前記搬送部から前記処理部に搬送する方法であって、複数の前記基板のそれぞれには、当該基板に対する処理時間を任意に変更するための調整値が予め割り当てられ、今回処理される第1の基板に割り当てられた前記調整値を取得する工程と、前記第1の基板よりも前に処理された基準基板に割り当てられた基準調整値を取得する工程と、前記基準基板に対して行われた実際の処理時間である実績時間を取得する工程と、前記実績時間に前記第1の基板に割り当てられた前記調整値と前記基準調整値との差分を反映させることにより、第1の基板の予測処理時間を算出する工程と、算出された前記予測処理時間に基づいて、前記第1の基板よりも後に処理される第2の基板の搬送タイミングを調整する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理装置において連続的に処理される複数の基板の搬送タイミングを適切に調整し、該基板処理装置における基板処理を効率的に行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる基板処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図2】本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御方法の主な工程を示すフロー図である。
【
図3】レシピデータベースに記録されたレシピ情報の詳細を示す説明図である。
【
図4】本実施形態にかかるウェハ搬送の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来、真空雰囲気下で半導体ウェハ(基板:以下、単に「ウェハ」という。)を搬送し、該ウェハに対して各種真空処理を行う真空処理装置が知られている。この真空処理装置では、該真空処理装置に搬入される複数枚のウェハに対して、各種処理モジュール間での搬送、及び各種真空処理が、順次、連続的に行われる。
【0009】
上述した特許文献1には、真空処理としてのCOR(Chemical Oxide Removal)処理、及びPHT(Post Heat Treatment)処理を、順次、ウェハに対して行うガス処理装置が開示されている。特許文献1に記載のガス処理装置によれば、プロセスコントローラからの指令により、複数枚のウェハが連続的に各処理チャンバ(処理モジュール)に搬送されるように、ウェハの搬送が制御される。
【0010】
このウェハの搬送、及び各種真空処理においては、真空処理装置におけるスループットの低下を抑制するため、各種処理モジュールに対するウェハ搬送のタイミングを制御し、該ウェハの処理待機時間を短くすることが求められる。
【0011】
このウェハ搬送のタイミング制御には、従来、該タイミング制御が行われる今回のウェハ(以下、「今回ウェハ」という。)に先行して処理されたウェハ(以下、「先行ウェハ」という。)に対して対象の真空処理(レシピ)を実行したときの計測時間をレシピに保存した「レシピ実績時間(以下、単に「実績時間」という場合がある。)」が用いられている。具体的には、対象のレシピが行われた先行ウェハの実績時間を用いることで、同様のレシピが実行される今回ウェハに対する該レシピに要する時間を予測し、レシピの終了のタイミングに合わせて今回ウェハの搬送タイミングを制御することにより、ウェハ搬送を最適化することができる。
【0012】
ところで、このウェハ搬送のタイミング制御をするための「実績時間」には、例えば今回ウェハの前工程の処理結果や、先行ウェハの対象レシピの処理結果等に基づいて、今回ウェハに対する対象レシピの処理時間を調整するためデータ(以下、「バリアブルデータ」という。)が含まれている。該バリアブルデータは、例えばオペレータの手入力や前工程の処理結果に基づく自動入力等により、真空処理装置に搬入される複数枚のウェハ毎に割り当てて設定される。
【0013】
しかしながら、上述した従来のウェハ搬送のタイミング制御方法においては、このようにウェハ毎に割り当てられるバリアブルデータが考慮されておらず、先行ウェハと今回ウェハで該バリアブルデータが異なる場合にスループットが低下するおそれがあった。具体的には、上述したように先行ウェハの実績時間に基づいて今回ウェハの搬送タイミングが制御されるが、この際、先行ウェハと今回ウェハのバリアブルデータが同じであることを想定して今回ウェハを搬送するため、搬送タイミングが正しく予測されず、処理待機時間が発生してスループット低下の原因となるおそれがあった。そして、このようなバリアブルデータが異なることに起因するスループットの低下については特許文献1にも記載がなく、かかる観点において改善の余地がある。
【0014】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板処理装置において連続的に処理される複数の基板の搬送タイミングを適切に調整し、該基板処理装置における基板処理を効率的に行う。以下、一実施形態にかかる真空処理装置、及び本実施形態にかかるウェハ搬送方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<真空処理装置>
先ず、一実施形態にかかる真空処理装置の構成について説明する。
図1は、真空処理装置1の構成の概略を模式的に示す平面図である。本実施形態においては、真空処理装置1が、処理モジュールとしてのCORモジュール、及びPHTモジュールを備える場合を例に説明する。なお、本開示の真空処理装置1が備える各種処理モジュールの構成はこれに限られず、任意に選択され得る。
【0016】
図1に示すように真空処理装置1は、大気部10と減圧部11がロードロックモジュール20a、20bを介して一体に接続された構成を有している。大気部10は、大気圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う複数の大気モジュールを備える。減圧部11は、減圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う複数の減圧モジュールを備える。
【0017】
ロードロックモジュール20aは、大気部10の後述するローダーモジュール30から搬送されたウェハWを、減圧部11の後述するトランスファモジュール60に引き渡すため、ウェハWを一時的に保持する。ロードロックモジュール20aは、内部に複数、例えば2つのストッカ(図示せず)を有しており、これにより内部に2枚のウェハWを同時に保持する。
【0018】
ロードロックモジュール20aは、ゲートバルブ(図示せず)が設けられたゲート(図示せず)を介して、後述するローダーモジュール30及び後述するトランスファモジュール60に接続されている。このゲートバルブにより、ロードロックモジュール20aと、ローダーモジュール30及びトランスファモジュール60の間の気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0019】
ロードロックモジュール20aにはガスを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続され、当該給気部と排気部によって内部が大気圧雰囲気と減圧雰囲気に切り替え可能に構成されている。すなわちロードロックモジュール20aは、大気圧雰囲気の大気部10と、減圧雰囲気の減圧部11との間で、適切にウェハWの受け渡しができるように構成されている。
【0020】
ロードロックモジュール20bはトランスファモジュール60から搬送されたウェハWをローダーモジュール30に引き渡すため、ウェハWを一時的に保持する。ロードロックモジュール20bは、ロードロックモジュール20aと同様の構成を有している。すなわち、図示しないゲートバルブ、図示しないゲート、図示しない給気部、及び図示しない排気部を有している。
【0021】
なお、ロードロックモジュール20a、20bの数や配置は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0022】
大気部10は、後述するウェハ搬送機構40を備えたローダーモジュール30、複数のウェハWを保管可能なフープ31を載置するロードポート32、ウェハWを冷却するCSTモジュール33、及びウェハWの水平方向の向きを調節するオリエンタモジュール34を有している。
【0023】
ローダーモジュール30は内部が矩形の筐体からなり、筐体の内部は大気圧雰囲気に維持されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する一側面には、複数、例えば3つのロードポート32が並設されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する他側面には、ロードロックモジュール20a、20bが並設されている。ローダーモジュール30の筐体の短辺を構成する一側面には、CSTモジュール33が設けられている。ローダーモジュール30の筐体の短辺を構成する他側面には、オリエンタモジュール34が設けられている。
【0024】
なお、ロードポート32、CSTモジュール33、及びオリエンタモジュール34の数や配置は本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。また、大気部10に設けられる大気モジュールの種類も本実施形態に限定されるものではなく、任意に選択できる。
【0025】
フープ31は複数、例えば1ロット25枚のウェハWを収容する。また、ロードポート32に載置されたフープ31の内部は、例えば、大気や窒素ガスなどで満たされて密閉されている。
【0026】
ローダーモジュール30の内部には、ウェハWを搬送するウェハ搬送機構40が設けられている。ウェハ搬送機構40は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム41a、41bと、搬送アーム41a、41bを回転可能に支持する回転台42と、回転台42を搭載した回転載置台43とを有している。ウェハ搬送機構40は、ローダーモジュール30の筐体の内部において長手方向に移動可能に構成されている。
【0027】
減圧部11は、2枚のウェハWを各種処理モジュールに対して同時に搬送するトランスファモジュール60と、ウェハWにCOR処理を行うCORモジュール61と、ウェハWにPHT処理を行うPHTモジュール62とを有している。トランスファモジュール60、CORモジュール61、及びPHTモジュール62の内部は、それぞれ減圧雰囲気に維持される。また、CORモジュール61及びPHTモジュール62は、トランスファモジュール60に対して複数、例えば3つずつ設けられている。
【0028】
搬送部としてのトランスファモジュール60は内部が矩形の筐体からなり、上述したように図示しないゲートバルブを介してロードロックモジュール20a、20bに接続されている。トランスファモジュール60は、ロードロックモジュール20aに搬入されたウェハWを一のCORモジュール61、一のPHTモジュール62に順次搬送してCOR処理とPHT処理を施した後、ロードロックモジュール20bを介して大気部10に搬出する。
【0029】
処理部としてのCORモジュール61の内部には、2枚のウェハWを水平方向に並べて載置する2つのステージ61a、61bが設けられている。CORモジュール61は、ステージ61a、61bにウェハWを並べて載置することにより、2枚のウェハWに対して同時にCOR処理を行う。なお、CORモジュール61には、処理ガスやパージガスなどを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続されている。
【0030】
処理部としてのPHTモジュール62の内部には、2枚のウェハWを水平方向に並べて載置する2つのステージ62a、62bが設けられている。PHTモジュール62は、ステージ62a、62bにウェハWを並べて載置することにより、2枚のウェハWに対して同時にPHT処理を行う。なお、PHTモジュール62には、ガスを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続されている。
【0031】
また、CORモジュール61及びPHTモジュール62は、ゲートバルブ(図示せず)が設けられたゲート(図示せず)を介して、トランスファモジュール60に接続されている。このゲートバルブにより、トランスファモジュール60とCORモジュール61及びPHTモジュール62の間の気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0032】
なお、トランスファモジュール60に設けられる処理モジュールの数や配置、及び種類は本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0033】
トランスファモジュール60の内部には、ウェハWを搬送するウェハ搬送機構70が設けられている。ウェハ搬送機構70は、2枚のウェハWを縦並びに保持して移動する搬送アーム71a、71bと、搬送アーム71a、71bを回転可能に支持する回転台72と、回転台72を搭載した回転載置台73とを有している。また、トランスファモジュール60の内部には、トランスファモジュール60の長手方向に延伸するガイドレール74が設けられている。回転載置台73はガイドレール74上に設けられ、ウェハ搬送機構70をガイドレール74に沿って移動可能に構成されている。
【0034】
以上の真空処理装置1には、制御部80が設けられている。制御部80は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、真空処理装置1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理モジュールや搬送機構などの駆動系の動作を制御して、真空処理装置1における後述のウェハ搬送のタイミング制御を行うためのプログラムも格納されている。具体的には、例えばウェハの搬送動作を制御する後述の「ウェハ搬送制御タスク」、処理モジュールにおけるレシピを実行する後述の「レシピ実行制御タスク」、及び処理モジュールにおけるレシピを管理する後述の「レシピ管理タスク」等が格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部80にインストールされたものであってもよい。
【0035】
<ウェハ搬送方法>
本開示にかかる真空処理装置1は以上のように構成されている。次に、真空処理装置1を用いて行われるウェハ処理、及びウェハ搬送について説明する。なお、以下の説明においてはフープ31に収容された1ロット(25枚)のウェハWに対して、連続的に2枚葉で処理を行う場合を例に説明を行う。また、以下の説明に用いる「ウェハW1~W25」は、1ロット(25枚)のウェハWのそれぞれに対して、ウェハ処理が行われる順番に1~25の番号を付したものである。
【0036】
また、通常のウェハ処理においては減圧部11に設けられた複数のCORモジュール61、及びPHTモジュール62を用いてウェハWを並行処理するが、以下の説明においてはウェハ搬送のタイミング制御についての説明を明確化するため、ウェハW1~W25の全てが同一のCORモジュール61、PHTモジュール62を用いて処理される場合を例に説明を行う。
【0037】
先ず、複数、1ロット(25枚)のウェハWを収納したフープ31が、ロードポート32に搬入される。ロードポート32にフープ31が配置されると、フープ31に対してウェハ搬送機構40がアクセスし、フープ31からウェハW1が取り出される。フープ31から搬出されたウェハW1は、オリエンタモジュール34により水平方向の向きが調節される。次に、ウェハW1の水平方向の向きを調節する間に、フープ31からウェハW2が取り出される。
【0038】
フープ31から取り出されたウェハW2は、水平方向の向きが調節されたウェハW1がオリエンタモジュール34から取り出された直後に、当該オリエンタモジュール34に搬入されて水平方向の向きが調節される。
【0039】
オリエンタモジュール34から取り出されたW1は、ロードロックモジュール20aのストッカ(図示せず)に搬送され、一時的に保持される。同様に、水平方向の向きが調節されたウェハW2がオリエンタモジュール34から取り出され、ロードロックモジュール20aのストッカ(図示せず)に搬送される。
【0040】
ロードロックモジュール20aに2枚のウェハW1、W2が搬送されると、該ロードロックモジュール20aの内部が大気圧雰囲気から減圧雰囲気に切り替えられた後、トランスファモジュール60の内部と連通される。続いて2枚のウェハW1、W2は、ウェハ搬送機構70の搬送アーム71aに受け渡され、トランスファモジュール60に搬入される。
【0041】
2枚のウェハW1、W2を保持したウェハ搬送機構70は、次に、一のCORモジュール61の前に移動する。続いて、搬送アーム71aがCORモジュール61の内部に進入し、2枚のウェハW1、W2がCORモジュール61のステージ61a、61bにそれぞれ受け渡される。その後、搬送アーム71aはCORモジュール61から退出し、2枚のウェハW1、W2に対してCOR処理が行われる。なお、本実施形態にかかるCOR処理においては、後述のレシピデータベースDBに記録された複数のCOR処理のレシピの中から、目的に応じて少なくとも一のレシピを選択的に実行する。
【0042】
2枚のウェハW1、W2のCOR処理が開始されると、次に処理される2枚のウェハW3、W4がフープ31から取り出され、オリエンタモジュール34を介してロードロックモジュール20aに搬入された後、さらにウェハ搬送機構70により一のCORモジュール61の前に搬送される。ここで、2枚のウェハW3、W4の一のCORモジュール61への搬送タイミングは、先行ウェハである2枚のウェハW1、W2に対するCOR処理が完了するタイミングで、該一のCORモジュール61の前にウェハW3、W4が到着するように制御される。すなわち、一のCORモジュール61に対するウェハW1、W2の搬出と、ウェハW3、W4の搬入とを同時に行うことができるように搬送タイミングが制御される。なお、この搬送タイミングの制御方法の詳細については後述する。
【0043】
続いて、ウェハW1、W2に対するCOR処理が完了すると、ウェハ搬送機構70の搬送アーム71bがCORモジュール61の内部に進入し、ステージ61a、61bから搬送アーム71bに2枚のウェハW1、W2が受け渡される。続けて、ウェハ搬送機構70の搬送アーム71aがCORモジュール61の内部に進入し、搬送アーム71bからステージ61a、61bに2枚のウェハW3、W4が受け渡される。その後、搬送アーム71aがCORモジュール61から退出し、2枚のウェハW3、W4に対してCOR処理が行われる。
【0044】
次に、2枚のウェハW1、W2を保持したウェハ搬送機構70が一のPHTモジュール62の前まで移動する。続いて、搬送アーム71bがPHTモジュール62に進入し、2枚のウェハW1、W2がPHTモジュール62のステージ62a、62bにそれぞれ受け渡される。その後、搬送アーム71bはPHTモジュール62から退出し、2枚のウェハW1、W2に対してPHT処理が行われる。なお、本実施形態にかかるPHT処理においては、後述のレシピデータベースDBに記録された複数のPHT処理のレシピの中から、目的に応じて少なくとも一のレシピを選択的に実行する。
【0045】
続いて、ウェハW1、W2に対するPHT処理が完了すると、ウェハ搬送機構70の搬送アーム71bがPHTモジュール62の内部に進入し、ステージ62a、62bから搬送アーム71bに2枚のウェハW1、W2が受け渡される。この際、COR処理が完了した2枚のウェハW3、W4をPHTモジュール62のステージ62a、62bに搬送すること、すなわち、PHTモジュール62に対するウェハW1,W2の搬出と、ウェハW3、W4の搬入が同時に行われることが好ましい。また更に、この際、CORモジュール61に対するウェハW3,W4の搬出と、次に処理される2枚のウェハW5、W6の搬入が同時に行われることが更に好ましい。なお、上述したように、搬送タイミングの制御方法の詳細については後述する。
【0046】
2枚のウェハW1、W2がPHTモジュール62から搬出されると、次に、2枚のウェハW1、W2を保持したウェハ搬送機構70がロードロックモジュール20bの前まで移動する。続けて、2枚のウェハW1、W2がウェハ搬送機構70の搬送アーム71bからストッカ(図示せず)に受け渡される。
【0047】
ロードロックモジュール20bに2枚のウェハW1、W2が搬送されると、該ロードロックモジュール20bの内部が減圧雰囲気から大気圧雰囲気に切り替えられた後、ローダーモジュール30の内部と連通される。続いて2枚のウェハW1、W2は、ウェハ搬送機構40に受け渡され、ローダーモジュール30に搬入される。その後、ローダーモジュール30によって2枚のウェハW1、W2がCSTモジュール33に収納され、CST処理が行われる。
【0048】
CSTモジュール33に搬送された2枚のウェハW1、W2は、予め定められた時間(例えば1分)のCST処理が完了すると、ローダーモジュール30によってロードポート32に載置されたフープ31に収納され、他のウェハW3~W25の処理が完了するまで待機状態となる。
【0049】
このように、一連のオリエント処理、COR処理、PHT処理、及びCST処理が、全てのウェハW1~W25に対して順次行われる。そして、全てのウェハW1~W25に対しての所望の処理が終了し、最後のウェハW25がフープ31に収納されると、真空処理装置1における一連のウェハ処理が終了する。
【0050】
本実施形態にかかる真空処理装置1におけるウェハ処理、及びウェハ搬送は以上のようにして行われる。上述したように、ウェハの搬送タイミングは、一の処理モジュールに対する先行ウェハの搬出と、今回ウェハの搬入とが同時に行われるように搬送タイミングが制御されることが望ましい。しかしながら、特にウェハ毎に割り当てられるバリアブルデータが先行ウェハと今回ウェハで異なる場合、一の処理モジュールにおけるレシピの終了タイミングを正確に予測できず、搬送のタイミングを適切に制御できないおそれがある。
【0051】
ここで、今回ウェハの搬送タイミングが早く、処理モジュールでの先行ウェハに対するレシピが継続されている途中で今回ウェハが処理モジュールの前まで搬送されてしまった場合、該今回ウェハは、ウェハ搬送機構70の搬送アーム71上で先行ウェハの処理が完了するまで待機することになる。通常、上述したように真空処理装置1においては複数のフープ31から搬入される複数のウェハWを複数の処理モジュールを用いて並行して処理するため、このように搬送アーム71上での今回ウェハの待機が生じた場合、かかる間は搬送アーム71で他のウェハWを搬送することができなくなる。すなわち、かかる間に他のウェハWの処理を行うことができず、これにより真空処理装置1のスループットが低下する。
【0052】
一方、今回ウェハの搬送タイミングが遅く、処理モジュールでの先行ウェハに対するレシピが完了しても今回ウェハが処理モジュールの前まで搬送されない場合、先行ウェハを処理モジュールから搬出できず、該先行ウェハは処理モジュールの内部で待機することになる。このように先行ウェハの待機が生じた場合、かかる間は処理モジュールで他のウェハWを処理することができなくなり、スループットが低下する。また更に、このように処理モジュールの内部での先行ウェハの待機が生じた場合、該処理モジュールの内部の残ガスの影響により先行ウェハへの処理が過分に進行し、先行ウェハに対して所望の処理結果が得られなくなるおそれがある。
【0053】
このように、ウェハ搬送のタイミングが適切に制御できなかった場合、スループットの低下や先行ウェハに対する処理結果の不具合が生じるおそれがある。このため、ウェハ搬送のタイミングは、好ましくは処理モジュールにおける先行ウェハのレシピの完了前後5秒以内、より好ましくは先行ウェハのレシピの完了と略同時に、今回ウェハが該処理モジュールの前に到着するように制御されることが望ましい。
【0054】
そこで次に、上述した真空処理装置1におけるウェハWの搬送タイミングの制御方法の詳細について説明する。なお、以下の説明においてはCORモジュール61におけるCOR処理の設定時間がt秒、PHTモジュール62におけるPHT処理の設定時間がT秒(t<T)である場合、すなわちPHT処理がCOR処理よりも長く、PHTモジュール62において真空処理装置1における処理が律速する場合を例に説明を行う。
【0055】
図2は、本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御の一連の流れを簡易に示すフロー図である。
図2に示すように、本実施形態にかかる搬送タイミングの制御においては、上述の「ウェハ搬送制御タスク」、「レシピ実行制御タスク」、「レシピ管理タスク」が用いられる。また、
図3はレシピデータベースDBの記録されたレシピ情報の詳細を模式的に示す説明図である。
【0056】
先ず、真空処理装置1におけるウェハWに対する処理の開始に先立ち、ウェハ搬送制御タスクにより最初に処理される2枚のウェハW
1、W
2の搬送計画を構築する(
図2のシーケンスS1)。
【0057】
搬送計画の構築に際しては、2枚のウェハW1、W2に割り当てられたバリアブルデータVを取得する。バリアブルデータVは、ウェハW1、W2に施される各種真空処理の処理ステップ時間毎に設定され、かかる処理ステップの実行時間を任意に調整するために入力される調整値である。このバリアブルデータを変更することにより、任意のウェハWに対する該当処理ステップの実行時間を任意に変更することができる。
【0058】
なお、本実施形態においてはバリアブルデータVの変更によりウェハWに対する該当処理ステップの実行時間を変更する場合を例に説明を行うが、バリアブルデータVは、ウェハWの処理にかかる他の条件、例えばガスの流量や温度等を制御することも可能である。
【0059】
また搬送計画の構築に際しては、該搬送計画が構築されるウェハW1,W2を今回ウェハとして、該ウェハW1、W2よりも前に同レシピが施された先行ウェハ搬送時のレシピ実績時間、及び該先行ウェハに割り当てられたバリアブルデータVを取得する。先行ウェハの実績時間、及びバリアブルデータVは、例えばレシピ管理タスクが、各種レシピの前回実行時における実績時間(処理実測時間)、及びバリアブルデータVが対となって記録されたレシピデータベースDBを参照することで取得される。
【0060】
ウェハW
1、W
2(今回ウェハ)のバリアブルデータV、先行ウェハの実績時間及びバリアブルデータVが取得されると、次に、シーケンスS1で取得された各種データに基づいて、ウェハW
1、W
2にレシピを実行した場合に要するレシピ処理時間を予測する(
図2のシーケンスS2)。
【0061】
具体的には、先行ウェハと今回ウェハとでバリアブルデータVが異なる場合、先行ウェハと今回ウェハのレシピ処理時間はバリアブルデータVの差分で変動する。すなわち、例えば先行ウェハのバリアブルデータVが例えば10秒、今回ウェハのバリアブルデータVが例えば20秒であった場合、今回ウェハに対するレシピ処理時間は、先行ウェハのレシピ処理時間と比較して10秒長くなると予測される。そこで本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御においては、下記(1)式により、今回ウェハのレシピ処理時間を予測する。
【0062】
今回ウェハのレシピ処理時間[秒]=先行ウェハの実績時間[秒]+(今回ウェハのバリアブルデータV[秒]-先行ウェハのバリアブルデータV[秒]) ・・・(1)
【0063】
本実施形態においては、このように先行ウェハと今回ウェハとのバリアブルデータVの差分を考慮して今回ウェハのレシピ処理時間を予測する。そして、このように予測されたレシピ処理時間に基づいて後述するように今回ウェハの搬送タイミングを制御、調整することで、連続して処理されるウェハW間でバリアブルデータVが異なる場合であっても、真空処理装置1における処理のスループット低下を抑制することができる。
【0064】
ウェハW
1、W
2のレシピ処理時間が予測されると、搬送計画が構築された2枚のウェハW
1、W
2の各種処理モジュールへの搬送が開始され(
図2のシーケンスS4)、順次、COR処理及びPHT処理が実行される(
図2のシーケンスS5)。また、この各種処理モジュールへのウェハ搬送に際しては、ウェハ搬送制御タスクからレシピ実行制御タスクにウェハW
1、W
2のレシピ、及び各種処理データに設定されたバリアブルデータVが提供される。なお、ウェハW
1、W
2はロット中で最初に処理されるウェハであるため、
図2のシーケンスS3に示す搬送タイミングの調整は行われない。
【0065】
2枚のウェハW
1、W
2の搬送、及び各種モジュールにおけるレシピが開始されると、次に処理される2枚のウェハW
3、W
4の搬送計画が構築され(
図2のシーケンスS1)、ウェハW
3、W
4のレシピ処理時間を予測する(
図2のシーケンスS2)。
【0066】
ウェハW3、W4の搬送計画の構築方法、及びレシピ処理時間を予測はウェハW1、W2と同様である。すなわち、ウェハW3、W4に割り当てられたバリアブルデータV、レシピデータベースDBに記録された先行ウェハの実績時間、及びバリアブルデータVを取得しした後、上記(1)式に基づいて今回ウェハとしてのウェハW3、W4のレシピ処理時間を予測する。
【0067】
ウェハW
3、W
4のレシピ処理時間が予測されると、構築された搬送計画、及び先行して処理される2枚のウェハW
1、W
2の搬送状態(シーケンスS4)及び処理状態(シーケンスS5)に基づいて、2枚のウェハW
3、W
4の各種処理モジュールへの搬送タイミングが調整される(
図2のシーケンスS3)。
【0068】
2枚のウェハW
1,W
2の搬送、処理状態(シーケンスS4、S5)と、2枚のウェハW
3、W
4の搬送タイミングの調整の関係について、具体的に説明する。
図4は、真空処理装置1におけるウェハ搬送の様子を経時的に示す説明図である。
【0069】
シーケンスS3においてウェハW
1、W
2のレシピ処理時間が予測されると、
図4(a)に示すように、搬送計画が構築された2枚のウェハW
1、W
2がフープ31から取り出されてロードロックモジュール20aを介して一のCORモジュール61に搬入され、t秒のCOR処理が実行される。なお、このCOR処理には
図3のレシピデータベースDBにも示すように複数の処理ステップが含まれている。上述したCOR処理のt秒の処理時間とは、
図3に示すようにこれら複数の処理ステップの合計時間としてのレシピ処理時間を示したものである。
【0070】
2枚のウェハW
1、W
2に対するCOR処理が完了すると、
図4(b)に示すように、2枚のウェハW
1、W
2はPHTモジュール62に搬送される。本実施形態においては、PHT処理がCOR処理よりも長く、PHTモジュール62において処理が律速するため、COR処理が完了した2枚のウェハW
1、W
2は、次に処理される2枚のウェハW
3、W
4を待たずにPHTモジュール62に搬入される。
【0071】
2枚のウェハW
1、W
2がPHTモジュール62に搬入されると、T秒のPHT処理が開始される。このPHT処理のT秒の処理時間とは、
図3に示すように複数の処理ステップの合計時間としてのレシピ処理時間を示したものである。
【0072】
ウェハW1、W2に対するPHT処理が開始されると、次にウェハW3、W4がロードロックモジュール10a、CORモジュール61を介してPHTモジュール62の前まで搬送される。ここで、ウェハW3、W4のPHTモジュール62の前への到着のタイミングは、上述したように好ましくは先行ウェハ(ウェハW1、W2)のPHT処理の完了前後5秒以内、より好ましくは先行ウェハのレシピの完了と略同時であることが望ましい。そこで本実施形態におけるウェハ搬送のタイミング制御においては、下記(2)式に基づいて今回ウェハ(ウェハW3、W4)のフープ31からの搬送開始タイミングを制御する。
【0073】
X=先行ウェハに実行中のレシピの残時間-今回ウェハの対象の処理モジュールの前までの搬送に要する時間 ・・・(2)
【0074】
式(2)中、「先行ウェハに実行中のレシピの残時間」は、例えばPHTモジュール62における2枚のウェハW1、W2に対するPHT処理の残時間を示している。また、「今回ウェハの対象の処理モジュールの前までの搬送に要する時間」は、例えばロードロックモジュール10a、CORモジュール61を介してウェハW3、W4をフープ31からPHTモジュール62の前まで搬送するのに要する時間を示している。
【0075】
そして本実施形態においては、式(2)の算出結果が0以上(X≧0)である場合、すなわちウェハW1、W2に対するPHT処理の残時間がウェハW3、W4の搬送に要する時間よりも大きい場合にはウェハW3、W4の搬送を開始しない。換言すれば、PHTモジュール62の前でウェハW3、W4の待機時間が発生するおそれがある場合にはウェハW3、W4の搬送を開始せず、PHTモジュール62の前でのウェハW3、W4の待機時間が生じなくなるタイミングまでフープ31の内部で待機する。一方、式(2)の算出結果がそれ以外(X<0)である場合、すなわちウェハW3、W4の搬送に要する時間がウェハW1、W2に対するPHT処理の残時間よりも大きい場合にはウェハW3、W4の搬送をただちに開始する。換言すれば、PHTモジュール62の前でウェハW3、W4の待機時間が発生せず、また、PHTモジュール62の内部でウェハW1、W2の待機時間が発生する場合にはウェハW3、W4の搬送を開始する。
【0076】
本実施形態においては、このように先行ウェハに対するレシピの残時間と、今回ウェハの搬送に要する時間とに基づいて今回ウェハの搬送開始タイミングを制御することにより、適切に真空処理装置1におけるスループットの低下を抑制できる。また、この搬送タイミングの調整に用いられるレシピの残時間は、
図2のシーケンスS2で算出された先行ウェハのレシピ処理時間の予測結果に基づいて算出される。すなわち、ウェハWの割り当てられたバリアブルデータVを考慮して算出されたレシピ処理時間の予測結果に基づいて搬送開始タイミングが制御されるため、連続して処理されるウェハW間でバリアブルデータVが異なる場合であっても、真空処理装置1における処理のスループット低下を適切に抑制することができる。
【0077】
2枚のウェハW
3、W
4の搬送タイミングが調整(
図2のシーケンスS3)されると、2枚のウェハW
3、W
4の各種処理モジュールへの搬送、及び処理が開始され(
図2のシーケンスS4、S5)、
図4(c)に示すようにPHTモジュール62の前まで搬送される。
【0078】
そして、ウェハW
1、W
2に対するPHT処理が完了すると、
図4(d)に示すように、PHTモジュール62に対するウェハW
1,W
2の搬出と、ウェハW
3、W
4の搬入が順次行われる。
【0079】
その後、PHTモジュール62から搬出されたウェハW
1、W
2は、
図4(e)に示すようにロードロックモジュール20bを介してCSTモジュール33に搬送される。そしてその後、さらにウェハ搬送機構40によりフープ31に受け渡されることで、ウェハW
1、W
2に対する一連のウェハ処理が終了する。
【0080】
ウェハW
1、W
2に対するウェハ処理が完了すると、該ウェハW
1、W
2の各種処理に実際に要した時間(ウェハW
1、W
2のレシピ実績時間)、及び該ウェハW
1、W
2に割り当てられたバリアブルデータVが、
図2に示したレシピデータベースDBに保存される(
図2のシーケンスS6)。より具体的には、ウェハW
1、W
2のレシピ実績時間、及びバリアブルデータVにより、対象のレシピにかかるレシピデータベースDBのデータを上書き更新する。上書き更新されたレシピデータベースDBの実績時間、及びバリアブルデータVは、次回、同様のレシピによりウェハWの処理が行われる際に参照される。
【0081】
一方、2枚のウェハW
3、W
4の搬送、及び各種モジュールにおけるレシピが開始(
図2のシーケンスS4、S5)されると、
図4(e)に示したように、更に次に処理される2枚のウェハW
5、W
6の搬送計画が構築され(
図2のシーケンスS1)、ウェハW
5、W
6のレシピ処理時間を予測する(
図2のシーケンスS2)。また更に、構築された搬送計画、及び先行して処理される2枚のウェハW
3、W
4の搬送状態(シーケンスS4)及び処理状態(シーケンスS5)に基づいて、2枚のウェハW
5、W
6の各種処理モジュールへの搬送タイミングが調整され(
図2のシーケンスS3)、その後、2枚のウェハW
5、W
6の搬送、及び各種モジュールにおけるレシピが開始(
図2のシーケンスS4、S5)される。
【0082】
そして本実施形態においては、このように1ロット(25枚)のウェハWの全てに対して
図2及び
図4に示した上述の方法と同様の方法によりウェハ搬送、及び処理が行われ、その後、フープ31に全てのウェハW
1~W
25が受け渡されると、真空処理装置1における一連のウェハ処理が終了する。なお、全てのウェハW
1~W
25に対して同様のレシピで処理が行われた場合には、該一連のウェハ処理の終了後、レシピデータベースDBには最後に処理されたウェハW
25の実績時間、及びバリアブルデータVが記録された状態となる。
【0083】
本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御は、以上のようにして行われる。なお、以上の実施形態においては説明の明確化の為、複数のウェハWを一のCORモジュール61、及び一のPHTモジュール62のみを用いて処理を行う場合を例に説明を行った。しかしながら、当然に複数のCORモジュール61、及びPHTモジュール62によりウェハWを並行処理することで、真空処理装置1におけるスループットを向上することができる。
【0084】
以上、本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御方法によれば、任意に入力される調整値(変数)であるバリアブルデータVの変動を考慮して、上記(1)式により真空処理装置1において処理されるウェハWのレシピ処理時間を算出する。これにより、先行ウェハと今回ウェハとでバリアブルデータVが異なる場合であっても、適切に該バリアブルデータVの差分を考慮してウェハWに施される処理ステップ毎の処理時間や、複数の処理ステップの合計時間としてのレシピ処理時間を算出することができる。換言すれば、バリアブルデータVの差分を考慮して今回ウェハに対するレシピの完了タイミングを算出することができ、これにより適切にウェハWの搬送タイミングを決定することができる。
【0085】
そして、このようにウェハWの搬送タイミングを適切に決定することができるため、搬送アーム上における今回ウェハの待機時間、及び、処理モジュールの内部における先行ウェハの待機時間を低減することができる。これにより、特に複数の処理モジュールを並行して用いる場合において、搬送アームがウェハを保持した状態で待機状態となることで、該搬送アームにより他のウェハを搬送できなくなる時間が低減され、真空処理装置1におけるスループットの低下が抑制される。また、処理モジュールの内部で先行ウェハの待機時間が生じることによる、スループットの低下、及び先行ウェハへの過分な処理の進行が抑制される。
【0086】
また、このようにウェハWの搬送タイミングを適切に決定することができるため、一の処理モジュールに対する先行ウェハの搬出と、今回ウェハの搬入を同時に行うことができる。これにより、一の処理モジュールの前へのウェハ搬送機構の移動回数を低減でき、その結果、真空処理装置1におけるスループットの低下が更に適切に抑制される。
【0087】
また、以上の実施形態によれば、ウェハ搬送のタイミング制御に用いられる先行ウェハの実績時間、及びバリアブルデータVが記録されるレシピデータベースDBには、今回ウェハのレシピ実績時間、及びバリアブルデータVが上書きにより記録される。ウェハWに対するレシピ処理時間は、例えば処理モジュールの装置特性の変化等により変化する場合があるが、このようにレシピデータベースDBを上書きにより更新することにより、常に最新の先行ウェハのデータを参照してレシピ処理時間を算出することができる。すなわち、装置特性等の変化を経時的に更新してレシピ処理時間を算出できる。
【0088】
なお、以上の実施形態においてはウェハWの搬送計画は、フープ31から搬出前のウェハWに対して順次構築されたが、ウェハWの搬送計画を構築するタイミングはこれに限定されるものではない。すなわち、上記実施形態においては一連のウェハ処理の全体にわたる搬送計画を構築した後にウェハWの搬送(フープ31からの搬出)を開始したが、ウェハWの搬送計画は、各種処理モジュールに対するウェハWの搬送前にそれぞれ構築されてもよい。具体的には、例えばフープ31の内部で待機するウェハWに対してCORモジュール61に対する搬送計画を構築し、その後、COR処理が行われているウェハWに対しは、改めてPHTモジュール62に対する搬送計画が更に構築されるようにしてもよい。
【0089】
なお、以上の実施形態においては、CORモジュール61におけるCOR処理が、PHTモジュール62におけるPHT処理よりも短い(PHT処理で律速する)場合を例に説明を行った。しかしながら、当然に、COR処理がPHT処理よりも長い(COR処理で律速する)場合や、COR処理とPHT処理の処理時間が同じである場合であっても、本開示の技術にかかるウェハ搬送のタイミング制御を行うことができる。
【0090】
なお、
図3のレシピデータベースDBにも示したように、CORモジュール61におけるCOR処理やPHTモジュール62におけるPHT処理には、複数の処理ステップが含まれている。該処理ステップには、予め定められた設定時間で処理を行う「時間ステップ」と、予め定められた処理結果(例えば温度や圧力等)に到達するまで処理を行う「安定ステップ」とが含まれている。
【0091】
かかる安定ステップにおいては、上述したように先行ウェハと今回ウェハとでバリアブルデータVが異なる場合であっても、予め定められた処理結果が得られるまでの時間を実績時間として使用するため、バリアブルデータVの変動に起因するスループットの低下が生じるおそれは少ない。一方、時間ステップにおいては、上述したように先行ウェハと今回ウェハとでバリアブルデータVが異なる場合には、実際のレシピ処理時間を実績時間として使用するため、バリアブルデータVの変動に起因するスループットの低下が生じるおそれは大きい。
【0092】
そこで、本実施形態にかかるウェハ搬送のタイミング制御においては、ウェハWに施されるレシピに含まれる複数の処理ステップのうち、「時間ステップ」にかかる処理ステップにのみ、上述のタイミング制御が行われてもよい。このようにタイミング制御を行う対象の処理ステップの数を減らすことにより、真空処理装置1における処理の制御を簡易化することができる。ただし、当然に「安定ステップ」にかかる処理ステップに対しても上述のタイミング制御を行ってもよい。
【0093】
なお、以上の実施形態においては、減圧環境下でウェハWに対して処理を行う真空処理装置1におけるウェハ搬送のタイミング制御を行う場合を例に説明を行ったが、複数の処理モジュールに対してウェハWを連続的に搬送して処理を行うものであれば、本開示にかかる技術が適用されるウェハ処理装置の構成は限定されるものではない。すなわち、例えば大気圧化で複数の処理を連続的に行う大気処理装置において、本開示の技術にかかるウェハ搬送のタイミング制御が行われてもよい。
【0094】
また、以上の実施形態においては2枚のウェハWが同時に搬送、処理される2枚葉処理が行われる場合を例に説明を行ったが、例えばウェハWが枚葉処理、又は3枚要以上で処理される場合であっても本開示の技術にかかるウェハ搬送のタイミング制御を適用できる。
【0095】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 真空処理装置
V バリアブルデータ
W ウェハ