IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図1
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図2
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図3
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図4
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図5
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図6
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図7
  • 特許-液処理方法及び液処理装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】液処理方法及び液処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240830BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20240830BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 564D
B05D1/40 A
B05D3/10 H
B05D3/10 F
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020199504
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087527
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】宮窪 祐允
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲平
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-012750(JP,A)
【文献】米国特許第06033589(US,A)
【文献】特開2008-307488(JP,A)
【文献】特開2002-353091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05D 1/40
B05D 3/10
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を基板の表面に供給する工程と、
前記基板を回転させて、供給された前記塗布液を前記基板の表面上で拡散させ、当該表面上に塗布膜を形成する工程と、を含み、
前記塗布膜を形成する工程において前記塗布液が前記基板の表面の周縁部に到達する前から、溶剤供給部から前記周縁部への前記塗布液の溶剤の液柱を形成した状態での連続供給を開始し、少なくとも前記塗布膜を形成する工程が終了するまで継続する、液処理方法。
【請求項2】
前記溶剤液柱が前記周縁部のベベルに接触するように、前記溶剤供給部から前記周縁部への前記溶剤の連続供給を行う、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記塗布膜を形成する工程に続いて、前記基板を回転させて前記塗布膜を乾燥させる工程を含み、
前記溶剤供給部から前記周縁部への前記溶剤の液柱を形成した状態での連続供給は、前記乾燥させる工程においても継続される、請求項1または2に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記乾燥させる工程後、前記溶剤供給部からの前記溶剤により、前記基板の前記表面における、周縁側の予め定められた領域内の前記塗布液を除去する工程を含む、請求項3に記載の液処理方法。
【請求項5】
前記溶剤供給部から前記周縁部への前記溶剤の液柱を形成した状態での連続供給の際、前記除去する工程で前記塗布液が除去される前記領域内に、前記溶剤供給部から前記溶剤が供給される、請求項4に記載の液処理方法。
【請求項6】
前記溶剤供給部から前記周縁部への前記溶剤の液柱を形成した状態での連続供給に引き続いて前記除去する工程を行い、前記溶剤供給部からの前記溶剤の吐出を中断させることなく継続する、請求項4または5に記載の液処理方法。
【請求項7】
基板を保持して回転させる回転保持部と、
前記回転保持部に保持されている前記基板の表面に塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記回転保持部に保持されている前記基板の表面に前記塗布液の溶剤を供給する溶剤供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記塗布液供給部から塗布液を基板の表面に供給する工程と、
前記基板を回転させて、供給された前記塗布液を前記基板の表面上で拡散させ、当該表面上に塗布膜を形成する工程と、が実行され、
前記塗布膜を形成する工程において前記塗布液が前記基板の表面の周縁部に到達する前から、前記溶剤供給部から前記周縁部への前記溶剤の液柱を形成した状態での連続供給が開始され、少なくとも前記塗布膜を形成する工程が終了するまで継続されるように、制御信号を出力する、液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液処理方法及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の基板処理装置は、回転保持部の下方に円板状のカップベースが配置され、カップベースに環状の中カップが取り付けられている。カップベースの中央部には貫通孔が形成され、モータの回転軸が貫通孔を貫通して配設され、その先端に回転保持部が取り付けられている。カップベースには貫通孔に沿って複数の通気孔が形成されている。通気孔は回転保持部の外周部よりも内側に相当する位置に配置されている。回転保持部に保持された基板が高速回転すると、通気孔を通り基板の裏面側に空気が供給され、基板側の裏面側の空間が負圧となることが防止され、それにより基板の裏面側へのミストの回り込みが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-283899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板から振り切られた塗布液による綿状の塊の発生を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、塗布液を基板の表面に供給する工程と、の表面上で拡散させ、当該表面上に塗布膜を形成する工程と、を含み、前記塗布膜を形成する工程において前記塗布液が前記基板の表面の周縁部に到達する前から、溶剤供給部から前記周縁部への前記塗布液の溶剤の液柱を形成した状態での連続供給を開始し、少なくとも前記塗布膜を形成する工程が終了するまで継続する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板から振り切られた塗布液による綿状の塊の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板から振り切られた塗布液が形成する糸状部を模式的に示す図である。
図2】本実施形態にかかる液処理装置としてのレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図3】本実施形態にかかる液処理装置としてのレジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
図4】レジスト塗布装置におけるウェハ処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図5】ウェハ処理に含まれる各工程時のウェハWの様子を概略的に示す図である。
図6】有機溶剤の連続供給時における溶剤供給ノズルの位置の例を示す図である。
図7】確認試験1の結果を示す図である。
図8】確認試験3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板上にレジスト液等の塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布処理が行われる。
【0009】
上述の塗布処理には、回転中のウェハの表面に塗布液を供給し、遠心力により塗布液をウェハの表面上で拡散させ、ウェハの表面全体に塗布液を塗布する、いわゆるスピン塗布法が広く用いられている。スピン塗布法により塗布する液処理装置には、回転するウェハの表面から飛散した塗布液が周囲に飛散することを防止するため、カップと呼ばれる容器が設けられている。また、塗布膜の表面に所望の気流を形成すること等を目的としてカップの底部から排気が行われている。
【0010】
ところで、近年、ウェハの表面上に膜厚の大きい塗布膜を形成することが求められる場合がある。膜厚の大きい塗布膜の形成には、例えば高粘度の塗布液が用いられる。高粘度の塗布液についてスピン塗布法を用いると、ウェハの表面に供給された塗布液の一部が、ウェハの表面周縁から振り切られ、その際、図1に示すように、ウェハWの表面周縁から径方向外方に向けて糸状に引き延ばされて糸状部Hとなる。上記糸状部Hは、さらなるウェハWの回転により、さらに引き延ばされ、乾燥して固化する。固化した上記糸状部Hは、互いに絡まり合い、綿状の塊となる。綿状の塊は、例えば、処理の過程でウェハWから切り離され、液処理装置のカップ内の排気経路を塞ぎ排気を阻害する等、不具合の要因となる。液処理装置のカップ内からの排気が阻害され排気圧が上昇すると、例えば、ウェハ上の塗布膜の表面に所望の気流を形成することができず、膜厚が面内均一となる膜厚分布を得ることができない。
【0011】
そこで、本開示にかかる技術は、ウェハから振り切られた塗布液による綿状の塊の発生を抑制する。
【0012】
以下、本実施形態にかかる液処理方法及び液処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(液処理装置)
図2及び図3は、本実施形態にかかる液処理装置としてのレジスト塗布装置1の構成の概略を示す縦断面図及び横断面図である。
【0014】
レジスト塗布装置1は、図2に示すように内部を密閉可能な処理容器10を有している。処理容器10の側面には、基板としてのウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0015】
処理容器10内には、ウェハWを保持して回転させる回転保持部20が設けられている。回転保持部20は、具体的には、ウェハWを保持し、当該ウェハWの表面に垂直な回転軸周りに、当該ウェハWを回転させる。また、回転保持部20は、ウェハWを保持した状態で回転可能に構成されたスピンチャック21と、モータ等のアクチュエータを有しスピンチャック21を回転させるチャック駆動部22と、を有する。スピンチャック21は、チャック駆動部22により様々な速度(回転数)で回転自在に構成されている。また、チャック駆動部22には、例えばシリンダ等のアクチュエータを有する昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック21は昇降駆動機構により昇降自在に構成されている。
【0016】
また、処理容器10内にはカップ30が設けられている。カップ30は、スピンチャック21に保持されたウェハWを囲み得るように、スピンチャック21の外側に配置されたアウターカップ31と、アウターカップ31の内周側に位置するインナーカップ32と、を含む。アウターカップ31は、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するものである。
【0017】
図3に示すようにアウターカップ31のX方向負方向(図3の下方向)側には、Y方向(図3の左右方向)に沿って延伸するレール40が形成されている。レール40は、例えばアウターカップ31のY方向負方向(図3の左方向)側の外方からY方向正方向(図3の右方向)側の外方まで形成されている。レール40には、2本のアーム41、42が設けられている。
【0018】
第1のアーム41には、塗布液供給部としてのレジスト液供給ノズル43が支持されている。レジスト液供給ノズル43は、スピンチャック21に保持されているウェハWの表面に、塗布液としてレジスト液を供給する。レジスト液供給ノズル43が吐出し供給するレジスト液は、100cp以上の高粘度を有する。第1のアーム41は、レジスト液供給ノズル43に対しての移動機構である、モータ等のアクチュエータを有するノズル駆動部44により、レール40上を移動自在である。これにより、レジスト液供給ノズル43は、アウターカップ31のY方向負方向側の外方に設置された待機部45からアウターカップ31内のウェハWの中心部上方まで移動できる。また、ノズル駆動部44によって、第1のアーム41は昇降自在であり、レジスト液供給ノズル43の高さを調節できる。
【0019】
なお、レジスト液供給ノズル43には、レジスト液の供給源(図示せず)が接続されている。また、レジスト液供給ノズル43と上記レジスト液の供給源とを接続する供給管(図示せず)には、レジスト液の供給源からレジスト液供給ノズル43へのレジスト液の供給を制御するための供給機器群(図示せず)が設けられている。上記供給機器群は、例えば、レジスト液の供給及び供給停止を切り換える供給弁やレジスト液の流量を調節する流量調整弁等を有する。
【0020】
第2のアーム42には、溶剤供給部としての溶剤供給ノズル46が支持されている。溶剤供給ノズル46は、スピンチャック21に保持されているウェハWの表面に、塗布液の溶剤を供給する。溶剤供給ノズル46が供給する溶剤は、例えば、シンナー等の有機溶剤である。第2のアーム42は、溶剤供給ノズル46に対しての移動機構である、モータ等のアクチュエータを有するノズル駆動部47によってレール40上を移動自在となっている。これにより、溶剤供給ノズル46は、アウターカップ31のY方向正方向側の外側に設けられた待機部48から、アウターカップ31内のウェハWの周縁部上方まで移動できる。また、ノズル駆動部47によって、第2のアーム42は昇降自在であり、溶剤供給ノズル46の高さを調節できる。
【0021】
なお、溶剤供給ノズル46には、有機溶剤の供給源(図示せず)が接続されている。また、溶剤供給ノズル46と上記有機溶剤の供給源とを接続する供給管(図示せず)には、有機溶剤の供給源から溶剤供給ノズル46への有機溶剤の供給を制御するための供給機器群(図示せず)が設けられている。上記供給機器群は、例えば、有機溶剤の供給及び供給停止を切り換える供給弁や有機溶剤の流量を調節する流量調整弁を有する。
【0022】
また、溶剤供給ノズル46は、当該溶剤供給ノズル46が吐出した有機溶剤が回転保持部20によるウェハWの回転方向の下流側に向かうように、傾けられて設けられている。言い換えると、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の吐出方向D(図3の太線矢印参照)が、平面視において回転保持部20によるウェハWの回転方向の下流側に向かう方向となるように、溶剤供給ノズル46は傾けられて設けられている。
【0023】
図2に示すように、インナーカップ32とスピンチャック21との間の部分には、洗浄液供給ノズル50が設けられている。洗浄液供給ノズル50は、スピンチャック21に保持されているウェハWの裏面に、洗浄液を供給する。洗浄液供給ノズル50が供給する洗浄液は、例えば、シンナー等の有機溶剤であり、溶剤供給ノズル46が供給する溶剤と同じであってもよい。
【0024】
なお、洗浄液供給ノズル50には、洗浄液の供給源(図示せず)が接続されている。また、洗浄液供給ノズル50と上記洗浄液の供給源とを接続する供給管(図示せず)には、洗浄液の供給源から洗浄液供給ノズル50への洗浄液の供給を制御するための供給機器群(図示せず)が設けられている。上記供給機器群は、例えば、洗浄液の供給及び供給停止を切り換える供給弁や洗浄液の流量を調節する流量調整弁を有する。
【0025】
アウターカップ31の下部には、円筒状の壁体31aが設けられており、インナーカップ32の下部には、円筒状の壁体32aが設けられている。これら壁体31a、32aとの間に排気経路dをなす隙間が形成されている。また、インナーカップ32の下方には、平面視円環状の水平部材33a、円筒状の外周垂直部材33b及び内周垂直部材33c、底部に位置する平面視円環状の底面部材33dによって、屈曲路が形成されている。この屈曲路によって、気液分離部が構成されている。
【0026】
そして、底面部材33dにおける壁体31aと外周垂直部材33bとの間の部分には、回収した液体を排出する排液口34が形成されており、この排液口34には排液管35が接続されている。
【0027】
一方、底面部材33dにおける外周垂直部材33bと内周垂直部材33cとの間の部分には、ウェハWの周辺の雰囲気を排気する排気口36が形成されており、この排気口36には排気管37が接続されている。
【0028】
また、カップ30内には、上述のアウターカップ31の壁体31aとインナーカップ32の壁体32aとの間に設けられた排気経路dの上方を塞ぐように、捕集部材60が設けられている。捕集部材60は、レジスト液が糸状に引き延ばされ固化したものを捕集する部材であり、SUS等の金属製である。また、捕集部材60は、上述のように排気経路dを塞いでいるが、上下方向に連通する開口部61を有しているため、該開口部61を介して排気は可能である。なお、捕集部材60は、例えば、平面視円環状の部材であり、開口部61が等間隔で周方向に沿って並ぶように設けられている。また、捕集部材60は、例えば、その上面が略水平となるようにカップ30内に設けられる。
【0029】
以上のレジスト塗布装置1には、図2に示すように、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、レジスト塗布装置1における各種処理を実現するプログラムが格納されている。例えば、プログラム格納部には、チャック駆動部22、ノズル駆動部44、47、レジスト液供給ノズル43、溶剤供給ノズル46及び洗浄液供給ノズル50それぞれに対し設けられた前述の供給機器群に制御信号を出力し、後述のウェハ処理を実現するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0030】
(ウェハ処理の例)
続いて、レジスト塗布装置1におけるウェハ処理の一例について、図4図6を用いて説明する。図4は、レジスト塗布装置1におけるウェハ処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。図5は、上記ウェハ処理の各工程時のウェハWの様子を概略的に示す図である。図6は、後述の有機溶剤の連続供給時における溶剤供給ノズル46の位置の例を示す図である。なお、以下のウェハ処理は、制御部100の制御の下、行われる。
【0031】
まず、図4に示すように、ウェハWが、処理容器10内に搬入され、回転保持部20のスピンチャック21上に載置され、吸着保持される(ステップS1)。
【0032】
次いで、レジスト液供給ノズル43からウェハWの表面にレジスト液が供給される(ステップS2)。
具体的には、スピンチャック21に保持されたウェハWが回転数ω1(例えば50~150rpm)で回転されると共に、図5(A)に示すように、レジスト液供給ノズル43からウェハWの表面Wsの中心にレジスト液が供給される。これにより、ウェハWの表面Wsの中央領域に、レジスト液の液溜まりが形成される。
【0033】
続いて、ウェハWが回転されて、回転による遠心力でレジスト液がウェハWの表面上で拡散され、当該表面にレジスト膜が形成されると共に、ウェハWの表面の周縁部への、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給が行われる(ステップS3)。
【0034】
具体的には、ステップS2において、レジスト液の液溜まりが形成されレジスト液供給ノズル43からのレジスト液の供給が停止された後、ウェハWが、回転数ω1よりも高い回転数ω2(例えば400~1000rpm)で、回転される。このときの遠心力により、図5(B)に示すように、ウェハWの表面Ws上の塗布液は周縁に向けて拡がる。
【0035】
この拡がったレジスト液がウェハWの表面Wsの周縁部Weに到達する前から上記周縁部Weへの溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給が開始される。具体的には、例えば、レジスト液供給ノズル43からのレジスト液の供給が停止された直後から、上記周縁部Weへの溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給が開始される。これにより、拡散されたレジスト液が上記周縁部Weに到達する時点及びそれ以降の時点で、上記周縁部Weに有機溶剤を存在させることができ、言い換えると、上記周縁部Weを有機溶剤で濡らしておくことができる。そのため、ウェハWの表面Wsの周縁部Weに到達したレジスト液は、有機溶剤と混ざりその粘度が低下する。ウェハWの表面Wsの周縁部We上のレジスト液は、上述のように粘度が低下していれば、表面周縁から振り切られる際に、前述の糸状部H(図1参照)を形成しにくい。したがって、このステップS3の拡散工程及びそれ以降の工程において、ウェハWから振り切られたレジスト液による綿状の塊の発生を抑制することができる。
【0036】
なお、「周縁部」とは、ウェハWの表面における半導体デバイスの形成領域よりも外側の非デバイス形成領域に収まる部分であり、例えば、ウェハWの表面の周縁までの距離が1mm以内となる部分である。
【0037】
また、ウェハWの表面Wsの周縁部Weに有機溶剤を連続供給する際の、溶剤供給ノズル46の位置は、例えば、図6に示すように、当該溶剤供給ノズル46から吐出された有機溶剤が形成する液柱Pが、ウェハWの表面の周縁部のベベルBに接触する位置である。
【0038】
レジスト膜の形成後、ウェハWがさらに回転され、上記レジスト膜が乾燥されると共に、ウェハWの表面の周縁部への、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給が引き続き行われる(ステップS4)。
具体的には、ステップS2により、ウェハWの表面全体(周縁部を除く)にレジスト液を拡散した後、すなわち、ウェハWの表面全体(周縁部を除く)を覆うレジスト膜の形成後、ウェハWが、回転数ω2よりも高い回転数ω3(例えば1000~1500rpm)で、回転される。この回転数ω3でウェハWを所定時間回転させることで、ウェハWの表面上のレジスト膜を乾燥させることができる。
【0039】
この乾燥の際、レジスト膜を形成しているレジスト液が、ウェハWの表面の周縁部に至り、ウェハWの表面周縁から振り切られ前述の糸状部H(図1参照)を形成するおそれがある。それに対し、本例では、この乾燥工程でも、図5(C)に示すように、ウェハWの表面Wsの周縁部Weへの、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給が行われる。具体的には、この乾燥工程の終了まで、上記有機溶剤の連続供給は継続される。そのため、レジスト膜を形成しているレジスト液が、ウェハWの表面の周縁部に到達したときに、有機溶剤と混ざりその粘度が低下する。ウェハWの表面の周縁部上の、レジスト膜を形成していたレジスト液が、上述のように粘度が低下していれば、表面周縁から振り切られる際に、前述の糸状部(図1参照)を形成しにくい。したがって、この乾燥工程において、ウェハWから振り切られたレジスト液による綿状の塊の発生を抑制することができる。
【0040】
乾燥工程後、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤により、ウェハWの表面における、周縁側の予め定められた領域内の塗布液が除去される(ステップS5)。
具体的には、ステップS4の乾燥工程における溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の連続供給に引き続いて、ウェハWの表面における、周縁側の予め定められた領域内の塗布液の除去(以下、「ウェハ表面の周縁除去」ということがある。)が行われる、このウェハ表面の周縁除去への移行の際、溶剤供給ノズル46からの溶剤の吐出は中断されず継続される。また、ウェハ表面の周縁除去の際、ウェハWは、回転数ω2と略同じ回転数ω4で回転される。
なお、ステップS3で開始されたウェハWの表面周縁部への有機溶剤の連続供給時における液柱PのウェハWとの着液位置は、このウェハ表面の周縁除去の領域内で設定される。
また、ステップS3及びステップS4の連続供給は、例えばステップS5のウェハ表面の周縁除去時の有機溶剤の流量を変えずに行ってもよい。
【0041】
さらに、ステップS5では、ウェハWの裏面に回り込んだ塗布液も除去される。
具体的には、上述のように回転数ω4で回転するウェハWの裏面に向けて、洗浄液供給ノズル50から洗浄液が吐出される。これにより、ウェハWの裏面における、洗浄液供給ノズル50から吐出された洗浄液が吐出した部分より外周側の部分に、洗浄液が供給され、ウェハWの表面の周縁から裏面に回り込んだ塗布液も除去される。また、ウェハWの裏面に供給された洗浄液は、ウェハWの裏面の周縁部から振り切られ、捕集部材60に供給される。そのため、捕集部材60に綿状の塊等が捕集されている場合には、この綿状の塊等を溶解除去することができる。
なお、ウェハWの裏面に対する洗浄液供給ノズル50からの洗浄液の吐出位置は、ウェハWの表面に対する溶剤供給ノズル46からの有機溶剤の吐出位置より内側であり、例えば、ウェハWの周縁から径方向内側に80mm~120mm離間した位置である。
【0042】
その後、ウェハWが、スピンチャック21から取り外され、処理容器10から搬出される(ステップS6)。
これにより、レジスト塗布装置1における一連のウェハ処理が終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態にかかるウェハ処理は、レジスト液をウェハWの表面に供給する工程と、ウェハWを回転させて、供給されたレジスト液をウェハWの表面上で拡散させ、当該表面上にレジスト膜を形成する工程(以下、「拡散・形成工程」ということがある。)と、を含む。そして、上記ウェハ処理では、拡散・形成工程においてレジスト液がウェハWの表面の周縁部に到達する前から、溶剤供給ノズル46から上記周縁部への、有機溶剤の連続供給を開始し、少なくとも拡散・形成工程が終了するまで継続する。そのため、拡散・形成工程及びそれ以降の工程において、ウェハWの表面Wsの周縁部We上のレジスト液は、溶剤供給ノズル46から供給された有機溶剤と混ざり合っており、粘度が低いので、表面周縁から振り切られる際に、前述の糸状部H(図1参照)を形成しにくい。したがって、本実施形態にかかるウェハ処理によれば、拡散・形成工程及びそれ以降の工程において、ウェハWから振り切られたレジスト液による綿状の塊が発生するのを、抑制することができる。その結果、綿状の塊に起因した不具合の発生も抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態にかかるウェハ処理では、レジスト膜の形成に必須な工程(例えば、拡散・形成工程)で、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給を並行して行うのみであるため、処理全体に要する時間が長くなることがなく、スループットが低下することがない。
なお、拡散・形成工程時等の有機溶剤の連続供給を、溶剤供給ノズル46からではなく、ウェハWの裏面に洗浄液としての有機溶剤を供給する洗浄液供給ノズル50から行うことも考えられる。しかし、この場合、ウェハWの表面の周縁部に洗浄液供給ノズル50からの有機溶剤を回り込ませることができたとしても、ウェハWの有機溶剤と接触し冷却される部分の面積が広すぎ、膜厚分布に大きく影響する。したがって、本実施形態では、拡散・形成工程時等の有機溶剤の連続供給を、ウェハWの上方に位置する、すなわち、ウェハWの表面側に位置する溶剤供給ノズル46から行うようにしている。
【0045】
さらに、本実施形態にかかるウェハ処理では、拡散・形成工程に続いて行われるレジスト膜の乾燥工程においても、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給は継続される。したがって、乾燥工程においてウェハWから振り切られたレジスト液による綿状の塊が発生するのをより抑制することができる。また、上記有機溶剤の連続要求が、レジスト膜の乾燥工程の終了まで継続されることで、綿状の塊の発生をさらに抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ウェハWの表面の周縁部に有機溶剤を連続供給する際の、溶剤供給ノズル46の位置は、例えば、当該溶剤供給ノズル46から吐出された有機溶剤が形成する液柱Pが、ウェハWの表面の周縁部のベベルBに接触する位置である。これにより、ウェハWの表面の周縁部に供給された有機溶剤のうちベベルB側の部分すなわち外周側の部分は、ベベルに沿って外周に向けて移動する。一方、ウェハWの表面の周縁部に供給された有機溶剤のうち内周側の部分は、有機溶剤自体の表面張力によりベベルB側の部分に引っ張られ、ウェハWの回転による遠心力も作用して同じく外周部に向けて移動する。したがって、溶剤供給ノズル46からの有機溶剤が、ウェハWの表面における供給位置から内周側に向かうのを抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態にかかるウェハ処理では、溶剤供給ノズル46が、当該溶剤供給ノズル46が吐出した有機溶剤が回転保持部20によるウェハWの回転方向の下流側に向かうように、傾けられて設けられている。したがって、溶剤供給ノズル46が吐出した有機溶剤が回転するウェハWに衝突して有機溶剤の飛沫が生じるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、レジスト膜の乾燥工程の終了まで行われた、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給レジスト膜の乾燥工程に引き続いて、同じ溶剤供給ノズル46を用いた、ウェハ表面の周縁除去が行われる。そして、このウェハ表面の周縁除去への移行の際、溶剤供給ノズル46からの溶剤の吐出は中断されず、継続される。したがって、周縁除去への移行を含む周縁除去完了までの期間もレジスト由来の綿状体の発生抑制を絶えず行うことができる。
【0049】
さらに、本実施形態にかかるウェハ処理は、ウェハ表面の周縁除去用の溶剤供給ノズルを有する既存の構成の装置を用いて行うことができる。
また、本実施形態にかかるウェハ処理に用いられるレジスト塗布装置1は、装置構成が簡易であるため、メンテナンスが容易である。
【0050】
<確認試験1>
本発明者らは、本開示にかかるウェハ処理による、綿状の塊の発生の抑制効果を確認する試験を行った。
この確認試験1では、図2及び図3に示した構成のレジスト塗布装置1を用い、カップ30の排気管37からの排気圧(以下、「カップ排気圧」という。)を測定した。
【0051】
実施例では、図4及び図5を用いて説明したウェハ処理を行った。
また、比較例1では、図4及び図5を用いて説明したウェハ処理と以下の点で異なるウェハ処理を行った。すなわち、ステップS2及びステップS3において、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給を行わない点で異なるウェハ処理を行った。
比較例2では、比較例1と同様なウェハ処理を行うと共に、事前に、ウェハWを回転させながらウェハWの裏面に洗浄液供給ノズル50から洗浄液としての有機溶剤を供給し、捕集部材60を有機溶剤で濡らすことを行った。
【0052】
図7は、確認試験1の結果を示す図である。図7において、横軸は、前述のステップS2のレジスト液供給工程を開始してからの経過時間を示し、縦軸は、カップ排気圧を示している。
【0053】
図7に示すように、比較例1では、ステップS4の乾燥工程で、カップ排気圧が最大約120Paとなった。それに対し、実施例では、ステップS4の乾燥工程における、比較例1でカップ排気圧が最大となった時点で、カップ排気圧が約75Paであった。つまり、実施例では、比較例1に比べて、カップ排気圧の上昇を約40%抑制することができる。
また、比較例2では、ステップS4の乾燥工程で、カップ排気圧が最大約100Paとなった。それに対し、実施例では、ステップS4の乾燥工程における、比較例2でカップ排気圧が最大となった時点で、カップ排気圧が約75Paであった。つまり、実施例では、比較例2に比べて、カップ排気圧の上昇を約25%抑制することができる。
【0054】
<確認試験2>
また、本発明者らは、上記実施例における、ウェハ処理後の膜厚分布と、上記比較例1における、ウェハ処理後の膜厚分布とを取得した。
この確認試験2によれば、実施例における、ウェハ処理後の膜厚分布は、上記比較例1における、ウェハ処理後の膜厚分布と変わらなかった。つまり、ステップS2及びステップS3において、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給を行うことによる、レジスト膜の膜厚分布への影響は確認されなかった。
なお、比較例2のように、事前にウェハWの裏面に有機溶剤を供給した場合、ウェハ処理全体に要する時間が長期化するだけでなく、ウェハWの裏面の有機溶剤に触れた部分が冷却される。そして、ウェハWの裏面の有機溶剤に触れる部分は広いため、ウェハWの膜厚分布に影響することが知られている。実施例におけるウェハ処理後の膜厚分布には、そのような傾向は見られなかった。
【0055】
<確認試験3>
この確認試験3では、図2及び図3に示した構成のレジスト塗布装置1を用い、図4及び図5を用いて説明したウェハ処理を、5枚のウェハWに対し連続的に行い、そのときのカップ排気圧を測定した。
【0056】
図8は、確認試験3の結果を示す図である。図8において、横軸は、前述のステップS2のレジスト液供給工程を開始してからの経過時間を示し、縦軸は、カップ排気圧を示している。また、図8には、前述の比較例1の結果も比較のため併せて示されている。
図8に示すように、5枚のウェハWを連続処理した場合に、処理間でカップ排気圧の履歴は殆ど変わらなかった。つまり、本実施形態によるウェハ処理によれば、複数枚のウェハWを連続処理する場合も、カップ排気圧の上昇が安定して抑制できる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
以上の例では、レジスト液の供給を停止した後に、溶剤供給ノズル46からウェハWの表面の周縁部への、有機溶剤の連続供給を開始していたが、レジスト液の供給を停止する前に、上記連続供給を開始してもよい。また、レジスト液の供給開始前から、上記連続供給を開始してもよい。ただし、レジスト液の供給を停止した後に、上記連続供給を開始することで、有機溶剤の消費量を抑えることができる。
【0058】
また、以上の例では、レジスト膜の乾燥工程でも、上記有機溶剤の連続供給を行っていたが、レジスト膜の乾燥工程で、上記有機溶剤の連続供給を省略してもよい。レジスト膜の乾燥工程でも上記有機溶剤の連続供給を行うことで、綿状の塊の発生をより抑制することができる。一方、レジスト膜の乾燥工程で、上記有機溶剤の連続供給を省略することで、有機溶剤の消費量を抑えることができる。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 レジスト塗布装置
20 回転保持部
43 レジスト液供給ノズル
46 溶剤供給ノズル
100 制御部
B ベベル
W ウェハ
We 周縁部
Ws 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8