(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】防眩フィルム積層体、偏光板、およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240830BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240830BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240830BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240830BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240830BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/30
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2022551370
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2021013986
(87)【国際公開番号】W WO2022080801
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0131022
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0134760
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-072540(JP,A)
【文献】特開2016-071085(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0067586(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/30
G09F 9/00
H10K 50/86
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基材;ならびに
バインダ樹脂および有機微粒子および/または無機微粒子を含む防眩層;を含み、
前記防眩層の外部表面に形成された押され部の個数が0.001個/m
2以下であり、
前記押され部は200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有し、
前記防眩層は1~10μmの厚さを有し、
前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子1~10重量部または前記無機微粒子0.1~5重量部を含み、
前記防眩層に含まれるバインダ樹脂はビニル系単量体若しくはオリゴマー又は(メタ)アクリレート単量体若しくはオリゴマーから形成された(共)重合体を含み、
前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して0.3重量部以上のフッ素系添加剤および0.25重量部以上のケイ素系添加剤を含
み、
前記ケイ素系添加剤は、1)ポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体または2)相異なる重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体2種以上を含み、
前記フッ素系添加剤は、フッ素系共重合体またはフッ素及びケイ素を含む共重合体を含む、
防眩フィルム積層体。
【請求項2】
前記高分子基材は10~150μmの厚さを有する、請求項1に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項3】
前記高分子基材の厚さに対して前記防眩層の厚さの比率が0.008~0.8である、請求項1又は2に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項4】
前記押され部でのフッ素(F)/炭素(C)元素間の重量比率が3.0%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項5】
前記防眩層の表面でフッ素(F)/炭素(C)元素間の重量比率が10%以上であり、
ケイ素(Si)/炭素(C)元素間の重量比率が5~15%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項6】
前記防眩層の表面で、前記フッ素(F)およびケイ素(Si)の元素総和/炭素(C)元素の間の重量比率が15~40%である、請求項5に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項7】
前記防眩層に含まれる有機微粒子は1~50μmの断面直径を有し、
前記防眩層に含まれる無機微粒子は1nm~500nmの断面直径を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項8】
前記防眩層の表面で測定した算術平均粗さRaが100nm以下である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の防眩フィルム積層体。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の防眩フィルム積層体を含む、偏光板。
【請求項10】
請求項
9に記載の偏光板を含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防眩フィルム積層体、偏光板、およびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(OELD)、または液晶表示素子(LCD)のような画像表示装置においては、外光の反射または像の映り込みによるコントラストの低下や、視認性の低下を防止することが求められる。このために、光の散乱または光学干渉などを用いて像の映り込みや反射などを減らすために、画像表示装置の表面に反射防止フィルムなどの光学積層フィルムが形成されている。
【0003】
例えば、液晶表示素子などにおいては以前から防眩層を含む光学積層フィルムが一般的に形成されてきた。このような防眩層は主にバインダと、このようなバインダ内に含まれた微粒子を含み、このような微粒子は通常バインダの表面に一部が突出するように凹凸が形成されている。すなわち、前記防眩層は前記バインダ表面に突出した微粒子による表面凹凸を有することにより、光散乱/光反射などを制御して画像表示装置の視認性の低下などを抑制することができる。
【0004】
従来に知られている防眩層を含む光学フィルムの場合、表面に凹凸を形成させるために有機粒子と無機ナノ粒子を共に使用したが、無機ナノ粒子どうしの凝集が発生する問題やまたは有機粒子と無機粒子が不均一に分散する問題が発生した。
【0005】
そのため、有機粒子および無機粒子を使用するにも関わらず、防眩層の光学特性が低下して光散乱/光反射などを制御する防眩特性などが適切に発現することができず、既存のコート層に比べて低いコート厚さによって光の反射が周辺部より減少して黒点として視認される押され不良が発生し得るため改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を実現し、高い耐摩耗性および耐スクラッチ性などの機械的物性を有する防眩フィルム積層体を提供する。
【0007】
また、本発明は、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を実現し、高い耐摩耗性および耐スクラッチ性などの機械的物性を有する偏光板を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記防眩フィルム積層体を含む液晶パネルおよびディスプレイ装置をそれぞれ提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、高分子基材;ならびにバインダ樹脂および前記バインダ上に分散している有機微粒子または無機微粒子を含む防眩層;を含み、
前記防眩層の外部表面に形成された押され部の個数が0.001個/m2であり、
前記押され部は200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する、防眩フィルム積層体が提供され得る。
【0010】
また、本明細書では、前記防眩フィルム積層体を含む偏光板が提供される。
【0011】
また、本明細書では、前記偏光板を含むディスプレイ装置が提供される。
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態による防眩フィルム積層体、偏光板、およびディスプレイ装置についてより具体的に説明する。
【0013】
本明細書で、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0014】
また、(メタ)アクリル[(meth)acryl]はアクリル(acryl)およびメタクリル(methacryl)の両方をすべて含む意味である。
【0015】
また、中空構造の無機ナノ粒子とは、無機ナノ粒子の表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0016】
また、(共)重合体は共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)の両方をすべて含む意味である。
【0017】
発明の一実施形態によれば、高分子基材;ならびにバインダ樹脂および前記バインダ上に分散している有機微粒子または無機微粒子を含む防眩層;を含み、
前記防眩層の外部表面に形成された押され部の個数が0.001個/m2であり、
前記押され部は200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する、防眩フィルム積層体が提供され得る。
【0018】
本発明者らは、防眩層に含まれる有機微粒子および/または無機微粒子の分散および分布を調節して、200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部が前記防眩層の外部表面に0.001個/m2以下に存在する防眩フィルム積層体を製造した。
【0019】
そして、このような防眩フィルム積層体が200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部が前記防眩層の外部表面に0.001個/m2以下に存在することにより、前記防眩フィルム積層体は相対的に低いヘイズ値を有しながらも高いコントラスト比および均一でかつ良好な像鮮明度を実現することができる。
【0020】
前記防眩層および/または偏光板はA光源下での透過率が90%以上、ヘイズが1.5%以下または1.2%以下であり得る(測定機器HM-150,測定規格JIS K 7105)。
【0021】
上述した防眩層の特性は前記防眩層を形成するためのコーティング組成物から溶媒を除いた固形分の含有量や防眩層の形成時に使用する有機溶媒の種類などを特定することによるものであり得る。
【0022】
より具体的には、前記防眩層を形成するためのコーティング組成物から溶媒を除いた固形分の含有量は25~40重量%または30~35重量%であり得る。上述した範囲で前記防眩層を形成するためのコーティング組成物の固形分含有量が調節されることにより、前記防眩層の形成時に有機微粒子または無機微粒子の流動が円滑であり、そのためこれらの凝集体が多数発生して上述した押され部が現れる現象を防止することができる。
【0023】
また、前記防眩層を形成するためのコーティング組成物は特定の混合溶媒を含むことができる。前記有機溶媒はアルコールおよび非アルコール類の有機溶媒を含むことができ、より具体的には、前記有機溶媒はn-ブチルアセテート、n-ブタノールなどのアルコールおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類の溶媒を含むことができる。
【0024】
前記有機溶媒はn-ブチルアセテートおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類溶媒を1:1.2~1:7の重量比、または1:1.3~1:5の重量比で含むことができる。
【0025】
また、前記有機溶媒はn-ブチルアセテートおよびn-ブタノールなどのアルコールを1:0.5~1:3の重量比、または1:1~1:2の重量比で含むことができる。
【0026】
上述した有機溶媒を使用することにより、前記防眩層の形成時に有機微粒子または無機微粒子の流動が円滑であり、そのため前記有機微粒子または無機微粒子が分布しないことにより現れる前記押され部が実質的に生成されない。
【0027】
また、200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部が前記防眩層の外部表面に形成される頻度や形成されるか否かは、前記防眩層に含まれるバインダ樹脂の成分および前記有機微粒子または無機微粒子の流動や分布様相によるものであり得る。
【0028】
なお、前記防眩層に含まれるバインダ樹脂は光硬化性樹脂を含むことができる。前記光重合性化合物の具体的な例としてはビニル系単量体またはオリゴマーや(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーから形成された(共)重合体が挙げられる。
【0029】
また、前記防眩層はケイ素系添加剤およびフッ素系添加剤をさらに含むことができる。
【0030】
このようなケイ素系添加剤およびフッ素系添加剤の分布様相によって、200μm~600μmの直径を有し、前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部の形成の有無や前記押され部が防眩層の外部表面に形成される比率などが変わり得る。
【0031】
より具体的に、前記防眩層内で有機微粒子または無機微粒子の周囲にケイ素系添加剤およびフッ素系添加剤が存在する比率が低くなる場合、防眩層に含まれる成分間の相容性が低下するか、溶媒の早い揮発によるレベリング性の不足により前記有機微粒子または無機微粒子が十分に凝集するかまたは適正距離内に位置することが難しく、前記防眩層の外部表面に上述した押され部が現れる頻度または単位面積あたり個数が大きく増加し得る。
【0032】
前記防眩層からケイ素系添加剤および/またはフッ素系添加剤が十分に存在しない領域で前記押され部が発生する可能性が高く、そのため前記押され部では前記ビニル系単量体またはオリゴマーや(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーから形成された(共)重合体に含まれる炭素に対してフッ素系添加剤に含まれるフッ素の元素の重量比率が大幅に低下し得る。
【0033】
より具体的には、前記押され部でのフッ素(F)/炭素(C)元素間の重量比率が3.0%または2.5%以下であり得る。
【0034】
前記防眩層の表面でのフッ素(F)/炭素(C)元素間の重量比率やケイ素(Si)/炭素(C)元素間の重量比率が大きく限定されるものではないが、前述したように前記防眩層はケイ素系添加剤およびフッ素系添加剤をさらに含むことにより前記押され部を除いた前記防眩層の表面ではフッ素(F)/炭素(C)元素間の重量比率が10%以上であり得、ケイ素(Si)/炭素(C)元素間の重量比率が5~15%であり得る。
【0035】
また、前記防眩層の表面で、前記フッ素(F)およびケイ素(Si)の元素総和/炭素(C)元素の間の重量比率が15~40%、または20~35%であり得る。
【0036】
なお、前記防眩層に含まれるケイ素系添加剤および/またはフッ素系添加剤の含有量が大きく限定されるものではないが、上述した押され部が現れる頻度または単位面積あたり個数が大きく増えないためにはこれらを所定の含有量以上で含むことが求められる。
【0037】
例えば、前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して前記フッ素系添加剤0.3重量部以上、または0.4重量部以上、または0.3~2重量部を含むことができる。
【0038】
また、前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して前記ケイ素系添加剤0.25重量部以上、または0.26重量部以上、または0.25~2重量部を含むことができる。
【0039】
前記ケイ素系添加剤の例としてはポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体、またはより具体的にはポリエーテル-改質されたヒドロキシ官能性ポリシロキサンが挙げられる。
【0040】
前記ポリエーテル-改質されたヒドロキシ官能性ポリシロキサンは、例えばケイ素-炭素結合またはケイ素-酸素-炭素結合により付着した1個以上のポリエーテル基によって改質された線状または分枝状ポリシロキサンを含むことができる。ポリエーテルの例はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびその組み合わせを含む。ポリエーテル改質されたヒドロキシ官能性ポリシロキサンの例は、特にエボニック(Evonik)から製品名TEGO(登録商標) Glide 440ポリエーテル-改質されたポリシロキサン、TEGO(登録商標) Glide 410ポリエーテル-改質されたポリシロキサン、TEGO(登録商標) Glide 270ポリエーテル-改質されたポリシロキサン、およびTEGO(登録商標) Glide 425ポリエーテル-改質されたポリシロキサンとして商業的に入手可能な製品などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、前記フッ素系添加剤の例としてはフッ素系共重合体あるいはフッ素系とケイ素系が混ざった共重合体が挙げられ、このような商用品の例としては、F444、RS-907、RS-922、RS-759(製造会社:DIC)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記ケイ素系添加剤は相異なる2種以上がケイ素系添加剤を含み得、より具体的には相異なる重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体2種以上を含むことができる。この時、相異なる重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体2種間の重量平均分子量の差は50以上であり得る。
【0043】
前記ケイ素系添加剤が相異なる重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体2種以上を含む場合、相対的に高い重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体が表面に浮上してスリップ(Slip)性および表面レベリング(levelling)を付与することができ、相対的に低い重量平均分子量を有するポリエーテル-改質されたポリシロキサン共重合体は前記バインダ上に分散している有機微粒子または無機微粒子の間で濡れ性および流れ性を良好にし、かつこれらが表面に浮上しようとする現象を最小化することができる。
【0044】
そのため、前記防眩層の形成時に有機微粒子または無機微粒子の流動が円滑であり、かつこれらの表面を浮上するかまたは内部に凝集するなどの現象を防止することができ、そのためこれらの凝集体が多数発生して上述した押され部が現れる現象を防止することができる。
【0045】
前述したように、前記防眩層に含まれるバインダ樹脂は光硬化性樹脂を含むことができる。前記光硬化性樹脂は紫外線などの光が照射されると重合反応を起こし得る光重合性化合物の(共)重合体を意味する。
【0046】
前記光重合性化合物の具体的な例としては、ビニル系単量体またはオリゴマーや(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーから形成された(共)重合体が挙げられる。
【0047】
前記光硬化性樹脂の例としては、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシレートトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチルプロピルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体からなる群;から形成された重合体または共重合体や、エポキシ基、脂環式エポキシ基、グリシジル基、エポキシ基またはオキセタン基を含むエポキシ基を含むエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0048】
前記バインダ樹脂は上述した光硬化性樹脂とともに重量平均分子量が10,000g/mol以上の(共)重合体(以下、高分子量(共)重合体という)をさらに含むことができる。前記高分子量(共)重合体は、例えば、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマーおよびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選択される1種以上のポリマーを含むことができる。
【0049】
なお、前記高分子基材は10~150μm、20~120μm、または30~100μmの厚さを有することができる。前記高分子基材の厚さが10μm未満の場合は柔軟性が落ちて工程を制御することが難しい。また、前記高分子基材が過多に厚い場合は高分子基材の透過率が減少して光学物性が低下し得、それを含む画像表示装置を薄膜化することが難しいという問題がある。
【0050】
前記防眩層は1~10μmの厚さを有することができる。前記防眩層の厚さが過度に薄いと、フィルムの硬度が低くなるか耐スクラッチ特性が低下して光学積層体の最外部フィルムとしての使用に適合しない。前記防眩層の厚さが過度に厚いと、フィルムに反りが発生し、屈曲特性が悪くなりフィルムが折れやすく、そのためロール工程時のフィルム走行が難しい。
【0051】
一方、前記高分子基材の厚さに対して前記防眩層の厚さの比率が0.008~0.8、または0.01~0.5であり得る。前記前記高分子基材の厚さに対して前記防眩層の厚さの比率が過度に小さいと基材の表面を防眩層が十分に保護できず、鉛筆硬度など機械物性の確保が難しい。また、前記高分子基材の厚さに対して前記防眩層の厚さの比率が過度に大きいと、積層体の柔軟性が減って耐クラック性が不足し得る。
【0052】
前記高分子基材の具体的な成分は大きく限定されるものではないが、所定の光透過度とともに耐湿特性を確保するために前記高分子樹脂は(メタ)アクリレート樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0053】
前記防眩フィルム積層体で、40℃、湿度100%条件で24時間の間測定した前記高分子基材の水分透過量が150g/m2以下、100g/m2以下、または75g/m2以下、または5~75g/m2であり得る。
【0054】
より具体的には、前記高分子基材は40℃、湿度100%条件で24時間の間の水分透過量を測定した時(測定機器lab think社製水分蒸気透過性試験装置(Water Vapor Permeability Tester))、水分透過量が150g/m2以下、100g/m2以下、または75g/m2以下、または5~75g/m2であり得る。
【0055】
なお、前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して前記有機微粒子1~10重量部、または2~8重量部、または3~6重量部を含むことができる。
【0056】
また、前記防眩層は前記バインダ樹脂100重量部に対して前記無機微粒子0.1~5重量部、または0.2~4重量部、または0.3~3重量部、または0.5~1重量部を含むことができる。
【0057】
前記防眩層において前記バインダ樹脂に対して前記有機微粒子または無機粒子の含有量が過度に小さいと、外部光の散乱/反射などが適切に制御できず、防眩特性が大きく低下し得、乾燥時に粒子の安定性が急激に低下して数百μm大きさの突起が生成され得るため光学特性の確保が難しい。
【0058】
また、前記高分子基材において前記バインダ樹脂に対して前記粒子の含有量が過度に高いと、透過イメージ光の屈折が増加して光学フィルムの像鮮明度が大きく低下し得、重なった粒子が多く生じて微細突起が増加するか、白濁が発生するかフィルムのブラック鮮明度が低下し得る。
【0059】
前記有機または無機微粒子の粒径は具体的に限定されるものではない。
【0060】
前記防眩層に含まれる有機微粒子はミクロン(μm)スケールであり得、前記防眩層に含まれる無機微粒子はナノ(nm)スケールであり得る。本明細書で、ミクロン(μm)スケールとは、1mm未満、すなわち、1000μm未満の粒子の大きさまたは粒径を有することをいい、ナノ(nm)スケールとは1μm未満、すなわち、1000nm未満の粒子の大きさまたは粒径を有することをいい、サブ-ミクロン(sub-μm)スケールとはミクロンスケールまたはナノスケールの粒子の大きさまたは粒径を有することをいう。
【0061】
より具体的には、前記有機微粒子は1~50μm、または1~10μmの断面直径を有することができる。また、前記無機微粒子は1nm~500nm、または1nm~300nmの断面直径を有することができる。
【0062】
前記ハードコート層に含まれる有機または無機微粒子の具体的な例は限定されるものではないが、例えば前記有機または無機微粒子はアクリル系樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂およびナイロン樹脂からなる群から選択される有機微粒子であるか酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される無機微粒子であり得る。
【0063】
なお、前記防眩フィルム積層体はバインダ樹脂および有機微粒子または無機微粒子を含む防眩層を含み、前記防眩層の外部表面に形成された押され部の個数が0.001個/m2以下でありながらも、相対的に低い算術平均粗さRaを有して均一でかつ滑らかな表面特性を有することができる。
【0064】
これは前記有機微粒子および/または無機微粒子が前記防眩層内で均一に分布することにより、凝集などによる表面が不均一になるか表面粗さが大きくなる現象が防止されることによるものと見られる。
【0065】
従来に知られている防眩層を含む光学フィルムは、有機粒子と無機ナノ粒子を共に使用して表面に凹凸を形成させてこれにより防眩特性を確保していたが、前記防眩フィルム積層体は相対的に低い算術平均粗さRaを有しながらも防眩性を実現することができ、前述したように高い耐スクラッチ性および高い像鮮明度もまた確保することができる。
【0066】
より具体的には、前記防眩層の表面で測定した算術平均粗さRaは200nm以下、100nm以下、または10nm~100nm、または50nm~98nm、または60nm~96nmであり得る。
【0067】
前記算術平均粗さRaは測定装置または公知の測定基準(JIS、ISOなど)によって求めることができる。また、前記算術平均粗さRaは前記防眩層の表面で任意に選択した2ヶ所以上の310μm×230μmの面積領域で測定して得ることができ、後述するように前記防眩層の表面で310μm×230μmの面積領域の6ヶ所以上に対して任意に選択して算術平均粗さRaを測定し、これを10回繰り返した結果から得ることもできる。
【0068】
また、前記防眩フィルム積層体は上述した算術平均粗さRaを有しながらも、防眩性を実現できる水準のヘイズを実現すれば、高い耐スクラッチ性および高い像鮮明度を確保することができる。
【0069】
前記防眩層の表面で測定した算術平均粗さRaは接触式粗さ測定器または非接触式粗さ測定器(例えば、光学表面プロファイラ(3D光学表面プロファイラー)など)を用い得、具体的にはナノシステム社のOptical profiler system NV-2700などの装置を用いることができる。
【0070】
前記防眩層の表面で測定した算術平均粗さRaの測定に関連する基準は、接触式粗さ測定器の場合、JIS B 0601-2001に従い、非接触式粗さ測定器の場合は用いた装置で採用する基準(例えば、ISO 25178等)に従う。
【0071】
なお、前記実施形態の防眩フィルム積層体は、前記防眩層の一面に形成され、380nm~780nm波長領域での屈折率が1.20~1.60である低屈折層をさらに含むことができる。
【0072】
前記380nm~780nm波長領域での屈折率が1.20~1.60である低屈折層は、バインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した有機微粒子または有機微粒子を含み得、選択的に光反応性官能基を有する含フッ素化合物および/または光反応性官能基を有するケイ素系化合物をさらに含むことができる。
【0073】
前記バインダ樹脂は多官能(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含む(共)重合体を含み、このような繰り返し単位は、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などの多官能(メタ)アクリレート系化合物に由来したものであり得る。
【0074】
前記含フッ素化合物またはケイ素系化合物に含まれる光反応性官能基は(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含むことができる。
【0075】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環式化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ脂肪族化合物またはヘテロ脂肪族環式化合物;iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つのケイ素に1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選ばれた1種以上の化合物であり得る。
【0076】
前記低屈折層は中空型無機ナノ粒子、ソリッド型無機ナノ粒子および/または多孔性無機ナノ粒子を含むこともできる。
【0077】
前記中空型無機ナノ粒子は200nm未満の最大直径を有してその表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。前記中空型無機ナノ粒子は1~200nm、または10~100nmの数平均粒径を有する無機微細粒子からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。また、前記中空型無機ナノ粒子は1.50g/cm3~3.50g/cm3の密度を有することができる。
【0078】
前記中空型無機ナノ粒子は表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記中空型無機ナノ粒子の表面に上述した反応性官能基を含有することにより、より高い架橋度を有することができる。
【0079】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は0.5~100nmの数平均粒径を有するソリッド型無機微細粒子からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0080】
前記多孔性無機ナノ粒子は0.5~100nmの数平均粒径を有する無機微細粒子からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0081】
前記低反射層は前記(共)重合体100重量部に対して前記無機ナノ粒子10~400重量部;および前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物および/またはケイ素系化合物20~300重量部を含むことができる。
【0082】
なお、発明の他の実施形態によれば、前記防眩フィルム積層体を含む偏光板が提供されることができる。
【0083】
前記偏光板は前記防眩フィルム積層体を偏光子保護フィルムとして含むことができる。そのため、前記偏光板は偏光子と前記偏光子の一面上に形成される前記防眩フィルム積層体と前記光学積層体と対向するように前記偏光子の他の一面で形成される第2偏光子保護フィルムを含むことができる。
【0084】
前記第2偏光子保護フィルムは前記防眩フィルム積層体に含まれた高分子基材であるかPETなどのエステル樹脂フィルム、TACなどのセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、COPフィルムなどであり得る。
【0085】
前記実施形態の偏光板は偏光子を含む。前記偏光子は当該技術分野に良く知られた偏光子、例えばヨードまたは二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。この時、前記偏光子はポリビニルアルコールフィルムにヨードまたは二色性染料を染着させて延伸して製造されるが、その製造方法は特に限定されない。
【0086】
一方、前記偏光子がポリビニルアルコールフィルムである場合、ポリビニルアルコールフィルムはポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば特に制限なく使用が可能である。この時、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるものではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。または、前記ポリビニルアルコールフィルムは当該技術分野において偏光子製造に一般的に使用される市販されるポリビニルアルコールフィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM3000、M6000などを使用することができる。
【0087】
一方、前記ポリビニルアルコールフィルムは、これに限定されるものではないが、重合度が1000~10000または1500~5000であり得る。重合度が前記範囲を満たすとき、分子の動きが自由で、ヨードまたは二色性染料などと柔軟に混合されることができる。また、前記偏光子の厚さは40μm以下、30μm以下、20μm以下、1~20μm、または1μm~10μmであり得る。この場合、前記偏光子を含む偏光板や画像表示装置などのデバイスの薄型軽量化が可能である。
【0088】
前記偏光板は前記偏光子と前記防眩フィルム積層体の高分子基材の間に位置して0.1μm~5μmの厚さを有する接着層;をさらに含むことができる。
【0089】
前記接着層には前記接着剤としては当該技術分野で使用される多様な偏光板用接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、陽イオン系またはラジカル系接着剤などが制限なく使用されることができる。
【0090】
本発明のまた他の実施形態によれば、上述した防眩フィルム積層体または偏光板を含むディスプレイ装置が提供されることができる。
【0091】
前記ディスプレイ装置の具体的な例は限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であり得る。
【0092】
一例として、前記ディスプレイ装置は互いに対向する1対の偏光板;前記1対の偏光板の間に順次積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であり得る。
【0093】
前記ディスプレイ装置で前記防眩フィルム積層体または偏光板はディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外郭の表面に備えられる。
【0094】
また、他の一例として、前記ディスプレイ装置は表示パネル;および前記表示パネルの少なくとも一面に位置する前記偏光板を含むことができる。
【0095】
前記ディスプレイ装置は液晶パネルおよび前記液晶パネルの両面にそれぞれ備えられた光学積層体を含む液晶表示装置であり得、この時、前記偏光板のうち少なくとも一つが前述した本明細書の一実施態様による偏光子を含む偏光板であり得る。
【0096】
この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されないが、例えば、ねじれネマティック(TN;twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、強誘電性(F;ferroelectic)型または高分子分散(PD;olymer dispersed)型のような受動行列方式のパネル;二端子型(two terminal)または三端子型(three terminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルがすべて適用することができる。
【発明の効果】
【0097】
本発明によれば、高いコントラスト比および優れた像鮮明度を実現して高い耐摩耗性および耐スクラッチ性などの機械的物性を有する防眩フィルム積層体と、前記防眩フィルム積層体を含む偏光板と、前記偏光板を含む液晶パネルおよびディスプレイ装置が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】比較例1の防眩フィルム積層体の表面で確認される押され部の形状を確認した電子顕微鏡写真(*100倍)である。
【
図2】Optical Profiler NewView 7300装備を用いて比較例1の防眩フィルム積層体の表面に存在する押され部に対する平面分析結果を示すものである。
【
図3】Optical Profiler NewView 7300装備を用いて比較例1の防眩フィルム積層体の表面に存在する押され部に対する断面分析結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0100】
[実施例1及び2ならびに比較例1~4:防眩フィルム積層体の製造]
【0101】
(1)防眩層形成用コーティング組成物の製造
下記表1に記載された成分を混合して防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
【0102】
【0103】
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
PETA:ペンタエリトリトールトリアクリレート
EB220:6官能ポリウレタンアクリレートオリゴマー(SK Cytec)
I-184:開始剤(Irgacure 184、Ciba社)
有機微粒子:XX-103BQ(2.0μm 1.515)、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートの共重合粒子(積水化成品工業社製品)
MA-ST(MeOH中の30%):大きさ10~15nmのナノシリカ粒子がメタノールに分散した分散液(日産化学社製品)
T440:TEGO(登録商標) Glide 440ポリエーテル-改質されたポリシロキサン(Tego Evonik社製品)
T270:TEGO(登録商標) Glide 270ポリエーテル-改質されたポリシロキサン(Tego Evonik社製品)
F444:メガパックF444(DIC株式会社製造:パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物:常温常圧で液相)
IPA:イソプロピルアルコール
n-BuOH:n-ブタノール
MIBK:メチルイソブチルケトン
n-BA:n-ブチルアセテート
【0104】
(2)防眩フィルム積層体の製造
PETフィルム(東洋紡社製品:厚さ80μm)上に前記製造された防眩層形成用コート液それぞれを#12番マイヤーバー(mayer bar)でコートした後40℃の温度で2分乾燥し、UV硬化して防眩層(コーティングの厚さは4μm)を形成した。UV硬化時、UVランプはH bulbを用い、窒素雰囲気下で硬化反応を行い、硬化時に照射されたUV光量は150mJ/cm2である。
【0105】
(3)前記防眩層の外部表面に形成された押され部の個数の確認
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルム積層体の表面に対して自動検査機(製品名:境界透過自動検査機/製造会社:Next Eye)および電荷結合素子(CCD)カメラを用いてモニタリングした。この際、防眩フィルム積層体の表面に対する反射および透過モードを総合して白点および黒点に分かれて記録され、押されは黒点でマーキングされる。
【0106】
そして、速度5~10m/minの低速状態ですべての面を三波長下で照らしながら肉眼検査をして防眩層で200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する領域を押され部と確定した。
【0107】
そして、
図2および3のように、Optical Profiler NewView 7300装備を用いて防眩フィルム積層体の表面に存在する押され部に対する平面および断面分析を行った。
【0108】
[実験例:防眩フィルム積層体の物性測定]
1.防眩フィルム積層体のヘイズ評価
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルム積層体から4cm×4cmの試験片を準備してヘイズ測定器(HM-150,A光源、村上社)で3回測定して平均値を計算し、これを全体ヘイズ値として算出した。測定時、透光度とヘイズは同時に測定され、透光度はJIS K 7361規格、ヘイズはJIS K 7136規格によって測定した。
【0109】
2.防眩フィルム積層体での元素含有量分析
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルム積層体に対してXPS装置(モデル名:K-Alpha Thermo Fisher Scientific)を用いてCAE(Constant Analyzer Energy)モードでサーベイ(survey)スペクトルおよびナロースキャン(narrow scan)スペクトルを得てフッ素(F)、炭素(C)およびケイ素(Si)の含有量(確認された成分のナロースキャンデータで各ピークの面積を求めて含有量を測定)を測定した。
【0110】
3.防眩フィルム積層体の算術平均粗さRaの測定
前記実施例および比較例それぞれで得られた防眩フィルム積層体に対して、ナノシステム社のOptical profiler system NV-2700を用いてWSI(White Scanning interferometer)モードで310μm×230μm領域で表面形状と粗さを6ヶ所以上測定してこれを10回繰り返して算術平均粗さRaを得た(測定基準はNV-2700装置で採用したものに従う)。
【0111】
4.耐スクラッチ性の測定
耐スクラッチ測定機器(KPD-301、キベイエンティ)を用いてスチールウール(#0000)に荷重をかけて幅2.5cm、長さ13cmの区間を27rpmの速度で10回往復して実施例および比較例から得られた反射防止フィルムの表面を擦った。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチ1個の以下が観察される最大荷重を測定した。
【0112】
【0113】
前記表2に示すように、実施例の防眩フィルム積層体の表面には200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部が実質的に形成されていないことが確認された。そして、このような実施例の防眩フィルム積層体は、高い耐スクラッチ性を有しながらも防眩性が実現することができる水準のヘイズおよび高い像鮮明度を実現することが確認された。
【0114】
これに対して、比較例の防眩フィルム積層体では200μm~600μmの直径を有して前記防眩層の平均厚さの80%以下の厚さを有する押され部が0.01個/m2以上示されることが確認され、このような比較例の防眩フィルム積層体が低い水準の耐スクラッチ性や相対的に低い像鮮明度を示すことが確認された。