(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】走行体
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20240902BHJP
B60R 21/34 20110101ALI20240902BHJP
【FI】
B60R21/0136
B60R21/34
(21)【出願番号】P 2021042567
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】関 隼人
(72)【発明者】
【氏名】紺屋 秀之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕文
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195700(WO,A1)
【文献】特開2001-228919(JP,A)
【文献】米国特許第09120447(US,B1)
【文献】特開2017-200790(JP,A)
【文献】特開昭55-044481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/0136
B60R 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段が設けられた本体と、
前記走行手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に電力又は燃料を供給する供給源と
、
安全装置とを備え
、
前記安全装置
は、
前記本体に設けられた被装着部に装着する装着部と、
人が力を加える操作部とを有し、
前記装着部を前記被装着部に装着することによって前記本体に取り付けられ、
前記本体に取り付けられた状態において前記人により前記操作部に所定以上の前記力が加えられると、前記装着部が前記被装着部から脱落し、
前記被装着部から前記装着部が脱落したときに前記走行手段を停止させ
、
前記操作部は、前記人の脚が届く範囲かつ前記本体の進行方向正面に配置されることを特徴とする
走行体。
【請求項2】
走行手段が設けられた本体と、
前記走行手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に電力又は燃料を供給する供給源と、
安全装置とを備え、
前記安全装置は、
前記本体に設けられた被装着部に装着する装着部と、
人が力を加える操作部とを有し、
前記装着部を前記被装着部に装着することによって前記本体に取り付けられ、
前記本体に取り付けられた状態において前記人により前記操作部に所定以上の前記力が加えられると、前記装着部が前記被装着部から脱落し、
前記被装着部から前記装着部が脱落したときに前記走行手段を停止させ、
前記操作部が前記人の脚が届く範囲に配置されており、
さらに、前記操作部の地面からの高さを調節する調節機構を
有することを特徴とする
走行体。
【請求項3】
前記装着部が前記被装着部に装着されたときに前記駆動手段と前記供給源とを接続する回路を繋げ前記走行手段を駆動可能とし、前記装着部が前記被装着部から脱落したときに前記回路の繋がりを断ち前記走行手段を停止させることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の
走行体。
【請求項4】
前記安全装置は、前記装着部が前記被装着部から脱落したときに落下することを特徴とする請求項1
から請求項
3のいずれか一項に記載の
走行体。
【請求項5】
前記操作部は柔軟性を有することを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の
走行体。
【請求項6】
前記操作部は球状又は半球状であり、直径が10cm以上30cm以下であることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の
走行体。
【請求項7】
前記装着部が一方の磁石を備え、前記被装着部が前記一方の磁石と対となる他方の磁石を備え、前記一方の磁石と前記他方の磁石との密着により前記装着部が前記被装着部に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の
走行体。
【請求項8】
前記装着部が一方の弾性体を備え、前記被装着部が前記一方の弾性体と対となる他方の弾性体を備え、前記一方の弾性体と前記他方の弾性体との嵌合により前記装着部が前記被装着部に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の
走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体を緊急停止させる安全装置、及び当該安全装置を備えた走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業における人との協調作業を伴う自律走行型又は自動追従型のロボット等の走行体の開発が盛んに取り組まれている。それらの走行体は、周囲の人の安全を守るため、より適切な運用が可能であることが求められている。
ここで、特許文献1には、車台に設けた昇降装置の昇降機構の昇降動作領域に隣接して柱状アンテナを立設し、柱状アンテナに隣接して非常停止ボタンを配置した自律走行車両が開示されている。
また、特許文献2には、塵芥を収容するボデーの後部に、後面部に塵芥投入口を有するホッパーを上方に回動(ダンプ)可能に装着し、該ホッパー内に投入塵芥を掻き上げボデー内に押し込む塵芥積込装置を装備し、作業員の手或は衣服等がまき込まれた場合等、即座に塵芥積込装置の作動を停止させ事故防止をはかる緊急停止用のスイッチ及びその操作機構が設けられた塵芥収集車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-200790号公報
【文献】特開昭55-044481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の非常停止ボタンは、車両上面に配置されているため、非常停止操作の際には手で非常停止ボタンを押し下げる必要がある。よって、操作が一方向に限られていると共に、収穫物を両手で抱えている場合など、両手が別作業により塞がっている場合には、迅速な緊急停止操作が困難である。
一方、特許文献2の塵芥収集車は無人で走行可能なものではないが、緊急停止用のスイッチを足で操作できる。しかし、車体後方から前方に向けて押す必要があるというように操作が一方向に限られているため、人の位置によっては緊急停止操作が困難な場合がある。
そこで本発明は、操作方向が一方向に限定されず、また手を使わずとも緊急停止操作が可能な安全装置及び走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の走行体1は、走行手段10が設けられた本体20と、走行手段10を駆動する駆動手段5と、駆動手段5に電力又は燃料を供給する供給源6と、安全装置30とを備え、安全装置30は、本体20に設けられた被装着部21に装着する装着部32と、人Mが力を加える操作部33とを有し、装着部32を被装着部21に装着することによって本体20に取り付けられ、本体20に取り付けられた状態において人Mにより操作部33に所定以上の力が加えられると、装着部32が被装着部21から脱落し、被装着部21から装着部32が脱落したときに走行手段10を停止させ、操作部33は、人Mの脚が届く範囲かつ本体20の進行方向正面に配置されることを特徴とする。
請求項2記載の本発明の走行体1は、走行手段10が設けられた本体20と、走行手段10を駆動する駆動手段5と、駆動手段5に電力又は燃料を供給する供給源6と、安全装置30とを備え、安全装置30は、本体20に設けられた被装着部21に装着する装着部32と、人Mが力を加える操作部33とを有し、装着部32を被装着部21に装着することによって本体20に取り付けられ、本体20に取り付けられた状態において人Mにより操作部33に所定以上の力が加えられると、装着部32が被装着部21から脱落し、被装着部21から装着部32が脱落したときに走行手段10を停止させ、操作部33が人Mの脚が届く範囲に配置されており、さらに、操作部33の地面からの高さを調節する調節機構を有することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の走行体1において、装着部32が被装着部21に装着されたときに駆動手段5と供給源6とを接続する回路7を繋げ走行手段10を駆動可能とし、装着部32が被装着部21から脱落したときに回路7の繋がりを断ち走行手段10を停止させることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の走行体1において、安全装置30は、装着部32が被装着部21から脱落したときに落下することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の走行体1において、操作部33は柔軟性を有することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の走行体1において、操作部33は球状又は半球状であり、直径が10cm以上30cm以下であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の走行体1において、装着部32が一方の磁石41を備え、被装着部21が一方の磁石41と対となる他方の磁石42を備え、一方の磁石41と他方の磁石42との密着により装着部32が被装着部21に取り付けられることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の走行体1において、装着部32が一方の弾性体51を備え、被装着部21が一方の弾性体51と対となる他方の弾性体52を備え、一方の弾性体51と他方の弾性体52との嵌合により装着部32が被装着部21に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、操作方向が一方向に限定されず、また手を使わずとも緊急停止操作が可能な安全装置及び走行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例による安全装置が取り付けられた走行体の概略図
【
図5】同装着部と被装着部との接続方法の例を示す図
【
図6】同
図5に示す装着部と被装着部との接続方法の変形例を示す図
【
図7】同装着部と被装着部との接続方法の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による安全装置は、走行手段が設けられた本体と、走行手段を駆動する駆動手段と、駆動手段に電力又は燃料を供給する供給源とを備えた走行体に取り付ける安全装置であって、本体に設けられた被装着部に装着する装着部と、人が力を加える操作部とを有し、装着部を被装着部に装着することによって本体に取り付けられ、本体に取り付けられた状態において人により操作部に所定以上の力が加えられると、装着部が被装着部から脱落し、被装着部から装着部が脱落したときに走行手段を停止させるものである。
本実施の形態によれば、走行体を停止させるためには装着部を被装着部から脱落させればよいため、安全装置に対する操作方向が一方向に限定されず、緊急時に走行体を迅速に停止させることができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による安全装置において、装着部が被装着部に装着されたときに駆動手段と供給源とを接続する回路を繋げ走行手段を駆動可能とし、装着部が被装着部から脱落したときに回路の繋がりを断ち走行手段を停止させるものである。
本実施の形態によれば、安全装置が本体から脱落すると回路が切断され供給源から駆動手段への電力又は燃料の供給が絶たれるため、走行体をより確実に停止させることができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による安全装置において、安全装置は、装着部が被装着部から脱落したときに落下するものである。
本実施の形態によれば、人が安全装置に力を加えたときの反動が少なくなり怪我を防止できる。また、安全装置が落下することで、人は安全装置の起動に成功したことを迅速かつ確実に知ることができる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による安全装置において、操作部が人の脚が届く範囲に配置されているものである。
本実施の形態によれば、荷物を抱えるなどして両手がふさがっている場合であっても操作部を蹴ることで手を使わずに走行体を緊急停止させることができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による安全装置において、操作部が、本体の進行方向正面に配置されるものである。
本実施の形態によれば、接近してくる走行体の操作部を蹴りやすくできる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第4又は第5の実施の形態による安全装置において、操作部は柔軟性を有するものである。
本実施の形態によれば、操作部を蹴った人がその衝撃で脚を痛めることを防止できる。
【0014】
本発明の第7の実施の形態は、第4から第6のいずれか一つの実施の形態による安全装置において、操作部は球状又は半球状であり、直径を10cm以上30cm以下としたものである。
本実施の形態によれば、人が操作部の位置を即座に把握できると共に力を加えやすくなる。
【0015】
本発明の第8の実施の形態は、第4から第7のいずれか一つの実施の形態による安全装置において、操作部の地面からの高さを調節する調節機構を備えるものである。
本実施の形態によれば、操作部の地面からの高さを作業環境や作業者の身長等に応じて適切に設定し、操作部を蹴りやすくできる。
【0016】
本発明の第9の実施の形態は、第1から第8のいずれか一つの実施の形態による安全装置において、装着部が一方の磁石を備え、被装着部が一方の磁石と対となる他方の磁石を備え、一方の磁石と他方の磁石との密着により装着部が被装着部に取り付けられるものである。
本実施の形態によれば、磁石を用いることで、安全装置を本体に迅速かつ確実に取り付けることができると共に、安全装置が本体から不意に脱落することを防止できる。
【0017】
本発明の第10の実施の形態は、第1から第8のいずれか一つの実施の形態による安全装置において、装着部が一方の弾性体を備え、被装着部が一方の弾性体と対となる他方の弾性体を備え、一方の弾性体と他方の弾性体との嵌合により装着部が被装着部に取り付けられるものである。
本実施の形態によれば、弾性体を用いることで、安全装置を本体に迅速かつ確実に取り付けることができると共に、安全装置が本体から不意に脱落することを防止できる。また、安全装置に力を加えた人が受ける反動を弱め怪我を防止することができる。
【0018】
本発明の第11の実施の形態による走行体は、第1から第10のいずれか一つの安全装置を備えるものである。
本実施の形態によれば、走行体を停止させるためには装着部を被装着部から脱落させればよいため、安全装置に対する操作方向が一方向に限定されず、緊急時に走行体を迅速に停止させることができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の一実施例による安全装置及び走行体について説明する。
図1は本実施例による安全装置が取り付けられた走行体の概略図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は側面図である。
走行体1は、例えば、自律走行型又は自動追従型のロボット、台車、草刈機、又は収穫機など、無人で走行可能な走行体である。なお、走行体1には人が搭乗可能であってもよい。走行体1は、果樹園、ビニルハウス、又は農場等において、人と協調して作業を行う。
走行体1は、走行手段10としての車輪と、走行手段10が設けられた本体20と、走行手段10を駆動する駆動手段としてのモーター(
図1では図示略)と、駆動手段に電力を供給する供給源としてのモーター電源(
図1では図示略)と、本体20の外部に取り付けられる安全装置30を備える。
図1においては、右側が前進する時の進行方向である。また、走行体1は後進することもでき、走行体1が後進するときの進行方向は
図1においては左側となる。
なお、走行手段10の他の例としては無限軌道やプロペラなどが挙げられ、駆動手段の他の例としてはエンジンなどが挙げられ、供給源の他の例としては燃料タンクなどが挙げられる。
本体20は、例えば、収穫物や機材を積載可能な上部開放型の荷台等からなる。本体20の上部のうち前進側の進行方向正面側端部において幅方向略中央部には、基端が本体20に固定され先端が本体20よりも外方へ突出した基台22が設けられ、基台22の先端には、安全装置30が装着される被装着部21が設けられている。
【0020】
走行体1は衝突防止機能を備え、進路上に人等を検知した場合は、走行を停止するか又は進路を変更する。しかし、何らかの理由により衝突防止機能が期待通りに動作しない可能性はゼロではない。そこで、本体20に安全装置30を設け、走行体1の周囲で作業等を行っている人が安全装置30を操作して走行体1の走行を緊急停止させることができるようにしている。これにより、人への走行体1の接触や衝突、又は走行体1の暴走を止めたりすることができる。
安全装置30は、略L字型で棒状の躯体部31と、被装着部21に装着する装着部32と、半球状の操作部33を有する。装着部32は躯体部31の一端に設けられ、操作部33は躯体部31の他端に設けられている。安全装置30を本体20に取り付ける際には、装着部32の上面を被装着部21の下面に装着する。装着部32が被装着部21に装着されている状態において、操作部33は人の脚が届くように地面近くに配置される。
なお、被装着部21を本体20に複数設けることもできる。
図1においては、被装着部21を複数設ける場合の一例として、後進側の進行方向正面側端部に設けた被装着部21と安全装置30を仮想的に一点鎖線で示している。被装着部21を複数設ける場合、安全装置30は必ずしも複数準備する必要はなく、例えば一つの安全装置30を任意に選択した被装着部21に付け替えて使用することもできる。
なお、基台22や安全装置30は、
図1においては進行方向正面側端部において本体20の幅方向略中央部に設けているが、幅方向の端部寄りに設けることもできる。また、安全装置30が本体20の側面側に位置するように設けることもできる。
【0021】
図2は走行体の緊急停止操作を示す概略図であり、
図2(a)は人が操作部を蹴る状態を示し、
図2(b)は装着部が被装着部から脱落した状態、
図2(c)は安全装置が落下した状態を示している。また、
図3は走行体の走行回路フロー図である。
装着部32は、操作部33に所定以上の力が加わると、被装着部21との接続状態が解かれ脱落するように構成されている。また、操作部33は人Mの脚が届く範囲にある。そのため人Mは、
図2(a)に示すように操作部33を蹴ることで、
図2(b)に示すように装着部32を被装着部21から脱落させることができる。
図3に示すように、走行体1は、周囲の物体との距離等を計測するセンサー2の計測値をプログラマブルコントローラ(PC)3に入力して処理し、処理した情報に基づいて制御コントローラ4が駆動手段5であるモーターの回転数等を決定し、モーター5の回転により走行手段10である車輪が回転する。ここで、モーター5に電力を供給するモーター電源(供給源)6とモーター5とを接続する回路7は、基台22及び安全装置30を経由している。そのため装着部32が被装着部21に接続されているときは回路7が繋がりモーター5にモーター電源6から電力が供給されるが、装着部32が被装着部21から脱落すると、回路7は基台22と安全装置30の間で切断される(
図3のバツ印)。これによりモーター5への電力供給が止まり、走行体1は走行を停止する。
なお、駆動手段5がエンジンの場合も、同様に点火プラグの回路が基台22及び安全装置30を経由するように構成することで、装着部32が被装着部21から脱落したときに走行体1の走行を確実に停止させることができる。
また、上述したようなモーター5への電源供給回路(回路7)やエンジンの点火プラグに電力を供給する回路を直接切断する構成に限らず、これらの回路を制御する機能を有する回路を切断するようにしても良い。また、これらの回路切断とは別に、あるいは回路切断と合わせて、装着部32が被装着部21から脱落すると走行手段10を停止させるブレーキ装置が働くようにしても良い。ブレーキ装置を設けることにより装着部32が被装着部21から脱落した後の空走距離を短くすることができる。また、駆動手段5と走行手段10との間にトランスミッション等の動力伝達手段とクラッチが設けられている場合は、装着部32が被装着部21から脱落したときにクラッチが切り離されるように構成しておくことでも、操作部33の操作により走行体1を緊急停止させることができる。
更には、既に緊急停止回路を備えた走行体1であれば、その回路に安全装置30を後付けで組み込むこともできる。
【0022】
このように走行体1を緊急停止させるためには装着部32を被装着部21から脱落させればよいため、人Mは、操作部33を側方から蹴ったり上方から踏みつけたりするなど、任意の方向から操作部33に力を加えることができる。すなわち、安全装置30に対する操作方向は一つに限定されないので、緊急時に走行体1を迅速に止めることができる。
また、人Mは操作部33を蹴ることで手を使わずに走行体1を緊急停止させることができるため、荷物Pを抱えるなどして両手がふさがっている場合であっても走行体を緊急停止させることができる。
また、
図2(c)に示すように、安全装置30は、装着部32が被装着部21から脱落するとそのまま落下することが好ましい。安全装置30が落下するように本体20に取り付けられていることで、操作部33を蹴ったときの反動が少なくなる。これにより、人Mが脚を痛めるなどの怪我を防止できる。また、装着部32が被装着部21から脱落した安全装置30が落下することで、人Mは安全装置30の起動に成功したことを迅速かつ確実に知ることができる。
【0023】
操作部33は、
図2に示すように、本体20の進行方向正面に配置されていることが好ましい。これにより、人Mは接近してくる走行体1の操作部33を蹴りやすくなる。
また、操作部33は軟質ゴム等の柔らかい素材で形成されていることが好ましい。操作部33が柔軟性を有することにより、操作部33を蹴った人Mがその衝撃で脚を痛めることを防止できる。
また、操作部33を半球状とすることで人Mはどの方向からでも操作部33を蹴りやすくなる。なお、操作部33が球状であってもよい。また、操作部33は、直径が10cm以上30cm以下であることが好ましく、直径が18cm以上22cm以下であることがより好ましい。操作部33をこのような大きさとすることで、人Mは操作部33の位置を即座に把握して蹴りやすくなる。また、操作部33は本体20や躯体部31とは異なる色で着色されていることが好ましい。
【0024】
図4は調節機構の説明図であり、
図4(a)は低位置としたときの操作部33を示し、
図4(b)は
図4(a)よりも高位置としたときの操作部33を示している。
安全装置30は、操作部33の地面からの高さを調節する調節機構を備える。調節機構は、例えば
図4に示すように、躯体部31が、複数の孔が上下方向に形成された中空の固定部31aと、孔に嵌合する突起を二つ有し固定部31a内に出入り自在の可動部31bとからなり、操作部33が可動部31bに設けられた構成である。操作部33の地面からの高さは、固定部31aへの可動部31bの挿入量で調節する。例えば、操作部33の位置を低くしたい場合は、
図4(a)に示すように、可動部31bの突起を固定部31aに形成されている孔のうち比較的低い位置にある孔と嵌合させる。また、その状態から操作部33の位置を高くしたい場合は、突起を押して一旦引っ込めることにより孔との嵌合を解き、可動部31bをより深く固定部31aへ挿入し、突起を固定部31aに形成されている孔のうち比較的高い位置にある孔と嵌合させる。
このような調節機構を備えることで、操作部33の地面からの高さを作業環境や作業者の身長等に応じて適切に設定し、操作部33を蹴りやすくできる。
【0025】
図5は装着部と被装着部との接続方法の例を示す図である。本例においては接続に磁石を用いる。
図5(a)は安全装置30が本体20に接続されている状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、中央は接続箇所の拡大鉛直断面図、右方は被装着部21の下面及び装着部32の上面を示す図である。
図5(b)は安全装置30が蹴られた状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、右方は接続箇所の拡大鉛直断面図である。
図5(c)は安全装置30が落下した状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、右方は接続箇所の拡大鉛直断面図である。
被装着部21には、モーター電源6からモーター5に至る回路7の一端が接続されている導電性の第一端子21aと、回路7の他端が接続されている導電性の第二端子21bが設けられている。また、装着部32には、その上面よりも外方に突出する接触ピン32aが二個と、接触ピン32aを外方へ付勢するバネ等の付勢手段32bと、接触ピン32aと付勢手段32bとの間に位置する板状の台座32cが設けられており、接触ピン32a及び台座32cは導電性を有する。被装着部21のうち少なくとも装着部32との接続部分、及び装着部32のうち少なくとも被装着部21との接続部分は、円形に構成されていることが好ましい。これにより、操作部33の操作方向に方向性が生じなくなる。
また、装着部32と被装着部21には、対となる磁石40を設けている。装着部32に設けられた一方の磁石41と被装着部21に設けられた他方の磁石42が引きつけ合い密着することで、
図5(a)に示すように、安全装置30が本体20に取り付けられた状態が維持される。磁石40を用いることで、安全装置30を本体20に迅速かつ確実に取り付けることができると共に、安全装置30が本体20から不意に脱落することを防止できる。なお、磁石40の配置は特に限定されるものでは無いが、
図5に示すような円環状とすれば、安全装置30を取り付ける際に操作部33の向きを任意に所望の方向とすることができる。
また、操作部33は、向きを任意ではなく一方向に定めて取り付けられるようにすることもできる。このように取付時の操作部33の向きを規制する場合は、例えば、基台22の下面に走行体1の進行方向に平行な溝部を設け、装着部32から操作部33とは反対向きに水平方向に伸びたピンが当該溝に軽く挟まるようにする。
【0026】
図5(a)に示す状態においては、接触ピン32aが第一端子21a及び第二端子21bに接触してモーター電源6からモーター5に至る回路7が繋がるため、走行体1は走行が可能である。また、接触ピン32aは台座32cを介して付勢手段32bによって被装着部21に向けて付勢されているため、走行中の振動等により安全装置30が多少揺動したとしても、接触ピン32aが第一端子21a及び第二端子21bから外れることはない。これにより、走行体1が意図せず停止してしまうことが防止される。
図5(b)は操作部33が人Mに蹴られた状態を示している。このとき安全装置30の躯体部31には回転モーメントが生じるため、第一端子21aから接触ピン32aが外れてモーター電源6からモーター5に至る回路7が切断される。これにより、走行体1は走行を停止する。また、一方の磁石41のうち第一端子21aに近い部分は他方の磁石42から離れて磁力が弱まる。これにより、安全装置30は自重によって一方の磁石41のうち第二端子21bに近い部分も他方の磁石42から離れ、
図5(c)に示すように落下する。
このように、人Mは操作部33を蹴り一方の磁石41を他方の磁石42から強制的に離すことで、装着部32を被装着部21から脱落させ走行体1の走行を緊急停止させることができる。なお、磁石40による安全装置30の係止力は、安全装置30の重量や付勢手段32bが有する反発力等を考慮して設定する。
【0027】
図6は装着部と被装着部との接続に磁石を用いる場合の変形例を示す図であり、
図6(a)は被装着部21の下面を示す図、
図6(b)は安全装置30が本体20に接続されている状態における接続箇所の拡大鉛直断面図、
図6(c)は装着部32の上面を示す図である。
図5を用いて説明した上記の例では、第一端子21aと第二端子21bを直方体形状としているが、磁石40を円環状とする場合は、第一端子21aと第二端子21bのどちらか一方(
図6では第二端子21b)を円筒形状として磁石40の円中心部に配置し、もう一方(
図6では第一端子21a)を円環形状としてその外側に所定の間隔をあけて同心円状に配置することが好ましい。なお、二つの接触ピン32aの配置は、装着部32を被装着部21に装着したときに各々第一端子21a、第二端子21bと接触する位置とする。
【0028】
図7は装着部と被装着部との接続方法の他の例を示す図である。本例においては接続にゴム等の弾性体50を用いる。なお、上記した接続方法の例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図7(a)は安全装置30が本体20に接続された状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、中央は接続箇所の拡大鉛直断面図、右方は被装着部21の下面及び装着部32の上面を示す図である。
図7(b)は安全装置30が蹴られた状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、右方は接続箇所の拡大鉛直断面図である。
図7(c)は安全装置30が落下した状態を示す図であり、左方は全体を示す側面図、右方は接続箇所の拡大鉛直断面図である。
装着部32と被装着部21には、対となる弾性体50を設けている。装着部32に設けられた一方の弾性体51はリング状の凸部であり、被装着部21に設けられた他方の弾性体52は一方の弾性体51を収容するリング状の凹部である。一方の弾性体51(凸部)を被装着部21に設けられた他方の弾性体52(凹部)に嵌入することで、
図7(a)に示すように、安全装置30が本体20に取り付けられた状態が維持される。弾性体50を用いることで、安全装置30を本体20に迅速かつ確実に取り付けることができると共に、安全装置30が本体20から不意に脱落することを防止し、さらに、操作部33を蹴った人Mが受ける反動を弱め怪我を防止することができる。
また、他方の弾性体52を凹部としていることで、操作部33が脱落した状態のときに、人Mが誤って第一端子21a、第二端子21bに触れて感電する可能性を低減できる。更に、第一端子21a、第二端子21bの接触面を、
図7に示すように、他方の弾性体52の内平面よりも奥側に位置させていることで、感電の可能性をより一層低減できる。
なお、本例においても、上記した接続に磁石を用いる場合の変形例と同様に、第一端子21aと第二端子21bを同心円状に配置し、接触ピン32aをそれに対応した配置とすることもできる。
また、取付時の操作部33の向きを規制する場合は、例えば、一方の弾性体51のリング状の凸部の一部に切り欠きを設け、他方の弾性体52のリング状の凹部の一部を当該切欠きに合わせて凸形状にする。
【0029】
図7(a)に示す状態においては、接触ピン32aが第一端子21a及び第二端子21bに接触してモーター電源6からモーター5に至る回路7が繋がるため、走行体1は走行が可能である。
図7(b)は操作部33が人Mに蹴られた状態を示している。このとき安全装置30の躯体部31には回転モーメントが生じるため、第一端子21aから接触ピン32aが外れてモーター電源6からモーター5に至る回路7が切断される。これにより、走行体1は走行を停止する。また、弾性変形により一方の弾性体51のうち第一端子21aに近い部分は他方の弾性体52から離れる。これにより、安全装置30は自重によって一方の弾性体51のうち第二端子21bに近い部分も他方の弾性体52から離れ、
図7(c)に示すように落下する。
このように、人Mは操作部33を蹴り一方の弾性体51を他方の弾性体52から強制的に離すことで、装着部32を被装着部21から脱落させ走行体1の走行を緊急停止させることができる。なお、弾性体50による安全装置30の係止力は、安全装置30の重量や付勢手段32bが有する反発力等を考慮して設定する。
【符号の説明】
【0030】
1 走行体
2 センサー
3 プログラマブルコントローラ
4 制御コントローラ
5 駆動手段(モーター)
6 供給源(モーター電源)
7 回路
10 走行手段
20 本体
21 被装着部
21a 第一端子
21b 第二端子
22 基台
30 安全装置
31 躯体部
31a 固定部
31b 可動部
32 装着部
32a 接触ピン
32b 付勢手段
32c 台座
33 操作部
40 磁石
41 一方の磁石
42 他方の磁石
50 弾性体
51 一方の弾性体
52 他方の弾性体
M 人
P 荷物