IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20240902BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240902BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08J3/12 Z
C08F8/00
B01J20/30
B01J20/26 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023541347
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2022017882
(87)【国際公開番号】W WO2023096240
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0167459
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-38128(JP,A)
【文献】特表2012-527502(JP,A)
【文献】特開2004-352941(JP,A)
【文献】特表2021-510743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08F 6/00-246/00;301/00
C08K
C08L
B01J 20/00-20/28;20/30-20/34
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋剤の存在下、アクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理して、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を製造する段階を含み、
前記表面架橋層を形成する段階は、下記数式1で定義されるATT指数が3以下を満足する表面架橋反応器内で行われる、
高吸水性樹脂の製造方法:
[数式1]
ATT指数=線速度(m/s)×滞留時間(hr)×3,600/1,000
ここで、線速度(m/s)は、表面架橋反応器の回転速度で、0.6m/s~0.9m/sであり、
滞留時間(hr)は、表面架橋反応器内で混合物が滞留する時間で、1.0hr~1.5hrである。
【請求項2】
前記ATT指数は、1~3である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記表面架橋反応器は、パドル型乾燥機である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記数式1の線速度は、下記数式1-1により計算される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[数式1-1]
線速度(m/s)=2×3.14×r/T
ここで、rは、球状の表面架橋反応器内の回転するパドルが描く円形軌跡の半径であり、Tは、表面架橋反応器の内部を一周するのにかかる時間(周期)である。
【請求項5】
前記数式1の滞留時間(hr)は、下記数式1-2により計算される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[数式1-2]
滞留時間(hr)=[表面架橋反応器の有効容積(m)×混合物の体積密度(g/cm)]/表面架橋反応器に投入される混合物の時間あたりの投入量(Ton/hr)。
【請求項6】
前記アクリル酸系ベース樹脂粒子は、
内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階;で製造される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記表面架橋層を形成する段階は、100℃~250℃で行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択されたポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択されたカーボネート系化合物;エポキシ化合物;オキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;および環状ウレア化合物;からなる群より選択される1種以上である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記表面架橋剤は、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子100重量部に対して0.001~2重量部含まれる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂は、下記数式2で計算される有効吸水能(EFFC)が27.0g/g以上である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
[数式2]
有効吸水能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸水能(AUP)}/2
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は、生理食塩水の流れ誘導性(SFC)が20(×10-7cm・s/g)以上である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記高吸水性樹脂1gが塩化ナトリウムおよび炭素数12~14のアルコールエトキシレート水溶液20gを吸収する所要時間(T-20)が129秒以下である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年11月29日付の韓国特許出願第10-2021-0167459号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。より具体的には、表面架橋段階で表面架橋反応器の駆動条件を調節することによって、表面架橋工程中に発生する機器的な力による樹脂の物性低下を最小化し、これによって、最終製造される高吸水性樹脂の吸水物性を向上させた高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けられている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水剤、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は主におむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。前記衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に拡散した状態で含まれることが一般的である。しかし、最近では、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少したり、一歩進んでパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれて、高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避に多層で含まれる。このように多層で含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に多量の尿などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能だけでなく速い吸水速度を示す必要がある。
【0006】
高吸水性樹脂の吸水能や吸水速度など、吸水に関連する物性を向上させるために、表面架橋工程、発泡工程などの多様な後処理工程などが知られている。
【0007】
しかし、このような段階で用いられる機器の駆動条件により、製造される高吸水性樹脂に物理的な力が加えられながら表面架橋層や粒子の内部構造が変化して、むしろ吸水物性が低下する問題があり、このような影響を最小化しながらも、目的とする優れた物性を実現するための技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、表面架橋段階で表面架橋反応器の駆動条件を調節することによって、表面架橋工程中に発生する機器的な力による樹脂の物性低下を最小化し、これによって、最終製造される高吸水性樹脂の吸水物性を向上させた高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、
表面架橋剤の存在下、アクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理して、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を製造する段階を含み、
前記表面架橋層を形成する段階は、下記数式1で定義されるATT指数が3以下を満足する表面架橋反応器内で行われる、
高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
[数式1]
ATT指数=線速度(m/s)×滞留時間(hr)×3,600/1,000
ここで、線速度(m/s)は、表面架橋反応器の回転速度で、0.6m/s~0.9m/sであり、
滞留時間(hr)は、表面架橋反応器内で混合物が滞留する時間で、1.0hr~1.5hrである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、表面架橋段階で反応器の駆動条件を調節する特定のATT指数を3以下に調節することによって、表面架橋工程中に発生する機器的な力による樹脂の物性低下を最小化し、これによって、最終的に優れた吸水物性を実現する高吸水性樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0012】
単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0013】
第1、第2、第3などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0014】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0015】
本明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、アクリル酸系単量体が重合された状態のものを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができ、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥した粒子を架橋重合体と称することができる。
【0016】
また、用語「高吸水性樹脂粉末」は、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が重合され、内部架橋剤によって架橋された架橋重合体を含む、粒子状の物質を称する。
【0017】
また、用語「高吸水性樹脂」は、文脈により酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)状のベース樹脂を意味したり、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0018】
また、用語「架橋重合体」とは、前記アクリル酸系単量体と内部架橋剤の存在下で架橋重合されたものを意味し、前記「ベース樹脂粒子」とは、このような架橋重合体を含む粒子状(粉末状)物質を意味する。
【0019】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋剤の存在下、アクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理して、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を製造する段階を含む。
【0020】
高吸水性樹脂は一般に、単量体を重合して多量の水分を含有した含水ゲル重合体を製造する段階と、このような含水ゲル重合体の乾燥後に所望の粒径を有する樹脂粒子に粉砕し、その表面を架橋する段階とを経て製造される。しかし、前記表面架橋段階の場合、特定の表面架橋反応器内で反応が行われ、これによって、機器の駆動条件により、製造される高吸水性樹脂に物理的な力が加えられながら表面架橋層や粒子の内部構造が変化して、むしろ吸水物性が低下する問題があった。
【0021】
そこで、本発明者らは、表面架橋段階で反応器の駆動条件を調節するATT指数を導出し、これを特定の範囲内に制御することによって、機器の物理的な力によるダメージを最小化しながらも、目的とする優れた吸水物性を実現できることを確認して、本発明を完成した。
【0022】
本発明により製造された高吸水性樹脂は、優れた吸水物性を実現することができ、特に、優れた有効吸水能、生理食塩水の流れ誘導性および速い吸水速度を有する。
【0023】
以下、発明の一実施例による高吸水性樹脂の製造方法について各段階別に詳しく説明する。
【0024】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋剤の存在下、アクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理して、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を製造する段階を含む。
【0025】
これに先立ち、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子は、内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;および前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階;で製造できる。
【0026】
以下、まず、表面架橋段階の前の含水ゲル重合体の形成段階(重合段階)、乾燥および粉砕段階などを説明する。
【0027】
(重合段階)
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階を含む。
【0028】
具体的には、内部架橋剤の存在下、単量体混合物および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0029】
前記アクリル酸系単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であってもよい。非制限的な例として、前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい:
【0030】
[化1]
-COOM
【0031】
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0032】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。このようにアクリル酸系単量体を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂が得られて有利である。この他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0033】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が部分的に中和されたものであってもよい。好ましくは、前記アクリル酸系単量体を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質を含む中和液で部分的に中和させることができる。
【0034】
この時、前記単量体の中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は、最終物性により異なるが、中和度が過度に高ければ、中和された単量体が析出して重合が円滑に行われにくく、逆に、中和度が過度に低ければ、高分子の吸水性が大きく低下するだけでなく、取扱が困難な弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0035】
本明細書で使用する用語「内部架橋剤」は、ベース樹脂の表面を架橋させるための「表面架橋剤」と区別するために使用する用語で、上述したアクリル酸系単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割を果たす。前記段階における架橋は、表面または内部の区別なしに行われるが、後述するベース樹脂の表面架橋工程によって、最終製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は前記内部架橋剤によって架橋された構造からなる。
【0036】
前記内部架橋剤は、多官能性成分が使用可能であり、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上が使用できる。好ましくは、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールジアクリレートが使用できる。
【0037】
前記内部架橋剤は、前記アクリル酸系単量体の重量対比100ppmw~10,000ppmwで使用できる。前記含有量範囲に含まれて十分な架橋で適正レベル以上の強度を実現することができ、適正架橋構造の導入で十分な保水能を実現することができる。好ましくは、100ppmw以上、200ppmw以上、300ppmw以上または600ppmw以上かつ、10,000ppmw以下、9,000ppmw以下、7,000ppmwまたは5,000ppmw以下であり、200ppmw~9,000ppmw、300ppmw~7,000ppmwまたは600ppmw~5,000ppmwで含まれる。前記内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正レベル以上の強度の実現が難しく、前記内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の実現が難しいことがある。
【0038】
また、前記単量体組成物には、高吸水性樹脂の製造に一般に使用される重合開始剤が含まれる。非制限的な例として、前記重合開始剤には、重合方法により熱重合開始剤または光重合開始剤などが使用できる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤が追加的に含まれる。
【0039】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択された1つ以上の化合物が使用できる。そのうち一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著の「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0040】
そして、前記熱重合開始剤としては、前述した酸化剤成分である過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤が使用可能であり、その他、過酸化水素、アスコルビン酸などが使用可能であり、これらは単独でまたは2種以上混合して使用できる。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の「Principle of Polymerization(Wiley,1981年)」の第203頁に開示されており、これを参照することができる。
【0041】
このような重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体の重量対比10ppmw~30,000ppmw、好ましくは、50ppmw~10,000ppmw、または80ppmw~10,000ppmwで添加される。前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出されうるので、好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下しうるので、好ましくない。
【0042】
この他にも、前記単量体組成物には、必要に応じて、発泡剤、増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれる。
【0043】
前記発泡剤は、重合時に発泡が起きて含水ゲル重合体内に気孔を形成して表面積を増やす役割を果たす。前記発泡剤は、炭酸塩を使用することができ、一例として、ナトリウムバイカーボネート(sodium bicarbonate)、ナトリウムカーボネート(sodium carbonate)、カリウムバイカーボネート(potassium bicarbonate)、カリウムカーボネート(potassium carbonate)、カルシウムバイカーボネート(calcium bicarbonate)、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、マグネシウムバイカーボネート(magnesium bicarbonate)またはマグネシウムカーボネート(magnesium carbonate)を使用することができる。使用可能な商業用発泡剤としては、カプセル化された発泡剤のF-36Dが使用できるが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、前記発泡剤は、前記アクリル酸系単量体の重量に対して1500ppmw以下で使用することが好ましい。前記発泡剤の使用量が1500ppmwを超える場合には、気孔が過度に多くなって高吸水性樹脂のゲル強度が低下し、密度が小さくなって流通と保管の問題をもたらすことがある。さらに、前記発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して500ppmw以上、または1000ppmw以上で使用することが好ましい。
【0045】
また、前記界面活性剤は、前記発泡剤の均一な分散を誘導して、発泡時の均一な発泡により、ゲル強度が低くなったり、密度が低くなるのを防止する。前記界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤を使用することが好ましい。具体的には、前記界面活性剤は、SO 陰イオンを含むもので、下記の化学式2で表される化合物を使用することができる。
【0046】
[化2]
R-SONa
【0047】
前記化学式2において、
Rは、炭素数8~16のアルキルである。
【0048】
また、前記界面活性剤は、前記アクリル酸系単量体の重量に対して300ppmw以下で使用することが好ましい。前記界面活性剤の使用量が300ppmwを超える場合、高吸水性樹脂に界面活性剤の含有量が多くなるので、好ましくない。また、前記界面活性剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して100ppmw以上、または150ppmw以上で使用することが好ましい。
【0049】
そして、このような単量体組成物は、前述した内部架橋剤、前記アクリル酸系単量体、重合開始剤などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で用意される。
【0050】
この時使用可能な溶媒としては、前述した原料物質を溶解できるものであれば、その構成の限定なく使用可能である。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0051】
前記単量体組成物の重合による含水ゲル重合体の形成段階は通常の重合方法で行われ、その工程は特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は、重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合とに分けられるが、前記熱重合を進行させる場合には、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合には、移動可能なコンベヤベルトが備えられた反応器で行われる。
【0052】
一例として、撹拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、これに熱風を供給するか、反応器を加熱して熱重合することによって、含水ゲル重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた撹拌軸の形態により、反応器の排出口に排出される含水ゲル重合体は、数ミリメートル~数センチメートルの粒子として得られる。具体的には、得られる含水ゲル重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などにより多様な形態で得られるが、通常、(重量平均)粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0053】
そして、他の例として、移動可能なコンベヤベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を進行させる場合には、シート状の含水ゲル重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度により異なるが、シート全体が均一に重合できるようにしながらも、生産速度などを確保するために、通常、0.5~10cmの厚さに調節されることが好ましい。
【0054】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、40重量%~80重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、含水ゲル重合体の全体重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分の蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0055】
(乾燥、粉砕および分級段階)
次に、前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してアクリル酸系ベース樹脂粒子を形成する段階を含む。
【0056】
具体的には、前記得られた含水ゲル重合体を乾燥する段階を行う。必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に前記含水ゲル重合体を粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0057】
この時用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0058】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が2~10mmとなるように粉砕することができる。粒径2mm未満に粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間で互いに凝集される現象が現れることもある。一方、粒径10mm超過で粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかになる。
【0059】
前記のように粗粉砕されたり、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、150~250℃であってもよい。乾燥温度が150℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥して、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、150~200℃の温度で、さらに好ましくは170~195℃の温度で行われる。
【0060】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、20~90分間行われるが、これに限定されない。
【0061】
前記乾燥段階の乾燥方法も、含水ゲル重合体の乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択使用可能である。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であってもよい。
【0062】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する段階を行う。
【0063】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が150~850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、上述した例に限定されるものではない。
【0064】
そして、このような粉砕段階の後、最終製品化される高吸水性樹脂粒子の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粒子を粒径により分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が150~850μmの重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粒子に対してのみ表面架橋反応段階を経て製品化することができる。より具体的には、前記分級が行われたアクリル酸系ベース樹脂粒子は、150~850μmの粒径を有し、300~600μmの粒径を有する粒子を50重量%以上含むことができる。
【0065】
(表面架橋段階)
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋剤の存在下、アクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理して、前記アクリル酸系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を製造する段階を含む。
【0066】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の存在下、前記アクリル系ベース樹脂粒子の表面の少なくとも一部に架橋反応を誘導するもので、架橋されずに表面に残っていたアクリル系単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって架橋されて、表面架橋密度が高くなった高吸水性樹脂が形成される。
【0067】
前記アクリル酸系ベース樹脂粒子は、前述した重合、乾燥、粉砕および分級段階により製造されたものであってもよい。
【0068】
表面架橋段階の場合、特定の表面架橋反応器内で反応が行われ、これによって、機器の駆動条件により、製造される高吸水性樹脂に物理的な力が加えられながら表面架橋層や粒子の内部構造が変化して、むしろ吸水物性が低下する問題があった。そこで、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋工程中に発生する機器的な力による樹脂の物性低下を最小化するために導出された。
【0069】
具体的には、発明の一実施形態による表面架橋層を形成する段階は、下記数式1で定義されるATT指数(Attrition Total Torque Index)が3以下を満足する表面架橋反応器内で行われることを特徴とする:
【0070】
[数式1]
ATT指数=線速度(m/s)×滞留時間(hr)×3,600/1,000
【0071】
ここで、線速度(m/s)は、表面架橋反応器の回転速度で、0.6m/s~0.9m/sであり、
滞留時間(hr)は、表面架橋反応器内で混合物が滞留する時間で、1.0hr~1.5hrである。
【0072】
前記ATT指数は、表面架橋反応器の駆動条件に対する新規のパラメータである。具体的には、表面架橋段階で表面架橋反応器の物理的な力によって製造される樹脂粒子の物性に影響を与えうる駆動条件を選別し、これらの有機的結合関係を考慮して導出されたものであって、表面架橋工程で機器の物理的な力による物性低下を最小化して、表面架橋工程が目的とする効果を十分に実現できるように調節可能な新規のパラメータである。
【0073】
前記ATT指数が3以下を満足することによって、機器の物理的な影響性を最小化することができ、これによって、最終製造される吸水性樹脂の有効吸水能、生理食塩水の流れ誘導性および吸水速度をすべて向上させることができる。好ましくは、前記ATT指数は、1~3、1.5~3、2.0~3であってもよい。一方、前記ATT指数が3.0を超える場合、表面架橋反応器による物理的損傷により、製造される高吸水性樹脂の物性が顕著に低下しうる。
【0074】
好ましくは、前記表面架橋反応器は、パドル型乾燥機が用いられ、この場合、回転速度は、パドル型乾燥機内のパドルの回転速度を意味する。
【0075】
前記数式1で定義されるATT指数の変数の一つである、線速度(m/s)は、表面架橋反応器の回転速度で、0.6m/s~0.9m/sであり、好ましくは、0.61m/s~0.81m/sである。
【0076】
具体的には、前記数式1の線速度は、下記数式1-1により計算される:
【0077】
[数式1-1]
線速度(m/s)=2×3.14×r/T
【0078】
ここで、rは、球状の表面架橋反応器内の回転するパドルが描く円形軌跡の半径であり、Tは、表面架橋反応器の内部を一周するのにかかる時間(周期)である。
【0079】
前記数式1で定義されるATT指数の変数の一つである、滞留時間(hr)は、表面架橋反応器内で混合物が滞留する時間で、前記混合物が表面架橋反応器に投入された後吐出される前までの滞留時間を意味する。前記滞留時間は、1.0hr~1.5hrであり、好ましくは、1.0hr~1.2hrである。
【0080】
前記数式1の滞留時間(hr)は、下記数式1-2により計算される:
【0081】
[数式1-2]
滞留時間(hr)=[表面架橋反応器の有効容積(m)×混合物の体積密度(g/cm)]/表面架橋反応器に投入される混合物の時間あたりの投入量(Ton/hr)
【0082】
前記表面架橋段階において、表面架橋剤が存在してアクリル酸系ベース樹脂粒子を含む混合物を熱処理することによって、ベース樹脂の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成され、前記熱処理工程は、表面架橋密度、つまり、外部架橋密度は増加するのに対し、内部架橋密度は変化がなく、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は、内部より外部の架橋密度が高い構造を有する。
【0083】
前記表面架橋段階において、表面架橋剤のほか、アルコール系溶媒および水を含む表面架橋剤組成物を使用することができる。
【0084】
一方、前記表面架橋剤組成物に含まれる表面架橋剤としては、かつて高吸水性樹脂の製造に使用されていた架橋剤成分であれば、格別の制限なくすべて使用可能である。例えば、前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択されるポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択されるカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレングリコールが使用できる。
【0085】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001~2重量部で使用できる。好ましくは、0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上かつ、0.5重量部以下、0.3重量部以下の含有量で使用できる。表面架橋剤の含有量範囲を上述した範囲に調節して、優れた吸水性能および通液性などの諸物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0086】
一方、前記表面架橋剤は、これを含む表面架橋剤組成物の状態でベース樹脂粒子と混合されるが、このような表面架橋剤組成物の混合方法についてはその構成の特別な限定はない。例えば、表面架橋剤組成物と、ベース樹脂粒子とを反応槽に入れて混合したり、ベース樹脂粒子に表面架橋剤組成物を噴射する方法、連続的に運転されるミキサにベース樹脂粒子と表面架橋剤組成物を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0087】
そして、前記表面架橋剤組成物は、媒質として水および/または親水性有機溶媒をさらに含むことができる。そのため、表面架橋剤などがベース樹脂粒子上に均一に分散できるという利点がある。この時、水および親水性有機溶媒の含有量は、表面架橋剤の均一な溶解/分散を誘導し、ベース樹脂粒子のかたまり現象を防止すると同時に、表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で、ベース樹脂粒子100重量部に対する添加比率を調節して適用することができる。
【0088】
前記表面架橋段階は、100℃~250℃、130℃~250℃、あるいは150℃~200℃の温度で30分以上熱処理して進行させることができる。より具体的には、前記表面架橋は、上述した温度を最高反応温度にし、このような最高反応温度で、30~80分、あるいは40分~70分間熱処理して表面架橋反応を進行させることができる。
【0089】
このような表面架橋工程条件(特に、昇温条件および反応最高温度での反応条件)を満たすことによって、より優れた加圧通液性などの物性を適切に満たす高吸水性樹脂が製造できる。
【0090】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択可能である。一方、直接供給される熱源には、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0091】
一方、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、通液性などの追加的な向上のために、表面架橋時、硫酸アルミニウム塩などのアルミニウム塩、その他の多様な多価金属塩をさらに使用することができる。このような多価金属塩は、最終製造された高吸水性樹脂の表面架橋層上に含まれる。
【0092】
(高吸水性樹脂)
上述した一実施形態により製造された高吸水性樹脂は、150~850μmの粒径を有することができる。より具体的には、前記高吸水性樹脂の少なくとも95重量%以上が150~850μmの粒径を有し、300~600μmの粒径を有する粒子を50重量%以上含むことができ、150μm未満の粒径を有する微粉が3重量%未満になってもよい。
【0093】
上述した一実施形態により製造された高吸水性樹脂は、優れた吸水物性を実現する。
【0094】
前記高吸水性樹脂は、下記数式2で計算される有効吸水能(EFFC)が27.0g/g以上である。前記有効吸水能は、好ましくは、27.2g/g以上、27.3g/g以上、27.4g/g以上または27.6g/g以上であるか、27.0~30g/g、または27.2~27.6g/gである。
【0095】
[数式2]
有効吸水能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸水能(AUP)}/2
【0096】
ここで、前記保水能は、EDANA法WSP241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)を意味し、前記保水能を測定する方法は、後述する実験例でより具体的に説明する。
【0097】
前記加圧吸水能は、EDANA法WSP242.3により測定した0.7psiでの加圧吸水能(AUP)を意味し、前記加圧吸水能を測定する方法は、後述する実験例でより具体的に説明する。
【0098】
また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水の流れ誘導性(SFC)が20(×10-7cm・s/g)以上である。好ましくは、35~50(×10-7cm・s/g)、または39~48(×10-7cm・s/g)である。前記生理食塩水の流れ誘導性(SFC)は、米国特許公開番号第2009-0131255号のcolumn16の[0184]~[0189]に開示された内容により測定され、具体的な方法は、後述する実験例でより具体的に説明する。
【0099】
前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂1gが塩化ナトリウムおよび炭素数12~14のアルコールエトキシレート水溶液20gを吸収する所要時間(T-20)が129秒以下である。好ましくは、129秒以下、125秒以下、121秒以下であるか、100秒以上、110秒以上であり、または100~129秒、110~125秒または113~121秒である。前記T-20は、蒸留水1Lに9gの塩化ナトリウムおよび1gのLorodac(主成分:線状炭素数12~14のアルコールエトキシレート、CAS#68439-50-9)を溶解させた水溶液を作り、高吸水性樹脂1gがこのような水溶液20gを吸収するのにかかる時間として算出および測定され、具体的な方法は、後述する実験例でより具体的に説明する。
【0100】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0101】
[実施例]
<高吸水性樹脂の製造>
実施例1
(段階1)-重合段階
撹拌機、温度計を装着した3Lガラス容器に、アクリル酸100g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.70g、NaOH水溶液を常温(25±1℃)で混合して、全体固形分含有量が43wt%の単量体組成物を製造した(アクリル酸の中和度:72モル%)。次に、開始剤としてIgacure819 0.0080g、1.1%過硫酸ナトリウム溶液33gを順次に投入し混合して単量体組成物を製造した。
【0102】
以後、前記単量体組成物を、幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に3分間UV照射して、シート状の含水ゲル重合体を得た。
【0103】
(段階2)-乾燥段階
以後、前記含水ゲル重合体のホールサイズ(hole size)が16mmのチョッパで粗粉砕し、これを上下に風量転移可能なオーブンに投入して、190℃で30分間熱風乾燥した。
【0104】
(段階3)-粉砕および分級
次に、前記乾燥体をピンミル粉砕機に投入して粉砕し、次に、ASTM規格の標準網篩で分級して、150~850μmの粒子サイズを有するアクリル酸系ベース樹脂粒子を得た。
【0105】
(段階4)-表面架橋段階
以後、製造されたベース樹脂粒子100gに対して、表面架橋溶液(エチレンカーボネート(A-1)1.0g、プロピレングリコール(A-2)0.8gおよび水(3.5g)を噴射し、常温で撹拌して、ベース樹脂粉末上に表面架橋液が均一に分布するように30秒間300rpmで撹拌しながら混合した。
【0106】
次に、表面架橋溶液とアクリル系ベース樹脂粒子とを含む混合物を表面架橋反応器に入れて、表面架橋反応を進行させた。このような表面架橋反応器内で、ベース樹脂粒子は、80℃近傍の初期温度から漸進的に昇温することが確認され、30分経過後に195℃の反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した後に、20分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。前記表面架橋工程の後、高吸水性樹脂は150μm~850μmの粒径を有するようにASTM規格の標準網篩で分級した。
【0107】
表面架橋反応中の表面架橋反応器の駆動条件は、線速度0.61m/sで、滞留時間は1.1hrであり、ATT指数は2.4であった。
【0108】
実施例2~5および比較例1~5
表面架橋段階において、表面架橋反応器の駆動条件を下記表1の条件下で行ったことを除けば、実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。
【0109】
【表1】
【0110】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、次のような方法で物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0111】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
前記実施例および比較例で製造された高吸水性樹脂のうち150~850μmの粒径を有するものを取って、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.2により無荷重下吸水倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
【0112】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得られた高吸水性樹脂を#30-50の篩で分級した樹脂を得た。このような樹脂W’0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸した。30分経過後、遠心分離機を用いて、250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を切り、封筒の質量W’2(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同様の操作をした後に、その時の質量W’1(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次のような数式3によりCRC(g/g)を算出した。
【0113】
[数式3]
CRC(g/g)={[W’2(g)-W’1(g)]/W’0(g)}-1
【0114】
(2)加圧吸水能(AUP、Absorbency Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法WSP242.3により測定した。加圧吸水能の測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級粉を使用した。
【0115】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400meshの金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で金網上に吸水性樹脂W(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0116】
直径150mmのペトロ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置き、0.9重量%塩化ナトリウムからなる生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルとなるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0117】
得られた各質量を用いて、次の数式4により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0118】
[数式4]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0119】
(3)有効吸水能(EFFC)
前記導出された保水能(CRC)および加圧吸水能(AUP)の測定値に基づいて、下記数式2により、有効吸水能を測定した。
【0120】
[数式2]
有効吸水能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸水能(AUP)}/2
【0121】
(4)生理食塩水の流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)
前記生理食塩水の流れ誘導性は、米国特許公開番号第2009-0131255号のcolumn16の[0184]~[0189]に開示された方法により測定した。
【0122】
(5)T-20
前記T-20は、蒸留水1Lに、9gの塩化ナトリウムおよび1gのLorodac(主成分:線状炭素数12~14のアルコールエトキシレート、CAS#68439-50-9)を溶解させた水溶液を作り、高吸水性樹脂1gがこのような水溶液20gを吸収するのにかかる時間を測定した。このようなT-20の具体的な測定方法は、欧州公開特許第2535027号のp13~p18に詳しく記述されている。
【0123】
【表2】
【0124】
前記表2のデータから確認できるように、本発明の製造方法による実施例は、表面架橋段階で反応器の駆動条件を調節する特定のATT指数を3以下で満足することによって、優れた吸水物性を実現できることを確認することができた。
【0125】
特に、すべての実施例は、比較例に比べて、生理食塩水の流れ流動性に優れ、T-20の吸水速度が顕著に改善されたことを確認することができた。