(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ブレード交換装置
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20240902BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240902BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240902BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B24B45/00 A
B24B49/12
B24B27/06 M
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020216255
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一貴
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241177(JP,A)
【文献】特開平10-340867(JP,A)
【文献】特開2017-183385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 49/12
B24B 27/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードマウントを介してスピンドルの先端部に装着された環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置で用いられるブレード交換装置であって、
該ブレードマウントは、該スピンドルの該先端部に固定された状態で該スピンドルの軸心方向に突出し該切削ブレードの貫通穴に挿入される円筒状のボス部と、該ボス部の基端部側に位置し該ボス部の径方向において該ボス部よりも外側に突出しており、該切削ブレードが該ボス部に挿入された状態で該切削ブレードに接触可能な環状のフランジ部と、を有し、
該ブレード交換装置は、
該切削ブレードの一面側を着脱自在に保持する保持部と、
該切削ブレードを保持した状態の該保持部を該スピンドルの該軸心方向において該スピンドルに対して相対的に進退させ、少なくとも、該切削ブレードの該一面の反対側に位置する他面が該ブレードマウントの該フランジ部に対して所定の距離以下となる装着位置と、該切削ブレードが該ブレードマウントから離れた離脱位置と、に該保持部を位置付ける移動部と、
該フランジ部に接する箇所における該切削ブレードの厚さの情報を取得するための厚さ情報取得部と、
を備え、
該保持部の該装着位置は、
所定の厚さを有する切削ブレードを保持した該保持部を該フランジ部に対して所定の距離以下とすることで予め定められた該保持部の基準となる装着位置に対して、該厚さ情報取得部を利用して取得された該切削ブレードの厚さに基づいて調整されることを特徴とするブレード交換装置。
【請求項2】
該厚さ情報取得部は、
該切削ブレードにもしくは該切削ブレードが収容される収容ケースに設けられた識別情報の画像を取得するためのカメラユニット、該識別情報を読み取るためのリーダー、又は、該切削ブレードの厚さを測定する測定ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載のブレード交換装置。
【請求項3】
該ブレードマウントには、該フランジ部と共に該切削ブレードを挟持する環状の押さえフランジが装着され、
該押さえフランジは、該ボス部に挿入される中央孔と、該中央孔の外側に設けられ、該押さえフランジの一面側から該押さえフランジの他面側に貫通する貫通孔と、を有し、
該保持部は、該貫通孔のうち該押さえフランジの一面側に露出する開口を吸引保持することで、該押さえフランジを介して該押さえフランジの他面側で該切削ブレードを吸引保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード交換装置。
【請求項4】
該切削ブレードは、該保持部に保持される環状の基台部と、該基台部の外周部に固定される環状の砥石部と、を有し、
該保持部は、該基台部の一面側を吸引保持することで、該切削ブレードを吸引保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレード交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置で用いられるブレード交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが表面側に形成されたシリコン等の半導体ウェーハを個々のデバイスチップに分割するために、環状の切削ブレードを備える切削装置が利用される。この切削ブレードは、消耗品であり、摩耗の程度等に応じて適宜交換する必要がある。
【0003】
例えば、オペレーターが手作業で切削ブレードを交換する場合、スピンドルの先端部に固定されたブレードマウントから、使用済の切削ブレードを取り外した後、新品の切削ブレードをブレードマウントに装着する。
【0004】
装着の際には、まず、ブレードマウントのボス部を切削ブレードの貫通穴に挿入させる。次いで、ブレードマウントのフランジ部に切削ブレードを突き当てた状態で、ボス部を押さえナットに挿入させ、ボス部の外周側面のねじ溝に押えナットを締結する。
【0005】
これにより、切削ブレードは、フランジ部と、押さえナットとに、挟持され、スピンドルの軸心方向の位置が固定される。但し、切削ブレードの切り刃の刃厚は非常に薄く、破損しやすいので、交換作業には、オペレーターの熟練を要する。
【0006】
そこで、切削ブレード用のラックから新品の切削ブレードを自動で取り出して、ブレードマウントに装着する、ブレード交換装置が開発された(例えば、特許文献1参照)。ブレード交換装置により交換対象となる切削ブレードは、通常、金属製の環状基台と、当該環状基台の外周部に固定された環状の切り刃と、を有するハブ型の切削ブレード(即ち、ハブブレード)である。
【0007】
ブレード交換装置を用いてハブブレードをブレードマウントに装着する場合、例えば、ブレード交換装置のブレード把持ユニットが、環状基台の正面側を把持してハブブレードを移動させ、環状基台の背面側がフランジ部に突き当たる様に、環状基台の貫通孔にボス部を挿入させる。
【0008】
ハブブレードの環状基台は、切り刃の品種に依らず、その厚さが統一されている。それゆえ、ブレード交換装置でブレードマウントにハブブレードを装着する場合、通常、切り刃の刃厚に関係なく、環状基台の背面側がフランジ部に突き当たる所定位置まで、ハブブレードは移動させられる。
【0009】
しかし、環状基台を有さず切り刃そのもので構成されているワッシャー型の切削ブレード(即ち、ハブレスブレード)を交換するブレード交換装置もある(例えば、特許文献2参照)。ブレード交換装置は、ハブレスブレードを吸引保持する治具を有する。
【0010】
このブレード交換装置を用いて、ハブレスブレードをブレードマウントに装着する場合、まず、治具でハブレスブレードの正面側を吸引保持し、次いで、ハブレスブレードの背面側がフランジ部に接するまで、この治具を移動させる。しかし、ハブレスブレードの刃厚は、例えば、0.02mmから3.0mmまで様々ある。
【0011】
それゆえ、例えば、比較的刃厚が薄いハブレスブレードをブレードマウントに装着した後、これに代えて、比較的刃厚が厚いハブレスブレードを装着する場合、比較的刃厚が厚いハブレスブレードをフランジ部に対して過剰に押し当てることになる。この場合、ハブレスブレードが破損したり、フランジ部が損傷する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2007-98536号公報
【文献】特開2016-64450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、異なる刃厚を有する切削ブレードをブレードマウントに装着する場合に、切削ブレードの破損や、フランジ部の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、ブレードマウントを介してスピンドルの先端部に装着された環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置で用いられるブレード交換装置であって、該ブレードマウントは、該スピンドルの該先端部に固定された状態で該スピンドルの軸心方向に突出し該切削ブレードの貫通穴に挿入される円筒状のボス部と、該ボス部の基端部側に位置し該ボス部の径方向において該ボス部よりも外側に突出しており、該切削ブレードが該ボス部に挿入された状態で該切削ブレードに接触可能な環状のフランジ部と、を有し、該ブレード交換装置は、該切削ブレードの一面側を着脱自在に保持する保持部と、該切削ブレードを保持した状態の該保持部を該スピンドルの該軸心方向において該スピンドルに対して相対的に進退させ、少なくとも、該切削ブレードの該一面の反対側に位置する他面が該ブレードマウントの該フランジ部に対して所定の距離以下となる装着位置と、該切削ブレードが該ブレードマウントから離れた離脱位置と、に該保持部を位置付ける移動部と、該フランジ部に接する箇所における該切削ブレードの厚さの情報を取得するための厚さ情報取得部と、を備え、該保持部の該装着位置は、所定の厚さを有する切削ブレードを保持した該保持部を該フランジ部に対して所定の距離以下とすることで予め定められた該保持部の基準となる装着位置に対して、該厚さ情報取得部を利用して取得された該切削ブレードの厚さに基づいて調整されるブレード交換装置が提供される。
【0015】
好ましくは、該厚さ情報取得部は、該切削ブレードにもしくは該切削ブレードが収容される収容ケースに設けられた識別情報の画像を取得するためのカメラユニット、該識別情報を読み取るためのリーダー、又は、該切削ブレードの厚さを測定する測定ユニットを備える。
【0016】
また、好ましくは、該ブレードマウントには、該フランジ部と共に該切削ブレードを挟持する環状の押さえフランジが装着され、該押さえフランジは、該ボス部に挿入される中央孔と、該中央孔の外側に設けられ、該押さえフランジの一面側から該押さえフランジの他面側に貫通する貫通孔と、を有し、該保持部は、該貫通孔のうち該押さえフランジの一面側に露出する開口を吸引保持することで、該押さえフランジを介して該押さえフランジの他面側で該切削ブレードを吸引保持する。
【0017】
また、好ましくは、該切削ブレードは、該保持部に保持される環状の基台部と、該基台部の外周部に固定される環状の砥石部と、を有し、該保持部は、該基台部の一面側を吸引保持することで、該切削ブレードを吸引保持する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係るブレード交換装置は、切削ブレードの一面側を着脱自在に保持する保持部と、切削ブレードを保持した状態の保持部をスピンドルの軸心方向においてスピンドルに対して相対的に進退させ、少なくとも装着位置と離脱位置とに保持部を位置付ける移動部と、切削ブレードの厚さの情報を取得する厚さ情報取得部と、を備える。
【0019】
保持部の装着位置は、厚さ情報取得部で取得された切削ブレードの厚さに基づいて調整される。それゆえ、異なる刃厚を有する切削ブレードをブレードマウントに装着する場合であっても、切削ブレードの破損や、フランジ部の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態に係る切削装置の斜視図である。
【
図7】
図7(A)は第1の厚さを有する切削ブレードを装着する様子を示す図であり、
図7(B)は第2の厚さを有する切削ブレードを装着する様子を示す図である。
【
図9】
図9(A)は識別情報の画像を取得する様子を示す図であり、
図9(B)は切り刃の厚さの画像を取得する様子を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る切削ユニットの分解斜視図である。
【
図11】第2の実施形態に係る切削ユニットの一部断面側面図である。
【
図12】第3の実施形態に係る切削ユニットの分解斜視図である。
【
図13】第3の実施形態に係る切削ユニットの一部断面側面図である。
【
図14】第4の実施形態に係る切削ユニットの分解斜視図である。
【
図15】第4の実施形態に係る切削ユニットの一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る切削装置2の斜視図である。
図1に示すX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向、上下方向)は、互いに直交する方向である。
【0022】
なお、
図1では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の角部には、昇降機構(不図示)によって昇降するエレベータ6が設けられている。
【0023】
エレベータ6の昇降台6aの上面には、カセット8が載せられる。カセット8には、それぞれ1つの被加工物11を支持可能な複数対の支持板8aが、カセット8の高さ方向に沿って所定の間隔で配置されている。
【0024】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。被加工物11の一面側には、被加工物11の径よりも大きな径を有する円形のダイシングテープ13の中央部が貼り付けられている。
【0025】
また、ダイシングテープ13の外周部には、金属製の環状のフレーム15の一面が貼り付けられている。被加工物11は、ダイシングテープ13を介してフレーム15で支持された被加工物ユニット17の形態で、カセット8に収容されている。
【0026】
エレベータ6に対してX軸方向の一方に隣接する領域には、円形の開口4aが形成されている。開口4aには、切削後の被加工物11を洗浄するための洗浄ユニット10が配置されている。洗浄ユニット10は、スピンナテーブル12を有する。
【0027】
スピンナテーブル12の上方には、純水等の液体とエアーとが混合された気液混合流体を噴射するためのノズル(不図示)が配置されている。洗浄ユニット10の上方には、一対のガイドレール14が設けられている。
【0028】
一対のガイドレール14は、不図示の駆動機構により、Y軸方向に沿って互いに近づいたり離れたりする様に移動する。一対のガイドレール14により、被加工物ユニット17のY軸方向の位置が調整される。
【0029】
ガイドレール14に対してY軸方向の一方側に隣接する位置には、X軸方向に沿う長手部を有する矩形状の開口4bが形成されている。開口4bには、矩形状のテーブルカバー16が設けられている。
【0030】
テーブルカバー16のX軸方向に両側には、X軸方向に伸縮可能な防塵防滴カバー18が設けられている。テーブルカバー16の上方には、被加工物ユニット17を吸引保持するためのチャックテーブル20が設けられている。
【0031】
チャックテーブル20の上面は、エジェクタ等の吸引源(不図示)で発生させた負圧を利用して被加工物ユニット17を吸引して保持する保持面として機能する。テーブルカバー16上には、被加工物ユニット17のフレーム15を挟持するための一対のクランプユニット20aが設けられている。
【0032】
また、テーブルカバー16上には、一対のドレステーブル22が設けられている。各ドレステーブル22には、切削ブレード34(後述)をドレッシングするためのドレッシングボード(不図示)が吸引保持される。
【0033】
チャックテーブル20の下部には、Z軸方向に略平行な回転軸の周りにチャックテーブル20を回転させるためのモーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。回転駆動源の下部には、回転駆動源及びチャックテーブル20をX軸方向に移動させるボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)(不図示)が設けられている。
【0034】
開口4bのうち、Y軸方向で一対のガイドレール14に隣接する領域は、被加工物11の搬入及び搬出が行われる搬入搬出領域である。開口4bのうち、搬入搬出領域に対してX軸方向の一方側に位置する領域は、被加工物11の切削が行われる切削領域である。
【0035】
切削領域の上方には、金属等で形成された直方体状のカバー部材24が設けられている。カバー部材24によって覆われた空間には、一対の切削ユニット26が配置されている。各切削ユニット26には、ボールねじ式のZ軸移動機構(切り込み送り機構)(不図示)が連結されている。
【0036】
また、Z軸移動機構には、ボールねじ式のY軸移動機構(割り出し送り機構)(不図示)が連結されている。各切削ユニット26は、Z軸移動機構によりZ軸方向に沿って移動し、Y軸移動機構によりY軸方向に沿って移動する。ここで、
図2及び
図3を用いて、切削ユニット26について説明する。
【0037】
図2は、第1の実施形態に係る切削ユニット26の分解斜視図であり、
図3は、切削ユニット26の一部断面側面図である。切削ユニット26は、筒状のスピンドルハウジング28を有する。
【0038】
スピンドルハウジング28内には、円柱状のスピンドル30の一部が、回転可能な態様で収容されている。スピンドル30の基端部には、サーボモーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0039】
スピンドル30の先端部30aは、スピンドルハウジング28から突出している。先端部30aには、ブレードマウント32が固定される。ブレードマウント32は、第1のボス部32aを有し、第1のボス部32aの内側には、先端部30aに嵌合する穴部が形成されている。
【0040】
ブレードマウント32は、スピンドル30の軸心方向30b(即ち、Y軸方向)において第1のボス部32aとは反対側に突出している円筒状の第2のボス部32b(ボス部)を有する。第2のボス部32bは、環状の切削ブレード(本実施形態では、ハブレスブレード)34に形成された貫通穴34aへ挿入される。
【0041】
第2のボス部32bの基端部側であって、第2のボス部32bの径方向において第2のボス部32bよりも外側には、環状のフランジ部32cが設けられている。第2のボス部32bが切削ブレード34へ挿入されると、フランジ部32cは、切削ブレード34の他面34bと接触可能である。
【0042】
第2のボス部32bの径方向で、第2のボス部32bと、フランジ部32cと、の間には、環状の凹部32dが形成されている。凹部32dは、後述する押さえフランジ36の環状の突出部36aを受ける受け部として機能する。
【0043】
第2のボス部32bの径方向における第2のボス部32bよりも内側には、第2のボス部32bから更に突出する態様で第3のボス部32eが形成されている。第3のボス部32eの内側には、ワッシャー30dを受けるための環状の受け部32fが形成されている。
【0044】
受け部32fにワッシャー30dを配置した状態で、第3のボス部32eの内側には、雄ねじ30eが挿入される。雄ねじ30eの軸部を先端部30aのねじ穴30cに締結すれば、受け部32fがワッシャー30dを介して雄ねじ30eの頭部により押圧され、ブレードマウント32は、スピンドル30の先端部30aに固定される。
【0045】
第2のボス部32bには、円環状の押さえフランジ36の中央孔36bが挿入される。中央孔36bは、押さえフランジ36の径方向において、環状の突出部36aよりも内側に形成されている。
【0046】
突出部36aよりも外側には、環状のフランジ面36c(押さえフランジ36の他面)が形成されている。また、突出部36a及びフランジ面36cとは反対側には、環状面36d(押さえフランジ36の一面)が設けられている。
【0047】
環状面36dには、複数の貫通孔36eの各開口36e1が露出している。複数の貫通孔36eは、フランジ面36cから環状面36dまでそれぞれ貫通する態様で、押さえフランジ36の周方向に略等間隔で設けられている。
【0048】
フランジ面36cを、他面34bとは反対側に位置する切削ブレード34の一面34cに対面させた状態で、環状面36dに負圧を作用させると、貫通孔36eを介してフランジ面36cには負圧が伝達される。一面34c側がフランジ面36cで吸引保持されると、フランジ面36cは一面34cに接触する。
【0049】
押さえフランジ36を介して吸引保持された切削ブレード34は、押さえフランジ36と共に、ブレードマウント32に配置される。ブレードマウント32に配置された後、突出部36aと中央孔36bとの間に位置する押さえフランジ36の環状面36fが、ブレードマウント32側へ吸引保持される。
【0050】
ブレードマウント32の径方向において凹部32dよりも内側には、流路32gの一端部に位置する開口が形成されており、第1のボス部32aの外周側面には、この流路32gの他端部に位置する開口が形成されている。
【0051】
ブレードマウント32が先端部30aに固定された状態で、第1のボス部32aの外周部には、スピンドルハウジング28の先端部に設けられた円筒状のボス部38aが位置している。ボス部38aの内周部には、一周に渡って環状溝38bが形成されている。
【0052】
環状溝38bのうちボス部38aの頂部に対応する位置には、吸引路38cが接続されている。吸引路38cは、電磁弁40を介して、エジェクタ等の吸引源42に接続されている。
【0053】
ボス部38a、第1のボス部32a、スピンドル30等は、ロータリージョイント38を構成する。電磁弁40を開状態にすると、吸引路38c及び環状溝38bを介して、流路32gには負圧が作用する。
【0054】
この負圧により、押さえフランジ36の環状面36fがブレードマウント32へ吸引され、切削ブレード34は、押さえフランジ36と、フランジ部32cとで、挟持される。この様にして、切削ブレード34は、スピンドル30の先端部30aに装着される。
【0055】
ここで、
図1に戻って、切削装置2の他の構成要素について説明する。カバー部材24の搬入搬出領域側の側面には、ドア部44が設けられている。ドア部44が開状態のとき、カバー部材24の内部(即ち、切削室)に対して、チャックテーブル20は入退出できる。
【0056】
基台4の上方には、カバー部材24に干渉しない態様で、第1の搬送ユニット46が設けられている。第1の搬送ユニット46は、第1の水平方向移動機構(不図示)によりX軸及びY軸方向に沿って移動可能である。
【0057】
第1の搬送ユニット46は、長手部がZ軸方向に沿って配置されたエアシリンダを有する。エアシリンダを構成するロッドの下端部には、吸着ユニット46aが設けられている。吸着ユニット46aは、上面視で略十字形状の支持部材と、支持部材の下面側に設けられた複数の吸着ヘッド(不図示)と、を有する。
【0058】
吸着ユニット46aは、例えば、被加工物ユニット17のフレーム15を吸着する。支持部材のエレベータ6側の一端部には、フレーム15の一部を把持可能な把持機構46bが設けられている。
【0059】
第1の搬送ユニット46の上方には、第2の搬送ユニット48のアーム部が設けられている。第2の搬送ユニット48は、第2の水平方向移動機構(不図示)によりX軸及びY軸方向に沿って移動可能である。
【0060】
第2の搬送ユニット48も、長手部がZ軸方向に沿って配置されたエアシリンダを有する。エアシリンダを構成するロッドの下端部には、吸着ユニット48aが設けられている。吸着ユニット48aは、上面視で略十字形状の支持部材と、支持部材の下面側に設けられた複数の吸着ヘッド(不図示)と、を有する。
【0061】
ここで、切削装置2を用いて被加工物11を切削する手順を簡単に説明する。まず、第1の搬送ユニット46が、把持機構46bでフレーム15を把持した状態で、カセット8から一対のガイドレール14へ被加工物ユニット17を引き出す。
【0062】
一対のガイドレール14で被加工物ユニット17のY軸方向の位置を調整した後、第1の搬送ユニット46が、吸着ユニット46aでフレーム15を吸着し、搬入搬出領域にあるチャックテーブル20へ被加工物ユニット17を搬送する。
【0063】
そして、チャックテーブル20が、被加工物11の裏面側を吸引保持した状態で、切削領域へ移動する。アライメント等を行った後、チャックテーブル20と、切削ユニット26と、が相対的にX軸方向に移動することで、回転する切削ブレード34により被加工物11が切削される。
【0064】
切削後、チャックテーブル20が、再び搬入搬出領域へ戻る。そして、第2の搬送ユニット48が、吸着ユニット48aでフレーム15を吸着し、チャックテーブル20から洗浄ユニット10へ被加工物ユニット17を搬送する。
【0065】
スピンナテーブル12が、被加工物11の裏面側を吸引保持した状態で回転すると共に、ノズルから被加工物11の表面側に気液混合流体を噴射することで、被加工物11は洗浄される。その後、被加工物11を乾燥させる。
【0066】
洗浄及び乾燥の後、第1の搬送ユニット46が、吸着ユニット46aでフレーム15を吸着し、被加工物ユニット17を一対のガイドレール14へ搬送する。その後、把持機構46bを利用して、被加工物ユニット17をカセット8へ押し込む。
【0067】
複数の被加工物11の切削を進めるにつれて、切削ブレード34は摩耗するので、切削ブレード34を交換する必要がある。本実施形態の切削装置2は、ワッシャー型の切削ブレード34を交換するためのブレード交換装置50を有する。
【0068】
ブレード交換装置50は、切削ブレード34の搬送、交換等を行うブレード交換ユニット52を有する(
図4参照)。
図4は、ブレード交換ユニット52の斜視図である。ブレード交換ユニット52は、基台4に対して位置が固定されたベース板54を有する。
【0069】
ベース板54には、昇降機構56が設けられている。昇降機構56は、例えば、ベース板54の下部に設けられたモーター(不図示)と、モーターの回転軸に連結された駆動プーリー(不図示)と、を有する。
【0070】
ベース板54の上部には、従動プーリー(不図示)が設けられている。駆動プーリーと従動プーリーとには、1本の歯付無端ベルト(不図示)が架けられており、この歯付無端ベルトの一部には、金属製の第1の支持具58が連結されている。
【0071】
第1の支持具58は、昇降機構56の動作に伴いZ軸方向に沿って上下移動する。なお、昇降機構56は、ボールねじ式であってもよい。第1の支持具58には、多関節型ロボット60が取り付けられている。
【0072】
多関節型ロボット60は、回転軸がZ軸方向に略平行に配置されたモーター等の回転駆動源を有する第1の回転機構62を有する。第1の回転機構62の回転軸には、第1のアーム62aの一端部が取り付けられている。
【0073】
第1のアーム62aの他端部には、第2の回転機構64が取り付けられている。第2の回転機構64は、回転軸がZ軸方向に略平行に配置されたモーター等の回転駆動源を有する。第2の回転機構64の回転軸には、第2のアーム64aの一端部が取り付けられている。
【0074】
第2のアーム64aの他端部には、第3の回転機構66が取り付けられている。第3の回転機構66は、回転軸がZ軸方向に略平行に配置されたモーター等の回転駆動源を有する。第3の回転機構66の回転軸には、金属製のブラケット68が取り付けられている。
【0075】
ブラケット68には、切削ブレード34を交換するための交換機構72が固定されている。昇降機構56及び多関節型ロボット60は、この交換機構72を移動させる移動部70を構成する。
図5は、交換機構72の側面図である。
【0076】
交換機構72は、略円筒状の筐体72aを有する。筐体72aの内部には、円筒の略中心に位置する回転軸72bの周りに筐体72aを回転させるための、モーター等の回転駆動源(不図示)が収容されている。
【0077】
筐体72aの側面には、回転軸72bを挟む様に、一対の保持治具74(保持部)が配置されている。各保持治具74は、切削ブレード34の一面34c側を着脱自在に保持できる。
【0078】
保持治具74は、金属等で形成された有底円筒状の枠体を有する。枠体内部の開口部近傍には、押さえフランジ36の着脱時に使用される円環状のリップ部が配置されている。当該リップ部は、ゴム、樹脂、エラストマー等の弾性材料で形成されている。
【0079】
リップ部の表面には、リップ部の周方向に沿って複数の第1開口(不図示)が形成されている。各第1開口は、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続された第1流路(不図示)と、エアーを噴射するエアー供給源(不図示)に接続された第2流路(不図示)と、に接続されている。
【0080】
第1流路及び第2流路には、個別に電磁弁(不図示)が設けられており、第1流路を開状態とし、第2流路を閉状態とすると、第1開口には負圧が伝達される。例えば、押さえフランジ36は、この負圧によりリップ部で吸引保持される。
【0081】
これに対して、第1流路を閉状態とし、第2流路を開状態とすると、第1開口からは、エアーが噴射される。エアーの噴射は、例えば、リップ部から押さえフランジ36を離す際に利用される。
【0082】
また、枠体の内周側面と、リップ部の外周側面との間には、金属等で形成された環状の非接触吸引部(不図示)が設けられている。非接触吸引部の外周側面には、非接触吸引部の周方向に沿って、複数の第2開口(不図示)が形成されている。
【0083】
各第2開口は、第3流路(不図示)を介して、上述のエアー供給源(不図示)に接続されている。第3流路にも、電磁弁(不図示)が設けられている。第3流路を開状態として各第2開口からエアーを噴射すると旋回流が形成され、ベルヌーイの定理に従い、旋回流の旋回中心近傍に負圧が生じる。
【0084】
この様にして形成される負圧は、ブレードストック部76(
図6参照)に配置された切削ブレード34を、押さえフランジ36を介して保持治具74で吸引保持する際に利用される。
図6は、ブレードストック部76の斜視図である。
【0085】
ブレードストック部76は、円盤状のストックボード78を有する。本実施形態のストックボード78は、可視光を透過させる略透明の材料(例えば、アクリル樹脂)で形成されている。
【0086】
ストックボード78の上面78a側には、各々収容ケース80を収容するための複数の第1凹部78bが、ストックボード78の周方向に沿って形成されている。各第1凹部78bには、略透明な樹脂製の収容ケース80が配置される。
【0087】
なお、
図6では、便宜上、1つの収容ケース80を省略している。収容ケース80の中央部には、円盤状の突起部80aが形成されており、この突起部80aに切削ブレード34の貫通穴34aを配置することで、1つの収容ケース80につき1つの切削ブレード34が収容される。
【0088】
また、上面78a側には、押さえフランジ36を収容するための第2凹部78cが形成されている。第2凹部78cは円環状の凹部であり、凹部の中央部には、押さえフランジ36の中央孔36bに挿入される円柱状の突起部78dが設けられている。
【0089】
第2凹部78cには、環状面36dが上方を向く態様で、押さえフランジ36が収容される。ストックボード78の中央部の下面側には、回転軸82が接続されている。回転軸82よりも外側、且つ、ストックボード78の下方には、リング照明84が配置されている。
【0090】
リング照明84の貫通孔の下方には、上方を向く態様でカメラユニット(厚さ情報取得部)86が配置されている。カメラユニット86は、対物レンズ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子を有する。カメラユニット86は、収容ケース80又は切削ブレード34に設けられた識別情報88の画像を取得する。
【0091】
識別情報88は、バーコード、二次元コード、文字、図形、記号等で構成されている。
図6に示す例では、識別情報88は、収容ケース80に設けられているが、識別情報88は、切削ブレード34に設けられてもよい(
図9(A)参照)。
【0092】
なお、識別情報88は、収容ケース80又は切削ブレード34に直接印字されてよく、識別情報88が印字されたシールが、収容ケース80又は切削ブレード34に貼り付けられてもよい。
【0093】
切削ブレード34は、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。それゆえ、切削ブレード34の表面には、砥粒に起因する凹凸が形成されている。
【0094】
これに対して、収容ケース80の表面は、切削ブレード34の表面に比べて凹凸が小さい。それゆえ、切削ブレード34の表面に識別情報88を設ける場合に比べて、収容ケース80の表面に識別情報88を設ける方が、カメラユニット86で識別情報88の画像をより正確に取得できる。
【0095】
識別情報88は、例えば、切削ブレード34の厚さ34d(
図3参照)、外径、内径、砥粒の種類、砥粒の粒度、集中度、ボンドの種類、シリアル番号、収容される収容ケース80を特定する情報等を含む。
【0096】
カメラユニット86で取得された画像を、切削装置2の制御ユニット90(
図1参照)が解析して読み取ることで、例えば、10μmから5mmまでの種々の値に設定されている切削ブレード34の厚さ34dの情報が取得される。
【0097】
制御ユニット90は、例えば、コンピュータによって構成されており、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含む。
【0098】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット90の機能が実現される。補助記憶装置には、カメラユニット86で取得した画像に基づいて、切削ブレード34の厚さ34dの情報等を読み取るためのプログラムも記憶されている。
【0099】
厚さ34dの情報等を読み取るためのプログラムは、例えば、識別情報88が1次元コード、2次元コード等で構成されている場合、これらのコードをデコードする。また、当該プログラムは、識別情報88が文字で構成されている場合、光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)を実行してもよい。
【0100】
制御ユニット90は、エレベータ6、洗浄ユニット10、ガイドレール14、チャックテーブル20、切削ユニット26、第1の搬送ユニット46、第2の搬送ユニット48、ブレード交換装置50等の動作も制御する。
【0101】
制御ユニット90が、切削ユニット26のY軸移動機構、昇降機構56、多関節型ロボット60等を動作させることで、保持治具74は、少なくとも装着位置と、離脱位置とに、位置付けられる。
【0102】
保持治具74の装着位置とは、切削ブレード34の他面34bがブレードマウント32のフランジ部32cに対して所定の距離以下となるときにおける、切削ブレード34を吸引保持した保持治具74の位置である(
図7(A)、
図7(B)、
図8(A)及び
図8(B)参照)。
【0103】
例えば、保持治具74が装着位置にあるとき、切削ブレード34の他面34bはブレードマウント32のフランジ部32cに接する。なお、保持治具74が装着位置にあるとき、他面34bとフランジ部32cとの間には、僅かな(例えば、約0.1mmから1.0mm程度の)隙間が形成されてもよい。
【0104】
また、保持治具74の離脱位置とは、切削ブレード34がブレードマウント32から離れた位置にあるときにおける、切削ブレード34を吸引保持した保持治具74の位置である(例えば、
図9(A)参照)。
【0105】
例えば、保持治具74が離脱位置にあるとき、切削ブレード34の他面34bは、軸心方向30bにおいて第3のボス部32eの先端部から所定の距離だけ離れた位置にある。次に、保持治具74を利用して切削ブレード34を交換する手順を説明する。
【0106】
切削ブレード34の交換に先立ち、まず、保持治具74の装着位置を設定する(ティーチ工程)。ティーチ工程では、例えば、切削装置2に設けられた光学カメラ(不図示)を利用して、オペレーターが、保持治具74の位置を観察しながら装着位置の空間座標を設定する。
【0107】
具体的には、所定の厚さ34dを有する切削ブレード34を押さえフランジ36を介して保持治具74で吸引保持した状態で、切削ユニット26と保持治具74とを相対的にY軸方向(軸心方向30b)に沿って進退させることで、装着位置を決定し、その装着位置の空間座標を制御ユニット90に記憶させる。
【0108】
なお、上述の観察、進退、決定などは、切削装置2に設けられた不図示の表示入力装置(例えば、タッチパネル)を利用して行われる。ティーチ工程の後、適切な時期に切削ブレード34の交換が行われる(交換工程)。
【0109】
交換工程では、まず、カメラユニット86を利用して、新しい切削ブレード34の厚さ34dの情報等を取得する(
図6参照)。次に、移動部70を利用して、交換機構72をブレードストック部76上に移動させ、新しい切削ブレード34を、押さえフランジ36を介して一方の保持治具74で吸引保持する。
【0110】
次に、ドア部44を経由し、交換機構72をカバー部材24の内部へ移動させ、一方の保持治具74とは異なる他方の保持治具74を、ブレードマウント32に装着されている押さえフランジ36に対面させる。
【0111】
そして、他方の保持治具74に対してスピンドル30が近づく様に、Y軸移動機構で切削ユニット26を移動させ、ブレードマウント32に装着されている押さえフランジ36及び使用済の切削ブレード34を他方の保持治具74で吸引保持する。なお、このとき、ロータリージョイント38に接続された電磁弁40は閉状態にされている。
【0112】
使用済の切削ブレード34を他方の保持治具74で吸引保持した後、Y軸方向に沿って他方の保持治具74がブレードマウント32から離れる様に、切削ユニット26を移動(後退)させる。これにより、他方の保持治具74は、ブレードマウント32及びスピンドル30に対して相対的に移動し、離脱位置に移動する。
【0113】
次いで、交換機構72を回転軸72bの周りに180度回転させた後、Y軸方向に沿って一方の保持治具74がブレードマウント32に近付く様に、切削ユニット26を移動(前進)させる。これにより、一方の保持治具74は、ブレードマウント32及びスピンドル30に対して相対的に移動し、装着位置に移動する。
【0114】
なお、交換工程では、ブレードマウント32に既に装着されている押さえフランジ36を交換することなく、切削ブレード34のみを交換してもよい。具体的には、まず、一方の保持治具74で使用済の切削ブレード34及び押さえフランジ36を吸引保持した状態で、この一方の保持治具74をブレードストック部76へ移動させる。
【0115】
そして、使用済の切削ブレード34を空の収容ケース80に配置した後、新しい切削ブレード34を押さえフランジ36を介して一方の保持治具74で吸引保持する。その後、一方の保持治具74を装着位置に配置する。この様にして、切削ブレード34を交換することもできる。
【0116】
一方の保持治具74の装着位置は、新しい切削ブレード34の厚さ34dに基づいて調整される。
図7(A)は、第1の厚さ34d
1を有する新しい切削ブレード34を、ブレードマウント32に装着する様子を示す図である。
【0117】
第1の厚さ34d1は、ティーチ工程で使用された切削ブレード34の厚さ34dに比べて大きい。この場合、制御ユニット90は、厚さ34d、34d1の差分に応じて、切削ユニット26の前進量を減らすことにより、一方の保持治具74の装着位置を調整する。
【0118】
それゆえ、設定された厚さ34dとは異なる第1の厚さ34d1を有する新しい切削ブレード34をブレードマウント32に装着する場合であっても、新しい切削ブレード34の破損や、フランジ部32cの損傷を防止できる。
【0119】
図7(B)は、第2の厚さ34d
2を有する新しい切削ブレード34を、ブレードマウント32に装着する様子を示す図である。第2の厚さ34d
2は、ティーチ工程で使用された切削ブレード34の厚さ34dに比べて小さい。
【0120】
この場合、制御ユニット90は、厚さ34d、34d2の差分に応じて、切削ユニット26の前進量を増やすことにより、一方の保持治具74の装着位置を調整する。それゆえ、新しい切削ブレード34の破損や、フランジ部32cの損傷を防止できると共に、新しい切削ブレード34及び押さえフランジ36をブレードマウント32に適切に配置できる。
【0121】
図8(A)は、
図7(A)の部分拡大図であり、
図8(B)は、
図7(B)の部分拡大図である。
図8(A)に示す様に、比較的厚い第1の厚さ34d
1を有する切削ブレード34をブレードマウント32に装着する場合、制御ユニット90は、保持治具74の先端部を装着位置74a
1(
図8(B)参照)に配置する。
【0122】
これに対して、比較的薄い第2の厚さ34d
2を有する切削ブレード34をブレードマウント32に装着する場合、制御ユニット90は、
図8(B)に示す様に、保持治具74の先端部を、装着位置74a
1よりもフランジ部32cに近い装着位置74a
2に配置する。
【0123】
次に、切削ブレード34の厚さ情報の取得方法の変形例について説明する。
図9(A)は、ブレードストック部76のカメラユニット86とは異なるカメラユニット(厚さ情報取得部)94で、切削ブレード34に設けられた識別情報88の画像を取得する様子を示す図である。
【0124】
カメラユニット94は、例えば、基台4上の任意の位置に固定される。押さえフランジ36を介して保持治具74で一面34c側が吸引保持された切削ブレード34の他面34bを、カメラユニット94に対面させると、カメラユニット94は、他面34bに設けられた識別情報88の画像を取得できる。
【0125】
なお、カメラユニット94は、オペレーターが手に持つことができる携帯型であってもよい。この場合、オペレーターがブレードストック部76にカメラユニット94を近づけることで、収容ケース80又は切削ブレード34に設けられた識別情報88の画像を、カメラユニット94で取得できる。
【0126】
また、カメラユニット94は、ブレード交換ユニット52の交換機構72に設けられてもよい。この場合、保持治具74がブレードストック部76に配置された切削ブレード34に近づくときに、収容ケース80又は切削ブレード34に設けられた識別情報88の画像を、カメラユニット94で取得できる。
【0127】
ところで、ブレードストック部76の回転軸82がZ軸方向に対して略直交する所定の向きに沿って配置されている場合、対物レンズ(不図示)の光軸が当該所定方向に沿う様に配置されたカメラユニット86を用いて、識別情報88の画像を取得してもよい。
【0128】
図9(B)は、他の変形例において、カメラユニット(測定ユニット)96で切削ブレード34の厚さ34dの画像を取得する様子を示す図である。カメラユニット96は、基台4上の任意の位置に固定されてよい。なお、カメラユニット96は、オペレーターが手に持つことができる携帯型であってもよい。
【0129】
例えば、
図9(B)に示す様に、切削ブレード34の中心軸とカメラユニット96の対物レンズ(不図示)の光軸とが略直交する様に保持治具74及びカメラユニット96の位置を調整し、切り刃の側面にカメラユニット96を配置すれば、切り刃の画像を取得できる。
【0130】
取得された画像は、制御ユニット90にインストールされている所定のプログラムで画像処理される。1画素に対応する実際の長さは予め定められており、所定のプログラムが切削ブレード34の厚さ方向の画素数を実際の長さに変換することで、厚さ34dが算出される。
【0131】
なお、測定ユニットとして、カメラユニット94、96に代えて、1つ又は2つのセンサヘッドを有する反射型レーザー変位計(不図示)を用いることもできる。センサヘッドは、レーザービームを出射する半導体レーザーを有する。また、センサヘッドは、測定対象へ照射されたレーザービームの反射光を受光する受光素子を有する。
【0132】
例えば、切削ブレード34を間に挟んで互いに対向する様に2つのセンサヘッドを配置し、一のセンサヘッドから他面34bまでの距離と、他のセンサヘッドから一面34cまでの距離とを、2つのセンサヘッド間の距離から、差し引くことで、厚さ34dが算出される。
【0133】
なお、厚さ34dの算出は、反射型レーザー変位計に設けられたプロセッサにより行われてもよい。また、切削ブレード34の厚さ34dの情報の取得は、カメラユニット86、94、96による画像取得や、レーザー変位計による厚さ測定に限定されない。
【0134】
例えば、識別情報88がバーコード又は二次元コードである場合に、厚さ情報取得部としてリーダー(スキャナー)94aを用いて、識別情報88を読み取ることもできる(
図9(A)参照)。リーダー94aは、光源と、光源からの反射光を受光するラインセンサ又はエリアセンサと、当該センサで受光した信号をデコードするプロセッサと、を有する。
【0135】
なお、識別情報88がバーコードである場合、リーダー94aは、レーザービームを照射可能な光源と、レーザービームを走査するポリゴンミラーと、反射光を受光するセンサと、当該センサで受光した信号をデコードするプロセッサと、を有してもよい。
【0136】
また、例えば、厚さ34dの情報を格納したIC(Integrated Circuit)タグ、RFID(radio frequency identifier)タグ等が、切削ブレード34に設けられる場合、カメラユニット86、94、96に代えて、ICタグ、RFIDタグから情報を読み取るICリーダー、RFIDリーダー等の非接触型のリーダー(厚さ情報取得部)94aを用いることもできる。
【0137】
次に、第2の実施形態について説明する。
図10は、第2の実施形態に係る切削ユニット100の分解斜視図であり、
図11は、第2の実施形態に係る切削ユニット100の一部断面側面図である。切削ユニット100は、ロータリージョイント38を有しない。
【0138】
切削ユニット100では、負圧による吸引ではなく、ブレードマウント32の第3のボス部32eに形成されたねじ溝32hに、内周側面に雌ねじ102aが形成された押さえナット102を締結することで、押さえフランジ36及びフランジ部32cで、切削ブレード34を挟持する。
【0139】
これにより、スピンドル30の先端部30aに切削ブレード34が装着される。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、設定された厚さ34dとの差分に応じて、制御ユニット90が、保持治具74の装着位置を調整する。これにより、切削ブレード34の破損や、フランジ部32cの損傷を防止できる。
【0140】
押さえナット102の外周側面には、押さえナット102を把持する際に利用される環状溝102bが形成されている。押さえナット102は、交換機構72のナット保持部104(
図4、
図5参照)により回転させられる。
【0141】
図4、
図5に示す様に、ナット保持部104は、押さえナット102の外周部を保持するための4つの爪部106を有する。各爪部106の基端部は、回転軸108に対して連結されている。
【0142】
回転軸108には、モーター等の駆動部110が連結されており、駆動部110を動作させれば、各爪部106は回転軸108の周りに回転する。回転軸108は、
図5に示す一方向にも、これとは反対の他方向にも回転できる。
【0143】
例えば、ナット保持部104を一方向に回転させると、押さえナット102が第3のボス部32eに締結され、ナット保持部104を他方向に回転させると、押さえナット102が第3のボス部32eから取り外される。
【0144】
次に、第3の実施形態について説明する。
図12は、第3の実施形態に係る切削ユニット112の分解斜視図であり、
図13は、第3の実施形態に係る切削ユニット112の一部断面側面図である。
【0145】
第3の実施形態の切削ユニット112は、ワッシャー型の切削ブレード34ではなく、ハブ型の切削ブレード114を有する。係る点が第1の実施形態と異なる。切削ブレード114は、アルミニウム合金等の金属で形成された円環状の基台部116を有する。
【0146】
基台部116は、突出部36aに対応する環状の突出部116aを有する。基台部116の径方向において突出部116aよりも内側には、貫通穴116bが形成されている。貫通穴116bには、ブレードマウント32の第2のボス部32bが挿入される。
【0147】
基台部116の径方向において突出部116aの外側には、環状のフランジ面116cが形成されている。切り刃として機能する円環状の砥石部118は、その貫通穴118aの縁部が突出部116aの外周部に接し、且つ、第1面118cがフランジ面116cに接した状態で、基台部116に接着剤で固定されている。
【0148】
この様に、第3の実施形態では、砥石部118を基台部116の外周部に固定することで、基台部116及び砥石部118が一体化されている。但し、基台部116には、貫通孔36eは形成されていない。
【0149】
突出部116a及びフランジ面116cとは反対側に位置する環状面116d(即ち、切削ブレード114の一面)側を保持治具74で吸引保持すると、切削ブレード114は、保持治具74で吸引保持される。
【0150】
保持治具74で吸引保持された切削ブレード114を、ブレードマウント32に配置する場合、例えば、突出部116aが凹部32dに進入し、第1面118cの反対側に位置する第2面118b(即ち、切削ブレード114の他面)がフランジ部32cに接する様に、保持治具74の装着位置が調整される。
【0151】
次いで、突出部116aの内側に位置する環状面116eが、ロータリージョイント38によりブレードマウント32側へ吸引されることで、切削ブレード114がブレードマウント32に装着される。
【0152】
砥石部118の厚さ118dは、第2面118bから第1面118cまでの長さである。基台部116の厚さは、どの切削ブレード114においても略一定であるが、砥石部118の厚さ118dは、例えば、10μmから5mmまでの種々の値に設定されている。
【0153】
第3の実施形態においても、新たな切削ブレード114を吸引保持した保持治具74を装着位置に配置する場合に、第1の実施形態と同様に、ティーチ工程で設定された厚さ118dとの差分に応じて、保持治具74の装着位置を制御ユニット90が調整する。
【0154】
これにより、切削ブレード114の破損や、フランジ部32cの損傷を防止できる。次に、第4の実施形態について説明する。
図14は、第4の実施形態に係る切削ユニット120の分解斜視図であり、
図15は、第4の実施形態に係る切削ユニット120の一部断面側面図である。
【0155】
第4の実施形態の切削ユニット120では、第3の実施形態と同様に、ハブ型の切削ブレード114がブレードマウント32に装着される。但し、切削ユニット120は、ロータリージョイント38を有しない。
【0156】
切削ユニット120では、負圧による吸引ではなく、第2の実施形態(
図10及び
図11参照)と同様に、押さえナット102をねじ溝32hに締結することで、押さえナット102と、フランジ部32cとで、切削ブレード114を挟持する。
【0157】
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ティーチ工程で設定された厚さ118dとの差分に応じて、新たな切削ブレード114を吸引保持した保持治具74の装着位置を制御ユニット90が調整する。これにより、切削ブレード114の破損や、フランジ部32cの損傷を防止できる。
【0158】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、負圧を利用して切削ブレード34、114をブレードマウント32側へ吸引する切削ユニット26、112(
図2、
図3、
図12、
図13参照)においても、切削ユニット100、120(
図10、
図11、
図14、
図15参照)と同様に、ブレードマウント32の第3のボス部32eに押さえナット102を締結することもできる。
【符号の説明】
【0159】
2:切削装置、4:基台、4a,4b:開口、6:エレベータ、6a:昇降台
8:カセット、8a:支持板、10:洗浄ユニット、11:被加工物
12:スピンナテーブル、13:ダイシングテープ、14:ガイドレール
15:フレーム、16:テーブルカバー、17:被加工物ユニット
18:防塵防滴カバー、20:チャックテーブル、20a:クランプユニット
22:ドレステーブル、24:カバー部材
26,100,112,120:切削ユニット
28:スピンドルハウジング、30:スピンドル、30a:先端部、30b:軸心方向
30c:ねじ穴、30d:ワッシャー、30e:雄ねじ
32:ブレードマウント、32a:第1のボス部、32b:第2のボス部(ボス部)
32c:フランジ部、32d:凹部、32e:第3のボス部、32f:受け部
32g:流路、32h:ねじ溝
34,114:切削ブレード、34a:貫通穴、34b:他面、34c:一面
34d:厚さ、34d1:第1の厚さ、34d2:第2の厚さ
36:押さえフランジ、36a:突出部、36b:中央孔、36c:フランジ面
36d:環状面、36e:貫通孔、36e1:開口、36f:環状面
38:ロータリージョイント、38a:ボス部、38b:環状溝、38c:吸引路
40:電磁弁、42:吸引源、44:ドア部
46:第1の搬送ユニット、46a:吸着ユニット、46b:把持機構
48:第2の搬送ユニット、48a:吸着ユニット
50:ブレード交換装置、52:ブレード交換ユニット、54:ベース板
56:昇降機構、58:第1の支持具、60:多関節型ロボット
62:第1の回転機構、62a:第1のアーム
64:第2の回転機構、64a:第2のアーム
66:第3の回転機構、68:ブラケット
70:移動部、72:交換機構、72a:筐体、72b:回転軸
74:保持治具(保持部)、74a1,74a2:装着位置
76:ブレードストック部、78:ストックボード
78a:上面、78b:第1凹部、78c:第2凹部、78d:突起部
80:収容ケース、80a:突起部、82:回転軸
84:リング照明、86:カメラユニット(厚さ情報取得部)、88:識別情報
90:制御ユニット
94:カメラユニット(厚さ情報取得部)、94a:リーダー(厚さ情報取得部)
96:カメラユニット(測定ユニット)
102:押さえナット、102a:雌ねじ、102b:環状溝
104:ナット保持部、106:爪部、108:回転軸、110:駆動部
116:基台部、116a:突出部、116b:貫通穴、116c:フランジ面
116d:環状面、116e:環状面
118:砥石部、118a:貫通穴、118b:第2面、118c:第1面
118d:厚さ