IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-検査装置および検査方法 図1
  • 特許-検査装置および検査方法 図2
  • 特許-検査装置および検査方法 図3
  • 特許-検査装置および検査方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20240902BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240902BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01J1/42 E
G01J1/02 L
G01M11/00 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020047561
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148545
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-034320(JP,A)
【文献】特開2003-014583(JP,A)
【文献】特開2012-035277(JP,A)
【文献】特開2016-170104(JP,A)
【文献】特開2000-012923(JP,A)
【文献】特開2015-190934(JP,A)
【文献】特開2003-211279(JP,A)
【文献】特開2017-159319(JP,A)
【文献】特開2017-131945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - B23K 26/70
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
G01M 11/00 - G01M 11/08
G02B 26/10 - G02B 26/12
H01S 3/00 - H01S 3/02
H01S 3/04 - H01S 3/0959
H01S 3/10 - H01S 3/102
H01S 3/105 - H01S 3/131
H01S 3/136 - H01S 3/213
H01S 3/23 - H01S 4/00
H04N 1/024 - H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光線を発振する発振器の精度を検査する検査装置であって、
該発振器が発振した直後のレーザー光線を減光させる減光板と、該減光板によって減光されたレーザー光線を複数の画素で撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を処理する処理手段と、該処理手段によって処理された画像を表示する表示手段と、を備え、
該処理手段は、レーザー光線の強さを仕切る少なくとも内輪と外輪の2つの閾値を備え、さらに、該処理手段は、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも大きい円形状領域と、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも小さく且つ外輪の閾値よりも大きい環状領域と、にレーザー光線の断面画像を区画し、該断面画像に基づいて該円形状領域の面積を算出し、算出した該円形状領域の面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該円形状領域の重心を算出し、且つ、該断面画像に基づいて該円形状領域および該環状領域の合計面積を算出し、算出した該円形状領域および該環状領域の合計面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該環状領域の重心を算出し、
該表示手段は該内輪と、該内輪の中心と、該外輪と、該外輪の中心とを表示する検査装置。
【請求項2】
該処理手段は、該内輪の閾値と該外輪の閾値との間に少なくとも中輪の閾値を備える請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
該処理手段は該内輪の中心と該外輪の中心もしくは該中輪の中心とのズレ量を算出し該表示手段は該ズレ量を表示する請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
レーザー光線を発振する発振器と、レーザー光線を集光する集光器と、該発振器と該集光器との間に配設されレーザー光線を導く光学系と、該集光器が集光したレーザー光線によって加工が施される被加工物を保持する保持手段と、を含むレーザー加工装置における検査方法であって、
請求項1からまでのいずれかに記載の該検査装置の該撮像手段を該レーザー加工装置の該発振器と該光学系との間に位置づける撮像手段位置づけ工程と、
該レーザー加工装置の該発振器が発振した直後のレーザー光線を該撮像手段で撮像する撮像工程と、
該撮像手段によって撮像された画像を該処理手段で処理する処理工程と、
該処理手段で処理した画像を該表示手段に表示させると共に、該表示手段に表示させた画像によって該レーザー加工装置の該発振器の精度を検査する検査工程と、
を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を発振する発振器の精度を検査する検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、ウエーハを保持する保持手段と、保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持手段とレーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする送り手段とから概ね構成されている。
【0004】
レーザー光線照射手段は、被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を被加工物に照射してアブレーションによって被加工物の上面に溝加工を施すタイプ(たとえば特許文献1参照)と、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を被加工物の内部に位置づけてレーザー光線を被加工物に照射して被加工物の内部に改質層を形成するタイプ(たとえば特許文献2参照)とが存在する。
【0005】
このようなレーザー加工装置において、レーザー光線のガウシアン分布の等光線(同じ強さの複数の点を結んだ線)を確認するにはM2測定器が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-305420号公報
【文献】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、M2測定は、集光器によって集光されたスポット形状を観察するものであり、レーザー光線のガウシアン分布の等光線を充分な解像度で検出することができず、実際に被加工物にレーザー光線を照射して微妙なスポット形状の歪み(等光線の歪み)を加工結果によって知るところが多く、M2測定は参考程度の精度で信頼性に欠けるという問題がある。
【0008】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、レーザー光線のガウシアン分布の等光線を高精度に検出することができる検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の局面は上記課題を解決するために以下の検査装置を提供する。すなわち、レーザー光線を発振する発振器の精度を検査する検査装置であって、該発振器が発振した直後のレーザー光線を減光させる減光板と、該減光板によって減光されたレーザー光線を複数の画素で撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を処理する処理手段と、該処理手段によって処理された画像を表示する表示手段と、を備え、該処理手段は、レーザー光線の強さを仕切る少なくとも内輪と外輪の2つの閾値を備え、さらに、該処理手段は、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも大きい円形状領域と、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも小さく且つ外輪の閾値よりも大きい環状領域と、にレーザー光線の断面画像を区画し、該断面画像に基づいて該円形状領域の面積を算出し、算出した該円形状領域の面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該円形状領域の重心を算出し、且つ、該断面画像に基づいて該円形状領域および該環状領域の合計面積を算出し、算出した該円形状領域および該環状領域の合計面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該環状領域の重心を算出し、該表示手段は該内輪と、該内輪の中心と、該外輪と、該外輪の中心とを表示する検査装置を本発明の第一の局面は提供する。
【0010】
好ましくは、該処理手段は、該内輪の閾値と該外輪の閾値との間に少なくとも中輪の閾値を備える。該処理手段は該内輪の中心と該外輪の中心もしくは該中輪の中心とのズレ量を算出し該表示手段は該ズレ量を表示するのが望ましい
【0011】
本発明の第二の局面は上記課題を解決するために以下の検査方法を提供する。すなわち、レーザー光線を発振する発振器と、レーザー光線を集光する集光器と、該発振器と該集光器との間に配設されレーザー光線を導く光学系と、該集光器が集光したレーザー光線によって加工が施される被加工物を保持する保持手段と、を含むレーザー加工装置における検査方法であって、上記のとおりの該検査装置の該撮像手段を該レーザー加工装置の該発振器と該光学系との間に位置づける撮像手段位置づけ工程と、該レーザー加工装置の該発振器が発振した直後のレーザー光線を該撮像手段で撮像する撮像工程と、該撮像手段によって撮像された画像を該処理手段で処理する処理工程と、該処理手段で処理した画像を該表示手段に表示させると共に、該表示手段に表示させた画像によって該レーザー加工装置の該発振器の精度を検査する検査工程と、を含む検査方法を本発明の第二の局面は提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第一の局面の検査装置は、発振器が発振した直後のレーザー光線を減光させる減光板と、該減光板によって減光されたレーザー光線を複数の画素で撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を処理する処理手段と、該処理手段によって処理された画像を表示する表示手段と、を備え、該処理手段は、レーザー光線の強さを仕切る少なくとも内輪と外輪の2つの閾値を備え、さらに、該処理手段は、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも大きい円形状領域と、レーザー光線の強さが内輪の閾値よりも小さく且つ外輪の閾値よりも大きい環状領域と、にレーザー光線の断面画像を区画し、該断面画像に基づいて該円形状領域の面積を算出し、算出した該円形状領域の面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該円形状領域の重心を算出し、且つ、該断面画像に基づいて該円形状領域および該環状領域の合計面積を算出し、算出した該円形状領域および該環状領域の合計面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に該環状領域の重心を算出し、該表示手段は該内輪と、該内輪の中心と、該外輪と、該外輪の中心とを表示するので、レーザー光線のガウシアン分布の等光線を高精度に検出することができる。
【0013】
本発明の第二の局面の検査方法は、レーザー光線を発振する発振器と、レーザー光線を集光する集光器と、該発振器と該集光器との間に配設されレーザー光線を導く光学系と、該集光器が集光したレーザー光線によって加工が施される被加工物を保持する保持手段と、を含むレーザー加工装置における検査方法であって、上記のとおりの該検査装置の該撮像手段を該レーザー加工装置の該発振器と該光学系との間に位置づける撮像手段位置づけ工程と、該レーザー加工装置の該発振器が発振した直後のレーザー光線を該撮像手段で撮像する撮像工程と、該撮像手段によって撮像された画像を該処理手段で処理する処理工程と、該処理手段で処理した画像を該表示手段に表示させると共に、該表示手段に表示させた画像によって該レーザー加工装置の該発振器の精度を検査する検査工程と、を含むので、レーザー光線のガウシアン分布の等光線を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従って構成された検査装置のブロック図。
図2】(a)内輪、中輪および外輪のそれぞれの中心が整合しているレーザー光線の断面画像の模式図、(b)内輪、中輪および外輪のそれぞれの中心がズレているレーザー光線の断面画像の模式図。
図3】本発明の検査方法によって検査され得るレーザー加工装置の斜視図。
図4図3に示すレーザー加工装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の検査装置および検査方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1を参照して説明すると、検査装置2は、発振器4が発振した直後のレーザー光線LBを減光させる減光板6と、減光板6によって減光されたレーザー光線LBを複数の画素で撮像する撮像手段8と、撮像手段8によって撮像された画像を処理する処理手段10と、処理手段10によって処理された画像を表示する表示手段12とを備える。
【0017】
減光板6としては、NDフィルター等の適宜の減光手段が用いられ得る。減光板6は、たとえば、繰り返し周波数が数十MHz程度で、かつ出力が数mW程度のレーザー光線LB(いわゆる種光)を発振する発振器4の直後に配置されている。すなわち、発振器4が発振したレーザー光線LBは、繰り返し周波数変換手段(図示していない。)によって周波数が変換される前に、かつ出力増幅手段(図示していない。)によって出力が増幅される前に、減光板6によって減光され撮像手段8によって撮像される。
【0018】
撮像手段8は、たとえばCCDカメラでよく、減光板6によって減光されたレーザー光線LBの断面(光軸に直交する断面)を複数の画素で撮像する。
【0019】
処理手段10は、コンピュータから構成され得る。処理手段10は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む。処理手段10は撮像手段8に電気的に接続されており、撮像手段8によって撮像されたレーザー光線LBの光軸に直交する断面画像が処理手段10に送られる。
【0020】
処理手段10は、レーザー光線LBの強さを仕切る少なくとも内輪と外輪の2つの閾値を備える。図示の実施形態の処理手段10は、内輪の閾値と外輪の閾値との間に更に中輪の閾値を備えている。内輪の閾値は中輪の閾値および外輪の閾値よりも大きく、中輪の閾値は外輪の閾値よりも大きい(内輪の閾値>中輪の閾値>外輪の閾値)。なお、処理手段10は3つ以上の閾値を備えていてもよい。
【0021】
処理手段10は、内輪、外輪および中輪の3つの閾値に基づいてレーザー光線LBの断面画像を4値化処理し、レーザー光線LBの強さに応じてレーザー光線LBの断面画像を区画する。図2を参照することによって理解されるとおり、処理手段10は、レーザー光線LBの強さが内輪の閾値よりも大きい円形状の第一の領域R1(黒色の領域)と、レーザー光線LBの強さが内輪の閾値よりも小さく且つ中輪の閾値よりも大きい環状の第二の領域R2(薄い灰色の領域)と、レーザー光線LBの強さが中輪の閾値よりも小さく且つ外輪の閾値よりも大きい環状の第三の領域R3(濃い灰色の領域)と、レーザー光線LBの強さが外輪の閾値よりも小さい第四の領域R4(白色の領域)とにレーザー光線LBの断面画像を区画する。
【0022】
処理手段10は、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に基づいて、第一の領域R1の面積を算出し、算出した第一の領域R1の面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に、第一の領域R1の重心を算出する。図2に示すとおり、処理手段10は、算出した第一の領域R1の重心を中心C1として、算出した円(第一の領域R1に相当する円)の直径に基づき、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に内輪14を描く処理を施す。
【0023】
また、処理手段10は、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に基づいて、第一・第二の領域R1、R2の合計面積を算出し、算出した第一・第二の領域R1、R2の合計面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に、第二の領域R2の重心を算出する。図2に示すとおり、処理手段10は、算出した第二の領域R2の重心を中心C2として、算出した円(第一・第二の領域R1、R2に相当する円)の直径に基づき、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に中輪16を描く処理を施す。
【0024】
さらに、処理手段10は、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に基づいて、第一・第二・第三の領域R1、R2、R3の合計面積を算出し、算出した第一・第二・第三の領域R1、R2、R3の合計面積と同一の面積を有する円の直径を算出すると共に、第三の領域R3の重心を算出する。図2に示すとおり、処理手段10は、算出した第三の領域R3の重心を中心C3として、算出した円(第一・第二・第三の領域R1、R2、R3に相当する円)の直径に基づき、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に外輪18を描く処理を施す。このようにして処理手段10は、レーザー光線LBの等光線として内輪14、中輪16および外輪18の3つの輪をレーザー光線LBの断面画像に描く処理を施す。
【0025】
図示の実施形態の処理手段10は、内輪14の中心C1(第一の領域R1の重心)と、外輪18の中心C3(第三の領域R3の重心)もしくは中輪16の中心C2(第二の領域R2の重心)とのズレ量を算出する。処理手段10は、内輪14の中心C1と、中輪16の中心C2もしくは外輪18の中心C3とのズレ量が所定値以下(たとえば外輪18の直径の5%以下)である場合には発振器4の使用が許容され、ズレ量が所定値を超える場合には発振器4の使用が許容されないことを判定するようになっていてもよい。なお、図2(a)には、内輪14、中輪16および外輪18のそれぞれの中心C1、C2、C3が整合しているレーザー光線LBの断面画像の模式図が示されており、図2(b)には、内輪14、中輪16および外輪18のそれぞれの中心C1、C2、C3がズレており、かつ内輪14の中心C1と外輪18の中心C3とのズレ量が上記所定値を超えている場合のレーザー光線LBの断面画像の模式図が示されている。
【0026】
表示手段12は、液晶画面等を有する表示装置から構成され得る。図1に示すとおり、表示手段12は、処理手段10に電気的に接続されており、処理手段10によって処理されたレーザー光線LBの断面画像が表示手段12に送られる。
【0027】
表示手段12は、処理手段10によって処理されたレーザー光線LBの断面画像と共に少なくとも内輪14と外輪18とを表示する。図示の実施形態の表示手段12は、図2に示すとおり、さらに中輪16を表示すると共に、内輪14、中輪16および外輪18のそれぞれの中心C1、C2、C3を表示するようになっている。
【0028】
表示手段12は、処理手段10が求めたズレ量や、発振器4の使用が許容されるか否かに関する処理手段10の判定結果等を表示するようになっていてもよい。表示手段12が表示するズレ量は、内輪14の中心C1と外輪18の中心C3とのズレ量でもよく、内輪14の中心C1と中輪16の中心C2とのズレ量でもよい。
【0029】
次に、上述したとおりの検査装置2を用いる検査方法について説明する。
【0030】
図3には、検査装置2を用いた検査方法が実施され得るレーザー加工装置20が示されており、図4には、レーザー加工装置20のブロック図が示されている。レーザー加工装置20は、レーザー光線LBを発振する発振器22(図4参照)と、レーザー光線LBを集光する集光器24(図3および図4参照。)と、発振器22と集光器24との間に配設されレーザー光線LBを導く光学系26(図4参照)と、集光器24が集光したレーザー光線LBによって加工が施される被加工物Wを保持する保持手段28(図3および図4参照。)とを含む。
【0031】
図3に示すとおり、レーザー加工装置20は、基台30と、基台30の上面から上方に延び次いで実質上水平に延びるハウジング32とを備える。発振器22および光学系26はハウジング32内に配置され、集光器24はハウジング32の先端下面に配置されている。なお、ハウジング32の先端下面には、保持手段28に保持された被加工物Wを撮像してレーザー加工すべき領域を検出するためのカメラ34が装着されている。
【0032】
発振器22は、たとえば、繰り返し周波数が数十MHz程度で、かつ出力が数mW程度のレーザー光線LB(いわゆる種光)を発振する。光学系26は、発振器22が発振したレーザー光線LBの繰り返し周波数を適宜の繰り返し周波数(たとえば数百kHz程度)に変換する繰り返し周波数変換手段(図示していない。)と、発振器22が発振したレーザー光線LBの出力を適宜の出力(たとえば数十W程度)に増幅する出力増幅手段(図示していない。)と、出力増幅手段によって増幅されたレーザー光線LBの出力を適宜の出力に調整する出力調整手段(図示していない。)と、発振器22が発振したレーザー光線LBの波長を適宜の波長に変換する波長変換手段(図示していない。)とを有する。そして、図4に示すとおり、発振器22が発振したレーザー光線LBは、光学系26によって適宜の周波数、出力および波長に変換された後、ミラー36で反射されて集光器24に導かれ、集光器24において集光されて被加工物Wに照射される。
【0033】
図3を参照して説明すると、保持手段28は、矢印Xで示すX軸方向に移動自在に基台30に搭載されたX軸可動板38と、X軸方向に直交するY軸方向(矢印Yで示す方向)に移動自在にX軸可動板38に搭載されたY軸可動板40と、Y軸可動板40の上面に固定された支柱42と、支柱42の上端に固定されたカバー板44とを含む。なお、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0034】
カバー板44にはY軸方向に延びる長穴44aが形成され、長穴44aを通って上方に延びるチャックテーブル46が支柱42の上端に回転自在に搭載されている。チャックテーブル46は、支柱42に内蔵された回転手段(図示していない。)によって回転される。チャックテーブル46の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形の吸着チャック48が配置され、チャックテーブル46においては、吸引手段で吸着チャック48の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック48の上面に載せられた被加工物Wを吸引保持する。また、チャックテーブル46の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ50が配置されている。
【0035】
保持手段28は、X軸可動板38に連結されX軸方向に延びるボールねじ52と、ボールねじ52を回転させるモータ54とを有するX軸送り手段56によって、基台30上の案内レール30aに沿ってX軸方向に加工送りされる。また、保持手段28は、Y軸可動板40に連結されY軸方向に延びるボールねじ58と、ボールねじ58を回転させるモータ60とを有するY軸送り手段62によって、X軸可動板38上の案内レール38aに沿ってY軸方向に割り出し送りされる。
【0036】
上述の検査装置2を用いてレーザー加工装置20の発振器22の精度を検査する際は、まず、検査装置2の減光板6および撮像手段8をレーザー加工装置20の発振器22と光学系26との間に位置づける撮像手段位置づけ工程を実施する。
【0037】
撮像手段位置づけ工程を実施した後、レーザー加工装置20の発振器22が発振した直後のレーザー光線LBを撮像手段8で撮像する撮像工程を実施する。撮像工程において撮像手段8が撮像するレーザー光線LBは減光板6によって減光されたレーザー光線LBである。また、撮像手段8が撮像するレーザー光線LBの断面の直径は、たとえば5~6mm程度である。
【0038】
撮像工程を実施した後、撮像手段8によって撮像された画像を処理手段10で処理する処理工程を実施する。
【0039】
処理工程では、まず、内輪14、中輪16および外輪18の3つの閾値に基づいてレーザー光線LBの断面画像を4値化処理し、レーザー光線LBの強さに応じてレーザー光線LBの断面画像を第一ないし第四の領域R1、R2、R3、R4の4つの領域に処理手段10によって区画する。次いで、4値化処理したレーザー光線LBの断面画像に内輪14、中輪16および外輪18を描く処理を処理手段10によって施す。次いで、内輪14の中心C1と外輪18の中心C3もしくは中輪16の中心C2とのズレ量を処理手段10によって算出する。
【0040】
処理工程を実施した後、処理手段10で処理した画像を表示手段12に表示させると共に、表示手段12に表示させた画像によってレーザー加工装置20の発振器22の精度を検査する検査工程を実施する。
【0041】
検査工程では、処理手段10で処理したレーザー光線LBの断面画像と共に、内輪14の中心C1と外輪18の中心C3もしくは中輪16の中心C2とのズレ量を表示手段12に表示させ、表示手段12に表示させた画像を確認することによって、発振器22の使用を許容するか否かを判定する。発振器22の使用許否の判定においては、ズレ量が所定値以下(たとえば外輪18の直径の5%以下)である場合には、発振器22の使用を許容し、ズレ量が所定値を超える場合には発振器22の使用を許容しないとすることができる。なお、発振器22の使用を許容しない場合には、発振器22の交換のほか、周波数変換手段、出力増幅手段または波長変換手段の交換、削除または追加等を行う。
【0042】
以上のとおりであり、図示の実施形態では、レーザー光線LBの等光線として内輪14、中輪16および外輪18が表示手段12に表示されると共に、内輪14の中心C1と外輪18の中心C3もしくは中輪16の中心C2とのズレ量が表示手段12に表示されるので、レーザー光線LBのガウシアン分布の等光線を高精度に検出することができ、発振器22の精度を検査することができる。
【符号の説明】
【0043】
2:検査装置
4:発振器
6:減光板
8:撮像手段
10:処理手段
12:表示手段
14:内輪
16:中輪
18:外輪
20:レーザー加工装置
22:発振器
24:集光器
26:光学系
28:保持手段
LB:レーザー光線
図1
図2
図3
図4