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特許7547072化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240902BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240902BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C09K11/06 660
H05B33/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020076138
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021172603
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕美
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】西前 祐一
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0066997(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03564249(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第110407859(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110790782(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110627822(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/
C09K 11/
H10K 50/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(9A)で表される化合物。
【化1】
(前記一般式(9A)において、
およびR は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
101 ~R 105 のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が互いに結合せず、
101 ~R 105 は、それぞれ独立に、
水素原子、
ハロゲン原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の環形成炭素数3~25のシクロアルキル基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基である。
【請求項2】
前記一般式(9A)において、
およびRは、それぞれ独立に、
水素原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、または
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基である
請求項に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項4】
陰極と、陽極と、前記陰極および前記陽極の間に含まれる有機層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層が発光層を含み、
前記有機層の少なくとも1層が請求項1又は請求項2に記載の化合物を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層が前記化合物を含む、
請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層がさらに遅延蛍光性発光材料を含む、
請求項4又は請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記遅延蛍光性発光材料の最低励起一重項エネルギーS(H)と、前記化合物の最低励起一重項エネルギーS(D)とが、下記数式(数1)を満たす、
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(H)>S(D)…(数1)
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という場合がある。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が発光層に注入され、また陰極から電子が発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子が25%の割合で生成し、及び三重項励起子が75%の割合で生成する。
一重項励起子からの発光を用いる蛍光型の有機EL素子は、携帯電話及びテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されつつあるが、内部量子効率25%が限界といわれている。そのため、有機EL素子の性能を向上するための検討が行われている。有機EL素子の性能としては、例えば、輝度、発光波長、半値幅、色度、発光効率、駆動電圧、及び寿命が挙げられる。
【0003】
例えば、一重項励起子に加えて三重項励起子を利用して、有機EL素子をさらに効率的に発光させることが期待されている。このような背景から、熱活性化遅延蛍光(以下、単に「遅延蛍光」という場合がある。)を利用した高効率の蛍光型の有機EL素子が提案され、研究がなされている。
TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)機構(メカニズム)は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が熱的に生じる現象を利用するメカニズムである。熱活性化遅延蛍光については、例えば、『安達千波矢編、「有機半導体のデバイス物性」、講談社、2012年4月1日発行、261-268ページ』に記載されている。
熱活性化遅延蛍光性(TADF性)を示す化合物(以下、TADF性化合物とも称する)としては、例えば、分子内に、ドナー部位とアクセプター部位とが結合した化合物が知られている。
【0004】
有機EL素子並びに有機EL素子に用いる化合物に関する文献として、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/102118号
【文献】国際公開第2018/095397号
【文献】中国特許出願公開第110407859号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機EL素子の性能を向上させることができる化合物、当該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、当該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、下記一般式(1)で表される化合物が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
(前記一般式(1)において、
~R17のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
~R17のうちの隣接する2つ以上からなる組の少なくとも1組が互いに結合して、前記一般式(2)で表される環を形成し、前記一般式(2)における点線は、接合部位を意味し、
X1~RX4、並びに前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、前記置換もしくは無置換の縮合環を形成せず、かつ、前記一般式(2)で表される環を形成しないR~R17は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-Si(R911)(R912)(R913)で表される基、
-O-(R914)で表される基、
-S-(R915)で表される基、
-N(R916)(R917)で表される基、
-C(=O)R918で表される基、
-COOR919で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
15~R17のうち少なくとも一つは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基を示す。
X1が複数存在する場合、複数のRX1は、互いに同一であるか又は異なり、
X2が複数存在する場合、複数のRX2は、互いに同一であるか又は異なり、
X3が複数存在する場合、複数のRX3は、互いに同一であるか又は異なり、
X4が複数存在する場合、複数のRX4は、互いに同一であるか又は異なり、
911~R919は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
911が複数存在する場合、複数のR911は、互いに同一であるか又は異なり、
912が複数存在する場合、複数のR912は、互いに同一であるか又は異なり、
913が複数存在する場合、複数のR913は、互いに同一であるか又は異なり、
914が複数存在する場合、複数のR914は、互いに同一であるか又は異なり、
915が複数存在する場合、複数のR915は、互いに同一であるか又は異なり、
916が複数存在する場合、複数のR916は、互いに同一であるか又は異なり、
917が複数存在する場合、複数のR917は、互いに同一であるか又は異なり、
918が複数存在する場合、複数のR918は、互いに同一であるか又は異なり、
919が複数存在する場合、複数のR919は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0010】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、陰極と、陽極と、前記陰極および前記陽極の間に含まれる有機層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機層が発光層を含み、前記有機層の少なくとも1層が、本発明の一態様に係る化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0012】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、有機EL素子の性能を向上させることができる化合物を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第三実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
図2】過渡PLを測定する装置の概略図である。
図3】過渡PLの減衰曲線の一例を示す図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の発光層における第一の化合物及び第二の化合物のエネルギー準位、並びにエネルギー移動の関係を示す図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の発光層における第一の化合物、第二の化合物及び第三の化合物のエネルギー準位、並びにエネルギー移動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0016】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0017】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0018】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0019】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0020】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0021】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0022】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0023】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0024】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0025】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基、
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0029】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0030】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0031】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0032】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0033】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0034】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0035】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCHである。ただし、X及びYのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYの少なくともいずれかがNH、又はCHである場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCHから1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0039】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及び
ビフェニリルキナゾリニル基。
【0040】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0041】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0042】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0043】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、XA及びYAの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びXA及びYAの一方がCH2である場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0044】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0045】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0046】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0047】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0048】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0049】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0050】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0051】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基
【0052】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0053】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0054】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0055】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0056】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0057】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0058】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0059】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0060】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0061】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0062】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0063】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0064】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0065】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0066】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0067】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0068】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0069】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0070】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0071】
【化6】
【0072】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0073】
【化7】
【0074】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合位置を表す。
【0075】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0076】
【化8】
【0077】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合位置を表す。
【0078】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0079】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0080】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0081】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0082】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-68)のいずれかの基である。
【0083】
【化9】
【0084】
【化10】
【0085】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合位置を表す。
【0086】
【化11】
【0087】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合位置を表す。
【0088】
【化12】
【0089】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合位置を表す。
【0090】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0091】
【化13】
【0092】
【化14】
【0093】
【化15】
【0094】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0095】
【化16】
【0096】
【化17】
【0097】
【化18】
【0098】
【化19】
【0099】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0100】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0101】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0102】
【化20】
【0103】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0104】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環Qを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0105】
【化21】
【0106】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環Qを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環Q及び環Qは、R922を共有する。
【0107】
【化22】
【0108】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環Q及び環Qは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環Q、及び環Qは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環Qと環Qとは、環Qと環Qとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環Qがベンゼン環であれば、環Qは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環Qがナフタレン環であれば、環Qは、縮合環である。
【0109】
「不飽和の環」とは、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を意味する。「飽和の環」とは、脂肪族炭化水素環、又は非芳香族複素環を意味する。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の元素で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環Qは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の元素とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環Qを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0110】
ここで、「任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。任意の元素において(例えば、炭素元素、又は窒素元素の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素元素以外の任意の元素を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0111】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0112】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0113】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0114】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0115】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0116】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0117】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【0118】
〔第一実施形態〕
(化合物)
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(1)で表される。本実施形態に係る化合物を、一般式(1)で表される化合物と称する場合がある。
【0119】
【化23】
【0120】
(前記一般式(1)において、
~R17のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
~R17のうちの隣接する2つ以上からなる組の少なくとも1組が互いに結合して、前記一般式(2)で表される環を形成し、前記一般式(2)における点線は、接合部位を意味し、
X1~RX4、並びに前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、前記置換もしくは無置換の縮合環を形成せず、かつ、前記一般式(2)で表される環を形成しないR~R17は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-Si(R911)(R912)(R913)で表される基、
-O-(R914)で表される基、
-S-(R915)で表される基、
-N(R916)(R917)で表される基、
-C(=O)R918で表される基、
-COOR919で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
15~R17のうち少なくとも一つは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基を示す。
X1が複数存在する場合、複数のRX1は、互いに同一であるか又は異なり、
X2が複数存在する場合、複数のRX2は、互いに同一であるか又は異なり、
X3が複数存在する場合、複数のRX3は、互いに同一であるか又は異なり、
X4が複数存在する場合、複数のRX4は、互いに同一であるか又は異なり、
911~R919は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
911が複数存在する場合、複数のR911は、互いに同一であるか又は異なり、
912が複数存在する場合、複数のR912は、互いに同一であるか又は異なり、
913が複数存在する場合、複数のR913は、互いに同一であるか又は異なり、
914が複数存在する場合、複数のR914は、互いに同一であるか又は異なり、
915が複数存在する場合、複数のR915は、互いに同一であるか又は異なり、
916が複数存在する場合、複数のR916は、互いに同一であるか又は異なり、
917が複数存在する場合、複数のR917は、互いに同一であるか又は異なり、
918が複数存在する場合、複数のR918は、互いに同一であるか又は異なり、
919が複数存在する場合、複数のR919は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0121】
本実施形態に係る化合物において、RおよびRからなる組、RおよびRからなる組、RおよびRからなる組、並びにR12およびR13からなる組の少なくとも1つの組が互いに結合して、前記一般式(2)で表される環を形成することが好ましい。
本実施形態に係る化合物において、RおよびRからなる組及びRおよびRからなる組が同時に前記一般式(2)で表される環を形成しないことが好ましい。
およびRからなる組が互いに結合して、前記一般式(2)で表される環を形成した場合、本実施形態に係る化合物は、下記一般式(3)で表される。
【0122】
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)又は一般式(6)で表されることも好ましい。
【0123】
【化24】
【0124】
【化25】
【0125】
(前記一般式(3)~(6)において、R~R17及びRX1~RX4は、それぞれ独立に、前記一般式(1)で定義した通りである。)
【0126】
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(7)又は一般式(8)で表されることも好ましい。
【0127】
【化26】
【0128】
(前記一般式(7)および一般式(8)において、R~R10およびR15~R17は、それぞれ独立に、前記一般式(1)で定義した通りである。)
【0129】
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(9)又は下記一般式(10)で表されることも好ましい。
【0130】
【化27】
【0131】
(前記一般式(9)および(10)において、R、R6、およびR16は、それぞれ独立に、前記一般式(1)で定義した通りである。)
【0132】
前記一般式(9)または前記一般式(10)において、
、RおよびRは、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~25のアルキル基、または
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~25のアリール基であり、
16は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~12のアリール基、または
置換もしくは無置換の環形成原子数5~12の複素環基であることが好ましい。
【0133】
本実施形態に係る化合物において、R16は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、または
置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基であることが好ましい。
【0134】
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(9A)又は下記一般式(10A)で表されることも好ましい。
【0135】
【化28】
【0136】
(前記一般式(9A)および(10A)において、
、RおよびRは、それぞれ独立に、前記一般式(1)で定義した通りであり、
101~R105のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、かつ、前記置換もしくは無置換の縮合環を形成しないR101~R105は、それぞれ独立に、
水素原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の炭素数2~25のアルケニル基、
無置換の炭素数2~25のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~25のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R908で表される基、
-COOR909で表される基、
-S(=O)941で表される基、
-P(=O)(R942)(R943)で表される基、
-Ge(R944)(R945)(R946)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基であり、
901~R909、並びにR941~R946は、それぞれ独立に、
水素原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基である、)
【0137】
本実施形態において、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の炭素数2~25のアルケニル基、
無置換の炭素数2~25のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~25のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R908で表される基、
-COOR909で表される基、
-S(=O)941で表される基、
-P(=O)(R942)(R943)で表される基、
-Ge(R944)(R945)(R946)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基であり、
901~R909、並びにR941~R946は、それぞれ独立に、
水素原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基であることが好ましい。
【0138】
本実施形態において、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、
ハロゲン原子、
無置換の炭素数1~25のアルキル基、
無置換の環形成炭素数6~25のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~25の複素環基であることが好ましい。
【0139】
本実施形態に係る化合物は、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、
フッ素原子、
無置換の炭素数1~10のアルキル基、
無置換の環形成炭素数6~12のアリール基、又は
無置換の環形成原子数5~12の複素環基であることが好ましい。
【0140】
本実施形態において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることも好ましい。
【0141】
・化合物の主ピーク波長
本実施形態に係る化合物の主ピーク波長は、好ましくは500nm以上560nm以下、より好ましくは500nm以上540nm以下、さらに好ましくは510nm以上530nm以下である。
本明細書において、化合物の主ピーク波長とは、測定対象化合物が10-6モル/リットル以上10-5モル/リットル以下の濃度で溶解しているトルエン溶液について、測定した蛍光スペクトルにおける発光強度が最大となる蛍光スペクトルのピーク波長をいう。測定装置として、分光蛍光光度計(日立社製、F-7000)を用いることができる。
【0142】
・本実施形態に係る化合物の製造方法
本実施形態に係る化合物は、後述する実施例に記載の合成方法に従って、又は当該合成方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることで、製造できる。
【0143】
・本実施形態に係る化合物の具体例
本実施形態に係る化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これら具体例に限定されない。
【0144】
【化29】
【0145】
【化30】
【0146】
【化31】
【0147】
【化32】
【0148】
【化33】
【0149】
【化34】
【0150】
【化35】
【0151】
【化36】
【0152】
【化37】
【0153】
【化38】
【0154】
【化39】
【0155】
【化40】
【0156】
【化41】
【0157】
【化42】
【0158】
本実施形態に係る化合物によれば、有機EL素子の性能を向上させることができる。一実施形態によれば、駆動電圧を低下させ、EQEを向上させ、主ピーク半値幅が狭い光を素子から放射させることができる。
〔第二実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子用材料)
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、第一実施形態に係る化合物を含有する。一態様としては、第一実施形態に係る化合物のみを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が挙げられ、別の一態様としては、第一実施形態に係る化合物と、第一実施形態における化合物とは異なる他の化合物とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が挙げられる。
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子材料において、第一実施形態に係る化合物がドーパント材料であることが好ましい。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、ドーパント材料としての第一実施形態に係る化合物と、例えば、ホスト材料等の他の化合物とを含んでいてもよい。
【0159】
〔第三実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本実施形態に係る有機EL素子について説明する。
本実施形態に係る有機EL素子は、陰極と、陽極と、前記陰極および前記陽極の間に含まれる有機層と、を有する。この有機層は、有機化合物で構成される層を少なくとも一つ含む。あるいは、この有機層は、有機化合物で構成される複数の層が積層されてなる。有機層は、無機化合物をさらに含んでいてもよい。有機層の少なくとも1層が第一実施形態に係る化合物(前記一般式(1)で表される化合物)を含む。
【0160】
有機層は、例えば、一つの発光層で構成されていてもよいし、有機EL素子に採用され得る層を含んでいてもよい。有機EL素子に採用され得る層としては、特に限定されないが、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、及び障壁層からなる群から選択される少なくともいずれかの層が挙げられる。
【0161】
図1に、本実施形態に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層5、電子輸送層8及び電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
【0162】
(発光層)
本実施形態に係る有機EL素子の有機層は、発光層を含む。
発光層が第一実施形態に係る化合物(前記一般式(1)で表される化合物)を含むことが好ましい。
【0163】
発光層がさらに遅延蛍光性発光材料を含むことも好ましい。
【0164】
発光層が、第一実施形態に係る化合物及び遅延蛍光性発光材料を含む場合、遅延蛍光性発光材料の最低励起一重項エネルギーS(H)と、第一実施形態に係る化合物(前記一般式(1)で表される化合物)の最低励起一重項エネルギーS(D)とが、下記数式(数1)を満たすことが好ましい。
(H)>S(D)…(数1)
【0165】
本実施形態に係る有機EL素子において、発光層は、第一の化合物及び第二の化合物を含むことが好ましい。発光層における第一の化合物は、第一実施形態に係る化合物であることが好ましい。
この態様の場合、第二の化合物は、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましく、第一の化合物は、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター、又は発光材料と称する場合もある。)であることも好ましい。
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば、「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、例えば、発光層は、第二の化合物を、当該発光層の全質量の50質量%以上、含有する。また、例えば、「ホスト材料」は、層の60質量%以上、層の70質量%以上、層の80質量%以上、層の90質量%以上、又は層の95質量%以上含まれていてもよい。
【0166】
本実施形態の有機EL素子において、第一の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M1)と、第二の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M2)とが、下記数式(数3)の関係を満たすことが好ましい。
(M2)>S(M1)…(数3)
【0167】
第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)は、第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)よりも小さいことが好ましい。すなわち、下記数式(数5)の関係を満たすことが好ましい。
77K(M2)>T77K(M1)…(数5)
【0168】
本実施形態の有機EL素子を発光させたときに、発光層において、第一の化合物としての第一実施形態に係る化合物が主に発光していることが好ましい。
【0169】
一実施形態において、発光層は、金属錯体を含んでもよい。
また、一実施形態において、発光層は、金属錯体を含まないことも好ましい。
また、一実施形態において、発光層は、燐光発光性材料(ドーパント材料)を含まないことが好ましい。
また、一実施形態において、発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
【0170】
本実施形態において、発光層が第一実施形態に係る化合物を含む場合、当該発光層は、燐光発光性の金属錯体を含まないことが好ましく、燐光発光性の金属錯体以外の金属錯体も含まないことが好ましい。
【0171】
(第一の化合物)
第一の化合物は、第一実施形態に係る化合物であることが好ましい。
一実施形態において、第一の化合物は、遅延蛍光性を示さない蛍光発光性の化合物である。
【0172】
(第二の化合物)
第二の化合物は、特に限定されないが、本実施形態の有機EL素子において、第二の化合物が遅延蛍光性発光材料であることが好ましい。
【0173】
本実施形態の有機EL素子において、第二の化合物としての遅延蛍光性発光材料がホスト材料であることが好ましい。
本実施形態の有機EL素子において、第二の化合物としての遅延蛍光性発光材料がホスト材料であり、第一の化合物としての第一実施形態に係る化合物がドーパント材料であることが好ましい。
【0174】
(遅延蛍光性)
遅延蛍光については、「有機半導体のデバイス物性」(安達千波矢編、講談社発行)の261~268ページで解説されている。その文献の中で、蛍光発光材料の励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差ΔE13を小さくすることができれば、通常は遷移確率が低い励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ、熱活性化遅延蛍光(ThermallyActivated delayed Fluorescence,TADF)が発現すると説明されている。さらに、当該文献中の図10.38で、遅延蛍光の発生メカニズムが説明されている。本実施形態における遅延蛍光性発光材料は、このようなメカニズムで発生する熱活性化遅延蛍光を示す化合物であることが好ましい。
【0175】
一般に、遅延蛍光の発光は過渡PL(Photo Luminescence)測定により確認できる。
【0176】
過渡PL測定から得た減衰曲線に基づいて遅延蛍光の挙動を解析することもできる。過渡PL測定とは、試料にパルスレーザーを照射して励起させ、照射を止めた後のPL発光の減衰挙動(過渡特性)を測定する手法である。TADF材料におけるPL発光は、最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光成分と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光成分に分類される。最初のPL励起で生成する一重項励起子の寿命は、ナノ秒オーダーであり、非常に短い。そのため、当該一重項励起子からの発光は、パルスレーザーを照射後、速やかに減衰する。
一方、遅延蛍光は、寿命の長い三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光のため、ゆるやかに減衰する。このように最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光とでは、時間的に大きな差がある。そのため、遅延蛍光由来の発光強度を求めることができる。
【0177】
図2には、過渡PLを測定するための例示的装置の概略図が示されている。図2を用いた過渡PLの測定方法、および遅延蛍光の挙動解析の一例を説明する。
【0178】
図2の過渡PL測定装置100は、所定波長の光を照射可能なパルスレーザー部101と、測定試料を収容する試料室102と、測定試料から放射された光を分光する分光器103と、2次元像を結像するためのストリークカメラ104と、2次元像を取り込んで解析するパーソナルコンピュータ105とを備える。なお、過渡PLの測定は、図2に記載の装置に限定されない。
【0179】
試料室102に収容される試料は、マトリックス材料に対し、ドーピング材料が12質量%の濃度でドープされた薄膜を石英基板に成膜することで得られる。
【0180】
試料室102に収容された薄膜試料に対し、パルスレーザー部101からパルスレーザーを照射してドーピング材料を励起させる。励起光の照射方向に対して90度の方向へ発光を取り出し、取り出した光を分光器103で分光し、ストリークカメラ104内で2次元像を結像する。その結果、縦軸が時間に対応し、横軸が波長に対応し、輝点が発光強度に対応する2次元画像を得ることができる。この2次元画像を所定の時間軸で切り出すと、縦軸が発光強度であり、横軸が波長である発光スペクトルを得ることができる。また、当該2次元画像を波長軸で切り出すと、縦軸が発光強度の対数であり、横軸が時間である減衰曲線(過渡PL)を得ることができる。
【0181】
例えば、マトリックス材料として、下記参考化合物H1を用い、ドーピング材料として下記参考化合物D1を用いて上述のようにして薄膜試料Aを作製し、過渡PL測定を行った。
【0182】
【化43】
【0183】
ここでは、前述の薄膜試料A、および薄膜試料Bを用いて減衰曲線を解析した。薄膜試料Bは、マトリックス材料として下記参考化合物H2を用い、ドーピング材料として前記参考化合物D1を用いて、上述のようにして薄膜試料を作製した。
【0184】
図3には、薄膜試料Aおよび薄膜試料Bについて測定した過渡PLから得た減衰曲線が示されている。
【0185】
【化44】
【0186】
上記したように過渡PL測定によって、縦軸を発光強度とし、横軸を時間とする発光減衰曲線を得ることができる。この発光減衰曲線に基づいて、光励起により生成した一重項励起状態から発光する蛍光と、三重項励起状態を経由し、逆エネルギー移動により生成する一重項励起状態から発光する遅延蛍光との、蛍光強度比を見積もることができる。遅延蛍光性の材料では、素早く減衰する蛍光の強度に対し、緩やかに減衰する遅延蛍光の強度の割合が、ある程度大きい。
【0187】
具体的には、遅延蛍光性の材料からの発光としては、Prompt発光(即時発光)と、Delay発光(遅延発光)とが存在する。Prompt発光(即時発光)とは、当該遅延蛍光性の材料が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察される発光である。Delay発光(遅延発光)とは、当該パルス光による励起後、即座には観察されず、その後観察される発光である。
【0188】
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012”(参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
【0189】
また、本明細書では、遅延蛍光性発光材料の遅延蛍光性の測定には、次に示す方法により作製した試料を用いる。例えば、遅延蛍光性発光材料をトルエンに溶解し、自己吸収の寄与を取り除くため励起波長において吸光度が0.05以下の希薄溶液を調製する。また酸素による消光を防ぐため、試料溶液を凍結脱気した後にアルゴン雰囲気下で蓋付きのセルに封入することで、アルゴンで飽和された酸素フリーの試料溶液とする。
上記試料溶液の蛍光スペクトルを分光蛍光光度計FP-8600(日本分光社製)で測定し、また同条件で9,10-ジフェニルアントラセンのエタノール溶液の蛍光スペクトルを測定する。両スペクトルの蛍光面積強度を用いて、Morris et al. J.Phys.Chem.80(1976)969中の(1)式により全蛍光量子収率を算出する。
【0190】
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012”(参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
本実施形態においては、測定対象化合物(遅延蛍光性発光材料)のPrompt発光(即時発光)の量をXとし、Delay発光(遅延発光)の量をXとしたときに、X/Xの値が0.05以上であることが好ましい。
本明細書における遅延蛍光性発光材料以外の化合物のPrompt発光とDelay発光の量とその比の測定も、遅延蛍光性発光材料のPrompt発光とDelay発光の量とその比の測定と同様である。
【0191】
・ΔST
本実施形態では、最低励起一重項エネルギーSと、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとの差(S-T77K)をΔSTとして定義する。
【0192】
遅延蛍光性発光材料の最低励起一重項エネルギーS(H)と、遅延蛍光性発光材料の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(H)との差ΔST(H)は、好ましくは0.3eV未満、より好ましくは0.2eV未満、さらに好ましくは0.1eV未満である。すなわち、ΔST(H)は、下記数式(数10)、(数11)又は(数12)の関係を満たすことが好ましい。
ΔST(H)=S(H)-T77K(H)<0.3eV …(数10)
ΔST(H)=S(H)-T77K(H)<0.2eV …(数11)
ΔST(H)=S(H)-T77K(H)<0.1eV …(数12)
【0193】
・三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係
ここで、三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係について説明する。本実施形態では、77[K]におけるエネルギーギャップは、通常定義される三重項エネルギーとは異なる点がある。
三重項エネルギーの測定は、次のようにして行われる。まず、測定対象となる化合物を適切な溶媒中に溶解した溶液を石英ガラス管内に封入した試料を作製する。この試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値に基づいて、所定の換算式から三重項エネルギーを算出する。
ここで、本実施形態に係る化合物の内、熱活性化遅延蛍光性の化合物は、ΔSTが小さい化合物であることが好ましい。ΔSTが小さいと、低温(77[K])状態でも、項間交差、及び逆項間交差が起こりやすく、励起一重項状態と励起三重項状態とが混在する。その結果、上記と同様にして測定されるスペクトルは、励起一重項状態、及び励起三重項状態の両者からの発光を含んでおり、いずれの状態から発光したのかについて峻別することは困難であるが、基本的には三重項エネルギーの値が支配的と考えられる。
そのため、本実施形態では、通常の三重項エネルギーTと測定手法は同じであるが、その厳密な意味において異なることを区別するため、次のようにして測定される値をエネルギーギャップT77Kと称する。測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、濃度が10μmol/Lとなるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とする。この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとする。
換算式(F1):T77K[eV]=1239.85/λedge
【0194】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いることができる。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置、及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0195】
・最低励起一重項エネルギーS
溶液を用いた最低励起一重項エネルギーSの測定方法(溶液法と称する場合がある。)としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して最低励起一重項エネルギーを算出する。
換算式(F2):S[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、例えば、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)が挙げられるが、これに限定されない。
【0196】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0197】
・一般式(2)で表される化合物
本実施形態において、遅延蛍光性発光材料は、遅延蛍光性を有する化合物であれば特に限定されない。一実施形態において、遅延蛍光性発光材料は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0198】
【化45】
【0199】
前記一般式(2)において、
Aはアクセプター性(電子受容性)部位であり、下記一般式(a-1)~(a-7)から選ばれる部分構造を有する基である。Aが複数存在する場合、複数のAは互いに同一または異なり、A同士が結合して飽和または不飽和の環を形成してもよく、
Bはドナー性(電子供与性)部位であり、下記一般式(b-1)~(b-6)から選ばれる部分構造を有する。Bが複数存在する場合、複数のBは互いに同一または異なり、B同士が結合して飽和または不飽和の環を形成してもよく、
a,b,およびdは、それぞれ独立に、1、2、3、4、又は5であり、
cは0、1、2、3、4、又は5であり、
cが0のとき、AとBとは単結合またはスピロ結合で結合し、
cが1、2、3、4又は5のとき、Lは、
置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、および
置換または無置換の環形成原子数5~30の複素環基からなる群から選択される連結基であり、Lが複数存在する場合、複数のLは互いに同一または異なり、L同士が結合して飽和または不飽和の環を形成してもよい。
【0200】
【化46】
【0201】
【化47】
【0202】
前記一般式(b-1)~(b-6)において、
複数のRのうち隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず、前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、かつ前記置換もしくは無置換の縮合環を形成しないRは、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のアルキル基であり、
Rが複数存在する場合、複数のRは互いに同一または異なる。
【0203】
前記一般式(2)で表される化合物の結合様式の一例として、例えば下記表1に示す結合様式が挙げられる。
【0204】
【表1】

【0205】
・遅延蛍光性発光材料の製造方法
遅延蛍光性発光材料は、公知の方法により製造できる。また、遅延蛍光性発光材料は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0206】
・遅延蛍光性発光材料の具体例
遅延蛍光性発光材料の具体例としては、例えば、以下の化合物挙げられる。ただし、本発明は、これら遅延蛍光性発光材料の具体例に限定されない。
【0207】
【化48】
【0208】
(TADF機構(メカニズム))
図4は、発光層における、遅延蛍光性発光材料である場合の第二の化合物M2及び第一実施形態の化合物である場合の第一の化合物M1のエネルギー準位の関係の一例を示す図である。図4において、S0は、基底状態を表す。S1(M1)は、第一の化合物M1の最低励起一重項状態を表す。T1(M1)は、第一の化合物M1の最低励起三重項状態を表す。S1(M2)は、第二の化合物M2の最低励起一重項状態を表す。T1(M2)は、第二の化合物M2の最低励起三重項状態を表す。
図4中のS1(M2)からS1(M1)へ向かう破線の矢印は、第二の化合物M2の最低励起一重項状態から第一の化合物M1へのフェルスター型エネルギー移動を表す。
図4に示すように、第二の化合物M2としてΔST(M2)の小さな化合物(遅延蛍光性発光材料)を用いると、最低励起三重項状態T1(M2)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(M2)に逆項間交差が可能である。そして、第二の化合物M2の最低励起一重項状態S1(M2)から第一の化合物M1へのフェルスター型エネルギー移動が生じ、最低励起一重項状態S1(M1)が生成する。この結果、第一の化合物M1の最低励起一重項状態S1(M1)からの蛍光発光を観測することができる。このTADF機構による遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0209】
ホスト材料としての第二の化合物は、ドーパント材料よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い化合物でもよい。ホスト材料としては、(1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、若しくは亜鉛錯体等の金属錯体、(2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、若しくはフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、(3)アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、若しくはクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、(3)カルバゾール誘導体等の縮合複素環化合物、(4)トリアリールアミン誘導体、若しくは縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0210】
本実施形態の有機EL素子は、緑色発光することが好ましい。
本実施形態の有機EL素子が緑色発光する場合、有機EL素子から発光する光の主ピーク波長は、500nm以上560nm以下であることが好ましい。
【0211】
有機EL素子から発光する光の主ピーク波長の測定は、以下のようにして行う。
電流密度が10mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ社製)で計測する。
得られた分光放射輝度スペクトルにおいて、発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長を測定し、これを主ピーク波長(単位:nm)とする。
【0212】
・発光層の膜厚
本実施形態の有機EL素子における発光層の膜厚は、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは7nm以上50nm以下、最も好ましくは10nm以上50nm以下である。5nm以上であると、発光層形成及び色度の調整が容易になりやすく、50nm以下であると、駆動電圧の上昇が抑制されやすい。
【0213】
・発光層における化合物の含有率
発光層に含まれている第一の化合物及び第二の化合物の含有率は、例えば、以下の範囲であることが好ましい。
第一の化合物の含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
第二の化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態は、発光層に、第一の化合物及び第二の化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
発光層は、第一の化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。発光層は、第二の化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0214】
(基板)
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0215】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
陽極上に形成されるEL層のうち、陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることができる。
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0216】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0217】
(正孔注入層)
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等も挙げられる。
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0218】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。
正孔輸送層には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t-BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層であっても、上記物質からなる層が二層以上積層された層であってもよい。
【0219】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層であっても、上記物質からなる層が二層以上積層された層であってもよい。
また、電子輸送層には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)などを用いることができる。
【0220】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0221】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などの乾式成膜法や、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
【0222】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した以外には制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0223】
本実施形態に係る有機EL素子は、第一実施形態の化合物を含むので、性能が向上する。一実施形態によれば、駆動電圧が低く、EQEが高く、素子から放射される光の主ピーク半値幅が狭い有機EL素子を提供できる。
【0224】
〔第四実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
第四実施形態に係る有機EL素子の構成について説明する。第四実施形態の説明において第三実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を付す等して説明を省略もしくは簡略化する。また、第四実施形態では、特に言及されない材料や化合物については、第三実施形態で説明した材料や化合物と同様の材料や化合物を用いることができる。
【0225】
第四実施形態に係る有機EL素子は、発光層が、さらに第三の化合物を含んでいる点で、第三実施形態に係る有機EL素子と異なる。その他の点については第三実施形態と同様である。
【0226】
第四実施形態において、発光層は、第一の化合物と、第二の化合物と、第三の化合物とを含む態様であることが好ましい。この態様の場合、第一の化合物が、第一実施形態の化合物であることがより好ましく、第二の化合物が、遅延蛍光性発光材料であることがさらに好ましい。また、この態様の場合、第一の化合物は、ドーパント材料であることが好ましく、第二の化合物は、ホスト材料であることが好ましい。また、第三の化合物は、ドーパント材料ではないことが好ましい。例えば、第四実施形態の発光層は、第二の化合物および第三の化合物を、合計で、当該発光層の全質量の50質量%以上、含有し、層の60質量%以上、層の70質量%以上、層の80質量%以上、層の90質量%以上、又は層の95質量%以上含有していてもよい。
【0227】
(第三の化合物)
第三の化合物は、遅延蛍光性の化合物でもよいし、遅延蛍光性を示さない化合物でもよい。
【0228】
第三の化合物としては、特に限定されないが、アミン化合物以外の化合物であることが好ましい。すなわち、第三の化合物は、置換もしくは無置換のアミノ基を含まないことが好ましい。また、例えば、第三の化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体を用いることができるが、これら誘導体に限定されない。
【0229】
第三の化合物は、一つの分子中に下記一般式(31)で表される部分構造、下記一般式(32)で表される部分構造、下記一般式(33A)で表される部分構造、及び下記一般式(34A)で表される部分構造のうち少なくともいずれかを含む化合物であることも好ましい。
【0230】
【化49】
【0231】
【化50】
【0232】
前記一般式(31)において、
31~Y36は、それぞれ独立に、窒素原子、または第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y31~Y36のうち少なくともいずれかは、第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
前記一般式(32)において、
41~Y48は、それぞれ独立に、窒素原子、または第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
ただし、Y41~Y48のうち少なくともいずれかは、第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
30は、第三の化合物の分子中における他の原子と結合する窒素原子、または酸素原子、もしくは硫黄原子である。
前記一般式(33A)及び(34A)中、*は、それぞれ独立に、第三の化合物の分子中における他の原子又は他の構造との結合箇所を表す。
【0233】
第三の化合物は、一つの分子中に前記一般式(31)で表される部分構造及び前記一般式(32)で表される部分構造を合計で、2個以上10個以下有することが好ましく、4個以上8個以下有することがより好ましい。
【0234】
前記一般式(32)において、Y41~Y48のうち少なくとも2つが第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、当該炭素原子を含む環構造が構築されていることも好ましい。
例えば、前記一般式(32)で表される部分構造が、下記一般式(321)、一般式(322)、一般式(323)、一般式(324)、一般式(325)、及び一般式(326)で表される部分構造からなる群から選択されるいずれかの部分構造であることが好ましい。
【0235】
【化51】
【0236】
【化52】
【0237】
【化53】
【0238】
前記一般式(321)~(326)において、
30は、それぞれ独立に、第三の化合物の分子中における他の原子と結合する窒素原子、または酸素原子、もしくは硫黄原子であり、
41~Y48は、それぞれ独立に、窒素原子、または第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
31は、それぞれ独立に、第三の化合物の分子中における他の原子と結合する窒素原子、酸素原子、硫黄原子、または第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子であり、
61~Y64は、それぞれ独立に、窒素原子、または第三の化合物の分子中における他の原子と結合する炭素原子である。
本実施形態においては、第三の化合物は、前記一般式(321)~(326)のうち前記一般式(323)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0239】
前記一般式(31)で表される部分構造は、下記一般式(33)で表される基、及び下記一般式(34)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として第三の化合物に含まれることが好ましい。
第三の化合物は、下記一般式(33)、及び下記一般式(34)で表される部分構造のうち少なくともいずれかの部分構造を有することも好ましい。下記一般式(33)、及び下記一般式(34)で表される部分構造のように結合箇所が互いにメタ位に位置するため、第三の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)を高く保つことができる。
【0240】
【化54】
【0241】
前記一般式(33)において、Y31、Y32、Y34、及びY36は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR31である。
前記一般式(34)において、Y32、Y34、及びY36は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR31である。
前記一般式(33)、及び(34)において、
31は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、
置換基としてのR31は、それぞれ独立に、
置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換または無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基、
置換または無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換または無置換の炭素数1~30のフルオロアルキル基、
置換または無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換または無置換の炭素数7~30のアラルキル基、
置換または無置換のシリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、及び
置換または無置換のカルボキシ基
からなる群から選択される。
ただし、前記R31における置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基は、非縮合環であることが好ましい。
前記一般式(33)、及び前記一般式(34)において、*は、それぞれ独立に、第三の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0242】
前記一般式(33)において、Y31、Y32、Y34、及びY36は、それぞれ独立に、CR31であることが好ましく、複数のR31は、互いに同一であるか、または異なる。
また、前記一般式(34)において、Y32、Y34、及びY36は、それぞれ独立に、CR31であることが好ましく、複数のR31は、互いに同一であるか、または異なる。
【0243】
置換ゲルマニウム基は、-Ge(R301で表されることが好ましい。R301は、それぞれ独立に、置換基である。置換基R301は、置換または無置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。複数のR301は、互いに同一であるかまたは異なる。
【0244】
前記一般式(32)で表される部分構造は、下記一般式(35)~(39)、及び下記一般式(30a)で表される基からなる群から選択される少なくともいずれかの基として第三の化合物に含まれることが好ましい。
【0245】
【化55】
【0246】
【化56】
【0247】
【化57】
【0248】
前記一般式(35)において、Y41乃至Y48は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR32である。
前記一般式(36)、及び(37)において、Y41~Y45、Y47、及びY48は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR32である。
前記一般式(38)において、Y41、Y42、Y44、Y45、Y47、及びY48は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR32である。
前記一般式(39)において、Y42~Y48は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR32である。
前記一般式(30a)において、Y42~Y47は、それぞれ独立に、窒素原子またはCR32である。
前記一般式(35)~(39)、及び(30a)において、
32は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、
置換基としてのR32は、
置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換または無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基、
置換または無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換または無置換の炭素数1~30のフルオロアルキル基、
置換または無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換または無置換の炭素数7~30のアラルキル基、
置換または無置換のシリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、及び
置換または無置換のカルボキシ基
からなる群から選択され、
複数のR32は、互いに同一であるかまたは異なる。
前記一般式(37)~(39),及び(30a)において、
30は、NR33、酸素原子、または硫黄原子であり、
33は、
置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換または無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基、
置換または無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換または無置換の炭素数1~30のフルオロアルキル基、
置換または無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換または無置換の炭素数7~30のアラルキル基、
置換または無置換のシリル基、
置換ゲルマニウム基、
置換ホスフィンオキシド基、
フッ素原子、
シアノ基、
ニトロ基、及び
置換または無置換のカルボキシ基
からなる群から選択され、
複数のR33は、互いに同一であるかまたは異なる。
ただし、前記R33における置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基は、非縮合環であることが好ましい。
前記一般式(35)~(39)、及び(30a)において、*は、それぞれ独立に、第三の化合物の分子中における他の原子または他の構造との結合箇所を表す。
【0249】
前記一般式(35)において、Y41~Y48は、それぞれ独立に、CR32であることが好ましく、前記一般式(36)、及び前記一般式(37)において、Y41~Y45,Y47、及びY48は、それぞれ独立に、CR32であることが好ましく、前記一般式(38)において、Y41,Y42,Y44,Y45,Y47、及びY48は、それぞれ独立に、CR32であることが好ましく、前記一般式(39)において、Y42~Y48は、それぞれ独立に、CR32であることが好ましく、前記一般式(30a)において、Y42~Y47は、それぞれ独立に、CR32であることが好ましく、複数のR32は、互いに同一であるかまたは異なる。
【0250】
第三の化合物において、X30は、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0251】
第三の化合物において、R31、及びR32は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であって、置換基としてのR31、及び置換基としてのR32は、それぞれ独立に、フッ素原子、シアノ基、置換または無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、及び置換または無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選択されるいずれかの基であることが好ましい。R31、及びR32は、水素原子、シアノ基、置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、または置換または無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基であることがより好ましい。ただし、置換基としてのR31、及び置換基としてのR32が置換または無置換の環形成炭素数6~30のアリール基である場合、当該アリール基は、非縮合環であることが好ましい。
【0252】
第三の化合物は、芳香族炭化水素化合物、または芳香族複素環化合物であることも好ましい。
【0253】
第三の化合物における置換基の例は、例えば、以下のとおりであるが、本発明は、これらの例に限定されない。
【0254】
アリ-ル基(芳香族炭化水素基と称する場合がある。)の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾアントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、及びフルオレニル基等を挙げることができる。
置換基を有するアリ-ル基としては、トリル基、キシリル基、及び9,9-ジメチルフルオレニル基等を挙げることができる。
具体例が示すように、アリール基は、縮合アリール基、及び非縮合アリール基の両方を含む。
アリ-ル基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、またはフルオレニル基が好ましい。
【0255】
ヘテロアリール基(複素環基、ヘテロ芳香族環基、または芳香族複素環基と称する場合がある。)の具体例としては、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピリジル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、チオフェニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、アザジベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、ベンズオキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、及びアザジベンゾチエニル基等を挙げることができる。
ヘテロアリール基としては、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アザジベンゾフラニル基、またはアザジベンゾチエニル基が好ましく、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、アザジベンゾフラニル基、またはアザジベンゾチエニル基がさらに好ましい。
【0256】
第三の化合物において、置換シリル基は、置換または無置換のトリアルキルシリル基、置換または無置換のアリールアルキルシリル基、及び置換または無置換のトリアリールシリル基からなる群から選択されることも好ましい。
置換または無置換のトリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、及びトリエチルシリル基を挙げることができる。
置換若しくは無置換のアリールアルキルシリル基の具体例としては、ジフェニルメチルシリル基、ジトリルメチルシリル基、及びフェニルジメチルシリル基等を挙げることができる。
置換または無置換のトリアリールシリル基の具体例としては、トリフェニルシリル基、及びトリトリルシリル基等を挙げることができる。
【0257】
第三の化合物において、置換ホスフィンオキシド基は、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド基であることも好ましい。
置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド基の具体例としては、ジフェニルホスフィンオキシド基、及びジトリルホスフィンオキシド基等を挙げることができる。
【0258】
第三の化合物において、置換カルボキシ基としては、例えば、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0259】
・第三の化合物の製造方法
第三の化合物は、例えば、国際公開第2012/153780号、及び国際公開第2013/038650号等に記載の方法により製造することができる。また、例えば、目的物に合わせた既知の代替反応、及び原料を用いることで、第三の化合物を製造できる。
【0260】
・第三の化合物の具体例
本実施形態に係る第三の化合物の具体例を以下に示す。なお、本発明における第三の化合物は、これらの具体例に限定されない。
【0261】
【化58】
【0262】
【化59】
【0263】
【化60】
【0264】
【化61】
【0265】
(発光層における第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物の関係)
本実施形態の有機EL素子において、発光層が、第二の化合物と、第三の化合物とを含む場合、第二の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M2)と、第三の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M3)とは、下記数式(数2)の関係を満たすことが好ましい。
(M3)>S(M2)…(数2)
【0266】
第三の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)は、第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)よりも大きいことが好ましい。
第三の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)は、第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)よりも大きいことが好ましい。
【0267】
第一の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M1)と、第二の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M2)と、第三の化合物の最低励起一重項エネルギーS(M3)とは、下記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
(M3)>S(M2)>S(M1)…(数2A)
【0268】
第一の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M1)と、第二の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M2)と、第三の化合物の77[K]におけるエネルギーギャップT77K(M3)とは、下記数式(数2B)の関係を満たすことが好ましい。
77K(M3)>T77K(M2)>T77K(M1)…(数2B)
【0269】
本実施形態の有機EL素子を発光させたときに、発光層において、主に第一実施形態の化合物が発光していることが好ましい。
本実施形態の有機EL素子は、第三実施形態の有機EL素子と同様に、緑色発光することが好ましい。
本実施形態の有機EL素子が緑色発光する場合、有機EL素子から発光する光の主ピーク波長は、500nm以上560nm以下であることが好ましい。
有機EL素子から発光する光の主ピーク波長は、第三実施形態の有機EL素子と同様の方法で測定することができる。
【0270】
・発光層における化合物の含有率
発光層が第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物を含んでいる場合、当該発光層中の第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物の含有率は、例えば、以下の範囲であることが好ましい。
第一の化合物の含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
第二の化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%であることがさらに好ましい。
第三の化合物の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
発光層における第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、発光層に、第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
発光層は、第一の化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。発光層は、第二の化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。発光層は、第三の化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0271】
図5は、発光層における第一の化合物、第二の化合物、及び第三の化合物のエネルギー準位の関係の一例を示す図である。図5において、S0は、基底状態を表す。S1(M1)は、第一の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M1)は、第一の化合物の最低励起三重項状態を表す。S1(M2)は、第二の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M2)は、第二の化合物の最低励起三重項状態を表す。S1(M3)は、第三の化合物の最低励起一重項状態を表し、T1(M3)は、第三の化合物の最低励起三重項状態を表す。図5中のS1(M2)からS1(M1)へ向かう破線の矢印は、第二の化合物の最低励起一重項状態から第一の化合物へのフェルスター型エネルギー移動を表す。
図5に示すように、第二の化合物としてΔST(M2)の小さな化合物(遅延蛍光発光性材料)を用いると、最低励起三重項状態T1(M2)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(M2)に逆項間交差が可能である。そして、第二の化合物の最低励起一重項状態S1(M2)から第一の化合物へのフェルスター型エネルギー移動が生じ、最低励起一重項状態S1(M1)が生成する。この結果、第一の化合物の最低励起一重項状態S1(M1)からの蛍光発光を観測することができる。このTADFメカニズムによる遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部量子効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0272】
本実施形態に係る有機EL素子は、第一実施形態の化合物を含むので、性能が向上する。一実施形態によれば、駆動電圧が低く、EQEが高く、素子から放射される光の主ピーク半値幅が狭い有機EL素子を提供できる。
【0273】
〔第五実施形態〕
(電子機器)
本実施形態に係る電子機器は、上述の実施形態のいずれかの有機EL素子を搭載している。電子機器としては、例えば、表示装置及び発光装置等が挙げられる。表示装置としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0274】
〔実施形態の変更〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれる。
【0275】
例えば、発光層は、1層に限られず、複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が複数の発光層を有する場合、少なくとも1つの有機層が上記実施形態で説明した条件を満たしていればよく、少なくとも1つの発光層が、第一実施形態の化合物を含んでいることが好ましい。複数の発光層のうち1つの発光層が、第一実施形態の化合物を含んでいる場合、例えば、その他の発光層が、蛍光発光型の発光層であっても、三重項励起状態から直接基底状態への電子遷移による発光を利用した燐光発光型の発光層であってもよい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、中間層を介して複数の発光ユニットが積層された、いわゆるタンデム型の有機EL素子であってもよい。
【0276】
また、例えば、発光層の陽極側、及び陰極側の少なくとも一方に障壁層を隣接させて設けてもよい。障壁層は、発光層に接して配置され、正孔、電子、及び励起子の少なくともいずれかを阻止することが好ましい。
例えば、発光層の陰極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、電子を輸送し、かつ正孔が当該障壁層よりも陰極側の層(例えば、電子輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、電子輸送層を含む場合は、発光層と電子輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、発光層の陽極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、正孔を輸送し、かつ電子が当該障壁層よりも陽極側の層(例えば、正孔輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、正孔輸送層を含む場合は、発光層と正孔輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、励起エネルギーが発光層からその周辺層に漏れ出さないように、障壁層を発光層に隣接させて設けてもよい。発光層で生成した励起子が、当該障壁層よりも電極側の層(例えば、電子輸送層及び正孔輸送層等)に移動することを阻止する。
発光層と障壁層とは接合していることが好ましい。
【0277】
その他、本発明の実施における具体的な構造、及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例
【0278】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0279】
<化合物>
実施例1の有機EL素子の製造に用いた一般式(1)で表される化合物を以下に示す。
【0280】
【化62】
【0281】
比較例1の有機EL素子の製造に用いた比較化合物を以下に示す。
【0282】
【化63】
【0283】
実施例及び比較例に係る有機EL素子の製造に用いたその他の化合物を以下に示す。
【0284】
【化64】
【0285】
【化65】
【0286】
【化66】
【0287】
<有機EL素子の作製>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0288】
(実施例1)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行った後、UVオゾン洗浄を1分間行った。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HT-1と化合物HAとを共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。正孔注入層における化合物HT-1の濃度を97質量%とし、化合物HAの濃度を3質量%とした。
次に、正孔注入層上に、化合物HT-1を蒸着し、正孔注入層上に膜厚110nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT-2を蒸着し、膜厚10nmの第二正孔輸送層を形成した。
次に、この第二正孔輸送層上に、第一の化合物としての化合物GD-1と、第二の化合物としての化合物TADF-1と、第三の化合物としての化合物D-1とを共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。発光層における化合物TADF-1の濃度を25質量%とし、化合物GD-1の濃度を1質量%とし、化合物D-1の濃度を74質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物ET-1を蒸着し、膜厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
次に、この第一電子輸送層上に、化合物ET-2を蒸着し、膜厚50nmの第二電子輸送層を形成した。
次に、この第二電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例1の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT-1:HA(10,97%:3%)/HT-1(110)/HT-2(10)/D-1:TADF-1:GD-1(25,74%:25%:1%)/ET-1(5)/ET-2(50)/LiF(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
同じく括弧内において、パーセント表示された数字(97%:3%)は、正孔注入層における化合物HT-1及び化合物HAの割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(74%:25%:1%)は、発光層における第三の化合物、第二の化合物、及び第一の化合物の割合(質量%)を示す。以下、同様の表記とする。
【0289】
(比較例1)
比較例1の有機EL素子は、実施例1における化合物GD-1を表2に記載の第一の化合物に置き換えたこと以外、実施例1と同様にして作成した。
【0290】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。また、各実施例の発光層で使用した一般式(1)の化合物の最低励起一重項エネルギーS及び主ピーク波長、第二の化合物の熱活性遅延蛍光性(ΔST及びDelay/Prompt比)、及び最低励起一重項エネルギーS、並びに第三の化合物の最低励起一重項エネルギーSも表2に示す。
【0291】
・駆動電圧(V)
有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように陽極と陰極との間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
【0292】
・CIE1931色度
有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、CIEx及びCIEyを算出した。
【0293】
・外部量子効率EQE
有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0294】
・主ピーク波長(λp)及び発光半値幅FWHM
有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、主ピーク波長λ(単位:nm)を求めた。また、得られた分光放射輝度スペクトルから、発光半値幅FWHM(単位:nm)を測定した。
【0295】
【表2】
【0296】
実施例1に係る有機EL素子と比較例1に係る有機EL素子とを対比すると、実施例1の方が、駆動電圧が低く、EQEが高く、半値幅が狭かった。一般式(1)で表される化合物において、一般式(2)で表される環を有し、かつ、R15~R17で表される特定の位置に置換基を導入することにより、細い発光スペクトルを維持しつつ緑色で効率的に発光させることができることがわかる。
【0297】
<化合物の評価>
表2中に記載した化合物の物性値は、以下の方法で測定した。
【0298】
(遅延蛍光性)
・化合物TADF-1の遅延蛍光性
遅延蛍光性は図2に示す装置を利用して過渡PLを測定することにより確認した。前記化合物TADF-1をトルエンに溶解し、自己吸収の寄与を取り除くため励起波長において吸光度が0.05以下の希薄溶液を調製した。また酸素による消光を防ぐため、試料溶液を凍結脱気した後にアルゴン雰囲気下で蓋付きのセルに封入することで、アルゴンで飽和された酸素フリーの試料溶液とした。
上記試料溶液の蛍光スペクトルを分光蛍光光度計FP-8600(日本分光社製)で測定し、また同条件で9,10-ジフェニルアントラセンのエタノール溶液の蛍光スペクトルを測定した。両スペクトルの蛍光面積強度を用いて、Morris et al. J.Phys.Chem.80(1976)969中の(1)式により全蛍光量子収率を算出した。
前記化合物TADF-1が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施例における遅延蛍光発光とは、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上を意味する。具体的には、Prompt発光(即時発光)の量をXとし、Delay発光(遅延発光)の量をXとしたときに、X/Xの値が0.05以上であることを意味する。
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012” (参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
化合物TADF-1について、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上あることが確認された。
具体的には、化合物TADF-1について、X/Xの値が0.05以上であった。表1中、「Delay/Prompt」は、「X/X」の値を意味し、X/Xの値が「>0.05」は、0.05を超える値であったこと意味する。
【0299】
・ΔST
化合物GD-1、Ref-1、TADF-1及びD-1の最低励起一重項エネルギーSを、前述の溶液法により測定した。化合物TADF-1の77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを前述の「三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係」で記載したエネルギーギャップT77Kの測定方法により測定した。
測定した最低励起一重項エネルギーSと77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとに基づいて、化合物TADF-1のΔSTを算出した。
【0300】
・化合物の主ピーク波長
測定対象となる化合物の5μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトル(縦軸:蛍光発光強度、横軸:波長とする。)を測定した。本実施例では、蛍光スペクトルを日立社製の分光蛍光光度計(装置名:F-7000)で測定した。なお、蛍光スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。蛍光スペクトルにおいて、発光強度が最大となる蛍光スペクトルのピーク波長を化合物の主ピーク波長とした。
【0301】
<化合物の合成>
(合成例1)化合物GD-1の合成
[中間体1-1の製造]
【0302】
【化67】
【0303】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-1,3-ジフルオロ-5-ヨードベンゼン(47.8g)、フェニルボロン酸(18.29g)、リン酸三カリウム(39.8g)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(1.09g)、1,4-ジオキサン(250mL)、及び水(125mL)の混合物を室温で4時間攪拌した。得られた混合物にトルエン(250mL)および水(200mL)を加えて、水層をトルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1-1を35.1g(収率87%)得た。反応スキーム中、Pd(dppf)Clは、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドである。
【0304】
[中間体1-2の製造]
【0305】
【化68】
【0306】
窒素雰囲気下、中間体1-1(2.69g)、ベンゾ[b]カルバゾール(4.34g)、リン酸三カリウム(12.7g)、及びジメチルホルムアミド(50mL)の混合物を140℃で3.5時間攪拌した。室温に冷却後、水(200mL)に加えて、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体をジクロロメタンに溶解後、シリカゲルに吸着させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1-2を3.16g(収率47%)得た。反応スキーム中、DMFは、ジメチルホルムアミドである。
【0307】
[化合物GD-1の製造]
【0308】
【化69】
【0309】
アルゴン雰囲気下、中間体1-2(1.2g)をt-ブチルベンゼン(18mL)に加え、0℃に冷却した後、1.9Mのt-ブチルリチウムペンタン溶液(1.9mL)を滴下した。滴下後、45℃まで昇温して15分攪拌した後、反応混合物を-55℃まで冷却して、三臭化ホウ素(0.43mL)を加えて、室温まで昇温し1時間攪拌した。その後、0℃に冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.79mL)を加え、発熱が収まるまで室温で攪拌した後、145℃まで昇温して2.5時間攪拌した。室温に冷却後、1Nの酢酸カリウム水溶液を加え、析出した固体を濾取し、水及びエタノールで洗浄した。濾取した固体を塩化メチレンに懸濁させて、固体を濾取した後、塩化メチレンでさらに洗浄し、橙色固体を527mg(収率49%)得た。この橙色固体は、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量592.51に対し、593.3[M+H]であった。反応スキーム中、t-BuLiは、tert-ブチルリチウムであり、DIPEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0310】
(合成例2)化合物2の合成
[中間体2-1の製造]
【0311】
【化70】
【0312】
アルゴン雰囲気下、3-ブロモ-2-ナフタレンボロン酸(24.09g)および炭酸カリウム(12.44g)をトルエン(140mL)に加えた。そこに、4-t-ブチル-2-ヨードアニリン(16.51g)、エタノール(70mL)および水(35mL)を加えた。さらに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.08g)を加え、65℃で7時間攪拌した。室温に冷却後、トルエン(50mL)および水(200mL)を加え、水層をトルエンで抽出した。分離した有機層を水および飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。固体を濾別した後、反応溶液を減圧下で濃縮して、得られた残渣を塩化メチレンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、中間体2-1を18.89g(収率89%)得た。反応スキーム中、Pd(PPhは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である。
【0313】
[中間体2-2の製造]
【0314】
【化71】
【0315】
アルゴン雰囲気下、中間体2-1(18.07g)およびナトリウムt-ブトキシド(6.86g)をキシレン(250mL)に加えた。そこに、キサントホス(1.18g)およびトリス(ジベンジリデンアセントン)ジパラジウム(0)(0.93g)を加え、110℃で7時間攪拌した。室温に冷却後、200mLの水を反応混合物に加え、100mLのトルエンを用いて抽出した。分離した有機層を水および飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。固体を濾別した後、反応溶液を減圧下で濃縮して、得られた残渣をトルエンから再結晶化させた。析出した結晶を濾取した後、ヘプタンで洗浄し、減圧下で乾燥することにより、中間体2-2を11.67g(収率84%)得た。反応スキーム中、Pd(dba)は、トリス(ジベンジリデンアセントン)ジパラジウム(0)であり、NaOtBuは、ナトリウムt-ブトキシドである。
【0316】
[中間体2-3の製造]
【0317】
【化72】
【0318】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-1,3-ジフルオロ-5-ヨードベンゼン(7.97g)、2-フルオロフェニルボロン酸(3.67g)および炭酸カリウム(5.18g)をトルエン(60mL)、エタノール(30mL)および水(15mL)の混合溶媒に加えた。さらに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.87g)を加え、65℃で6時間攪拌した。室温に冷却度、トルエン(20mL)および水(100mL)を加え、水層をトルエンで抽出した。分離した有機層を水および飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。固体を濾別した後、反応溶液を減圧下で濃縮して、得られた残渣を塩化メチレンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、中間体2-3を3.07g(収率43%)得た。
【0319】
[中間体2-4の製造]
【0320】
【化73】
【0321】
窒素雰囲気下、中間体2-2(4.48g)、中間体2-3(2.30g)、リン酸三カリウム(13.58g)、及びジメチルホルムアミド(50mL)の混合物を100℃で15時間攪拌した。室温に冷却後、水(400mL)に加えて、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体をジクロロメタンに溶解後、シリカゲルに吸着させて、塩化メチレンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体2-4を4.88g(収率76%)得た。
【0322】
[化合物2の製造]
【0323】
【化74】
【0324】
アルゴン雰囲気下、中間体2-4(4.76g)をt-ブチルベンゼン(74mL)に加え、-10℃に冷却した後、1.9Mのt-ブチルリチウムペンタン溶液(6.32mL)を滴下した。滴下後、70℃まで昇温して30分攪拌した後、反応混合物を-55℃まで冷却して、三臭化ホウ素(1.25mL)を加えて、室温まで昇温し1時間攪拌した。その後、0℃に冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.62mL)を加え、発熱が収まるまで室温で攪拌した後、145℃まで昇温して19時間攪拌した。室温に冷却後、200mLの酢酸エチルおよび100mLの水を加え、析出した固体を濾取し、水及び酢酸エチルで洗浄した。濾取した固体を減圧下で乾燥させ、橙色固体を1.45g(収率33%)得た。この橙色固体は、マススペクトル分析の結果、目的物であり、分子量722.71に対し、723.3[M+H]であった。
【符号の説明】
【0325】
1…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、5…発光層、6…正孔注入層、7…正孔輸送層、8…電子輸送層、9…電子注入層。
図1
図2
図3
図4
図5