IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニューフレアテクノロジーの特許一覧

特許7547138電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法
<>
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図1
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図2
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図3
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図4
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図5
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図6
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図7
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図8
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図9
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図10
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図11
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図12
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図13
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図14
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図15
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図16
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図17
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図18
  • 特許-電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240902BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20240902BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240902BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020159348
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052853
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】永尾 拓朗
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-011270(JP,A)
【文献】特開2020-087507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0161082(US,A1)
【文献】特開2016-133613(JP,A)
【文献】特開2009-222626(JP,A)
【文献】特開2020-144010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2251
H01J 37/28
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子光学画像の電子光学画像毎に対象の電子光学画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、前記対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
前記対象の電子光学画像と、前記対象の電子光学画像に対応する前記参照画像とを比較する比較部と、
特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数の第1の画像処理フィルタの情報を格納するデータベースと、
前記データベースを用いて、前記複数の第1の画像処理フィルタの中から前記所定の画像処理フィルタとして現在選択されている画像処理フィルタの特徴に基づき、所定の特徴を持った複数の第2の画像処理フィルタを検索する検索部と、
前記電子光学画像との比較用に現在選択されている画像処理フィルタを使用して作成した参照画像より一致度が高くなる参照画像が作成される第2の画像処理フィルタを前記複数の第2の画像処理フィルタの中から選択する選択部と、
を備えることを特徴とする電子ビーム検査装置。
【請求項2】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの面積が用いられることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム検査装置。
【請求項3】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置とパターン外部の基準位置との間の距離が用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の電子ビーム検査装置。
【請求項4】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの最大階調値と最小階調値とが用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電子ビーム検査装置。
【請求項5】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、当該第1の画像処理フィルタの取得に用いた設計画像内の微小図形のランクと、前記ランクの微小図形の数とが用いられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電子ビーム検査装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記一致度が高くなる参照画像が作成される2以上の第2の画像処理フィルタを前記複数の第2の画像処理フィルタの中から選択し、
前記参照画像作成部は、選択された前記2以上の第2の画像処理フィルタを用いて、前記複数の電子光学画像の残部の電子光学画像のうち対象の電子光学画像に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、前記対象の電子光学画像に対応する2以上の参照画像候補を作成し、前記2以上の参照画像候補を合成することにより参照画像を作成することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電子ビーム検査装置。
【請求項7】
前記参照画像作成部は、選択された第2の画像処理フィルタを用いて、まだ比較処理が実行されていない前記複数の電子光学画像の残部の電子光学画像のうち対象の電子光学画像に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、前記対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の電子ビーム検査装置。
【請求項8】
複数の電子光学画像の電子光学画像毎に対象の電子光学画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、前記対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成する工程と、
前記対象の電子光学画像と、前記対象の電子光学画像に対応する前記参照画像とを比較し、結果を出力する工程と、
特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数の第1の画像処理フィルタの情報を格納するデータベースを用いて、前記複数の第1の画像処理フィルタの中から前記所定の画像処理フィルタとして現在選択されている画像処理フィルタの特徴に基づき、所定の特徴を持った複数の第2の画像処理フィルタを検索する工程と、
前記電子光学画像との比較用に現在選択されている画像処理フィルタを使用して作成した参照画像より一致度が高くなる参照画像が作成される第2の画像処理フィルタを前記複数の第2の画像処理フィルタの中から選択する工程と、
を備えたことを特徴とする電子ビーム検査方法。
【請求項9】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの面積が用いられることを特徴とする請求項8記載の電子ビーム検査方法。
【請求項10】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置とパターン外部の基準位置との間の距離が用いられることを特徴とする請求項8又は9記載の電子ビーム検査方法。
【請求項11】
各第1の画像処理フィルタの前記特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの最大階調値と最小階調値とが用いられることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の電子ビーム検査方法。
【請求項12】
選択された第2の画像処理フィルタを用いて、まだ比較処理が実行されていない前記複数の電子光学画像の残部の電子光学画像のうち対象の電子光学画像に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、前記対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成することを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の電子ビーム検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームで基板を照射して放出されるパターンの2次電子画像を用いて検査する検査装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、LSIを構成するパターンは、10ナノメータ以下のオーダーを迎えつつあり、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
欠陥検査手法としては、紫外線或いは電子ビームを用いて、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。
【0004】
特に、測定画像と設計パターンデータを基にした参照画像とを比較するダイ-データベース検査では、設計パターンデータから作成した設計画像にフィルタ処理を行って測定画像に近づけた参照画像を作成する。従来、紫外線を用いて画像を撮像する検査装置では、検査を開始する前に、参照画像を作成するためのフィルタのモデルや係数を機械学習等により算出する手法が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、電子ビームで試料をスキャンして得られるSEM(Scanning Electron Microscope)画像と参照画像とを比較するダイ-データベース検査においては、電子ビームで試料をスキャンして得られるSEM画像の画質は、スキャン動作を開始した時刻からの時間の経過と共に少しずつ変化することが予想される。そのため、ダイ-データベース検査では、時間の経過と共にSEM画像と参照画像との差異が大きくなり疑似欠陥が多発する傾向があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-133613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、電子ビームで基板をスキャンして得られる測定画像の画質の変化に追従するように参照画像を作成可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電子ビーム検査装置は、
複数の電子光学画像の電子光学画像毎に対象の電子光学画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
対象の電子光学画像と、対象の電子光学画像に対応する参照画像とを比較する比較部と、
特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数の第1の画像処理フィルタの情報を格納するデータベースと、
データベースを用いて、複数の第1の画像処理フィルタの中から所定の画像処理フィルタとして現在選択されている画像処理フィルタの特徴に基づき、所定の特徴を持った複数の第2の画像処理フィルタを検索する検索部と、
電子光学画像との比較用に現在選択されている画像処理フィルタを使用して作成した参照画像より一致度が高くなる参照画像が作成される第2の画像処理フィルタを複数の第2の画像処理フィルタの中から選択する選択部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの面積が用いられると好適である。
【0010】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置とパターン外部の基準位置との間の距離が用いられると好適である。
【0011】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの最大階調値と最小階調値とが用いられると好適である。
【0012】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、当該第1の画像処理フィルタの取得に用いた設計画像内の微小図形のランクと、ランクの微小図形の数とが用いられると好適である。
【0013】
また、選択部は、一致度が高くなる参照画像が作成される2以上の第2の画像処理フィルタを複数の第2の画像処理フィルタの中から選択し、
参照画像作成部は、選択された2以上の第2の画像処理フィルタを用いて、残部の電子光学画像のうち対象の電子光学画像に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、対象の電子光学画像に対応する2以上の参照画像候補を作成し、2以上の参照画像候補を合成することにより参照画像を作成すると好適である。
【0014】
また、参照画像作成部は、選択された第2の画像処理フィルタを用いて、まだ比較処理が実行されていない複数の電子光学画像の残部の電子光学画像のうち対象の電子光学画像に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成すると好適である。
【0015】
本発明の一態様の電子ビーム検査方法は、
複数の電子光学画像の電子光学画像毎に対象の電子光学画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成する工程と、
対象の電子光学画像と、対象の電子光学画像に対応する参照画像とを比較し、結果を出力する工程と、
特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数の第1の画像処理フィルタの情報を格納するデータベースを用いて、複数の第1の画像処理フィルタの中から所定の画像処理フィルタとして現在選択されている画像処理フィルタの特徴に基づき、所定の特徴を持った複数の第2の画像処理フィルタを検索する工程と、
複数の電子光学画像の残部の電子光学画像との比較用に現在選択されている画像処理フィルタを使用して作成した参照画像より一致度が高くなる参照画像が作成される第2の画像処理フィルタを複数の第2の画像処理フィルタの中から選択する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの面積が用いられると好適である。
【0017】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置とパターン外部の基準位置との間の距離が用いられると好適である。
【0018】
また、各第1の画像処理フィルタの特徴として、基準パターンの画像に当該第1の画像処理フィルタでフィルタ処理を行った場合におけるフィルタ処理後の基準パターンの最大階調値と最小階調値とが用いられると好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、電子ビームで基板をスキャンして得られる測定画像の画質の変化に追従するように参照画像を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1における検査装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4】実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。
図5】実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図6】実施の形態1におけるフィルタ関数を演算する手法の一例を説明するための図である。
図7】実施の形態1におけるフィルタ更新回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
図8】実施の形態1における基準設計画像の一例を示す図である。
図9】実施の形態1におけるフィルタ後の基準画像の一例を示す図である。
図10】実施の形態1における基準画像の特徴の一例を示す図である。
図11】実施の形態1における基準画像の特徴の他の一例を示す図である。
図12】実施の形態1における階層テーブルの一例を示す図である。
図13】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図14】実施の形態1における類似するフィルタ関数を説明するための図である。
図15】実施の形態1における検索の仕方を説明するための図である。
図16】実施の形態2における複数の参照画像候補と合成参照画像の一例を示す図である。
図17】実施の形態3におけるフィルタ更新回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
図18】実施の形態3における微小図形ランクを説明するための図である。
図19】実施の形態3における階層テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態では、検査装置の一例として、電子ビーム検査装置について説明する。また、実施の形態では、複数の電子ビームによるマルチビームを用いて画像を取得する検査装置について説明するが、これに限るものではない。1本の電子ビームによるシングルビームを用いて画像を取得する検査装置であっても構わない。
【0022】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における検査装置の構成の一例を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150(2次電子画像取得機構)、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びマルチ検出器222が配置されている。図1の例において、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する1次電子光学系を構成する。ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、及び電磁レンズ226は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222に照射する2次電子光学系を構成する。
【0023】
検査室103内には、なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。ここでは、基板101が、例えば、3点支持により支持される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。
【0024】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、フィルタ更新回路132、フィルタ演算回路134、データベース130、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、及びメモリ118に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0025】
また、検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。チップパターンメモリ123は、比較回路108及びフィルタ演算回路134に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、ステージ105が移動可能となっている。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビームの光軸(電子軌道中心軸)に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0026】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びビームセパレーター214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。
【0027】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0028】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0029】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは、一方が2以上の整数、他方が1以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、理想的には共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、理想的には同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、m×n本(=N本)のマルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。
【0030】
次に、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0031】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0032】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームのクロスオーバー位置(各ビームの中間像位置)に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。そして、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカス(合焦)する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされた(合焦された)マルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、検査用(画像取得用)のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0033】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0034】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
【0035】
ここで、ビームセパレーター214はマルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(電子軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離する。
【0036】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、マルチ1次電子ビーム20の照射によって基板101から放出される2次電子を検出する。具体的には、マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。マルチ検出器222は、2次元センサを有する。そして、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子が2次元センサのそれぞれ対応する領域に衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。言い換えれば、マルチ検出器222には、マルチ1次電子ビーム20の1次電子ビーム毎に、検出センサが配置される。そして、各1次電子ビームの照射によって放出された対応する2次電子ビームを検出する。よって、マルチ検出器222の複数の検出センサの各検出センサは、それぞれ担当する1次電子ビームの照射に起因する画像用の2次電子ビームの強度信号を検出することになる。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0037】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ、スキャナ等)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0038】
図4は、実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。図4の例では、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図4の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎の2次電子画像が取得される。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。
【0039】
なお、図4に示すように、各サブ照射領域29が矩形の複数のフレーム領域30に分割され、フレーム領域30単位の2次電子画像(被検査画像)が検査に使用される。図4の例では、1つのサブ照射領域29が、例えば4つのフレーム領域30に分割される場合を示している。但し、分割される数は4つに限るものではない。その他の数に分割されても構わない。
【0040】
なお、例えばx方向に並ぶ複数のチップ332を同じグループとして、グループ毎に例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割されるようにしても好適である。そして、ストライプ領域32間の移動は、チップ332毎に限るものではなく、グループ毎に行っても好適である。
【0041】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように主偏向器208によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器218は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
【0042】
図5は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図5において、実施の形態1における検査方法は、代表領域スキャン工程(S102)と、代表領域設計画像作成工程(S104)と、初期フィルタ演算工程(S106)と、フィルタ設定工程(S108)と、スキャン工程(S202)と、設計画像作成工程(S204)と、参照画像作成工程(S206)と、位置合わせ工程(S220)と、比較工程(S224)と、判定工程(S230)と、特徴抽出工程(S232)と、検索工程(S234)と、選択工程(S236)と、いう一連の工程を実施する。
【0043】
代表領域スキャン工程(S102)として、まず、制御計算機110は、基板101の検査に当って、最初のフィルタ関数(初期フィルタ)の係数を求めるために使用する代表領域(代表フレーム)を選択する。各ストライプ領域32のストライプ領域画像は、図4に示すように、例えば、複数のフレーム領域30のフレーム画像31に分割され、フレーム画像31毎に検査を行っていく。ここでは、基板101のあるチップ332の中から、フィルタ関数の係数を演算するために使用する代表フレーム領域を選択する。選択する代表フレーム領域の位置は、ユーザによって予め任意に設定しておけば良い。そして、選択した代表フレーム領域の位置を制御計算機110に設定しておけばよい。或いは、所定の選択条件を設定しておき、制御計算機110が代表フレーム領域の位置を選択しても良い。
【0044】
そして、画像取得機構150は、基板101の代表フレーム領域を含むストライプ領域32の2次電子画像を取得する。具体的には、以下のように動作する。
【0045】
まず、代表フレーム領域を含むストライプ領域32をスキャン可能な位置にステージ105を移動させる。画像取得機構150は、図形パターンが形成された基板101の代表フレーム領域を含むストライプ領域32の画像を取得する。ここでは、基板101の代表フレーム領域を含むストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出することにより、代表フレーム領域を含むストライプ領域32の2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子(マルチ2次電子ビーム300)が投影されても良い。
【0046】
上述したように、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、フィルタ演算回路134に転送される。測定画像データは、フィルタ演算回路134内の図示しない記憶装置に格納される。
【0047】
代表領域設計画像作成工程(S104)として、まず、展開回路111(設計画像作成部の一例)は、基板101のパターン形成の基となる設計パターンデータに基づいて代表フレームに配置される設計パターンを画像展開して代表設計画像を作成する。具体的には、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された代表フレームの各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換(画像展開)して代表設計画像を作成する。
【0048】
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、及び辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データ(ベクトルデータ)が格納されている。
【0049】
かかる図形データとなる設計パターンの情報が展開回路111に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、画素毎に8ビットの占有率データの代表設計画像を作成する。代表設計画像のデータはフィルタ演算回路134に出力される。代表設計画像のデータは、フィルタ演算回路134内の図示しない記憶装置に格納される。
【0050】
初期フィルタ演算工程(S106)として、フィルタ演算回路134は、基板101の代表フレーム領域の測定画像(代表フレーム画像)と代表設計画像とに基づいて、代表設計画像をフィルタ処理するためのフィルタ関数(初期フィルタ)或いはフィルタ関数の係数を演算する。
【0051】
図6は、実施の形態1におけるフィルタ関数を演算する手法の一例を説明するための図である。例えば、図6(a)に示すように、フレーム領域30の画素数よりも少ないk×k個の要素で構成される未知の係数行列a(i,j)(係数の一例)を求める。例えば、512×512画素で構成されるフレーム領域30の画像に対して、15×15の係数行列a(i,j)を求める。代表設計画像の注目画素d(i,i)を中心にして、k×k画素の画素と係数行列a(i,j)との積の和を画素数N(=k×k)で割った値が注目画素d(i,i)に対応する代表フレーム画像の注目画素r(i,i)により近づく係数行列a(i,j)を求める。かかる関係式(1)を以下に示す。
【0052】
【数1】
【0053】
図6(b)に示すように、注目画素を代表フレーム32内で移動させながら、その都度、関係式(1)を演算する。そして、代表フレーム32内のすべての画素についてそれぞれ得られた、未知の係数行列a(i,j)を用いて定義された関係式(1)を最も満足させる係数行列a(i,j)を求める。係数行列a(i,j)の要素数k×kは、適宜設定すればよい。少ないと精度が劣化し、多すぎると演算時間が長くなる。また、注目画素が代表フレーム32内を移動する際、端部に近いと端部側の周囲の画素が必要分存在しない場合もあるが、かかる場合には値が得られる周囲画素及び画素数Nで演算すればよい。
【0054】
フィルタ設定工程(S108)として、フィルタ演算回路134にて得られた係数行列a(i,j)(初期フィルタの一例)は、初期フィルタとして、参照画像作成回路112に出力され、フィルタ関数、或いはフィルタ関数の係数として参照画像作成回路112に設定される。
【0055】
ここで、上述したように、電子ビームで基板101をスキャンして得られる測定画像(SEM画像)の画質は、基板101に対してスキャン動作を開始した時刻からの時間の経過と共に少しずつ変化することが予想される。言い換えれば、先にスキャンして得られた測定画像と時間が経過した後でスキャンして得られた測定画像とでは、その画質が変化することが予想される。例えば、基板101の帯電等の影響が挙げられる。そのため、共にグレースケールで定義される測定画像と参照画像とを比較するダイ-データベース検査では、初期フィルタ演算工程(S106)で得られた初期フィルタを参照画像作成のために使用し続けると、時間の経過と共に測定画像と参照画像との差異が大きくなり疑似欠陥が多発する傾向があるといった問題があった。そのため、測定画像の画質の変化に追従するように参照画像を作成することが求められる。そこで、実施の形態1では、検査の進行に伴って、途中でフィルタ関数を切り替える。その際、代表領域スキャン工程(S102)から初期フィルタ演算工程(S106)までの学習処理を改めて行って新たなフィルタ関数を生み出すのではなく、過去に実績のある多くのフィルタ関数を蓄積しておき、その中から選択して用いる。実施の形態1では、フィルタ関数によってフィルタ処理される画像が有する特徴を抽出し、特徴を分類すると共に、特徴を基にフィルタ関数を検索可能なデータベース130を構築しておく。具体的な動作を以下に説明する。
【0056】
図7は、実施の形態1におけるフィルタ更新回路の内部構成の一例を示すブロック図である。図7において、フィルタ更新回路132内には、判定部60、基準画像作成部61、特徴抽出部62、テーブル作成部63、検索部64、参照画像候補作成部66、差分二乗和(SSD)演算部68、選択部69、及び磁気ディスク装置等の記憶装置65,67,70,71,72が配置される。判定部60、基準画像作成部61、特徴抽出部62、テーブル作成部63、検索部64、参照画像候補作成部66、SSD演算部68、及び選択部69といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。判定部60、基準画像作成部61、特徴抽出部62、テーブル作成部63、検索部64、参照画像候補作成部66、SSD演算部68、及び選択部69内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0057】
検査処理に先立ち、過去に用いた実績のある複数のフィルタ関数を蓄積しておき、それぞれのフィルタ関数から所定の特徴を抽出する。蓄積されるフィルタ関数は、同じ検査装置100で過去に別の被検査基板の検査に使用したものが望ましいが、これに限るものではない。他の検査装置で過去に別の被検査基板の検査に使用したフィルタ関数を含めても構わない。各フィルタ関数の特徴は、基準パターンが配置された所定のサイズの領域の基準設計画像にそれぞれのフィルタ関数を適用したフィルタ後の画像(基準画像)から抽出する。以下、具体的に説明する。なお、他の検査装置で使用したフィルタ関数については、他の検査装置でフィルタ関数の特徴を抽出してもよい。或いは、過去に用いた実績のある複数のフィルタ関数の各フィルタ関数の特徴をオフラインで抽出しておき、検査装置100に入力しても良い。
【0058】
図8は、実施の形態1における基準設計画像の一例を示す図である。図8において、基準設計画像12には、例えば15×15画素の領域の中央に5×5画素のサイズの基準パターン14が配置される。図8の例では、パターン有の5×5画素には階調値255が定義される。パターン無しの残りの画素には、階調値0が定義される。
【0059】
基準画像作成部61は、基準設計画像12を蓄積される各フィルタ関数でフィルタ処理して、フィルタ関数毎の基準画像を作成する。次に、特徴抽出部62は、フィルタ処理後に得られたフィルタ関数毎の基準画像から特徴を抽出する。
【0060】
図9は、実施の形態1におけるフィルタ後の基準画像の一例を示す図である。特徴抽出部62は、基準画像内の基準パターンの中心線上のx方向の断面プロファイルとy方向の断面プロファイルについて、それぞれ、特徴の一例として、パターンの明るさを示す指標となるフィルタ処理後の基準パターンの最大階調値Maxと最小階調値Minとを抽出する。また、特徴抽出部62は、基準画像内の基準パターンの中心線上のx方向の断面プロファイルについて、特徴の他の一例として、パターンの中心位置を示す指標となるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置(h/2)とパターン外部の基準位置との間の距離dx1、dx2を抽出する。基準画像のx方向の一方の端部を基準点1とし、他方の端部を基準点2として、これらの2つの基準点1,2をx方向のパターン外部の基準位置として用いる。同様に、y方向の断面プロファイルについて、特徴の他の一例として、パターンの中心位置を示す指標となるフィルタ処理後の基準パターンの中間階調位置(h/2)とパターン外部の基準位置との間の距離dy1、dy2を抽出する。基準画像のy方向の一方の端部を基準点1とし、他方の端部を基準点2として、これらの2つの基準点1,2をy方向のパターン外部の基準位置として用いる。また、特徴抽出部62は、基準画像内の基準パターンの中心線上のx方向の断面プロファイルについて、特徴の他の一例として、フィルタ処理後の基準パターンの面積Sxを抽出する。同様に、y方向の断面プロファイルについて、特徴の他の一例として、フィルタ処理後の基準パターンの面積Syを抽出する。
【0061】
図10は、実施の形態1における基準画像の特徴の一例を示す図である。図10の例では、基準パターンの中心線上のx方向の断面プロファイルを構成する階調値が示されている。図10の例では、最大階調値Maxは180、最小階調値Minは20となる。よって、中間階調は80(=(180-20)/2)となるので、中間階調位置は階調値80を示す画素内に位置することがわかる。基準点1とパターンの左側の中間階調位置を含む画素(階調値80)との間には階調値20,20,30,50が定義される4画素が存在する。1画素分の距離は1とし、画素内のサブ画素単位の距離は(1-V/256)と定義する。よって、基準点1とパターンの左側中間階調位置との距離dx1は、dx1=4+(1-80/256)=4.6875と求めることができる。基準点2とパターンの右側の中間階調位置を含む画素(階調値80)との間には階調値20,20,30,50が定義される4画素が存在する。よって、dx2=dx1=4.6875となる。また、面積Sxは、x方向の断面プロファイルの階調値の合計で定義すると好適である。図10の例では、Sx=1060となる。y方向の断面プロファイルから各特徴を抽出する場合も同様に求めればよい。
【0062】
図11は、実施の形態1における基準画像の特徴の他の一例を示す図である。上述した図10の例では、中間階調80が定義された画素が存在するため、中間階調位置が、中間階調80の画素内に位置することがわかる。しかしながら、図11の例に示すように、例えば、最大階調値Maxが200、最小階調値Minが20となり、中間階調が90(=(200-20)/2)となる場合、階調値90の画素は存在しない。このように同じ階調の画素が存在しない場合、線形補間により距離dx1を求めればよい。図11の例では、中間階調90に近い連続する階調値80の画素内の点Aと階調値100の画素内の点Bの2点を用いて補間する。各点の座標(x,y)を(距離dx1,階調値V)で定義する。この場合、点Aでは、上述したようにx=dx1=4.6875となり、y=階調値V=80となる。よって、点Aの座標(4.6875,80)となる。点Bについても点Aの場合と同様の計算を行うことで点Bの座標(5.6093,100)を得ることができる。中間階調90の点Xは、点A,Bを結ぶ直線上に存在する。よって、点A,Bの座標の値を用いてかかる直線の方程式y=ax+bの係数a,bを求めると、a=21.6967、b=-21.7033となる。よって、点Xの距離dx1=5.1484(=(90+21.7033)/21.6967)と求めることができる。
【0063】
次に、テーブル作成部63は、以上のようにして抽出した各フィルタ関数の特徴を用いて、データベース130に用いる階層分けした検索可能な階層テーブルを作成する。
【0064】
図12は、実施の形態1における階層テーブルの一例を示す図である。図12において、階層テーブル11は、上層側から画像の明るさを示す最大階調Max、最小階調Minの組み合わせM1,M2,M3,・・・が定義された第1層、中心位置を示す距離dx1,dx2,dy1,dy2の組み合わせD1,D2,D3,・・・が定義された第2層、面積を示す面積Sx,Syの組み合わせS1,S2,S3,・・・が定義された第3層、及び実際のフィルタ関数F1,F2,F3,・・・が定義された第4層で構成される。第2層のテーブルは第1層の各組み合わせMにそれぞれ従属して定義される。同様に、第3層のテーブルは第2層の各組み合わせDにそれぞれ従属して定義される。同様に、第4層のテーブルは第3層の各組み合わせSにそれぞれ従属して定義される。第1層のテーブルは、例えば、最大階調Maxの大きい方から降順に並ぶ。第2層のテーブルは、例えば、距離dx1の大きい方から降順に並ぶ。第3層のテーブルは、例えば、面積Sxの大きい方から降順に並ぶ。第4層のテーブルは、任意で構わない。
【0065】
作成された階層テーブル11を用いてデータベース130を構築しておく。これにより、データベース130には、特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数のフィルタ関数(第1の画像処理フィルタ)の情報が格納される。
【0066】
ここで、上述した例では、特徴として、最大階調Max、最小階調Min、距離dx1,dx2,dy1,dy2、及び面積Sx,Syを用いているが、これらのすべてを用いる場合に限るものではない。最大階調Max、及び最小階調Minを特徴とするだけでも良い。或いは、距離dx1,dx2,dy1,dy2を特徴とするだけでも良い。或いは、面積Sx,Syを特徴とするだけでも良い。
【0067】
以上の検査前処理が終了した後、被検査基板101に対する検査を開始する。
【0068】
スキャン工程(S202)として、画像取得機構150は、複数の図形パターンが形成された基板101上を電子ビームで走査することにより複数の電子光学画像(2次電子画像)を取得する。ここでは、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出することにより、基板101の2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子(マルチ2次電子ビーム300)が投影されても良い。
【0069】
上述したように、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ:電子光学画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0070】
図13は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図13において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置52,56、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0071】
比較回路108では、サブ照射領域29毎の2次電子画像の少なくとも一部で構成される被検査画像と参照画像とを比較する。被検査画像として、例えばフレーム領域30毎の2次電子画像(電子光学画像)を用いる。例えば、サブ照射領域29を4つのフレーム領域30に分割する。フレーム領域30として、例えば、512×512画素の領域を用いる。具体的には、例えば、以下のように動作する。
【0072】
設計画像作成工程(S204)として、展開回路111は、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。展開回路111は、スキャン工程で取得される測定画像の取得順序に合わせて、対応するフレーム領域30の設計画像を作成すると好適である。
【0073】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0074】
かかる図形データとなる設計パターンデータが展開回路111に入力されると図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして作成する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0075】
参照画像作成工程(S206)として、参照画像作成回路112(参照画像作成部)は、複数の電子光学画像の電子光学画像毎に対象の電子光学画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、対象の電子光学画像に対応する参照画像を作成する。具体的には以下のように動作する。参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、フィルタ設定工程(S108)において設定されているフィルタ関数Fを使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。検査処理の開始後最初に作成される第1番目の設計画像から所定の条件が満たされるまでの期間は、各フレーム領域30の設計画像に対して、初期フィルタが適用されることになる。
【0076】
比較回路108内に入力された測定画像(被検査画像)は、記憶装置56に格納される。比較回路108内に入力された参照画像は、記憶装置52に格納される。
【0077】
位置合わせ工程(S220)として、位置合わせ部57は、フレーム領域30毎に、対応するフレーム画像31(電子光学画像)と参照画像をそれぞれ記憶装置から読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。画素サイズとして、例えば、マルチ1次電子ビーム20の各ビームサイズと同程度のサイズの領域に設定されると好適である。
【0078】
比較工程(S224)として、比較部58は、フレーム領域30毎に、対象のフレーム画像31(電子光学画像)と、対象のフレーム画像31に対応する参照画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いは図示しないプリンタより出力されればよい。
【0079】
なお、上述した例では、画素比較を行なっているが、これに限るものではない。例えば、フレーム画像31と参照画像とからそれぞれ画像内の図形パターンの輪郭線を抽出し、輪郭線同士の距離が判定閾値よりも大きい場合に欠陥と判定しても良い。
【0080】
判定工程(S230)として、判定部60は、フィルタ関数設定後、所定の条件を満たしたかどうかを判定する。例えば、フィルタ関数を設定(或いは更新)した後に行われたスキャンの開始後、所定の時間が経過したかどうかを判定する。或いは、フィルタ関数を設定(或いは更新)した後に行われた、予め設定された数のストライプ領域のスキャンが実施されたかどうかを判定する。或いは、比較工程において、フィルタ関数を設定(或いは更新)した後に、同じフレーム領域30(或いはストライプ領域32)内で閾値以上の欠陥が検出されたかどうかを判定する。いずれの場合も複数のフレーム画像31のうちの一部のフレーム画像31の比較処理が実行された段階に相当する。まだ条件に当てはまらない間は、現在設定されているフィルタ関数を継続して使用したまま、参照画像作成工程(S206)を実施し、比較工程(S224)までの各工程を実施する。所定の条件を満たしたと判定された場合、特徴抽出工程(S232)に進む。また、所定の条件を満たしたと判定された場合、以降の参照画像の作成は一時停止する。
【0081】
特徴抽出工程(S232)として、まず、基準画像作成部61は、現在設定されているフィルタ関数(例えば、初期フィルタ)を読み出し、基準設計画像12を読み出されたフィルタ関数でフィルタ処理して、当該フィルタ関数による基準画像を作成する。次に、特徴抽出部62は、フィルタ処理後に得られた基準画像から特徴を抽出する。具体的には、上述した最大階調Max、最小階調Min、距離dx1,dx2,dy1,dy2、及び面積Sx,Syを抽出する。現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像の特徴を最大階調Max′、最小階調Min′、距離dx1′,dx2′,dy1′,dy2′、及び面積Sx′,Sy′と示す。
【0082】
なお、上述した例では、判定工程(S230)後に特徴抽出工程(S232)を実施しているが、これに限るものではない。フィルタ設定工程(S108)により所定のフィルタ関数が設定された場合に、他の工程の実施を待たずに特徴抽出工程(S232)を実施しても好適である。判定工程(S230)よりも先に特徴抽出工程(S232)を実施しておくことで判定工程(S230)後に検索工程(S234)から実施できるので、処理時間の短縮を図ることができる。
【0083】
検索工程(S234)として、検索部64は、複数のフレーム画像31の一部のフレーム画像31の比較処理が実行された段階、言い換えれば、判定工程(S230)で所定の条件を満たしたと判定された場合、データベース130を用いて、複数のフィルタ関数(第1の画像処理フィルタ)の中から現在使用しているフィルタ関数(画像処理フィルタ)の特徴と類似する(或いは現在使用しているフィルタ関数の特徴に近い)特徴を持った複数のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)を検索する。具体的には、検索部64は、現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像から抽出された特徴である、最大階調Max′、最小階調Min′、距離dx1′,dx2′,dy1′,dy2′、及び面積Sx′,Sy′をベータベース130に入力する。
【0084】
図14は、実施の形態1における類似するフィルタ関数を説明するための図である。図14の例では、例えば、基準画像のx方向の断面プロファイルを示している。図14において、最大階調Max、最小階調Min、及び距離dx1,dx2はほぼ一致しているものの、プロファイルの立ち上がり及び立ち下がりが若干異なる。この違いは、面積Sxの違いとして表れる。かかる違いを示す指標として差分二乗和を用いると好適である。最大階調Max、最小階調Min、及び距離dx1,dx2の違いを示す場合も同様である。
【0085】
図15は、実施の形態1における検索の仕方を説明するための図である。データベース130は、階層テーブル11の上層側から順に探索する。具体的には、データベース130は、第1層の明るさについて、各組Mの最大階調Max、及び最小階調Minと現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像の最大階調Max′、及び最小階調Min′と、を用いて、差分二乗和を示す次の式(2)を計算する。
【0086】
【数2】
【0087】
そして、ΔMが最も小さくなる組み合わせMを抽出する。
【0088】
次に、抽出された組み合わせMに従属する第2層の中心位置について、各組Dの距離dx1,dx2,dy1,dy2と現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像の距離dx1′,dx2′,dy1′,dy2′と、を用いて、差分二乗和を示す次の式(3)を計算する。
【0089】
【数3】
【0090】
そして、ΔDが最も小さくなる組み合わせDを抽出する。
【0091】
次に、抽出された組み合わせDに従属する第3層の面積について、各組Sの面積Sx,Syと現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像の面積Sx′,Sy′と、を用いて、差分二乗和を示す次の式(4)を計算する。
【0092】
【数4】
【0093】
そして、ΔSが最も小さくなる組み合わせMを抽出する。
【0094】
そして、抽出された組み合わせSに従属する第4層のフィルタ関数を抽出する。ここで、最終的に得られたフィルタ関数の数が下限閾値未満の場合、例えば、ΔSが小さい方からm個の組み合わせSを抽出し、それぞれの組み合わせSに従属する第4層のフィルタ関数を抽出する。そして、ΔSがより小さくなるフィルタ関数からN個のフィルタを抽出する。或いは、N個の抽出にステップ量を設定しても良い。例えば、ステップ量が3の場合、ΔSがより小さくなる第1番目のフィルタ関数、第4番目のフィルタ関数、第7番目のフィルタ関数、・・・を抽出する。ここで、すべての組み合わせSに従属する第4層のフィルタ関数を抽出した場合でも最終的に得られるフィルタ関数の数が下限閾値未満であれば、例えば、ΔDが小さい方からm個の組み合わせDを抽出し、それぞれの組み合わせDに従属する第4層のフィルタ関数を抽出する。かかる処理により、データベース130に格納されている複数のフィルタ関数(第1の画像処理フィルタ)の中から現在使用しているフィルタ関数(画像処理フィルタ)の特徴と類似する特徴を持った所定数のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)を抽出する。なお、抽出された組み合わせSに従属する第4層のフィルタ関数の数が上限閾値を超える場合、例えば上限閾値の数に制限して抽出してもよい。これにより後述する工程での処理時間が長くなるのを抑制できる。
【0095】
ここで、特徴が類似する(或いは近い特徴を有している)からといって、検索時点における測定画像の変化した画質の状態に合致するとは限らない。そこで、実施の形態1では、検索された複数のフィルタ関数の中から現状に合うフィルタ関数を選択する。
【0096】
選択工程(S236)として、まず、参照画像候補作成部66は、基準画像での特徴が類似する(或いは近い特徴を有している)、検索された複数のフィルタ関数で、実際の検査に使用する設計画像にフィルタ処理した複数の参照画像候補を作成する。ここで使用する設計画像は、例えば、判定工程(S230)にて所定の条件を満たしたと判定された時と同時期に作成された参照画像に使用された設計画像を用いると好適である。例えば、一時停止前の最後の参照画像に使用された設計画像を用いると好適である。
【0097】
次に、SSD演算部68は、得られた複数の参照画像候補について、参照画像候補毎に、対応するフレーム画像31(測定画像)との間で差分二乗和を演算する。また、参照画像候補の作成に使用した設計画像に現在使用しているフィルタ関数でフィルタ処理した参照画像と、対応するフレーム画像31(測定画像)との間で差分二乗和を演算する。
【0098】
そして、選択部69は、複数のフレーム画像31の残部のフレーム画像31との比較用に現在使用しているフィルタ関数を使用して作成した参照画像より一致度が高くなる参照画像が作成されるフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)を、基準画像での特徴が類似する(或いは近い特徴を有している)複数のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)の中から選択する。ここでは最も差分二乗和が小さくなる参照画像候補の作成に使用したフィルタ関数を選択する。
【0099】
そして、フィルタ設定工程(S108)に戻り、選択されたフィルタ関数は、参照画像作成回路112に出力され、フィルタ関数、或いはフィルタ関数の係数として参照画像作成回路112に設定される。これによりフィルタ関数が更新される。
【0100】
以上のようにしてフィルタ関数が更新された後、参照画像作成回路112は、選択されたフィルタ関数を用いて、まだ比較処理が行われていない残部のフレーム画像31のうち対象のフレーム画像31に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、対象のフレーム画像31に対応する参照画像を作成する。例えば、k番目のフレーム画像の比較処理まで実施されていた場合には、(k+1)番目以降のフレーム画像に対応する設計画像にフィルタ処理を実施すればよい。
【0101】
そして、まだ比較処理が済んでいない(k+1)番目以降のフレーム領域30について、更新されたフィルタ関数で作成された参照画像と、対応するフレーム領域30の測定画像との位置合わせ工程(S220)と比較工程(S224)とを実施する。
【0102】
また、1枚の基板101の検査において、フィルタ関数の更新は1回だけとは限らない。同様に手順で複数回の更新を行うと好適である。
【0103】
以上のように、実施の形態1によれば、初期フィルタの所謂近隣からさらに良いフィルタ関数を定量的かつ効率的に探索できる。よって、電子ビームで基板101をスキャンして得られる測定画像の画質の変化に追従するように参照画像を作成できる。
【0104】
実施の形態2.
実施の形態1では、基準画像での特徴が類似する複数のフィルタ関数を用いた複数の参照画像候補の中から1つの参照画像を選択する場合を説明したが、実施の形態2では、変化した画質の状態に実施の形態1よりもさらに合わせることが可能な参照画像を作成する構成について説明する。検査装置100の構成は図1と同様である。また、検査方法のフローチャート図は、図5と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様で構わない。
【0105】
選択工程(S236)として、複数の参照画像候補を作成する点、及び参照画像候補毎に、対応するフレーム画像31(測定画像)との間で差分二乗和を演算する点は同様である。
【0106】
図16は、実施の形態2における複数の参照画像候補と合成参照画像の一例を示す図である。実施の形態2における選択部69は、一致度が高くなる参照画像が作成される2以上のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)をデータベース130から検索された複数のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)の中から選択する。例えば、最も差分二乗和が小さくなる参照画像候補1の作成に使用したフィルタ関数と、2番目に差分二乗和が小さくなる参照画像候補1の作成に使用したフィルタ関数とを選択する。図16の例では、2つの参照画像候補1,2が示されている。2つの参照画像候補1,2は、左中段の画素と、右下の画素とが異なっている場合を示している。
【0107】
そして、フィルタ設定工程(S108)に戻り、選択された2以上のフィルタ関数は、参照画像作成回路112に出力され、フィルタ関数、或いはフィルタ関数の係数として参照画像作成回路112に設定される。
【0108】
以上のようにしてフィルタ関数が更新された後、参照画像作成回路112は、選択された2以上のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)を用いて、まだ比較処理が行われていない残部のフレーム画像31のうち対象のフレーム画像31に対応する設計画像にフィルタ処理を行うことで、対象のフレーム画像31に対応する2以上の参照画像候補を作成する。そして、参照画像作成回路112は、2以上の参照画像候補を合成することにより参照画像を作成する。図16の例では、2つの参照画像候補1,2の互いに異なる画素値のうち、左中段の画素については参照画像候補1の画素値を選択し、右下の画素については参照画像候補2の画素値を選択し、両者を合成した参照画像を作成する。どちらの参照画像候補の画素値を用いるかについては、フレーム画像31との一致度が高くなる方を選択する。例えば、x,y方向の両方に適したフィルタ関数が無い場合に一方ずつに適した2つのフィルタ関数によるフィルタ処理結果を合成できるので、特に有効である。
【0109】
ここで、参照画像作成工程(S206)では、同時に2つのフィルタ関数でフィルタ処理を行うことが難しい場合には、(k+1)番目の参照画像作成時に、例えば参照画像候補1の作成に使用したフィルタ関数で設計画像にフィルタ処理し、続く(k+2)番目の参照画像作成時に、例えば参照画像候補2の作成に使用したフィルタ関数で同じ設計画像にフィルタ処理を行う。そして、参照画像作成回路112は、(k+1)番目の参照画像候補と(k+2)番目の参照画像候補とを合成する。
【0110】
そして、まだ比較処理が済んでいない(k+1)番目以降のフレーム領域30について、更新されたフィルタ関数で作成された参照画像と、対応するフレーム領域30の測定画像との位置合わせ工程(S220)と比較工程(S224)とを実施する。
【0111】
以上のように、2以上の参照画像候補から対象のフレーム画像31の画素値に近い画素値を抜き出して合成することで、実施の形態1よりも対象のフレーム画像に近い参照画像を得ることができる。
【0112】
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1,2で用いた特徴の他にさらなる特徴を追加する構成について説明する。検査装置100の構成は図1と同様である。また、検査方法のフローチャート図は、図5と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1或いは実施の形態2と同様で構わない。
【0113】
図17は、実施の形態3におけるフィルタ更新回路の内部構成の一例を示すブロック図である。図17において、フィルタ更新回路132内に、さらに、ランク毎図形数測定部74が配置された点以外は図7と同様である。判定部60、基準画像作成部61、特徴抽出部62、ランク毎図形数測定部74、テーブル作成部63、検索部64、参照画像候補作成部66、SSD演算部68、及び選択部69、といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。判定部60、基準画像作成部61、特徴抽出部62、ランク毎図形数測定部74、テーブル作成部63、検索部64、参照画像候補作成部66、SSD演算部68、及び選択部69内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0114】
実施の形態3では、過去に用いた実績のある複数のフィルタ関数の各フィルタ関数の特徴として、当該フィルタ関数の取得に用いた設計画像内の微小図形のランクと、そのランクの微小図形の数とを用いる。そこで、過去に用いた実績のある複数のフィルタ関数について、ランク毎図形数測定部74は、それぞれ代表領域スキャン工程(S102)から初期フィルタ演算工程(S106)といった学習処理で演算された際に用いた設計画像から以下に説明するランクの微小図形とその数を測定しておく。過去に用いた実績のあるフィルタ関数が他の検査装置で使用されたものである場合、他の検査装置で測定しておけばよい。
【0115】
図18は、実施の形態3における微小図形ランクを説明するための図である。図18において、ランク1は、x方向、或いはy方向に並ぶ3画素が、「0,V,0」、或いは「V,0,V」となる画素群を示す。階調値V>0である。言い換えれば、パターン有を示す1画素の両側がパターン無を示す画素群をランク1の微小図形とする。ランク2は、x方向、或いはy方向に並ぶ4画素が、「0,V,V,0」、或いは「V,0,0,V」となる画素群を示す。言い換えれば、パターン有を示す2画素の両側がパターン無を示す画素群をランク2の微小図形とする。ランク3は、x方向、或いはy方向に並ぶ5画素が、「0,V,V,V,0」、或いは「V,0,0,0,V」となる画素群を示す。言い換えれば、パターン有を示す3画素の両側がパターン無を示す画素群をランク3の微小図形とする。以降同様に所定のランクまで定義する。ランクの値が小さいほど小さいパターンである。
【0116】
次に、テーブル作成部63は、上述した第1層から第3層の特徴の他に、微小図形ランクの特徴の階層を追加した、データベース130に用いる階層分けした検索可能な階層テーブルを作成する。
【0117】
図19は、実施の形態3における階層テーブルの一例を示す図である。図19において、階層テーブル11は、図12に示した、第1層から第3層、次の下位層となる、微小図形ランクと各ランクの数の組み合わせr1、r2,r3・・・が定義された第4層、及び実際のフィルタ関数F1,F2,F3,・・・が定義された第5層で構成される。第4層のテーブルは第3層の各組み合わせSにそれぞれ従属して定義される。第1層のテーブルは、例えば、最大階調Maxの大きい方から降順に並ぶ。第2層のテーブルは、例えば、距離dx1の大きい方から降順に並ぶ。第3層のテーブルは、例えば、面積Sxの大きい方から降順に並ぶ。第4層のテーブルは、例えば、上位ランクの数が多い方から降順に並ぶ。第5層のテーブルは、任意で構わない。
【0118】
作成された階層テーブル11を用いてデータベース130を構築しておく。これにより、データベース130には、特徴を示す特徴情報を用いて検索可能な複数のフィルタ関数(第1の画像処理フィルタ)の情報が格納される。
【0119】
特徴抽出工程(S232)として、まず、基準画像作成部61が現在設定されているフィルタ関数(例えば、初期フィルタ)による基準画像を作成する点、及び特徴抽出部62がフィルタ処理後に得られた基準画像から特徴として最大階調Max′、最小階調Min′、距離dx1′,dx2′,dy1′,dy2′、及び面積Sx′,Sy′を抽出する点は同様である。さらに、ランク毎図形数測定部74は、上述した代表領域スキャン工程(S102)から初期フィルタ演算工程(S106)といった学習処理で初期フィルタが演算された際に用いた設計画像から微小図形ランクと各ランクの数を測定する。
【0120】
検索工程(S234)として、検索部64は、判定工程(S230)で所定の条件を満たしたと判定された場合、データベース130を用いて、複数のフィルタ関数(第1の画像処理フィルタ)の中から現在使用しているフィルタ関数(画像処理フィルタ)の特徴と類似する(或いは現在使用しているフィルタ関数の特徴に近い)特徴を持った複数のフィルタ関数(第2の画像処理フィルタ)を検索する。具体的には、検索部64は、現在設定されているフィルタ関数によるフィルタ後の基準画像から抽出された特徴である、最大階調Max′、最小階調Min′、距離dx1′,dx2′,dy1′,dy2′、面積Sx′,Sy′、及び微小ランクとその数をベータベース130に入力する。
【0121】
そして、ベータベース130は、上層側から順に抽出し、第3層のΔSが最も小さくなる組み合わせMを抽出する。
【0122】
そして、抽出された組み合わせSに従属する第4層の組み合わせr1,r2,r3,・・・のうち、ランク1の数が多い組み合わせrを優先して抽出する。ランク1が存在しない場合、次の上位ランクの数が多い組み合わせrを優先して抽出する。
【0123】
或いは、k番目の参照画像の比較処理が終了している場合に、次のk+1番目の参照画像を作成するための設計画像に存在する最も上位の微小ランクの数が最も近い組み合わせrを優先して抽出するようにしても好適である。
【0124】
そして、抽出された組み合わせrに従属する第5層のフィルタ関数を抽出する。
【0125】
微小図形ランクを用いることで、データベース130に蓄えられたフィルタ関数の中から、できるだけ欠陥検出の難しい微小パターンに適したものを、検索することが可能になる。
【0126】
データベース130に蓄積されたデータ数が多くなってくると、2つの異なるフィルタであっても、両者の面積SxとSyの組み合わせが同じ値になるケースがある。同様のことが、2つ以上の複数のフィルタ間でもおこり得る。そこで、検索の要素の一つに、微小図形ランクを追加することで、前述の面積の組み合わせが同じになるケースであっても、フィルタを区別することができる。
【0127】
また、微小図形ランクは、フィルタ関数を算出する際のSEM画像と同一の設計画像を入力として、画像中に存在するパターンのうち、比較的寸法が小さいパターンの数量をカウントして、寸法の大小を考慮してランク付けした指標である。SEM画像中のパターン形状とパターン数量は、検査対象となる試料によって異なるので、カウントした微小図形数は重複しにくい。
【0128】
また、一般的に、試料の欠陥を検査する検査装置では、寸法が小さい微小パターンほど欠陥の検出が難しい。その理由の一つは、SEM画像に似せた参照画像をつくることが難しく、両画像間の各画素の階調値の差が大きくなり、いわゆる疑似欠陥が多発し、欠陥を示す信号が埋もれてしまうからである。参照画像の生成が難しい理由は、微小なパターンであるほど、パターンを表現するための画素の総数が少ない、すなわち情報量が少ないからである。情報量が少ないと、例えば、パターン形状や位置の予測が難しくなる。
【0129】
また、微小パターンに適した参照画像をつくるには、微小パターンに適したフィルタの選定が不可欠である。そのフィルタを算出するには、学習で入力するSEM画像中に、微小パターンの数多い、言い換えると微小パターンの情報量が多いことが、望ましい。微小図形ランクを用いれば、データベースから、学習時の微小パターンの情報量を加味して、フィルタを検索することができる。
【0130】
以降の各工程の内容は実施の形態1或いは実施の形態2と同様である。
【0131】
以上のように、実施の形態3によれば、より微小な図形について測定画像に合わせた参照画像を作成できる。
【0132】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、フィルタ更新回路132、及びフィルタ演算回路134は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0133】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0134】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0135】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0136】
10 1次電子ビーム
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
52,56 記憶装置
57 位置合わせ部
58 比較部
60 判定部
61 基準画像作成部
62 特徴抽出部
63 テーブル作成部
64 検索部
65,67,70,71,72 記憶装置
66 参照画像候補作成部
68 SSD演算部
69 選択部
74 ランク毎図形数測定部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照輪郭位置抽出回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 データベース
132 フィルタ更新回路
134 フィルタ演算回路
142 駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205,206,207,224,226 電磁レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 ビームセパレーター
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19