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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/342 20140101AFI20240902BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240902BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20240902BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
B23K26/342
B23K26/00 N
B23K26/067
B23K26/21 W
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020164688
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056766
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】田邉 猛
(72)【発明者】
【氏名】茅原 崇
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103801833(CN,A)
【文献】国際公開第2019/189927(WO,A1)
【文献】特開2010-167436(JP,A)
【文献】特開2005-211985(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014203025(DE,A1)
【文献】特開2006-346725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/342
B23K 26/00
B23K 26/067
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面上にフィラーワイヤを供給するとともに、当該表面にレーザ光を前記対象物に対して相対的に掃引方向に掃引して照射することにより、前記フィラーワイヤを溶融するとともに当該対象物を溶接するレーザ溶接方法であって、
前記フィラーワイヤの直径に対する、前記レーザ光の前記表面上での前記掃引方向と直交する方向における幅の比である幅比が、0.8以上であり、
前記レーザ光は、第二パワー領域と、当該第二パワー領域の周囲を取り囲む環状の第一パワー領域と、を有し、
前記第一パワー領域における前記レーザ光のパワーに対する前記第二パワー領域における前記レーザ光のパワーの比であるパワー比は、3/7以上7/3以下である、レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記表面は平面状であり、
前記第一パワー領域および前記第二パワー領域の略全域が、前記平面状の表面上に照射される、請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記幅比が、4以下である、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記幅比は、1.5以上3.6以下である、請求項1~3のうちいずれか一つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記フィラーワイヤは、前記第一パワー領域を形成する前記レーザ光が照射される位置に配置されるとともに、前記第二パワー領域を形成する前記レーザ光が照射される位置とは異なる位置に配置される、請求項のうちいずれか一つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
前記第一パワー領域は、前記レーザ光の複数のビームを含む、請求項のうちいずれか一つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項7】
前記複数のビームは、円環状に配置される、請求項に記載のレーザ溶接方法。
【請求項8】
前記複数のビームは、四角形状の環状に配置される、請求項に記載のレーザ溶接方法。
【請求項9】
前記レーザ光は複数のビームを含み、
前記複数のビームが、ビームシェイパによって形成される、請求項1~のうちいずれか一つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項10】
前記ビームシェイパは回折光学素子である、請求項に記載のレーザ溶接方法。
【請求項11】
前記フィラーワイヤは、前記表面上に形成された溶融池と接するように位置され、
前記フィラーワイヤの前記溶融池と接した端面のうち前記表面に近い第一端部は、前記レーザ光の前記表面における照射中心から第一方向に離間し、
前記溶融池の前記第一方向の第二端部は、前記照射中心から前記第一方向に前記第一端部よりも離れて位置した、請求項1~10のうちいずれか一つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項12】
前記第一方向は、前記掃引方向である、請求項11に記載のレーザ溶接方法。
【請求項13】
前記レーザ光および前記フィラーワイヤは、前記表面に対して前記第一方向に掃引される、請求項11または12に記載のレーザ溶接方法。
【請求項14】
レーザ光を対象物の表面に照射する光学ヘッドと、
前記表面上にフィラーワイヤを供給するフィラーワイヤ供給部と、
を備え、前記レーザ光を前記表面に前記対象物に対して相対的に掃引方向に掃引して照射することにより、前記フィラーワイヤを溶融するとともに当該対象物を溶接するレーザ溶接装置であって、
前記フィラーワイヤの直径に対する、前記レーザ光の前記表面上での前記掃引方向と直交する方向における幅の比である幅比が、0.8以上であり、
前記レーザ光は、第二パワー領域と、当該第二パワー領域の周囲を取り囲む環状の第一パワー領域と、を有し、
前記第一パワー領域における前記レーザ光のパワーに対する前記第二パワー領域における前記レーザ光のパワーの比であるパワー比は、3/7以上7/3以下である、レーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料で作られた対象物を溶接する手法の一つとして、対象物の表面上にフィラーワイヤを供給しながらレーザ光を照射して溶接を実行するレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/026750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のレーザ溶接にあっては、フィラーワイヤを用いないレーザ溶接に比べて、例えばフィラーワイヤの直径など、設定するパラメータが増えるため、例えばビードの割れやスパッタのような溶接不良が生じないようにするための各パラメータの設定に、より長い時間を要する場合があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、フィラーワイヤを供給しながらレーザ光を照射するレーザ溶接において、より容易により溶接不良の少ないレーザ溶接を可能とするような、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ溶接方法は、例えば、対象物の表面上にフィラーワイヤを供給するとともに、当該表面にレーザ光を前記対象物に対して相対的に掃引方向に掃引して照射することにより、前記フィラーワイヤを溶融するとともに当該対象物を溶接するレーザ溶接方法であって、前記フィラーワイヤの直径に対する、前記レーザ光の前記表面上での前記掃引方向と直交する方向における幅の比である幅比が、0.8以上である。
【0007】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記幅比が、4以下であってもよい。
【0008】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記幅比は、1.5以上3.6以下であってもよい。
【0009】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記レーザ光は、環状の第一パワー領域を有してもよい。
【0010】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記レーザ光は、第一パワー領域によって囲まれた第二パワー領域を有してもよい。
【0011】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記レーザ光は、第一パワー領域と、前記掃引方向と直交する方向における幅が前記第一パワー領域よりも狭い第二パワー領域と、を有し、前記第一パワー領域は、少なくとも部分的に前記第二パワー領域よりも前記掃引方向の前方に位置してもよい。
【0012】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記第一パワー領域における前記レーザ光のパワーに対する前記第二パワー領域における前記レーザ光のパワーの比であるパワー比が、0以上9以下であってもよい。
【0013】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記パワー比は、3/7以上7/3以下であってもよい。
【0014】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記フィラーワイヤは、前記第一パワー領域を形成する前記レーザ光が照射される位置に配置されるとともに、前記第二パワー領域を形成する前記レーザ光が照射される位置とは異なる位置に配置されてもよい。
【0015】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記第一パワー領域は、前記レーザ光の複数のビームを含んでもよい。
【0016】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記複数のビームは、円環状に配置されてもよい。
【0017】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記複数のビームは、四角形状の環状に配置されてもよい。
【0018】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記レーザ光は複数のビームを含み、前記複数のビームが、ビームシェイパによって形成されてもよい。
【0019】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記ビームシェイパは回折光学素子であってもよい。
【0020】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記フィラーワイヤは、前記表面上に形成された溶融池と接するように位置され、前記フィラーワイヤの前記溶融池と接した端面のうち前記表面に近い第一端部は、前記レーザ光の前記表面における照射中心から第一方向に離間し、前記溶融池の前記第一方向の第二端部は、前記照射中心から前記第一方向に前記第一端部よりも離れて位置してもよい。
【0021】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記第一方向は、前記掃引方向であってもよい。
【0022】
前記レーザ溶接方法にあっては、前記レーザ光および前記フィラーワイヤは、前記表面に対して前記第一方向に掃引されてもよい。
【0023】
本発明のレーザ溶接装置は、例えば、レーザ光を対象物の表面に照射する光学ヘッドと、前記表面上にフィラーワイヤを供給するフィラーワイヤ供給部と、を備え、前記レーザ光を前記表面に前記対象物に対して相対的に掃引方向に掃引して照射することにより、前記フィラーワイヤを溶融するとともに当該対象物を溶接するレーザ溶接装置であって、前記フィラーワイヤの直径に対する、前記レーザ光の前記表面上での前記掃引方向と直交する方向における幅の比である幅比が、0.8以上である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、例えば、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、実施形態のレーザ溶接方法における溶接部位の模式的かつ例示的な側面図である。
図3図3は、実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
図4図4は、実施形態のレーザ溶接装置から照射されたレーザ光の対象物の表面上におけるビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
図5A図5Aは、実施形態のレーザ溶接方法によって対象物の表面上に形成されたビードの一例を示す平面図である。
図5B図5Bは、実施形態のレーザ溶接方法によって対象物の表面上に形成されたビードの一例を示す平面図である。
図5C図5Cは、実施形態のレーザ溶接方法によって対象物の表面上に形成されたビードの一例を示す平面図である。
図5D図5Dは、実施形態のレーザ溶接方法によって対象物の表面上に形成されたビードの一例を示す平面図である。
図6図6は、実施形態のレーザ溶接装置から照射されたレーザ光の対象物の表面上におけるビーム(スポット)の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0027】
また、各図において、方向Xを矢印Xで表し、方向Yを矢印Yで表し、方向Zを矢印Zで表している。方向X、方向Y、および方向Zは、互いに交差するとともに直交している。Z方向は、対象物Wの表面Wa(加工面)の法線方向であり、レーザ光Lの照射方向の反対方向である。
【0028】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位、領域、工程等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0029】
[実施形態]
[レーザ溶接装置の構成]
図1は、実施形態のレーザ溶接装置100の概略構成を示す図である。図1に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置110と、光学ヘッド120と、光ファイバ130と、フィラーワイヤFの供給機構140と、を備えている。
【0030】
レーザ溶接装置100は、対象物Wの表面Waにレーザ光Lを照射するとともに、当該表面Wa上にフィラーワイヤFを供給する。レーザ光Lのエネルギによって、対象物WおよびフィラーワイヤFが溶融され、固化されることにより、対象物Wが溶接される。
【0031】
対象物Wは、複数の部材(不図示)を有しており、レーザ溶接によって、当該複数の部材が接合される。
【0032】
対象物Wとなる複数の部材は、それぞれ、例えば、鉄や鉄合金のような鉄系の金属材料、アルミニウムやアルミニウム合金のようなアルミニウム系の金属材料、銅や銅合金のような銅系の金属材料等で、作られうる。複数の部材は、同じ金属材料で作られてもよいし、互いに異なる金属材料で作られてもよい。
【0033】
フィラーワイヤFは、溶加材とも称され、溶接時に追加されるワイヤ状の金属材料である。フィラーワイヤFにより、複数の部材間に隙間がある場合に当該隙間を埋める金属材料を供給できたり、当該複数の部材が異種金属である場合に接合強度を弱める金属間化合物の生成を抑制する添加物を供給できたり、といった利点がもたらされる。
【0034】
レーザ装置110は、レーザ発振器を備えており、一例としては、数kWのパワーのシングルモードのレーザ光を出力できるよう構成されている。なお、レーザ装置110は、例えば、内部に複数の半導体レーザ素子を備え、当該複数の半導体レーザ素子の合計の出力として数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。また、レーザ装置110は、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ等、様々なレーザ光源を備えてもよい。
【0035】
光ファイバ130は、レーザ装置110と光学ヘッド120とを光学的に接続している。言い換えると、光ファイバ130は、レーザ装置110から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。レーザ装置110が、シングルモードレーザ光を出力する場合、光ファイバ130は、シングルモードレーザ光を伝播するよう構成される。この場合、シングルモードレーザ光のMビーム品質は、1.3以下に設定される。Mビーム品質は、M2ファクタとも称されうる。
【0036】
光学ヘッド120は、レーザ装置110から入力されたレーザ光を、対象物Wに向かって照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、集光レンズ122と、DOE123(diffractive optical element、回折光学素子)と、を備えている。コリメートレンズ121、集光レンズ122、およびDOE123は、光学部品とも称されうる。なお、光学ヘッド120が備える光学部品は、コリメートレンズ121、集光レンズ122、およびDOE123には限定されない。
【0037】
光学ヘッド120は、表面Wa上でレーザ光Lを掃引するために、対象物Wとの相対位置を変更可能に構成されている。光学ヘッド120と対象物Wとの相対移動は、光学ヘッド120の移動、対象物Wの移動、または光学ヘッド120および対象物Wの双方の移動により、実現されうる。光学ヘッド120と対象物Wとの相対移動により、レーザ光Lの照射位置は、対象物Wの表面Wa上で、掃引方向SDへ移動する。なお、本実施形態では、掃引方向SDがX方向である場合について例示している。
【0038】
コリメートレンズ121は、入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。また、集光レンズ122は、平行光としてのレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、対象物Wに照射する。
【0039】
DOE123は、コリメートレンズ121と集光レンズ122との間に配置され、レーザ光のビームの形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。
【0040】
フィラーワイヤFの供給機構140は、送出装置141と、ノズル142と、を有している。送出装置141は、設定された一定の速度でフィラーワイヤFを送り出す。ノズル142は、送出装置141から送り出されたフィラーワイヤFを、設定された角度で、表面Wa上の設定された位置に向けて送り出す。送出装置141におけるフィラーワイヤFの送出速度は、可変に設定することができる。供給機構140は、フィラーワイヤ供給部の一例である。
【0041】
ノズル142は、光学ヘッド120に対して相対的に静止した状態となるよう、構成されている。一例として、ノズル142は、光学ヘッド120または当該光学ヘッド120を移動可能に支持する支持部材に固定されている。
【0042】
図2は、溶接部位を拡大した側面図であって、表面Wa上にフィラーワイヤFが供給されるとともにレーザ光Lが照射され、溶接されている状態を模式的に示している。図2は、表面Waに沿うとともに掃引方向SDに対して直交する方向に見た図である。
【0043】
光学ヘッド120およびノズル142は、表面Waに沿って掃引方向SDに一体に動く。また、送出装置141におけるフィラーワイヤFの送出速度は、図2に示される形態が維持されるよう、すなわち、溶接部位に対してフィラーワイヤFが供給過多とならず、かつ供給不足とならないよう、適宜に設定される。これにより、レーザ光LおよびフィラーワイヤFは、図2の形態を略維持しながら、表面Waに対して、掃引方向SDに一体に移動する。
【0044】
レーザ光Lの光軸中心とフィラーワイヤFの中心軸とは、同一のXZ平面に略沿っている。XZ平面は、X方向およびZ方向に沿う面であり、掃引方向SDとレーザ光Lの照射方向とに沿う面である。
【0045】
レーザ光Lは、表面Waに対し、Z方向の反対方向に向けて照射される。また、フィラーワイヤFは、溶接部位に向けて、図2中に示される供給方向Sに供給される。供給方向Sは、掃引方向SDの反対方向とレーザ光Lの照射方向との間の方向、すなわち、Z方向の反対方向とX方向の反対方向との間の方向である。
【0046】
また、フィラーワイヤFの供給位置は、一例として、表面Wa上におけるレーザ光Lの照射中心Cから掃引方向SDにずれている。
【0047】
図2に示されるように、溶接中、表面Wa上には、レーザ光Lの照射によって対象物WおよびフィラーワイヤFが溶融した液状の溶融池Mが形成される。レーザ光Lの掃引方向SDへの移動に伴って、溶融池Mのうちレーザ光Lの照射領域から外れた部位が冷却され固化される。これにより、ビードBが表面Wa上において溶融池Mから掃引方向SDの反対方向に向けて延びることになる。
【0048】
図2に示される例では、溶接中、フィラーワイヤFの端面Feは、液状の溶融池Mの表面と接している。また、溶融池Mの掃引方向SDの先端e2は、端面Feのうち表面Waに近い下端e1よりも、レーザ光Lの照射中心Cから掃引方向SDに離れて位置している。発明者らの実験的な研究により、溶接中、このような形態が得られた場合には、溶融池Mが安定し、ビードBの割れや、ハンピング、スパッタのような溶接不良の少ない好適な溶接状態が得られることが判明した。なお、図2は、溶接不良の少ない溶接状態の一例であって、溶接不良の少ない溶接状態における溶接部位の形態は、図2には限定されない。掃引方向SDは、第一方向の一例であり、下端e1は、第一端部の一例であり、先端e2は、第二端部の一例である。
【0049】
図3は、DOE123の原理の概念を示す説明図である。図3に示されるように、DOE123は、例えば、周期の異なる複数の回折格子123aが重ね合わせられた構成を備えている。DOE123は、平行光を、各回折格子123aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE123は、ビームシェイパとも称されうる。
【0050】
図4は、対象物Wの表面Wa上に形成されたレーザ光Lのビーム(スポット)の一例を示す図である。なお、図4では、簡単のため、ビームLmを実線で示し、ビームLsを破線で示している。
【0051】
DOE123は、レーザ光を複数のビームに分割する。複数のビームは、少なくとも一つのビームLmと、少なくとも一つのビームLsと、を含む。ビームLmは、主ビームとも称され、ビームLsは、副ビームとも称されうる。
【0052】
図4の例では、レーザ光Lは、一つのビームLmと、当該ビームLmを円環状に取り囲む16個のビームLsと、を有している。ビームLmは、レーザ光Lの照射中心の近くに位置され、ビームLsは、ビームLmよりも照射中心からより遠くに位置されている。ビームLmを含む領域は、第二パワー領域A2の一例であり、ビームLsを含む領域は、第一パワー領域A1の一例である。なお、ビームLmおよびビームLsの数や配置は、図4の例には限定されない。DOE123を交換することにより、光学ヘッド120は、種々の配置の複数のビームを含むレーザ光Lを出力することができる。
【0053】
図4の例のように、レーザ光Lが複数のビームを含む場合、レーザ光Lの直径Dl(幅)は、幅方向に最も離間した二つのビームLsの中心間の距離と定義される。幅方向は、掃引方向SDと直交する方向であり、本実施形態ではY方向となる。なお、各ビームLs,Lmは、表面Wa上の径方向に沿って、例えばガウシアン形状のパワー分布を有する。この場合、各ビームLs,Lmのビーム径は、当該ビームLs,Lmのピークを含みピーク強度の1/e以上の強度の領域の直径として、定義することができる。また、各ビームLs,Lmの中心は、強度のピークの位置とすることができる。
【0054】
他方、図示されないが、レーザ光Lが、ガウシアン形状のパワー分布を有した一つのビームのみを含む場合、当該レーザ光Lの直径は、当該ビームのピークを含みピーク強度の1/e以上の強度の領域の直径として、定義することができる。
【0055】
レーザ装置110や、光ファイバ130、コリメートレンズ121、集光レンズ122、およびDOE123の適宜な設計、設定、あるいは調整により、レーザ溶接装置100は、上述したようなビームLmおよびビームLsを含むレーザ光Lを出力することができる。
【0056】
[溶接方法]
レーザ溶接装置100を用いた溶接にあっては、まず、対象物WおよびフィラーワイヤFが、レーザ光Lが照射される領域にセットされる。そして、DOE123によって分割されたビームLm,Lsを含むレーザ光Lが対象物Wに照射されている状態で、レーザ光LおよびフィラーワイヤFと対象物Wとが相対的に移動する。これにより、レーザ光Lが表面Wa上に照射されながら当該表面Wa上を掃引方向SDに移動する、すなわち、レーザ光Lが表面Wa上で掃引される。レーザ光Lが照射された部分において、対象物WとフィラーワイヤFとが溶融し、その後、温度の低下に伴って凝固することにより、対象物Wが溶接される。この際ビードBが形成される。ビードBは、掃引の軌跡に沿って延びる。なお、本実施形態では、一例として、掃引方向SDは、X方向であるが、掃引方向SDは、Z方向と交差していればよく、X方向には限定されない。また、表面Wa上で湾曲した掃引が実行され、これにより湾曲したビードBが形成されてもよい。
【0057】
また、一連の発明者らの実験的な研究において、レーザ光Lにおいて、ビームLs(第一パワー領域A1)の少なくとも一部の領域が、ビームLm(第二パワー領域A2)に対して掃引方向SDにおける前方に位置することにより、ビードBの割れや、ハンピング、スパッタのような溶接不良の発生を抑制できることが確認された。これは、例えば、ビームLmが到来する前のビームLsによる対象物Wの予加熱により、ビームLsおよびビームLmによって形成される対象物Wの溶融池Mがより安定化するからであると推定できる。
【0058】
[実験結果]
発明者らは、レーザ溶接装置100を用いて、対象物Wに対して、実際に、図4のビーム形状を有したレーザ光Lを照射してレーザ溶接を実行し、溶接状態を評価する実験を行った。表1は、溶接を行った実験結果を示す表である。
【0059】
【表1】
【0060】
実験において、対象物Wの材質はステンレス鋼(SS400)であり、フィラーワイヤFはC、S、Mn、P、Si、Cr、Ni、Mo、V、Cuを主成分としたカーボンスチール(carbon steel)、鍍銅であり、一般的に自動車、車両、家電、産業機械、軽量形鋼、パイプ、鉄骨など軟鋼および490[N/mm2]級高張力鋼を使用した各種溶接構造物の突合せおよび全姿勢すみ肉溶接等に使用されるものである。
【0061】
実験は、対象物Wの複数のサンプルについて、幅比およびパワー比を変えて行った。幅比は、フィラーワイヤFの直径Df(幅、図2参照)に対する、レーザ光Lの直径Dl(幅、図4参照)の比であって、Dl/Dfである。また、パワー比は、第一パワー領域A1内のビームLs(副ビーム)の合計のパワーPsに対する、第二パワー領域A2におけるビームLm(主ビーム)の合計のパワーPmの比であって、Pm/Psである。実験は、幅比が、0.2、0.8、2.3、2.7、3.1、および4のそれぞれの場合について行い、パワー比が、3/7、1、7/3、および9である各場合について行った。また、ビームLsのみ(副ビームのみ)の場合、ビームLmのみ(主ビームのみ)の場合についても、実験を行った。ビームLsのみ(副ビームのみ)の場合は、パワー比が0の場合と言うことができる。
【0062】
また、実験では、全ての場合において、レーザ装置110から出力されるレーザ光Lの波長を1070[nm]とし、レーザ光Lのパワーの合計値を、3.0[kW]、溶接速度を0.5[m/min]、フィラーワイヤFの供給速度を1[m/min]に設定した。また、マルチモードファイバレーザのビーム品質は、BPP値1.7[mm・mrad]である。
【0063】
表1中、溶接状態について、◎は優良、○は良好、×は不良を示している。優良(◎)は、ビードBにおいて割れや大きな凹凸(ハンピング)が無く、溶融池Mの湯流れが整流であり、かつ高速度カメラ視野内でスパッタ数10[個/15mm]以下である場合、良好(○)は、ビードBにおいて割れや大きな凹凸(ハンピング)が無く、溶融池Mの湯流れが整流であり、かつ高速度カメラ視野内でスパッタ数20[個/15mm]以下である場合、また、不良(×)は、優良および良好の基準を満たさない場合、とした。
【0064】
なお、表1は、対象物Wが厚さ100[mm]の1枚の板材である場合の溶接についての実験結果であるが、厚さが異なる複数の部材の溶接等、他の形態の溶接についても同様の結果が得られることが推定できる。
【0065】
表1の実験結果および関連する実験結果から、幅比は、0.8以上であればよく、4以下であるのが好ましく、1.5以上3.6以下がより好ましく、2.3以上3.1以下がさらに好ましいことが判明した。
【0066】
幅比0.8未満の場合、対象物Wの表面WaおよびフィラーワイヤFに照射される光エネルギ密度が過多となるため、溶融池M内で溶融金属の蒸気圧が高まって湯流れが乱流となり、スパッタ発生やビード外観不良等の不具合を誘発するものと推定される。
【0067】
発明者らは、これらの点に着目して検討を繰り返した結果、幅比が0.8以上であれば良好な溶接品質が得られることを見出した。
【0068】
さらに、幅比が4以下の場合、対象物Wの表面WaおよびフィラーワイヤFに照射される光エネルギ密度が十分な密度となり、光出力を上げずとも予熱効果、溶融状態の安定化が得られることを見出した。
【0069】
さらに、2.3以上3.1以下の場合、溶接状態の安定化およびスパッタ抑制に加えて光照射エネルギの効率化が得られ、量産製造プロセスでの低コスト化の観点でより優れることを見出した。
【0070】
加えて、幅比が1.5以上3.6以下の場合、溶接状態の安定化およびスパッタ抑制が得られていることから、の対象物Wの表面WaおよびフィラーワイヤFに照射される光エネルギ密度および予熱エリアのバランスが良いことを見出した。
【0071】
また、表1の実験結果および関連する実験結果から、パワー比は、0以上9以下であるのが好ましく、3/7以上7/3以下であるのがより好ましいことが判明した。
【0072】
入熱分布をコントロールしないビーム、例えば主ビームのみで溶接した場合、対象物Wの表面WaおよびフィラーワイヤFに照射される光エネルギ密度が過多となるため、溶融池M内で溶融金属の蒸気圧が高まって湯流れが乱流となる。その結果、スパッタ発生やビード外観不良等の不具合を誘発する。
【0073】
副ビームを加えて入熱分布をコントロールしたパワー比が0以上9以下の場合、フィラーワイヤFの端面Feが液状の溶融池Mの表面と馴染むことが高速度カメラ像より確認された。しかしながら、副ビームのパワー比が強い水準では、副ビームのエネルギによりフィラーワイヤFが溶融池Mに接する前に液玉状に溶融し滴下する挙動が見られた。
【0074】
そこで、フィラーワイヤFの溶融安定性、ビードの外観、溶融池Mの湯流れの安定性、およびスパッタの発生量の点に着目して入熱分布の検討を繰り返した結果、パワー比が3/7以上7/3以下である場合に、より良好な溶接品質が得られた。
【0075】
このパワー比の範囲では、予熱に寄与するエネルギおよび溶融に寄与するエネルギのバランスが良好であることから、溶融池M内で溶融金属の蒸気圧がある範囲に抑制され、湯流れを安定化させる効果がある。その結果、スパッタ発生やビード外観不良等の不具合の誘発がなかった。
【0076】
幅比が2.3以上3.1以下であり、かつ、パワー比が3/7以上7/3以下の場合、溶接状態の安定化およびスパッタ抑制に加えて、光照射位置に対する対象物WやフィラーワイヤFの位置ずれに対する裕度があることから、量産製造プロセスでの不具合発生率の低減および長期信頼性の観点でより優れていた。
【0077】
また、実験において、フィラーワイヤFには、例えば、ビームLm(第二パワー領域)が照射されずビームLs(第一パワー領域)の一部のみが照射される場合のように、フィラーワイヤFに照射されるエネルギ密度が過度に高くない状態において、溶融池Mがより安定的になり、ビードBの割れや、ハンピング、スパッタのような溶接不良が生じ難いことが判明した。幅比が過度に小さい場合や、パワー比が過度に小さい場合にあっては、フィラーワイヤFに照射されるレーザ光Lのエネルギ密度が高くなることによって、フィラーワイヤFが急激に溶融し、これに伴って溶融池Mが不安定になり、溶接不良が生じ易くなっている場合があるものと推定できる。
【0078】
図5A図5Dは、対象物Wの表面Wa上に得られたビードBの平面図である。
【0079】
図5Aは、幅比が2.7でありかつパワー比が3/7である場合での写真画像である。図5Aに示されるように、この条件では、ビードBに割れやハンピングが無く、ビードBの表面が滑らかであった。また、当該条件にあっては、スパッタも殆ど生じなかった。
【0080】
図5Bは、主ビームのみである場合の写真画像である。この条件では、高速度カメラ視野内でのスパッタ数は21~100[個/15mm]程度であり、図5Bに示されるように、ビード幅のばらつきも確認されたことから、×判定とした。スパッタ発生の原因は、対象物Wの表面WaおよびフィラーワイヤFに照射される光エネルギ密度が過多であるが故、溶融池Mの湯流れが乱流となったためと推察される。
【0081】
図5Cは、副ビームのみである場合の写真画像である。この条件では、高速度カメラ視野内でのスパッタ数が11~20[個/15mm]程度であった。また、この条件では、フィラーワイヤFが溶融池Mに接する前に液玉状に溶融し滴下する挙動が確認された。副ビームの照射エネルギが過多であるためフィラーワイヤFが溶融池Mに接する前に溶け出してしまうが故、ランダムな滴下となり、供給安定性に大きな課題があることが確認された。図5Cに示されるように、ビードBにハンピングが多発していることから、×判定とした。
【0082】
図5Dは、幅比が2.3でありかつパワー比が9である場合の写真画像である。この条件では、高速度カメラ視野内でのスパッタ数が11~20[個/15mm]程度であった。図5Dに示されるように、ビードBのハンピングが無いことから〇判定とした。レーザ光Lの表面Wa上での直径DlをフィラーワイヤFの直径Dfより大きくしたことで、フィラーワイヤFと溶融池の馴染みが良く予熱効果が得られているものと推察される。
【0083】
なお、表面Waが段差を有するような平面でない場合のレーザ光Lの幅比やパワー比等については、レーザ光Lの表面Wa上の照射中心Cを含みレーザ光Lの照射方向に対して直交する仮想的な照射平面において、規定されるものとする。
【0084】
以上、説明したように、フィラーワイヤFの直径Dfに対する、レーザ光Lの表面Wa上での掃引方向SDと直交する方向における幅Dlの比である幅比は、0.8以上4以下であるのが好ましく、1.5以上3.6以下であるのがより好ましく、2.3以上3.1以下がさらに好ましい。
【0085】
また、本実施形態のように、第一パワー領域A1におけるレーザ光のパワーPsに対する第二パワー領域A2におけるレーザ光のパワーPmの比であるパワー比(Pm/Ps)は、0以上9以下であるのが好ましく、3/7以上7/3以下であるのがより好ましい。
【0086】
このような条件でのレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置100によれば、ビードBの割れや、ハンピング、スパッタのような溶接不良が生じ難いという効果が得られる。また、このような条件を満たすようレーザ装置110や、光学ヘッド120、フィラーワイヤFの供給機構140等をセッティングすることにより、例えば、溶接不良の少ない溶接を、より容易に、より迅速に、あるいはより確実に実行することができるという利点が得られる。
【0087】
また、本実施形態のように、複数のビームLs,Lmは、DOE123(ビームシェイパ)によって形成されてもよい。
【0088】
このような構成によれば、例えば、所定のレイアウトで配置された複数のビームLs,Lmを有したレーザ光Lを、より容易に形成することができる。また、DOE123の交換により、レーザ光LにおけるビームLs,Lmの配置を、より容易に変更することができるという利点も得られる。
【0089】
なお、第一パワー領域A1に含まれる少なくとも一つのビームLsのレーザ光と、第二パワー領域A2に含まれる少なくとも一つのビームLmのレーザ光とは、同一の発振器から出射されてもよい。この場合、単一の発振器から出射されたレーザ光からビームLsおよびビームLmを生成できる。
【0090】
また、第一パワー領域A1に含まれる少なくとも一つのビームLsのレーザ光と、第二パワー領域A2に含まれる少なくとも一つのビームLmのレーザ光とは、異なるレーザ発振器から出射されてもよい。この場合、ビームLsおよびビームLsのそれぞれの特性を独立に設定し易くなる。
【0091】
[ビームの変形例]
図6は、対象物Wの表面Wa上に形成されたレーザ光Lのビーム(スポット)の一例を示す図である。図6の例では、レーザ光Lは、一つのビームLmと、四角形の辺に沿うように並ぶ24個のビームLsと、を有している。すなわち、四角形状かつ環状に並ぶ複数のビームLsは、ビームLmを取り囲んでいる。ビームLmは、レーザ光Lの照射中心の近くに位置され、ビームLsは、ビームLmよりも照射中心からより遠くに位置されている。このようなビームLs,Lmの配置によっても、フィラーワイヤFに照射されるレーザ光Lの密度が過度に高くなるのが抑制し、溶融池Mがより安定化して、溶接不良が生じ難くなるという効果が得られる。なお、ビームLsは必ずしも環状、すなわちLmの周囲全体を覆う必要はなく、掃引方向SDの前方において、Y方向また円弧状に配置してもよい。
【0092】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0093】
例えば、複数のビームはすべてが同じパワーを有していてもよいし、一つまたは複数のビームのパワーが他のビームのパワーより高くてもよい。また、複数のビームが複数のグループに分類でき、同じグループ内ではビームは略同じパワーを有し、グループ間ではビームは異なるパワーを有してもよい。また、その場合に、複数のグループ間で、各ビームのパワーを、段階的に異ならせてもよい。なお、グループに含まれるビームは複数に限られず、一つでもよい。
【0094】
また、対象物の材質は、ステンレス鋼には限定されない。
【0095】
また、対象物は板材に限定されないし、本発明の溶接は、重ね合わせ溶接や、突き合わせ溶接、隅肉溶接など、種々の形態の溶接に適用可能である。すなわち、対象物は溶接対象となる少なくとも2つの部材が重ねられた、接触された、または隣接されたものであればよい。
【0096】
また、レーザ光の照射に際し、公知のウォブリングや、ウィービング、出力変調等が行われ、溶融池の表面積が調節されてもよい。
【0097】
また、対象物は、めっき付き金属板のように、金属の表面に薄い他の金属の層が存在するものであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100…レーザ溶接装置
110…レーザ装置(レーザ発振器)
120…光学ヘッド
121…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…DOE(回折光学素子、ビームシェイパ)
123a…回折格子
130…光ファイバ
140…供給機構(フィラーワイヤ供給部)
141…送出装置
142…ノズル
A1…第一パワー領域
A2…第二パワー領域
B…ビード
C…照射中心
Df…(フィラーワイヤの)直径
Dl…(レーザ光の)直径
F…フィラーワイヤ
Fe…端面
e1…下端(第一端部)
e2…先端(第二端部)
L…レーザ光
Lm,Ls…ビーム
M…溶融池
Pm,Ps…パワー
S…供給方向
SD…掃引方向
W…対象物
Wa…表面
X…方向
Y…方向
Z…方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6