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特許7547160状態検出装置、状態検出方法及び状態検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】状態検出装置、状態検出方法及び状態検出システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240902BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240902BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240902BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240902BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 P
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/16
H02J7/00 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020175118
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066650
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和義
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007361(JP,A)
【文献】特開2009-105032(JP,A)
【文献】特開2018-029430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0322340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 58/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出装置であって、
前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定手段と、
前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出手段と、
前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶手段と、
前記使用履歴の対数を算出する対数算出手段と、
前記対数算出手段が算出した対数と、前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定手段と
を備える状態検出装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記対数の変化に対する前記放電性能値の変化の割合、又は前記放電性能値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する
請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記変化の割合に基づいて前記二次電池の使用限界を推定する
請求項2に記載の状態検出装置。
【請求項4】
前記測定手段は、前記二次電池の電流、温度又は充電率を測定し、
前記推定手段は、
前記対数と、前記電流、前記温度、前記充電率で規格化された前記放電性能値との関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の状態検出装置。
【請求項5】
前記使用履歴及び前記放電性能値をサーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、
前記情報送信手段により送信された前記使用履歴から前記サーバ装置が算出した前記使用履歴の対数と前記情報送信手段により送信された前記放電性能値との関係に基づいて前記サーバ装置が推定した前記二次電池の劣化の状態を示す情報を、前記サーバ装置から前記制御装置を介して受信する劣化情報受信手段と、
を備える請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項6】
車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出方法であって、
前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定ステップと、
前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出ステップと、
前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶ステップと、
前記使用履歴の対数を算出する対数算出ステップと、
前記対数算出ステップで算出した対数と、前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定ステップと
を備える状態検出方法。
【請求項7】
状態検出装置とサーバ装置とを有し、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出システムであって、
前記状態検出装置は、
前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定手段と、
前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出手段と、
前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶手段と、
前記使用履歴及び前記放電性能値を前記サーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、
前記二次電池の劣化の状態を示す情報を、前記サーバ装置から前記制御装置を介して受信する劣化情報受信手段と、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記情報送信手段で送信された前記使用履歴及び前記放電性能値を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段が受信した前記使用履歴の対数を算出する対数算出手段と、
前記対数算出手段が算出した前記対数と、前記情報受信手段が受信した前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した前記二次電池の劣化の状態を示す情報を前記状態検出装置へ送信する劣化情報送信手段と、
を有する
状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態検出装置、状態検出方法及び状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の劣化を判定する発明として、例えば特許文献1、2に開示された発明がある。特許文献1に開示された電池状態推定装置は、無劣化状態で算出された最低電圧値と劣化状態で算出された最低電圧値との差と、使用開始からの時間によって変化する劣化判定用の判定閾値を用いて、鉛電池の健康状態を判定している。特許文献2に開示された電池状態判定装置は、クランキング中の最低電圧を測定し、使用期間が長くなるほど値が高く設定されている交換判定時期閾値を最低電圧が下回ると電池の交換時期と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4702251号公報
【文献】特許第6642795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、最低電圧と使用開始からの経過時間を監視し、経過時間に応じて判定閾値を調整することにより劣化を判定しているが、最低電圧は、二次電池の放電性能によって決まるものであるため、経過時間によって一律に閾値を調整すると誤判定の虞がある。また、特許文献2の発明は、クランキング中の最低電圧で劣化の判定を行っているが、充電量が低い状態では劣化していなくても電圧降下が大きくなるため、使用期間が短い状態では交換判定時期閾値を下回る虞があり、判定を誤る虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、二次電池の劣化の状態を精度良く推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る状態検出装置は、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出装置であって、前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定手段と、前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出手段と、前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶手段と、前記使用履歴の対数を算出する対数算出手段と、前記対数算出手段が算出した対数と、前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定手段とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記推定手段は、前記対数の変化に対する前記放電性能値の変化の割合、又は前記放電性能値と予め定められた閾値との比較結果に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記推定手段は、前記変化の割合に基づいて前記二次電池の使用限界を推定することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記測定手段は、前記二次電池の電流、温度又は充電率を測定し、前記推定手段は、前記対数と、前記電流、前記温度、前記充電率で規格化された前記放電性能値との関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記使用履歴及び前記放電性能値をサーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、前記情報送信手段により送信された前記使用履歴から前記サーバ装置が算出した前記使用履歴の対数と前記情報送信手段により送信された前記放電性能値との関係に基づいて前記サーバ装置が推定した前記二次電池の劣化の状態を示す情報を、前記サーバ装置から前記制御装置を介して受信する劣化情報受信手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る状態検出方法は、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出方法であって、前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定ステップと、前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出ステップと、前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶ステップと、前記使用履歴の対数を算出する対数算出ステップと、前記対数算出ステップで算出した対数と、前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定ステップとを備える。
【0012】
本発明の一態様に係る状態検出システムは、状態検出装置とサーバ装置とを有し、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出システムであって、前記状態検出装置は、前記二次電池の物理量と、前記二次電池の使用履歴とを測定する測定手段と、前記物理量から前記二次電池の放電性能に相関する放電性能値を算出する放電性能値算出手段と、前記使用履歴と前記放電性能値を記憶する記憶手段と、前記使用履歴及び前記放電性能値を前記サーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、前記二次電池の劣化の状態を示す情報を、前記サーバ装置から前記制御装置を介して受信する劣化情報受信手段と、を有し、前記サーバ装置は、前記情報送信手段で送信された前記使用履歴及び前記放電性能値を受信する情報受信手段と、前記情報受信手段が受信した前記使用履歴の対数を算出する対数算出手段と、前記対数算出手段が算出した前記対数と、前記情報受信手段が受信した前記放電性能値の関係に基づいて前記二次電池の劣化の状態を推定する推定手段と、前記推定手段が推定した前記二次電池の劣化の状態を示す情報を前記状態検出装置へ送信する劣化情報送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池の劣化の状態を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。
図2図2は、状態検出装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、二次電池の使用を開始してからの経過時間と、規格化された放電性能値との関係を示す図である。
図5図5は、二次電池の使用を開始してからの経過時間と、規格化された放電性能値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付している。
【0016】
[実施形態]
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。実施形態に係る状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、及び放電回路15を有している。状態検出装置1は、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13の測定結果に基づいて、車両に搭載された充電可能である二次電池14の状態を推定する。なお、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、及び放電回路15を別々の構成とするのではなく、これらの一部または全てをまとめた構成としてもよい。
【0017】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジン、及びディーゼルエンジン等のレシプロエンジン、又はロータリーエンジン等によって構成されている。エンジン17は、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し、車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。
【0018】
スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。オルタネータ16は、制御部10によって制御され、発電電圧を調整することが可能とされている。
【0019】
負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、シートヒータ、イグニッションコイル、カーオーディオ、及びカーナビゲーション等によって構成され、二次電池14から供給される電力によって動作する。
【0020】
二次電池14は、電解液を有する充電可能な電池であり、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、又はニッケル水素電池等によって構成されている。二次電池14は、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジン17を始動するとともに、負荷19に電力を供給する。なお、二次電池14は、複数のセルを直列接続して構成されている。
【0021】
なお、図1の例では、車両をエンジン17のみが駆動力を出力する構成としたが、車両は、例えば、エンジン17をアシストする電動モータを具備したハイブリッド車であってもよい。ハイブリッド車の場合、二次電池14は、リチウム電池等によって構成される高圧システム(電動モータを駆動するシステム)を起動し、高圧システムがエンジン17を始動する。
【0022】
電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、検出した電圧を示す信号を制御部10へ出力する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、検出した電流を示す信号を制御部10に出力する。温度センサ13は、二次電池14の電解液又は二次電池14の周囲の温度を検出し、検出した温度を示す信号を制御部10に出力する。
【0023】
放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチ、及び抵抗素子等によって構成され、制御部10の制御に応じて半導体スイッチをオン/オフすることで、二次電池14を所定の電流で放電させる。
【0024】
制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13からの信号を取得し、取得した信号を用いて二次電池14の状態を推定する。また、制御部10は、オルタネータ16の発電電圧を制御することで二次電池14の充電状態を制御する。なお、制御部10がオルタネータ16の発電電圧を制御することで二次電池14の充電状態を制御するのではなく、例えば、図示しないECU(Electric Control Unit)が充電状態を制御するようにしてもよい。
【0025】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、通信部10d、インターフェース10e、及びバス10gを有している。なお、CPU10aの代わりに、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成するようにしてもよい。
【0026】
バス10gは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、通信部10d、及びインターフェース10eを相互に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするための信号線群である。通信部10dは、上位の装置であるECU(Electronic Control Unit)等との間で通信を行い、状態検出装置1が検出した情報、状態検出装置1が特定した二次電池14の状態に係る情報、制御情報などを上位装置に通知する。インターフェース10eは、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取得するとともに、放電回路15、オルタネータ16、及びスタータモータ18等に駆動電流を供給してこれらを制御する。
【0027】
ROM10bは、不揮発性の半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。また、プログラム10baを実行しているCPU10aは、インターフェース10eが取得した信号と、RAM10cに格納されている情報とを用いて二次電池14の状態を推定する。
【0028】
RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、CPU10aがプログラム10baを実行する際に生成されるデータや、二次電池14の使用履歴10ca、二次電池14の放電性能に相関する物理量である放電性能値10cbなどを記憶する。RAM10cは、記憶手段の一例である。
【0029】
放電性能値10cbは、例えばエンジン17を始動したときに測定された二次電池14の電圧や、規定された時間で二次電池14を放電したときの電圧である。これらの電圧は、二次電池14の放電性能に対応するため、放電性能を示す物理量ということもできる。
【0030】
使用履歴10caは、例えば、二次電池14の使用を開始してからの経過時間、車両の走行時間(例えば、車両のエンジン17が稼働している積算時間)、車両の停止時間(例えば、車両のエンジン17が稼働していない積算時間)、充電時間(例えば、充電の開始及び終了日時や充電状態の積算時間)、放電時間(例えば、放電の開始及び終了日時や放電状態の積算時間)、充電情報(例えば、充電によって二次電池14に流入した積算の電気量)、放電情報(例えば、放電によって二次電池14から流出した積算の電気量)、二次電池14の温度などのデータである。
【0031】
制御部10は、プログラム10baを実行しているCPU10aにより実現するタイマーで計時される時間と、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13から出力される信号を予め定められた周期で受け付け、各種時間、二次電池14の電圧、電流、温度を測定する。制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13は、測定手段の一例である。また、この予め定められた周期で行われる測定は、測定ステップの一例である。
【0032】
また、制御部10は、受け付けた時間と信号に基づいて、使用履歴10caに含まれる経過時間、走行時間、停止時間、充電時間、放電時間、充電情報、放電情報、二次電池14の温度などの最新の測定値を取得し、使用履歴10caを更新する。この処理を制御部10が繰り返し実行することで、車両の走行中(一時的な停止状態も含む、車両の運転開始から終了までの期間)においても、使用履歴10caが適宜最新の状態に維持される。
【0033】
例えば制御部10は、経過時間、走行時間、停止時間、充電時間、放電時間について、前周期までの時間に対して、取得した最新の時間を加算することで、各時間を更新する。これらの時間は、使用履歴の一例であり、これらの時間を測定する制御部10は、使用履歴を測定する測定手段の一例である。また、制御部10は、例えば充電情報については、二次電池14が2Aで2時間充電された場合、充電された電気量である4Ahを加算して充電情報を更新し、放電情報については、2Aで2時間放電された場合、放電された電気量である-4Ahを加算して放電情報を更新する。
【0034】
また、制御部10は、エンジン17が始動されたときの二次電池14の電圧を測定し、測定した電圧の履歴を放電性能値10cbとしてRAM10c記憶させる。また、制御部10は、二次電池14の温度については、温度センサ13で測定された温度の履歴をRAM10cに記憶させる。使用履歴10caと放電性能値10cbを記憶する処理は、記憶ステップの一例である。
【0035】
(実施形態の動作例)
次に本実施形態の動作例について説明する。図3は、制御部10が二次電池14の状態として、二次電池14の劣化を推定する処理の流れを示すフローチャートである。制御部10は、図3に示す処理を例えば予め定められた周期や予め定められたタイミングで実行する。
【0036】
まず制御部10は、RAM10Cに記憶されている使用履歴10caと放電性能値10cbを取得する(ステップS101)。
【0037】
次に制御部10は、取得した放電性能値10cbを規格化する(ステップS102)。制御部10は、放電性能値10cbを算出する放電性能値算出手段の一例であり、ステップS102は、放電性能値算出ステップの一例である。ここで、放電性能値10cbを規格化する理由について説明する。放電性能値10cb(エンジン17の始動時の電圧)は、二次電池14の内部抵抗や電流に依存し、内部抵抗は二次電池14の温度や充電率(SOC)などに依存するため、二次電池14の劣化の程度が同じであっても二次電池14の温度や充電率、内部抵抗、電流で変化してしまう。二次電池14が劣化すると放電性能値10cbが低下するが、内部抵抗、電流、温度や充電率によっても電圧が低下することがあるため、そのまま放電性能値10cbを二次電池14の劣化の推定に用いると、そのときの内部抵抗、電流、温度や充電率によっては劣化の推定を誤る虞がある。よって、放電性能値10cbについて温度や充電率、電流、内部抵抗などの影響を排除するため、制御部10は、放電性能値10cbを規格化する。
【0038】
放電性能値10cbの規格化については、例えば、エンジン17の始動時の電圧について、事前に温度や充電率、電流、内部抵抗との関係を求めることにより、基準時の温度や充電率、電流、内部抵抗のときの電圧に補正するため補正係数を格納した補正テーブルを作成してプログラム10ba内に記憶しておく。制御部10は、温度センサ13で測定された温度や、電流センサ12で測定された電流、測定された電圧及び電流から推定した充電率、内部抵抗で補正テーブルを参照して補正係数を取得し、取得した補正係数で放電性能値10cbを補正する。
【0039】
次に制御部10は、取得した使用履歴10caの対数をとった値と、規格化された放電性能値10cbとの関係を示す関数を算出する(ステップS103)。ここで制御部10は、例えば、横軸を使用履歴10caに含まれる二次電池14の使用を開始してからの経過時間として対数スケールとし、縦軸を規格化された放電性能値10cb(エンジン17が始動されたときの二次電池14の電圧)としたグラフにおいて、経過時間の対数を算出し、算出した対数と放電性能値10cbの推移を最小二乗法などにより関数近似する。ここで二次電池14の使用を開始してからの経過時間は、使用履歴の一例であり、制御部10は、使用履歴の対数を算出する対数算出手段として機能する。また、ステップS103は、対数算出ステップの一例である。
【0040】
図4に、横軸を使用履歴10caに含まれる二次電池14の使用を開始してからの経過時間として対数スケールとし、縦軸を規格化された放電性能値10cb(エンジン17が始動されたときの二次電池14の電圧)としたグラフの一例を示す。なお、図4においては、複数の異なる二次電池14について放電性能値10cbの推移を示している。図4によれば、放電性能値10cbが低下する時点が二次電池14毎に異なることが分かる。
【0041】
次に制御部10は、ステップS103で算出した関数から現在時点の放電性能値10cbの傾きを算出する(ステップS104)。ここで制御部10は、例えば、ステップS103で算出した関数の一次導関数から傾きを求める。この傾きは、換言すると、使用履歴の対数の変化に対する放電性能値10cbの変化の割合の一例である。なお、制御部10は、図4に示す経過時間と放電性能値10cbの推移において、異なる2点の経過時間における放電性能値10cbを通る直線の傾きから放電性能値10cbの傾きを算出してもよい。この直線の傾きも、換言すると、使用履歴の対数の変化に対する放電性能値10cbの変化の割合の一例である。
【0042】
次に制御部10は、ステップS104で算出した傾き又は最新の規格化された放電性能値10cbが閾値以下であるかを判断することにより、二次電池14が劣化しているか推定する(ステップS105)。ここで制御部10は、放電性能値10cbと算出した対数との関係に基づいて二次電池14の劣化を推定する推定手段として機能している。また、ステップS105は、推定ステップの一例である。図4に示すように、異なる二次電池14であっても、放電性能値10cbの低下傾向が同じで関数の傾きは同じ傾向となるため、制御部10は、ステップS103で算出した関数の傾きを求めることにより、二次電池14の劣化を推定することができる。なお、参考のために図4のグラフの横軸を対数スケールとしない場合のグラフを図5に示す。取得した使用履歴10caの値と、規格化された放電性能値10cbとの関係を示す関数を図5に示すグラフから算出した場合、関数の傾きの傾向は同じとならないため、二次電池14の劣化を推定することができないことがわかる。
【0043】
制御部10は、ステップS104で算出した傾きが予め定められた閾値以下である場合(ステップS105でYES)、二次電池14が劣化していると推定し、ステップS106へ処理を進める。また、制御部10は、最新の規格化された放電性能値10cbが予め定められた閾値以下である場合にも(ステップS105でYES)、二次電池14が劣化していると推定し、ステップS106へ処理を進める。
【0044】
制御部10は、ステップS105でYESと判断した場合、二次電池14が寿命となる寿命点を算出する(ステップS106)。この寿命点は、二次電池14が使用の限界となる時点であり、二次電池14の使用の限界を示す使用限界の一例である。具体的には、制御部10は、図4に示すグラフにおいて、ステップS104で算出した傾きが予め定められた閾値に到達したときの横軸の値の対数(x)を特定する。また、制御部10は、ステップS104で算出した傾きから、規格化された放電性能値10cbが二次電池14の寿命と推定される所定値となるときの横軸の値の対数(x´)を特定し、x´とxの差分をΔxとする。
【数1】
【0045】
図4に示すグラフにおいて、傾きが閾値に到達したときの横軸の値をt、規格化された放電性能値10cbが二次電池14の寿命と推定される値となるときの横軸の値をt´とすると、x=log10tであることから、二次電池14が寿命となる寿命点であるt´は、以下の式で求めることができる。
【0046】
【数2】
【0047】
【数3】
【0048】
【数4】
【0049】
なお、制御部10は、以下の式により寿命に到達するまでの時間も算出することができる。
【数5】
【0050】
例えば、Δx=0.2である場合、寿命に到達するまでの時間は、以下の計算結果となり、二次電池14は、現時点の寿命の約半分程度の寿命が残っていることが分かる。
【数6】
【0051】
ステップS106の処理を終えた制御部10は、ステップS106で算出した寿命点であるt´と、二次電池14が劣化していることを示す情報をECUへ通知する(ステップS107)。寿命点であるt´と、二次電池14が劣化していることを示す情報とを取得したECUは、例えば計器パネルにて二次電池14が劣化したことを示す情報と、寿命点であるt´を表示し、ユーザに通知を行う。
【0052】
また、制御部10は、ステップS104で算出した傾きが予め定められた閾値を超えており、且つ、最新の規格化された放電性能値10cbが予め定められた閾値を超えている場合(ステップS105でNO)、二次電池14が劣化していないと推定し、ステップS108へ処理を進める。この場合、制御部10は、二次電池14が劣化していないことを示す情報をECUへ通知する(ステップS108)。二次電池14が劣化していないことを示す情報を取得したECUは、例えば計器パネルにて二次電池14が劣化していないことを示す情報を表示し、ユーザに通知を行う。
【0053】
以上説明したように本実施形態によれば、寿命となるまでの時間が違っていても、二次電池14の放電性能値10cbの傾きが同じ傾向となるため、電圧の閾値で劣化を推定する場合と比較して、推定を誤らずに劣化を推定することができる。また、放電性能値10cbの傾きが同じ傾向となるため、二次電池14が寿命となるまでの時間が違っていても、寿命となる時期を精度良く予測することができる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0055】
上述した実施形態においては、ステップS106で寿命点を算出し、算出した寿命点をステップS107でECUへ通知しているが、寿命点を算出せず、劣化していることを示す情報のみをECUへ通知してもよい。
【0056】
上述した実施形態においては、ステップS105では、ステップS104で算出した傾きが閾値以下であるかのみを判断し、傾きが閾値以下の場合にはステップS106へ処理を進め、傾きが閾値を超えている場合にはステップS108へ処理を進めるようにしてもよい。
【0057】
上述した実施形態においては、図4のグラフの横軸は、二次電池14の使用を開始してからの経過時間としているが、使用履歴10caに含まれている充電情報と放電情報の絶対値との積算値や、走行時間であってもよい。また、制御部10は、ECUから車両の走行距離を取得し、取得した走行距離を横軸としてもよい。なお、グラフの横軸を充電情報と放電情報の積算値とした場合、グラフの傾きから算出される寿命点は、二次電池14が使用の限界となるときの充電及び放電の積算量である。また、グラフの横軸を走行時間とした場合、グラフの傾きから算出される寿命点は、二次電池14が使用の限界となるときの走行時間であり、グラフの横軸を走行距離とした場合、グラフの傾きから算出される寿命点は、二次電池14が使用の限界となるときの走行距離である。これらの寿命点も、二次電池14の使用の限界を示す使用限界の一例である。
【0058】
上述した実施形態においては、車両が備える状態検出装置1が放電性能値10cbの規格化(ステップS102)、関数の算出(ステップS103)、関数の傾きの算出(ステップS104)、関数の傾きの判断(ステップS105)、放電性能値10cbの判断(ステップS105)、寿命点の算出(ステップS106)を行っているが、これらの処理を行うのは状態検出装置1に限定されるものではない。例えば、状態検出装置1は、車両に設けられたECU、通信インターフェース及び移動体通信網を介して使用履歴10caと放電性能値10cbを、クラウドサービスを提供するサーバ装置へ送信する。この場合、CPU10a、通信部10d及びECUは、情報送信手段として機能する。サーバ装置は、ECUから送信される使用履歴10caと放電性能値10cbを、通信インターフェースで受信する。ここでサーバ装置のCPUは、情報受信手段として機能する。ECUは、制御装置の一例である。なお、状態検出装置1は、ステップS102の処理で得た規格化された放電性能値10cbをサーバ装置へ送信してもよい。このサーバ装置は、制御部10と同様に、使用履歴10caと放電性能値10cbを記憶し、使用履歴10caと放電性能値10cbを用いて、ステップS102~ステップS106の処理を実行する。なお、サーバ装置は、規格化された放電性能値10cbを受信した場合、ステップS102の処理を行わず、ステップS103以降の処理を実行する。サーバ装置は、ステップS105の処理でYESと判断した場合、ステップS106で算出した寿命点と、二次電池14が劣化していることを示す情報をECUへ送信し、ECUは、受信した情報をCPU10aへ送り、計器パネルにて二次電池14が劣化したことを示す情報と、寿命点であるt´を表示する。また、サーバ装置は、ステップS105の処理でNOと判断した場合、二次電池14が劣化していないことを示す情報をECUへ送信し、ECUは、受信した情報をCPU10aへ送り、計器パネルにて二次電池14が劣化していないことをユーザに通知する。ここで、ECUとCPU10aは、二次電池14の劣化の状態を示す情報を受信する劣化情報受信手段として機能する。また、ステップS102~ステップS104の処理をサーバ装置で行い、算出した関数の傾きを車両が備える状態検出装置1へ送信し、状態検出装置1は、サーバ装置から送信された傾きを用いてステップS105の処理を行ってもよい。また、サーバ装置は、ステップS105の処理でYESと判断した場合、ステップS106で算出した寿命点と、二次電池14が劣化していることを示す情報を車両のユーザが所有する携帯端末へ送信し、携帯端末は、二次電池14が劣化したことを示す情報と、寿命点であるt´を表示し、サーバ装置がステップS105の処理でNOと判断した場合、二次電池14が劣化していないことを示す情報を携帯端末へ送信し、携帯端末は、二次電池14が劣化していないことをユーザに通知してもよい。また、使用履歴10caと放電性能値10cbの記憶については、計時された時間、測定された電圧、電流、温度などをサーバ装置へ送信し、サーバ装置において使用履歴10caと放電性能値10cbの記憶を行う構成としてもよい。サーバ装置のCPUは、放電性能値算出手段、対数算出手段、推定手段、劣化情報送信手段として機能し、サーバ装置が有する記憶媒体は、記憶手段として機能する。状態検出装置1とサーバ装置は、状態検出システムの一例である。
【符号の説明】
【0059】
1 状態検出装置
10 制御部
10a CPU
10b ROM
10ba プログラム
10c RAM
10ca 使用履歴
10cb 放電性能値
10d 通信部
10e インターフェース
10g バス
11 電圧センサ
12 電流センサ
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷
図1
図2
図3
図4
図5