(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240902BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/36
(21)【出願番号】P 2020181418
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-078785(JP,A)
【文献】特表2006-508352(JP,A)
【文献】特開2006-218482(JP,A)
【文献】特開2018-183806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0007304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するX軸及びY軸で規定される保持面を備えたチャックテーブルを有する保持手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射してアブレーション加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー照射手段とを相対的にX軸方向及びY軸方向に加工送りする送り手段と、被加工物の加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を少なくとも備えたレーザー加工装置であって、
該レーザー照射手段は、パルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したパルスレーザー光線を集光する集光器と、該集光器を該チャックテーブルの保持面に直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段とを備え、
該制御手段は、該集光器によって位置付けられる集光点のZ軸方向の位置を記憶するZ位置記憶部と、該Z位置記憶部に記憶された該位置を基準とする粗密間隔の検査範囲と精密
間隔の検査範囲とを設定する検査範囲設定部と、該撮像手段によって撮像した被加工物の加工領域の画像を該粗密間隔の検査範囲及び該精密間隔の検査範囲に対応して記憶する画像記憶部と、該画像記憶部に記憶された該画像を処理する画像処理部と、を備え、
該制御手段は、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付けるZ軸方向の該位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該粗密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動して
該間欠的な動作と同期させてパルスレーザー光線を
1ショットずつ照射して、被加工物の上面に
該1ショットに対応する非連続な複数の第1の加工痕を形成し、該撮像手段で該第1の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第1の加工痕の画像を処理して、該第1の加工痕の中で最も小さい第1の最小加工痕を抽出し、該第1の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向における第1の最小加工痕Z位置を検出し、さらに、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付ける第1の最小加工痕Z位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該精密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動してパルスレーザー光線を
1ショットずつ照射して、被加工物の上面に
該1ショットに対応する非連続な複数の第2の加工痕を形成し、該撮像手段で該第2の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第2の加工痕の画像を処理して該第2の加工痕の中で最も小さい第2の最小加工痕を抽出し、該第2の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向の第2の最小加工痕Z位置を検出し、該第2の最小加工痕Z位置を該Z位置記憶部に記憶するレーザー加工装置。
【請求項2】
該粗密間隔の検査範囲とは、粗密間隔がZ軸方向において50μm以上であって、検査範囲が±1.0mm以上であり、該精密間隔の検査範囲とは、精密間隔がZ軸方向において5μm以下であって、検査範囲が±0.05mm以下である請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
表示手段を備え、該表示手段は、該撮像手段が撮像した加工痕の画像を表示すると共に、該加工痕に対応する集光点のZ座標位置を表示する請求項1、又は2に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、被加工物を保持するX軸及びY軸で規定される保持面を有する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してアブレーション加工を施すレーザー照射手段と、該保持手段と該レーザー照射手段とを相対的にX軸方向及びY軸方向に加工送りする送り手段と、加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を少なくとも備え、該レーザー照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を集光する集光器と、該集光器を該保持面に直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、を備えて、ウエーハにレーザー加工を施すことができる。
【0004】
レーザー加工装置においては、集光器によって集光されるレーザー光線の集光点が、Z軸方向において所望の位置に正確に位置付けられなければならず、また、該集光点の位置は、レーザー加工装置によってレーザー加工が施される時間の経過と共にずれてしまうことから、オペレータの作業によって、定期的又は任意的に集光点の位置の確認を行い、必要に応じて集光点のZ軸方向における基準位置の補正を実施している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の技術では、チャックテーブルに検査用のウエーハを保持し、レーザー光線を集光して照射する集光器をZ軸方向に移動させると共に、該チャックテーブルをX軸方向又はY軸方向に移動してレーザー光線を照射して、直線状のレーザー加工溝(加工痕)を形成し、その後、撮像手段によって該レーザー加工溝を撮像して表示手段に表示し、該レーザー加工溝が最も細くなる位置に基づき、集光点位置に対応するZ軸方向の位置を検出している。
【0007】
しかし、上記した検出方法においてレーザー加工溝が最も細くなる位置を判別して、その位置を特定することは容易ではなく、集光器による集光点の位置を特定するのに時間が掛かり、生産性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、レーザー光線の集光点位置の検出を、時間を掛けずに自動的に実施できる生産性に優れたレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するX軸及びY軸で規定される保持面を備えたチャックテーブルを有する保持手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射してアブレーション加工を施すレーザー照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー照射手段とを相対的にX軸方向及びY軸方向に加工送りする送り手段と、被加工物の加工領域を撮像する撮像手段と、制御手段と、を少なくとも備えたレーザー加工装置であって、該レーザー照射手段は、パルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したパルスレーザー光線を集光する集光器と、該集光器を該チャックテーブルの保持面に直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段とを備え、該制御手段は、該集光器によって位置付けられる集光点のZ軸方向の位置を記憶するZ位置記憶部と、該Z位置記憶部に記憶された該位置を基準とする粗密間隔の検査範囲と精密間隔の検査範囲とを設定する検査範囲設定部と、該撮像手段によって撮像した被加工物の加工領域の画像を該粗密間隔の検査範囲及び該精密間隔の検査範囲に対応して記憶する画像記憶部と、該画像記憶部に記憶された該画像を処理する画像処理部と、を備え、該制御手段は、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付けるZ軸方向の該位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該粗密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動して該間欠的な動作と同期させてパルスレーザー光線を1ショットずつ照射して、被加工物の上面に該1ショットに対応する非連続な複数の第1の加工痕を形成し、該撮像手段で該第1の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第1の加工痕の画像を処理して、該第1の加工痕の中で最も小さい第1の最小加工痕を抽出し、該第1の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向における第1の最小加工痕Z位置を検出し、さらに、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付ける第1の最小加工痕Z位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該精密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動してパルスレーザー光線を1ショットずつ照射して、被加工物の上面に該1ショットに対応する非連続な複数の第2の加工痕を形成し、該撮像手段で該第2の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第2の加工痕の画像を処理して該第2の加工痕の中で最も小さい第2の最小加工痕を抽出し、該第2の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向の第2の最小加工痕Z位置を検出し、該第2の最小加工痕Z位置を該Z位置記憶部に記憶するレーザー加工装置が提供される。
【0010】
該粗密間隔の検査範囲とは、粗密間隔がZ軸方向において50μm以上であって、検査範囲が±2.0mm以上であり、該精密間隔の検査範囲とは、精密間隔がZ軸方向において5μm以下であって、検査範囲が±0.2mm以下であることが好ましい。また、上記レーザー加工装置は、表示手段を備え、該表示手段は、該撮像手段が撮像した加工痕の画像を表示すると共に、該加工痕に対応する集光点のZ座標位置を表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレーザー加工装置のレーザー照射手段は、パルスレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したパルスレーザー光線を集光する集光器と、該集光器をチャックテーブルの保持面に直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段とを備え、該制御手段は、該集光器によって位置付けられる集光点のZ軸方向の位置を記憶するZ位置記憶部と、該Z位置記憶部に記憶された該位置を基準とする粗密間隔の検査範囲と精密間隔の検査範囲とを設定する検査範囲設定部と、該撮像手段によって撮像した被加工物の加工領域の画像を該粗密間隔の検査範囲及び該精密間隔の検査範囲に対応して記憶する画像記憶部と、該画像記憶部に記憶された該画像を処理する画像処理部と、を備え、該制御手段は、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付けるZ軸方向の該位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該粗密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動して該間欠的な動作と同期させてパルスレーザー光線を1ショットずつ照射して、被加工物の上面に該1ショットに対応する非連続な複数の第1の加工痕を形成し、該撮像手段で該第1の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第1の加工痕の画像を処理して、該第1の加工痕の中で最も小さい第1の最小加工痕を抽出し、該第1の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向における第1の最小加工痕Z位置を検出し、さらに、該チャックテーブルに保持された検査用の被加工物の上面に集光点を位置付ける第1の最小加工痕Z位置を基準として、該検査範囲設定部によって設定された該精密間隔の検査範囲において該集光器をZ軸方向に間欠的に移動すると共にX軸方向又はY軸方向に該チャックテーブルを間欠的に移動してパルスレーザー光線を1ショットずつ照射して、被加工物の上面に該1ショットに対応する非連続な複数の第2の加工痕を形成し、該撮像手段で該第2の加工痕を撮像して該画像記憶部に記憶し、該画像処理部によって該画像記憶部に記憶された該第2の加工痕の画像を処理して該第2の加工痕の中で最も小さい第2の最小加工痕を抽出し、該第2の最小加工痕に対応した該集光点のZ軸方向の第2の最小加工痕Z位置を検出し、該第2の最小加工痕Z位置を該Z位置記憶部に記憶するようにしたので、自動的に加工痕が最も小さくなる集光点のZ座標位置を求めることができ、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1のレーザー加工装置に配設されたレーザー照射手段の光学系を示すブロック図である。
【
図3】第1の加工痕を形成するレーザー加工の実施態様を示す斜視図である。
【
図4】(a)第1の加工痕を撮像手段により撮像する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様で撮像された第1の加工痕の拡大図である。
【
図5】第2の加工痕を形成するレーザー加工の実施態様を示す斜視図である。
【
図6】(a)第2の加工痕を撮像手段により撮像する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様で撮像された第2の加工痕の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるレーザー加工装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、本実施形態のレーザー加工装置1が示されている。レーザー加工装置1は、被加工物を保持する保持手段2と、保持手段2が配設される基台3と、レーザー照射手段6と、保持手段2とレーザー照射手段6とを相対的にX軸方向及びY軸方向に加工送りする送り手段として配設された移動手段30と、撮像手段7と、表示手段9と、後述する制御手段(
図2において100で示す)とを備える。
【0015】
保持手段2は、図中に矢印Xで示すX軸方向において移動自在に基台3に載置される矩形状のX軸方向可動板21と、X軸方向と直交する図中に矢印Yで示すY軸方向において移動自在にX軸方向可動板21に載置される矩形状のY軸方向可動板22と、Y軸方向可動板22の上面に固定された円筒状の支柱23と、支柱23の上端に固定された矩形状のカバー板26とを含む。カバー板26には長穴を通って上方に延び、該X軸と該Y軸で規定される保持面25aを有するチャックテーブル25が配設されており、チャックテーブル25は、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。保持面25aは、通気性を有する多孔質材料から形成されて、支柱23の内部を通る流路によって図示しない吸引源に接続されている。なお、
図1の左上方には、本実施形態のレーザー加工装置1によってレーザー加工が施される被加工物として用意された検査用ウエーハ10が示されており、検査用ウエーハ10は、表面及び裏面に何も形成されていない、例えばシリコンのウエーハであり、厚さは700μmのものが採用される。検査用ウエーハ10は、粘着テープTを介して、環状のフレームFによって支持されている。
【0016】
移動手段30は、基台3上に配設され、保持手段2をX軸方向に加工送りするX軸方向送り手段31と、Y軸方向可動板22をY軸方向に割り出し送りするY軸方向送り手段32と、を備えている。X軸方向送り手段31は、パルスモータ33の回転運動を、ボールねじ34を介して直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台3上の案内レール3a、3aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向において進退させる。Y軸方向送り手段32は、パルスモータ35の回転運動を、ボールねじ36を介して直線運動に変換してY軸方向可動板22に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向可動板22をY軸方向において進退させる。なお、図示は省略するが、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及びチャックテーブル25には、位置検出手段が配設されており、チャックテーブル25のX軸座標、Y軸座標、周方向の回転位置が正確に検出されて、その位置情報は、レーザー加工装置1の該制御手段に送られる。そして、その位置情報に基づき該制御手段から指示される指示信号により、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及び図示しないチャックテーブル25の回転駆動手段が駆動されて、基台3上の所望の位置にチャックテーブル25を位置付けることができる。
【0017】
図1に示すように、保持手段2の側方には、枠体37が立設される。枠体37は、基台3上に配設され該X軸方向及び該Y軸方向に直交するZ軸方向(上下方向)に沿って配設された垂直壁部37a、及び垂直壁部37aの上端部から水平方向に延びる水平壁部37bと、を備えている。枠体37の水平壁部37bの内部には、レーザー照射手段6の光学系が収容されており、該光学系の一部を構成する集光器64が水平壁部37bの先端部下面に配設されている。
【0018】
撮像手段7は、主として加工領域を撮像するアライメントに使用されるものであり、水平壁部37bの先端部下面であって、レーザー照射手段6の集光器64とX軸方向に間隔をおいた位置に配設されている。撮像手段7には、可視光線により撮像する通常の撮像素子(CCD)、及び可視光線を照射する照明手段等が含まれる。撮像手段7によって撮像された画像は、該制御手段に送られる。
【0019】
図2を参照しながら、レーザー加工装置1の水平壁部37bに収容されるレーザー照射手段6の光学系について説明する。
図2に示すように、レーザー照射手段6は、チャックテーブル25に保持される検査用ウエーハ10に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線LBを発振する発振器61と、発振器61が発振したパルスレーザー光線LBを所望の出力に調整するアッテネータ62と、アッテネータ62によって出力が調整されたパルスレーザー光線LBの光路方向を任意の方向に変換する反射ミラー63と、反射ミラー63によって光路方向が変更されたパルスレーザー光線LBを集光する集光器64と、を備えている。集光器64には、チャックテーブル25に保持された検査用ウエーハ10に集光点Pを位置付ける集光レンズ641が配設されている。
【0020】
レーザー照射手段6は、集光器64をチャックテーブル25の保持面25aに直交するZ軸方向に沿って移動して集光点の位置を調整するZ軸移動手段5と、集光器64により集光されて形成される集光点のZ軸方向の位置を検出するZ位置検出手段8とを備えている。Z軸移動手段5は、図に示す制御手段100の駆動パルスによって駆動されるパルスモータ51と、該パルスモータ51の出力軸に接続されるボールねじ52とを備え、パルスモータ51の正転、逆転によって該ボールねじ52が駆動されて、集光器64がZ軸方向において移動させられる。Z位置検出手段8は、基台3に対して相対的にその位置が固定されたZ軸スケール81と、集光器64に付帯して集光器64と共にZ軸方向に移動してZ軸スケール81のメモリを読み取るZ位置読み取り部82とを備えており、チャックテーブル25の保持面25aを基準として、保持面25aからZ位置読み取り部82までの距離が検出される。Z軸移動手段5と、Z位置検出手段8は、図に示すように制御手段100に接続されている。さらに、制御手段100には、集光器64に対してX軸方向で隣接した位置に配設された撮像手段7及び表示手段9が接続されており、撮像手段7によって撮像された画像は、制御手段100に送られると共に、表示手段9に表示される。
【0021】
制御手段100は、コンピュータから構成され、集光器64の集光点PのZ軸方向の位置を記憶するZ位置記憶部110と、Z位置記憶部110に記憶された所定の位置を基準として集光点Pのずれを検査するための、粗密間隔の検査範囲と精密間隔の検査範囲とを設定する検査範囲設定部120と、撮像手段7によって撮像した画像を粗密間隔の検査範囲及び精密間隔の検査範囲に対応して記憶する画像記憶部130と、画像記憶部130に記憶された画像を処理する画像処理部140と、を備えている。
【0022】
本実施形態のレーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、本実施形態の機能・作用について、前記した
図1に加え、
図2~
図6を参照しながら、以下に説明する。
【0023】
本実施形態を実施するに際し、まず、
図1に示す検査用ウエーハ10を用意し、チャックテーブル25の保持面25aに載置して、図示を省略する吸引源を作動して、粘着テープT、及び環状のフレームFを介して吸引保持して固定する。
【0024】
チャックテーブル25に検査用ウエーハ10を固定したならば、上記した制御手段100に記憶された制御プログラムに基づいて、制御手段100のZ位置記憶部110に記憶された集光点PのZ位置を補正すべく、レーザー加工装置1の実際の集光点の位置を検出する。より具体的には、まず、
図2に示すように、上記した移動手段30を作動して、チャックテーブル25をX軸方向及びY軸方向で移動し、検査用ウエーハ10上の所定の加工開始位置をレーザー照射手段6の集光器64の直下に位置付ける。
【0025】
ここで、本実施形態の制御手段100のZ位置記憶部110には、集光器64によって集光されるパルスレーザー光線LBの集光点Pを検査用ウエーハ10の上面を形成する表面10aに位置付けた場合の補正前のZ軸方向の位置Z0が予め記憶されている。そして、該位置Z0に基づいて、Z軸移動手段5が作動され、集光点Pが、検査用ウエーハ10の表面10a近傍に位置付けられる。本実施形態の集光器64に配設された集光レンズ641の焦点距離Zaは、例えば50mmであり、集光点Pから該Z位置読み取り部82までの設計上の距離は100mmである。そして、本実施形態においては、検査用ウエーハ10の厚みが700μm(=0.7mm)であることから、Z位置記憶部110に記憶された補正前の集光点PのZ軸方向の位置Z0は100.7mmである。なお、本実施形態では、レーザー加工装置1において、レーザー加工が繰り返し実施されていることにより、Z位置記憶部110に記憶された位置Z0に基づき位置付けられる集光点Pは検査用ウエーハ10の表面10a上からZ軸方向で所定量ずれているものとして以下説明を続ける。
【0026】
Z位置記憶部110に記憶された位置Z0を基準として、制御手段100の検査範囲設定部120によって設定される粗密間隔の検査範囲に基づきZ軸移動手段5が作動される。そして、Z軸移動手段5により、集光器64をZ軸方向に間欠的に移動すると共に、X軸方向にチャックテーブル25を間欠的に移動してパルスレーザー光線LBを照射する。より具体的には、検査範囲設定部120によって設定される粗密間隔は、例えば50μmであり、上記した位置Z0に対する焦点Z軸方向のずれ量は、経験的に±1.0mm未満であることから、その検査範囲は、例えば±1.0mmに設定される。そして、まず、Z軸移動手段5を作動させて、集光器64を、Z位置検出手段8によって検出されるZ位置が、Z0-1mmとなる位置(図中下方側)に移動して、最初のパルスレーザー光線LBを照射して、
図3にR1で示す加工痕を形成する。これに続き、Z軸移動手段5を作動して、集光器64を、粗密間隔である50μmずつ上方に間欠的に移動すると共に、これと同期して移動手段30を作動して、チャックテーブル25をX軸方向において間欠的に例えば5mmずつ移動させ、この間欠的な動作と同期させてパルスレーザー光線LBを1ショットずつ照射する。このようにして、Z位置検出手段8によって検出されるZ軸方向の位置が、Z0+1mmとなるまで、集光器64と移動手段30とを間欠的に作動させると共に、パルスレーザー光線LBを間欠的に1ショットずつ照射する。なお、パルスレーザー光線LBを照射する際には、パルスレーザー光線LBを照射した位置のX座標及びY座標に対応して、Z位置検出手段8によって検出される集光点PのZ軸方向の位置が制御手段100に記憶される。以上により、
図3に示すように、検査用ウエーハ10の表面10a上に間欠的に5mm間隔でアブレーション加工が施され、X軸方向に沿って、41個の第1の加工痕Rnが形成される。なお、
図3では、説明の都合上、第一の加工痕Rnを実際の寸法より大きく記載しており、また、第1の加工痕Rnは実際よりも少ない数で記載している。
【0027】
なお、上記したレーザー加工におけるレーザー加工条件は、例えば、以下のように設定される。
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :3W
焦点距離 :50mm
加工送り速度 :200mm/秒
【0028】
上記したように41個の第1の加工痕Rnを形成したならば、
図4(a)に示すように、検査用ウエーハ10を、撮像手段7の直下に位置付けて、撮像手段7によって、検査用ウエーハ10の表面10aに形成された第1の加工痕Rnを撮像する。より具体的には、移動手段30のX軸方向送り手段31を作動して、チャックテーブル25をX軸方向に移動しながら41個の第1の加工痕Rnについて、R1から順次1つずつ撮像する。このようにして撮像手段7によって撮像した第1の加工痕Rnの画像を加工痕毎に制御手段100の画像記憶部130に記憶する。撮像手段7によって撮像された画像は、制御手段100を介して表示手段9に表示することができる。また、上記したように、各加工痕に対応して、各加工痕が形成された際に集光点Pが位置付けられたZ軸方向の位置が制御手段100に記憶されていることから、表示手段9に該画像を表示する際に、各加工痕と共に、各加工痕に対応してZ位置検出手段8によって検出されたZ座標位置を表示することができる。
【0029】
次いで、画像記憶部130に記憶された第1の加工痕Rnを画像処理部140によって画像処理を実施する。該画像処理とは、画像記憶部130に記憶された個々の加工痕の画像を解析し、各加工痕の面積を演算し、最も小さい加工痕を抽出する処理である。この画像処理部140の作用によって、
図4(b)に示すように、第1の加工痕Rnに含まれる加工痕のうち、最も小さい第1の最小加工痕Raを抽出する。第1の最小加工痕Raを抽出したならば、第1の最小加工痕Raに対応しZ位置検出手段8によって検出されたZ軸方向における位置を、該第1の最小加工痕Z位置Z1として、Z位置記憶部110に記憶する。
【0030】
次いで、移動手段30を作動して、チャックテーブル25を、
図5に矢印Yで示すY軸方向に割り出し送りすると共にX軸方向送り手段31を作動してパルスレーザー光線LBの照射開始位置(図中S1で示す位置)上に集光器64を位置付け、制御手段100の検査範囲設定部120に設定される精密間隔の検査範囲に基づいてZ軸移動手段5を作動し、集光器64をZ軸方向に間欠的に移動すると共に、X軸方向にチャックテーブル25を間欠的に移動してパルスレーザー光線LBを照射する。より具体的には、検査範囲設定部120によって設定される精密間隔は、例えば5μmであり、その検査範囲は、例えば±50μmに設定される。この検査範囲は、さらに小さい加工痕が確実に含まれるように余裕をみて設定される範囲である。そして、集光器64のZ軸方向の位置を移動して、Z位置検出手段8によって検出される位置が、上記した第1の最小加工痕Z位置であるZ1-50μmとなる位置(図中下方側)に位置付けて、最初のパルスレーザー光線LBを照射して、
図5にS1で示す加工痕を形成する。これに続き、Z軸移動手段5を作動して、集光器64を精密間隔である5μmずつ上方に間欠的に移動すると共に、移動手段30を作動して、チャックテーブル25をX軸方向において間欠的に例えば5mmずつ移動させながら、パルスレーザー光線LBを1ショットずつ照射する。このようにして、Z位置検出手段8によって検出されるZ軸方向の位置が図中上方側のZ1+50μmとなるまで、集光器64を間欠的にZ軸方向で上昇させると共に、パルスレーザー光線LBを間欠的に1ショットずつ照射して、検査用ウエーハ10の表面10a上に、21個の第2の加工痕Snを形成する。なお、
図5では、説明の都合上、第2の加工痕Snを実際の寸法より大きく、また、実際よりも少ない数で記載している。
【0031】
上記したように第2の加工痕Snを形成したならば、
図6(a)に示すように、検査用ウエーハ10を、チャックテーブル25と共にX軸方向に沿って移動し、撮像手段7の直下に位置付けて、撮像手段7によって、検査用ウエーハ10の表面10aに形成された第2の加工痕Snを撮像する。より具体的には、上記した第1の加工痕Rnを撮像したのと同様に、移動手段30のX軸方向送り手段31を作動して、チャックテーブル25をX軸方向に移動しながら21個の第2の加工痕Snについて、S1から順次1つずつ撮像する。このようにして撮像手段7によって撮像した第2の加工痕Snの画像を、加工痕毎に制御手段100の画像記憶部130に記憶する。この場合も、上記した第1の加工痕Rnのときと同様に、撮像手段7によって撮像された画像を、制御手段100を介して表示手段9に表示することができる。また、各加工痕に対応して、各加工痕が形成された際にZ位置検出手段8によって検出されたZ軸方向の位置が各加工痕に対応して制御手段100に記憶されていることから、表示手段9に該画像を表示する際に、各加工痕と共に、各加工痕に対応する集光点PのZ座標位置を表示することができる。
【0032】
次いで、画像記憶部130に記憶された第2の加工痕Snを画像処理部140によって処理し、第1の加工痕Rnを処理したのと同様にして、
図6(b)に示すように、第2の加工痕Snに含まれる加工痕のうち、最も小さい第2の最小加工痕Saを抽出する。第2の最小加工痕Saを抽出したならば、第2の最小加工痕Saに対応したZ軸方向における第2の最小加工痕Z位置Z2を検出して、該第2の最小加工痕Z位置Z2をZ位置記憶部110に記憶する。
【0033】
上記した実施形態によれば、制御手段100に備えられた制御プログラムを実行することによって、検査用ウエーハ10の表面10aにおいて加工痕が最も小さくなる集光点Pの位置(第2の最小加工痕位置Z2)を、自動的に高い精度で求めることが可能になり、生産性が向上する。そして、このようにして検出された最も加工痕が小さくなる集光点Pを形成するための第2の最小加工痕Z位置Z2に基づけば、チャックテーブル25に保持された被加工物(ウエーハ)に対して、集光点Pを適正に位置付けることが可能となる。
【0034】
上記した実施形態では、第1の加工痕Rn、第2の加工痕Snを形成する際に、チャックテーブル25をX軸方向に加工送りして実施したが、本発明はこれに限定されず、例えばY軸方向に加工送りすると共に、パルスレーザー光線LBを間欠的に照射して第1の加工痕Rn、第2の加工痕Snを形成するようにしてもよい。
【0035】
さらに、上記した実施形態では、粗密間隔の検査範囲と精密間隔の検査範囲とを設定して、第2の最小加工痕Saに対応した第2の最小加工痕Z位置Z2を検出し、第2の最小加工痕Z位置Z2をZ位置記憶部に記憶するようにしたが、集光点PのZ軸方向の位置をさらに精密に検出したい場合は、上記精密間隔の検査範囲よりもさらに狭い、超精密間隔0.5μmで検査範囲を±5μmとする設定を加えて、上記した第2の最小加工痕Z位置Z2を検出した後、新たに21個の第3の加工痕を形成して、第3の加工痕の中から、最も小さい第3の最小加工痕を検出し、該第3の最小加工痕に対応する第3の最小加工痕Z位置を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:レーザー加工装置
2:保持手段
25:チャックテーブル
25a:保持面
3:基台
4:保持手段
5:Z軸移動手段
51:パルスモータ
52:ボールねじ
6:レーザー照射手段
61:発振器
64:集光器
7:撮像手段
8:Z位置検出手段
81:Z軸スケール
82:Z位置読み取り部
9:表示手段
10:検査用ウエーハ
30:移動手段(送り手段)
31:X軸方向送り手段
32:Y軸方向送り手段
37:枠体
37a:垂直壁部
37b:水平壁部
100:制御手段
110:Z位置記憶部
120:検査範囲設定部
130:画像記憶部
140:画像処理部