(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】マルチビーム画像取得装置及びマルチビーム画像取得方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/153 20060101AFI20240902BHJP
H01J 37/29 20060101ALI20240902BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240902BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20240902BHJP
H01J 37/141 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/29
H01J37/28 B
H01J37/244
H01J37/141 Z
(21)【出願番号】P 2021008258
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-179129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
マルチ1次電子ビームを用いて、前記基板に前記マルチ1次電子ビームを結像する対物レンズと、
電界を形成する2極以上の電極と磁界を形成する2極以上の磁極とを有し、形成される前記電界と前記磁界とにより、前記マルチ1次電子ビームで前記基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームの軌道上から分離する分離器と、
分離された前記マルチ2次電子ビームを偏向する偏向器と、
前記対物レンズと前記偏向器との間に配置され、前記マルチ2次電子ビームを前記偏向器の偏向支点に結像するレンズと、
偏向された前記マルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備え
、
前記偏向器の偏向支点は、前記基板面と前記検出器の検出面とに共役になることを特徴とするマルチビーム画像取得装置。
【請求項2】
前記レンズは、前記対物レンズと前記分離器との間に配置されることを特徴とする請求項
1記載のマルチビーム画像取得装置。
【請求項3】
前記レンズは、前記分離器と前記偏向器との間に配置されることを特徴とする請求項
1記載のマルチビーム画像取得装置。
【請求項4】
対物レンズを用いて、ステージ上に載置される基板にマルチ1次電子ビームを結像する工程と、
電界を形成する2極以上の電極と磁界を形成する2極以上の磁極とを有する分離器を用いて、形成される前記電界と前記磁界とにより、前記マルチ1次電子ビームで前記基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームの軌道上から分離する工程と、
偏向器を用いて分離された前記マルチ2次電子ビームを偏向する工程と、
前記対物レンズと前記偏向器との間に配置されるレンズを用いて、前記マルチ2次電子ビームを前記偏向器の偏向支点に結像する工程と、
偏向された前記マルチ2次電子ビームを検出器で検出し、検出された前記マルチ2次電子ビームの信号に基づく2次電子画像のデータを出力する工程と、
を備え
、
前記偏向器の偏向支点は、前記基板面と前記検出器の検出面とに共役になることを特徴とするマルチビーム画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム画像取得装置及びマルチビーム画像取得方法に関する。例えば、マルチ1次電子ビームの照射に起因した2次電子画像を用いてパターン検査するマルチビーム検査装置の画像取得手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチビームを検査対象基板に照射して、検査対象基板から放出される各ビームに対応する2次電子を検出して、パターン画像を撮像する。そして撮像された測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
ここで、マルチ電子ビームを用いて検査画像を取得する場合、高分解能を実現するためにもビーム間ピッチを狭くすることが求められる。ビーム間ピッチを狭くすると検出系においてビーム間のクロストークが生じやすいといった問題があった。具体的には、マルチ電子ビームを用いて検査画像を取得する場合、1次電子ビームの軌道上に電磁界直交(E×B:E cross B)分離器を配置して、1次電子ビームから2次電子ビームを分離する。E×B分離器は、E×Bの影響が小さくなる1次電子ビームの像面共役位置に配置される。そして、対物レンズで1次電子ビームを試料面に結像する。1次電子ビームと2次電子ビームとでは、試料面に入射する照射電子のエネルギーと発生する2次電子のエネルギーとが異なるため、1次電子ビームをE×B分離器上で中間像面を形成させた場合、2次電子ビームは対物レンズ通過後にE×B分離器よりも手前で中間像面を形成してしまう。そのため、2次電子ビームは、E×B分離器上で中間像面を形成せずに広がってしまう。このため、E×B分離器により分離された2次電子は、検出光学系で広がり続ける。そのため、検出光学系で生じる収差が大きくなり、検出器上においてマルチ2次電子ビームがオーバーラップして個別に検出することが困難になってしまう場合があるといった問題があった。言い換えれば、ビーム間のクロストークが生じやすいといった問題があった。かかる問題は、検査装置に限るものではなく、マルチ電子ビームを用いて画像を取得する装置全般に対して同様に生じ得る。
【0005】
ここで、1次電子光学系から離れた2次電子光学系内に軸上色収差補正用の4段構成の多極子レンズからなるウィーンフィルタを配置して、分離された後の2次電子の軸上色収差を補正するといった技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、検出光学系で生じる収差を低減し、検出面でマルチ2次電子ビームの各2次電子ビームを分離することが可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチビーム画像取得装置は、
基板を載置するステージと、
マルチ1次電子ビームを用いて、基板にマルチ1次電子ビームを結像する対物レンズと、
電界を形成する2極以上の電極と磁界を形成する2極以上の磁極とを有し、形成される電界と磁界とにより、マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道上から分離する分離器と、
分離されたマルチ2次電子ビームを偏向する偏向器と、
対物レンズと偏向器との間に配置され、マルチ2次電子ビームを偏向器の偏向支点に結像するレンズと、
偏向されたマルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、偏向器の偏向支点は、基板面と検出器の検出面とに共役になる好適である。
【0010】
また、レンズは、対物レンズと分離器との間に配置されると好適である。
【0011】
或いは、レンズは、分離器と偏向器との間に配置されると好適である。
【0012】
本発明の一態様のマルチビーム画像取得方法は、
対物レンズを用いて、ステージ上に載置される基板にマルチ1次電子ビームを結像する工程と、
電界を形成する2極以上の電極と磁界を形成する2極以上の磁極とを有する分離器を用いて、形成される電界と磁界とにより、マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道上から分離する工程と、
偏向器を用いて分離されたマルチ2次電子ビームを偏向する工程と、
対物レンズと偏向器との間に配置されるレンズを用いて、マルチ2次電子ビームを偏向器の偏向支点に結像する工程と、
偏向されたマルチ2次電子ビームを検出器で検出し、検出されたマルチ2次電子ビームの信号に基づく2次電子画像のデータを出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、検出光学系で生じる収差を低減し、検出面でマルチ2次電子ビームの各2次電子ビームを分離できる。よって、ビーム間ピッチを狭くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1の比較例におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例とマルチ1次電子ビームの軌道の一例とを示す図である。
【
図4】実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例とマルチ1次電子ビームの軌道の一例とを示す図である。
【
図5】実施の形態1における2次電子量とエネルギーとの関係を示す図である。
【
図6】実施の形態1における偏向支点と検出面との間の2次電子ビーム軌道の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの40°偏向の軌道を示す図である。
【
図8】実施の形態1における40°偏向で検出される2次電子の分布の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの50°偏向の軌道を示す図である。
【
図10】実施の形態1における50°偏向で検出される2次電子の分布の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1と比較例とにおけるマルチ検出器の検出面でのマルチ2次電子ビームのビーム径の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
【
図14】実施の形態1の変形例におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図15】実施の形態1の変形例におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、画像取得装置は、検査装置に限るものではなく、マルチビームを用いて画像を取得する装置であれば構わない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206,207、主偏向器208、副偏向器209、ビームセパレーター214、電磁レンズ217、偏向器218、電磁レンズ224、偏向器226、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0017】
電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209によって1次電子光学系151を構成する。また、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ217、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、及び偏向器226によって2次電子光学系152を構成する。電磁レンズ217は、2次電子の軌道に対して、電磁レンズ207(対物レンズ)と偏向器218との間に配置される。
図1の例では、電磁レンズ217は、電磁レンズ207(対物レンズ)とビームセパレーター214との間に配置される。
【0018】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。
【0019】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0020】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、リターディング制御回路130、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0021】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0022】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、電磁レンズ217、電磁レンズ224、及びビームセパレーター214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成される2段の偏向器により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介して偏向制御回路128により制御される。リターディング制御回路130は、基板101に所望のリターディング電位を印加して、基板101に照射されるマルチ1次電子ビーム20のエネルギーを調整する。
【0023】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0024】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0025】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203には、マルチ1次電子ビームを形成するマルチビーム形成機構の一例となる。
【0026】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0027】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0028】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置:I.I.P.)に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0029】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカスする。言い換えれば、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、マルチ1次電子ビームで基板101面を照射する。
【0030】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0031】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
【0032】
ここで、ビームセパレーター214(E×B分離器)は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極と、2極以上の複数の電極とを有する。そして、かかる複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、ビームセパレーター214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0033】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0034】
図3は、実施の形態1の比較例におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例とマルチ1次電子ビームの軌道の一例とを示す図である。
図3(a)では、比較例におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例を示す。
図3(b)では、比較例におけるマルチ1次電子ビームの軌道の一例を示す。マルチ1次電子ビーム20は、像面共役位置に配置されたビームセパレーター214を通過して広がり、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられ基板101面に結像する。
図3(b)では、マルチ1次電子ビーム20のうち中心の1次電子ビーム21の軌道を示している。そして、基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300のうち、中心の1次電子ビーム21に対応する中心の2次電子ビーム301の放出時のエネルギーは、基板101への中心1次電子ビーム21の入射エネルギーよりも小さい。そのため、1次電子ビームがビームセパレーター214面で結像し、磁気レンズ207がマルチ1次電子ビーム20を基板101上にフォーカスする条件では、
図3(a)に示すように、中心2次電子ビーム301が、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられるもののビームセパレーター214に届く手前の位置で中間像面600(結像点)が形成される。その後、中心2次電子ビーム301は広がりながら、ビームセパレーター214へと進む。そして、比較例では、中心2次電子ビーム301がさらに広がりながら偏向器218へと進むことになる。そのため、偏向器218の位置において中心2次電子ビーム301のビーム径D1が広くなってしまう。他の各2次電子ビームについても同様にビーム径が広くなってしまう。各2次電子ビームのビーム径D1が大きくなるほど偏向器218で生じる収差が大きくなってしまう。そのため、偏向器218を通過後の磁気レンズ224のレンズ作業によって収束させようとしても、マルチ検出器222の検出面においてビーム径を絞りきれず、各2次電子ビームが互いにオーバーラップしてしまい、2次電子ビーム間の分離が困難になる場合がある。その結果、各2次電子ビームを個別に検出することが困難になってしまう。なお、対物レンズが1次電子ビームのフォーカスを優先する場合、2次電子ビームのフォーカスを偏向器218の位置に合わせることは原理的に困難である。
【0035】
図4は、実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例とマルチ1次電子ビームの軌道の一例とを示す図である。
図4(a)では、実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例を示す。
図4(b)では、実施の形態1におけるマルチ1次電子ビームの軌道の一例を示す。実施の形態1において、マルチ1次電子ビーム20は、
図4(b)に示すように、像面共役位置に配置されたビームセパレーター214を通過して広がり、電磁レンズ217によって若干軌道が変化するものの磁気レンズ207(対物レンズ)に向かって広がり続け、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられ基板101面に結像する。
図4(b)では、マルチ1次電子ビーム20のうち中心の1次電子ビーム21の軌道を示している。このような1次電子ビームがビームセパレーター214面で結像し、磁気レンズ207がマルチ1次電子ビーム20を基板101上にフォーカスする条件では、比較例と同様、中心2次電子ビーム301が、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられるもののビームセパレーター214に届く手前の位置で中間像面600(結像点)が形成される。
ここで、実施の形態1では、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられ、中間像面600(結像点)が形成され、発散方向の軌道となったマルチ2次電子ビームを電磁レンズ217によって集束方向に軌道を曲げる。その際、電磁レンズ217は、マルチ2次電子ビームを偏向器218の偏向支点に中間像面601(結像点)を形成する。これにより、
図4(a)に示すように、偏向器218内の偏向支点の位置において中心2次電子ビーム301のビーム径を小さくできる。そのため、偏向器218で生じる収差を抑制できる。よって、偏向器218を通過後の磁気レンズ224のレンズ作業によってマルチ検出器222の検出面においてビーム径を絞ることができ、各2次電子ビームを分離した状態でマルチ検出器222の検出面に結像させることができる。その結果、各2次電子ビームを個別に検出できる。よって、偏向器218の偏向支点は、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる。
【0036】
なお、偏向器218は、2次電子軌道中心軸を含む平面で割った断面が円弧形状に形成されると好適である。但し、これに限るものではない。2次電子軌道中心軸を含む平面で割った断面が矩形状に形成されても構わない。実施の形態1において、中心2次電子ビーム301が通過する偏向器218内の中心軸の長さのちょうど中間点の位置を偏向支点(或いは偏向中心)とする。
【0037】
図5は、実施の形態1における2次電子量とエネルギーとの関係を示す図である。
図5において、縦軸は2次電子の量、横軸はエネルギーの大きさを示す。基板101からは、異なるエネルギーを持った2次電子が放出される。2次電子のエネルギーは、
図5の例において、0<2次電子<E0の幅を持つ。実施の形態1では、
図5に示すエネルギー分布のうち、ピークを示すエネルギーEの2次電子の結像点が偏向器218の偏向支点で形成されるように電磁レンズ217を制御する。
【0038】
図6は、実施の形態1における偏向支点と検出面との間の2次電子ビーム軌道の一例を示す図である。
図6において、2次電子は、自身のエネルギーの大きさに応じて偏向器218による偏向量が変化する。
図6の例に示すように、エネルギーの小さい2次電子301-2(実線)は、エネルギーの大きい2次電子301-1(点線)よりも大きく曲げられる。ここで、偏向器218の偏向支点と共役ではない位置では、
図6に示すように、エネルギーの大きさに依存して2次電子の軌道がずれるので像がぼけてしまう。これに対して、実施の形態1では、偏向器218の偏向支点をマルチ検出器222の検出面に共役とすることで、マルチ検出器222の検出面において2次電子はエネルギーの大きさに依存せずに軌道中心に戻る。よって、マルチ検出器222の検出面において2次電子ビームのぼけを抑制できる。
【0039】
図7は、実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの40°偏向の軌道を示す図である。
図7の例では、偏向器218でマルチ2次電子ビーム300を例えば40°偏向する場合を示している。
図8は、実施の形態1における40°偏向で検出される2次電子の分布の一例を示す図である。
図8の例では、3×3のマルチ2次電子ビーム300を検出する場合を示している。偏向器218の偏向支点が、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる位置に偏向器218を配置することで、マルチ2次電子ビーム300を例えば40°偏向する場合に、
図8に示すように、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300を分離して検出できる。
【0040】
図9は、実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームの50°偏向の軌道を示す図である。
図9の例では、偏向器218でマルチ2次電子ビーム300を例えば50°偏向する場合を示している。
図10は、実施の形態1における50°偏向で検出される2次電子の分布の一例を示す図である。
図10の例では、3×3のマルチ2次電子ビーム300を検出する場合を示している。偏向器218の偏向支点が、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる位置に偏向器218を配置することで、マルチ2次電子ビーム300を例えば50°偏向する場合に、
図10に示すように、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300を分離して検出できる。
【0041】
以上のように、実施の形態1では、偏向器218の偏向支点が、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる位置に偏向器218を配置することで、偏向器218での偏向量を変化させた場合でも、マルチ2次電子ビーム300を分離して検出できる。なお、
図7及び
図9では、偏向器218の長さを変えることで偏向角度を変化させる場合を示しているが、これに限るものではない。同じ長さの偏向器218を用いて印加する電圧を変化させても同様の効果を発揮できる。偏向器218に印加する電圧を変化させる場合でも、偏向器218の偏向支点が、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる位置に偏向器218を配置することで、マルチ2次電子ビーム300を分離して検出できる。
【0042】
図11は、実施の形態1と比較例とにおけるマルチ検出器の検出面でのマルチ2次電子ビームのビーム径の一例を示す図である。上述した比較例では、偏向器218での収差が大きくなってしまうため、マルチ検出器222の検出面でのマルチ2次電子ビーム300の各ビーム15のビーム径が大きくなってしまう。その結果、
図11に示すように、ビーム15同士がオーバーラップしてしまうことが生じ得る。これに対して、実施の形態1によれば、偏向器218での収差を抑制できるので、マルチ検出器222の検出面でのマルチ2次電子ビーム300の各ビーム14のビーム径を小さくできる。その結果、
図11に示すように、ビーム14同士がオーバーラップしてしまうことを回避できる。よって、マルチ検出器222の位置で2次系を高分解能にできる(検出面での分離ができる)。
【0043】
以上のように、電子光学系を調整した上で、被検査基板の検査処理を行う。
【0044】
図12は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図12において、半導体基板(ウェハ)101の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。
【0045】
図13は、実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
図13に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0046】
図13の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。副偏向器209(第1の偏向器)は、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向することにより、パターンが形成された基板101面上をマルチ1次電子ビーム20で走査する。言い換えれば、サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0047】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。
図13の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎の測定画像となるフレーム画像31について比較することになる。
図4の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0048】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように主偏向器208によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、例えば偏向器226は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。偏向器226とは別に、アライメントコイル等を2次電子光学系内に配置して、かかる放出位置の変化を補正させても好適である。
【0049】
以上のように、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218内で中間像面を形成すると共に、偏向器218で偏向され、それからマルチ検出器222で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系を移動中に発散し、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。そして。検出されたマルチ2次電子ビーム300の信号に基づいた2次電子画像が取得される。具体的には、マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0050】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0051】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0052】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0053】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。
【0054】
比較回路108内では、フレーム領域30毎に、被検査画像となるフレーム画像31(第1の画像)と、当該フレーム画像に対応する参照画像(第2の画像)とを、サブ画素単位で、位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0055】
そして、比較回路108は、フレーム画像31(第1の画像)と、参照画像(第2の画像)とを比較する。比較回路108は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0056】
なお、上述したダイ-データベース検査の他、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較するダイ-ダイ検査を行っても好適である。或いは、自己の測定画像だけを用いて検査しても構わない。
【0057】
図14は、実施の形態1の変形例におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図14において、電磁レンズ217が、2次電子軌道に対して、ビームセパレーター214と偏向器218との間に配置される点以外は、
図1と同様である。
【0058】
図15は、実施の形態1の変形例におけるマルチ2次電子ビームの軌道の一例を示す図である。
図15において、磁気レンズ207(対物レンズ)によって集束方向に軌道が曲げられ、中間像面600(結像点)が形成されたマルチ2次電子ビーム300は、広がりながらビームセパレーター214に進む。そして、マルチ2次電子ビーム300は、ビームセパレーター214によってマルチ1次電子ビーム20から分離され、広がりながら電磁レンズ217に進む。そして、発散方向の軌道となったマルチ2次電子ビームを電磁レンズ217によって集束方向に軌道を曲げる。その際、電磁レンズ217は、マルチ2次電子ビームを偏向器218の偏向支点に中間像面601(結像点)を形成する。これにより、
図15に示すように、偏向器218内の偏向支点の位置において各2次電子ビームのビーム径を小さくできる。
図15の例では、マルチ2次電子ビーム300のうち中心2次電子ビーム301の軌道を示している。そのため、偏向器218で生じる収差を抑制できる。よって、偏向器218を通過後の磁気レンズ224のレンズ作業によってマルチ検出器222の検出面においてビーム径を絞ることができ、各2次電子ビームを分離した状態でマルチ検出器222の検出面に結像させることができる。その結果、各2次電子ビームを個別に検出できる。よって、偏向器218の偏向支点は、基板101面とマルチ検出器222の検出面とに共役になる。
【0059】
以上のように、実施の形態1によれば、検出光学系で生じる収差を低減し、検出面でマルチ2次電子ビームの各2次電子ビームを分離できる。よって、ビーム間ピッチを狭くできる。
【0060】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、及び参照画像作成回路112等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0061】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電磁レンズ217は、静電レンズであっても構わない。
【0062】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0063】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビーム画像取得装置及びマルチ電子ビーム画像取得方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
10 1次電子ビーム
20 マルチ1次電子ビーム
21 1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 リターディング制御回路
142 ステージ駆動機構
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205,207 磁気レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 ビームセパレーター
216 ミラー
217 電磁レンズ
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 投影レンズ
226 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
301 2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
600,601 中間像面