(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】気相成長装置及び当該気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240902BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/44 F
(21)【出願番号】P 2021009078
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉永 純也
(72)【発明者】
【氏名】有村 忠信
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103168(WO,A1)
【文献】特開平11-176716(JP,A)
【文献】特開2005-116689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス流路を有し、基板に半導体の成膜を行う反応炉と、
前記基板を保持するサセプタと、
前記原料ガス流路に前記基板を到達させるために、前記サセプタの昇降を行うサセプタ昇降装置とを備え、
前記サセプタの昇降時に伸縮する昇降装置用ベローズが前記サセプタ昇降装置の周囲に設けられている気相成長装置において、
前記サセプタの昇降時の前記反応炉内部の圧力変化を抑制する圧力変化抑制装置を備え、
前記圧力変化抑制装置は、
前記昇降装置用ベローズと同じ体積を有する圧力変化抑制装置用ベローズと、
前記圧力変化抑制装置用ベローズを伸縮させる駆動装置と
を有することを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法であって、
前記サセプタが上昇する際には、当該上昇速度と同じ速度で、前記圧力変化抑制装置用ベローズが伸長し、
前記サセプタが下降する際には、当該下降速度と同じ速度で、前記圧力変化抑制装置用ベローズが収縮することで、
前記反応炉の内部の体積を一定に保つように制御することを特徴とする圧力変化抑制装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及び当該気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置は、反応炉内部でサセプタに保持した基板上に原料ガスを供給し、当該基板を加熱することにより、基板表面に半導体を成膜する装置である。当該気相成長装置では、基板をサセプタに保持する動作及び基板をサセプタから取り出す動作を行うために、サセプタを原料ガス流路に近づけたり遠ざけたりする動作を行うことが一般的である(特許文献1を参照。)。当該動作を行うために、サセプタに昇降機構を設けている。また、反応炉の気密性を確保するため、ベローズと呼ばれる蛇腹状の円筒を昇降機構の周囲に設けている。その上で、当該ベローズを上下に伸縮させることで、反応炉の気密性を確保しながらサセプタの昇降動作を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サセプタの昇降動作を行うと、当該昇降動作のためにベローズが伸縮することで反応炉内部の体積が変動するので、反応炉内部の圧力が変化してしまう。その圧力変化によって、サセプタ昇降用モーターの負荷増大、パーティクルの増加、または、反応炉内部の圧力過上昇による炉内パーツの破損が引き起こされる可能性がある。そのため、サセプタの昇降動作を行う際には、反応炉内部の圧力が変化しないようにする技術が必要である。
【0005】
以上の点に鑑みて、本発明は、サセプタ昇降機能を有する気相成長装置において、反応炉内部の圧力変化を抑制し、サセプタ昇降用モーターの負荷増大、パーティクルの増加、炉内パーツの破損を防止することが可能な気相成長装置及び当該気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明は、原料ガス流路を有し、基板に半導体の成膜を行う反応炉と、前記基板を保持するサセプタと、前記原料ガス流路に前記基板を到達させるために、前記サセプタの昇降を行うサセプタ昇降装置とを備え、前記サセプタの昇降時に伸縮する昇降装置用ベローズが前記サセプタ昇降装置の周囲に設けられている気相成長装置において、前記サセプタの昇降時の前記反応炉内部の圧力変化を抑制する圧力変化抑制装置を備え、前記圧力変化抑制装置は、前記昇降装置用ベローズと同じ体積を有する圧力変化抑制装置用ベローズと、前記圧力変化抑制装置用ベローズを伸縮させる駆動装置とを有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明の気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法であって、前記サセプタが上昇する際には、当該上昇速度と同じ速度で、前記圧力変化抑制装置用ベローズが伸長し、前記サセプタが下降する際には、当該下降速度と同じ速度で、前記圧力変化抑制装置用ベローズが収縮することで、前記反応炉の内部の体積を一定に保つように制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気相成長装置及び当該気相成長装置における圧力変化抑制装置の制御方法によれば、サセプタの昇降機能を有する気相成長装置において、反応炉内部の体積を一定に保つことが可能であることから、反応炉内の圧力変化を抑制し、サセプタ昇降用モーターの負荷増大、パーティクルの増加、炉内パーツの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の気相成長装置の一形態例を示す図である。
【
図2】本発明の気相成長装置におけるサセプタ昇降装置及び圧力変化抑制装置の動作シーケンスを示す図である。
【
図3】上記気相成長装置において、昇降装置用ベローズが上昇し(収縮し)、圧力変化抑制装置用ベローズが下降している(伸長している)状態を示す図である。
【
図4】上記気相成長装置において、昇降装置用ベローズが下降し(伸長し)、圧力変化抑制装置用ベローズが上昇している(収縮している)状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の気相成長装置1の一形態例を示すものである。
【0011】
本形態例の気相成長装置1は、反応炉2内部の原料ガス流路3で、サセプタ4に保持した基板6の上に原料ガスを供給し、基板6を加熱して、当該基板6の表面に半導体を成膜する装置である。なお、
図1中の矢印は原料ガスの流れる方向を示す。
【0012】
気相成長装置1には、基板6を原料ガス流路3内に到達させるためにサセプタ4を上昇させたり、基板6を取り出し位置に下降させたりするためのサセプタ昇降装置5がサセプタ4の下部に設けられている。サセプタ昇降装置5は天板8、ボールねじ9及びモーター(駆動装置)10から構成され、サセプタ昇降装置5の周囲には、反応炉2の気密性を確保するための昇降装置用ベローズ7が設けられている。
【0013】
サセプタ昇降装置5は、モーター10の稼働に合わせて、ボールねじ9が回転して天板8が上下に動くことで、サセプタ4が昇降するとともに、ベローズ7が上下に伸縮するものとなっている。
【0014】
基板6上に半導体を成膜する際には、前記サセプタ4に基板6を保持した状態で、当該サセプタ4の周囲に設けられているベローズ7が収縮して前記サセプタ4が上昇し、前記基板6が原料ガス流路3に到達する状態となる。その状態になると、サセプタ4の上昇が停止し、基板6が加熱され、当該基板6上で原料ガスが反応して、半導体の成膜工程が行われる。当該成膜工程が終了すると、ベローズ7が伸長して、半導体が製膜された基板6を保持したサセプタ4が下降する。サセプタ4の下降が終了すると、半導体が製膜された基板6は外部へと取り出される。
【0015】
本形態例において、圧力変化抑制装置11は、上記気相成長装置1に設けられるものであり、反応炉2の下部に設置されている。当該圧力変化抑制装置11は、サセプタ昇降装置5と同様の構成を有しており、前記サセプタ昇降装置5と同様の圧力変化抑制装置用ベローズ12、天板13、ボールねじ14及びモーター(駆動装置)15を備えている。
【0016】
圧力変化抑制装置用ベローズ12は上下に伸縮可能な蛇腹状の円筒であり、昇降装置用ベローズ7に隣接して設けられている。また、当該ベローズ12の内部の体積は、最大伸長時及び最小収縮時において、昇降装置用ベローズ7の内部と同じ体積になるように設計されている。
【0017】
天板13は、前記ベローズ12の下部で当該ベローズ12を載置する四角形の板である。当該天板13の四隅には、ボールねじ14が当該天板13を貫通するように設けられており、当該ボールねじ14の下部にはモーター15が設けられている。当該モーター15の稼働に合わせて、ボールねじ14が回転して天板13が上下に動き、当該天板13の動きに合わせて前記ベローズ12が上下に伸縮し、その伸縮に合わせて当該ベローズ12内部の体積が増減するようになっている。
【0018】
図2に、サセプタ昇降装置5及び圧力変化抑制装置11の動作シーケンスを示す。図中の実線は圧力変化抑制装置11の動作を、点線はサセプタ昇降装置5の動作を、それぞれ示している。具体的な動作として、昇降装置用ベローズ7が上昇する際は、その上昇速度と同じ速度で圧力変化抑制装置用ベローズ12が下降する(伸長する)ように制御されている。上昇した昇降装置用ベローズ7は、上位置に達し、その位置で基板6の成膜が行われる(
図3を参照。)。逆に、昇降装置用ベローズ7が下降する際は、その下降速度と同じ速度で圧力変化抑制装置用ベローズ12が上昇する(収縮する)ように制御されている。下降した昇降装置用ベローズ7は、下位置に達し、その位置で基板6の出し入れが行われる(
図4を参照。)。このような制御を連続的に行うことで、両者のベローズ部分の合計体積が一定に保たれ、さらには反応炉2内部の体積が一定に保たれるものとなっている。
【0019】
また、サセプタ昇降装置5及び圧力変化抑制装置11のそれぞれのベローズ7、12の昇降時における反応炉2内部の圧力と体積の変化について検討すると、各ベローズ7、12が縮む時は、縮んだ分だけ反応炉2内部の体積が減少し、それに伴って内部圧力が上昇する。逆に、各ベローズ7、12が伸びる時は、伸びた分だけ反応炉2内部の体積が増加し、それに伴って内部圧力が低下する。実際には、上記
図2に示されているように、圧力変化抑制装置11はサセプタ昇降装置5の昇降動作と反対の動作を連続的に行うように制御されている。このような制御を行うことで、ベローズ部分も含めた反応炉2内部の体積が一定に保たれるので、内部圧力の急激な変化が抑制される。それに伴って、サセプタ昇降用モーターの負荷増大、パーティクルの増加、炉内パーツの破損等を防止することができる。
【実施例】
【0020】
サセプタ昇降装置のみを有する従来の気相成長装置と、サセプタ昇降装置の他に圧力変化抑制装置を備える本発明の気相成長装置とを用いて、サセプタの昇降時に起きる反応炉内部の圧力変化をそれぞれ計測した。すると、従来の気相成長装置では、サセプタの昇降時に反応炉内部の圧力が数kPa程度変化したのに対して、本発明の気相成長装置では、サセプタの昇降時に反応炉内部の圧力は変化しなかった。
【0021】
以上より、本発明の気相成長装置1における圧力変化抑制装置11は、サセプタ昇降装置5の昇降動作と反対の昇降動作を連続的に行うように制御することで、反応炉2内部の圧力を一定に保つことができるので、サセプタ昇降用モーターの負荷増大、パーティクルの増加、炉内パーツの破損等を防止するのに役立つものといえる。
【0022】
なお、上記形態例において、サセプタ昇降装置5と圧力変化抑制装置11とは隣接して設けられているが、必ずしも隣接している必要はなく、反応炉2内部の体積を一定に保ち、内部圧力が変化しないように設定されているのであれば、どのような態様であっても構わない。また、上記形態例において、サセプタ昇降装置5と圧力変化抑制装置11について、ベローズとモーター(駆動手段)の間に天板及びボールねじが設けられている態様を示したが、天板及びボールねじは必須の要素ではなく、モーターの稼働によってベローズが伸縮できるように設計されていれば、どのような態様であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1・・・気相成長装置、2・・・反応炉、3・・・原料ガス流路、4・・・サセプタ、5・・・サセプタ昇降装置、6・・・基板、7・・・昇降装置用ベローズ、8・・・(サセプタ昇降装置の)天板、9・・・(サセプタ昇降装置の)ボールねじ、10・・・(サセプタ昇降装置の)モーター(駆動装置)、11・・・圧力変化抑制装置、12・・・圧力変化抑制装置用ベローズ、13・・・(圧力変化抑制装置の)天板、14・・・(圧力変化抑制装置の)ボールねじ、15・・・(圧力変化抑制装置の)モーター(駆動装置)