IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特許7547275ワークピースの膜厚を推定するモデルを作成する方法、そのようなモデルを用いてワークピースの研磨中に膜厚を推定する方法、およびコンピュータにこれらの方法を実行させるためのプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ワークピースの膜厚を推定するモデルを作成する方法、そのようなモデルを用いてワークピースの研磨中に膜厚を推定する方法、およびコンピュータにこれらの方法を実行させるためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240902BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240902BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B49/12
G01B11/06 G
H01L21/304 621B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021060794
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156879
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】チャウハン ナチケタ
(72)【発明者】
【氏名】八木 圭太
(72)【発明者】
【氏名】中村 顕
(72)【発明者】
【氏名】カワデ ロヒット
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-3789(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163164(WO,A1)
【文献】特開2020-53550(JP,A)
【文献】特開2014-11294(JP,A)
【文献】特開2000-77371(JP,A)
【文献】特開2021-28099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0005139(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0094370(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0286075(US,A1)
【文献】特表2019-537270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 49/12
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定し、
前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得し、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数の類似度と、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する、方法。
【請求項2】
前記代表スペクトルは、前記複数のサンプルスペクトルの平均スペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類し、
前記複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定する工程をさらに含み、
前記複数の類似度を取得する工程は、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、前記複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記代表スペクトルは、前記サンプルの中心からの反射光のスペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルの形状を表す数値を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの形状を表す数値を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のサンプルスペクトルは、前記サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行して得られた複数のスペクトルである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記正規化処理は、各生スペクトルの全体の傾きおよびレベルの少なくとも一方を調整する処理である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
膜を有するワークピースを研磨しながら、前記ワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成し、
前記測定スペクトルの特徴量を決定し、
前記測定スペクトルと、予め設定された代表スペクトルとの類似度を算出することで類似度を取得し、
前記測定スペクトルの前記特徴量および前記類似度を、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の膜厚推定モデルに入力し、
前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力する、膜厚推定方法。
【請求項10】
前記予め設定された代表スペクトルは、予め設定された複数の代表スペクトルであり、
前記類似度は、前記測定スペクトルと、前記予め設定された複数の代表スペクトルとの複数の類似度である、請求項9に記載の膜厚推定方法。
【請求項11】
膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定し、
前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類し、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成し、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のクラスラベルと、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する、方法。
【請求項12】
前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルの形状を表す数値を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの形状を表す数値を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のサンプルスペクトルは、前記サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行して得られた複数のスペクトルである、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記正規化処理は、各生スペクトルの全体の傾きおよびレベルの少なくとも一方を調整する処理である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
膜を有するワークピースを研磨しながら、前記ワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成し、
前記測定スペクトルの特徴量を決定し、
前記測定スペクトルの特徴量を、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の分類モデルに入力し、
前記分類モデルから、前記測定スペクトルが属するクラスを示す確信度を出力し、
前記測定スペクトルの前記特徴量および前記確信度を、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の膜厚推定モデルに入力し、
前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力する、膜厚推定方法。
【請求項17】
膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定するステップと、
前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得するステップと、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数の類似度と、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成するステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項18】
前記プログラムは、
前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類するステップと、
前記複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定するステップをさらにコンピュータに実行させるように構成され、
前記複数の類似度を取得する前記ステップは、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、前記複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得するステップである、請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
膜を有するワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成するステップと、
前記測定スペクトルの特徴量を決定するステップと、
前記測定スペクトルと、予め設定された代表スペクトルとの類似度を算出することで類似度を取得するステップと、
前記測定スペクトルの前記特徴量および前記類似度を、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の膜厚推定モデルに入力するステップと、
前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力するステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項20】
前記予め設定された代表スペクトルは、予め設定された複数の代表スペクトルであり、
前記類似度は、前記測定スペクトルと、前記予め設定された複数の代表スペクトルとの複数の類似度である、請求項19に記載のプログラム。
【請求項21】
膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定するステップと、
前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類するステップと、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成するステップと、
前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のクラスラベルと、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成するステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
膜を有するワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成するステップと、
前記測定スペクトルの特徴量を決定するステップと、
前記測定スペクトルの特徴量を、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の分類モデルに入力するステップと、
前記分類モデルから、前記測定スペクトルが属するクラスを示す確信度を出力するステップと、
前記測定スペクトルの前記特徴量および前記確信度を、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の膜厚推定モデルに入力するステップと、
前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力するステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、基板、パネルなどのワークピースを研磨する技術に関し、特にワークピースの膜厚を膜厚推定モデルを用いて推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、シリコンウェーハ上に種々の材料が膜状に繰り返し形成され、積層構造を形成する。この積層構造を形成するためには、最上層の表面を平坦にする技術が重要となっている。このような平坦化の一手段として、化学機械研磨(CMP)が使用されている。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は研磨装置によって実行される。この種の研磨装置は、一般に、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ワークピース(例えば、膜を有するウェーハ)を保持する研磨ヘッドと、研磨液(例えばスラリー)を研磨パッド上に供給する研磨液供給ノズルとを備える。ワークピースを研磨するときは、研磨液供給ノズルから研磨液を研磨パッド上に供給しながら、研磨ヘッドによりワークピースの表面を研磨パッドに押し付ける。研磨ヘッドと研磨テーブルをそれぞれ回転させてワークピースと研磨パッドとを相対移動させることにより、ワークピースの表面を形成する膜を研磨する。
【0004】
絶縁膜やシリコン層などの非金属膜の厚さを測定するために、研磨装置は、一般に、光学式膜厚測定装置を備える。この光学式膜厚測定装置は、光源から発せられた光をワークピースの表面に導き、ワークピースからの反射光のスペクトルを解析することで、ワークピースの膜厚を決定するように構成される。
【0005】
図23は、反射光のスペクトルから膜厚を決定する従来の方法の一例を説明する図である。光学式膜厚測定装置は、ワークピースの研磨中に、ワークピースからの反射光の強度を分光器で測定し、反射光のスペクトルを生成する。スペクトルは、反射光の強度と、反射光の波長との関係を示すグラフとして表される。光学式膜厚測定装置は、反射光のスペクトルと複数の参照スペクトルとを比較し、反射光のスペクトルに最も形状の近い1つの参照スペクトルを決定する。具体的には、光学式膜厚測定装置は、反射光のスペクトルと各参照スペクトルとの差を算出し、算出された差が最も小さい参照スペクトルを決定する。そして、光学式膜厚測定装置は、決定された参照スペクトルに関連付けられた膜厚を決定する。
【0006】
各参照スペクトルにはその参照スペクトルが取得されたときの膜厚が予め関連付けられている。すなわち、各参照スペクトルは、異なる膜厚のときに取得されたものであり、複数の参照スペクトルは複数の異なる膜厚に対応する。したがって、反射光のスペクトルに最も形状の近い参照スペクトルを特定することにより、研磨中のワークピースの現在の膜厚を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/163164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ワークピースの研磨中に得られるスペクトルは、種々の原因によりばらつきを生じやすい。例えば、外乱(スラリー、電気的ノイズ、光学的ノイズなど)、パターン構造の違い、膜の下地構造の違いなどに起因して、研磨中に得られる反射光のスペクトルは大きく変わることがある。このため、スペクトルから決定された膜厚が、実際の膜厚から大きく異なることがある。
【0009】
そこで、本発明は、ウェーハなどのワークピースからの反射光のスペクトルのばらつきの影響を低減し、正確な膜厚を決定することができるモデルを作成する方法を提供する。また、本発明は、そのようなモデルを用いてワークピースの研磨中に膜厚を推定する方法を提供する。さらに、本発明は、これらの方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定し、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得し、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数の類似度と、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する、方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記代表スペクトルは、前記複数のサンプルスペクトルの平均スペクトルである。
一態様では、前記方法は、前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類し、前記複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定する工程をさらに含み、前記複数の類似度を取得する工程は、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、前記複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する工程である。
【0012】
一態様では、前記代表スペクトルは、前記サンプルの中心からの反射光のスペクトルである。
一態様では、前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルの形状を表す数値を含む。
一態様では、前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの形状を表す数値を含む。
一態様では、前記複数のサンプルスペクトルは、前記サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行して得られた複数のスペクトルである。
一態様では、前記正規化処理は、各生スペクトルの全体の傾きおよびレベルの少なくとも一方を調整する処理である。
【0013】
一態様では、膜を有するワークピースを研磨しながら、前記ワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成し、前記測定スペクトルの特徴量を決定し、前記測定スペクトルと、予め設定された代表スペクトルとの類似度を算出することで類似度を取得し、前記測定スペクトルの前記特徴量および前記類似度を上記膜厚推定モデルに入力し、前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力する、膜厚推定方法が提供される。
一態様では、前記予め設定された代表スペクトルは、予め設定された複数の代表スペクトルであり、前記類似度は、前記測定スペクトルと、前記予め設定された複数の代表スペクトルとの複数の類似度である。
【0014】
一態様では、膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定し、前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類し、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成し、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のクラスラベルと、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する、方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルの形状を表す数値を含む。
一態様では、前記サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの形状を表す数値を含む。
一態様では、前記複数のサンプルスペクトルは、前記サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行して得られた複数のスペクトルである。
一態様では、前記正規化処理は、各生スペクトルの全体の傾きおよびレベルの少なくとも一方を調整する処理である。
【0016】
一態様では、膜を有するワークピースを研磨しながら、前記ワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成し、前記測定スペクトルの特徴量を決定し、前記測定スペクトルの特徴量を上記分類モデルに入力し、前記分類モデルから、前記測定スペクトルが属するクラスを示す確信度を出力し、前記測定スペクトルの前記特徴量および前記確信度を上記膜厚推定モデルに入力し、前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力する、膜厚推定方法が提供される。
【0017】
一態様では、膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定するステップと、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得するステップと、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数の類似度と、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
一態様では、前記プログラムは、前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類するステップと、前記複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定するステップをさらにコンピュータに実行させるように構成され、前記複数の類似度を取得する前記ステップは、前記複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、前記複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得するステップである。
一態様では、膜を有するワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成するステップと、前記測定スペクトルの特徴量を決定するステップと、前記測定スペクトルと、予め設定された代表スペクトルとの類似度を算出することで類似度を取得するステップと、前記測定スペクトルの前記特徴量および前記類似度を上記膜厚推定モデルに入力するステップと、前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
一態様では、前記予め設定された代表スペクトルは、予め設定された複数の代表スペクトルであり、前記類似度は、前記測定スペクトルと、前記予め設定された複数の代表スペクトルとの複数の類似度である。
【0018】
一態様では、膜を有するサンプルからの反射光の複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定するステップと、前記複数のサンプル特徴量を決定する前または後に、前記複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類するステップと、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成するステップと、前記複数のサンプル特徴量と、前記複数のクラスラベルと、前記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
一態様では、膜を有するワークピースからの反射光の測定スペクトルを生成するステップと、前記測定スペクトルの特徴量を決定するステップと、前記測定スペクトルの特徴量を上記分類モデルに入力するステップと、前記分類モデルから、前記測定スペクトルが属するクラスを示す確信度を出力するステップと、前記測定スペクトルの前記特徴量および前記確信度を上記膜厚推定モデルに入力するステップと、前記ワークピースの推定膜厚を前記膜厚推定モデルから出力するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、正確な膜厚を決定することができるモデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】処理システムによって生成されたスペクトルの一例を示す図である。
図3図1に示す研磨装置の詳細な構成の一実施形態を示す断面図である。
図4】光学式膜厚測定装置の原理を説明するための模式図である。
図5】ワークピースと研磨テーブルとの位置関係を示す平面図である。
図6】膜厚推定モデルの作成方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
図7】サンプルの膜厚と研磨時間との関係を示すグラフである。
図8】サンプルスペクトルの山と谷の位置を示す数値の組からなるサンプル特徴量を説明する図である。
図9】フーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組からなるサンプル特徴量を説明する図である。
図10】類似度を算出するステップを説明するための模式図である。
図11】膜厚推定モデルを用いてワークピースの膜厚をワークピースの研磨中に推定する実施形態を説明するフローチャートである。
図12】膜厚推定モデルの作成方法の他の実施形態を説明するフローチャートである。
図13】複数のサンプルスペクトルを複数のクラスに分類するステップと、複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定するステップを説明する図である。
図14】膜厚推定モデルを用いてワークピースの膜厚をワークピースの研磨中に推定する実施形態を説明するフローチャートである。
図15】膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態を説明するフローチャートである。
図16図16(a)および図16(b)は、生スペクトルの全体の傾きを調整する正規化処理を説明する図である。
図17図17(a)および図17(b)は、生スペクトルの全体のレベルを調整する正規化処理を説明する図である。
図18】膜厚推定モデルを用いてワークピースの膜厚をワークピースの研磨中に推定する実施形態を説明するフローチャートである。
図19】膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態を説明するフローチャートである。
図20】膜厚推定モデルを用いてワークピースの膜厚をワークピースの研磨中に推定する実施形態を説明するフローチャートである。
図21】膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態を説明するフローチャートである。
図22】膜厚推定モデルを用いてワークピースの膜厚をワークピースの研磨中に推定する実施形態を説明するフローチャートである。
図23】反射光のスペクトルから膜厚を決定する従来の方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハなどのワークピースWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上にスラリーなどの研磨液を供給するための研磨液供給ノズル5を備えている。研磨パッド2の上面は、ワークピースWを研磨する研磨面2aを構成する。
【0022】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、ヘッドシャフト10は図示しない研磨ヘッドモータに連結されている。研磨ヘッドモータは、研磨ヘッド1をヘッドシャフト10とともに矢印で示す方向に回転させる。研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0023】
ワークピースWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。ワークピースWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2上に研磨液が存在した状態でワークピースWは研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。ワークピースWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0024】
研磨装置は、ワークピースWの膜厚を決定する光学式膜厚測定装置40を備えている。光学式膜厚測定装置40は、光を発する光源44と、分光器47と、光源44および分光器47に連結された光学センサヘッド7と、分光器47に連結された処理システム49を備えている。光学センサヘッド7、光源44、および分光器47は研磨テーブル3に取り付けられており、研磨テーブル3および研磨パッド2とともに一体に回転する。光学センサヘッド7の位置は、研磨テーブル3および研磨パッド2が一回転するたびに研磨パッド2上のワークピースWの中心を含むワークピースWの表面を横切る位置である。
【0025】
処理システム49は、後述するスペクトルの生成、膜厚推定モデルや分類モデルなどの各種モデルの作成、およびワークピースWの膜厚推定を実行するためのプログラムが格納された記憶装置49aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置49bを備えている。処理システム49は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置49aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置49bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、処理システム49の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0026】
処理システム49は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。処理システム49は、分光器47に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって分光器47に接続されたクラウドサーバまたはフォグサーバであってもよい。処理システム49は、ゲートウェイ、ルーターなどの中に配置されてもよい。
【0027】
処理システム49は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、処理システム49は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。一実施形態では、記憶装置49aは、演算装置49bから離れた場所にあるサーバ(図示せず)内に設けられてもよい。
【0028】
光源44から発せられた光は、光学センサヘッド7に伝送され、光学センサヘッド7からワークピースWの表面に導かれる。光はワークピースWの表面で反射し、ワークピースWの表面からの反射光は光学センサヘッド7によって受けられ、分光器47に送られる。分光器47は反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。
【0029】
処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトルを生成するように構成されている。反射光のスペクトルは、反射光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。反射光の強度は、反射率または相対反射率などの相対値として表わすこともできる。
【0030】
図2は、処理システム49によって生成されたスペクトルの一例を示す図である。スペクトルは、光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。図2において、横軸は基板から反射した光の波長を表わし、縦軸は反射した光の強度から導かれる相対反射率を表わす。相対反射率とは、反射光の強度を示す指標値であり、光の強度と所定の基準強度との比である。各波長において光の強度(実測強度)を所定の基準強度で割ることにより、装置の光学系や光源固有の強度のばらつきなどの不要なノイズを実測強度から除去することができる。
【0031】
基準強度は、各波長について予め測定された光の強度であり、相対反射率は各波長において算出される。具体的には、各波長での光の強度(実測強度)を、対応する基準強度で割り算することにより相対反射率が求められる。基準強度は、例えば、光学センサヘッド7から発せられた光の強度を直接測定するか、または光学センサヘッド7から鏡に光を照射し、鏡からの反射光の強度を測定することによって得られる。あるいは、基準強度は、膜が形成されていないシリコン基板(ベア基板)を研磨パッド2上で水の存在下で水研磨しているとき、または上記シリコン基板(ベア基板)が研磨パッド2上に置かれているときに、分光器47により測定されたシリコン基板からの反射光の強度としてもよい。
【0032】
実際の研磨では、実測強度からダークレベル(光を遮断した条件下で得られた背景強度)を引き算して補正実測強度を求め、さらに基準強度から上記ダークレベルを引き算して補正基準強度を求め、そして、補正実測強度を補正基準強度で割り算することにより、相対反射率が求められる。具体的には、相対反射率R(λ)は、次の式(1)を用いて求めることができる。
【数1】
ここで、λは基板から反射した光の波長であり、E(λ)は波長λでの強度であり、B(λ)は波長λでの基準強度であり、D(λ)は光を遮断した条件下で測定された波長λでの背景強度(ダークレベル)である。
【0033】
光学センサヘッド7は、研磨テーブル3が一回転するたびに、ワークピースW上の所定の測定点に光を導き、上記所定の測定点からの反射光を受ける。ワークピースW上の所定の測定点は、ワークピースWの中心を含む。反射光は分光器47に送られる。分光器47は反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。図2に示す例では、反射光のスペクトルは、相対反射率と反射光の波長との関係を示す分光波形であるが、反射光のスペクトルは、反射光の強度自体と、反射光の波長との関係を示す分光波形であってもよい。
【0034】
さらに、処理システム49は、後述するように、研磨テーブル3が一回転する間に上記所定の測定点から返ってきた反射光の強度測定データを受け取り、この強度測定データからスペクトルを生成する。処理システム49は、スペクトルからワークピースWの膜厚を推定(または決定)するように構成されている。
【0035】
図1に示すように、処理システム49は、ワークピースWの研磨動作を制御するための研磨制御部9に接続されている。この研磨制御部9は、処理システム49によって決定されたワークピースWの膜厚に基づいて、ワークピースWの研磨動作を制御する。例えば、研磨制御部9は、ワークピースWの膜厚が目標膜厚に達した時点である研磨終点を決定する、あるいはワークピースWの膜厚が所定の値に達したときにワークピースWの研磨条件を変更するように構成されている。
【0036】
図3は、図1に示す研磨装置の詳細な構成の一実施形態を示す断面図である。ヘッドシャフト10は、ベルト等の連結手段17を介して研磨ヘッドモータ18に連結されて回転されるようになっている。このヘッドシャフト10の回転により、研磨ヘッド1が矢印で示す方向に回転する。
【0037】
分光器47は、光検出器48を備えている。一実施形態では、光検出器48は、フォトダイオード、CCD、またはCMOSなどから構成されている。光学センサヘッド7は、光源44および光検出器48に光学的に連結されている。光検出器48は処理システム49に電気的に接続されている。
【0038】
光学式膜厚測定装置40は、光源44から発せられた光をワークピースWの表面に導く投光用光ファイバーケーブル31と、ワークピースWからの反射光を受け、反射光を分光器47に送る受光用光ファイバーケーブル32を備えている。投光用光ファイバーケーブル31の先端および受光用光ファイバーケーブル32の先端は、研磨テーブル3内に位置している。
【0039】
投光用光ファイバーケーブル31の先端および受光用光ファイバーケーブル32の先端は、光をワークピースWの表面に導き、かつワークピースWからの反射光を受ける光学センサヘッド7を構成する。投光用光ファイバーケーブル31の他端は光源44に接続され、受光用光ファイバーケーブル32の他端は分光器47に接続されている。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、所定の波長範囲に亘って反射光の強度を測定するように構成されている。
【0040】
光源44は、光を投光用光ファイバーケーブル31を通じて光学センサヘッド7に送り、光学センサヘッド7は光をワークピースWに向けて放つ。ワークピースWからの反射光は光学センサヘッド7に受けられ、受光用光ファイバーケーブル32を通じて分光器47に送られる。分光器47は反射光をその波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。分光器47は、反射光の強度測定データを処理システム49に送る。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトルを生成する。
【0041】
研磨テーブル3は、その上面で開口する第1の孔50Aおよび第2の孔50Bを有している。また、研磨パッド2には、これら孔50A,50Bに対応する位置に通孔51が形成されている。孔50A,50Bと通孔51とは連通し、通孔51は研磨面2aで開口している。第1の孔50Aは液体供給ライン53に連結されており、第2の孔50Bはドレインライン54に連結されている。投光用光ファイバーケーブル31の先端および受光用光ファイバーケーブル32の先端から構成される光学センサヘッド7は、第1の孔50Aに配置されており、かつ通孔51の下方に位置している。
【0042】
ワークピースWの研磨中は、リンス液として純水が液体供給ライン53を介して第1の孔50Aに供給され、さらに第1の孔50Aを通って通孔51に供給される。純水は、ワークピースWの表面(被研磨面)と光学センサヘッド7との間の空間を満たす。純水は、第2の孔50Bに流れ込み、ドレインライン54を通じて排出される。第1の孔50Aおよび通孔51内を流れる純水は、研磨液が第1の孔50Aに浸入することを防止し、これにより光路が確保される。
【0043】
投光用光ファイバーケーブル31は、光源44によって発せられた光をワークピースWの表面まで導く光伝送部である。投光用光ファイバーケーブル31および受光用光ファイバーケーブル32の先端は、第1の孔50A内に位置しており、ワークピースWの被研磨面の近傍に位置している。投光用光ファイバーケーブル31および受光用光ファイバーケーブル32の各先端から構成される光学センサヘッド7は、研磨ヘッド1に保持されたワークピースWを向いて配置される。研磨テーブル3が回転するたびにワークピースWの所定の測定点に光が照射される。本実施形態では、1つの光学センサヘッド7のみが研磨テーブル3内に設けられているが、複数の光学センサヘッド7が研磨テーブル3内に設けられてもよい。
【0044】
図4は、光学式膜厚測定装置40の原理を説明するための模式図であり、図5は、ワークピースWと研磨テーブル3との位置関係を示す平面図である。図4に示す例では、ワークピースWは、下層膜と、その上に形成された上層膜とを有している。上層膜は、例えばシリコン層または絶縁膜である。投光用光ファイバーケーブル31および受光用光ファイバーケーブル32の各先端から構成される光学センサヘッド7は、ワークピースWの表面に対向して配置されている。光学センサヘッド7は、研磨テーブル3が1回転するたびに、ワークピースWの中心を含む複数の測定点に光を照射する。
【0045】
ワークピースWに照射された光は、媒質(図4の例では水)と上層膜との界面、および上層膜と下層膜との界面で反射し、これらの界面で反射した光の波が互いに干渉する。この光の波の干渉の仕方は、上層膜の厚さ(すなわち光路長)に応じて変化する。このため、ワークピースWからの反射光から生成されるスペクトルは、上層膜の厚さに従って変化する。
【0046】
ワークピースWの研磨中、研磨テーブル3が一回転するたびに、光学センサヘッド7はワークピースWを横切って移動する。光学センサヘッド7がワークピースWの下方にあるとき、光源44は光を発する。光は、光学センサヘッド7からワークピースWの表面(被研磨面)に導かれ、ワークピースWからの反射光は光学センサヘッド7に受けられ、分光器47に送られる。分光器47は、各波長での反射光の強度を所定の波長範囲に亘って測定し、反射光の強度測定データを処理システム49に送る。処理システム49は、波長ごとの光の強度を表わす反射光のスペクトルを強度測定データから生成する。
【0047】
ワークピースW上のある測定点での膜厚は、その測定点からの反射光のスペクトルを膜厚推定モデルに入力することによって算定される。すなわち、処理システム49は、ワークピースW上のある測定点からの反射光のスペクトルを膜厚推定モデルに入力し、その測定点での推定膜厚を、膜厚推定モデルのアルゴリズムに従って算定する。
【0048】
以下、膜厚推定モデルの作成方法について説明する。膜厚推定モデルは、ワークピースWと同種のサンプルが使用される。例えば、ワークピースWがウェーハである場合は、ウェーハからなるサンプルが使用される。他の例では、ワークピースWがパネルである場合には、パネルからなるサンプルが使用される。
【0049】
ワークピースWと同様に、サンプルは、その表面に膜を有する。サンプルは、図1に示す研磨装置によって研磨され、処理システム49によってサンプルからの反射光の複数のスペクトル(以下、サンプルスペクトルという)が生成される。サンプルスペクトルの生成は、図1乃至図5を参照して説明した、ワークピースWからの反射光のスペクトルの生成と同様にして実行される。
【0050】
図1に示すように、処理システム49の記憶装置49aは、複数のサンプルスペクトルのデータを収容したデータベース60を有している。複数のサンプルスペクトルは、過去に取得された、複数のサンプルからの反射光のスペクトルである。
【0051】
図6は、膜厚推定モデルの作成方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
ステップ1-1では、膜を有するサンプルの初期膜厚を膜厚測定装置(図示せず)によって測定する。サンプルの初期膜厚は、サンプルが研磨される前の膜厚である。膜厚測定装置は、いわゆるスタンドアローンタイプの膜厚測定装置であり、サンプルの膜を高い精度で測定することができるように構成されている。膜厚測定装置の構成およびタイプは、特に限定されない。例えば、膜厚測定装置は、サンプルが静止した状態で、サンプルの膜厚を測定するように構成された光学式膜厚測定装置である。
【0052】
ステップ1-2では、サンプルを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりサンプルを一定の研磨レートで研磨する。研磨レートは、膜の厚さの単位時間当たりの減少量であり、除去レートとも呼ばれる。サンプルの研磨中、処理システム49は、サンプルからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のサンプルに導き、サンプルからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、サンプルからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトル(すなわち、サンプルスペクトル)を生成する。処理システム49は、サンプルの研磨中に得られた複数のサンプルスペクトルを記憶装置49a内に保存する。
【0053】
ステップ1-3では、サンプル研磨の終了後に、研磨されたサンプルを上記膜厚測定装置に搬送し、研磨されたサンプルの膜厚を膜厚測定装置により測定する。
ステップ1-4では、処理システム49は、上記ステップ1-1で測定されたサンプルの初期膜厚と、上記ステップ1-3で測定された研磨後のサンプルの膜厚を膜厚測定装置から取得する。さらに、処理システム49は、サンプルの初期膜厚と研磨されたサンプルの膜厚から、上記ステップ1-2で生成された複数のサンプルスペクトルに対応する膜厚を補間し、複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚を決定する。
【0054】
上記ステップ1-4について、図7を参照して詳細に説明する。図7は、サンプルの膜厚と研磨時間との関係を示すグラフである。サンプルの研磨レートが一定である場合、図7に示すように、膜厚は研磨時間とともに初期膜厚Tiniから研磨後の膜厚Tfinまで直線的に減少する。したがって、初期膜厚Tiniと研磨後の膜厚Tfinとの間の膜厚は、補間により算定することができる。
【0055】
サンプルスペクトルは、上述したように、研磨テーブル3が一回転するたびに周期的に取得される。したがって、サンプルの研磨中に得られた複数のサンプルスペクトルを、初期膜厚Tiniから研磨後の膜厚Tfinまでの複数の膜厚に割り当てることにより、複数のサンプルスペクトルに対応する複数の膜厚(初期膜厚Tiniから研磨後の膜厚Tfinまでの複数の膜厚)を決定することができる。このようにして、各サンプルスペクトルは、対応する膜厚に関連付けられる(結び付けられる)。
【0056】
図6に戻り、ステップ1-5では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定する。各サンプル特徴量は、各サンプルスペクトルの形状を表す数値の組である。例えば、サンプル特徴量は、図8に示すように、サンプルスペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である。図4を参照して説明したように、サンプルスペクトルの形状は、サンプルの膜厚に依存して変わる。したがって、サンプルスペクトルの山と谷の位置も、サンプルの膜厚に依存して変わる。よって、サンプルスペクトルの特徴量として、サンプルスペクトルの山と谷の位置を使用することができる。サンプルスペクトルの山と谷の位置は、サンプルスペクトルの強度と波長から特定することができる。
【0057】
他の例では、サンプル特徴量は、サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの形状を表す数値の組であってもよい。例えば、サンプル特徴量は、フーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組であってもよい。より具体的には、図9に示すように、処理システム49は、各サンプルスペクトルに対してフーリエ変換(例えば高速フーリエ変換、FFT)を実行して、フーリエ解析スペクトルを生成する。一例では、フーリエ解析スペクトルは、サンプルスペクトルに含まれる周波数と、周波数成分の強さとの関係を示す周波数スペクトルである。他の例では、サンプルスペクトルに含まれる周波数は、波長に変換されてもよい。この場合は、フーリエ解析スペクトルは、サンプルスペクトルに含まれる周波数から換算された波長と、波長成分の強さとの関係を示す波長スペクトルである。
【0058】
図9から分かるように、サンプルスペクトルと同様に、フーリエ解析スペクトルも山と谷を有する。これらの山と谷の位置は、サンプルスペクトルの形状(すなわち、膜厚)に依存して変わる。したがって、サンプルスペクトルの特徴量として、フーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を用いることができる。
【0059】
図6に戻り、ステップ1-6では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する。代表スペクトルは、スペクトル形状の基準となるスペクトルである。代表スペクトルは、例えば、任意の半導体構造からの反射光の代表的なスペクトルである。代表スペクトルは、類似度を算出する前に決定される。決定された代表スペクトルは、記憶装置40a内に保存される。一例では、代表スペクトルは、複数のサンプルスペクトルの平均スペクトルである。他の例では、代表スペクトルは、サンプルの中心からの反射光のスペクトルである。さらに他の例では、代表スペクトルは、サンプルの中心からの複数の反射光のスペクトルから選ばれた任意のスペクトル、またはサンプルの中心からの複数の反射光のスペクトルの平均スペクトルである。研磨テーブル3が1回転するたびに、サンプルの中心に光が導かれ、サンプルの中心から反射光が得られるので、サンプルの中心からの反射光のスペクトルは安定的に取得できる。さらに他の例では、代表スペクトルは、サンプルスペクトルから任意に選択したものでもよく、また膜構造から理論的に計算される理論スペクトルであってもよい。
【0060】
図10は、類似度を算出する上記ステップ1-6を説明するための模式図である。処理システム49は、その記憶装置49a内に格納されている複数のサンプルスペクトルと、代表スペクトルとの類似度を算定する。類似度は、スペクトルの形状の類似度である。すなわち、サンプルスペクトルと代表スペクトルとの形状が類似している場合には、高い類似度が算定される。一方、サンプルスペクトルが代表スペクトルとは大きく異なる形状を有している場合には、低い類似度が算定される。
【0061】
類似度を算定するためのアルゴリズムは、特に限定されない。類似度を算定するアルゴリズムには、公知のアルゴリズムを使用することができる。類似度の例としては、コサイン類似度、相関係数、ユークリッド距離、標準ユークリッド距離、マハラノビス距離、マンハッタン距離、またはそれらの組み合わせ、さらにそれらの変数を規格化/標準化した値の組合せ、などが挙げられる。
【0062】
図6に戻り、ステップ1-7では、処理システム49は、上記ステップ1-5で決定された複数のサンプル特徴量と、上記ステップ1-6で算定された複数の類似度と、上記ステップ1-4で決定された上記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する。
【0063】
機械学習のアルゴリズムの例としては、サポートベクター回帰法、ディープラーニング法、ランダムフォレスト法、および決定木法などが挙げられるが、本実施形態では機械学習の一例であるディープラーニング法が使用されている。ディープラーニング法は、中間層(隠れ層ともいう)が多層化されたニューラルネットワークをベースとする学習法である。本明細書では、入力層と、二層以上の中間層と、出力層で構成されるニューラルネットワークを用いた機械学習をディープラーニングと称する。
【0064】
膜厚推定モデルは、ニューラルネットワークから構成されている。処理システム49の記憶装置49aには、膜厚推定モデルを機械学習アルゴリズムに従って作成するためのプログラムが格納されている。処理システム49の演算装置49bは、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行することによって膜厚推定モデルを作成する。機械学習によって膜厚推定モデルを作成することは、ニューラルネットワークの重みなどのパラメータを最適化する工程を含む。
【0065】
膜厚推定モデルは、上記複数のサンプル特徴量と、上記複数の類似度と、上記複数の対応膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習により作成される。より具体的には、膜厚推定モデルの作成では、訓練データに含まれる複数のサンプル特徴量および複数の類似度は説明変数として使用され、訓練データに含まれる複数の対応膜厚は、目的変数(正解ラベル)として使用される。すなわち、処理システム49は、各サンプル特徴量および各類似度を膜厚推定モデルの入力層に入力し、入力されたサンプル特徴量および類似度に対応する膜厚が出力層から出力されるように膜厚推定モデルのパラメータ(重みやバイアスなど)を調節する。このような機械学習の結果、学習済みモデルとしての膜厚推定モデルが作成される。膜厚推定モデルは、処理システム49の記憶装置49a内に格納される。
【0066】
膜厚推定モデルの精度を向上させるために、多くのサンプル特徴量、複数の類似度、対応する膜厚を用意することが好ましい。そこで、複数のサンプルが用意され、図6に示すステップ1-1からステップ1-6を繰り返すことで、多くのサンプル特徴量、複数の類似度、対応する膜厚が取得される。このようにして作成されたサンプル特徴量、複数の類似度、対応する膜厚の組み合わせから構成された訓練データは、記憶装置49aのデータベース60に保存される。
【0067】
次に、上述のようにして作成された膜厚推定モデルを用いて、ワークピースWの膜厚をワークピースWの研磨中に推定する実施形態について、図11のフローチャートを参照して説明する。
ステップ2-1では、ワークピースWを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりワークピースWの研磨を開始する。ワークピースWの研磨中、処理システム49は、ワークピースWからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のワークピースWに導き、ワークピースWからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトルを生成する。以下の説明では、ワークピースWからの反射光のスペクトルを、測定スペクトルと称する。
【0068】
ステップ2-2では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を決定する。測定スペクトルの特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。
ステップ2-3では、処理システム49は、測定スペクトルと、上記ステップ1-6で決定された代表スペクトルとの類似度を算出する。
ステップ2-4では、処理システム49は、上記ステップ2-2で決定された測定スペクトルの特徴量と、上記ステップ2-3で算出された類似度を膜厚推定モデルに入力し、ワークピースWの推定膜厚を膜厚推定モデルから出力する。
【0069】
ステップ2-5では、処理システム49は、上記ステップ2-4で得られた推定膜厚に対して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を実行する。このステップ2-5は省略してもよい。
ステップ2-6では、研磨制御部9(図1参照)は、推定膜厚が所定の目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
ステップ2-7では、研磨制御部9は、ワークピースWの研磨を終了させる。
【0070】
本実施形態によれば、複数のサンプルスペクトルの特徴量を基に機械学習により膜厚推定モデルが作成されるので、処理システム49は、膜厚推定モデルを用いて複数のサンプルスペクトルの傾向と新たに得られた反射光スペクトルの関係から膜厚を推定することができる。膜厚推定モデルの作成のための機械学習において、サンプルスペクトルが外乱やパターン構造の違い、膜の下地構造の違いなどにより影響を受けた場合は、そのサンプルスペクトルは機械学習の精度を下げる要因となりうる。代表スペクトルに対する類似度やスペクトルの分類の確信度を特徴量に入れることで、そのようなサンプルスペクトルの影響を減じることができる。すなわち、単にサンプルスペクトルの形状の情報だけを用いた機械学習よりも膜厚推定精度が向上できる。
【0071】
発明者らは、1つの代表スペクトルとの類似度を特徴量に加えた膜厚推定モデルで膜厚を推定した場合と、類似度を加えずに膜厚推定を行った場合で、実測の膜厚値と推定膜厚値との誤差の平均値が2.8%改善することを確認した。
【0072】
次に、膜厚推定モデルの作成方法の他の実施形態について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。図12に示すステップ3-1~ステップ3-5は、図6に示すステップ1-1~ステップ1-5と同じであるので、それらの重複する説明を省略する。
【0073】
ステップ3-6では、処理システム49は、ステップ3-2のサンプルの研磨中に生成された複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。より具体的には、処理システム49は、クラスタリングにより、複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。クラスタリングのアルゴリズムの例としては、k平均法、混合ガウスモデル(GMM)、DBSCANなどが挙げられる。このステップ3-6は、複数のサンプル特徴量を決定する前に実行してもよく、または複数のサンプル特徴量を決定した後に実行してもよい。
【0074】
ステップ3-7では、処理システム49は、複数のクラスについて複数の代表スペクトルをそれぞれ決定する。例えば、各クラスに含まれる複数のサンプルスペクトルの平均スペクトルは、そのクラスの代表スペクトルに決定される。決定された複数の代表スペクトルは、記憶装置40a内に保存される。
【0075】
図13は、複数のサンプルスペクトルを複数のクラスに分類する上記ステップ3-6と、各クラスごとに代表スペクトルを決定する上記ステップ3-7を説明する図である。図13に示す例では、サンプルの研磨中に生成された複数のサンプルスペクトルは、3つのクラスに分類される。2つ、または4つ以上のクラスに分類されることもある。
【0076】
サンプルの表面に配線パターンが形成されている場合、サンプルからの反射光のスペクトルであるサンプルスペクトルは、サンプル上の光の反射点によって変わる。例えば、デバイスエリア(配線パターンがあるエリア)からの反射光のサンプルスペクトルは、スクライブライン(配線パターンがないエリア)からの反射光のサンプルスペクトルと大きく異なる形状を有している。したがって、複数のサンプルスペクトルは、形状に従って複数のクラスに分類することができる。
【0077】
図13に示すように、クラスごとに代表スペクトルが決定される。図13に示す例では、複数のサンプルスペクトルは3つのクラスに分類されているので、3つの代表スペクトルが決定される。
【0078】
図12に戻り、ステップ3-8では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する。図13に示す例では、各クラスに属する複数のサンプルスペクトルの1つ1つは、3つの代表スペクトルのそれぞれと比較され、3つの代表スペクトルとの類似度が算出される。言い換えれば、各サンプルスペクトルについて3つの類似度が算出される。
【0079】
ステップ3-9では、処理システム49は、上記ステップ3-5で決定された複数のサンプル特徴量と、上記ステップ3-8で算定された複数の類似度と、上記ステップ3-4で決定された複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する。
【0080】
次に、上述のようにして作成された膜厚推定モデルを用いて、ワークピースWの膜厚をワークピースWの研磨中に推定する実施形態について、図14のフローチャートを参照して説明する。
ステップ4-1では、ワークピースWを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりワークピースWの研磨を開始する。ワークピースWの研磨中、処理システム49は、ワークピースWからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のワークピースWに導き、ワークピースWからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトル、すなわち測定スペクトルを生成する。
【0081】
ステップ4-2では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を決定する。測定スペクトルの特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0082】
ステップ4-3では、処理システム49は、測定スペクトルと、上記ステップ3-7で決定された複数の代表スペクトルのそれぞれとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する。
ステップ4-4では、処理システム49は、上記ステップ4-2で決定された測定スペクトルの特徴量と、上記ステップ4-3で算出された複数の類似度を膜厚推定モデルに入力し、ワークピースWの推定膜厚を膜厚推定モデルから出力する。
【0083】
ステップ4-5では、処理システム49は、上記ステップ4-4で得られた推定膜厚に対して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を実行する。このステップ4-5は省略してもよい。
ステップ4-6では、研磨制御部9(図1参照)は、推定膜厚が所定の目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
ステップ4-7では、研磨制御部9は、ワークピースWの研磨を終了させる。
【0084】
次に、膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態について、図15に示すフローチャートを参照して説明する。図15に示すステップ5-1~ステップ5-4は、図6に示すステップ1-1~ステップ1-4と同じであるので、それらの重複する説明を省略する。
【0085】
ステップ5-5では、処理システム49は、サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行する。したがって、本実施形態のサンプルスペクトルは、正規化されたスペクトルである。正規化処理は、サンプルスペクトルのばらつきを小さくすること、および後で実施される機械学習の精度を向上させるためである。特に、サンプルの表面にデバイスエリアおよびスクライブラインが存在する場合、サンプルからの反射光は大きくばらつきやすい。よって、正規化処理により、サンプルスペクトルのばらつきを小さくすることができる。結果として、機械学習の精度が向上され、膜厚推定モデルの膜厚推定精度も向上される。
【0086】
一実施形態では、正規化処理は、各生スペクトルの全体の傾きおよびレベルの少なくとも一方を調整する処理である。図16(a)および図16(b)は、生スペクトルの全体の傾きを調整する正規化処理を説明する図である。図16(a)に示すように、処理システム49は、全ての生スペクトルに対して線形回帰を実行して回帰直線Lを決定する。さらに、処理システム49は、図16(b)に示すように、回帰直線Lが水平となるように、全ての生スペクトルを調整する。
【0087】
図17(a)および図17(b)は、生スペクトルの全体のレベルを調整する正規化処理を説明する図である。より具体的には、図17(a)は、レベル調整前の生スペクトルを示し、図17(b)は生スペクトルのレベル調整によって得られたサンプルスペクトルを示している。図17(a)と図17(b)との対比から分かるように、正規化処理の結果、サンプルスペクトルの全体のばらつきが小さくなっている。
【0088】
処理システム49は、図16(b)に示す傾き調整および図17(b)に示すレベル調整の両方を実行してもよい。このような正規化処理により、サンプルスペクトルの傾きおよび/またはレベル(大きさ)のばらつきを小さくすることができる。結果として、機械学習の精度が向上され、膜厚推定モデルの膜厚推定精度も向上される。
【0089】
図15に戻り、ステップ5-6では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定する。各サンプル特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、サンプル特徴量は、サンプルスペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、サンプル特徴量は、サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0090】
ステップ5-7では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルのそれぞれと、代表スペクトルとの類似度を算出することで複数の類似度を取得する。代表スペクトルは、類似度を算出する前に決定される。一例では、代表スペクトルは、複数のサンプルスペクトルの平均スペクトルである。他の例では、代表スペクトルは、サンプルの中心からの反射光のスペクトルである。さらに他の例では、代表スペクトルは、サンプルスペクトルから任意に選択したものでもよく、また膜構造から理論的に計算される理論スペクトルであってもよい。決定された代表スペクトルは、記憶装置40a内に保存される。
【0091】
ステップ5-8では、処理システム49は、上記ステップ5-6で決定された複数のサンプル特徴量と、上記ステップ5-7で算定された複数の類似度と、上記ステップ5-4で決定された複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する。
【0092】
次に、図15に示すフローチャートに従って作成された膜厚推定モデルを用いて、ワークピースWの膜厚をワークピースWの研磨中に推定する実施形態について、図18のフローチャートを参照して説明する。
ステップ6-1では、ワークピースWを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりワークピースWの研磨を開始する。ワークピースWの研磨中、処理システム49は、ワークピースWからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のワークピースWに導き、ワークピースWからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトル、すなわち測定スペクトルを生成する。
【0093】
ステップ6-2では、処理システム49は、測定スペクトルに対して正規化処理を実行する。したがって、ステップ6-2で得られた測定スペクトルは、正規化されたスペクトルである。正規化処理は、図15乃至図17を参照して説明した実施形態と同じようにして実行される。
【0094】
ステップ6-3では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を決定する。測定スペクトルの特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0095】
ステップ6-4では、処理システム49は、測定スペクトルと、上記ステップ5-7で決定された代表スペクトルとの類似度を算出する。
ステップ6-5では、処理システム49は、上記ステップ6-3で決定された測定スペクトルの特徴量と、上記ステップ6-4で算出された類似度を膜厚推定モデルに入力し、ワークピースWの推定膜厚を膜厚推定モデルから出力する。
【0096】
ステップ6-6では、処理システム49は、上記ステップ6-5で得られた推定膜厚に対して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を実行する。このステップ6-6は省略してもよい。
ステップ6-7では、研磨制御部9(図1参照)は、推定膜厚が所定の目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
ステップ6-8では、研磨制御部9は、ワークピースWの研磨を終了させる。
【0097】
図15乃至図18を参照して説明した正規化処理を含む実施形態は、図12乃至図14を参照して説明した実施形態にも適用することができる。
【0098】
次に、膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態について、図19に示すフローチャートを参照して説明する。図19に示すステップ7-1~ステップ7-5は、図6に示すステップ1-1~ステップ1-5と同じであるので、それらの重複する説明を省略する。
【0099】
ステップ7-6では、処理システム49は、ステップ7-2のサンプルの研磨中に生成された複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。より具体的には、処理システム49は、クラスタリングにより、複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。クラスタリングのアルゴリズムの例としては、k平均法、混合ガウスモデル(GMM)、DBSCANなどが挙げられる。このステップ7-6は、複数のサンプル特徴量を決定する前に実行してもよく、または複数のサンプル特徴量を決定した後に実行してもよい。
【0100】
ステップ7-7では、処理システム49は、複数のサンプル特徴量と、複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成する。各クラスラベルは、各サンプルスペクトルが属するクラスを特定するための複数の確信度の組である。各クラスラベルを構成する複数の確信度は、確信度の最大値と最小値を含む。例えば、複数のサンプルスペクトルが第1クラス、第2クラス、第3クラスに分類された場合、第1クラスに属する各サンプルスペクトルについてのクラスラベルは、「1,0,0」であり、第2クラスに属する各サンプルスペクトルについてのクラスラベルは、「0,1,0」であり、第3クラスに属する各サンプルスペクトルについてのクラスラベルは、「0,0,1」である。「1」は確信度の最大値であり、「0」は確信度の最小値であり、確信度は0~1の間の任意の数値であってもよい。
【0101】
機械学習のアルゴリズムの例としては、サポートベクター回帰法、ディープラーニング法、ランダムフォレスト法、および決定木法などが挙げられるが、本実施形態では機械学習の一例であるディープラーニング法が使用されている。
【0102】
分類モデルは、ニューラルネットワークから構成されている。処理システム49の記憶装置49aには、分類モデルを機械学習アルゴリズムに従って作成するためのプログラムが格納されている。処理システム49の演算装置49bは、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行することによって分類モデルを作成する。機械学習によって分類モデルを作成することは、ニューラルネットワークの重みなどのパラメータを最適化する工程を含む。
【0103】
分類モデルは、上記複数のサンプル特徴量および上記複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習により作成される。より具体的には、分類モデルの作成では、分類用訓練データに含まれる複数のサンプル特徴量は説明変数として使用され、分類用訓練データに含まれる複数のクラスラベルは、目的変数(正解ラベル)として使用される。すなわち、処理システム49は、各サンプル特徴量を分類モデルの入力層に入力し、入力されたサンプル特徴量に対応するクラスラベルが出力層から出力されるように分類モデルのパラメータ(重みやバイアスなど)を調節する。このような機械学習の結果、学習済みモデルとしての分類モデルが作成される。分類モデルは、処理システム49の記憶装置49a内に格納される。
【0104】
分類モデルの精度を向上させるために、多くのサンプル特徴量、対応するクラスラベルを用意することが好ましい。そこで、複数のサンプルが用意され、図19に示すステップ7-1からステップ7-6を繰り返すことで、多くのサンプル特徴量、対応するクラスラベルが取得される。このようにして作成されたサンプル特徴量、対応するクラスラベルの組み合わせから構成された分類用訓練データは、記憶装置49aのデータベース60に保存される。
【0105】
ステップ7-8では、処理システム49は、上記複数のサンプル特徴量と、上記複数のクラスラベルと、上記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する。より具体的には、膜厚推定モデルの作成では、膜厚推定用訓練データに含まれる複数のサンプル特徴量および複数のクラスラベルは説明変数として使用され、膜厚推定用訓練データに含まれる複数の膜厚は、目的変数(正解ラベル)として使用される。すなわち、処理システム49は、各サンプル特徴量および各クラスラベルを膜厚推定モデルの入力層に入力し、入力されたサンプル特徴量およびクラスラベルに対応する膜厚が出力層から出力されるように膜厚推定モデルのパラメータ(重みやバイアスなど)を調節する。このような機械学習の結果、学習済みモデルとしての膜厚推定モデルが作成される。膜厚推定モデルは、処理システム49の記憶装置49a内に格納される。
【0106】
次に、図19に示すフローチャートに従って作成された分類モデルおよび膜厚推定モデルを用いて、ワークピースWの膜厚をワークピースWの研磨中に推定する実施形態について、図20のフローチャートを参照して説明する。
【0107】
ステップ8-1では、ワークピースWを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりワークピースWの研磨を開始する。ワークピースWの研磨中、処理システム49は、ワークピースWからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のワークピースWに導き、ワークピースWからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトル、すなわち測定スペクトルを生成する。
【0108】
ステップ8-2では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を決定する。測定スペクトルの特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0109】
ステップ8-3では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を分類モデルに入力し、分類モデルから、測定スペクトルが属するクラスを示す複数の確信度の組を出力する。複数の確信度の組は、確信度の最小値から最大値までの範囲内の数値を含む。一例では、分類モデルから出力される確信度の組は、(0.1,0.1,0.8)である。
ステップ8-4では、処理システム49は、上記ステップ8-2で決定された測定スペクトルの特徴量と、上記ステップ8-3で算出された複数の確信度の組を膜厚推定モデルに入力し、ワークピースWの推定膜厚を膜厚推定モデルから出力する。
【0110】
ステップ8-5では、処理システム49は、上記ステップ8-4で得られた推定膜厚に対して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を実行する。このステップ8-5は省略してもよい。
ステップ8-6では、研磨制御部9(図1参照)は、推定膜厚が所定の目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
ステップ8-7では、研磨制御部9は、ワークピースWの研磨を終了させる。
【0111】
図15乃至図18を参照して説明した正規化処理を含む実施形態は、図19および図20を参照して説明した実施形態にも適用することができる。以下、正規化処理を、図19および図20の実施形態に適用した一実施形態について説明する。
【0112】
図21は、膜厚推定モデルの作成方法のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。図21に示すステップ9-1~ステップ9-4は、図6に示すステップ1-1~ステップ1-4と同じであるので、それらの重複する説明を省略する。
【0113】
ステップ9-5では、処理システム49は、サンプルからの反射光の複数の生スペクトルに正規化処理を実行する。したがって、本実施形態のサンプルスペクトルは、正規化されたスペクトルである。正規化処理は、図15乃至図17を参照して説明した実施形態と同じようにして実行される。
【0114】
ステップ9-6では、処理システム49は、複数のサンプルスペクトルの特徴をそれぞれ表す複数のサンプル特徴量を決定する。各サンプル特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、サンプル特徴量は、サンプルスペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、サンプル特徴量は、サンプルスペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0115】
ステップ9-7では、処理システム49は、ステップ9-2のサンプルの研磨中に生成された複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。より具体的には、処理システム49は、クラスタリングにより、複数のサンプルスペクトルを形状に従って複数のクラスに分類する。このステップ9-7は、複数のサンプル特徴量を決定する前に実行してもよく、または複数のサンプル特徴量を決定した後に実行してもよい。
【0116】
ステップ9-8では、処理システム49は、複数のサンプル特徴量と、複数のサンプルスペクトルが属するクラスを示す複数のクラスラベルを含む分類用訓練データを用いて機械学習を実行して分類モデルを作成する。
【0117】
ステップ9-9では、処理システム49は、上記複数のクラスラベルと、上記複数のサンプル特徴量と、上記複数のサンプルスペクトルにそれぞれ対応する複数の膜厚とを含む膜厚推定用訓練データを用いて機械学習を実行して膜厚推定モデルを作成する。
【0118】
次に、図21に示すフローチャートに従って作成された分類モデルおよび膜厚推定モデルを用いて、ワークピースWの膜厚をワークピースWの研磨中に推定する実施形態について、図22のフローチャートを参照して説明する。
【0119】
ステップ10-1では、ワークピースWを図1に示す研磨装置に搬送し、研磨装置によりワークピースWの研磨を開始する。ワークピースWの研磨中、処理システム49は、ワークピースWからの反射光のスペクトルを生成する。すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに、光源44は光学センサヘッド7を通じて光を研磨パッド2上のワークピースWに導き、ワークピースWからの反射光を光学センサヘッド7で受け、さらに反射光を分光器47に送る。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトル、すなわち測定スペクトルを生成する。
【0120】
ステップ10-2では、処理システム49は、測定スペクトルに対して正規化処理を実行する。したがって、ステップ10-2で得られた測定スペクトルは、正規化されたスペクトルである。正規化処理は、図15乃至図17を参照して説明した実施形態と同じようにして実行される。
ステップ10-3では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を決定する。測定スペクトルの特徴量は、図6に示す上記ステップ1-5と同様にして求められる。例えば、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルの山と谷の位置を示す数値の組である(図8参照)。他の例では、測定スペクトルの特徴量は、測定スペクトルにフーリエ変換を適用して得られたフーリエ解析スペクトルの山と谷の位置を表す数値の組であってもよい(図9参照)。
【0121】
ステップ10-4では、処理システム49は、測定スペクトルの特徴量を分類モデルに入力し、分類モデルから、測定スペクトルが属するクラスを示す複数の確信度の組を出力する。一例では、分類モデルから出力される確信度の組は、(0.1,0.1,0.8)である。
ステップ10-5では、処理システム49は、上記ステップ10-3で決定された測定スペクトルの特徴量と、上記ステップ10-4で算出された複数の確信度の組を膜厚推定モデルに入力し、ワークピースWの推定膜厚を膜厚推定モデルから出力する。
【0122】
ステップ10-6では、処理システム49は、上記ステップ10-5で得られた推定膜厚に対して平滑化処理(例えば、移動平均処理)を実行する。このステップ10-6は省略してもよい。
ステップ10-7では、研磨制御部9(図1参照)は、推定膜厚が所定の目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
ステップ10-8では、研磨制御部9は、ワークピースWの研磨を終了させる。
【0123】
今まで説明してきた各実施形態のフローチャートにおけるステップは、処理システム49によって実行される。すなわち、処理システム49は、記憶装置40aに電気的に格納されたプログラムに含まれる命令に従って動作し、上記実施形態における上記ステップを実行する。これらステップを処理システム49に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納され、記録媒体を介して処理システム49に提供される。または、プログラムは、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して処理システム49に入力されてもよい。
【0124】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0125】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
7 光学センサヘッド
9 研磨制御部
10 ヘッドシャフト
17 連結手段
18 研磨ヘッドモータ
31 投光用光ファイバーケーブル
32 受光用光ファイバーケーブル
40 光学式膜厚測定装置
44 光源
47 分光器
48 光検出器
49 処理システム
49a 記憶装置
49b 演算装置
50A 第1の孔
50B 第2の孔
51 通孔
60 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23