(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】内視鏡用マウスピース及びドレープアダプタ並びに内視鏡用マウスピースの廃棄処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/01 20060101AFI20240902BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B1/01 514
A61B1/00 652
A61B1/00 632
(21)【出願番号】P 2022518130
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021017049
(87)【国際公開番号】W WO2021221121
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020081472
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出島 工
(72)【発明者】
【氏名】大木 友博
(72)【発明者】
【氏名】鳥澤 信幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-254676(JP,A)
【文献】特開2000-325302(JP,A)
【文献】特開2009-254631(JP,A)
【文献】特開平07-163516(JP,A)
【文献】実開昭63-195804(JP,U)
【文献】特開2009-057657(JP,A)
【文献】特開2006-051091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、前記被検体の口にくわえられるマウスピース本体であり、前記挿入部が挿通される管路を有し、前記被検体の口にくわえられた場合、前記管路における、前記被検体の体外に位置する側の端に設けられた開口部を有するマウスピース本体と、
前記マウスピース本体の外周縁から突出して前記マウスピース本体と一体に設けられ、前記被検体の少なくとも一部を覆うドレープと、
前記開口部に設けられ、前記管路における流体の通過を抑制する流体抑制部材とを備え、
前記マウスピース本体は前記ドレープの略中央部に設けられており、前記ドレープは前記被
検体の少なくとも顔全体を覆う内視鏡用マウスピース。
【請求項2】
前記マウスピース本体と一体に設けられた羽根部を有し、
前記ドレープは、前記羽根部に対して、前記体外に対面する側に位置する請求項1記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項3】
前記流体抑制部材は、
前記挿入部の挿入方向と平行な第1スリットが形成された第1多孔質部材と、
前記挿入部の挿入方向と平行、かつ前記第1スリットと交差する第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有し、
前記開口部に取り付けられる請求項1又は2に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項4】
前記流体抑制部材は、
少なくとも3本の第1スリットが形成された第1多孔質部材と、
少なくとも3本の第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有し、
前記開口部に取り付けられる請求項1又は2に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項5】
前記第1多孔質部材に形成された前記第1スリットは3本であり、
前記第2多孔質部材に形成された前記第2スリットは3本である請求項4に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項6】
前記第1多孔質部材及び前記第2多孔質部材は、長方形の外形を有し、
前記第1スリットのうち1本は前記第1多孔質部材の1辺と直交して配され、
前記第2スリットのうち1本は前記第2多孔質部材の1辺と直交して配され、
前記第1多孔質部材及び前記第2多孔質部材は、前記第1スリットに対して挿入方向と平行な中心軸回りに180°回転させた位置に前記第2スリットが配された状態で前記開口部に取り付けられる請求項5に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項7】
前記流体抑制部材は、
前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材とが積層された状態で前記開口部に取り付けられる請求項3ないし6のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項8】
前記流体抑制部材は、
前記挿入部が挿通されていない状態において、前記管路の気密性を維持するダックビル弁と、
前記挿入部の外径に合わせた内径の貫通孔を有し、前記挿入部が挿通されている状態において、前記管路の気密性を維持する薄板部材とを有し、
前記ダックビル弁と前記薄板部材とが積層された状態で前記開口部に取り付けられている請求項1又は2に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項9】
前記ドレープは、シート状に形成され、不使用状態の場合、折り畳まれており、
折り畳まれた状態の前記ドレープに貼着され、前記ドレープが折り畳まれた状態を保持する保持部材を備える請求項1ないし8のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項10】
前記保持部材は、粘着テープ、係止部材、拘束部材及び被覆部材の少なくとも一種である、請求項9記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項11】
前記羽根部は、前記挿入部の挿入方向と交差する方向に延在する1又は複数の羽根部である請求項2、又は請求項2を引用する請求項3ないし10のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項12】
前記羽根部は、前記管路を中心とする放射状に延在する1又は複数の羽根部である請求項2、又は請求項2を引用する請求項3ないし10のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項13】
前記羽根部は、前記マウスピース本体が前記被検体にくわえられる際の持ち手を兼ねる請求項2、又は請求項2を引用する請求項3ないし12のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項14】
前記マウスピース本体は、前記被検体の頭部に巻かれる固定用バンドの端部を取り付けるバンド取付部が一体に設けられている請求項2、又は請求項2を引用する請求項3ないし13のいずれか1項に記載の内視鏡用マウスピース。
【請求項15】
被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、前記被検体の口にくわえられ、前記挿入部が挿通される管路を有する内視鏡用マウスピースに取り付けられる流体抑制部材であり、前記内視鏡用マウスピースが前記被検体の口にくわえられた場合、前記管路における、前記被検体の体外に位置する側の端に取り付けられる流体抑制部材と、
前記流体抑制部材と一体に設けられ、前記被検体の少なくとも一部を覆うドレープとを備え、
前記ドレープの略中央部には前記
流体抑制部材が設けられており、前記ドレープは少なくとも顔全体を覆うドレープアダプタ。
【請求項16】
前記流体抑制部材は、
前記挿入部の挿入方向と平行な第1スリットが形成された第1多孔質部材と、
前記挿入部の挿入方向と平行、かつ前記第1スリットと交差する第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有する請求項15に記載のドレープアダプタ。
【請求項17】
前記流体抑制部材は、
少なくとも3本の第1スリットが形成された第1多孔質部材と、
少なくとも3本の第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有する請求項15に記載のドレープアダプタ。
【請求項18】
前記第1多孔質部材に形成された前記第1スリットは3本であり、
前記第2多孔質部材に形成された前記第2スリットは3本である請求項17に記載のドレープアダプタ。
【請求項19】
前記第1多孔質部材及び前記第2多孔質部材は、長方形の外形を有し、
前記第1スリットのうち1本は前記第1多孔質部材の1辺と直交して配され、
前記第2スリットのうち1本は前記第2多孔質部材の1辺と直交して配され、
前記第1多孔質部材及び前記第2多孔質部材は、前記第1スリットに対して挿入方向と平行な中心軸回りに180°回転させた位置に前記第2スリットが配された状態で開口部に取り付けられる請求項18に記載のドレープアダプタ。
【請求項20】
前記流体抑制部材は、
前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材とが積層された状態で一体に設けられている請求項16ないし19のいずれか1項に記載のドレープアダプタ。
【請求項21】
前記流体抑制部材は、
前記挿入部が挿通されていない状態において、前記管路の気密性を維持するダックビル弁と、
前記挿入部の外径に合わせた内径の貫通孔を有し、前記挿入部が挿通されている状態において、前記管路の気密性を維持する薄板部材とを有し、
前記ダックビル弁と
前記薄板部材とが積層された状態で一体に設けられている請求項15に記載のドレープアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部を経口で挿入する際に患者の口に装着されて使用される内視鏡用マウスピース及びドレープアダプタ並びに内視鏡用マウスピースの廃棄処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、挿入部を口から挿入する経口タイプの内視鏡がよく知られている。内視鏡の挿入部を口から挿入する際、内視鏡用マウスピースを使用する。内視鏡用マウスピースは、内視鏡の挿入部を挿通するための管路を有している。内視鏡用マウスピースは、一部を被検体である患者の口腔内に挿入し、その挿入された部分を患者がくわえることによって患者の口に装着される。
【0003】
患者が内視鏡用マウスピースの一部をくわえることによって、管路を通して内視鏡の挿入部を容易に体内に導入することが可能になるとともに、患者の歯によって挿入部が破損することを防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療分野では、感染症に対してさらなる予防対策を講じることが望まれている。特に感染症患者の咳やくしゃみによる飛沫を吸い込むことによって生じる飛沫感染を防ぐ対策が重要となっている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような内視鏡用マウスピースを使用した場合、患者の口は、内視鏡用マウスピースをくわえているため、閉じることができない。よって、内視鏡用マウスピースを使用し、内視鏡の挿入部を口から挿入する際、患者が咳やくしゃみをすると、患者の口から排出される飛沫を、患者の周囲にいる者が吸い込む可能性がある。
【0007】
本発明は、内視鏡の挿入部を口から挿入する際、被検体の口から排出される飛沫の拡散を防止することができる内視鏡用マウスピース及びドレープアダプタ並びに内視鏡用マウスピースの廃棄処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マウスピース本体と、ドレープと、流体抑制部材とを備える。マウスピース本体は、被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、被検体の口にくわえられるマウスピース本体であり、挿入部が挿通される管路を有し、前記被検体の口にくわえられた場合、管路における、被検体の体外に位置する側の端に設けられた開口部を有する。ドレープは、マウスピース本体の外周縁から突出してマウスピース本体と一体に設けられ、被検体の少なくとも一部を覆う。流体抑制部材は、開口部に設けられ、管路における流体の通過を抑制する。マウスピース本体はドレープの略中央部に設けられており、ドレープは少なくとも顔全体を覆う。
【0009】
マウスピース本体と一体に設けられた羽根部を有し、ドレープは、羽根部に対して、体外に対面する側に位置することが好ましい。
【0010】
流体抑制部材は、挿入部の挿入方向と平行な第1スリットが形成された第1多孔質部材と、挿入部の挿入方向と平行、かつ第1スリットと交差する第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有し、開口部に取り付けられることが好ましい。
【0011】
流体抑制部材は、少なくとも3本の第1スリットが形成された第1多孔質部材と、少なくとも3本の第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有し、開口部に取り付けられることが好ましい。
【0012】
第1多孔質部材に形成された第1スリットは3本であり、第2多孔質部材に形成された第2スリットは3本であることが好ましい。第1多孔質部材及び第2多孔質部材は、長方形の外形を有し、第1スリットのうち1本は第1多孔質部材の1辺と直交して配され、第2スリットのうち1本は第2多孔質部材の1辺と直交して配され、第1多孔質部材及び第2多孔質部材は、第1スリットに対して挿入方向と平行な中心軸回りに180°回転させた位置に第2スリットが配された状態で開口部に取り付けられることがさらに好ましい。流体抑制部材は、第1多孔質部材と第2多孔質部材とが積層された状態で開口部に取り付けられることが好ましい。
【0013】
流体抑制部材は、挿入部が挿通されていない状態において、管路の気密性を維持するダックビル弁と、挿入部の外径に合わせた内径の貫通孔を有し、挿入部が挿通されている状態において、管路の気密性を維持する薄板部材とを有し、ダックビル弁と薄板部材とが積層された状態で開口部に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
ドレープは、シート状に形成され、不使用状態の場合、折り畳まれており、折り畳まれた状態のドレープに貼着され、ドレープが折り畳まれた状態を保持する保持部材を備えることが好ましい。保持部材は、粘着テープ、係止部材、拘束部材及び被覆部材の少なくとも一種であることが好ましい。
【0015】
羽根部は、挿入部の挿入方向と交差する方向に延在する1又は複数の羽根部であること
が好ましい。または、羽根部は、管路を中心とする放射状に延在する1又は複数の羽根部
であることが好ましい。
【0016】
羽根部は、マウスピース本体が被検体にくわえられる際の持ち手を兼ねることが好ましい。マウスピース本体は、被検体の頭部に巻かれる固定用バンドの端部を取り付けるバンド取付部が一体に設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明のドレープアダプタは、流体抑制部材と、ドレープとを備える。流体抑制部材は、被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、前記被検体の口にくわえられ、挿入部が挿通される管路を有する内視鏡用マウスピースに取り付けられる流体抑制部材であり、内視鏡用マウスピースが被検体の口にくわえられた場合、管路における、被検体の体外に位置する側の端に取り付けられる。ドレープは、流体抑制部材と一体に設けられ、被検体の少なくとも一部を覆う。ドレープの略中央部には流体抑制部材が設けられており、ドレープは少なくとも顔全体を覆う。
【0018】
流体抑制部材は、挿入部の挿入方向と平行な第1スリットが形成された第1多孔質部材と、挿入部の挿入方向と平行、かつ第1スリットと交差する第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有することが好ましい。
【0019】
流体抑制部材は、少なくとも3本の第1スリットが形成された第1多孔質部材と、少なくとも3本の第2スリットが形成された第2多孔質部材とを有することが好ましい。
【0020】
第1多孔質部材に形成された第1スリットは3本であり、第2多孔質部材に形成された第2スリットは3本であることが好ましい。第1多孔質部材及び第2多孔質部材は、長方形の外形を有し、第1スリットのうち1本は第1多孔質部材の1辺と直交して配され、第2スリットのうち1本は第2多孔質部材の1辺と直交して配され、第1多孔質部材及び第2多孔質部材は、第1スリットに対して挿入方向と平行な中心軸回りに180°回転させた位置に第2スリットが配された状態で開口部に取り付けられることがさらに好ましい。流体抑制部材は、第1多孔質部材と第2多孔質部材とが積層された状態で一体に設けられていることが好ましい。
【0021】
流体抑制部材は、挿入部が挿通されていない状態において、管路の気密性を維持するダックビル弁と、挿入部の外径に合わせた内径の貫通孔を有し、挿入部が挿通されている状態において、管路の気密性を維持する薄板部材とを有し、ダックビル弁と及び薄板部材とが積層された状態で一体に設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明の内視鏡用マウスピースの廃棄処理方法は、マウスピース本体と、ドレープとを備える内視鏡用マウスピースを用いた内視鏡用マウスピースの処理方法であり、挿入部を被検体から抜去した後、ドレープとともに被検体の口から抜去して廃棄される。マウスピース本体は、被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、被検体の口にくわえられる。ドレープは、マウスピース本体と一体に設けられ、被検体の少なくとも一部を覆う。
【0023】
本発明の内視鏡用マウスピースの廃棄処理方法は、内視鏡用マウスピースと、ドレープとを用いた内視鏡用マウスピースの処理方法であり、挿入部を被検体から抜去した後、ドレープとともに被検体の口から抜去して廃棄される。内視鏡用マウスピースは、被検体に対し経口で内視鏡の挿入部を挿入する際、被検体の口にくわえられる。ドレープは、内視鏡用マウスピースと別体で設けられ、被検体の少なくとも一部を覆う。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内視鏡の挿入部を口から挿入する際、被検体の口から排出される飛沫の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】経口タイプの内視鏡を用いた内視鏡検査を示す概略図である。
【
図3】不使用状態の内視鏡用マウスピースの斜視図である。
【
図4】内視鏡用マウスピースの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】内視鏡用マウスピースの構成を示す断面図である。
【
図8】密着部材に挿入部が挿入された状態を説明する説明図である。
【
図9】ドレープを前後方向に折り畳む方法を説明する説明図である。
【
図10】ドレープを長尺方向に折り畳む方法を説明する説明図である。
【
図11】内視鏡用マウスピースを患者の口に装着する時の動作について説明する説明図である。
【
図12】バンド取付部に固定用バンドの端部を取り付ける動作について説明する説明図である。
【
図13】内視鏡用マウスピースを口に装着した状態を示す説明図である。
【
図14】第2実施形態における密着部材の構成を示す斜視図である。
【
図15】第2実施形態における内視鏡用マウスピースの要部断面図である。
【
図16】第3実施形態におけるドレープアダプタを説明する説明図である。
【
図17】ドレープアダプタの構成を示す分解斜視図である。
【
図19】内視鏡用マウスピースの第1変形例である。
【
図20】内視鏡用マウスピースの第2変形例である。
【
図21】内視鏡用マウスピースの第3変形例である。
【
図22】第3変形例を構成する流体抑制部材の構成である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明の内視鏡用マウスピース10は、経口タイプの内視鏡2を用いた内視鏡検査に使用される。内視鏡2は、例えば気管に挿入する気管支鏡であり、被検体である患者1の気管内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部に連設された操作部4と、操作部4に接続されたユニバーサルコード5とを備えている。ユニバーサルコード5は、コネクタ(図示せず)を介して、プロセッサ装置や光源装置などの外部装置に接続される。
【0027】
挿入部3の先端面には、図示は省略するが観察窓や照明窓が設けられている。観察窓の奥にはイメージセンサ(図示せず)などが配置され、照明窓の奥には光ファイバケーブル(図示せず)が配置されている。イメージセンサの信号線や光ファイバケーブルは、挿入部3、操作部4、及びユニバーサルコード5内を通って、プロセッサ装置、光源装置にそれぞれ接続される。プロセッサ装置は、イメージセンサにより撮像した内視鏡画像に画像処理等を施してモニタに表示させる。
【0028】
患者1の口Mから内視鏡2の挿入部3を挿入する際、患者1の口には内視鏡用マウスピース10が装着される。
【0029】
図2に示すように、内視鏡用マウスピース10は、マウスピース本体11と、ドレープ12と、流体抑制部材13と、抜け止め部材14と、粘着テープ15とを備える。ドレープ12は、厚みが小さく、四角形のシート状に形成されており、例えば、透明なビニールシートから形成されている。ドレープ12は、被検体の少なくとも一部、例えば患者1の頭部H(
図1参照)を覆い隠す面積を有している。
【0030】
図3に示すように、ドレープ12は、不使用状態の場合、折り畳まれ、端部に保持部材としての粘着テープ15が貼着される。粘着テープ15が貼着されることによりドレープ12は、折り畳まれた状態が保持される。なお、ドレープ12の折り畳み方法、粘着テープ15を貼着する方法については後述する。
【0031】
図4及び
図5に示すように、マウスピース本体11は、筒部16と、枠部17と、一対の羽根部18とが一体に設けられている。マウスピース本体11は、患者1の口Mに装着しやすいように、例えば軟質樹脂などの軟質素材から形成されている。筒部16は、患者1に対し経口で内視鏡2の挿入部3を挿入する際、患者1の口Mにくわえられる部分である。筒部16は、口Mにくわえやすいように、例えば断面が楕円状に形成されている。筒部16における外径の大きい方向と、口Mの内径の大きい方向、すなわち、患者1の左右方向Xと平行に内視鏡用マウスピース10が装着される。以下では、筒部16が口Mにくわえられた場合の患者1の左右方向Xを、内視鏡用マウスピース10における左右方向Xとして説明する。また、後述する挿入方向Zは、管路19の軸方向と平行、かつ左右方向Xと直交する方向であり、前後方向Yは、左右方向X及び挿入方向Zと直交する方向である。
【0032】
枠部17は、筒部16に連設され、四角形の枠状に形成されている。枠部17は、筒部16が口Mにくわえられた場合、患者1の体外に位置する。筒部16及び枠部17の内部には、挿入部3が挿通される管路19を有する。管路19は、断面が円または楕円形状の貫通孔である。
【0033】
管路19は、筒部16が口Mにくわえられた場合、患者1の体外に位置する側の端に設けられた開口部21を有する。開口部21は、枠部17に合わせた長方形の開口部である。開口部21の4隅には、後述する嵌合ピン26が嵌合する嵌合孔21Aが形成されている。開口部21には、流体抑制部材13が設けられている。流体抑制部材13は、筒部16が口Mにくわえられた場合、患者1の体内に通じる管路19における流体の通過を抑制する。具体的には、流体抑制部材13は、呼吸に必要な空気などの気体が通過可能とし、かつ飛沫等の液体を遮断する。
【0034】
一対の羽根部18は、挿入方向Zと交差する方向に延在し、具体的には、枠部17の左右両側端部から左右方向Xに延び、枠部17と接する位置から先端部に向かって徐々に幅が小さくなる台形状に形成されている。一対の羽根部18は、筒部16が口Mにくわえられた場合、患者1の頭部Hに近接する方向に湾曲した湾曲形状を有する。また、一対の羽根部18は、後述するように、マウスピース本体11が患者1の口Mにくわえられる際の持ち手を兼ねる。
【0035】
図6(A)に示すように、流体抑制部材13は、第1多孔質部材23と、第2多孔質部材24とを有する。第1多孔質部材23は、柔軟性を有する多孔質材料を長方形の板状に形成したものである。第1多孔質部材23は、第1スリット23Aを有する。第1多孔質部材23は、開口部21に収納される大きさに形成されている。第1スリット23Aは、左右方向Xと平行、かつ挿入部3の挿入方向Zと平行に形成されている。また、第1多孔質部材23は、4隅付近の位置、かつ第1スリット23Aと干渉しない位置に嵌合孔23Bが形成されている。嵌合孔23Bは、マウスピース本体11の嵌合孔21Aと対応する位置に配されている。
【0036】
図6(B)に示すように、第2多孔質部材24は、柔軟性を有する多孔質材料を円板状に形成したものである。第2多孔質部材24は、第2スリット24Aを有する。第2多孔質部材24は、管路19に収納される大きさに形成されている。第2スリット24Aは、挿入方向Zと平行、かつ第1スリット23Aと交差する方向に形成されている。さらに詳しくは、第2スリット24Aは、挿入方向Zと平行、かつ前後方向Yと平行に形成されている。
【0037】
第1多孔質部材23及び第2多孔質部材24を形成する多孔質材料は、呼吸に必要な空気などの気体が通過可能とし、かつ飛沫等の液体を遮断する孔径及び構造を有する多孔質材料であり、例えば樹脂を発泡成形した合成スポンジ、又は海綿体などの天然スポンジを用いる。第1多孔質部材23と第2多孔質部材24とを別々に形成し、第1スリット23Aと第2スリット24Aとが交差した状態で、接着して一体にしてもよい。
【0038】
図7に示すように、流体抑制部材13は、第1多孔質部材23が開口部21に収納され、第2多孔質部材24が管路19に収納され、かつ抜け止め部材14により、挿入方向Zの位置が規制される。これにより、第1多孔質部材23と第2多孔質部材24とが積層された状態で開口部21に取り付けられる。
【0039】
図8に示すように、流体抑制部材13を通して、挿入部3が管路19に挿入された場合、第1スリット23A、及び第2スリット24Aに挿入部3の外周面が密着しながら、挿入部3が挿入方向Zに沿って移動する。この際、第1スリット23A、及び第2スリット24Aの両端部には隙間23G、24Gが形成されるが、上述したように第1スリット23Aと第2スリット24Aとが交差しているので、隙間23G、24Gの位置は重ならない。
【0040】
抜け止め部材14は、薄板形状に形成されている。抜け止め部材14の外形状は、枠部17及び一対の羽根部18に合わせた形状とされている。抜け止め部材14は、例えば軟質樹脂などの軟質素材から形成されている。
【0041】
抜け止め部材14は、開口部25と、4つの嵌合ピン26(
図5参照)と、バンド取付部27が形成されている。開口部25は、マウスピース本体11の開口部21と対面する位置に配されている。嵌合ピン26は、開口部25の周囲、かつ開口部21と対面する位置から突出している。嵌合ピン26は、マウスピース本体11の嵌合孔21Aと嵌合する。これにより、マウスピース本体11と抜け止め部材14とが結合する。バンド取付部27は、抜け止め部材14の両側端部に一体に設けられ、患者1の頭部Hに巻かれる固定用バンド31の端部が取り付けられる。バンド取付部27は、T字状に形成されている。
【0042】
図4に示すように、ドレープ12は、流体抑制部材13の外形に合わせた開口部12Aが形成されている。これにより、ドレープ12が流体抑制部材13を塞ぐことがないため、流体抑制部材13を通して、挿入部3を管路19に挿入することができる。なお、
図4におけるドレープ12は、図示の都合上、開口部12Aの周囲(2点鎖線で囲む範囲)のみを切り取って図示しており、実際の大きさは、2点鎖線で囲む範囲よりも大きい。
【0043】
図7に示すように、抜け止め部材14は、流体抑制部材13を開口部21及び管路19に収納した状態で、マウスピース本体11との間に、ドレープ12を挟み込む。この際、抜け止め部材14の嵌合ピン26を、流体抑制部材13の嵌合孔23B、及びマウスピース本体11の嵌合孔21Aに嵌合させることで、抜け止め部材14をマウスピース本体11に固着させるとともに、流体抑制部材13を開口部21に取り付けることができる。流体抑制部材13は、挿入方向Zにおいて、抜け止め部材14により位置を規制されているため、開口部21から離脱することがない。また、抜け止め部材14をマウスピース本体11に固着させることで、バンド取付部27がマウスピース本体11と一体となる。
【0044】
ドレープ12は、上述のようにマウスピース本体11と抜け止め部材14との間に挟まれて固定されている。これにより、ドレープ12は、筒部16が口Mにくわえられた場合、一対の羽根部18に対して、患者1の体外に対面する側に位置する。ドレープ12が患者1の頭部Hを覆い隠しても、患者1の頭部Hとドレープ12との間には、一対の羽根部18によって形成された空間が存在する。
【0045】
上述のように、マウスピース本体11と抜け止め部材14との間に挟まれたドレープ12は、マウスピース本体11の外周縁から突出してマウスピース本体11と一体に設けられている(
図2に示す状態)、一方、ドレープ12は、内視鏡用マウスピース10の不使用状態では、折り畳まれており、粘着テープ15により折り畳まれた状態が保持される(
図3に示す状態)。以下では、ドレープ12の折り畳み方法、粘着テープ15を貼着する方法について述べる。
【0046】
図9(A)に示すように、ドレープ12を折り畳む場合は、例えば、前後方向Yの一端からドレープ12を丸めていく、そして、中央に位置するマウスピース本体11の位置までドレープ12を丸めた後、前後方向Yの他端からもドレープ12を丸めていく。これにより、
図9(B)に示すように、ドレープ12は、長尺帯状となる。
【0047】
次に、
図10(A)に示すように、長尺帯状となった一端からドレープ12を丸めるように折り畳んでいく。そして、中央に位置するマウスピース本体11の位置までドレープ12を丸めた後、長尺帯状の他端からもドレープ12を丸めていく。これにより、
図10(B)に示すように、ドレープ12は、小さく折り畳まれた状態となる。そして、マウスピース本体11からドレープ12の端部に粘着テープ15が貼着される。粘着テープ15の端部15Aは、ドレープ12に接着せず、ドレープ12の外形から突出させる。この場合、例えば、予め端部15Aを折り返して粘着面同士を貼り付けることにより、粘着面が露呈しない部分を粘着テープ15に形成しておく。
【0048】
以上のように、粘着テープ15を貼着することで、ドレープ12が折り畳まれた状態が保持される(
図3に示す状態)。また、端部15Aをドレープ12に接着しないことで、内視鏡用マウスピース10を使用する際、端部15Aを把持して粘着テープ15を剥がしやすくなっている。
【0049】
一対の羽根部18は、上述したように、患者1の頭部Hに近接する方向に湾曲した湾曲形状を有する(
図11参照)。これにより、一対の羽根部18は、マウスピース本体11が患者1の口Mにくわえられる際の持ち手を兼ねることができる。なお、本実施形態では、抜け止め部材14は、一対の羽根部18と同じ方向に湾曲している。このため、一対の羽根部18とともに、抜け止め部材14、及び折り畳まれたドレープ12が持ち手としてユーザに把持される。
【0050】
ユーザである医師が、内視鏡用マウスピース10を患者1の口Mに装着し、管路19を通して挿入部3を挿入するときの動作について説明する。
図11に示すように、先ず、医師は、ドレープ12及抜け止め部材14とともに、一対の羽根部18を把持して患者1の口Mに筒部16をくわえさせる。
【0051】
内視鏡用マウスピース10を口Mに装着した後、医師は、マウスピース本体11及びドレープ12から粘着テープ15を剥がす。粘着テープ15が剥がされることにより、ドレープ12は、折り畳まれた状態からもとの状態、すなわち、拡げた状態にすることできる。
そして、内視鏡用マウスピース10を口Mに装着し、ドレープ12を拡げた状態にすることで、患者1の頭部Hをドレープ12で覆い隠すことができる。
【0052】
次に、医師は、バンド取付部27に、固定用バンド31の端部を取り付ける。
図12に示すように、固定用バンド31の端部には、複数の取付孔31Aが形成されている。固定用バンド31は、例えばゴムなどの軟質素材から形成されており、取付孔31Aにバンド取付部27を通して固定用バンド31の端部を取り付けることができる。
【0053】
図13に示すように、固定用バンド31の両端部をバンド取付部27に取り付けることで、固定用バンド31を患者1の頭部Hに巻き付けて、内視鏡用マウスピース10を固定することができる。これにより、内視鏡用マウスピース10を口Mに完全に装着することができる。バンド取付部27を通す取付孔31Aの位置を変えることで、患者1の頭部Hに巻き付ける固定用バンド31の長さを調節することができる。また、バンド取付部27は、ドレープ12よりも外側に位置するため、固定用バンド31は、ドレープ12とともに患者1の頭部Hに巻き付けられる。
【0054】
以上のように、内視鏡用マウスピース10を口Mに装着し、患者1の頭部Hをドレープ12で覆い隠した後、医師は、内視鏡用マウスピース10の管路19を通して、内視鏡2の挿入部3を口Mから患者1の体内に挿入する。挿入部3を口Mから挿入する際、患者1が咳やくしゃみをしても、ドレープ12が患者1の頭部Hを覆い隠しているため、患者1の口Mから排出される飛沫の拡散をドレープ12が防ぐことができる。よって、患者1の口Mから排出される飛沫を、患者の周囲にいる者が吸い込むことを抑制することができるため、飛沫感染を確実に防ぐことができる。
【0055】
また、ドレープ12が患者1の頭部Hを覆い隠しても、患者1の頭部Hとドレープ12との間には、一対の羽根部18によって形成された空間が存在するため、患者1の呼吸を妨げることがない。
【0056】
また、挿入部3は、流体抑制部材13を通して管路19に挿入されるが、上述したように第1スリット23Aと第2スリット24Aとが交差しているので、隙間23G、24Gの位置は重ならない。すなわち、流体抑制部材13を通して挿入部3が挿入されても、あるいは、挿入部3が挿入されていなくても、流体の通過を抑制することができ、流体抑制部材13から飛沫が漏れることを防ぐことができる。
【0057】
内視鏡用マウスピース10は、挿入部3を患者1の口から抜去した後、ドレープ12とともに患者1の口から抜去して廃棄されるディスポーザブルタイプのものである。これにより、内視鏡用マウスピース10は、患者1の口から抜去した後、ドレープ12に包んで廃棄することができるので、付着した患者1の飛沫が拡散することなく内視鏡用マウスピ
ース10を廃棄することができる。
【0058】
なお、上記第1実施形態では、流体抑制部材13を構成する第1多孔質部材23と第2多孔質部材24とが積層された状態で、マウスピース本体11の開口部21に取り付けられているが、これに限らず、流体抑制部材13として、第1多孔質部材23と第2多孔質部材24とを一体に形成し、この一体に形成した流体抑制部材13をマウスピース本体11の開口部21に取り付けてもよい。また、上記第1実施形態では、抜け止め部材14により、マウスピース本体11に対する流体抑制部材13の位置を規制しているが、本発明は、これに限らず、流体抑制部材13をマウスピース本体11に接着するなどして固定してもよい。
【0059】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、管路19における流体の通過を抑制する流体抑制部材13として、第1スリット23Aと第2スリット24Aとが交差し、開口部21に取り付けられる第1多孔質部材23と第2多孔質部材24とから構成される例を示したが、本発明はこれに限らず、挿入部3が挿入されている状態、挿入されていない状態のいずれにもおいても流体の通過を抑制することができる構成であればよい。
図14においては、ダックビル弁42と、薄板部材43とを有する流体抑制部材41の構成を示している。
図15に示すように、流体抑制部材41は、ダックビル弁42と薄板部材43とが積層された状態で開口部21に取り付けられている。なお、流体抑制部材13を流体抑制部材41に代えたこと以外は、上記第1実施形態の内視鏡用マウスピース10と同様の構成であり、同様の部品等については同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
ダックビル弁42は、内視鏡用マウスピース等に用いる周知の構成であり、挿入部3が挿通されていない状態において、管路19の気密性を維持する。一方、薄板部材43は、挿入部3の外径に合わせた内径の貫通孔43Aを有している。薄板部材43は、挿入部3が挿通されている状態において、貫通孔43Aの内周面が挿入部3の外周面に密着する。すなわち、管路19における流体の通過を抑制する。以上の構成により、流体抑制部材41を通して挿入部3が挿入されても、あるいは、挿入部3が挿入されていなくても、流体の通過を抑制することができ、流体抑制部材41から飛沫が漏れることを防ぐことができる。また、上記第1実施形態と同様に、内視鏡用マウスピースは、患者1の口から抜去した後、ドレープ11に包んで廃棄することができるため、付着した患者1の飛沫が拡散す
ることなく廃棄することができる。
【0061】
[第3実施形態]
上記第1及び第2実施形態では、マウスピース本体11とドレープ12とを一体に設け、患者の口に装着された場合、ドレープ12が飛沫の拡散を防止する構成としているが、これ限らず、内視鏡用マウスピースと別体のドレープアダプタを設け、内視鏡用マウスピースにドレープアダプタを固着する構成にしてもよい。
図16に示すように、ドレープアダプタ51は、内視鏡用マウスピース52に固着して使用される。なお、この場合、上記第1実施形態と同様のバンド取付部27を内視鏡用マウスピース52に設けることが好ましい。内視鏡用マウスピース52の構成は、一対の羽根部18と一体にバンド取付部27を設けたこと以外は、上記第1及び第2実施形態のマウスピース本体11と同様であり、各部の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
ドレープアダプタ51は、流体抑制部材53と、枠部材54と、ドレープ55から構成される。流体抑制部材53は、第1多孔質部材56と、第2多孔質部材57とを有する。
図17に示すように、第1多孔質部材56は、円板状に形成され、第1スリット56Aを有する。第1スリット56Aは、左右方向Xと平行、かつ挿入方向Zと平行に形成されている。
【0063】
第2多孔質部材57は、円板状に形成され、第2スリット57Aを有する。第2スリット57Aは、挿入方向Zと平行、かつ第1スリット56Aと交差する方向に形成されている。さらに詳しくは、第2スリット57Aは、挿入方向Zと平行、かつ前後方向Yと平行に形成されている。
【0064】
枠部材54は、第1枠部材54A及び第2枠部材54Bとから構成される。第1枠部材54A及び第2枠部材54Bは、第1多孔質部材56及び第2多孔質部材57の外周面に嵌合するとともに、挿入方向Zにおいて第1多孔質部材56及び第2多孔質部材57を挟み込む。
【0065】
ドレープ55は、上記第1及び第2実施形態のドレープ12と同様に、厚みが小さく、四角形のシート状に形成されており、例えば、透明なビニールシートから形成されている。ドレープ55
は、流体抑制部材53の外形に合わせた開口部55Aが形成されている。これにより、ドレープ55が流体抑制部材53を塞ぐことがないため、流体抑制部材53を通して、挿入部3を管路19に挿入することができる。なお、
図17及び
図18におけるドレープ55は、図示の都合上、開口部55Aの周囲(2点鎖線で囲む範囲)のみを切り取って図示しており、実際の大きさは、2点鎖線で囲む範囲よりも大きい。
【0066】
第1枠部材54A及び第2枠部材54Bは、第1多孔質部材56及び第2多孔質部材57の外周面に嵌合した状態で、ドレープ55を挟み込む(
図18に示す状態)。これにより、第1多孔質部材56と第2多孔質部材57とが積層された状態一体に設けられるとともに、ドレープ55も一体に設ける。この場合、例えば、接着または圧着により第1枠部材54A及び第2枠部材54Bを互いに固着する。なお、これに限らず、第1枠部材54A及び第2枠部材54Bの一方に嵌合ピンを、他方に嵌合孔を形成して、これらを嵌合させることにより固着してもよい。
【0067】
なお、流体抑制部材53を構成する第1多孔質部材56と第2多孔質部材57とが積層された状態で、枠部材54に取り付けられているが、これに限らず、流体抑制部材53として、第1多孔質部材56と第2多孔質部材57とを一体に形成し、この一体に形成した流体抑制部材53を枠部材54に取り付けてもよい。あるいは枠部材54を設けずに、一体に形成した流体抑制部材53の外周面にドレープ55を直接固着させてもよい。
【0068】
ドレープアダプタ51は、例えば、両面テープを介して、内視鏡用マウスピース52に固着される。この場合、枠部材54を内視鏡用マウスピース52に固着することが好ましい。流体抑制部材53は、筒部16が口Mにくわえられた場合、管路19における患者1の体外に位置する側の端に配される。ドレープ55は、筒部16が口Mにくわえられた場合、一対の羽根部18に対して、患者1の体外に対面する側に位置する。
【0069】
内視鏡用マウスピース52を患者1の口Mに装着した後、医師は、ドレープアダプタ51を、内視鏡用マウスピース52に固着する。ドレープアダプタ51を内視鏡用マウスピース52に固着し、ドレープ55を拡げた状態にすることで、患者1の頭部Hをドレープ55で覆い隠すことができる。
【0070】
以上のように、内視鏡用マウスピース52を口Mに装着し、患者1の頭部Hをドレープ55で覆い隠した後、医師は、内視鏡用マウスピース52の管路19を通して、内視鏡2の挿入部3を口Mから患者1の体内に挿入する。挿入部3を口Mから挿入する際、患者1が咳やくしゃみをしても、ドレープ55が患者1の頭部Hを覆い隠しているため、患者1の口Mから排出される飛沫の拡散をドレープ55が防ぐことができる。また、上記第1実施形態と同様に、流体抑制部材53が流体の通過を抑制することができ、流体抑制部材13から飛沫が漏れることを防ぐことができる。
【0071】
また、内視鏡用マウスピース52は、挿入部3を患者1の口から抜去した後、ドレープ55とともに患者1の口から抜去して廃棄されるディスポーザブルタイプのものである。これにより、上記第1及び第2実施形態と同様に、内視鏡用マウスピース52は、患者1の口から抜去した後、ドレープ55に包んで廃棄することができるので、付着した患者1
の飛沫が拡散することなく内視鏡用マウスピース52を廃棄することができる。
【0072】
上記第3実施形態では、ドレープアダプタ51を構成する流体抑制部材53として、第1多孔質部材56及び第2多孔質部材57とから構成される例を示したが、本発明はこれに限らず、上記第2実施形態と同様のダックビル弁42と、薄板部材43とを有する流体抑制部材41からドレープアダプタを構成してもよい。
【0073】
上記各実施形態では、マウスピース本体と一体に設けられた羽根部として、枠部17の左右両側端部から左右方向Xに延びる一対の羽根部18から構成される例を上げているが、これに限らず、マウスピース本体と一体に設けられた羽根部は、管路19を中心とする放射状に延在する構成でもよい。
図19に示す内視鏡用マウスピース61の第1変形例では、マウスピース本体11と一体に4つの羽根部62を設け、4つの羽根部62が管路19を中心とする放射状に延在する構成としている。また、この場合、抜け止め部材63も4つの羽根部62に合わせた形状としている。なお、羽根部62の個数は4に限らず、管路19を中心とする放射状に延在する複数の羽根部であればよい。
【0074】
また、羽根部を放射状に延在する別の変形例としては、
図20に示す第2変形例の内視鏡用マウスピース65のように、マウスピース本体11と一体に、円形状の羽根部66を設け、管路19を中心として羽根部66を配置する構成にしてもよい。また、この場合、抜け止め部材67も羽根部66に合わせた円形状としている。
【0075】
上記各実施形態では、流体抑制部材13、53を構成する第1多孔質部材23、56、及び第2多孔質部材24、57は、各1本ずつスリットが形成されているが、これに限るものではなく、例えば、各多孔質部材にそれぞれ3本以上のスリットを設けてもよい。
図21及び
図22に示す変形例では、流体抑制部材70は、第1多孔質部材71、及び第2多孔質部材72から構成され、3本のスリットをY字状に配置している。
【0076】
図21に示すように、流体抑制部材70は、上記第1実施形態の流体抑制部材13と同様にマウスピース本体11の開口部21に設けられている。流体抑制部材70は、第1多孔質部材71と、第2多孔質部材72とを有する。なお、上記第1実施形態の内視鏡用マウスピース10と同様の部品等については同じ符号を付して説明を省略する。
【0077】
図22に示すように、第1多孔質部材71は、柔軟性を有する多孔質材料を長方形の板状に形成したものである。第1多孔質部材71は、3本の第1スリット71A~71Cを有する。第1スリット71A~71Cは、Y字状に配される。さらに具体的には、第1スリット71A~71Cは、120°の等角度間隔で配され、第1多孔質部材71の中心で繋がっている。第1スリット71A~71Cのうち、1つの第1スリット71Aは、第1多孔質部材71の1つの辺と直交、すなわち、左右方向Xと直交し、前後方向Yと平行に配されている。
【0078】
第2多孔質部材72は、柔軟性を有する多孔質材料を長方形の板状に形成したものである。第2多孔質部材72は、3本の第2スリット72A~72Cを有する。具体的には、第2多孔質部材72は、第1多孔質部材71と同じものを挿入方向Zと平行な中心軸回りに180°回転させて配置したものであり、第2スリット72A~72Cは、第1スリット71A~71Cと同様に、120°の等角度間隔で配され、第2多孔質部材72の中心で繋がっている。これにより、第2スリット72A~72Cは、第1スリット71A~71Cに対して挿入方向Zと平行な中心軸回りに180°回転させた位置に配される。第2スリット72A~72Cのうち、1つの第2スリット72Aは、第2多孔質部材72の1つの辺と直交、すなわち左右方向Xと直交し、前後方向Yと平行に配されている。同じ多孔質部材を2つ使用することでコスト低減を図ることができる。また、第1多孔質部材71及び第2多孔質部材72を形成する多孔質材料は、上記各実施形態における多孔質部材を形成するものと同様である。
【0079】
図21に示すように、流体抑制部材70は、第1多孔質部材71及び第2多孔質部材72が開口部21に収納され、かつ抜け止め部材14により、挿入方向Zの位置が規制される。これにより、第1多孔質部材71と第2多孔質部材72とが積層された状態で開口部21に取り付けられる。なお、これに限らず、流体抑制部材70として、第1多孔質部材71と第2多孔質部材72とを一体に形成し、この一体に形成した流体抑制部材70をマウスピース本体11の開口部21に取り付けてもよい。また、抜け止め部材14を用いずに、流体抑制部材70をマウスピース本体11に接着するなどして固定してもよい。
【0080】
上述した流体抑制部材70をマウスピース本体11に設けることで、流体抑制部材70を通して、挿入部3が管路19に挿入された場合、第1スリット71A~71C、及び第2スリット72A~72Cに挿入部3の外周面が密着しながら、挿入部3が挿入方向Zに沿って移動する。この際、第1多孔質部材71と第2多孔質部材72にそれぞれ3本の第1スリット71A~71C、及び第2スリット72A~72Cを設けたことで、1本ずつのスリット23A、24Aを設けた上記実施形態の流体抑制部材13よりも小さい抵抗で挿入部3を挿入することが可能となり、さらに、直径3mm程度の小径の挿入部3から直径16mm程度の大径の挿入部3まで隙間なく、小さい抵抗で挿入することができる。これにより、密度の高い(空隙の少ない)多孔質材料から第1多孔質部材71と第2多孔質部材72を形成することが可能となり、飛沫の通過をさらに抑制することができる。
【0081】
また、1本ずつのスリット23A、24Aを設けた上記実施形態の流体抑制部材13では、挿入部3を挿入する際、第1多孔質部材23の中心を狙わないと、第2多孔質部材24のスリット24Aの位置からずれるため、挿通抵抗が大きくなるが、流体抑制部材70の場合、3本の第1スリット71A~71C、及び第2スリット72A~72Cが第1多孔質部材71と第2多孔質部材72の中心にガイドするため、挿入部3を挿入する際、中心を狙う必要が無い。
【0082】
図21及び
図22に示す変形例の流体抑制部材70では、第1多孔質部材71及び第2多孔質部材72にそれぞれ3本のスリットを設けたがこれに限らず、4本以上のスリットを設けてもよい。なお、4本以上のスリットを設けた場合も、これらのスリットは等角度間隔で配され、第1多孔質部材71及び第2多孔質部材
72の中心で繋がる配置にすることが好ましい。
【0083】
また、
図21及び
図22に示す変形例では、流体抑制部材70をマウスピース本体11に設ける例を上げたが、これに限らず、上記第3実施形態におけるドレープアダプタ51に用いてもよい。なお、この場合、流体抑制部材53を流体抑制部材70に代えたこと以外は、上記第3実施形態のドレープアダプタ51と同様の構成である。
【0084】
上記各実施形態では、ドレープ12、55が折り畳まれた状態を保持する保持部材として粘着テープ15を例示しているが、本発明はこれに限らず、保持部材は、係止部材、拘束部材及び被覆部材のいずれか1種でもよい。保持部材としての係止部材は、例えば、係止爪と係止孔からなる係止構造、衣服に用いるようなボタンとボタン穴、雄ボタンと雌ボタンとが嵌合する嵌合構造などにより、ドレープ12、55の少なくとも一部を係止する構成が好ましい。また、保持部材としての拘束部材は、折り畳まれた状態のドレープ12、55の周囲を拘束する紙テープや輪ゴムなどが好ましい。また、保持部材としての被覆部材は、折り畳まれた状態のドレープ12、55全体を覆うような袋状のものが好ましい。
【0085】
また、上記各実施形態では、ドレープ12、55をビニールシートから形成する例を上げているが、これに限らず、被検体の少なくとも一部を覆い隠すシート状の部材であればよく、例えば、紙、布などから形成してもよい。また、上記各実施形態では、内視鏡の一例として気管支鏡を上げているが、これに限らず、経口タイプの内視鏡であればよく、例えば上部消化管内視鏡でもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 患者
2 内視鏡
3 挿入部
4 操作部
5 ユニバーサルコード
10 内視鏡用マウスピース
11 マウスピース本体
12 ドレープ
12A 開口部
13 流体抑制部材
14 抜け止め部材
15 粘着テープ
15A 端部
16 筒部
17 枠部
18 羽根部
19 管路
21 開口部
21A 嵌合孔
23 第1多孔質部材
23A 第1スリット
23B 嵌合孔
23G 隙間
24 第2多孔質部材
24A 第2スリット
24G 隙間
25 開口部
26 嵌合ピン
27 バンド取付部
31 固定用バンド
31A 取付孔
41 流体抑制部材
42 ダックビル弁
43 薄板部材
43A 貫通孔
51 ドレープアダプタ
52 内視鏡用マウスピース
53 流体抑制部材
54 枠部材
54A 第1枠部材
54B 第2枠部材
55 ドレープ
55A 開口部
56 第1多孔質部材
56A 第1スリット
57 第2多孔質部材
57A 第2スリット
61 内視鏡用マウスピース
62 羽根部
63 抜け止め部材
65 内視鏡用マウスピース
66 羽根部
67 抜け止め部材
70 流体抑制部材
71 第1多孔質部材
71A 第1スリット
71B 第1スリット
71C 第1スリット
72 第2多孔質部材
72A 第2スリット
72B 第2スリット
72C 第2スリット
H 頭部
M 口
X 左右方向
Y 前後方向
Z 挿入方向