(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】放電電極、アノードの製造方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/038 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01S3/038 Z
(21)【出願番号】P 2022570843
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048102
(87)【国際公開番号】W WO2022137374
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】堀 司
(72)【発明者】
【氏名】清田 恭章
(72)【発明者】
【氏名】勝海 久和
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-179599(JP,A)
【文献】特開2007-103628(JP,A)
【文献】特開2001-332786(JP,A)
【文献】特開2003-152249(JP,A)
【文献】特開2004-179272(JP,A)
【文献】特開平04-218985(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125631(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0093112(US,A1)
【文献】米国特許第4317067(US,A)
【文献】特表2007-510284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/03 - 3/038
H01S 3/097 - 3/0979
H01S 3/104
H01S 3/134
H01S 3/22 - 3/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極であって、
カソードと、
アノードと、
を備え、
前記アノードは、
前記カソードの長手方向に垂直な放電方向に前記カソードと対向して配置され、
金属を含む電極基材と、前記電極基材の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層と、を含み、
前記長手方向に垂直な断面における第1の角部であって前記電極基材の側面である第1の側面で構成される第1の直線部と前記電極基材の放電面である第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ前記第1の角部が、前記断面における第2の角部であって前記コーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部と前記コーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ前記第2の角部よりも、前記放電方向において前記カソードに近い、
放電電極。
【請求項2】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記第1の放電面及び前記第2の放電面は、前記カソードに向かって凸状の曲面である、放電電極。
【請求項3】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記第1の角部と前記第2の角部との前記放電方向における距離は、前記第1の角部から前記第1の曲線部までの前記放電方向における距離の最大値以上である、放電電極。
【請求項4】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記第1の角部と前記第2の角部との前記放電方向における距離は0.2mm以上である、放電電極。
【請求項5】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層は、絶縁材料及び金属を含む、放電電極。
【請求項6】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記放電方向における前記コーティング層の長さは、前記長手方向と前記放電方向との両方に垂直な方向における前記電極基材の幅以上である、放電電極。
【請求項7】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記放電方向における前記コーティング層の長さは4mm以上である、放電電極。
【請求項8】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、前記第2の角部よりも前記カソードから離れた位置において第1の厚みを有し、前記第2の角部から前記カソードに近づくにつれて薄くなるように構成された、放電電極。
【請求項9】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、前記コーティング層のうちの前記第1の放電面を被覆する部分の厚みの1倍以上、3倍以下の第1の厚みを有する、放電電極。
【請求項10】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、前記コーティング層のうちの前記第1の放電面を被覆する部分の厚みの1倍以上、2倍以下の第1の厚みを有する、放電電極。
【請求項11】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、0.1mm以上、0.3mm以下の第1の厚みを有する、放電電極。
【請求項12】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、0.1mm以上、0.2mm以下の第1の厚みを有する、放電電極。
【請求項13】
請求項1に記載の放電電極であって、
前記コーティング層のうちの前記第1の側面を被覆する部分が、前記第2の角部よりも前記カソードから離れた位置において第1の厚みを有する第1の領域と、前記第1の領域よりも前記カソードから離れた位置において前記第1の厚みより大きい第2の厚みを有する第2の領域と、を含む、放電電極。
【請求項14】
請求項13に記載の放電電極であって、
前記コーティング層の厚みは、前記第1の領域と前記第2の領域との間で階段状に変化する、放電電極。
【請求項15】
請求項13に記載の放電電極であって、
前記コーティング層の厚みは、前記第1の領域と前記第2の領域との間でテーパー状に変化する、放電電極。
【請求項16】
請求項1に記載の放電電極を備えたレーザチャンバ。
【請求項17】
請求項16に記載のレーザチャンバを含むガスレーザ装置。
【請求項18】
フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極のアノードの製造方法であって、
前記アノードを構成する電極基材の表面のうちの第1の側面と前記放電電極のカソードと対向する面となる第1の放電面とにコーティング層を形成する第1の工程と、
目標形状に近づくように前記コーティング層の一部を除去する第2の工程と、
を含み、
前記第2の工程は、前記カソードの長手方向に垂直な断面における第1の角部であって前記第1の側面で構成される第1の直線部と前記第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ前記第1の角部が、前記断面における第2の角部であって前記コーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部と前記コーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ前記第2の角部よりも、前記アノードと前記カソードとの間の放電方向において前記カソードが配置される位置に近くなるように前記コーティング層の一部を除去することを含む、製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の製造方法であって、
前記第1の工程は、前記第1の角部が、前記第2の角部よりも、前記放電方向において前記カソードが配置される位置から遠くなるように前記コーティング層を形成する、製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極であって、
カソードと、
アノードと、
を備え、
前記アノードは、
前記カソードの長手方向に垂直な放電方向に前記カソードと対向して配置され、
金属を含む電極基材と、前記電極基材の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層と、を含み、
前記長手方向に垂直な断面における第1の角部であって前記電極基材の側面である第1の側面で構成される第1の直線部と前記電極基材の放電面である第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ前記第1の角部が、前記断面における第2の角部であって前記コーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部と前記コーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ前記第2の角部よりも、前記放電方向において前記カソードに近い、
前記放電電極
を備えたレーザチャンバを含むガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、
前記レーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電電極、アノードの製造方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。たとえば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化ガスレーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-179599号公報
【文献】特開2007-103628号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る放電電極は、フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極であって、カソードと、アノードと、を備える。アノードは、カソードの長手方向に垂直な放電方向にカソードと対向して配置され、金属を含む電極基材と、電極基材の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層と、を含み、長手方向に垂直な断面における第1の角部であって電極基材の側面である第1の側面で構成される第1の直線部と電極基材の放電面である第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ第1の角部が、断面における第2の角部であってコーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部とコーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ第2の角部よりも、放電方向においてカソードに近い。
【0006】
本開示の1つの観点に係るアノードの製造方法は、フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極のアノードの製造方法であって、アノードを構成する電極基材の表面のうちの第1の側面と放電電極のカソードと対向する面となる第1の放電面とにコーティング層を形成する第1の工程と、目標形状に近づくようにコーティング層の一部を除去する第2の工程と、を含む。第2の工程は、カソードの長手方向に垂直な断面における第1の角部であって第1の側面で構成される第1の直線部と第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ第1の角部が、断面における第2の角部であってコーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部とコーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ第2の角部よりも、アノードとカソードとの間の放電方向においてカソードが配置される位置に近くなるようにコーティング層の一部を除去することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、放電電極を備えたレーザチャンバを含むガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、レーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光することを含む。放電電極は、フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置に使用される放電電極であって、カソードと、アノードと、を備える。アノードは、カソードの長手方向に垂直な放電方向にカソードと対向して配置され、金属を含む電極基材と、電極基材の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層と、を含み、長手方向に垂直な断面における第1の角部であって電極基材の側面である第1の側面で構成される第1の直線部と電極基材の放電面である第1の放電面で構成される第1の曲線部とをつなぐ第1の角部が、断面における第2の角部であってコーティング層の側面である第2の側面で構成される第2の直線部とコーティング層の放電面である第2の放電面で構成される第2の曲線部とをつなぐ第2の角部よりも、放電方向においてカソードに近い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、比較例に係るガスレーザ装置の構成を模式的に示す。
【
図2】
図2は、
図1に示されるレーザチャンバ及びその内部の構成を模式的に示す。
【
図4】
図4は、比較例におけるカソード及びアノードの間の放電の様子を模式的に示す。
【
図5】
図5は、
図4に示されるカソード及びアノードの間の放電が行われた後の様子を模式的に示す。
【
図6】
図6は、
図4に示されるカソード及びアノードの間の放電の次の放電の様子を模式的に示す。
【
図7】
図7は、
図4に示されるカソード及びアノードの間の放電の次の放電の様子を模式的に示す。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態におけるカソード及びアノードの間の放電の様子を模式的に示す。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の第1の変形例に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態の第2の変形例に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態の第3の変形例に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態の第4の変形例に係る放電電極を構成するアノードの断面図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態に係る放電電極を構成するアノードの製造工程を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態に係る放電電極を構成するアノードの製造工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、ガスレーザ装置に接続された露光装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.比較例
1.1 ガスレーザ装置1の構成
1.2 動作
1.3 比較例の課題
2.コーティング層112の形状を改良したアノード11b
2.1 構成
2.2 動作
2.3 作用
3.コーティング層112の厚みを変化させたアノード11b
3.1 構成
3.2 作用
4.アノード11bの製造方法
4.1 製造工程
4.2 作用
5.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.比較例
1.1 ガスレーザ装置1の構成
図1は、比較例に係るガスレーザ装置1の構成を模式的に示す。
図1に示されるガスレーザ装置1は、レーザチャンバ10と、一対の放電電極を構成するカソード11a及びアノード11bと、充電器12と、パルスパワーモジュール(PPM)13と、狭帯域化モジュール14と、出力結合ミラー15と、レーザコントローラ30と、を含む。狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15とが、光共振器を構成する。レーザチャンバ10は、光共振器の光路に配置されている。
図1においては、カソード11a及びアノード11bの間の放電方向に略垂直で、且つ、出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向に略垂直な方向から見たレーザチャンバ10の内部構成が示されている。
【0012】
図2は、
図1に示されるレーザチャンバ10及びその内部の構成を模式的に示す。
図1においては、出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向に略平行な方向から見たレーザチャンバ10の内部構成が示されている。
【0013】
出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向を、+Z方向とする。カソード11a及びアノード11bの間の放電方向を、+V方向又は-V方向とする。+Z方向と+V方向とは互いに垂直な方向である。これらの両方に垂直な方向を、+H方向又は-H方向とする。-V方向は、重力方向とほぼ一致する。
【0014】
レーザチャンバ10は、カソード11a及びアノード11bと、クロスフローファン21と、熱交換器23と、を収容している。
【0015】
レーザチャンバ10の一部に開口が形成され、この開口は電気絶縁部20によって塞がれている。電気絶縁部20はカソード11aを支持している。電気絶縁部20には、複数の導電部20aが埋め込まれている。導電部20aの各々はカソード11aに電気的に接続されている。
【0016】
レーザチャンバ10の内部にはリターンプレート10cが配置されている。アノード11bはリターンプレート10cに支持されている。アノード11bはリターンプレート10c及びレーザチャンバ10の導電性部材を介して接地電位に電気的に接続されている。
【0017】
図2に示されるように、リターンプレート10cは、
図1の紙面の奥行側と手前側とに、レーザガスが通過するための隙間を有している。
【0018】
クロスフローファン21の回転軸は、レーザチャンバ10の外部に配置されたモータ22に接続されている。モータ22は、クロスフローファン21を回転させる。これにより、
図2に矢印Aで示されるようにレーザガスがレーザチャンバ10の内部で循環する。熱交換器23は、放電によって高温となったレーザガスの熱エネルギーをレーザチャンバ10の外部に排出する。
【0019】
レーザチャンバ10には、例えばレアガスとしてアルゴンガス又はクリプトンガス、ハロゲンガスとしてフッ素ガス、バッファガスとしてネオンガス等を含むレーザガスが封入される。レーザチャンバ10の両端にはウインドウ10a及び10bが設けられている。
【0020】
充電器12は、パルスパワーモジュール13に供給するための電気エネルギーを保持する。パルスパワーモジュール13は、図示しない充電コンデンサと、スイッチ13aと、を含む。充電器12に、パルスパワーモジュール13の充電コンデンサが接続される。パルスパワーモジュール13の充電コンデンサに、導電部20aを介してカソード11aが接続される。
【0021】
図3は、
図1及び
図2に示されるカソード11a及びアノード11bの斜視図である。カソード11a及びアノード11bの各々の長手方向は、Z軸に略平行である。アノード11bは、カソード11aから見て-V方向の位置にカソード11aと対向して配置されている。
図3においてはカソード11a及びアノード11bの各々の長手方向の両端付近が示され、中央の一部が省略されている。
【0022】
アノード11bは、金属を含む電極基材111と、電極基材111の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層112と、を含む。電極基材111の側面を第1の側面SS1とする。電極基材111のカソード11aと対向する放電面を第1の放電面DS1とする。コーティング層112の側面を第2の側面SS2とする。コーティング層112のカソード11aと対向する放電面を第2の放電面DS2とする。
【0023】
本開示において放電面とは、放電電極として対をなす他の電極と対向する面をいうものとする。第1の放電面DS1がコーティング層112で覆われている場合に、必ずしも第1の放電面DS1において放電が起こるわけではない。
【0024】
図1を再び参照し、狭帯域化モジュール14は、プリズム14aとグレーティング14bとを含む。狭帯域化モジュール14の代わりに、高反射ミラーが用いられてもよい。
【0025】
出力結合ミラー15は、狭帯域化モジュール14の選択波長の光を透過する材料で構成され、その1つの面には部分反射膜がコーティングされている。
【0026】
1.2 動作
レーザコントローラ30は、図示しない露光装置から、目標パルスエネルギーの設定データと、発光トリガ信号と、を受信する。レーザコントローラ30は、目標パルスエネルギーの設定データに基づいて、充電器12に充電電圧の設定データを送信する。また、レーザコントローラ30は、発光トリガ信号に基づいて、パルスパワーモジュール13にトリガ信号を送信する。
【0027】
パルスパワーモジュール13は、レーザコントローラ30からトリガ信号を受信すると、充電器12に充電された電気エネルギーからパルス状の高電圧を生成し、この高電圧をカソード11a及びアノード11bの間に印加する。
【0028】
カソード11a及びアノード11bの間に高電圧が印加されると、カソード11a及びアノード11bの間に放電が起こる。この放電のエネルギーにより、レーザチャンバ10内のレーザ媒質が励起されて高エネルギー準位に移行する。励起されたレーザ媒質が、その後低エネルギー準位に移行するとき、そのエネルギー準位差に応じた波長の光を放出する。
【0029】
レーザチャンバ10内で発生した光は、ウインドウ10a及び10bを介してレーザチャンバ10の外部に出射する。レーザチャンバ10のウインドウ10aから出射した光は、H軸方向のビーム幅をプリズム14aによって拡大させられて、グレーティング14bに入射する。
プリズム14aからグレーティング14bに入射した光は、グレーティング14bの複数の溝によって反射されるとともに、光の波長に応じた方向に回折させられる。
【0030】
プリズム14aは、グレーティング14bからの回折光のH軸方向のビーム幅を縮小させるとともに、その光を、ウインドウ10aを介して、レーザチャンバ10に戻す。
出力結合ミラー15は、レーザチャンバ10のウインドウ10bから出射した光のうちの一部を透過させて出力し、他の一部を反射させてレーザチャンバ10内に戻す。
【0031】
このようにして、レーザチャンバ10から出射した光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復し、カソード11a及びアノード11bの間の放電空間を通過する度に増幅される。この光は、狭帯域化モジュール14で折り返される度に狭帯域化される。こうしてレーザ発振し狭帯域化された光が、出力結合ミラー15からレーザ光として出力される。
【0032】
1.3 比較例の課題
図4は、比較例におけるカソード11a及びアノード11bの間の放電の様子を模式的に示す。カソード11a及びアノード11bの間に放電空間50が形成される。
コーティング層112は、電極基材111の表面が劣化することを抑制するために絶縁材料を含み、コーティング層112を構成する材料の抵抗率は電極基材111を構成する材料の抵抗率よりも高くなっている。しかし、コーティング層112の電気抵抗が高すぎると放電しにくくなるため、コーティング層112には絶縁材料の他に金属も含まれている。また、カソード11a及びアノード11bの間に高電圧が印加されたとき、アノード11bの角部の付近に電界が集中しやすい。このため、放電空間50はコーティング層112の角部の付近にも及ぶ。
【0033】
図5は、
図4に示されるカソード11a及びアノード11bの間の放電が行われた後の様子を模式的に示す。レーザチャンバ10の内部ではクロスフローファン21(
図2参照)により矢印Aで示される方向にレーザガスが循環しているため、放電によって生成されたイオン又は金属微粒子を含む放電生成物51は
図4の放電空間50から見て+H方向の位置に移動する。
【0034】
図6及び
図7は、
図4に示されるカソード11a及びアノード11bの間の放電の次の放電の様子を模式的に示す。
図6においては、放電生成物51がカソード11a及びアノード11bの近くに位置し、
図7においては、放電生成物51がカソード11a及びアノード11bから遠くに位置している。
図6においては、放電によるカソード11aからアノード11bへの電子の流れが放電生成物51に引き寄せられる。このため、
図6における放電空間50は+H方向に偏って形成され、放電が不安定となり、レーザ光の生成が不安定となる。
一方、
図7のように、放電生成物51がカソード11a及びアノード11bから遠くに位置していれば、放電空間50は放電生成物51の影響をあまり受けずに、
図4における放電空間50と同様に形成される。
【0035】
レーザ光の繰り返し周波数を低減せずに、カソード11a及びアノード11bから放電生成物51までの距離を大きくするためには、次の(1)又は(2)の方法がある。
(1)クロスフローファン21によるレーザガスの流速を大きくする
(2)放電空間50のH軸方向の幅を小さくする
【0036】
しかしながら、レーザガスの流速を大きくすると、モータ22を駆動するための消費電力が大きくなってしまう場合がある。消費電力はレーザガスの流速の3乗に比例する。
また、放電空間50のH軸方向の幅を小さくするために、カソード11a及びアノード11bの幅を狭くすることが考えられるが、電極の幅を狭くすると電気抵抗が高くなってしまう場合がある。
【0037】
以下に説明するいくつかの実施形態は、電極基材111の第1の角部C1がコーティング層112の第2の角部C2よりもカソード11aに近くなるように構成される。これにより、放電空間50がコーティング層112の第2の角部C2の付近にまで及ばないようにして、放電空間50のH軸方向の幅を小さくすることができる。
【0038】
2.コーティング層112の形状を改良したアノード11b
2.1 構成
図8は、第1の実施形態に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
図8は、アノード11bを構成する電極基材111及びコーティング層112のZ軸に垂直な断面を示す。
図8には図示されていないカソード11aは、アノード11bから見て+V方向に位置する。カソード11aは
図3を参照しながら説明したものと同様である。
【0039】
電極基材111の断面は、第1の直線部S1と第1の曲線部D1とを含む。第1の直線部S1は、電極基材111の側面である第1の側面SS1(
図3参照)で構成される輪郭線である。第1の曲線部D1は、電極基材111の放電面である第1の放電面DS1で構成される輪郭線である。第1の直線部S1と第1の曲線部D1とは第1の角部C1で接続されている。
【0040】
コーティング層112の断面は、第2の直線部S2と第2の曲線部D2とを含む。第2の直線部S2は、コーティング層112の側面である第2の側面SS2で構成される輪郭線である。第2の曲線部D2は、コーティング層112の放電面である第2の放電面DS2で構成される輪郭線である。第2の直線部S2と第2の曲線部D2とは第2の角部C2で接続されている。
【0041】
第1の角部C1及び第2の角部C2は、次のように定義されてもよい。第1の直線部S1をカソード11aに向かって延長した直線をE1としたとき、電極基材111の断面の輪郭線が第1の直線部S1から第1の曲線部D1と直線E1とに分岐する点が第1の角部C1である。第2の直線部S2をカソード11aに向かって延長した直線をE2としたとき、コーティング層112の断面の輪郭線が第2の直線部S2から第2の曲線部D2と直線E2とに分岐する点が第2の角部C2である。
【0042】
図8においては、電極基材111の2つの側面で構成される2つの第1の直線部S1が互いに平行である場合を示しているが、本開示はこれに限定されない。第1の直線部S1は平行でなくてもよい。
図8においては、コーティング層112の2つの側面で構成される2つの第2の直線部S2が互いに平行である場合を示しているが、本開示はこれに限定されない。第2の直線部S2は平行でなくてもよい。
【0043】
第1の実施形態においては、第1の角部C1が第2の角部C2よりもV軸方向においてカソード11aに近くなるようにコーティング層112が形成される。
【0044】
第1の曲線部D1及び第2の曲線部D2は、いずれもカソード11aに向かって凸状の曲線である。すなわち、
図3に示されるように、第1の放電面DS1及び第2の放電面DS2は、いずれもカソード11aに向かって凸状の曲面である。
【0045】
第1の角部C1と第2の角部C2とのV軸方向における距離をL1とする。第1の角部C1から第1の曲線部D1までのV軸方向における距離の最大値をL2とする。最大値L2は、第1の角部C1から第1の曲線部D1のうちのカソード11aに向かって最も突き出た部分までのV軸方向における距離に相当する。距離L1は、最大値L2以上であることが望ましい。また、距離L1は、0.2mm以上であることが望ましい。
【0046】
V軸方向におけるコーティング層112の長さをL3とする。長さL3は、コーティング層112の-V方向の端部から、第2の曲線部D2のうちのカソード11aに向かって最も突き出た部分までのV軸方向における距離に相当する。H軸方向における電極基材111の幅をL4とする。長さL3は、幅L4以上であることが望ましい。また、長さL3は、4mm以上であることが望ましい。
【0047】
コーティング層112のうちの第1の側面SS1を被覆する部分は、第2の角部C2よりもカソード11aから離れた位置において第1の厚みT1を有し、第2の角部C2からカソード11aに近づくにつれて薄くなる。従って、コーティング層112のうちの第2の角部C2よりカソード11aに近く第1の角部C1よりもカソード11aから離れた位置における第4の厚みT4は、第1の厚みT1より小さい。
【0048】
コーティング層112のうちの第1の放電面DS1を被覆する部分が第3の厚みT3を有するものとする。第1の厚みT1は、第3の厚みT3の1倍以上、3倍以下であることが望ましい。第1の厚みT1は、第3の厚みT3の1倍以上、2倍以下であることがさらに望ましい。また、第1の厚みT1は、0.1mm以上、0.3mm以下であることが望ましい。第1の厚みT1は、0.1mm以上、0.2mm以下であることがさらに望ましい。
【0049】
電極基材111は金属を含む。電極基材111に含まれる金属は例えば銅である。コーティング層112は、絶縁材料及び金属を含む。コーティング層112に含まれる絶縁材料は例えばアルミナであり、金属は例えば銅である。
【0050】
第1の実施形態に係るレーザチャンバ10は、第1の実施形態に係る放電電極を備える。放電電極に含まれるアノード11b以外の点については、レーザチャンバ10は
図1及び
図2を参照しながら説明したものと同様である。
第1の実施形態に係るガスレーザ装置1は、第1の実施形態に係るレーザチャンバ10を備える。アノード11b以外の点については、ガスレーザ装置1は
図1及び
図2を参照しながら説明したものと同様である。
【0051】
2.2 動作
図9は、第1の実施形態におけるカソード11a及びアノード11bの間の放電の様子を模式的に示す。第1の実施形態においては、電極基材111の第1の角部C1がコーティング層112の第2の角部C2よりもカソード11aに近くなるようにコーティング層112が形成されている。これによれば、第2の角部C2の付近に電界が集中することが抑制され、放電空間50の幅が狭くなって電極基材111の幅L4に近くなる。これにより、次の放電の時においてカソード11a及びアノード11bから放電生成物51(
図6及び
図7参照)までの距離がより大きくなる。このため、放電生成物51の影響をあまり受けずに放電空間50が形成され、放電が安定化する。
【0052】
2.3 作用
(1)第1の実施形態に係る放電電極は、フッ素を含むレーザガスを放電により励起するガスレーザ装置1に使用される放電電極であって、カソード11aと、アノード11bと、を備える。アノード11bは、V軸方向にカソード11aと対向して配置される。アノード11bは、金属を含む電極基材111と、電極基材111の表面の一部を被覆しており絶縁材料を含むコーティング層112と、を含む。アノード11bは、Z軸に垂直な断面における第1の角部C1が、第2の角部C2よりも、V軸方向においてカソード11aに近い。
これによれば、第2の角部C2の付近に電界が集中することが抑制され、放電空間50の幅を狭くすることができる。これにより放電が安定化する。
【0053】
(2)第1の実施形態において、第1の放電面DS1及び第2の放電面DS2は、カソード11aに向かって凸状の曲面である。
これによれば、アノード11bのH軸方向の幅の中央付近に放電のエネルギーを集中させ、放電空間50の幅を狭くすることができる。
【0054】
(3)第1の実施形態において、第1の角部C1と第2の角部C2とのV軸方向における距離L1は、第1の角部C1から第1の曲線部D1までのV軸方向における距離の最大値L2以上である。
これによれば、第2の角部C2の付近に電界が集中することが抑制され、放電空間50の幅を狭くすることができる。
【0055】
(4)第1の実施形態において、第1の角部C1と第2の角部C2とのV軸方向における距離L1は0.2mm以上である。
これによれば、第2の角部C2の付近に電界が集中することが抑制され、放電空間50の幅を狭くすることができる。
【0056】
(5)第1の実施形態において、コーティング層112は、絶縁材料及び金属を含む。
これによれば、カソード11a及びアノード11bの間の放電の安定性と、アノード11bの劣化の抑制と、を両立することができる。
【0057】
(6)第1の実施形態において、V軸方向におけるコーティング層112の長さL3は、H軸方向における電極基材111の幅L4以上である。
これによれば、V軸方向におけるコーティング層112の長さL3が短い場合に比べて電極寿命を長くすることができる。
【0058】
(7)第1の実施形態において、V軸方向におけるコーティング層112の長さL3は4mm以上である。
これによれば、V軸方向におけるコーティング層112の長さL3が短い場合に比べて電極寿命を長くすることができる。
【0059】
(8)第1の実施形態において、コーティング層112のうちの第1の側面SS1を被覆する部分が、第2の角部C2よりもカソード11aから離れた位置において第1の厚みT1を有し、第2の角部C2からカソード11aに近づくにつれて薄くなる。
これによれば、第2の放電面DS2の付近でコーティング層112の位置による厚みの変化を緩やかにすることができる。これにより、コーティング層112の劣化のむらを低減し、電極寿命を長くすることができる。
【0060】
(9)第1の実施形態において、コーティング層112のうちの第1の側面SS1を被覆する部分が、コーティング層112のうちの第1の放電面DS1を被覆する部分の第3の厚みT3の1倍以上、3倍以下又は2倍以下の第1の厚みT1を有する。
第1の厚みT1を第3の厚みT3の1倍以上とすることにより、第2の放電面DS2を介したカソード11a及びアノード11bの間の放電の安定性と、第1の側面SS1の劣化の抑制と、を両立することができる。また、第1の厚みT1を第3の厚みT3の3倍以下又は2倍以下とすることにより、レーザガスの流速の低下を抑制し得る。
【0061】
第1の実施形態においては、コーティング層112のうちの第1の側面SS1を被覆する部分が、0.1mm以上、0.3mm以下又は0.2mm以下の第1の厚みT1を有する。
第1の厚みT1を0.1mm以上とすることにより、第1の側面SS1の劣化を抑制することができる。また、第1の厚みT1を0.3mm以下又は0.2mm以下とすることにより、レーザガスの流速の低下を抑制し得る。
【0062】
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0063】
3.コーティング層112の厚みを変化させたアノード11b
3.1 構成
図10は、第2の実施形態に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
図10は、アノード11bを構成する電極基材111及びコーティング層112のZ軸に垂直な断面を示す。
図10には図示されていないカソード11aは、アノード11bから見て+V方向に位置する。
【0064】
第2の実施形態において、コーティング層112のうちの第1の側面SS1(
図3参照)を被覆する部分が、第1の厚みT1を有する第1の領域R1と、第1の厚みT1より大きい第2の厚みT2を有する第2の領域R2と、を含む。第1の領域R1は、第2の角部C2よりもカソード11aから離れた領域であり、第2の領域R2は、第1の領域R1よりもカソード11aから離れた領域である。
【0065】
コーティング層112の厚みは、第1の領域R1と第2の領域R2との間で階段状に変化してもよい。
【0066】
図11は、第2の実施形態の第1の変形例に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
図12は、第2の実施形態の第2の変形例に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
【0067】
コーティング層112の厚みは、第1の領域R1と第2の領域R2との間で階段状に変化し、且つ、コーティング層112の表面は、第1の領域R1と第2の領域R2との間において丸みを有していてもよい。
【0068】
図13は、第2の実施形態の第3の変形例に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
図14は、第2の実施形態の第4の変形例に係る放電電極を構成するアノード11bの断面図である。
コーティング層112の厚みは、第1の領域R1と第2の領域R2との間でテーパー状に変化してもよい。
【0069】
3.2 作用
(13)第2の実施形態及びその変形例によれば、コーティング層112のうちの第1の側面SS1を被覆する部分が、第2の角部C2よりもカソード11aから離れた位置において第1の厚みT1を有する第1の領域R1と、第1の領域R1よりもカソード11aから離れた位置において第1の厚みT1より大きい第2の厚みT2を有する第2の領域R2と、を含む。
第1の領域R1は高い加工精度を必要とするのに対し、第2の領域R2はカソード11aから離れているので第1の領域R1ほど高い加工精度を必要としない。第2の実施形態及びその変形例によれば、コーティング層112のうちの第2の角部C2よりもカソード11aから離れた領域の全体を第1の厚みT1とする場合と比べて、高い加工精度が要求される領域を限定することができる。また、第3の実施形態において説明するようにコーティング層112aを形成した後で、研削又は研磨によりコーティング層112aの一部を第1の厚みT1とする場合に、研削又は研磨が必要な領域を限定することができる。
その他の点については、第2の実施形態及びその変形例は第1の実施形態と同様である。
【0070】
4.アノード11bの製造方法
4.1 製造工程
図15及び
図16は、第3の実施形態に係る放電電極を構成するアノード11bの製造工程を示す断面図である。
図15及び
図16は、アノード11bを構成する電極基材111及びコーティング層112又は112aのZ軸に垂直な断面を示す。
図15及び
図16には図示されていないカソード11aは、アノード11bから見て+V方向に配置される。
図15及び
図16においてはコーティング層112aの表面の凹凸が誇張して描かれている。
【0071】
アノード11bの製造方法は以下の通りである。
図15に示されるように、アノード11bを構成する電極基材111の表面のうちの第1の側面SS1(
図3参照)と、カソード11aと対向する面となる第1の放電面DS1と、にコーティング層112aを形成する。コーティング層112aは例えば溶射により形成される。
図15に示される工程は本開示における第1の工程に相当する。
図16に示されるように、コーティング層112aを例えば研削又は研磨することにより、目標形状に近づくようにコーティング層112aの一部を除去する。
図16に示される工程は本開示における第2の工程に相当する。
これにより、第1の実施形態において説明した形状のコーティング層112を形成する。あるいは、第2の実施形態又はその変形例において説明した形状のコーティング層112を形成してもよい。
【0072】
図15に示される第1の工程において、コーティング層112aは第2の角部C20を有する。第2の角部C20は、コーティング層112aの側面で構成される第2の直線部S20とコーティング層112aの放電面で構成される輪郭線部D20とを接続する。第1の角部C1は、第2の角部C20よりも、V軸方向においてカソード11aが配置される位置から遠くてもよい。
図16に示される第2の工程においては、第1の角部C1が第2の角部C2よりもV軸方向においてカソード11aに近くなるように、コーティング層112aの一部が除去される。このように、第3の実施形態においては、第1の工程と第2の工程とで第1の角部C1と第2の角部C20又はC2との位置関係が逆になる。
【0073】
4.2 作用
第3の実施形態によれば、放電電極のアノード11bの製造方法は、第1の工程及び第2の工程を含む。第1の工程は、アノード11bを構成する電極基材111の表面のうちの第1の側面SS1と放電電極のカソード11aと対向する面となる第1の放電面DS1とにコーティング層112aを形成することを含む。第2の工程は、目標形状に近づくようにコーティング層112aの一部を除去することを含む。第2の工程は、Z軸に垂直な断面における第1の角部C1が、第2の角部C2よりも、V軸方向においてカソード11aが配置される位置に近くなるようにコーティング層112aの一部を除去することを含む。
これによれば、第2の角部C2の付近に電界が集中することが抑制され、放電空間50の幅を狭くすることができる。これにより放電が安定化する。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。あるいは、第3の実施形態は第2の実施形態又はその変形例と同様でもよい。
【0074】
5.その他
図17は、ガスレーザ装置1に接続された露光装置100の構成を概略的に示す。ガスレーザ装置1はレーザ光を生成して露光装置100に出力する。
図17において、露光装置100は、照明光学系40と投影光学系41とを含む。照明光学系40は、ガスレーザ装置1から入射したレーザ光によって、レチクルステージRT上に配置された図示しないレチクルのレチクルパターンを照明する。投影光学系41は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置100は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにレチクルパターンを転写後、複数の工程を経ることで電子デバイスを製造することができる。
【0075】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。