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特許7547525半導体製造プロセスのための冷却システム、および半導体製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】半導体製造プロセスのための冷却システム、および半導体製造システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240902BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20240902BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20240902BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F25B7/00 D
F25B1/053 Z
H01L21/302 101G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023032484
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2024-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】福住 幸大
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-174870(JP,A)
【文献】特開2022-179927(JP,A)
【文献】特開2019-024055(JP,A)
【文献】特開平06-174388(JP,A)
【文献】特開2017-063088(JP,A)
【文献】特開2006-029744(JP,A)
【文献】特表2002-543363(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235832(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209445470(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 7/00
F25B 1/053
H01L 21/3065
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造プロセスに使用される複数の処理チャンバを冷却するための冷却システムであって、
クリーンルーム内に配置された前記複数の処理チャンバを冷却するための冷却液を生成し、前記冷却液を前記複数の処理チャンバに供給する少なくとも1つの熱交換ユニットと、
不凍液を冷却するための冷却装置と、
前記熱交換ユニットと前記冷却装置との間を延びる不凍液循環ラインと、
前記不凍液を前記不凍液循環ライン内で循環させるための不凍液ポンプを備え、
前記熱交換ユニットは、
前記冷却液を前記複数の処理チャンバを通って循環させるための冷却液ポンプと、
前記冷却液と前記不凍液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記冷却液の循環方向において、前記熱交換器の上流側に配置された冷却側バッファタンクを備えている、冷却システム。
【請求項2】
前記冷却装置は、
前記不凍液と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍装置と、
前記第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍装置と、
前記第1冷凍装置と前記第2冷凍装置との間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ラインを備えている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記冷却装置は、二元冷凍サイクルを備えた冷凍機である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記熱交換ユニットは、前記クリーンルームの下にあるサブファブエリア内に配置されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記第1冷凍装置は、前記クリーンルームの下にあるサブファブエリア内に配置され、
前記第2冷凍装置は、前記クリーンルームおよび前記サブファブエリアの外に配置されている、請求項2に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記第1冷凍装置は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機を備えたターボ冷凍機であり、
前記圧縮機は、
羽根車と、
前記羽根車と一体に回転可能な回転体と、
前記回転体を非接触で回転可能に支持する磁気軸受を備えている、請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記冷却装置は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機を備えたターボ冷凍機であり、
前記圧縮機は、
羽根車と、
前記羽根車と一体に回転可能な回転体と、
前記回転体を非接触で回転可能に支持する磁気軸受を備えている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記冷却装置は、前記クリーンルームおよび前記クリーンルームの下にあるサブファブエリアの外に配置されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記熱交換ユニットは、前記冷却システムから取り外し可能に構成されている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、前記複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の熱交換ユニットである、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、前記複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の熱交換ユニットである、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、単一の熱交換ユニットである、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項13】
前記冷却システムは、前記複数の処理チャンバを加熱するための加熱液を生成し、前記加熱液を前記複数の処理チャンバに供給する少なくとも1つの加熱ユニットをさらに備えており、
前記加熱ユニットは、
前記加熱液を加熱する加熱装置と、
前記加熱液を前記複数の処理チャンバを通って循環させるための加熱液ポンプと、
前記加熱液の循環方向において前記加熱装置の上流側に配置された加熱側バッファタンクを備えている、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項14】
前記加熱ユニットは、前記冷却システムから取り外し可能に構成されている、請求項13に記載の冷却システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの加熱ユニットは、前記複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の加熱ユニットである、請求項13に記載の冷却システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの加熱ユニットは、前記複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の加熱ユニットである、請求項13に記載の冷却システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの加熱ユニットは、単一の加熱ユニットである、請求項13に記載の冷却システム。
【請求項18】
半導体製造プロセスを実行するための複数の処理チャンバを有する半導体製造装置と、
前記複数の処理チャンバの温度を調節するための温度調節器と、
前記温度調節器と前記熱交換ユニットとの間を延びる冷却液ラインと、
前記温度調節器と前記複数の処理チャンバとの間を延びる温度調節液ラインと、
前記複数の処理チャンバを冷却するための、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の冷却システムを備えている、半導体製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置などの半導体製造装置の冷却に使用される冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の1つであるドライエッチング工程では、クリーンルームに配置されたエッチング装置が使用され、主にクリーンルームの階下にあるサブファブエリアには、エッチング装置の複数の処理チャンバを流れる循環液を冷却するための冷却システムなどが配置される。機械室などの一般的な設備機械が設置される環境とは異なり、クリーンルームおよびサブファブエリアには、高い清浄度が求められる。図11は、複数の処理チャンバを冷却するための冷却システムを示す模式図である。図11に示すように、エッチング装置501は、複数の処理チャンバ502を有しており、各処理チャンバ502内でウェーハのエッチングを行うように構成されている。
【0003】
複数の処理チャンバ502は、同じ数の複数のチラー505にそれぞれ連結されている。これらチラー505は独立に稼働しており、複数の処理チャンバ502を冷却するための循環液を複数の処理チャンバ502にそれぞれ供給する。各チラー505は、蒸発器506、圧縮機507、および凝縮器508を有する冷凍サイクルを備えており、冷凍サイクル内で冷媒が循環する。各チラー505の冷凍サイクルでは、凝縮器508内で、冷媒と大型冷凍機510により生成される冷却液との間で熱交換が行われ、蒸発器506内で、冷媒と複数の処理チャンバ502を冷却するための循環液との間で熱交換が行われる。冷媒との熱交換により冷却された循環液は、複数の処理チャンバ502内を通過しながら、複数の処理チャンバ502を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-81145号公報
【文献】特開2021-77085号公報
【文献】特開2022-174869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のチラー505は、サブファブエリア内に配置されており、大型冷凍機510は、クリーンルームおよびサブファブエリアの外にある機械室などに配置されている。近年では、エッチング装置の処理チャンバの数は増加する傾向にあり、これら処理チャンバに対応して設けられるチラーの数も増加する傾向にある。しかしながら、サブファブエリアはクリーンルームの直下に設ける必要があるため、サブファブエリアの大きさには限度がある。結果として、増加する数のチラーを置くスペースがサブファブエリア内に確保できないという問題があった。また、チラーの数の増加に伴い、冷却システム全体の消費電力の増加が課題となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、大きな設置スペースを必要とせず、半導体製造装置に使用される複数の処理チャンバを冷却することができ、かつ冷却システム全体の消費電力を削減することができる冷却システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、半導体製造プロセスに使用される複数の処理チャンバを冷却するための冷却システムであって、クリーンルーム内に配置された前記複数の処理チャンバを冷却するための冷却液を生成し、前記冷却液を前記複数の処理チャンバに供給する少なくとも1つの熱交換ユニットと、不凍液を冷却するための冷却装置と、前記熱交換ユニットと前記冷却装置との間を延びる不凍液循環ラインと、前記不凍液を前記不凍液循環ライン内で循環させるための不凍液ポンプを備え、前記熱交換ユニットは、前記冷却液を前記複数の処理チャンバを通って循環させるための冷却液ポンプと、前記冷却液と前記不凍液との間で熱交換を行う熱交換器と、前記冷却液の循環方向において、前記熱交換器の上流側に配置された冷却側バッファタンクを備えている、冷却システムが提供される。
【0008】
本発明によれば、熱交換ユニットは、従来の複数のチラーの冷凍サイクルとは異なり、蒸発器、圧縮機、凝縮器などの構成要素を有していないので、サブファブエリア内に大きな設置スペースを必要とせず、半導体製造装置に使用される複数の処理チャンバを冷却することができる。
さらに、本発明によれば、複数の処理チャンバに供給する冷却液を生成するための、十分に低い温度の不凍液を冷却装置で包括的に生成することにより、高い冷却効率を達成できる。結果として、冷却装置の消費電力は、従来の複数のチラーの総消費電力よりも小さく、省エネ運転が達成できる。
【0009】
一態様では、前記冷却装置は、前記不凍液と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍装置と、前記第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍装置と、前記第1冷凍装置と前記第2冷凍装置との間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ラインを備えている。
本発明によれば、第1冷凍装置と第2冷凍装置を備えた冷却装置は、複数の処理チャンバを包括的に冷却し、第1冷凍装置と第2冷凍装置が直列に接続されることにより二元冷凍サイクルの冷却装置と同等の作用があり、必要な十分に低い温度にまで不凍液を冷却することができる。また、第1冷凍装置および第2冷凍装置は、別個の装置として構成されているため、異なる場所に設置することができる。
【0010】
一態様では、前記冷却装置は、二元冷凍サイクルを備えた冷凍機である。
本発明によれば、二元冷凍サイクルを持つ冷却装置は、単独で複数の処理チャンバを包括的に冷却するのに必要な十分に低い温度にまで不凍液を冷却することができる。
一態様では、前記熱交換ユニットは、前記クリーンルームの下にあるサブファブエリア内に配置されている。
本発明によれば、熱交換ユニットはクリーンルームの下のサブファブエリア内に設置することにより、クリーンルーム内の設置面積を減らすことができる。
一態様では、前記第1冷凍装置は、前記クリーンルームの下にあるサブファブエリア内に配置され、前記第2冷凍装置は、前記クリーンルームおよび前記サブファブエリアの外に配置されている。
本発明によれば、第1冷凍装置をサブファブエリア内に配置することにより、熱交換ユニットまでの配管を短くすることができ、熱損失を減らすことができる。
また、第2冷凍装置をクリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置することにより、クリーンルームとサブファブエリア内に必要な設置スペースを小さくすることができる。
【0011】
一態様では、前記第1冷凍装置は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機を備えたターボ冷凍機であり、前記圧縮機は、羽根車と、前記羽根車と一体に回転可能な回転体と、前記回転体を非接触で回転可能に支持する磁気軸受を備えている。
本発明によれば、圧縮機に磁気軸受を使用したターボ冷凍機は、潤滑油を使用しておらず、かつ低騒音のため、高い清浄度が求められるサブファブエリアに配置することができる。
一態様では、前記冷却装置は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機を備えたターボ冷凍機であり、前記圧縮機は、羽根車と、前記羽根車と一体に回転可能な回転体と、前記回転体を非接触で回転可能に支持する磁気軸受を備えている。
本発明によれば、圧縮機に磁気軸受を使用したターボ冷凍機は、遠心式の圧縮機を使用することにより、容積式の圧縮機を使用している従来のチラーと比較して大容量化、および高効率化を図ることができる。また、磁気軸受を使用することにより、オイルフリーとなり、油回収をする必要がなく、さらに効率化される。そのため、単独で複数の処理チャンバを包括的に冷却するのに必要な十分に低い温度にまで不凍液を冷却することができる。
一態様では、前記冷却装置は、前記クリーンルームおよび前記クリーンルームの下にあるサブファブエリアの外に配置されている。
本発明によれば、冷却装置をクリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置することにより、クリーンルームとサブファブエリア内に必要な設置スペースを小さくすることができる。
【0012】
一態様では、前記熱交換ユニットは、前記冷却システムから取り外し可能に構成されている。
本発明によれば、熱交換ユニットを容易に取り外して、メンテナンス、修理などを実行することができる。さらに、熱交換ユニットを、仕様を変更した新たなユニットに容易に置き換えることができる。
一態様では、前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、前記複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の熱交換ユニットである。
本発明によれば、複数の熱交換ユニットは、複数の処理チャンバ内の処理サイクルに従って独立に動作することができる。
【0013】
一態様では、前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、前記複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の熱交換ユニットである。
本発明によれば、熱交換ユニット自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、熱交換ユニットに接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。
一態様では、前記少なくとも1つの熱交換ユニットは、単一の熱交換ユニットである。
本発明によれば、熱交換ユニット自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、熱交換ユニットに接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。
また、冷却側バッファタンクがひとつになるので、各処理チャンバからの戻りの冷却液の温度にばらつきがあっても冷却側バッファタンクが熱的バッファとして機能して冷却液が均一の温度となり、熱交換器での熱交換条件が良くなる。
【0014】
一態様では、前記冷却システムは、前記複数の処理チャンバを加熱するための加熱液を生成し、前記加熱液を前記複数の処理チャンバに供給する少なくとも1つの加熱ユニットをさらに備えており、前記加熱ユニットは、前記加熱液を加熱する加熱装置と、前記加熱液を前記複数の処理チャンバを通って循環させるための加熱液ポンプと、前記加熱液の循環方向において前記加熱装置の上流側に配置された加熱側バッファタンクを備えている。
本発明によれば、各処理チャンバを冷却のみならず、加熱することができる。
一態様では、前記加熱ユニットは、前記冷却システムから取り外し可能に構成されている。
本発明によれば、加熱ユニットを容易に取り外して、メンテナンス、修理などを実行することができる。さらに、加熱ユニットを、仕様を変更した新たなユニットに容易に置き換えることができる。
【0015】
一態様では、前記少なくとも1つの加熱ユニットは、前記複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の加熱ユニットである。
本発明によれば、複数の加熱ユニットは、複数の処理チャンバ内の処理サイクルに従って独立に動作することができる。
一態様では、前記少なくとも1つの加熱ユニットは、前記複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の加熱ユニットである。
本発明によれば、加熱ユニット自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、加熱ユニットに接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。
また、各処理チャンバ内で実行される処理サイクル中に各処理チャンバを加熱すべき時間は比較的短い。したがって、複数の処理チャンバでの加熱時間が重複しないように各処理チャンバの処理サイクルを調整すれば、加熱能力が大きくない(すなわち消費電力の小さい)加熱装置を用いて複数の処理チャンバを加熱することができる。
【0016】
一態様では、前記少なくとも1つの加熱ユニットは、単一の加熱ユニットである。
本発明によれば、加熱ユニット自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、加熱ユニットに接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。
また、各処理チャンバ内で実行される処理サイクル中に各処理チャンバを加熱すべき時間は比較的短い。したがって、複数の処理チャンバでの加熱時間が重複しないように各処理チャンバの処理サイクルを調整すれば、加熱能力が大きくない(すなわち消費電力の小さい)加熱装置を用いて複数の処理チャンバを加熱することができる。
また、加熱側バッファタンクがひとつになるので、各処理チャンバからの戻りの加熱液の温度にばらつきがあっても加熱側バッファタンクが熱的バッファとして機能して加熱液が均一の温度となり、加熱装置に流れる加熱液の温度の変動を低減させることができる。
【0017】
一態様では、半導体製造プロセスを実行するための複数の処理チャンバを有する半導体製造装置と、前記複数の処理チャンバの温度を調節するための温度調節器と、前記温度調節器と前記熱交換ユニットとの間を延びる冷却液ラインと、前記温度調節器と前記複数の処理チャンバとの間を延びる温度調節液ラインと、前記複数の処理チャンバを冷却するための上記冷却システムを備えている、半導体製造システムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱交換ユニットは、従来の複数のチラーの冷凍サイクルとは異なり、圧縮機、凝縮器、蒸発器などの構成要素を有していないので、サブファブエリア内に大きな設置スペースを必要とせず、半導体製造装置に使用される複数の処理チャンバを冷却することができる。
さらに、本発明によれば、複数の処理チャンバに供給する冷却液を生成するための、十分に低い温度の不凍液を冷却装置で包括的に生成することにより、高い冷却効率を達成できる。結果として、冷却装置の消費電力は、従来の複数のチラーの総消費電力よりも小さく、省エネ運転が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】冷却システムを含む半導体製造システムの一実施形態を示す模式図である。
図2】冷却装置の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。
図3】第1冷凍装置の第1圧縮機の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。
図4】冷却装置の詳細構造の他の実施形態を示す模式図である。
図5】冷却システムを含む半導体製造システムの他の実施形態を示す模式図である。
図6図5に示す冷却装置の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。
図7】冷却システムを含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
図8】冷却システムを含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
図9】冷却システムを含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
図10】冷却システムを含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
図11】従来の冷却システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、冷却システム5を含む半導体製造システムの一実施形態を示す模式図である。半導体製造システムは、半導体製造プロセスを実行するための複数の(本実施形態では3つの)処理チャンバ2A~2Cを有する半導体製造装置1と、複数の処理チャンバ2A~2Cの温度を調節するための複数の(本実施形態では3つの)温度調節器3A~3Cと、複数の処理チャンバ2A~2Cを冷却するための冷却システム5を備えている。半導体製造装置1および温度調節器3A~3Cは、クリーンルーム内に配置されている。
【0021】
本実施形態の半導体製造装置1は、エッチング処理を実施するエッチング装置である。一実施形態では、半導体製造装置1は、CVD装置、PVD装置など他の処理を行う装置であってもよい。本実施形態では、半導体製造装置1は、3つの処理チャンバ2A~2Cを有しているが、一実施形態では、半導体製造装置1は、2つの処理チャンバ、あるいは4つ以上の処理チャンバを有してもよい。半導体製造システムは、複数の処理チャンバの数に対応する数の温度調節器を備えている。複数の温度調節器3A~3Cは、複数の処理チャンバ2A~2Cにそれぞれ連結されており、複数の処理チャンバ2A~2Cの温度を調節する温度調節液をそれぞれ生成するように構成されている。これにより、複数の温度調節器3A~3Cは、複数の処理チャンバ2A~2Cの温度を個別に調節することができる。
【0022】
冷却システム5は、3つの温度調節器3A~3Cを介して3つの処理チャンバ2A~2Cに連結されている。冷却システム5は、3つの処理チャンバ2A~2Cを冷却するための冷却液を生成する複数の(本実施形態では3つの)熱交換ユニット8A~8Cと、3つの処理チャンバ2A~2Cを加熱するための加熱液を生成する複数の(本実施形態では3つの)加熱ユニット9A~9Cと、不凍液を冷却するための冷却装置10を備えている。
【0023】
本実施形態では、熱交換ユニット8A~8Cの数は、処理チャンバ2A~2Cの数と同じであり、加熱ユニット9A~9Cの数は、処理チャンバ2A~2Cの数と同じである。一実施形態では、熱交換ユニット8A~8Cの数は、処理チャンバ2A~2Cの数よりも少なくてもよく、加熱ユニット9A~9Cの数は、処理チャンバ2A~2Cの数よりも少なくてもよい。
【0024】
冷却システム5の少なくとも一部は、サブファブエリア内に配置されている。本実施形態では、熱交換ユニット8A~8C、加熱ユニット9A~9C、および冷却装置10の一部は、サブファブエリア内に配置されている。冷却液および加熱液としては、フッ素系の不活性液体などの同じ種類の液体が使用される。熱交換ユニット8A~8C、および加熱ユニット9A~9Cをクリーンルームの下のサブファブエリア内に設置することにより、クリーンルーム内の設置面積を減らすことができる。
【0025】
半導体製造システムは、3つの温度調節器3A~3Cと3つの熱交換ユニット8A~8Cとの間をそれぞれ延びる3つの冷却液ライン12と、3つの温度調節器3A~3Cと3つの加熱ユニット9A~9Cとの間をそれぞれ延びる3つの加熱液ライン15と、3つの温度調節器3A~3Cと3つの処理チャンバ2A~2Cとの間をそれぞれ延びる3つの温度調節液ライン18をさらに備えている。3つの冷却液ライン12は基本的に同じ構成を有しており、3つの加熱液ライン15は基本的に同じ構成を有しており、3つの温度調節液ライン18は基本的に同じ構成を有しているので、以下では、温度調節器3Aと熱交換ユニット8Aとの間を延びる冷却液ライン12、温度調節器3Aと加熱ユニット9Aとの間を延びる加熱液ライン15、および温度調節器3Aと処理チャンバ2Aとの間を延びる温度調節液ライン18について説明する。また、3つの温度調節器3A~3Cは、基本的に同じ構成を有しているため、その重複する説明を省略する。
【0026】
温度調節器3Aと熱交換ユニット8Aとの間を延びる冷却液ライン12は、熱交換ユニット8Aにより生成された冷却液を温度調節器3Aに供給するための冷却液供給ライン13と、処理チャンバ2Aおよび温度調節器3Aを通過した冷却液を熱交換ユニット8Aに戻すための冷却液戻りライン14を備えている。温度調節器3Aと加熱ユニット9Aとの間を延びる加熱液ライン15は、加熱ユニット9Aにより生成された加熱液を温度調節器3Aに供給するための加熱液供給ライン16と、処理チャンバ2Aおよび温度調節器3Aを通過した加熱液を加熱ユニット9Aに戻すための加熱液戻りライン17を備えている。温度調節器3Aと処理チャンバ2Aとの間を延びる温度調節液ライン18は、温度調節器3Aにより生成された温度調節液を処理チャンバ2Aに供給するための温度調節液供給ライン19と、処理チャンバ2Aを通過した温度調節液を温度調節器3Aに戻すための温度調節液戻りライン20を備えている。
【0027】
冷却液供給ライン13の一端は、熱交換ユニット8Aに連結され、加熱液供給ライン16の一端は、加熱ユニット9Aに連結されている。冷却液供給ライン13および加熱液供給ライン16の他端は、温度調節器3Aの混合部22に連結されている。熱交換ユニット8Aにより生成された冷却液と、加熱ユニット9Aにより生成された加熱液は、冷却液供給ライン13および加熱液供給ライン16をそれぞれ流れて、温度調節器3Aの混合部22で混合され、温度調節液を形成する。処理チャンバ2Aに送られる温度調節液の温度は、冷却液の流量と加熱液の流量(すなわち、冷却液と加熱液との混合比)によって決まる。温度調節器3Aは、図示しない冷却液流量調節弁および加熱液流量調節弁を備え、処理チャンバ2Aの目標温度に基づいて、冷却液流量調節弁および加熱液流量調節弁により冷却液の流量および加熱液の流量を調節する。このようにして、温度調節器3Aは、処理チャンバ2Aの温度を調節するための温度調節液を生成する。
【0028】
一実施形態では、冷却液の流量を0にして、処理チャンバ2Aに加熱液のみを供給してもよい。同様に、加熱液の流量を0にして、処理チャンバ2Aに冷却液のみを供給してもよい。処理チャンバ2Aの目標温度は、処理チャンバ2Aを冷却するための温度であってもよいし、処理チャンバ2Aを加熱するための温度であってもよい。
【0029】
温度調節器3Aの混合部22は、温度調節液供給ライン19を通じて処理チャンバ2Aに連結されている。温度調節器3Aにより生成された温度調節液は、温度調節液供給ライン19を流れて、処理チャンバ2Aに供給される。処理チャンバ2Aは、温度調節液戻りライン20を通じて温度調節器3Aの分配部23に連結されている。冷却液戻りライン14の一端は分配部23に連結され、冷却液戻りライン14の他端は熱交換ユニット8Aに連結されている。加熱液戻りライン17の一端は分配部23に連結され、加熱液戻りライン17の他端は加熱ユニット9Aに連結されている。
【0030】
処理チャンバ2A内を通過した温度調節液は、温度調節液戻りライン20を流れて温度調節器3Aの分配部23で冷却液戻りライン14と加熱液戻りライン17に分配される。すなわち、温度調節液の一部は、冷却液として冷却液戻りライン14を通じて熱交換ユニット8Aに戻され、温度調節液の他の部分は、加熱液として加熱液戻りライン17を通じて加熱ユニット9Aに戻される。このようにして、冷却液は、冷却液ライン12および温度調節液ライン18を通じて、熱交換ユニット8A、温度調節器3A、および処理チャンバ2Aとの間を循環する。加熱液は、加熱液ライン15および温度調節液ライン18を通じて、加熱ユニット9A、温度調節器3A、および処理チャンバ2Aとの間を循環する。
【0031】
同様に、熱交換ユニット8Bにより生成された冷却液は、熱交換ユニット8B、温度調節器3B、および処理チャンバ2Bとの間を循環し、加熱ユニット9Bにより生成された加熱液は、加熱ユニット9B、温度調節器3B、および処理チャンバ2Bとの間を循環する。熱交換ユニット8Cにより生成された冷却液は、熱交換ユニット8C、温度調節器3C、および処理チャンバ2Cとの間を循環し、加熱ユニット9Cにより生成された加熱液は、加熱ユニット9C、温度調節器3C、および処理チャンバ2Cとの間を循環する。
【0032】
次に熱交換ユニット8A~8Cの構成について、説明する。3つの熱交換ユニット8A~8Cは、基本的に同じ構成を有しているので、以下では、熱交換ユニット8Aについて説明する。熱交換ユニット8Aは、冷却液を処理チャンバ2Aを通って循環させるための冷却液ポンプ30と、冷却液と冷却装置10から供給された不凍液との間で熱交換を行う熱交換器31と、冷却液の循環方向において、熱交換器31の上流側に配置された冷却側バッファタンク33を備えている。冷却液供給ライン13は、冷却液ポンプ30を介して熱交換器31に連結され、冷却液戻りライン14は冷却側バッファタンク33を介して熱交換器31に連結されている。冷却液ポンプ30は、冷却液供給ライン13に連結されており、冷却液の循環方向において、熱交換器31の下流側に配置されている。一実施形態では、冷却液ポンプ30は、冷却液の循環方向において、熱交換器31の上流側に配置されてもよい。冷却側バッファタンク33は、冷却液戻りライン14および熱交換器31に連結されている。冷却液ポンプ30は、冷却液を温度調節器3A、処理チャンバ2A、および熱交換ユニット8Aを通って循環させるように構成されている。
【0033】
冷却液戻りライン14を通じて熱交換ユニット8Aに戻された冷却液は、冷却側バッファタンク33内に貯留される。冷却側バッファタンク33は、熱的バッファとして機能し、熱交換器31に供給される冷却液の温度の変動を低減させることができる。冷却側バッファタンク33から流出した冷却液は熱交換器31に導かれ、熱交換器31内で冷却装置10から供給された不凍液と熱交換を行う。冷却液と不凍液との熱交換の結果、冷却液は冷却され、その一方で不凍液は加熱される。熱交換器31内を通過することによって冷却された冷却液は、冷却液ポンプ30によって冷却液供給ライン13を通じて温度調節器3Aに供給され、温度調節液供給ライン19を通じて処理チャンバ2Aに供給される。このようにして、熱交換ユニット8Aは、冷却液を温度調節器3Aを介して処理チャンバ2Aに供給する。
【0034】
同様に、熱交換ユニット8Bは、冷却液を温度調節器3Bを介して処理チャンバ2Bに供給し、熱交換ユニット8Cは、冷却液を温度調節器3Cを介して処理チャンバ2Cに供給する。本実施形態では、熱交換ユニット8A~8Cは、冷却システム5から個別に取り外し可能に構成されている。これにより、熱交換ユニット8A~8Cのいずれかを取り外して、メンテナンス、修理などを実行することができる。さらに、熱交換ユニット8A~8Cを、仕様を変更した新たなユニットに容易に置き換えることができる。一実施形態では、熱交換ユニット8A~8Cは、冷却システム5から取り外し可能に構成されていなくてもよい。例えば、熱交換ユニット8A~8Cは、加熱ユニット9A~9Cと一体に構成されていてもよい。
【0035】
次に加熱ユニット9A~9Cの構成について、説明する。3つの加熱ユニット9A~9Cは、基本的に同じ構成を有しているので、以下では、加熱ユニット9Aについて説明する。加熱ユニット9Aは、加熱液を加熱する加熱装置40と、加熱液を処理チャンバ2Aを通じて循環させるための加熱液ポンプ41と、加熱液の循環方向において加熱装置40の上流側に配置された加熱側バッファタンク43を備えている。加熱液供給ライン16は、加熱液ポンプ41を介して加熱装置40に連結され、加熱液戻りライン17は加熱側バッファタンク43を介して加熱装置40に連結されている。加熱液ポンプ41は、加熱液供給ライン16に連結されており、加熱液の循環方向において、加熱装置40の下流側に配置されている。一実施形態では、加熱液ポンプ41は、加熱液の循環方向において、加熱装置40の上流側に配置されてもよい。加熱側バッファタンク43は、加熱液戻りライン17および加熱装置40に連結されている。加熱液ポンプ41は、加熱液を温度調節器3A、処理チャンバ2A、および加熱ユニット9Aを通って循環させるように構成されている。
【0036】
加熱液戻りライン17を通じて加熱ユニット9Aに戻された加熱液は、加熱側バッファタンク43内に貯留される。加熱側バッファタンク43は、熱的バッファとして機能し、加熱装置40に流れる加熱液の温度の変動を低減させることができる。加熱側バッファタンク43から流出した加熱液は加熱装置40に導かれ、加熱装置40内で加熱される。加熱装置40内で加熱された加熱液は、加熱液ポンプ41によって加熱液供給ライン16を通じて温度調節器3Aに供給され、温度調節液供給ライン19を通じて処理チャンバ2Aに供給される。このようにして、加熱ユニット9Aは、加熱液を温度調節器3Aを介して処理チャンバ2Aに供給する。加熱装置40は、電気ヒータ等を用いることができる。加熱装置40の構成は、液体を加熱できるものであれば、特に限定されない。
【0037】
同様に、加熱ユニット9Bは、加熱液を温度調節器3Bを介して処理チャンバ2Bに供給し、加熱ユニット9Cは、加熱液を温度調節器3Cを介して処理チャンバ2Cに供給する。本実施形態では、加熱ユニット9A~9Cは、冷却システム5から個別に取り外し可能に構成されている。これにより、加熱ユニット9A~9Cのいずれかを取り外して、メンテナンス、修理などを実行することができる。さらに、加熱ユニット9A~9Cを、仕様を変更した新たなユニットに容易に置き換えることができる。一実施形態では、加熱ユニット9A~9Cは、冷却システム5から取り外し可能に構成されていなくてもよい。例えば、加熱ユニット9A~9Cは、熱交換ユニット8A~8Cと一体に構成されていてもよい。
【0038】
冷却システム5は、3つの熱交換ユニット8A~8Cと冷却装置10との間を延びる不凍液循環ライン25と、不凍液を不凍液循環ライン25内で循環させるための不凍液ポンプ27をさらに備えている。不凍液ポンプ27は、不凍液循環ライン25に配置されており、不凍液を冷却装置10と3つの熱交換ユニット8A~8Cとの間で循環させるように構成されている。不凍液としては、例えば、パーフルオロカーボン(PFC)液、またはエチレングリコール液などを用いることができる。
【0039】
不凍液循環ライン25は、冷却装置10に連結された主幹循環ライン26と、主幹循環ライン26から分岐する第1分岐供給ライン28A、第1分岐戻りライン29A、第2分岐供給ライン28B、第2分岐供戻りライン29B、第3分岐供給ライン28C、および第3分岐戻りライン29Cを備えている。第1分岐供給ライン28Aおよび第1分岐戻りライン29Aは、主幹循環ライン26と熱交換ユニット8Aとの間を延びている。第2分岐供給ライン28Bおよび第2分岐供戻りライン29Bは、主幹循環ライン26と熱交換ユニット8Bとの間を延びている。第3分岐供給ライン28Cおよび第3分岐戻りライン29Cは、主幹循環ライン26と熱交換ユニット8Cとの間を延びている。不凍液ポンプ27は、不凍液循環ライン25の主幹循環ライン26に配置されている。
【0040】
冷却装置10から供給された不凍液は、主幹循環ライン26を流れて、第1分岐供給ライン28A、第2分岐供給ライン28B、および第3分岐供給ライン28Cに分流する。第1分岐供給ライン28Aを流れる不凍液は、熱交換ユニット8Aの熱交換器31に導かれ、上述したように、熱交換器31内で冷却液と熱交換を行う。熱交換器31内を通過することによって加熱された不凍液は、第1分岐戻りライン29Aを通って主幹循環ライン26に合流する。
【0041】
同様に、第2分岐供給ライン28Bを流れる不凍液は、熱交換ユニット8Bの熱交換器31に導かれ、熱交換器31内で冷却液と熱交換を行う。熱交換器31内を通過することによって加熱された不凍液は、第2分岐供戻りライン29Bを通って主幹循環ライン26に合流する。第3分岐供給ライン28Cを流れる不凍液は、熱交換ユニット8Cの熱交換器31に導かれ、熱交換器31内で冷却液と熱交換を行う。熱交換器31内を通過することによって加熱された不凍液は、第3分岐戻りライン29Cを通って主幹循環ライン26に合流する。
【0042】
熱交換ユニット8A~8Cを通過して、主幹循環ライン26に合流した不凍液は、冷却装置10に戻される。第1分岐戻りライン29A、第2分岐供戻りライン29B、および第3分岐戻りライン29Cが主幹循環ライン26に接続される合流点は、第1分岐供給ライン28A、第2分岐供給ライン28B、および第3分岐供給ライン28Cが主幹循環ライン26から分岐する分岐点よりも、不凍液の循環方向において下流側に位置する。
【0043】
本実施形態によれば、熱交換ユニット8A~8Cは、従来の複数のチラー(図11参照)の冷凍サイクルとは異なり、圧縮機、凝縮器、蒸発器などの構成要素を有していないので、サブファブエリア内に大きな設置スペースを必要とせず、半導体製造装置1に使用される複数の処理チャンバ2A~2Cを冷却することができる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、複数の処理チャンバ2A~2Cに供給する冷却液を生成するための、十分に低い温度の不凍液を冷却装置10で包括的に生成することにより、高い冷却効率を達成できる。結果として、冷却装置10の消費電力は、従来の複数のチラーの総消費電力よりも小さく、省エネ運転が達成できる。
【0045】
次に、冷却装置10の構成について説明する。図2は、冷却装置10の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。本実施形態の冷却装置10は、不凍液と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍装置51と、第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍装置52を備えている。第1冷凍装置51は、液相の第1冷媒(冷媒液)を蒸発させて気相の第1冷媒(冷媒ガス)を生成する第1蒸発器61と、気相の第1冷媒を圧縮する第1圧縮機62と、圧縮された気相の第1冷媒を凝縮させて液相の第1冷媒を生成する第1凝縮器64を備えている。本実施形態の第1冷凍装置51は、遠心式の第1圧縮機62を備えたターボ冷凍機(遠心式冷凍機)である。第1蒸発器61、第1圧縮機62、および第1凝縮器64は、第1冷媒ライン66によって連結されている。第1冷媒は、第1冷媒ライン66を通って第1蒸発器61、第1圧縮機62、第1凝縮器64を循環する。
【0046】
第1冷凍装置51は、第1蒸発器61と第1凝縮器64との間に位置する第1膨張機構としての第1膨張弁67をさらに備えている。第1膨張弁67は、第1冷媒ライン66に取り付けられており、第1蒸発器61と第1凝縮器64との間に配置されている。第1凝縮器64から第1蒸発器61に流れる第1冷媒は第1膨張弁67を通過することで、第1冷媒の圧力と温度が低下する。第1膨張弁67を通過した第1冷媒は、第1蒸発器61に流入する。
【0047】
上述した不凍液循環ライン25は、第1蒸発器61に接続されており、第1蒸発器61内で不凍液と第1冷媒との熱交換が行われる。この熱交換の結果、不凍液は冷却されて低温(例えば、-30℃~-120℃)となり、その一方で第1冷媒は不凍液により加熱されて蒸発し、冷媒ガスとなる。冷却された不凍液は、不凍液循環ライン25を通って熱交換ユニット8A~8Cに送られ、冷媒ガスは、第1冷媒ライン66を通って第1圧縮機62に送られる。第1圧縮機62は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒ガスを第1凝縮器64に送る。第1凝縮器64では、後述するように、冷媒ガスは、凝縮されて冷媒液となる。
【0048】
第2冷凍装置52は、液相の第2冷媒(冷媒液)を蒸発させて気相の第2冷媒(冷媒ガス)を生成する第2蒸発器71と、気相の第2冷媒を圧縮する第2圧縮機72と、圧縮された気相の第2冷媒を凝縮させて液相の第2冷媒を生成する第2凝縮器74を備えている。本実施形態の第2冷凍装置52は、遠心式の第2圧縮機72を備えたターボ冷凍機(遠心式冷凍機)である。第2蒸発器71、第2圧縮機72、および第2凝縮器74は、第2冷媒ライン76によって連結されている。第2冷媒は、第2冷媒ライン76を通って第2蒸発器71、第2圧縮機72、第2凝縮器74を循環する。
【0049】
冷却装置10は、第1冷凍装置51と第2冷凍装置52との間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ライン55をさらに備えている。中間媒体循環ライン55は、第1冷凍装置51と第2冷凍装置52とに接続されている。より具体的には、中間媒体循環ライン55は、中間媒体を第2冷凍装置52の第2蒸発器71から第1冷凍装置51の第1凝縮器64に送るための中間媒体送りライン55Aと、中間媒体を第1冷凍装置51の第1凝縮器64から第2冷凍装置52の第2蒸発器71に戻すための中間媒体戻りライン55Bを有している。中間媒体送りライン55Aの一端は第1凝縮器64に接続され、中間媒体送りライン55Aの他端は第2蒸発器71に接続されている。中間媒体戻りライン55Bの一端は第1凝縮器64に接続され、中間媒体戻りライン55Bの他端は第2蒸発器71に接続されている。
【0050】
中間媒体は、中間媒体循環ライン55を通って第1冷凍装置51の第1凝縮器64と第2冷凍装置52の第2蒸発器71との間を循環する。気相の第1冷媒(冷媒ガス)と中間媒体は、第1凝縮器64内で熱交換を行う。その結果、気相の第1冷媒は、中間媒体に冷却されて液相の第1冷媒(冷媒液)となる。中間媒体は、第1冷媒に加熱されて温度が上昇する。
【0051】
第1冷媒に加熱された中間媒体と、液相の第2冷媒(冷媒液)は、第2蒸発器71内で熱交換を行う。その結果、液相の第2冷媒は、中間媒体に加熱されて気相の第2冷媒(冷媒ガス)となり、その一方で、中間媒体は、第2冷媒に冷却されて温度が低下する。冷却された中間媒体は、中間媒体循環ライン55を通って第1冷凍装置51の第1凝縮器64に送られる。冷却された中間媒体と第1冷媒は、第1凝縮器64内で熱交換を行う。このようにして、中間媒体は、中間媒体循環ライン55を通って第1冷凍装置51の第1凝縮器64と第2冷凍装置52の第2蒸発器71との間を循環する。第2蒸発器71から第1凝縮器64に向かって流れる中間媒体の温度は、例えば、0℃~-80℃である。
【0052】
第2蒸発器71では、第2冷媒は中間媒体により加熱されて蒸発し、冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第2冷媒ライン76を通って第2圧縮機72に送られる。第2圧縮機72は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒ガスを第2凝縮器74に送る。第2凝縮器74では、図示しない冷却水源から供給される冷却水と、冷媒ガス(気相の第2冷媒)と熱交換が行われる。その結果、冷媒ガスは、凝縮されて冷媒液となる。
【0053】
上述したように、第1冷凍装置51の第1冷媒と第2冷凍装置52の第2冷媒は、中間媒体を介して熱交換する。中間媒体は、第1冷媒および第2冷媒とは異なる種類の液体である。より具体的には、中間媒体は、パーフルオロカーボン(PFC)液、またはエチレングリコール液などのブライン(不凍液)である。したがって、中間媒体は、液相のまま中間媒体循環ライン55を循環する。
【0054】
中間媒体には、第1冷媒の熱を第2冷媒に伝達することができる限りにおいて、第1冷媒および第2冷媒よりも取り扱いが容易なブライン(不凍液)を使用することができる。したがって、中間媒体循環ライン55には、樹脂チューブなどの柔軟性のある安価な配管を使用することができる。結果として、製造コストを下げることができ、さらには第1冷凍装置51と第2冷凍装置52の配置の自由度が増す。
【0055】
また、中間媒体は、その体積に応じた熱的容量を有するので、第1冷媒と第2冷媒との間の熱的バッファとしても機能する。一般に、熱交換ユニット8A~8Cにおいて熱交換に使用された不凍液の温度は変動し、これに応じて第1冷媒の温度も変動しやすい。中間媒体は、このような第1冷媒の温度の変動を吸収することができるので、冷却装置10の運転を安定させることができる。結果として、冷却装置10は、安定した温度の不凍液を熱交換ユニット8A~8Cに供給することができる。
【0056】
第2冷凍装置52は、第2蒸発器71と第2凝縮器74との間に位置する第2膨張機構としての第2膨張弁77をさらに備えている。第2膨張弁77は、第2冷媒ライン76に取り付けられており、第2蒸発器71と第2凝縮器74との間に配置されている。第2凝縮器74から第2蒸発器71に流れる第2冷媒は第2膨張弁77を通過することで、第2冷媒の圧力と温度が低下する。第2膨張弁77を通過した第2冷媒は、第2蒸発器71に流入する。
【0057】
本実施形態によれば、第1冷凍装置51と第2冷凍装置52を備えた冷却装置10は、複数の処理チャンバ2A~2Cを包括的に冷却し、第1冷凍装置51と第2冷凍装置52が直列に接続されることにより二元冷凍サイクルの冷却装置と同等の作用があり、必要な十分に低い温度にまで不凍液を冷却することができる。さらに、第1冷凍装置51および第2冷凍装置52は、別個の装置として構成されているため、異なる場所に設置することができる。本実施形態では、第1冷凍装置51は、サブファブエリア内に配置され、第2冷凍装置52は、クリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置されている。第1冷凍装置51をサブファブエリア内に配置することにより、熱交換ユニット8A~8Cまでの配管を短くすることができ、熱損失を減らすことができる。第2冷凍装置52をクリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置することにより、クリーンルームとサブファブエリア内に必要な設置スペースを小さくすることができる。
【0058】
通常、第1冷凍装置51には、第1圧縮機62の軸受部分などに潤滑油が用いられる。しかしながら、サブファブエリア内では高い清浄度が要求されるため、サブファブエリア内に第1冷凍装置51を配置する場合、第1冷凍装置51に潤滑油を使用できないことがあった。さらに、サブファブエリア内では、低騒音であることも求められる。そこで、本実施形態では、第1冷凍装置51の第1圧縮機62は、潤滑油を使用せず、低騒音を実現するために、軸受装置として磁気軸受を備えている。
【0059】
図3は、第1冷凍装置51の第1圧縮機62の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。本実施形態の第1圧縮機62は、単段遠心式圧縮機から構成されている。より具体的には、第1圧縮機62は、単段の羽根車81と、羽根車81と一体に回転可能な回転体82と、羽根車81および回転体82を回転させる電動機83と、回転体82を非接触で回転可能に支持する磁気軸受85および磁気軸受86を備えている。本実施形態では、回転体82は、回転軸であり、羽根車81は回転軸に固定されている。一実施形態では、回転体82は、回転軸とギヤとの組み合わせであってもよい。一実施形態では、羽根車81は回転体82と一体に構成されてもよい。磁気軸受85および磁気軸受86は、電動機83の内部に配置されており、回転体82を磁気浮上させて非接触で支持するように構成されている。一実施形態では、第1圧縮機62は、多段の羽根車を備えた多段遠心式圧縮機であってもよい。
【0060】
第1圧縮機62の吸込口には、第1冷媒の羽根車81への吸込流量を調整するガイドベーン88が配置されている。ガイドベーン88は羽根車81の吸込側に位置している。ガイドベーン88は放射状に配置されており、各ガイドベーン88が自身の軸心を中心として互いに同期して所定の角度だけ回転することにより、ガイドベーン88の開度が変更される。第1蒸発器61から送られた第1冷媒の冷媒ガスは、ガイドベーン88を通過し、その後、回転する羽根車81によって昇圧される。昇圧された第1冷媒の冷媒ガスは、第1冷媒ライン66を通って第1凝縮器64に送られる。
【0061】
本実施形態によれば、第1圧縮機62は、非接触で回転体82を支持する磁気軸受85および磁気軸受86を備えているため、第1圧縮機62に潤滑油を使用する必要がなく、高い清浄度かつ低騒音で稼働させることができる。結果として、第1冷凍装置51を高い清浄度かつ低騒音が求められるサブファブエリア内に配置することができる。一実施形態では、第2冷凍装置52も第1冷凍装置51と同様の構成を備え、第2圧縮機72が非接触で回転体(図示せず)を支持する磁気軸受(図示せず)を備えてもよい。この場合、第2冷凍装置52はサブファブエリア内に配置されてもよい。
【0062】
図4は、冷却装置10の詳細構造の他の実施形態を示す模式図である。図4に示す冷却装置10は、異なる沸点を有する第1冷媒と第2冷媒を用いた二元冷凍サイクルを備えている。第1冷媒の沸点は、第2冷媒の沸点よりも低い。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0063】
第1冷凍装置51の凝縮器と、第2冷凍装置52の蒸発器は、共通のカスケードコンデンサ90から構成されている。カスケードコンデンサ90は、第1冷凍装置51の凝縮器が第2冷凍装置52の蒸発器を兼ねている熱交換器である。二元冷凍サイクルを備えた冷却装置10は、サブファブエリアに設置場所を確保できる場合は、サブファブエリア内に設置されてもよく、あるいは、クリーンルームおよびサブファブエリア内に設置場所を確保できない場合は、サブファブエリアの外に設置されてもよい。
【0064】
本実施形態では、上述した中間媒体循環ライン55は設けられていない。第1冷凍装置51の第1冷媒ライン66と、第2冷凍装置52の第2冷媒ライン76の両方は、カスケードコンデンサ90に接続されている。第1冷凍装置51を循環する第1冷媒および第2冷凍装置52を循環する第2冷媒は、カスケードコンデンサ90を流れ、カスケードコンデンサ90内で第1冷媒と第2冷媒との熱交換が行われる。
【0065】
本実施形態によれば、二元冷凍サイクルを備えた冷却装置10は、複数の処理チャンバ2A~2Cを冷却するのに必要な十分に低い温度まで、不凍液を冷却することができる。また、カスケードコンデンサ90は第1冷凍装置51の凝縮器が第2冷凍装置52の蒸発器を兼ねているので、熱交換器を減らすことができ、冷却装置10の設置面積を減らすことができる。
【0066】
図5は、冷却システム5を含む半導体製造システムの他の実施形態を示す模式図である。本実施形態の冷却装置10は、単一のターボ冷凍機(遠心式冷凍機)であり、冷却装置10の全体はサブファブエリア内に配置されている。図6は、図5に示す冷却装置10の詳細構造の一実施形態を示す模式図である。冷却装置(ターボ冷凍機)10は、冷媒液を蒸発させて冷媒ガス(気相の冷媒)を生成する蒸発器101と、冷媒ガスを圧縮する圧縮機102と、圧縮された冷媒ガスを凝縮させて冷媒液(液相の冷媒)を生成する凝縮器104を備えている。蒸発器101、圧縮機102、および凝縮器104は、冷媒ライン106によって連結されている。冷媒(冷媒ガスまたは冷媒液)は、冷媒ライン106を通って蒸発器101、圧縮機102、凝縮器104を循環する。
【0067】
冷却装置(ターボ冷凍機)10は、蒸発器101と凝縮器104との間に位置する膨張機構としての膨張弁107をさらに備えている。膨張弁107は、冷媒ライン106に取り付けられている。凝縮器104から蒸発器101に流れる冷媒液は膨張弁107を通過することで、冷媒液の圧力と温度が低下する。膨張弁107を通過した冷媒液は、蒸発器101に流入する。
【0068】
上述した不凍液循環ライン25は、蒸発器101に接続されており、蒸発器101内で不凍液と冷媒液との熱交換が行われる。この熱交換の結果、不凍液は冷却されて低温(例えば、-30℃~-120℃)となり、その一方で冷媒液は不凍液により加熱されて蒸発し、冷媒ガスとなる。冷却された不凍液は、不凍液循環ライン25を通って熱交換ユニット8A~8Cに送られ、冷媒ガスは、冷媒ライン106を通って圧縮機102に送られる。圧縮機102は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒ガスを凝縮器104に送る。凝縮器104は、冷媒ガスを凝縮して、冷媒液を生成する。
【0069】
本実施形態の圧縮機102は、潤滑油を使用せず、低騒音を実現するために、軸受装置として磁気軸受を備えている。圧縮機102の構成の詳細は、図3を参照して説明した第1冷凍装置51の第1圧縮機62の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0070】
圧縮機102に磁気軸受を使用した本実施形態の冷却装置(ターボ冷凍機)10は、遠心式の圧縮機102を使用することにより、容積式の圧縮機を使用している従来のチラーと比較して大容量化、および高効率化を図ることができる。また、磁気軸受を使用することにより、オイルフリーとなり、油回収をする必要がなく、さらに効率化される。そのため、単独で複数の処理チャンバ2A~2Cを包括的に冷却するのに必要な十分に低い温度にまで不凍液を冷却することができる。本実施形態の冷却装置(ターボ冷凍機)10は、図2を参照して説明した第1冷凍装置51および第2冷凍装置52のそれぞれよりも冷凍能力の高い大型のターボ冷凍機である。したがって、本実施形態の冷却装置(ターボ冷凍機)10は、単独で不凍液の温度を-30℃~-120℃程度まで冷却することができる。
【0071】
図5に示す実施形態では、冷却装置(ターボ冷凍機)10はサブファブエリア内に配置されているが、一実施形態では冷却装置(ターボ冷凍機)10はクリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置されてもよい。
【0072】
図7は、冷却システム5を含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。一実施形態では、図7に示すように、冷却装置10は、クリーンルームおよびサブファブエリアの外に配置されてもよい。本実施形態では、熱交換ユニット8A~8C、加熱ユニット9A~9Cは、サブファブエリア内に配置されている。このような冷却装置10の配置により、クリーンルームとサブファブエリア内に必要な設置スペースを小さくすることができる。図7に示す実施形態には、図2乃至図6を参照して説明したいずれの冷却装置10を適用してもよい。
【0073】
冷却装置10の構成は、不凍液の温度を-30℃~-120℃程度まで冷却できるものであれば、図2乃至図6を参照して説明した実施形態に限定されない。
【0074】
図8は、冷却システム5を含む半導体製造システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図1を参照して説明した実施形態では、冷却システム5は、複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の熱交換ユニット(3つの処理チャンバ2A~2Cと同じ数の3つの熱交換ユニット8A~8C)を備えているが、一実施形態では、冷却システム5は、複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の熱交換ユニットを備えてもよい。図8に示す実施形態では、冷却システム5は、単一の熱交換ユニット8を備えている。
【0075】
同様に、図1を参照して説明した実施形態では、冷却システム5は、複数の処理チャンバの数と同じ数の複数の加熱ユニット(3つの処理チャンバ2A~2Cと同じ数の3つの加熱ユニット9A~9C)を備えているが、一実施形態では、冷却システム5は、複数の処理チャンバの数よりも少ない数の複数の加熱ユニットを備えてもよい。図8に示す実施形態では、冷却システム5は、単一の加熱ユニット9を備えている。熱交換ユニット8および加熱ユニット9の構成は、上述した熱交換ユニット8Aおよび加熱ユニット9Aの構成と基本的に同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0076】
本実施形態では、冷却システム5の不凍液循環ライン25は、熱交換ユニット8と冷却装置10との間を延びている。不凍液ポンプ27は、不凍液循環ライン25に配置されており、不凍液を冷却装置10と熱交換ユニット8との間で循環させるように構成されている。冷却装置10から供給された不凍液は、不凍液循環ライン25を流れて、熱交換ユニット8の熱交換器31に導かれ、熱交換器31内で冷却液と熱交換を行う。熱交換器31内を通過することによって加熱された不凍液は、不凍液循環ライン25を通って冷却装置10に戻される。
【0077】
熱交換ユニット8により生成された冷却液は、冷却液供給ライン13を通じて温度調節器3A~3Cに供給される。より具体的には、冷却液供給ライン13は、熱交換ユニット8の熱交換器31に連結された主幹冷却液供給ライン93と、主幹冷却液供給ライン93から分岐する第1冷却液供給ライン93A、第2冷却液供給ライン93B、および第3冷却液供給ライン93Cを備えている。第1冷却液供給ライン93Aは、主幹冷却液供給ライン93と温度調節器3Aとの間を延びている。第2冷却液供給ライン93Bは、主幹冷却液供給ライン93と温度調節器3Bとの間を延びている。第3冷却液供給ライン93Cは、主幹冷却液供給ライン93と温度調節器3Cとの間を延びている。冷却液ポンプ30は、主幹冷却液供給ライン93に連結されている。
【0078】
熱交換ユニット8により生成された冷却液は、主幹冷却液供給ライン93を流れて、第1冷却液供給ライン93A、第2冷却液供給ライン93B、および第3冷却液供給ライン93Cに分流する。第1冷却液供給ライン93Aを流れる冷却液は、温度調節器3Aの混合部22で加熱ユニット9により生成された加熱液と混合され、処理チャンバ2Aに供給される。同様に、第2冷却液供給ライン93Bを流れる冷却液は、温度調節器3Bの混合部22で加熱ユニット9により生成された加熱液と混合され、処理チャンバ2Bに供給される。第3冷却液供給ライン93Cを流れる冷却液は、温度調節器3Cの混合部22で加熱ユニット9により生成された加熱液と混合され、処理チャンバ2Cに供給される。このようにして、熱交換ユニット8は、冷却液を温度調節器3A~3Cを介して処理チャンバ2A~2Cに供給する。
【0079】
加熱ユニット9により生成された加熱液は、加熱液供給ライン16を通じて温度調節器3A~3Cに供給される。より具体的には、加熱液供給ライン16は、加熱ユニット9の加熱装置40に連結された主幹加熱液供給ライン96と、主幹加熱液供給ライン96から分岐する第1加熱液供給ライン96A、第2加熱液供給ライン96B、および第3加熱液供給ライン96Cを備えている。第1加熱液供給ライン96Aは、主幹加熱液供給ライン96と温度調節器3Aとの間を延びている。第2加熱液供給ライン96Bは、主幹加熱液供給ライン96と温度調節器3Bとの間を延びている。第3加熱液供給ライン96Cは、主幹加熱液供給ライン96と温度調節器3Cとの間を延びている。加熱液ポンプ41は、主幹加熱液供給ライン96に連結されている。
【0080】
加熱ユニット9により生成された加熱液は、主幹加熱液供給ライン96を流れて、第1加熱液供給ライン96A、第2加熱液供給ライン96B、および第3加熱液供給ライン96Cに分流する。第1加熱液供給ライン96Aを流れる加熱液は、温度調節器3Aの混合部22で熱交換ユニット8により生成された冷却液と混合され、処理チャンバ2Aに供給される。同様に、第2加熱液供給ライン96Bを流れる加熱液は、温度調節器3Bの混合部22で熱交換ユニット8により生成された冷却液と混合され、処理チャンバ2Bに供給される。第3加熱液供給ライン96Cを流れる加熱液は、温度調節器3Cの混合部22で熱交換ユニット8により生成された冷却液と混合され、処理チャンバ2Cに供給される。このようにして、加熱ユニット9は、加熱液を温度調節器3A~3Cを介して処理チャンバ2A~2Cに供給する。
【0081】
処理チャンバ2A~2C内を通過した温度調節液は、温度調節液戻りライン20を流れて温度調節器3A~3Cの分配部23で冷却液戻りライン14と加熱液戻りライン17に分配される。すなわち、温度調節液の一部は、冷却液として冷却液戻りライン14を通じて熱交換ユニット8に戻され、温度調節液の他の部分は、加熱液として加熱液戻りライン17を通じて加熱ユニット9に戻される。冷却液戻りライン14は、熱交換ユニット8に連結された主幹冷却液戻りライン94と、主幹冷却液戻りライン94に合流する第1冷却液戻りライン94A、第2冷却液戻りライン94B、および第3冷却液戻りライン94Cを備えている。第1冷却液戻りライン94Aは、主幹冷却液戻りライン94と温度調節器3Aとの間を延びている。第2冷却液戻りライン94Bは、主幹冷却液戻りライン94と温度調節器3Bとの間を延びている。第3冷却液戻りライン94Cは、主幹冷却液戻りライン94と温度調節器3Cとの間を延びている。
【0082】
処理チャンバ2A内を通過し、温度調節器3Aの分配部23で分配された冷却液は、第1冷却液戻りライン94Aを流れて、主幹冷却液戻りライン94に合流する。処理チャンバ2B内を通過し、温度調節器3Bの分配部23で分配された冷却液は、第2冷却液戻りライン94Bを流れて、主幹冷却液戻りライン94に合流する。処理チャンバ2C内を通過し、温度調節器3Cの分配部23で分配された冷却液は、第3冷却液戻りライン94Cを流れて、主幹冷却液戻りライン94に合流する。主幹冷却液戻りライン94を流れる冷却液は、熱交換ユニット8に戻される。
【0083】
加熱液戻りライン17は、加熱ユニット9に連結された主幹加熱液戻りライン97と、主幹加熱液戻りライン97に合流する第1加熱液戻りライン97A、第2加熱液戻りライン97B、および第3加熱液戻りライン97Cを備えている。第1加熱液戻りライン97Aは、主幹加熱液戻りライン97と温度調節器3Aとの間を延びている。第2加熱液戻りライン97Bは、主幹加熱液戻りライン97と温度調節器3Bとの間を延びている。第3加熱液戻りライン97Cは、主幹加熱液戻りライン97と温度調節器3Cとの間を延びている。
【0084】
処理チャンバ2A内を通過し、温度調節器3Aの分配部23で分配された加熱液は、第1加熱液戻りライン97Aを流れて、主幹加熱液戻りライン97に合流する。処理チャンバ2B内を通過し、温度調節器3Bの分配部23で分配された加熱液は、第2加熱液戻りライン97Bを流れて、主幹加熱液戻りライン97に合流する。処理チャンバ2C内を通過し、温度調節器3Cの分配部23で分配された加熱液は、第3加熱液戻りライン97Cを流れて、主幹加熱液戻りライン97に合流する。主幹加熱液戻りライン97を流れる加熱液は、加熱ユニット9に戻される。
【0085】
このようにして、冷却液は、冷却液ライン12および温度調節液ライン18を通じて、熱交換ユニット8、温度調節器3A~3C、および処理チャンバ2A~2Cの間を循環する。加熱液は、加熱液ライン15および温度調節液ライン18を通じて、加熱ユニット9、温度調節器3A~3C、および処理チャンバ2A~2Cの間を循環する。
【0086】
本実施形態によれば、熱交換ユニット8自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、熱交換ユニット8に接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。また、冷却液戻りライン14を通じて熱交換ユニット8に戻された冷却液は、冷却側バッファタンク33内に貯留される。冷却側バッファタンク33がひとつになるので、各処理チャンバ2A~2Cからの戻りの冷却液の温度にばらつきがあっても冷却側バッファタンク33が熱的バッファとして機能して冷却液が均一の温度となり、熱交換器31での熱交換条件が良くなる。
【0087】
さらに、本実施形態によれば、加熱ユニット9自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、加熱ユニット9に接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。また、処理チャンバ2A~2C内で実行される処理サイクル中に処理チャンバ2A~2Cを加熱すべき時間は比較的短い。したがって、複数の処理チャンバ2A~2Cでの加熱時間が重複しないように処理チャンバ2A~2Cの処理サイクルを調整すれば、加熱能力が大きくない(すなわち消費電力の小さい)加熱装置40を用いて複数の処理チャンバ2A~2Cを加熱することができる。また、加熱液戻りライン17を通じて加熱ユニット9に戻された加熱液は、加熱側バッファタンク43内に貯留される。加熱側バッファタンク43がひとつになるので、各処理チャンバ2A~2Cからの戻りの加熱液の温度にばらつきがあっても加熱側バッファタンク43内が熱的バッファとして機能して加熱液が均一の温度となり、加熱装置40に流れる加熱液の温度の変動を低減させることができる。
【0088】
一実施形態では、図9に示すように、冷却システム5は、単一の熱交換ユニット8と、複数の加熱ユニット9A~9Cを備えてもよい。単一の熱交換ユニット8、冷却液供給ライン13、および冷却液戻りライン14の構成は、図8を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。冷却装置10、複数の加熱ユニット9A~9C、加熱液供給ライン16、および加熱液戻りライン17の構成は、図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0089】
本実施形態によれば、複数の加熱ユニット9A~9Cは、複数の処理チャンバ2A~2C内の処理サイクルに従って独立に動作することができる。さらに、本実施形態によれば、熱交換ユニット8自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、熱交換ユニット8に接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。また、冷却側バッファタンク33がひとつになるので、処理チャンバ2A~2Cからの戻りの冷却液の温度にばらつきがあっても冷却側バッファタンク33内で均一の温度となり、熱交換器31での熱交換条件が良くなる。
【0090】
一実施形態では、図10に示すように、冷却システム5は、複数の熱交換ユニット8A~8Cと、単一の加熱ユニット9を備えてもよい。冷却装置10、複数の熱交換ユニット8A~8C、冷却液供給ライン13、および冷却液戻りライン14の構成は、図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。単一の加熱ユニット9、加熱液供給ライン16、および加熱液戻りライン17の構成は、図8を参照して説明した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0091】
本実施形態によれば、複数の熱交換ユニット8A~8Cは、複数の処理チャンバ2A~2C内の処理サイクルに従って独立に動作することができる。さらに、本実施形態によれば、加熱ユニット9自体に必要な設置スペースが小さくできるのみならず、加熱ユニット9に接続される配管の数も少なくすることができる。結果として、サブファブエリア内に必要な設置スペースをさらに小さくすることができる。また、処理チャンバ2A~2C内で実行される処理サイクル中に処理チャンバ2A~2Cを加熱すべき時間は比較的短い。したがって、複数の処理チャンバ2A~2Cでの加熱時間が重複しないように処理チャンバ2A~2Cの処理サイクルを調整すれば、加熱能力が大きくない(すなわち消費電力の小さい)加熱装置40を用いて複数の処理チャンバ2A~2Cを加熱することができる。
【0092】
図9および図10に示す実施形態には、図4乃至図7を参照して説明した冷却装置10を適用してもよい。
【0093】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0094】
1 半導体製造装置
2A~2C 処理チャンバ
3A~3C 温度調節器
5 冷却システム
8,8A,8B,8C 熱交換ユニット
9,9A,9B,9C 加熱ユニット
10 冷却装置
12 冷却液ライン
13 冷却液供給ライン
14 冷却液戻りライン
15 加熱液ライン
16 加熱液供給ライン
17 加熱液戻りライン
18 温度調節液ライン
19 温度調節液供給ライン
20 温度調節液戻りライン
22 混合部
23 分配部
25 不凍液循環ライン
26 主幹循環ライン
27 不凍液ポンプ
28A 第1分岐供給ライン
29A 第1分岐戻りライン
28B 第2分岐供給ライン
29B 第2分岐供戻りライン
28C 第3分岐供給ライン
29C 第3分岐戻りライン
30 冷却液ポンプ
31 熱交換器
33 冷却側バッファタンク
40 加熱装置
41 加熱液ポンプ
43 加熱側バッファタンク
51 第1冷凍装置
52 第2冷凍装置
55 中間媒体循環ライン
61 第1蒸発器
62 第1圧縮機
64 第1凝縮器
66 第1冷媒ライン
67 第1膨張弁
71 第2蒸発器
72 第2圧縮機
74 第2凝縮器
76 第2冷媒ライン
77 第2膨張弁
81 羽根車
82 回転体
83 電動機
85,86 磁気軸受
88 ガイドベーン
90 カスケードコンデンサ
93 主幹冷却液供給ライン
93A 第1冷却液供給ライン
93B 第2冷却液供給ライン
93C 第3冷却液供給ライン
94 主幹冷却液戻りライン
94A 第1冷却液戻りライン
94B 第2冷却液戻りライン
94C 第3冷却液戻りライン
96 主幹加熱液供給ライン
96A 第1加熱液供給ライン
96B 第2加熱液供給ライン
96C 第3加熱液供給ライン
97 主幹加熱液戻りライン
97A 第1加熱液戻りライン
97B 第2加熱液戻りライン
97C 第3加熱液戻りライン
101 蒸発器
102 圧縮機
104 凝縮器
106 冷媒ライン
107 膨張弁
501 エッチング装置
502 処理チャンバ
505 チラー
506 蒸発器
507 圧縮機
508 凝縮器
510 大型冷凍機
【要約】
【課題】大きな設置スペースを必要とせず、半導体製造装置に使用される複数の処理チャンバを冷却することができ、かつ冷却システム全体の消費電力を削減することができる冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却システム5は、クリーンルーム内に配置された複数の処理チャンバ2A~2Cを冷却するための冷却液を生成し、冷却液を複数の処理チャンバ2A~2Cに供給する少なくとも1つの熱交換ユニット8と、不凍液を冷却するための冷却装置と、熱交換ユニット8と冷却装置10との間を延びる不凍液循環ライン25と、不凍液を循環させるための不凍液ポンプ27を備え、熱交換ユニット8は、冷却液を循環させるための冷却液ポンプ30と、冷却液と不凍液との間で熱交換を行う熱交換器31と、冷却液の循環方向において、熱交換器31の上流側に配置された冷却側バッファタンク33を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11