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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】セラミックス基板、静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240902BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C04B35/111
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023060118
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2020019825の分割
【原出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2023080153
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知剛
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004749(JP,A)
【文献】特開2005-286107(JP,A)
【文献】特開2017-103389(JP,A)
【文献】特開2014-075572(JP,A)
【文献】特開2012-073162(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155053(WO,A1)
【文献】特開平06-290635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C04B 35/111
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、
前記基板本体に内接された導電体層と、
を有し、
前記基板本体は、
酸化アルミニウムからなるセラミックスである絶縁体層と、
前記絶縁体層と前記導電体層との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層と、
を備え
前記絶縁体層は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であり、
前記導電体層は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である、
セラミックス基板。
【請求項2】
ケイ素は、前記複合酸化物層に局在している、請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項3】
前記セラミックス基板は、半導体装置用パッケージに用いられる、請求項1又は請求項2に記載のセラミックス基板。
【請求項4】
基板本体と、
前記基板本体に内接された静電電極と、
を有し、
前記基板本体は、
酸化アルミニウムからなるセラミックスである絶縁体層と、
前記絶縁体層と前記静電電極との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層と、
を備え
前記絶縁体層は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であり、
前記静電電極は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である、
静電チャック。
【請求項5】
ケイ素は、前記複合酸化物層に局在している、請求項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記絶縁体層は、相対密度が98%以上である、請求項4又は請求項5に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記絶縁体層は、前記酸化アルミニウムの平均粒子径が1.0μm以上3.0μm以下である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記絶縁体層と前記静電電極は同時焼成によってなる焼成体である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記静電電極は、タングステンの平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下である導電性ペーストを焼成した焼成体であり、タングステン成分は前記静電電極に局在する、請求項から請求項のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記静電電極は、酸化ニッケルの平均粒子径が5.0μm以上15.0μm以下である導電性ペーストを焼成した焼成体であり、ニッケルは、前記静電電極に局在する、請求項から請求項のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記静電電極は、酸化アルミニウムの平均粒子径が0.1μm以上4.0μm以下である導電性ペーストを焼成した焼成体であり、アルミニウムは、前記絶縁体層と前記静電電極と前記複合酸化物層とに存在する、請求項から請求項10のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項12】
前記静電電極は、二酸化ケイ素の平均粒子径が0.1μm以上12.0μm以下である導電性ペーストを焼成した焼成体であり、ケイ素は、前記静電電極と前記複合酸化物層とに局在する、請求項から請求項11のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項13】
前記複合酸化物層は、前記静電電極を形成する導電性ペーストに添加された酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との添加量に応じた厚さである、請求項から請求項12のいずれか一項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セラミックス基板、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の基板を処理する半導体製造装置は、半導体ウェハを保持する静電チャックを有している。半導体製造装置は、たとえばCVD装置やPVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置などである。静電チャックは、セラミックス基板の載置台と載置台内に配置された導体パターンとを有し、導体パターンを静電電極として載置台上の基板を保持する。導体パターンは、例えばタングステン等の高融点材料を含む導電性ペーストを用い、セラミックス基板と同時に焼成して形成される(例えば、特許文献1,2参照)。なお、半導体装置用のセラミックス基板も同様にして形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-331779号公報
【文献】特開平6-290635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の静電チャックは、グリーンシートに導電性ペーストを印刷し、グリーンシートと導電性ペーストとを同時に焼結して形成される。一例として、酸化アルミニウム(アルミナ)を主成分とするセラミックス(アルミナセラミックス)のグリーンシートとタングステンの導電性ペーストを挙げた場合、一般的にアルミナセラミックスには、焼結助剤(例えば、シリカ、マグネシア、カルシア、イットリア、等)が含まれることが多い。このように焼結助剤を含むセラミックスは、使用環境の温度上昇に伴って絶縁抵抗の値が低下し易い。そこで、絶縁抵抗の温度依存性の小さい、焼結助剤を含まないアルミナセラミックスが望まれる。しかし、焼成時に液相となる焼結助剤がないため、導体であるタングステンとの接合強度が得られない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、セラミックス基板は、基板本体と、前記基板本体に内接された導電体層と、を有し、前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスである絶縁体層と、前記絶縁体層と前記導電体層との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層と、を備え、前記絶縁体層は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であり、前記導電体層は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である。
【0006】
本発明の一観点によれば、静電チャックは、基板本体と、前記基板本体に内接された静電電極と、を有し、前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスである絶縁体層と、前記絶縁体層と前記静電電極との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層と、を備え、前記絶縁体層は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であり、前記静電電極は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一観点によれば、高純度の酸化アルミニウムからなるセラミックスに形成された導電体層、静電電極を有するセラミックス基板、静電チャックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態の静電チャックの概略断面図。
図2】静電チャックの概略平面図。
図3】静電チャックの一部断面図。
図4】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図5】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図6】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図7】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図8】(a)は引掻試験を示す斜視図、(b)は剥離試験を示す斜視図。
図9】サンプル1のSE像(二次電子像)を示す断面写真。
図10】サンプル1のアルミニウムの分析結果を示す断面写真。
図11】サンプル1のケイ素の分析結果を示す断面写真。
図12】サンプル1のタングステンの分析結果を示す断面写真。
図13】サンプル1のXRD分析結果を示すチャート図。
図14】サンプル2のSE像(二次電子像)を示す断面写真。
図15】サンプル2のアルミニウムの分析結果を示す断面写真。
図16】サンプル2のケイ素の分析結果を示す断面写真。
図17】サンプル2のタングステンの分析結果を示す断面写真。
図18】サンプル2のXRD分析結果を示すチャート図。
図19】サンプル1,2の試験結果を示す説明図。
図20】セラミックスの温度と抵抗値の関係を示す説明図。
図21】第二実施形態の半導体用パッケージの概略断面図。
図22】半導体用パッケージの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。なお、本明細書において、「平面視」とは、対象物を図1等の鉛直方向(図中上下方向)から視ることを言い、「平面形状」とは、対象物を図1等の鉛直方向から視た形状のことを言う。
【0010】
(第一実施形態)
以下、図1から図20に従って第一実施形態を説明する。
図1は、第一実施形態の静電チャックの概略断面を示す。
【0011】
図1に示すように、静電チャック1は、ベースプレート10と、ベースプレート10の上に配置された載置台20とを有している。載置台20は、たとえばシリコーン樹脂などの接着剤によりベースプレート10の上面に固定されている。なお、ベースプレート10に対して載置台20をネジにより固定してもよい。載置台20の上面には基板Wが載置される。基板Wは、たとえば半導体ウェハである。静電チャック1は、載置台20の上に載置された基板Wを吸着保持する。
【0012】
図2に示すように、ベースプレート10及び載置台20は、平面視で円形状に形成されている。つまり、ベースプレート10及び載置台20は、円盤状に形成されている。図2に示すように、ベースプレート10は、載置台20の周囲において露出している。ベースプレート10の周縁部には、半導体製造装置のチャンバに取り付けるための取付孔11が周縁部に沿って配列されている。また、載置台20及びベースプレート10は、中央部に複数(図2では3つ)のリフトピン用開口部12を有している。リフトピン用開口部12には、図1に示す基板Wを上下方向に移動するリフトピンが挿通される。リフトピンで基板を載置台より上昇させることにより、搬送装置による基板Wの自動搬送が可能になる。
【0013】
ベースプレート10の材料はたとえば、アルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等である。たとえば、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好であることなどの点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものが使用される。ベースプレート10には、たとえば載置台20の上面に載置される基板Wを冷却する冷媒(ガス、冷却水等)の供給路を設けることもできる。
【0014】
図1に示すように、載置台20は、基板本体21と、基板本体21に内設された静電電極31及び発熱体32とを有している。
静電電極31は、膜状に形成された導電体層である。本実施形態の静電電極31は双極タイプのものであり、第1静電電極31aと第2静電電極31bを有している。なお、静電電極31として、1つの静電電極からなる単極タイプのものが使用されてもよい。静電電極31は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を含む焼成体である。静電電極31の材料としては、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を添加した導電性ペーストが使用される。
【0015】
発熱体32は、第1静電電極31a及び第2静電電極31bの下に配置されている。発熱体32は、膜状に形成された導電体層である。発熱体32は、基板本体21を平面的に複数の領域(ヒータゾーン)を独立して加熱制御することが可能な複数のヒータ電極として設けられる。なお、発熱体32が1つのヒータ電極として設けられてもよい。発熱体32は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を含む焼成体である。発熱体32の材料としては、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を添加した導電性ペーストが使用される。
【0016】
図1及び図2に示すように、基板本体21は、基板Wの形状に応じて円盤状に形成されている。
図1図3に示すように、基板本体21は、絶縁体層22と、絶縁体層22と静電電極31との間の複合酸化物層23と、絶縁体層22と発熱体32との間の複合酸化物層24とを備えている。
【0017】
絶縁体層22は、酸化アルミニウム(Al)からなるセラミックスである。「酸化アルミニウムからなるセラミックス」とは、酸化アルミニウム以外の無機成分を添加していないセラミックスを意味する。セラミックスからなる絶縁体層22は、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であることが好ましい。純度が99.5%以上であることは、焼結助剤を添加することなく形成されることを示す。また、純度が99.5%以上であることは、製造工程等において意図しない不純物を含む場合もあることを意味している。絶縁体層22は、相対密度が98%以上であることが好ましい。絶縁体層22は、酸化アルミニウムの平均粒子径が1.0μm以上、3.0μm以下であることが好ましい。
【0018】
図1に示すように、複合酸化物層23は、静電電極31の全体を覆うように形成されている。複合酸化物層24は、発熱体32の全体を覆うように形成されている。複合酸化物層23,24は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)の複合酸化物層である。複合酸化物層23,24は、ムライト(3Al・2SiO(AlSi13))からなる層、シリマナイト(Al・SiO(AlSiO))からなる層、ムライトとシリマナイトとが混在する層である。
【0019】
図3に示すように、絶縁体層22は、例えば3つの絶縁層22a,22b,22cにより構成される。各絶縁層22a,22b,22cは、複合酸化物層23,24とにもに、焼結助剤を含まない酸化アルミニウムと有機材料との混合物からなるグリーンシートを焼結して形成される焼結体である。なお、図3に示す破線は、絶縁層22aと絶縁層22bとの間、絶縁層22bと絶縁層22cとの間の界面を示している。これらの界面は、図4図5に示すグリーンシート51~53を積層することによって形成されるものであり、積層状態によって位置が異なる場合、断面において界面が直線にならない場合、あるいは界面が明確ではない場合がある。
【0020】
載置台20を作製する方法としては、図4図5に示すグリーンシート51~53で静電電極31用の導電体パターン及び発熱体32用の導電体パターンをそれぞれ挟み、その積層体を焼結することにより、基板本体21に静電電極31及び発熱体32が内設されるとともに、基板本体21と静電電極31及び発熱体32との間の複合酸化物層23,24を有する載置台20を得ることができる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の静電チャック1では、載置台20の上に基板Wが載置される。そして、第1静電電極31aにプラス(+)の電圧が印加され、第2静電電極31bにマイナス(-)の電圧が印加される。これにより、第1静電電極31aにプラス(+)電荷が帯電し、第2静電電極31bにマイナス(-)電荷が帯電する。これに伴って、第1静電電極31aに対応する基板Wの部分Waにマイナス(-)電荷が誘起され、第2静電電極31bに対応する基板Wの部分Wbにプラス(+)電荷が誘起される。
【0022】
基板Wと、静電電極31と、静電電極31よりも上に位置する絶縁体層22のセラミックス部22dとをコンデンサとみなした場合、セラミックス部22dが誘電層に相当する。そして、セラミックス部22dを介して静電電極31と基板Wとの間に発生したクーロン力によって基板Wが載置台20の上に静電吸着される。そして、発熱体32に所定の電圧が印加されて載置台20が加熱される。載置台20の温度により、基板Wが所定の温度に制御される。静電チャック1の加熱温度は、50℃~200℃、例えば150℃に設定される。
【0023】
[製造方法]
次に、上記の載置台20の製造方法を説明する。
先ず、図4に示すように、セラミックス材料と有機材料からなるグリーンシート51~53を準備する。各グリーンシート51~53は、矩形板状に形成されている。各グリーンシート51~53のセラミックス材料は酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含まない。
【0024】
グリーンシート51は、有機成分が除去されセラミックス材料が焼結し、緻密化することにより、図1に示す基板Wが搭載される部分の絶縁体層22(絶縁層22a)となるものである。グリーンシート52は、焼成されることにより、静電電極31と発熱体32の間の部分の絶縁体層22(絶縁層22b)となるものである。グリーンシート53は、焼成されることにより、図1に示すベースプレート10に接着される部分の絶縁体層22(絶縁層22c)となるものである。
【0025】
次いで、グリーンシート52の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により、導電ペーストを塗布して導電体パターン54を形成する。この導電体パターン54は、後述する工程において焼成されることにより、図1に示す静電電極31となるものである。なお、導電体パターン54は、上述のグリーンシート51の下面に形成されてもよい。
【0026】
導電体パターン54の形成に用いられる導電性ペーストは、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と有機材料とを混合したものである。酸化ニッケルの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、1.0wt%以下であることが好ましい。酸化ニッケルは、タングステンの焼結性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、5wt%以上添加すると、タングステンの結晶が大きくなりすぎ、基板本体21との十分な密着が得られない。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、タングステンの平均粒径は、0.5μm以上、3.0μm以下であることが好ましい。同様に、酸化ニッケルの平均粒径は、5.0μm以上、15.0μm以下であることが好ましい。
【0027】
酸化アルミニウムの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、3.0wt%以下であることが好ましい。酸化アルミニウムは、静電電極31と酸化アルミニウムからなるセラミックスの基板本体21との密着性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、酸化アルミニウムの平均粒径は、1.0μm以上、4.0μm以下であることが好ましい。
【0028】
二酸化ケイ素の添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、3.0wt%以下であることが好ましい。二酸化ケイ素は、焼成時に液相となり、タングステンの焼結性、及び基板本体21との密着性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性、密着性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、二酸化ケイ素の平均粒径は、0.1μm以上、12.0μm以下であることが好ましい。
【0029】
次いで、グリーンシート53の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により、導電性ペーストを用いて導電体パターン55を形成する。導電体パターン55を形成する導電性ペーストは、上述の導電体パターン54を形成する導電性ペーストと同じ材料の導電性ペーストを用いることができる。この導電体パターン55は、後述する工程において焼成されることにより、発熱体32となるものである。なお、導電体パターン55は、上述のグリーンシート52の下面に形成されてもよい。
【0030】
次いで、図5に示すように、各グリーンシート51~53が積層されて構造体71が形成される。各グリーンシート51~53は、加熱しながら加圧することにより、互いに接着される。
【0031】
次いで、図6に示すように、構造体71の周囲を切断して円盤状の構造体72が形成される。
次いで、構造体72を大気圧焼成して、図7に示すセラミックス基板73が得られる。焼成する際の温度は、例えば、1600℃である。このセラミックス基板73は、図1に示す絶縁体層22と、図4に示す導電体パターン54,55を焼結して得られた静電電極31及び発熱体32(図1参照)と複合酸化物層23,24を内蔵する。このようなセラミックス基板73に対して各種の加工が施される。
【0032】
例えば、セラミックス基板73は、上下両面が研磨されて載置面と接着面とが形成される。また、セラミックス基板73は、図1に示すリフトピン用開口部12が形成される。
以上の工程により、載置台20が得られる。
【0033】
(作用)
[サンプルの形状]
図8(a)は、サンプルの形状を示す。このサンプル80は、セラミックス基板81と、セラミックス基板81の上面の導電体パターン82を有している。このサンプル80は、グリーンシート上に導電性ペーストを印刷し、一体を同時に焼成して形成される。剥離試験に際し、図8(b)に示すように、サンプル80の導電体パターン82の上面に、銅を含む銀ロウを介してコバール製のリング90を加熱接合する。引張試験装置により、セラミックス基板81を固定してリング90の一端を上方に引き上げ、導電体パターン82がセラミックス基板81から剥離した際の試験力を記録する。
【0034】
[サンプルの作成]
(サンプル1)
焼結助剤を含まない酸化アルミニウムのグリーンシートに対して、タングステンの粉末量に対して酸化ニッケル粉末を0.5wt%、アルミナ粉末を2.0wt%、シリカ粉末を2.0wt%添加した導電性ペーストを印刷し、一体を同時に大気圧焼成してサンプル1を作成した。
【0035】
このサンプル1について、EPMA(electron probe microanalyzer)により分析した。
図9は、サンプル1のSE像(二次電子像)を示す。
【0036】
図10は、サンプル1におけるアルミニウムの分析結果を示す。アルミニウムは、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。このため、導電体パターン82とセラミックス基板81との密着強度が向上していると考えられる。
【0037】
図11は、サンプル1におけるケイ素の分析結果を示す。ケイ素は、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。特にセラミックス基板81において、ケイ素は、導電体パターン82とセラミックス基板81との界面から20μm以内の範囲にのみ存在し、それ以遠には存在していないことが確認された。図10及び図11に示すように、セラミックス基板81において、アルミニウムとケイ素とが存在する領域は上述の複合酸化物層83であり、ケイ素が存在しない領域は絶縁体層84である。このように、導電体パターン82とセラミックス基板81の境界近傍にアルミニウムとケイ素の複合酸化物層83が形成されることで、ケイ素がセラミックス基板81の全体に亘って拡散しないため、セラミックス基板81の電気特性を劣化させることなく導電体パターン82とセラミックス基板81との密着強度が向上していると考えられる。
【0038】
図12は、サンプル1におけるタングステンの分析結果を示す。タングステンは、導電体パターン82に局在し、セラミックス基板81に拡散していない。導電体パターン82の良好な焼結性及びセラミックス基板81の良好な電気特性を得るために、タングステンは導電体パターン82にのみ存在することが好ましい。
【0039】
図13は、サンプル1を分析したXRD(X線回折)チャートである。図13の(a)は、サンプル1の導電体パターン82を削り、セラミックス基板81が露出した部分のXRDチャートを示している。図13において、(b)はタングステン、(c)は酸化アルミニウム、(d)はシリマナイト、(e)はムライトの各XRDチャートを示している。図13の結果から、サンプル1のセラミックス基板81は、ムライト、シリマナイト、又はムライトとシリマナイトとが混在する結晶相が形成されていることが確認された。なお、図示しないが、アルミニウムとケイ素の複合酸化物のうち、ムライト、シリマナイト以外の複合酸化物のXRDチャートのピークは、図13の(a)に示すサンプル1のXRDチャートのピークと一致しないことが確認されている。
【0040】
導電性ペーストに添加した酸化ケイ素のケイ素成分は、焼成後に導電体パターン82に留まるものとセラミックス基板81に拡散するものに分かれる。導電体パターン82からセラミックス基板81に拡散したケイ素成分は、導電体パターン82とセラミックス基板81の境界近傍においてアルミニウムとケイ素の複合酸化物層を形成し、セラミック層の内部へは拡散していない。アルミニウムとケイ素の複合酸化物層は、ムライトからなる層、シリマナイトからなる層、又はムライトとシリマナイトと混在した層である。そして、ケイ素成分は、導電性ペーストに添加する酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の添加量に応じて、セラミックス基板81に拡散する。したがって、ケイ素成分の拡散する範囲、つまり酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の添加量により複合酸化物層の厚さを制御できる。
【0041】
(サンプル2)
焼結助剤を含む酸化アルミニウムのグリーンシートに対して、タングステンの粉末量に対して酸化ニッケル粉末を0.5wt%、アルミナ粉末を2.0wt%、シリカ粉末を2.0wt%添加した導電性ペーストを印刷し、一体を同時に大気圧焼成してサンプル2を作成した。
【0042】
このサンプル2について、EPMA(electron probe microanalyzer)により分析した。
図14は、サンプル2のSE像(二次電子像)を示す。
【0043】
図15は、サンプル2におけるアルミニウムの分析結果を示す。アルミニウムは、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。
図16は、サンプル2におけるケイ素の分析結果を示す。ケイ素は、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。サンプル2では、ケイ素成分がセラミックス基板81において広く分散していることを確認した。
【0044】
図17は、サンプル2におけるタングステンの分析結果を示す。タングステンは、導電体パターン82に局在し、セラミックス基板81に拡散していない。
図18は、サンプル2を分析したXRD(X線回折)チャートである。図18の(a)は、サンプル2の導電体パターン82を削り、セラミックス基板81が露出した部分のXRDチャートを示している。図18において、(b)はタングステン、(c)は酸化アルミニウム、(d)はマグネシウムとアルミニウムの複合酸化物(Mg・Al)の各XRDチャートを示している。図18の結果から、サンプル2のセラミックス基板81は、ムライト、シリマナイトの結晶相が形成されていないことが確認された。
【0045】
[試験結果]
図19は、引張試験による密着強度の測定結果を示す。図19において、バーB1は、上述したサンプル1、つまり酸化ニッケル粉末を0.5wt%、アルミナ粉末(酸化アルミニウム粉末)を2.0wt%、シリカ粉末(二酸化ケイ素粉末)を2.0wt%添加した導電性ペーストを用いて形成した導電体パターンについて、剥離試験により密着強度を確認したときの試験力[N]の範囲を示す。バーB2は、タングステンよりなり、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加しない、つまり無添加の導電性材料を用いて形成した導電体パターン82を含む比較例における試験力[N]の範囲を示す。酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加することにより、導電体パターンの密着強度を向上できる。さらに、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の含有量を多くすることにより、導電体パターンの密着強度をより向上できる。
【0046】
[温度と抵抗値の特性]
図20において、実線は、焼結助剤を含まない酸化アルミニウムのグリーンシートを焼成したセラミックス(以下、無添加セラミックス)の温度と抵抗値の関係を示し、一点鎖線は、焼結助剤を含む組成のグリーンシートを焼成したセラミックス(以下、添加セラミックス)の温度と抵抗値の関係を示す。無添加セラミックスでは、温度に対する抵抗値の変化が少なく、添加セラミックスでは、無添加セラミックスと比較し、温度に対する抵抗の変化が大きい。つまり、無添加セラミックスは、絶縁抵抗の温度依存性が低い。静電チャック用のセラミックスに求められる特性としては、使用環境の温度が上昇しても、絶縁抵抗の低下が少ないことが求められる。このような特性の無添加セラミックスは、静電電極31を含む基板本体21として有効である。
【0047】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1-1)静電チャック1の載置台20は、基板本体21と、基板本体21に内接された静電電極31を含む。基板本体21は、酸化アルミニウムからなるセラミックスである絶縁体層22と、絶縁体層22と静電電極31との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層23とを備えている。複合酸化物層23により、ケイ素成分がセラミックスからなる絶縁体層22に拡散しないため、基板本体21のセラミックスの特性を低下させることなく、静電電極31を含む載置台20を得ることができる。
【0048】
(1-2)載置台は、基板本体21に内接された発熱体32を含む。基板本体21は、絶縁体層22と発熱体32との間に形成されたアルミニウムとケイ素の複合酸化物層24とを備えている。複合酸化物層24により、ケイ素成分がセラミックスからなる絶縁体層22に拡散しないため、基板本体21のセラミックスの特性を低下させることなく、発熱体32を含む載置台20を得ることができる。
【0049】
(1-3)静電電極31は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)を含む焼成体である。このような構成の静電電極31とすることにより、基板本体21のセラミックスの特性を低下させることなく、静電電極31を含む載置台20を得ることができる。
【0050】
(1-4)発熱体32は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)を含む焼成体である。このような構成の発熱体32とすることにより、基板本体21のセラミックスの特性を低下させることなく、発熱体32を含む載置台20を得ることができる。
【0051】
(1-5)酸化ニッケルにより、タングステンの焼結性が向上する。酸化アルミニウムと二酸化ケイ素により、セラミックスとタングステンとの密着性が向上する。従って、焼結助剤を用いる必要がないため、セラミックスの特性を低下させることなく、静電電極31を含む載置台20を得ることができる。
【0052】
(1-6)基板本体21のセラミックスは、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である。このような基板本体21は、絶縁抵抗の温度依存性が少なく、温度上昇に対する絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0053】
(1-7)基板本体21のセラミックスは、相対密度が98%以上である。このような基板本体21は、表面及び内部の気孔が少ない。気孔は、基板本体21の吸着に影響する。従って、高い相対密度の基板本体21は、静電チャック1として特性上好ましいものとなる。
【0054】
(第二実施形態)
以下、図21図22に従って第二実施形態を説明する。
図21は、第二実施形態の半導体装置用パッケージの概略断面、図22は、半導体用パッケージの概略平面を示す。
【0055】
図21に示すように、半導体装置用パッケージ100は、セラミックス基板110と、放熱板150と、外部接続端子160とを有し、放熱板150はセラミックス基板110にろう付けされている。
【0056】
セラミックス基板110は、積層された複数(本実施形態では4つ)のセラミックス基材111,112,113,114と、タングステンからなる配線パターン121,122,123、124と、セラミックス基材112,113,114を貫通するビア132,133,134を有している。ビア132は、配線パターン121,122を互いに接続し、ビア133は、配線パターン122,123を互いに接続し、ビア134は配線パターン123,124を互いに接続する。このセラミックス基板110は、セラミックス基材111~114から構成される基板本体と、タングステンからなる配線パターン121~124とを有している。
【0057】
図21及び図22に示すように、セラミックス基板110には、セラミックス基材112,113,114の中央部を貫通して半導体素子200を搭載するキャビティ170が設けられている。配線パターン121は、キャビティ170を囲むように、セラミックス基材112の上面に配設されている。セラミックス基材111には、配線パターン121を露出する開口部111Xが形成されている。
【0058】
セラミックス基材111~114は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、配線パターン121~124及びビア132~134は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である。そして、このセラミックス基板110は、第一実施形態の載置台20と同様の製造方法により製造することができる。
【0059】
半導体装置用パッケージ100において、半導体素子200は放熱板150に搭載される。半導体素子200のパッドは、ボンディングワイヤ等によってセラミックス基板110の配線パターン121と電気的に接続される。これにより、半導体素子200は、配線パターン121~124とビア132~134とを介して外部接続端子160に接続される。
【0060】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)このような半導体装置用パッケージ100では、第一実施形態と同様に、基板本体となるセラミックス基材111~114の特性を低下させることなく、配線パターン121~124を含むセラミックス基板110を得ることができる。
【0061】
(2-2)このセラミックス基板110において、セラミックス基材111~114と配線パターン121~124との密着性を向上できる。
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・上記第一実施形態に対し、静電チャックに含まれる部材や配置を適宜変更してもよい。
・上記第一実施形態に対し、静電電極31のみを含む載置台とし、発熱体32を載置台とベースプレート10との間に配設してもよい。また、発熱体32は、ベースプレート10に内設されてもよい。また、発熱体32は、静電チャックの下に外付けされてもよい。
【0063】
・上記第一実施形態及び変更例の静電チャックは、半導体製造装置、たとえばドライエッチング装置(たとえば平行平板型の反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置)に適用される。
【符号の説明】
【0064】
1 静電チャック
10 ベースプレート
11 取付孔
12 リフトピン用開口部
20 載置台
21 基板本体
22 絶縁体層
22a~22c 絶縁層
22d セラミックス部
23,24 複合酸化物層
31 静電電極(導電体層)
31a 第1静電電極
31b 第2静電電極
32 発熱体
51~53 グリーンシート
54,55 導電体パターン
71,72 構造体
73 セラミックス基板
80 サンプル
81 セラミックス基板
82 導電体パターン
83 複合酸化物層
84 絶縁体層
90 リング
100 半導体装置用パッケージ
110 セラミックス基板
111~114 セラミックス基材
111X 開口部
121~124 配線パターン(導電体層)
132~134 ビア
150 放熱板
160 外部接続端子
170 キャビティ
200 半導体素子
B1,B2 バー
W 基板
Wa,Wb 部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22