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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240902BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/10 C
G01N35/10 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023508459
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044510
(87)【国際公開番号】W WO2022201645
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2021052718
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 友一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 拓士
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隼佑
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅文
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0030794(US,A1)
【文献】特開2020-143927(JP,A)
【文献】特開2006-038661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面検知機能を有し、液体収容容器に試料を吐出する試料分注機構と、
前記液体収容容器に試薬を吐出する試薬分注機構と、
前記試料分注機構及び前記試薬分注機構の動作を制御し、前記試料を分析する制御部と、
を備え、
前記試料分注機構及び前記試薬分注機構は、それぞれ液体を吸引し、吐出するプランジャと、
前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構のうちの少なくとも一つの前記プランジャ駆動部により、前記プランジャがバックラッシュの距離だけ、所定回数往復移動するように動作制御し、前記液体収容容器に吐出された液量を前記液面検知機能により検出して前記プランジャの故障を検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記プランジャの故障は、前記プランジャと前記プランジャ駆動部とを固定するプランジャ固定ナットが前記プランジャに取り付けられていない故障であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項に記載の自動分析装置において、
表示部をさらに備え、前記制御部は、前記プランジャ固定ナットが前記プランジャに取り付けられていない故障を検出したときは、前記表示部に前記プランジャ固定ナットが取り付けられていないことを表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項に記載の自動分析装置において、
前記自動分析装置は、イオン選択電極を備え、前記試薬は、所定のイオン濃度に調整された試薬であり、前記液体収容容器は、前記試薬が吐出される希釈槽であり、前記試料中の特定イオンの濃度を測定する電解質分析装置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項に記載の自動分析装置において、
前記自動分析装置は、生化学分析装置であり、前記液体収容容器は、反応容器であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
液面検知機能を有し、液体収容容器に試料を吐出する試料分注機構と、前記液体収容容器に試薬を吐出する試薬分注機構と、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構の動作を制御し、前記試料を分析する制御部と、を備え、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構は、それぞれ液体を吸引し、吐出するプランジャと、前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部とを有する自動分析装置の故障検出方法において、
前記試料分注機構及び前記試薬分注機構のうちの少なくとも一つの前記プランジャ駆動部により、前記プランジャがバックラッシュの距離だけ、所定回数往復移動するように動作制御し、前記液体収容容器に吐出された液量を前記液面検知機能により検出して前記プランジャの故障を検出することを特徴とする自動分析装置の故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプユニットを有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、サンプルまたは試薬を所定量精度良く吐出するためにシリンジポンプユニットが用いられる。シリンジポンプユニットは流路中に導入され、主としてハウジング部、プランジャ部、モータ駆動部から構成される。
【0003】
シリンジポンプユニットの前後の流路には電磁弁が設置されることが一般的である。モータ部駆動部によって発生した動力がプランジャ部に伝達されることでハウジング内の体積が変化する。シリンジポンプユニットの動作と電磁弁の制御により接続された流路間において吸引および吐出が実施可能である。
【0004】
特許文献1には、自動分析装置において、検体や試薬等を無駄に消費することなく分注異常を検出し、かつ、不具合箇所の特定を適切に行う技術が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の技術においては、分注異常検出部が、液面検知装置からの液面検知信号によって検知される第1試薬分注後、検体分注後および第2試薬分注後の反応容器の液面から反応容器内の液量を求め、この液量に基づいて分注異常の発生を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-210336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、シリンジポンプユニットにはモータ駆動部とプランジャ部の部品間にバックラッシュと呼ばれる隙間が存在する。
【0008】
バックラッシュが存在すると、この領域においてはモータ駆動部の動力がプランジャ部に伝達されないため、動力伝達の精度が悪化し、ひいては分注性能に影響を及ぼす。
【0009】
シリンジポンプユニットでは高精度な吸引吐出動作が求められ、このバックラッシュを取り除くためにシリンジポンプユニットにはプランジャ固定ナットが設置されている。
【0010】
プランジャ固定ナットによりプランジャ部とモータ駆動部のバックラッシュが除去されることで高精度の分注を担保できる。
【0011】
ここで、シリンジポンプユニットは高精度の分注を担保するために定期的に清掃などのメンテナンスが必要になる。メンテナンス作業の際、部品の取り外しが必要となるが、メンテナンス作業後、プランジャ固定ナットを付け忘れるもしくは正しく装着できずにバックラッシュが存在するような状況となると、シリンジの健全性が失われ、シリンジポンプユニットに分注異常が発生し、高精度の吸引吐出動作が困難となる。
【0012】
シリンジポンプユニットのプランジャ固定ナットの付け忘れによる分注異常が発生した場合、分注異常の発生は検出可能であるが、その原因がプランジャ固定ナットの付け忘れであることの検出は困難であった。
【0013】
特許文献1に記載の技術は、分注異常を検出し、分注プローブに不具合があることは特定できるが、プランジャ固定用ナットが存在するか否かの検出は困難である。プランジャ固定用ナットが存在しないことによる分注異常か否かを判断するためには、シリジポンプユニットを分解する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、シリンジポンプユニットにおけるプランジャの故障を自動的に検出可能な自動分析装置及び自動分析装置の故障検出方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0016】
自動分析装置において、液面検知機能を有し、液体収容容器に試料を吐出する試料分注機構と、前記液体収容容器に試薬を吐出する試薬分注機構と、前記試料分注機構及び試薬分注機構の動作を制御し、前記試料を分析する制御部と、を備え、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構は、それぞれ液体を吸引し、吐出するプランジャと、前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、を有し、前記制御部は、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構のうちの少なくとも一つの前記プランジャ駆動部により、前記プランジャがバックラッシュより小の最小距離から前記バックラッシュより大の最大距離までの距離のいずれかの距離だけ、所定回数往復移動するように動作制御し、前記液体収容容器に吐出された液量を前記液面検知機能により検出して前記プランジャの故障を検出する。
【0017】
また、液面検知機能を有し、液体収容容器に試料を吐出する試料分注機構と、前記液体収容容器に試薬を吐出する試薬分注機構と、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構の動作を制御し、前記試料を分析する制御部と、を備え、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構は、それぞれ液体を吸引し、吐出するプランジャと、前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部とを有する自動分析装置の故障検出方法において、前記試料分注機構及び前記試薬分注機構のうちの少なくとも一つの前記プランジャ駆動部により、前記プランジャがバックラッシュより小の最小距離から前記バックラッシュより大の最大距離までの距離のいずれかの距離だけ、所定回数往復移動するように動作制御し、前記液体収容容器に吐出された液量を前記液面検知機能により検出して前記プランジャの故障を検出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリンジポンプユニットにおけるプランジャの故障を自動的に検出可能な自動分析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1が適用される電解質分析装置の全体概略図である。
図2】シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナットが設置されていない場合の動作を説明する図である。
図3図2のA部の拡大図である。
図4】シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナットが設置されていない場合におけるバックラッシュの遷移を説明する図である。
図5】シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナットが設置されている場合の動作を説明する図である。
図6図5のB部の拡大図である。
図7】試薬分注機構であるシリンジポンプユニットを示す図である。
図8】シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナットが設置されているか否かを検出するための動作フローチャートである。
図9】希釈槽に液体が存在し、正常時の場合の説明図である。
図10】希釈槽に液体が存在せず、異常時の場合の説明図である。
図11図8に示したフローチャートの動作を実行するための制御装置内の制御ブロックを示す図である。
図12】実施例2が適用される生化学分析装置の部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。
【実施例
【0021】
(実施例1)
自動分析装置として、電解質分析装置の例について説明する。
【0022】
図1は、電解質分析装置の全体概略図であり、イオン選択電極を用いたフロー型電解質分析装置である。電解質分析装置の主要な機構として、サンプル分注部、ISE電極部、試薬部、機構部、廃液機構の5つの機構、及びこれらを制御するとともに、測定結果より電解質濃度の演算等の試料の分析を行う制御装置がある。
【0023】
サンプル分注部はサンプルプローブ14を有する。サンプルプローブ14によって、サンプル容器15内に保持された患者検体などのサンプルを分注し、分析装置内に引き込む。
【0024】
ISE電極部は、希釈槽11、シッパノズル13、希釈液ノズル24、内部標準液ノズル25、ISE電極(イオン選択電極)1、比較電極2、ピンチ弁23、電圧計27、アンプ28を含む。サンプル分注部にて分注されたサンプルは、希釈槽11に吐出され、希釈液ノズル24から希釈槽11内へ吐出される希釈液で希釈・撹拌される。シッパノズル13はISE電極1に流路によって接続され、希釈槽11から吸引された希釈されたサンプル溶液はISE電極1へ送液される。一方、比較電極液ボトル5に収容された比較電極液は、ピンチ弁23が閉鎖した状態でシッパシリンジ10を動作させることで、比較電極2へ送液される。ISE電極流路に送液された希釈されたサンプル溶液と比較電極流路に送液された比較電極液とが接液することで、ISE電極1と比較電極2とが電気的に導通する。ISE電極部は、ISE電極1と比較電極2との間の電位差によって、サンプルに含まれる特定の電解質の濃度を測定する。
電解質分析部である制御装置(制御部)29では、各イオンにつき、取得した起電力から検体中のイオン濃度を演算し、表示する。希釈槽11に残ったサンプル溶液は廃液機構により排出される。
【0025】
温度変化等の影響による電位変動を補正するため、一つのサンプル測定後、次のサンプル測定までの間に、内部標準液ノズル25より希釈槽11内へ内部標準液を吐出し、測定を行う。
【0026】
試薬部は、試薬容器から所定のイオン濃度に調整された試薬を吸引する吸引ノズル6、脱ガス機構7、フィルタ16を含み、測定に必要な試薬を供給する。電解質測定を行う場合には、試薬として内部標準液、希釈液、比較電極液の3種の試薬が使用され、内部標準液を収容する内部標準液ボトル3、希釈液を収容する希釈液ボトル4、比較電極液を収容する比較電極液ボトル5が試薬部にセットされる。
【0027】
内部標準液ボトル3および希釈液ボトル4はそれぞれフィルタ16を介して流路を通じて内部標準液ノズル25、希釈液ノズル24に接続され、各ノズルは希釈槽11内に先端を導入した形状で設置されている。また、比較電極液ボトル5はフィルタ16を介して流路を通じて比較電極2に接続されている。希釈液ボトル4と希釈槽11との間の流路、および比較電極液ボトル5と比較電極2との間の流路には、それぞれ脱ガス機構7が接続されており、希釈槽11内および比較電極2内へは脱ガスした試薬が供給される。
機構部は、内部標準液シリンジ8、希釈液シリンジ9、シッパシリンジ10、電磁弁17、18、19、20、21、22、30、プレヒート12を含み、各機構内または各機構間の送液等の動作を担う。例えば、試薬である内部標準液および希釈液は、それぞれ内部標準液シリンジ8および希釈液シリンジ9と、流路に設けられた電磁弁の動作により希釈槽11へ送液され、吐出される。
【0028】
廃液機構は、第1の廃液ノズル26、第2の廃液ノズル36、真空ビン34、廃液受け35、真空ポンプ33、電磁弁31、32を含み、希釈槽11に残ったサンプル溶液やISE電極部の流路に残った反応液を排出する。
【0029】
図2及び図3は、図1に示した内部標準液シリンジ8、希釈液シリンジ9またはシッパシリンジ10におけるシリンジポンプユニットの概略構成を示し、シリンジポンプユニットに後述するプランジャ固定ナット50が設置されていない場合の動作を説明する図である。
【0030】
図2において、ベース46に固定されたモータ47によりボールねじ48が回転され、駆動板49が上下動する。駆動板49が上下動することで、プランジャ45が上下動することによりハウジング43に接続された入口側流路44に液体が流入され、出口側流路42から液体が吐出される。
【0031】
図3は、図2のA部の拡大図である。図3に示すように、プランジャ固定ナット50が設置されていない場合には、駆動板49とプランジャ45との間にはバクラッシュBLが生じる。
【0032】
図4は、シリンジポンプユニットに後述するプランジャ固定ナット50が設置されていない場合におけるバックラッシュの遷移を説明する図である。図4の(A)が液体の吸引動作であり、図4の(B)が液体の吐出動作を示す。図4に示すように、駆動板49が、バックラッシュBLの距離だけ上下動(往復移動)しても、プランジャ45は上下動せず、静止した状態となっている。
【0033】
図5は、シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナット50が設置されている場合の動作を説明する図である。また、図6は、図5のB部の拡大図である。図5及び図6に示すように、シリンジポンプユニットにプランジャ45と駆動板49とを固定するプランジャ固定ナット50が設置されている場合は、バックラッシュBLは存在していない。このため、駆動板49の上下動に伴い、プランジャ45も上下動し、駆動板49が上下動しても、プランジャ45は静止した状態となっているという状態は回避される。
【0034】
図7は、試薬分注機構であるシリンジポンプユニット60を示す図であり、試薬として内部標準液を収容する内部標準液ボトル3から内部標準液を吸引して内部標準液ノズル(試薬ノズル)25から希釈槽11に吐出するシリンジポンプユニット60を示す図である。モータ47、ボールねじ48及び駆動板49によりプランジャ駆動部が形成されている。
【0035】
図8は、実施例1における、シリンジポンプユニット60にプランジャ固定ナット50が設置されているか否かを検出するための動作フローチャートである。図7及び図8を参照して、プランジャ固定ナット50の有無検出処理について、一例としてシリンジポンプユニット60を説明する。
【0036】
図7において、内部標準液ボトル3に収容された内部標準液は、吸引側の電磁弁30、シリンジポンプユニット60、吐出側の電磁弁19及び内部標準液ノズル25を介して、希釈槽11に吐出される。
【0037】
ここで、実施例1におけるプランジャ45と駆動板49とのバックラッシュBLの距離は1.0mmであり、モータ47の駆動分解能は20[μl/mm]である。つまり、実施例1においては、バックラッシュBLの大きさは20μl分の駆動量に相当する。これにより、20μlの吸引吐出動作を繰り返し実施する。つまり、後述する動作制御部291が、プランジャ45をバックラッシュBLの距離だけ往復移動するように動作制御する。
【0038】
吸引吐出動作の具体的な処理手順を図8のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
吸引側の電磁弁30を開放し(ステップS1)、シリンジポンプユニット60の20μlの吸引動作を実施する(ステップS2)。次に、吸引側の電磁弁30を閉塞し(ステップS3)、吐出側の電磁弁19を開放する(ステップS4)。そして、シリンジポンプユニット60の20μlの吐出動作を実施し(ステップS5)、吐出側の電磁弁19を閉塞する(ステップS6)。
【0040】
ステップS1~S6までの吸引吐出動作が20回実施されたか否かを判定し、20回実施されていなければ、ステップS1に戻る(ステップS7)。
【0041】
ステップS7において、吸引吐出動作が20回実施されていれば、ステップS8に進み、希釈槽11内の液量が適切か否かを判断する。
【0042】
シリンジポンプユニット60の吸引吐出動作を20回実施した場合、プランジャ固定ナット50が設置されている正常な状態であれば、20μl×20回=400μlの液体が希釈槽11に貯留される。
【0043】
一方でバックラッシュBLが存在する場合は、希釈槽11に液は吐出されない。これは、上述したように、バックラッシュBLが存在することによりモータ47の動力がプランジャ45に伝達されないためである。
【0044】
ステップS8において、希釈槽11内の液量が適切であれば、ステップS9に進み、プランジャ固定ナット50が設置されている正常な状態であると判断する。
【0045】
ステップS8において、希釈槽11内の液量が適切でなければ、ステップS10に進み、プランジャ固定ナット50が設置されていない異常な状態であると判断する。
【0046】
ステップS8における液量が適切か否かの判断は、サンプルプローブ14の液面検知機能を用いて検出する。検出方法としては吸引吐出動作後に、サンプルプローブ14を希釈槽11の上方から所定の高さまで下降させる。この高さは正常に液が吐出される場合に到達する高さとする。もしくは、誤判定のリスクを減らすために、正常に液が吐出される高さ以下とする。
【0047】
この高さは希釈槽11の容器形状と吸引吐出の繰り返し数に依存して適切に設定する必要がある。
【0048】
サンプルプローブ14が下降した後、液面検知機能を有するサンプルプローブ14の先端が液体に接触しているか否かを検出する。図9に示すように、希釈槽11に液体が存在する場合は正常と判定し、図10に示すように、希釈槽11に液体が存在しない場合は異常と判定する。異常が判定された場合は、後述する表示部40によりアラーム出力等の方法にてユーザーにバックラッシュが生じていることを報知し、プランジャ固定ナット50の取り付けを促す。
【0049】
図11は、図8に示したフローチャートの動作を実行するための制御装置29内の制御ブロックを示す図である。制御装置29内の試料分析機能等の他の機能については、図示を省略する。
【0050】
図11において、電磁弁駆動部292は、電磁弁19及び30に動作指令信号を供給し、開閉動作を行わせる。シリンジポンプユニット駆動部293は、シリンジポンプユニット60のモータ47に動作指令信号を供給し、プランジャ45を動作させる。
【0051】
サンプルプローブ駆動部294は、サンプルプローブ14を駆動し、希釈槽11への下降動作及び上昇動作を行う。
【0052】
液面検知部295は、液面検知機能により、サンプルプローブ14の先端が液面に接触したことを検知する。
【0053】
動作制御部291は、電磁弁駆動部292、シリンジポンプユニット駆動部293及びサンプルプローブ駆動部294が図8に示したフローチャートの動作を実行するように動作制御を行う。
【0054】
また、動作制御部291は、液面検知部295からの液面検知信号を受信したときは、所定の高さまで、液面があるか否かを判断し、正常である場合は、表示部40に正常であることを表示させる。動作制御部291は、サンプルプローブ14が希釈槽11を下降動作したにもかかわらず、所定の高さで、液面が検知できなかった場合は、上述したように、表示部40によりアラーム出力等の方法にてユーザーにプランジャ固定ナット50が取り付けられていないことを表示し、バックラッシュが生じていることを報知して、プランジャ固定ナット50の取り付けを促す。
【0055】
本発明の実施例1においては、繰り返し吸引吐出動作を実施することにより正常状態と異常状態を2値化して検出することが可能となる。繰り返し回数(往復移動回数)を増やすことによって正常時に希釈槽11に貯留される液量を変化させられる。これにより十分に正常異常を判定できるだけの液量を希釈槽11に貯留することで誤判定のリスクを低減させられる。
【0056】
また、貯留槽(実施例1においては希釈槽11)の形状をアスペクト比が高い形状にすることにより、単位液量あたりの液高さを大きくすることにより、正常異常の十分な判定のために必要とされる液量を少なくすることが可能である。これにより繰り返し回数を少なくすることができ本処理に係る実行時間を短縮することが可能である。
【0057】
なお、プランジャ45の吸引および吐出の駆動量はバックラッシュBLより小の最小距離からバックラッシュBLより大の最大距離までの距離のいずれかに設定することができる。最小距離から最大距離までの距離は、個々の自動分析装置で任意に設定可能である。バックラッシュBL以下で駆動した場合においても正常時には液が吐出され、異常時には液が吐出されないという状況を実現することができる。
【0058】
また、バックラッシュBLより大の距離とする場合は、バックラッシュBLの量相当以上の駆動量を設定して判定する。この場合、例えば50μlの駆動量で20回の吐出動作を実行した場合、正常時であれば1000μlの液体が貯留されることになる。
【0059】
一方で、バックラッシュBLが存在する場合、1回の吸引吐出動作によって本来吐出される量からバックラッシュBL分だけ吐出量が少なくなる。先の例においては、20μl分のバックラッシュが存在する場合、50μlの駆動量で1回あたり50-20=30μl分の液が希釈槽11に貯留される。
【0060】
すなわち、バックラッシュBL分だけ吐出量が減るため、正常時および異常時において貯留される液量が変化する。これを、前記同様に検出することで正常異常判定を実施することが可能である。
【0061】
上述したプランジャ固定ナット50が存在するか否かの判断処理は、例えば、電解質分析装置(自動分析装置)立ち上げ後のイニシャライズ処理の最中に導入することが可能である。
【0062】
また、イニシャライズ処理以外においても定期的に自動的に処理を実行するようにプログラムを組み込むことが可能である。これによりシリンジポンプユニット60の健全性を担保することが可能である。
【0063】
以上のように、本発明の実施例1によれば、シリンジポンプユニット60におけるプランジャ45の故障を自動的に検出可能な自動分析装置を実現することができる。
【0064】
つまり、シリンジポンプユニット60にプランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出可能な電解質分析装置(自動分析装置)及び自動分析装置の故障検出方法を実現することができる。
【0065】
なお、上述した例は、内部標準液ボトル3に収容された内部標準液を吸引し、希釈槽(液体収容容器)11に吐出するシリンジポンプユニット60における例を示したが、希釈液ボトル4に収容された希釈液を吸引し、希釈槽11に吐出する希釈液シリンジ9のシリンジポンプユニット及びシッパシリンジ10のシリンジポンプユニットにおけるプランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出するように構成可能である。
【0066】
また、上述した例は、内部標準液ボトル3から内部標準液を吸引して内部標準液ノズル(試薬ノズル)25から希釈槽11に分注する(吐出する)シリンジポンプユニット60であるが、サンプル容器15からサンプルを吸引し、サンプルプローブ14から反応槽11にサンプル(試料)を分注する(吐出する)試料分注機構も、図7に示した吐出側の電磁弁19、吸引側の電磁弁30、シリンジポンプユニット60と同様な構成を有している。よって、試料分注機構についても、制御装置29によって、図8に示したフローチャートに従って吐出液量が適切か否かを判断して、プランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出するように構成可能である。
【0067】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2は、自動分析装置として、生化学分析装置に適用した場合の例である。
【0068】
図12は、生化学分析装置の部分説明図であり、試料分注機構の概略構成図である。図12において、サンプル分注プローブ63により、試料容器64から試料が吸引され、反応容器(液体収容容器)65に吐出される。サンプル分注プローブ63による試料の吸引吐出動作は、吸引側の電磁弁66、シリンジポンプ61及び吐出側の電磁弁62の動作によって行われる。サンプル分注プローブ63の上下移動及び回転移動は、モータ等の機構により実行されるが図示は省略する。
【0069】
なお、生化学分析装置における試薬を試薬容器から吸引し、反応容器65に吐出する試薬吸引吐出部も、試料吸引吐出部と同様な構成となっているので、試料吸引吐出部について説明し、試薬吸引吐出部については、図示及び詳細な説明は省略する。
【0070】
図12に示したシリンジポンプユニット61は、実施例1におけるシリンジポンプユニット60と同様な構成であり、正常な場合は、プランジャ固定ナット50が設置されている。
【0071】
このため、実施例1におけるフローチャート(図8)の動作を行うことにより、シリンジポンプユニット61に、プランジャ固定ナット50が設置されているか否かを判断することができる。
【0072】
実施例2における生化学分析装置においても、実施例1における制御装置29及び表示部40と同様な制御装置及び表示部を備え、液面検知機能を有する。生化学分析装置における制御装置(制御部)は、試料分注機構及び試薬分注機構の動作を制御すると共に試料を分析する。
【0073】
ただし、実施例1においては、液体を希釈槽11に吐出していたが、実施例2においては、液体を反応容器65に吐出し、吐出した液量が適切か否かをサンプルプローブ63の液面検知機能を用いて判断する。
【0074】
生化学分析装置における試薬吸引吐出部におけるシリンジポンプユニットにつても、プランジャ固定ナット50が設置されているか否かを判断することができる。
【0075】
上述したプランジャ固定ナット50が存在するか否かの判断処理は、例えば、生化学分析装置(自動分析装置)立ち上げ後のイニシャライズ処理の最中に導入することが可能である。
【0076】
また、イニシャライズ処理以外においても定期的に自動的に処理を実行するようにプログラムを組み込むことが可能である。これによりシリンジポンプユニット61の健全性を担保することが可能である。
【0077】
以上のように、本発明の実施例2によれば、シリンジポンプユニット61におけるプランジャ45の故障を自動的に検出可能な自動分析装置及び自動分析装置の故障検出方法を実現することができる。
【0078】
つまり、シリンジポンプユニット61にプランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出可能な生化学分析装置(自動分析装置)を実現することができる。
【0079】
また、上述した例は、試料を吸引してサンプルプローブ63(試料ノズル)63から反応容器65に吐出するシリンジポンプユニット61であるが、試料容器64と同様な試薬容器から試薬を吸引し、サンプルプローブ63と同様な試薬プローブから反応容器65に試薬を吐出する試薬分注機構も、図12に示した吐出側の電磁弁62、吸引側の電磁弁66、シリンジポンプユニット61と同様な構成を有している。よって、図12におけるサンプルプローブ63を試薬分注プローブと置き換えることにより、試薬分注機構を図示したことと等価となる。試薬分注機構についても、制御装置29によって、図8に示したフローチャートに従って吐出液量が適切か否かを判断して、プランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出するように構成可能である。
【0080】
なお、実施例1及び2において、シリンジポンプユニットにプランジャ固定ナットが取り付けられているか否かの自動検出は、試薬分注機構又は試料分注機構のいずれか一方のみ実行することも可能であり、試薬分注機構及び試料分注機構の両者共実行することも可能である。
【0081】
本発明においては、希釈槽11及び反応容器65は、液体収容容器と総称することができる。
【0082】
また、上述した例は、プランジャ固定ナット50が取り付けられているか否かを自動的に検出するように構成したが、プランジャ固定ナット50が取り付けられていても、適切に固定されていない場合も、吐出される液量は適切な量ではない場合があり、これを検出することも可能である。したがって、プランジャ固定ナット50が取り付けられていない場合の故障及び適切に固定されていない場合の故障を併せてプランジャの故障と定義する。
【0083】
よって、本発明は、シリンジポンプユニットにおけるプランジャの故障を自動的に検出可能な自動分析装置及び自動分析装置の故障検出方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
3・・・内部標準液ボトル、4・・・希釈液ボトル、5・・・比較電極液ボトル、8・・・内部標準液シリンジ、9・・・希釈液シリンジ、10・・・シッパシリンジ、11・・・希釈槽、14・・・サンプルプローブ、15・・・サンプル容器、17、18、19、20、30、62、66・・・電磁弁、24・・・希釈液ノズル、25・・・内部標準液ノズル、29・・・制御装置、40・・・表示部、42・・・出口側流路、43・・・ハウジング、44・・・入口側流路、45・・・プランジャ、46・・・ベース、47・・・モータ、48・・・ボールねじ、49・・・駆動板、50・・・プランジャ固定ナット、60、61・・・シリンジポンプユニット、63・・・サンプルプローブ、64・・・試料容器、65・・・反応容器、291・・・動作制御部、292・・・電磁弁駆動部、293・・・シリンジポンプユニット駆動部、294・・・サンプルプローブ駆動部、295・・・液面検知部
図1
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図12