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特許7547619有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 3/12 20060101AFI20240902BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20240902BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20240902BHJP
   C07C 9/02 20060101ALI20240902BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C10L3/12
C01B3/38
C07C1/04
C07C9/02
C10G2/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023511753
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016915
(87)【国際公開番号】W WO2022211109
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021060916
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川又 勇来
(72)【発明者】
【氏名】藤川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 智比古
(72)【発明者】
【氏名】岩野 勇輝
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】村守 宏文
【審判官】長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143752(JP,A)
【文献】国際公開第2005/037962(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116476(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116478(WO,A1)
【文献】特開平7-62356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L3/12
C10G2/00
C07C1/04
C07C9/02
C07B61/00
C01B3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含むバイオガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング工程と、
前記第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成工程と、
前記第2ガスからCO濃度が50%以上の二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング工程に供給するリサイクル工程と、
前記第2ガスから水素を分離して前記有用炭化水素生成工程に供給する水素供給工程と
を有する有用炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記リサイクル工程は、前記ドライリフォーミング工程に供給する前記バイオガス中の二酸化炭素および前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の合計炭素モル数MCO2に対する前記ドライリフォーミング工程に供給する炭化水素の合計炭素モル数MHCの比(MHC/MCO2)に応じて、前記ドライリフォーミング工程に供給する前記二酸化炭素含有ガスの供給量を調整する、請求項1に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記水素供給工程は、前記有用炭化水素生成工程における水素のモル数Mに応じて、前記有用炭化水素生成工程に供給する水素の供給量を調整する、請求項1に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記ドライリフォーミング工程で得られた前記第1ガスに含まれる一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)を調整する調整工程をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項5】
前記第2ガスから炭素原子を含む物質を分離し、前記炭素原子を含む物質を燃焼して二酸化炭素を生成する燃焼工程をさらに有し、
前記リサイクル工程は、前記二酸化炭素含有ガス、および前記燃焼工程で生成した二酸化炭素を前記ドライリフォーミング工程に供給する、請求項1~4のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記有用炭化水素は、オレフィン類、芳香族炭化水素、ガソリン、液化石油ガス、および液状炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素である、請求項1~5のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項7】
前記有用炭化水素は、液化石油ガスである、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項8】
前記有用炭化水素は液化石油ガスであり、前記二酸化炭素含有ガスには、炭化数3~4以外の炭化水素が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項9】
前記有用炭化水素はオレフィン類であり、前記二酸化炭素含有ガスには、目的とするオレフィン類以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項10】
前記有用炭化水素は芳香族炭化水素であり、前記二酸化炭素含有ガスには、目的とする芳香族炭化水素以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項11】
前記有用炭化水素はガソリンであり、前記二酸化炭素含有ガスには、ガソリン以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項12】
前記有用炭化水素は液状炭化水素であり、前記二酸化炭素含有ガスには、炭素数4以下の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
【請求項13】
メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含むバイオガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング部と、
前記ドライリフォーミング部で生成した前記第1ガスが供給され、前記第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成部と、
前記有用炭化水素生成部で生成した前記第2ガスからCO濃度が50%以上の二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング部に供給するリサイクル部と、
前記有用炭化水素生成部で生成した前記第2ガスから水素を分離して前記有用炭化水素生成部に供給する水素供給部と
を備える有用炭化水素の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎化学原料となる各種の低級オレフィンや芳香族炭化水素、各種の液体燃料(ガソリンや液化石油ガス(LPG)、航空燃料など)といった有用炭化水素は、炭素数2以上の炭化水素であり、主に石油資源から製造されている。しかしながら、これらの炭化水素の製造プロセスでは、主に石油資源が原料であることから、地政学的リスクが懸念されている。さらに、これらの炭化水素の製造プロセスや消費過程において、多量に二酸化炭素を排出することから、地球温暖化の観点からも問題視されている。したがって、賦存地域が限定されない資源を原料とし、かつ二酸化炭素の排出量がより少ない、クリーンなプロセスの開発が模索されている。
【0003】
例えば、液化石油ガスは、原油やガソリンに比べて、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の排出量が少なく、地球温暖化を抑制する研究が盛んに行われている。特許文献1には、含炭素原料と、水、酸素、二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種とから、合成ガスを製造する合成ガス製造工程、合成ガスから低沸点成分を含む低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程、低級パラフィン含有ガスから低沸点成分を分離する分離工程、および低沸点成分を合成ガス製造工程にリサイクルするリサイクル工程を有する、液化石油ガスの製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献1では、液化石油ガスを製造する原料である含炭素原料に、天然ガス、ナフサ、石炭などの天然資源が用いられている。
【0004】
この他にも、近年では、家畜ふん尿や下水汚泥等の有機系廃棄物を利用したバイオガス発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが注目されている。しかしながら、これらの技術は、得られるエネルギー形態が電気であるため、送電容量の状況によってはエネルギー輸送が困難である。さらに、バイオガス発電は、有機系廃棄物から得られるメタンガスと二酸化炭素のうち、メタンガスのみを利用している。そのため、二酸化炭素が活用されていない現在の状況は、地球温暖化の観点から好ましくない。
【0005】
このように、天然資源は無尽蔵に存在するのではなく、特定の国や地域でしか産出することができない。更に、再生可能エネルギーにおいても、エネルギー貯蔵・輸送の観点から、電気以外のエネルギー形態が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-143752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、容易に得られる原料であるメタン含有炭化水素と二酸化炭素を用い、長期間に亘って効率よく製造できる、有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング工程と、前記第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成工程と、前記第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング工程に供給するリサイクル工程とを有する有用炭化水素の製造方法。
[2] 前記リサイクル工程は、前記ドライリフォーミング工程に供給する前記混合ガス中の二酸化炭素および前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の合計炭素モル数MCO2に対する前記ドライリフォーミング工程に供給する炭化水素の合計炭素モル数MHCの比(MHC/MCO2)に応じて、前記ドライリフォーミング工程に供給する前記二酸化炭素含有ガスの供給量を調整する、上記[1]に記載の有用炭化水素の製造方法。
[3] 前記二酸化炭素含有ガスのCO濃度は50%以上である、上記[1]または[2]に記載の有用炭化水素の製造方法。
[4] 前記第2ガスから水素を分離して前記有用炭化水素生成工程に供給する水素供給工程をさらに有する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[5] 前記水素供給工程は、前記有用炭化水素生成工程における水素のモル数Mに応じて、前記有用炭化水素生成工程に供給する水素の供給量を調整する、上記[4]に記載の有用炭化水素の製造方法。
[6] 前記ドライリフォーミング工程で得られた前記第1ガスに含まれる一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)を調整する調整工程をさらに有する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[7] 前記第2ガスから炭素原子を含む物質を分離し、前記炭素原子を含む物質を燃焼して二酸化炭素を生成する燃焼工程をさらに有し、前記リサイクル工程は、前記二酸化炭素含有ガス、および前記燃焼工程で生成した二酸化炭素を前記ドライリフォーミング工程に供給する、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[8] 前記有用炭化水素は、オレフィン類、芳香族炭化水素、ガソリン、液化石油ガス、および液状炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[9] 前記有用炭化水素は、液化石油ガスである、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[10] 前記有用炭化水素は液化石油ガスであり、前記二酸化炭素含有ガスには、炭化数3~4以外の炭化水素が含まれる、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[11] 前記有用炭化水素はオレフィン類であり、前記二酸化炭素含有ガスには、目的とするオレフィン類以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[12] 前記有用炭化水素は芳香族炭化水素であり、前記二酸化炭素含有ガスには、目的とする芳香族炭化水素以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[13] 前記有用炭化水素はガソリンであり、前記二酸化炭素含有ガスには、ガソリン以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の有用炭化水素の製造方法。
[14] 前記有用炭化水素は液状炭化水素であり、前記二酸化炭素含有ガスには、炭素数4以下の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれる、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の有用炭化水素の製造方法。
[15] メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング部と、前記ドライリフォーミング部で生成した前記第1ガスが供給され、前記第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成部と、前記有用炭化水素生成部で生成した前記第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング部に供給するリサイクル部とを備える有用炭化水素の製造装置。
[16] モル換算でメタン/二酸化炭素が1以上9以下のガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング工程と、前記第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成工程と、前記第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング工程に供給するリサイクル工程とを有する有用炭化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、容易に得られる原料であるメタン含有炭化水素と二酸化炭素を用い、長期間に亘って効率よく製造できる、有用炭化水素の製造方法および有用炭化水素の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の有用炭化水素の製造方法の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の有用炭化水素の製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、容易に得られるメタン含有炭化水素および二酸化炭素、ならびにメタン含有炭化水素および二酸化炭素から一酸化炭素および水素を生成できるドライリフォーミングに着目した。ドライリフォーミングは、同じ比率(炭素基準)のメタン含有炭化水素および二酸化炭素から、一酸化炭素および水素(合成ガス)を生成する。しかしながら、メタン含有炭化水素が所定量よりも多い条件下(二酸化炭素が不足した条件下)でのドライリフォーミングでは、反応に用いる触媒の劣化反応(コーキング)が著しく、短期間で触媒の交換が必要になる、最悪の場合には反応装置の閉塞が生じるなどの効率性・安全性が損なわれる、といったことも懸念される。
【0013】
また、本発明者らは、ドライリフォーミング工程の後に行う有用炭化水素生成工程によって、一酸化炭素および水素から有用炭化水素を含むガス(第2ガス)を生成すると、ドライリフォーミング工程および有用炭化水素生成工程における未反応物質または副生成物である二酸化炭素が第2ガスに含まれることに着目した。そして、本発明者らは、第2ガスに含まれる不純物である二酸化炭素をドライリフォーミング工程に供給して再利用することによって、ドライリフォーミング工程時の触媒の劣化反応を抑制し、有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できることを見出した。本開示は、このような知見に基づくものである。
【0014】
実施形態の有用炭化水素の製造方法は、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング工程と、第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成工程と、第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離して前記ドライリフォーミング工程に供給するリサイクル工程とを有する。
【0015】
実施形態の有用炭化水素の製造装置は、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング部と、ドライリフォーミング部で生成した第1ガスが供給され、第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する有用炭化水素生成部と、有用炭化水素生成部で生成した第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離してドライリフォーミング部に供給するリサイクル部とを備える。
【0016】
[有用炭化水素の製造方法]
まず、実施形態の有用炭化水素の製造方法について説明する。図1は、実施形態の有用炭化水素の製造方法の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、有用炭化水素の製造方法は、ドライリフォーミング工程S10と有用炭化水素生成工程S20とリサイクル工程S30とを有する。
【0018】
ドライリフォーミング工程S10では、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスから、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成する。ドライリフォーミング工程S10に供給されるメタン含有炭化水素は、メタンおよびメタン以外の炭化水素から構成される。メタン含有炭化水素に含まれるメタン以外の炭化水素は、特に限定されるものではなく、例えば炭素数2以上10以下の炭化水素の純物質あるいはそれらの混合物であり、炭素数2以上6以下の炭化水素であることが好ましく、エタンであることが好ましい。このとき、炭素数2以上6以下の炭化水素のモル数に対するメタンのモル数の比(メタン/炭素数2以上6以下の炭化水素)は1以上であることが好ましい。上記のようなメタン含有炭化水素を含む混合ガスがドライリフォーミング工程S10に供給されると、有用炭化水素の収率が向上する。
【0019】
また、メタン含有炭化水素に含まれる炭化水素には、目的とする有用炭化水素が少量含まれていてもよく、その量は第2ガスに含まれる、目的とする有用炭化水素の生成量よりも少なければよい。
【0020】
ドライリフォーミング工程S10では、例えば下記の式(1)のように、ドライリフォーミングによって、混合ガスに含まれるメタンおよび二酸化炭素から、一酸化炭素および水素を合成する。また、ドライリフォーミングの原料になる炭化水素はメタンに限定されないことから、式(1)を例えば飽和炭化水素に対して一般化すると、下記の式(2)になる。このとき、原料の炭化水素に含まれる炭素と二酸化炭素は同量ずつ反応する。
【0021】
CH+CO→2CO+2H ・・・式(1)
2n+2+nCO→2nCO+(n+1) H(n≧1) ・・・式(2)
【0022】
ドライリフォーミング工程S10では、ドライリフォーミングによって、混合ガスに含まれるメタン含有炭化水素および二酸化炭素から一酸化炭素および水素を合成するための触媒(以下、単にドライリフォーミング用触媒ともいう)を用いる。ドライリフォーミング工程S10において、混合ガスをドライリフォーミング用触媒に供給しながら、ドライリフォーミング用触媒を加熱することによって、供給された混合ガス中のメタン含有炭化水素および二酸化炭素がドライリフォーミング用触媒によって反応し、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成する。
【0023】
ドライリフォーミング用触媒は特に限定はしないが、例えば長期間に亘って触媒活性を示して一酸化炭素および水素を生成する観点から、ドライリフォーミング用触媒は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、担体に内在する少なくとも1つの触媒物質と、を備え、担体が互いに連通する通路を有し、担体における厚さ寸法dに対する長辺寸法Lの比(L/d比)が5.0以上であり、触媒物質が担体の少なくとも通路に存在する触媒構造体であることが好ましい。
【0024】
このような触媒構造体について、担体のL/d比は、5.0以上であり、5.0以上35.0以下が好ましく、7.0以上25.0以下がより好ましい。担体のL/d比が5.0以上であると、触媒活性を向上できる。また、L/d比が35.0以下であると、触媒構造体の製造歩留まりを向上できる。
【0025】
また、このような触媒構造体について、触媒物質の平均粒径は、1.00nm以上13.00nm以下であることが好ましい。触媒物質の平均粒径が上記範囲内であると、触媒活性は十分に増加し、平均粒径が小さくなるにつれて、触媒活性を向上できる。また、高い触媒活性と耐コーキング性の両立の観点から、触媒物質の平均粒径は、好ましくは9.00nm以下であり、より好ましくは4.50nm以下である。
【0026】
また、ドライリフォーミング用触媒について、ドライリフォーミング用触媒として公知となっている触媒であれば用いることができる。例えばYuche Gao et al., A review of recent developments in hydrogen production via biogas dry reforming, Energy Conversion and Management, 171 (2018) 133-155.に記載されているように、ドライリフォーミングに活性のある金属種である、Ir、Ru、Rh、Pt、Pd、Ni、Co、Feから選ばれる少なくとも一種を含み、また担体には、MgO、Al、SiO、CeO、CaO、ZrO、TiO、La、ZnO、silicalite-1、MCM-41、SBA-15から選ばれる少なくとも一種を含む担体を用いることもできる。ただし、ドライリフォーミング用触媒は特にこれらに限定されない。
【0027】
ドライリフォーミング用触媒の加熱温度は、ドライリフォーミング用触媒の種類、混合ガスの供給量、混合ガスに含まれるメタン含有炭化水素および二酸化炭素の含有割合などによって適宜設定される。例えば、ドライリフォーミング用触媒の加熱温度について、下限値は、好ましくは400℃以上、より好ましくは600℃以上であり、上限値は、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下である。
【0028】
ドライリフォーミング工程S10で生成される第1ガスには、少なくとも一酸化炭素および水素を含む合成ガスが含有される。第1ガスには、一酸化炭素および水素(合成ガス)に加えて、未反応物質である炭化水素および二酸化炭素、副生成物である水などが含まれる。
【0029】
第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素の含有割合は、ドライリフォーミング用触媒の加熱温度や混合ガスの供給量、混合ガスに含まれるメタン含有炭化水素および二酸化炭素の含有割合などのドライリフォーミングの条件によって、適宜調整できる。
【0030】
ドライリフォーミング工程S10の後に行われる有用炭化水素生成工程S20では、下記の式(3)のように、ドライリフォーミング工程S10で生成した第1ガス中の一酸化炭素および水素から、有用炭化水素を含む第2ガスを生成する。
【0031】
CO+2H→炭化水素 ・・・式(3)
【0032】
有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素が含まれる。第2ガスには、有用炭化水素に加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物である水や有用炭化水素以外の炭化水素などが含まれる。
【0033】
有用炭化水素生成工程S20の後に行われるリサイクル工程S30では、有用炭化水素生成工程S20で生成した第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離し、二酸化炭素含有ガスをドライリフォーミング工程S10に供給する。
【0034】
上記の式(1)~(2)に示すように、ドライリフォーミング工程S10では、同じ比率(炭素基準)のメタン含有炭化水素および二酸化炭素から(炭素モル比で1対1)、一酸化炭素および水素を生成する。一方で、混合ガス中のメタン含有炭化水素に対する二酸化炭素の割合が低下するにつれて、ドライリフォーミング用触媒のコーキングが起こりやすく、結果として、ドライリフォーミング用触媒の活性が低下して、有用炭化水素の生成量が減少する。
【0035】
そこで、リサイクル工程S30では、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガス中の不純物である二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガス(いわゆるオフガス)をドライリフォーミング工程S10に供給することによって、メタン含有炭化水素に対する二酸化炭素の割合の低下に起因する、ドライリフォーミング用触媒のコーキングを抑制できることから、ドライリフォーミング用触媒の活性低下を抑制できる。そのため、有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、有用炭化水素生成工程S20から排出された二酸化炭素をドライリフォーミング工程S10の原料として再利用するため、地球温暖化を抑制できる。二酸化炭素含有ガスが有用炭化水素以外の炭化水素を含むと、有用炭化水素の収率がさらに向上する。
【0036】
また、ドライリフォーミング工程S10に供給する混合ガスは、バイオガスでもよい。バイオガスには、主成分として、メタンをはじめとする炭化水素(メタン含有炭化水素)および二酸化炭素が含まれる。バイオガスは、家畜の糞尿、食品残渣、木質廃材などの有機性廃棄物から生成される、再生可能なエネルギー資源であり、環境に優れている。このように、特定の地域でしか産出することができない天然ガスなどの天然資源に比べて、バイオガスは比較的容易に生成または入手することができる。
【0037】
このように、バイオガスは、再生可能なエネルギー資源であることに加えて、天然ガスなどの天然資源に比べて入手が容易である。そのため、バイオガスを有用炭化水素の製造方法の原料に用いると、原料不足にならずに、原料を安定して入手できる。
【0038】
一方で、バイオガスに含まれるメタン含有炭化水素および二酸化炭素の合計に対する二酸化炭素の割合は40%程度であることが多く、二酸化炭素よりもメタン含有炭化水素が多く含まれる。このように、バイオガスには、二酸化炭素よりもメタン含有炭化水素が多く含まれる。そのため、バイオガスをドライリフォーミング工程S10に供給すると、二酸化炭素が不足し、メタン含有炭化水素の一部が利用されず、結果として、ドライリフォーミング工程S10で得られる合成ガスの生成量は減少する。さらに、バイオガスには、二酸化炭素よりもメタン含有炭化水素が多く含まれるため、上記のように、ドライリフォーミング用触媒のコーキングが起こりやすく、結果として、ドライリフォーミング用触媒の活性が低下して、有用炭化水素の生成量が減少する。
【0039】
このような懸念に対して、リサイクル工程S30ではオフガスである二酸化炭素含有ガスをドライリフォーミング工程S10に供給するため、バイオガスにおける二酸化炭素の過少量を補うことができる。このように、バイオガスを原料に用いた場合でも、リサイクル工程S30によって、ドライリフォーミング工程S10におけるバイオガス由来の二酸化炭素不足を抑制できることから、長期間に亘ってドライリフォーミング工程S10を安定して行うことができる。さらに、メタン含有炭化水素に対する二酸化炭素の割合の低下に起因するドライリフォーミング用触媒のコーキングを抑制できることから、ドライリフォーミング用触媒の活性低下を抑制できる。そのため、有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0040】
また、リサイクル工程S30は、ドライリフォーミング工程S10に供給する混合ガス中の二酸化炭素および二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の合計炭素モル数MCO2に対するドライリフォーミング工程S10に供給する炭化水素の合計炭素モル数MHCの比(MHC/MCO2)に応じて、ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整することが好ましい。ドライリフォーミング工程S10に供給する炭化水素とは、混合ガス中のメタン含有炭化水素および二酸化炭素含有ガスに含まれる炭化水素である。
【0041】
ドライリフォーミング工程S10において、メタン含有炭化水素が所定量よりも多い条件下では、ドライリフォーミング用触媒のコーキングおよび二酸化炭素不足を生じる可能性がある。そのため、リサイクル工程S30は、ドライリフォーミング工程S10における上記比(MHC/MCO2)が非常に大きいときに、ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を増加すると、ドライリフォーミング工程S10でのコーキング発生および二酸化炭素不足を抑制できる。このように、ドライリフォーミング工程S10の上記比(MHC/MCO2)に応じて、ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整することによって、ドライリフォーミング工程S10でのコーキング発生および二酸化炭素不足をさらに抑制できる。
【0042】
また、バイオガスは、様々な種類の有機性廃棄物から生成される。そのため、バイオガスは、有機性廃棄物の種類に応じて、バイオガスに含まれるメタン含有炭化水素と二酸化炭素との割合が異なる。バイオガスをドライリフォーミング工程S10に供給する場合であっても、リサイクル工程S30によって、ドライリフォーミング工程S10における上記比(MHC/MCO2)に応じて、ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整する。そのため、バイオガス中のメタン含有炭化水素と二酸化炭素との含有割合が異なっても、ドライリフォーミング工程S10でのコーキング発生および二酸化炭素不足をさらに抑制できる。
【0043】
ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整して、ドライリフォーミング工程S10における上記比(MHC/MCO2)を好ましくは1.30以下、より好ましくは1.00以下に制御すると、上記効果をさらに向上できる。
【0044】
また、リサイクル工程S30によってドライリフォーミング工程S10に供給される二酸化炭素含有ガスのCO濃度は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。二酸化炭素含有ガスのCO濃度が50%以上であると、リサイクル工程S30におけるリサイクルガスの供給量を調節することで、ドライリフォーミング工程S10でのコーキング発生および二酸化炭素不足を十分に抑制できる。
【0045】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、不図示の混合ガス生成工程をさらに有してもよい。混合ガス生成工程は、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスを生成してドライリフォーミング工程S10に供給する。混合ガス生成工程は、木質バイオマスをはじめとするバイオマス資源や廃プラスチックを原料とした熱分解処理、あるいはそれら原料を酸化剤(HOや酸素、二酸化炭素)の添加によって酸化分解するガス化処理を行うことが好ましい。
【0046】
熱分解処理やガス化処理では、少なくとも一酸化炭素および水素を含むガスが生成するが、不純物として炭化水素および二酸化炭素も生成する。これらの炭化水素および二酸化炭素を、混合ガス生成工程からドライリフォーミング工程S10に供給することができる。
【0047】
このとき、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、混合ガス生成工程とドライリフォーミング工程S10の間に、炭化水素および二酸化炭素を含むガスから一酸化炭素および水素を分離する分離工程を有してもよい。
【0048】
熱分解処理やガス化処理の原料の種類やそれらの混合比率、反応温度などの条件によって、炭化水素と二酸化炭素の炭素比率は変化する。
【0049】
ドライリフォーミング工程S10において炭化水素が規定量より多い場合(二酸化炭素が不足)、リサイクル工程S30では、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガス中の不純物である二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスをドライリフォーミング工程S10に供給することによって、炭化水素に対する二酸化炭素の割合の低下に起因する、ドライリフォーミング用触媒のコーキングを抑制できることから、ドライリフォーミング用触媒の活性低下を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、有用炭化水素生成工程S20から排出された二酸化炭素をドライリフォーミング工程S10の原料として再利用するため、地球温暖化を抑制できる。
【0050】
また熱分解処理やガス化処理で生成するガスには、微量の硫黄やハロゲンが不純物として混入する場合がある。これらはドライリフォーミング工程S10で使用するドライリフォーミング用触媒や有用炭化水素生成工程S20で使用する有用炭化水素生成用触媒の被毒物質となるため、触媒性能を損なわせる可能性があり、同時に装置の損傷の原因にもなる。したがって、混合ガス生成工程とドライリフォーミング工程S10の間に、上記生成ガスの前処理工程として、脱硫工程や脱ハロゲン工程などを適宜設けることもできる。
【0051】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、有用炭化水素生成工程S20で生成した第2ガスから水素を分離して有用炭化水素生成工程S20に供給する水素供給工程S40をさらに有することが好ましい。
【0052】
上記の式(3)に示すように、有用炭化水素生成工程S20では、一酸化炭素に対して2倍の量の水素が必要である。一方で、ドライリフォーミング工程S10で生成される第1ガス中の一酸化炭素と水素との割合は、上記の式(1)や(2)に示すように同じである。このように、ドライリフォーミング工程S10では、同じ割合の一酸化炭素および水素が生成されること、有用炭化水素生成工程S20では、一酸化炭素よりも2倍の量の水素が必要であることから、有用炭化水素生成工程S20を長期間行うと、水素不足に至る。その結果、一酸化炭素が余ってしまうので、有用炭化水素生成工程S20で得られる有用炭化水素の生成量は低下する。
【0053】
そこで、水素供給工程S40では、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガス中の不純物である水素(いわゆるオフガス)を有用炭化水素生成工程S20に供給することによって、有用炭化水素生成工程S20の原料である水素の過少量を補うことができる。このように、水素供給工程S40によって、長期間の有用炭化水素生成工程S20による水素不足を抑制できることから、長期間に亘って有用炭化水素生成工程S20を安定して行うことができる。そのため、貯蔵および輸送が容易な有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、有用炭化水素生成工程S20から排出された水素を有用炭化水素生成工程S20の原料として再利用するため、環境負荷を低減できる。
【0054】
また、水素供給工程S40は、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mに応じて、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を調整することが好ましく、上記モル数Mならびに製造する有用炭化水素の種類および反応に応じて、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を調整することがより好ましい。
【0055】
例えば有用炭化水素として液化石油ガスを製造する場合、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mが多いと、有用炭化水素合成反応は良好に行われる。一方、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mが少ないと、有用炭化水素合成反応における水素不足を生じる可能性がある。そのため、水素供給工程S40では、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mが少ないときに、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を増加すると、有用炭化水素生成工程S20での水素不足を抑制できる。
【0056】
このように、水素供給工程S40では、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mが少ないときには、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を増加するといった、有用炭化水素生成工程S20における水素のモル数Mに応じて、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を調整することによって、目的とする有用炭化水素をさらに効率的に製造できる。
【0057】
また、水素供給工程S40は、有用炭化水素生成工程S20における一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)に応じて、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を調整することが好ましい。
【0058】
有用炭化水素生成工程S20のモル比(M/MCO)について、一酸化炭素に対する水素の割合が非常に少ないと、水素不足になる可能性がある。そのため、水素供給工程S40では、有用炭化水素生成工程S20におけるモル比(M/MCO)が非常に少ないときに、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を増加すると、有用炭化水素生成工程S20での水素不足を抑制できる。このように、有用炭化水素生成工程S20におけるモル比(M/MCO)に応じて、有用炭化水素生成工程S20に供給する水素の供給量を調整することによって、有用炭化水素生成工程S20での水素不足をより確実に抑制できる。
【0059】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、ドライリフォーミング工程S10で得られた第1ガスに含まれる一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)を調整する不図示の調整工程をさらに有してもよい。調整工程は、ドライリフォーミング工程S10の前に行われる。
【0060】
調整工程は、ドライリフォーミング工程S10で得られた第1ガス中のモル比(M/MCO)を調整する。調整工程は、ドライリフォーミング工程S10の前に行われ、第1ガス中のモル比(M/MCO)を調整することが好ましい。調整工程では、有用炭化水素生成工程S20で実施される有用炭化水素を製造する反応の条件に応じて、第1ガス中のモル比(M/MCO)が調整される。
【0061】
調整工程によってモル比(M/MCO)を調整した第1ガスが有用炭化水素生成工程S20に供給されると、長期間の有用炭化水素生成工程S20による水素不足を抑制できることから、長期間に亘って有用炭化水素生成工程S20を安定して行うことができる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0062】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、第2ガスから炭素原子を含む物質を分離し、炭素原子を含む物質を燃焼して二酸化炭素を生成する不図示の燃焼工程をさらに有してもよい。この場合、リサイクル工程S30は、二酸化炭素含有ガス、および燃焼工程で生成した二酸化炭素をドライリフォーミング工程S10に供給する。
【0063】
例えば有用炭化水素として液化石油ガスを製造する場合、有用炭化水素生成工程S20から排出された第2ガスには、液化石油ガスに加えて、不純物としてメタン、二酸化炭素、一酸化炭素、メタノール、ジメチルエーテル、炭素数1以上2以下の炭化水素、炭素数5以上の炭化水素などの炭素原子を含む物質が含まれる。燃焼工程では、有用炭化水素生成工程S20から排出される第2ガス中の炭素原子を含む物質を第2ガスから分離し、分離した炭素原子を含む物質を燃焼して、二酸化炭素を生成する。
【0064】
燃焼工程で燃焼する炭素原子を含む物質は、メタン、一酸化炭素、メタノール、ジメチルエーテル、目的とする有用炭化水素以外の炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む。なお、燃焼工程で燃焼する炭素原子を含む物質には、二酸化炭素が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0065】
リサイクル工程S30は、有用炭化水素生成工程S20で生成された第2ガスから分離した二酸化炭素含有ガスに加えて、燃焼工程で生成された二酸化炭素についても、ドライリフォーミング工程S10に供給する。ドライリフォーミング工程S10に供給する二酸化炭素の量は、燃焼工程によって増加できる。そのため、ドライリフォーミング工程S10によるコーキング発生および二酸化炭素不足をさらに抑制できることから、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、燃焼工程で発生した熱を回収して、ドライリフォーミング工程S10や有用炭化水素生成工程S20に利用することができる。
【0066】
また、ドライリフォーミング工程S10に供給される炭化水素中の低級炭化水素と二酸化炭素との割合に応じて、燃焼工程の燃焼率を調整することが好ましい。燃焼工程の燃焼率とは、下記式(4)のように、第2ガス中の目的とする有用炭化水素成分を除く炭化水素を燃焼して二酸化炭素に転換する割合であり、次の式から算出できる。例えば燃焼工程の燃焼率が100%である場合、燃焼工程は、第2ガス中の目的とする有用炭化水素成分を除く全ての炭化水素を燃焼して二酸化炭素を生成する。
【0067】
2C2n+2+(3n+1)O→(2n+2)HO+2nCO ・・・式(4)
【0068】
燃焼率(%)=100-(燃焼工程で燃焼した目的とする有用炭化水素成分を除く全炭化水素量(C-mol)×100/第2ガス中の目的とする有用炭化水素成分を除く全炭化水素量(C-mol))
【0069】
このように、燃焼工程の燃焼率を変えることによって、燃焼工程で生成する二酸化炭素の量を調整できる。そのため、ドライリフォーミング工程S10に供給される低級炭化水素と二酸化炭素との割合に応じて、燃焼工程の燃焼率を調整して二酸化炭素の生成量を調整し、リサイクル工程S30でドライリフォーミング工程S10に供給される二酸化炭素の量を調整できるため、目的とする有用炭化水素の生成量を増加できる。
【0070】
例えば有用炭化水素生成工程S20において液化石油ガスを製造する場合、燃焼工程の燃焼率が3%以上であると、ドライリフォーミング工程S10の二酸化炭素不足を十分に抑制できる。また、燃焼工程の燃焼率が50%以下であると、ドライリフォーミング工程S10に供給される低級炭化水素と二酸化炭素との割合が良好である。そのため、燃焼工程の燃焼率が3%以上50%以下であると、有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0071】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、バイオガスをドライリフォーミング工程S10に供給する場合、バイオガスを脱硫する不図示の脱硫工程を有してもよい。脱硫工程はドライリフォーミング工程S10の前に行われる。バイオガスには、硫化水素のような硫黄化合物などの硫黄成分が含まれている。バイオガス中の硫黄成分は、ドライリフォーミング工程S10で用いられるドライリフォーミング用触媒および有用炭化水素生成工程S20で用いられる有用炭化水素生成用触媒の触媒性能を低下させる。脱硫工程でバイオガスを脱硫することによって、ドライリフォーミング用触媒および有用炭化水素生成用触媒の触媒性能の低下を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って安定して製造できる。
【0072】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、ドライリフォーミング工程S10で生成される第1ガスを脱水する不図示の脱水工程を有してもよい。脱水工程は、ドライリフォーミング工程S10の後かつ有用炭化水素生成工程S20の前に行われる。有用炭化水素生成工程S20に供給される第1ガスには、水が含まれることがある。脱水工程で第1ガスを脱水することによって、有用炭化水素生成工程S20で行われる有用炭化水素の合成反応の効率を向上でき、さらには水分による有用炭化水素生成用触媒の触媒性能の低下を抑制できる。
【0073】
また、実施形態の有用炭化水素の製造方法は、ドライリフォーミング工程S10で生成される第1ガスを圧縮する不図示の圧縮工程を有してもよい。圧縮工程は、ドライリフォーミング工程S10の後かつ有用炭化水素生成工程S20の前に行われる。圧縮工程で第1ガスを圧縮することによって、圧縮された第1ガスが生成工程S20に供給されるため、有用炭化水素生成工程S20で行われる有用炭化水素の合成反応の効率を向上できる。
【0074】
また、有用炭化水素の製造方法で製造する有用炭化水素は、オレフィン類、芳香族炭化水素、ガソリン、液化石油ガス、および液状炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素であることが好ましく、液化石油ガスであることがより好ましい。
【0075】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレンであることが好ましい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンであることが好ましい。ガソリンとしては、炭素数5以上12以下の炭化水素であることが好ましい。液化石油ガスとしては、炭素数3以上4以下の炭化水素であることが好ましい。液状炭化水素としては、炭素数5以上の炭化水素であるナフサ、灯油、ジェット燃料、軽油、重油であることが好ましい。
【0076】
有用炭化水素の製造方法では、製造する有用炭化水素の種類に応じて、有用炭化水素生成工程S20での適切な触媒および反応条件下において、各種の有用炭化水素合成反応によって、一酸化炭素および水素から、目的とする各種有用炭化水素を主成分とする炭化水素混合物を合成することができる。
【0077】
例えば、有用炭化水素としてオレフィン類を製造する場合、有用炭化水素生成工程S20では、第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素からオレフィン類を合成するための有用炭化水素生成用触媒(オレフィン類生成用触媒)を用いて、オレフィン類合成反応を行う。有用炭化水素生成工程S20において、第1ガスをオレフィン類生成用触媒に供給しながら、オレフィン類生成用触媒を加熱することによって、供給された第1ガス中の一酸化炭素および水素がオレフィン類生成用触媒によって反応し、オレフィン類を含む第2ガスを生成する。
【0078】
オレフィン類の生成量を増加する観点から、オレフィン類生成用触媒は、メタノール合成用触媒物質およびZSM-5型ゼオライト触媒物質を含む触媒であることが好ましい。
【0079】
このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質はP(リン)を含有することが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質がPを含有すると、ZSM-5型ゼオライト触媒物質の酸強度を適度に制御できるため、過剰な炭化水素鎖の成長を抑え、エチレンやプロピレンといったオレフィン類の生成量を増加できる。
【0080】
また、このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質に含まれる、Alのモル数に対するSiOのモル数の比(SiOのモル数/Alのモル数)は、20以上60以下であることが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質のゼオライト骨格を構成するケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウム原子にかえることによって、アルミニウム原子が酸点となるため、ゼオライト触媒物質は固体酸としての機能を発現する。上記比が60以下であると、ZSM-5型ゼオライト触媒物質の酸点が増加するため、オレフィン類の生成量を増加できる。また、上記比が20以上であると、酸点が多くなりすぎることに起因するコーキングなどの触媒劣化を抑制できる。
【0081】
オレフィン類生成用触媒の加熱温度は、オレフィン類生成用触媒の種類、第1ガスの供給量などによって適宜設定される。例えば、オレフィン類生成用触媒の加熱温度は、240℃以上350℃以下である。
【0082】
オレフィン類合成反応の圧力について、下限値は、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは3.5MPa以上であり、上限値は、好ましくは6.0MPa以下、より好ましくは5.5MPa以下、さらに好ましくは5.0MPa以下である。
【0083】
このとき、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素であるオレフィン類が含有される。第2ガスには、オレフィン類に加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物であるメタノール、ジメチルエーテル、炭素数10以下の炭化水素などが含まれる。
【0084】
第2ガスに含まれるオレフィン類の含有割合は、オレフィン類生成用触媒の加熱温度や第1ガスの供給量などのオレフィン類合成反応の条件によって、適宜調整できる。
【0085】
有用炭化水素がオレフィン類である場合、二酸化炭素含有ガスには、目的とするオレフィン類以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれることが好ましい。二酸化炭素含有ガスが上記物質を含むと、オレフィン類の収率が大幅に向上する。
【0086】
また、例えば有用炭化水素として芳香族炭化水素を製造する場合、有用炭化水素生成工程S20では、第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素から芳香族炭化水素を合成するための有用炭化水素生成用触媒(芳香族炭化水素生成用触媒)を用いて、芳香族炭化水素合成反応を行う。有用炭化水素生成工程S20において、第1ガスを芳香族炭化水素生成用触媒に供給しながら、芳香族炭化水素生成用触媒を加熱することによって、供給された第1ガス中の一酸化炭素および水素が芳香族炭化水素生成用触媒によって反応し、芳香族炭化水素を含む第2ガスを生成する。
【0087】
芳香族炭化水素の生成量を増加する観点から、芳香族炭化水素生成用触媒は、メタノール合成用触媒物質およびZSM-5型ゼオライト触媒物質を含む触媒であることが好ましい。
【0088】
このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質には、活性金属酸化物として、MnO、MnCr、MnAl、MnZrO、ZnO、ZnCrおよびZnAlの1種類以上を担持することが好ましく、MnO、MnCr、MnAlおよびMnZrOの1種以上を担持することが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質が上記金属酸化物を担持すると、芳香族炭化水素の生成量を増加できる。
【0089】
また、このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質に含まれる、Alのモル数に対するSiOのモル数の比(SiOのモル数/Alのモル数)は、20以上60以下であることが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質のゼオライト骨格を構成するケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウム原子にかえることによって、アルミニウム原子が酸点となるため、ゼオライト触媒物質は固体酸としての機能を発現する。上記比が60以下であると、ZSM-5型ゼオライト触媒物質の酸点が増加するため、芳香族炭化水素の生成量を増加できる。また、上記比が20以上であると、酸点が多くなりすぎることに起因するコーキングなどの触媒劣化を抑制できる。
【0090】
芳香族炭化水素生成用触媒の加熱温度は、芳香族炭化水素生成用触媒の種類、第1ガスの供給量などによって適宜設定される。例えば、芳香族炭化水素生成用触媒の加熱温度は、300℃以上600℃以下である。
【0091】
芳香族炭化水素合成反応の圧力は、0.1MPa以上6.0MPa以下であることが好ましい。
【0092】
このとき、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素である芳香族炭化水素が含有される。第2ガスには、芳香族炭化水素に加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物であるメタノール、ジメチルエーテル、有用炭化水素である芳香族炭化水素以外の炭化水素などが含まれる。
【0093】
第2ガスに含まれる芳香族炭化水素の含有割合は、芳香族炭化水素生成用触媒の加熱温度や第1ガスの供給量などの芳香族炭化水素合成反応の条件によって、適宜調整できる。
【0094】
有用炭化水素が芳香族炭化水素である場合、二酸化炭素含有ガスには、目的とする芳香族炭化水素以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれることが好ましい。二酸化炭素含有ガスが上記物質を含むと、芳香族炭化水素の収率が大幅に向上する。
【0095】
また、例えば有用炭化水素としてガソリンを製造する場合、有用炭化水素生成工程S20では、第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素からガソリンを合成するための有用炭化水素生成用触媒(ガソリン生成用触媒)を用いて、ガソリン合成反応を行う。有用炭化水素生成工程S20において、第1ガスをガソリン生成用触媒に供給しながら、ガソリン生成用触媒を加熱することによって、供給された第1ガス中の一酸化炭素および水素がガソリン生成用触媒によって反応し、ガソリンを含む第2ガスを生成する。
【0096】
ガソリンの生成量を増加する観点から、ガソリン生成用触媒は、メタノール合成用触媒物質およびZSM-5型ゼオライト触媒物質を含む触媒であることが好ましい。
【0097】
また、このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質に含まれる、Alのモル数に対するSiOのモル数の比(SiOのモル数/Alのモル数)は、少なくとも12であることが好ましい。また、ZSM-5型ゼオライト触媒物質は、好ましくは12員環まで、より好ましくは10員環までによって形成される細孔径を有する。ZSM-5型ゼオライト触媒物質のゼオライト骨格を構成するケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウム原子にかえることによって、アルミニウム原子が酸点となるため、ゼオライト触媒物質は固体酸としての機能を発現する。上記のようなZSM-5型ゼオライト触媒物質であると、ガソリンの生成量を増加できる。このようなZSM-5型ゼオライト触媒物質は、例えばZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-23、ZSM-35およびZSM-38である。
【0098】
ガソリン生成用触媒の加熱温度は、ガソリン生成用触媒の種類、第1ガスの供給量などによって適宜設定される。例えば、ガソリン生成用触媒の加熱温度は、250℃以上500℃以下であり、好ましくは300℃以上450℃以下である。
【0099】
ガソリン合成反応の圧力は、25bar以上150bar以下であることが好ましい。
【0100】
このとき、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素であるガソリンが含有される。第2ガスには、ガソリンに加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物であるメタノール、ジメチルエーテル、ガソリン以外の炭化水素などが含まれる。
【0101】
第2ガスに含まれるガソリンの含有割合は、ガソリン生成用触媒の加熱温度や第1ガスの供給量などのガソリン合成反応の条件によって、適宜調整できる。
【0102】
有用炭化水素がガソリンである場合、二酸化炭素含有ガスには、目的とするガソリン以外の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれることがより好ましい。二酸化炭素含有ガスが上記物質を含むと、ガソリンの収率が大幅に向上する。
【0103】
また、例えば有用炭化水素として液化石油ガスを製造する場合、有用炭化水素生成工程S20では、第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素から液化石油ガスを合成するための有用炭化水素生成用触媒(LPG生成用触媒)を用いて、液化石油ガス合成反応を行う。有用炭化水素生成工程S20において、第1ガスをLPG生成用触媒に供給しながら、LPG生成用触媒を加熱することによって、供給された第1ガス中の一酸化炭素および水素がLPG生成用触媒によって反応し、液化石油ガスを含む第2ガスを生成する。
【0104】
液化石油ガスの生成量を増加すると共に、液化石油ガスに含まれるプロパンの含有割合を増加する観点から、LPG生成用触媒は、メタノール合成用触媒物質およびZSM-5型ゼオライト触媒物質を含む触媒であることが好ましい。
【0105】
このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質には、Pt(白金)、またはPtおよびPd(パラジウム)を担持することが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質がPt、またはPtおよびPdを担持すると、液化石油ガスの生成量およびプロパンの含有割合を増加できる。ZSM-5型ゼオライト触媒物質に担持されているPtおよびPdの状態について、金属単体のPtおよび金属単体のPdが混在してもよいし、PtおよびPdが合金化してもよいし、PtおよびPdの少なくとも一方の金属単体とPtおよびPdの合金とが混在してもよい。
【0106】
また、このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質はPを含有することが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質がPを含有すると、ZSM-5型ゼオライト触媒物質の酸強度を適度に制御できるため、液化石油ガスの生成量およびプロパンの含有割合を増加できる。
【0107】
また、このような触媒について、ZSM-5型ゼオライト触媒物質に含まれる、Alのモル数に対するSiOのモル数の比(SiOのモル数/Alのモル数)は、20以上60以下であることが好ましい。ZSM-5型ゼオライト触媒物質のゼオライト骨格を構成するケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウム原子にかえることによって、アルミニウム原子が酸点となるため、ゼオライト触媒物質は固体酸としての機能を発現する。上記比が60以下であると、ZSM-5型ゼオライト触媒物質の酸点が増加するため、液化石油ガスの生成量およびプロパンの含有割合を増加できる。また、上記比が20以上であると、酸点が多くなりすぎることに起因するコーキングなどの触媒劣化を抑制できる。
【0108】
LPG生成用触媒の加熱温度は、LPG生成用触媒の種類、第1ガスの供給量などによって適宜設定される。例えば、LPG生成用触媒の加熱温度は、240℃以上350℃以下である。
【0109】
液化石油ガス合成反応の圧力について、下限値は、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは3.5MPa以上であり、上限値は、好ましくは6.0MPa以下、より好ましくは5.5MPa以下、さらに好ましくは5.0MPa以下である。
【0110】
このとき、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素である液化石油ガスが含有される。第2ガスには、液化石油ガスに加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物であるメタノール、ジメチルエーテル、炭素数1以上2以下の炭化水素、炭素数5以上の炭化水素などが含まれる。
【0111】
第2ガスに含まれる液化石油ガスの含有割合は、LPG生成用触媒の加熱温度や第1ガスの供給量などの液化石油ガス合成反応の条件によって、適宜調整できる。
【0112】
有用炭化水素が液化石油ガスである場合、二酸化炭素含有ガスには、炭化数3~4以外の炭化水素が含まれることが好ましく、炭素数1以上2以下の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれることがより好ましく、エタンが含まれることがさらに好ましい。二酸化炭素含有ガスが上記物質を含むと、液化石油ガスの収率が大幅に向上する。
【0113】
また、例えば有用炭化水素として液状炭化水素を製造する場合、有用炭化水素生成工程S20では、第1ガスに含まれる一酸化炭素および水素から液状炭化水素を合成するための有用炭化水素生成用触媒(液状炭化水素生成用触媒)を用いて、液状炭化水素合成反応を行う。有用炭化水素生成工程S20において、第1ガスを液状炭化水素生成用触媒に供給しながら、液状炭化水素生成用触媒を加熱することによって、供給された第1ガス中の一酸化炭素および水素が液状炭化水素生成用触媒によって反応し、液状炭化水素を含む第2ガスを生成する。
【0114】
液状炭化水素の生成量を増加する観点から、液状炭化水素生成用触媒は、FT(フィッシャー・トロプシュ)合成触媒であることが好ましい。
【0115】
FT合成触媒としては、担体上にFT反応に対する活性を有する金属の少なくとも1種以上を担持することが好ましい。担体は、Al、SiOであることが好ましい。また、FT反応に対する活性を有する金属は、Ru、Co、Fe、Niであることが好ましく、Ru、Coであることがより好ましい。上記金属がRuである場合、FT合成触媒はRuを金属換算で0.5質量%以上5.0質量%以下含むことが好ましい。上記金属がCoである場合、FT合成触媒はCoを金属換算で5.0質量%以上40.0質量%以下含むことが好ましい。
【0116】
また、FT合成触媒は、上記ドライリフォーミング用触媒の好適例として挙げた触媒構造体であって、Coを内部に包摂したものであってもよい。
【0117】
液状炭化水素生成用触媒の加熱温度は、液状炭化水素生成用触媒の種類、第1ガスの供給量などによって適宜設定される。例えば、液状炭化水素生成用触媒の加熱温度は、200℃以上350℃以下であり、好ましくは210℃以上310℃以下、より好ましくは220℃以上290℃以下である。
【0118】
液状炭化水素合成反応の圧力について、好ましくは0.5MPa以上10.0MPa以下、より好ましくは0.7MPa以上7.0MPa以下、さらに好ましくは0.8MPa以下5.0MPa以下である。
【0119】
このとき、有用炭化水素生成工程S20で生成される第2ガスには、少なくとも有用炭化水素である液状炭化水素が含有される。第2ガスには、液状炭化水素に加えて、ドライリフォーミング工程S10および有用炭化水素生成工程S20の未反応物質である炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、これら工程の副生成物であるメタノール、ジメチルエーテル、炭素数4以下の炭化水素などが含まれる。
【0120】
第2ガスに含まれる液状炭化水素の含有割合は、液状炭化水素生成用触媒の加熱温度や第1ガスの供給量などの液状炭化水素合成反応の条件によって、適宜調整できる。
【0121】
有用炭化水素が液状炭化水素である場合、二酸化炭素含有ガスには、炭素数4以下の炭化水素および一酸化炭素の少なくとも一方が含まれることが好ましい。二酸化炭素含有ガスが上記物質を含むと、液状炭化水素の収率が大幅に向上する。
【0122】
[有用炭化水素の製造装置]
次に、実施形態の有用炭化水素の製造装置について説明する。図2は、実施形態の有用炭化水素の製造装置の一例を示す概略図である。実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、上記実施形態の有用炭化水素の製造方法を行う装置である。
【0123】
図2に示すように、有用炭化水素の製造装置1は、ドライリフォーミング部2と有用炭化水素生成部3とリサイクル部4とを備える。
【0124】
有用炭化水素の製造装置1を構成するドライリフォーミング部2には、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスが供給される。ドライリフォーミング部2は、不図示のドライリフォーミング用触媒およびドライリフォーミング用触媒を加熱する不図示の加熱部を備える。例えば、加熱部は、加熱炉である。ドライリフォーミング用触媒は、加熱部によって、所定の温度に加熱される。
【0125】
加熱状態のドライリフォーミング用触媒を備えるドライリフォーミング部2に混合ガスが供給されると、ドライリフォーミング部2は、混合ガス中のメタン含有炭化水素および二酸化炭素をドライリフォーミング用触媒によって反応させて、一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成する。このように、ドライリフォーミング部2では、混合ガスに対してドライリフォーミングが行われる。
【0126】
有用炭化水素の製造装置1を構成する有用炭化水素生成部3には、ドライリフォーミング部2で生成した第1ガスが供給される。有用炭化水素生成部3は、不図示の有用炭化水素生成用触媒および有用炭化水素生成用触媒を加熱する不図示の加熱部を備える。例えば、加熱部は、加熱炉である。有用炭化水素生成用触媒は、加熱部によって、所定の温度に加熱される。
【0127】
加熱状態の有用炭化水素生成用触媒を備える有用炭化水素生成部3に第1ガスが供給されると、有用炭化水素生成部3は、第1ガス中の一酸化炭素および水素を有用炭化水素生成用触媒によって反応させて、目的とする有用炭化水素を含む第2ガスを生成する。このように、有用炭化水素生成部3では、第1ガスに対して有用炭化水素合成反応が行われる。
【0128】
有用炭化水素の製造装置1を構成するリサイクル部4は、有用炭化水素生成部3で生成した第2ガスから二酸化炭素含有ガスを分離し、二酸化炭素含有ガスをドライリフォーミング部2に供給する。有用炭化水素生成部3より排出された第2ガスから分離した二酸化炭素含有ガスをリサイクル部4によってドライリフォーミング部2に供給すると、ドライリフォーミング部2でのコーキング発生および二酸化炭素不足を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0129】
また、リサイクル部4は、ドライリフォーミング部2に供給する混合ガス中の二酸化炭素および二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の合計炭素モル数MCO2に対するドライリフォーミング部2に供給する炭化水素の合計炭素モル数MHCの比(MHC/MCO2)に応じて、ドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整することが好ましい。ドライリフォーミング部2に供給する炭化水素とは、混合ガス中のメタン含有炭化水素および二酸化炭素含有ガスに含まれる炭化水素である。
【0130】
ドライリフォーミング部2における炭素モル比(MHC/MCO2)が大きいと、ドライリフォーミング部2でコーキング発生および二酸化炭素不足を生じる可能性がある。そのため、ドライリフォーミング部2における炭素モル比(MHC/MCO2)が大きいときに、リサイクル部4がドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を増加すると、ドライリフォーミング部2でのコーキング発生および二酸化炭素不足を抑制できる。
【0131】
このように、ドライリフォーミング部2における炭素モル比(MHC/MCO2)が大きいときには、リサイクル部4がドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を増加するといった、ドライリフォーミング部2における炭素モル比(MHC/MCO2)に応じて、リサイクル部4がドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整することによって、目的とする有用炭化水素をさらに効率的に製造できる。ドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素含有ガスの供給量を調整して、ドライリフォーミング部2における上記比(MHC/MCO2)を好ましくは1.30以下、より好ましくは1.00以下に制御すると、上記効果をさらに向上できる。
【0132】
また、リサイクル部4によってドライリフォーミング部2に供給される二酸化炭素含有ガスのCO濃度は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。二酸化炭素含有ガスのCO濃度が50%以上であると、リサイクル部4におけるリサイクルガスの供給量を調整することで、ドライリフォーミング部2でのコーキング発生および二酸化炭素不足を十分に抑制できる。
【0133】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、不図示の混合ガス生成部をさらに備えてもよい。混合ガス生成部は、メタン含有炭化水素および二酸化炭素を含む混合ガスを生成してドライリフォーミング部2に供給する。混合ガス生成部は、木質バイオマスをはじめとするバイオマス資源や廃プラスチックを原料とした熱分解処理、あるいはそれら原料を酸化剤(HOや酸素、二酸化炭素)の添加によって酸化分解するガス化処理を行うことが好ましい。
【0134】
熱分解処理やガス化処理では、少なくとも一酸化炭素および水素を含むガスが生成するが、不純物として炭化水素および二酸化炭素も生成する。これらの炭化水素および二酸化炭素を、混合ガス生成部からドライリフォーミング部2に供給することができる。
【0135】
このとき、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、混合ガス生成部とドライリフォーミング部2の間に、炭化水素および二酸化炭素を含むガスから一酸化炭素および水素を分離する分離部を備えてもよい。
【0136】
また熱分解処理やガス化処理で生成するガスには、微量の硫黄やハロゲンが不純物として混入する場合がある。これらはドライリフォーミング部2で使用するドライリフォーミング用触媒や有用炭化水素生成部3で使用する有用炭化水素生成用触媒の被毒物質となるため、触媒性能を損なわせる可能性があり、同時に装置の損傷の原因にもなる。したがって、混合ガス生成部とドライリフォーミング部2の間に、上記生成ガスの前処理工程として、脱硫工程や脱ハロゲン工程などを適宜設けることもできる。
【0137】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、有用炭化水素生成部3で生成した第2ガスから水素を分離して有用炭化水素生成部3に供給する水素供給部5をさらに備えることが好ましい。有用炭化水素生成部3から排出される第2ガス中の不純物である水素を水素供給部5によって有用炭化水素生成部3に供給すると、有用炭化水素生成部3における水素不足を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、有用炭化水素生成部3から排出された水素を有用炭化水素生成部3の原料として再利用するため、環境負荷を低減できる。
【0138】
また、水素供給部5は、有用炭化水素生成部3における水素のモル数Mに応じて、有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を調整することが好ましく、上記モル数Mならびに製造する有用炭化水素の種類および反応に応じて、有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を調整することがより好ましい。
【0139】
例えば有用炭化水素として液化石油ガスを製造する場合、有用炭化水素生成部3における水素のモル数Mが少ないと、有用炭化水素生成部3で水素不足を生じる可能性がある。そのため、有用炭化水素生成部3における水素のモル数Mが少ないときに、水素供給部5が有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を増加すると、有用炭化水素生成部3での水素不足を抑制できる。
【0140】
このように、有用炭化水素生成部3における水素のモル数Mが少ないときには、水素供給部5が有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を増加するといった、有用炭化水素生成部3における水素のモル数Mに応じて、水素供給部5が有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を調整することによって、目的とする有用炭化水素をさらに効率的に製造できる。
【0141】
また、水素供給部5は、有用炭化水素生成部3における一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)に応じて、有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を調整することが好ましい。
【0142】
有用炭化水素生成部3のモル比(M/MCO)について、一酸化炭素に対する水素の割合が非常に少ないと、水素不足になる可能性がある。そのため、有用炭化水素生成部3におけるモル比(M/MCO)が非常に少ないときに、水素供給部5が有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を増加すると、有用炭化水素生成部3での水素不足を抑制できる。このように、有用炭化水素生成部3におけるモル比(M/MCO)に応じて、水素供給部5が有用炭化水素生成部3に供給する水素の供給量を調整することによって、有用炭化水素生成部3での水素不足をより確実に抑制できる。
【0143】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、ドライリフォーミング部2で得られた第1ガスに含まれる一酸化炭素のモル数MCOに対する水素のモル数Mのモル比(M/MCO)を調整する不図示の調整部をさらに有してもよい。調整部は、ドライリフォーミング部2の前に設けられる。
【0144】
調整部は、ドライリフォーミング部2から排出された第1ガス中のモル比(M/MCO)を調整する。調整部は、スチームドラムであることが好ましい。スチームドラムは、ドライリフォーミング部2にスチームを供給して、第1ガス中のモル比(M/MCO)を調整する。調整部では、有用炭化水素生成部3で実施される有用炭化水素合成反応の条件に応じて、第1ガス中のモル比(M/MCO)が調整される。
【0145】
調整部によってモル比(M/MCO)を調整した第1ガスが有用炭化水素生成部3に供給されると、有用炭化水素生成部3による水素不足を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0146】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、第2ガスから炭素原子を含む物質を分離し、炭素原子を含む物質を燃焼して二酸化炭素を生成する不図示の燃焼部をさらに備えてもよい。この場合、リサイクル部4は、二酸化炭素含有ガス、および燃焼部で生成した二酸化炭素をドライリフォーミング部2に供給する。
【0147】
燃焼部では、有用炭化水素生成部3から排出された第2ガス中の炭素原子を含む物質を第2ガスから分離し、分離した炭素原子を含む物質を燃焼して、二酸化炭素を生成する。燃焼部で燃焼する炭素原子を含む物質は、メタン、一酸化炭素、メタノール、ジメチルエーテル、目的とする有用炭化水素以外の炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む。なお、燃焼部で燃焼する炭素原子を含む物質には、二酸化炭素が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0148】
リサイクル部4は、有用炭化水素生成部3で生成された第2ガスから分離した二酸化炭素含有ガスに加えて、燃焼部で生成された二酸化炭素についても、ドライリフォーミング部2に供給する。ドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素の量は、燃焼部によって増加できる。そのため、ドライリフォーミング部2によるコーキング発生および二酸化炭素不足をさらに抑制できることから、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。また、燃焼部で発生した熱を回収して、ドライリフォーミング部2や有用炭化水素生成部3に利用することができる。
【0149】
また、ドライリフォーミング部2に供給される炭化水素と二酸化炭素との割合に応じて、燃焼部の燃焼率を調整することが好ましい。燃焼部の燃焼率を変えることによって、燃焼部で生成する二酸化炭素の量を調整できる。そのため、ドライリフォーミング部2に供給される炭化水素と二酸化炭素との割合に応じて、燃焼部の燃焼率を調整して二酸化炭素の生成量を調整し、リサイクル部4でドライリフォーミング部2に供給される二酸化炭素の量を調整できるため、目的とする有用炭化水素の生成量を増加できる。
【0150】
燃焼部の燃焼率が3%以上であると、ドライリフォーミング部2の二酸化炭素不足を十分に抑制できる。また、燃焼部の燃焼率が50%以下であると、ドライリフォーミング部2に供給される炭化水素と二酸化炭素との割合が良好である。そのため、燃焼部の燃焼率が3%以上50%以下であると、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる。
【0151】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、バイオガスをドライリフォーミング部2に供給する場合、バイオガスを脱硫する不図示の脱硫部を備えてもよい。脱硫部はドライリフォーミング部2の上流側に連結される。バイオガス中の硫黄成分は、ドライリフォーミング部2に設置されているドライリフォーミング用触媒および有用炭化水素生成部3に設置されている有用炭化水素生成用触媒の触媒性能を低下させる。脱硫部がバイオガスを脱硫することによって、ドライリフォーミング用触媒および有用炭化水素生成用触媒の触媒性能の低下を抑制できる。そのため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って安定して製造できる。
【0152】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、ドライリフォーミング部2で生成される第1ガスを脱水する不図示の脱水部を備えてもよい。脱水部は、ドライリフォーミング部2および有用炭化水素生成部3の間に設けられる。脱水部が第1ガスを脱水することによって、有用炭化水素生成部3で行う有用炭化水素の合成反応の効率を向上でき、さらには水分による有用炭化水素生成用触媒の触媒性能の低下を抑制できる。
【0153】
また、実施形態の有用炭化水素の製造装置1は、ドライリフォーミング部2で生成される第1ガスを圧縮する不図示の圧縮部を備えてもよい。圧縮部は、ドライリフォーミング部2および有用炭化水素生成部3の間に設けられる。圧縮部が第1ガスを圧縮することによって、圧縮された第1ガスが有用炭化水素生成部3に供給されるため、有用炭化水素生成部3で行う目的とする有用炭化水素の合成反応の効率を向上できる。
【0154】
また、有用炭化水素の製造装置1で製造する有用炭化水素は、上記有用炭化水素の製造方法で製造する有用炭化水素と同様であり、オレフィン類、芳香族炭化水素、ガソリン、液化石油ガス、および液状炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素であることが好ましく、液化石油ガスであることがより好ましい。
【0155】
有用炭化水素の製造装置1では、製造する有用炭化水素の種類に応じて、有用炭化水素生成部3での適切な触媒および反応条件下において、各種の有用炭化水素合成反応によって、一酸化炭素および水素から、目的とする各種有用炭化水素を主成分とする炭化水素混合物を合成することができる。有用炭化水素生成部3で行われる各種の有用炭化水素合成反応は、上記で説明した有用炭化水素の製造方法における有用炭化水素生成工程S20の条件と同様である。
【0156】
以上説明した実施形態によれば、比較的容易に得られるメタン含有炭化水素および二酸化炭素、メタン含有炭化水素および二酸化炭素から一酸化炭素および水素を生成できるドライリフォーミング、ならびに有用炭化水素生成工程で得られる第2ガスに不純物である二酸化炭素が含まれることに着目し、第2ガス中の二酸化炭素をドライリフォーミング工程に供給して再利用することによって、容易に得られる原料を用い、長期間に亘って効率よく目的とする有用炭化水素を製造することができる。
【0157】
さらに、近年、不純物の処理コストが問題となっている、天然ガス埋蔵量が豊富なインドネシアやマレーシアなどのガス田から産出される、不純物としての二酸化炭素を多く含む天然ガスについても、本開示の技術を好適に適用することができる。上記の混合ガスに代わり、モル換算でメタン/二酸化炭素が1以上9以下のガスを原料として用い、当該ガスから一酸化炭素および水素を含む第1ガスを生成するドライリフォーミング工程を行うと、多量の二酸化炭素を効率的にドライリフォーミング工程に供給できるため、目的とする有用炭化水素を長期間に亘って効率よく製造できる上に、不純物としての二酸化炭素を多く含むガスに対する処理コストの問題を解消できる。
【0158】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0159】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0160】
(実施例1-1~1-5、参考例1-1)
図2に示す装置を用いて、図1に示す製造方法で有用炭化水素である液化石油ガスを製造した。具体的には、次の通りである。
【0161】
ドライリフォーミング部2には、固定床流通式反応器を用いた。石英ガラスの反応管を使用した。上記のように、バイオガスには、二酸化炭素よりもメタンが多く含まれる。そのため、リサイクル部4から二酸化炭素を供給したと仮定して、メタンと二酸化炭素との比(炭素基準)が同じである原料をドライリフォーミング部2に供給した。ドライリフォーミング部2に供給する原料について、メタンおよび二酸化炭素の合計の流量を10ml/minとした。GHSV=2170(1/h)となるように、ドライリフォーミング用触媒を充填し、その上下に石英ウールを詰めることで、ドライリフォーミング用触媒を固定した。ドライリフォーミング用触媒には、Niを1質量%含む上記のドライリフォーミング用触媒を用いた。ドライリフォーミング用触媒の加熱温度を700℃とした。ドライリフォーミング部2で生成した第1ガスについて、ガスパックで回収し、GC-TCDで分析した。なお、前処理として、ドライリフォーミング用触媒に対して、水素流通下、700℃、1.5時間で還元処理を施した。
【0162】
有用炭化水素生成部3には、固定床流通式反応器を用いた。ステンレス鋼の反応管を使用した。上記のように、ドライリフォーミング部2では、同じ割合の一酸化炭素および水素を生成する。そのため、水素供給部5から水素を供給しないと仮定して、一酸化炭素と水素とのモル比が同じである第1ガスを有用炭化水素生成部3に供給した。有用炭化水素生成部3に供給する第1ガスの流量を37.2ml/minとした。GHSV=2000(1/h)となるように、有用炭化水素生成用触媒(LPG生成用触媒)を充填し、その上下に石英ウールを詰めることで、LPG生成用触媒を固定した。LPG生成用触媒には、メタノール合成用触媒物質とPtおよびPdを担持したZSM-5型ゼオライト触媒物質とを重量比1:1で物理混合した触媒を用いた。LPG生成用触媒の加熱温度を280℃とした。有用炭化水素生成部3内の圧力を5.0MPaとした。有用炭化水素生成部3で生成した第2ガスについて、ガスパックで回収し、GC-TCDおよびFIDで分析した。なお、前処理として、LPG生成用触媒に対して、水素流通下、380℃、2時間で還元処理を施した。
【0163】
(比較例1-1~1-3)
表1に示すように変更した以外は上記実施例と同様に行った。比較例1-1~1-3では、リサイクル部4から二酸化炭素を供給しないと仮定した方法である。
【0164】
表1における合成ガス収量のランク付けについて、合成ガス収量が1.20kg/Nm以上を「良」、 合成ガス収量が1.20kg/Nm未満を「不良」とした。また、総合評価のランク付けについて、初期および7日後の合成ガス収量の双方のランクが良である場合を「〇」、初期および7日後の合成ガス収量の片方のランクが良である場合を「△」初期および7日後の合成ガス収量の双方のランクが不良である場合を「×」とした。
【0165】
【表1】
【0166】
表1に示すように、リサイクル部4から二酸化炭素をドライリフォーミング部2に供給する実施例では、比較例に比べて、ドライリフォーミング工程の入口ガスにおける炭化水素/二酸化炭素の炭素モル比が良好であるため、合成ガス収量が増加できた。このとき、炭化水素/二酸化炭素の炭素モル比は1.30以下にすると合成ガス収量が良好である。さらに好ましくは1.00以下にすると、触媒劣化もよく抑えられるため、長期にわたって効率的に合成ガスを製造でき、有用炭化水素の収量を増加できることが示唆された。
【0167】
また、実施例1-5より、上記の炭化水素/二酸化炭素の炭素モル比を適切に調整するには、リサイクルガス中の二酸化炭素の濃度が50%以上であれば、リサイクル工程におけるリサイクルガスの量を調整することで、炭化水素/二酸化炭素の炭素モル比を良好に調整するための二酸化炭素の量が確保できる。
【0168】
上記のように、リサイクルガス中のCO濃度およびドライリフォーミング工程の入口ガスにおける炭化水素/二酸化炭素の炭素モル比の双方を良好に保つことで、長期にわたって効率的に合成ガスを製造でき、有用炭化水素の収量を増加できることが示唆された。
【0169】
(実施例2~3)
表2に示す一酸化炭素と水素とのモル比を有する第1ガスに変更した以外は、実施例1-1と同様に行った。すなわち、実施例2~3では、水素供給部5から水素を供給する方法である。
【0170】
【表2】
【0171】
表2に示すように、水素供給部5から水素を供給し、二酸化炭素に対する水素のモル比を2倍にすることによって、液化石油ガスの収量を増加できた。
【0172】
(実施例3-1~3-3)
次に、実施例3において、表3に示す燃焼率で燃焼部を稼働させて、リサイクル部4からドライリフォーミング部2に供給する二酸化炭素の量を調整した。そして、第2ガス中の液化石油ガス成分を除く全炭化水素量と第2ガス中の二酸化炭素量を測定し、第2ガス中の液化石油ガス成分を除く全炭化水素と二酸化炭素との割合を算出した。なお、実施例3-1では、燃焼部は稼動しなかった。
【0173】
【表3】
【0174】
表3に示すように、燃焼部の燃焼率を変えると、二酸化炭素の量を調整できるため、液化石油ガスの生成量を増加できることが示唆された。
【0175】
以上から、上記実施例によって、容易に得られる原料を用いて、長期間に亘って効率よく液化石油ガスを製造できることが示唆された。
【0176】
(実施例4)
有用炭化水素生成部3に充填する有用炭化水素生成用触媒(オレフィン類生成用触媒)には、メタノール合成用触媒とPを担持したZSM-5型ゼオライト触媒物質とを重量比1:1で物理混合したものを使用し、反応温度を320℃、GHSV=2000h-1、圧力を5.0MPa、供給するH/CO比を2.0とした以外は上記実施例と同様にして、オレフィン類を製造した。
【0177】
(実施例5)
有用炭化水素生成部3に充填する有用炭化水素生成用触媒(芳香族炭化水素生成用触媒)には、メタノール合成用触媒とZnCrを1wt%物理混合したZSM-5型ゼオライト(ZnCr/ZSM-5)とを、重量比1:1で物理混合したものを使用し、反応温度を350℃、GHSV=500h-1、圧力を5.0MPa、供給するH/CO比を2.5とした以外は上記実施例と同様にして、芳香族炭化水素を製造した。
【0178】
(実施例6)
有用炭化水素生成部3に充填する有用炭化水素生成用触媒(ガソリン生成用触媒)には、メタノール合成用触媒とZSM-5型ゼオライトとを重量比1:1で物理混合したものを使用し、反応温度を370℃、GHSV=3700h-1、圧力を5.0MPa、供給するH/CO比を2.0とした以外は上記実施例と同様にして、ガソリンを製造した。
【0179】
(実施例7)
有用炭化水素生成部3に充填する有用炭化水素生成用触媒(液状炭化水素生成用触媒)には、0.5wt%Co担持SiOを使用し、反応温度を230℃、GHSV=3000h-1、圧力を2.0MPa、供給するH/CO比を2.0とした以外は上記実施例と同様にして、液状炭化水素を製造した。
【0180】
【表4】
【0181】
表4に示すように、触媒、反応条件を適宜変更することで、有用炭化水素生成工程では、オレフィンや芳香族炭化水素、ガソリン留分、液状炭化水素も製造することができた。
【0182】
熊谷ら,“木質バイオマス/廃プラスチック混合物の共熱分解による化学原燃料化”,廃棄物資源循環学会誌,Vol. 28, No. 1, pp. 4-12, 2017には、木質バイオマスを熱分解して得られるガス組成は表5の(1)と報告されている(C2~C4成分は全てC2として換算)。このとき、炭化水素はメタンとエタンのみが生成したと仮定した場合、熱分解後のガス成分(1)にリサイクル工程でリサイクルガス(2)を追加すると、表5の(3)の組成に濃度を調整でき、炭化水素と二酸化炭素の炭素モル比を、表1の上記実施例と同等の好適な値に調整できることがわかる。
【0183】
上記より、上記実施形態および上記実施例は様々な原料に適用可能であり、例えば、家畜ふん尿などの有機系廃棄物をメタン発酵することで得られるバイオガスや木質バイオマス、廃プラスチックを熱分解、ガス化することで得られるガスなどがあげられる。
【0184】
【表5】
【符号の説明】
【0185】
1 有用炭化水素の製造装置
2 ドライリフォーミング部
3 有用炭化水素生成部
4 リサイクル部
5 水素供給部
図1
図2