(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240903BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2020049869
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】古屋 政治
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-264430(JP,A)
【文献】特開2006-184455(JP,A)
【文献】特開2017-116584(JP,A)
【文献】特開平03-194577(JP,A)
【文献】特開2016-065962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナーを保持する像担持体と、
前記像担持体において保持された前記トナーにより形成されるトナー像を当該像担持体から記録媒体へ転写する転写装置と、
前記転写装置に転写バイアスを印加する電源装置と、
前記転写バイアスの印加を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記記録媒体に設定される余白領域が予め規定する閾値よりも狭い場合であって、当該余白領域に続く
先頭領域を含めないと前記閾値よりも非画像領域が拡張できないとき、
前記先頭領域に前記トナー像を転写しなくても、前記記録媒体に前記トナー像を転写できるように、前記像担持体に形成される前記トナー像の大きさを縮小させるように制御
し、
前記制御装置は、
前記記録媒体の搬送方向の先端部分において、画像が形成されない領域として二次転写が行われない領域の大きさに応じて、前記トナー像を転写するための転写バイアスの印加タイミングを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記記録媒体に関する情報である媒体情報を記憶する媒体情報記憶部を備え、
前記媒体情報記憶部において記憶された情報に応じて前記転写バイアスの印加の開始タイミングを制御する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記記録媒体の前記先頭領域を含む画像形成領域において前記トナー像が転写されない非画像領域を判定する非画像領域判定部を備え、
前記非画像領域の広さ又は位置に応じて前記転写バイアスの印加タイミングを制御する、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体で静電潜像を形成し、潜像に顕像材を付着させた画像を媒体に転写する転写プロセスを含む画像形成プロセスにより、媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。転写プロセスは、静電潜像から形成された顕像を像担持体から直接的に媒体に転写するもの、または中間転写ベルトなどへの一次転写を介して媒体に二次転写するものなどがしられている。いずれの転写プロセスにおいても、顕像を形成するための構成物(像担持体や中間転写ベルトを含み、これらを以下、「構成物」と称する。)から媒体への画像の転写プロセスでは静電気による電気的吸着力が利用される。
【0003】
顕像が転写された後の媒体は構成物から分離して搬送方向下流側に移動する必要があるが、電気的吸着力により、媒体と構成物が密着した状態から分離しなくなると、搬送異常の原因となる。そこで従来は、構成物から媒体を分離させるために、構成物の周囲に分離爪を配置して分離爪によって媒体を構成物から機械的に分離する方法や、構成物に対して分離バイアスを印加して電気的な密着状態を解消する方法など、様々な方法が利用されていた。
【0004】
また、構成物に印加する転写バイアスを制御し、媒体の搬送方向先端から搬送方向後端に向かって複数の領域に区分して各領域に異なる転写バイアスを印加して、分離しやすい状態にする技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、世界的な環境問題が指摘されている状況において、電子写真方式の画像形成装置に用いられる媒体に関しても原材料の使用量低減の観点からより薄いもの(剛性が低いもの)を用いるようになっている。今後、媒体の厚さは更に薄くなるものと予想される。従来のように、構造物と媒体の電気的密着状態から媒体を分離させるために、分離爪を用いる方法では剛性の弱い媒体を損傷する可能がある。また、特許文献1に開示の技術を適用して、分離バイアス値を大きくするように制御しても、媒体に転写された画像に分離バイアスが影響して異常画像を誘発する可能性がある。
【0006】
また、特許文献1に開示の技術を用いても、媒体の搬送方向先端部であって分離バイアス値を低い値に設定する部分は、一般的に画像が形成されない余白部分に相当する。余白部分の幅は狭い(例えば、2mm程度)。したがって、分離バイアス値を調整しても、分離性能を向上させる効果は微々たるものとなる。
【0007】
本発明は、電気的密着に対する分離性が低い媒体においても、分離性能を向上できる画像形成プロセスを実行可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、画像形成装置に関するものであって、少なくともトナーを保持する像担持体と、前記像担持体において保持された前記トナーにより形成されるトナー像を当該像担持体から記録媒体へ転写する転写装置と、前記転写装置に転写バイアスを印加する電源装置と、前記転写バイアスの印加を制御する制御装置と、
を備え、前記制御装置は、前記記録媒体に設定される余白領域が予め規定する閾値よりも狭い場合であって、当該余白領域に続く先頭領域を含めないと前記閾値よりも非画像領域が拡張できないとき、前記先頭領域に前記トナー像を転写しなくても、前記記録媒体に前記トナー像を転写できるように、前記像担持体に形成される前記トナー像の大きさを縮小させるように制御し、前記制御装置は、前記記録媒体の搬送方向の先端部分において、画像が形成されない領域として二次転写が行われない領域の大きさに応じて、前記トナー像を転写するための転写バイアスの印加タイミングを制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的密着に対する分離性が低い媒体においても、分離性能を向上できる画像形成プロセスを実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す側面説明図。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を拡大した拡大説明図。
【
図3】本実施形態に係る制御装置の構成を例示するハードウェア構成図。
【
図4】本実施形態に係る制御装置の機能構成を例示する機能構成図。
【
図5】本実施形態に対する比較例を例示する説明図。
【
図6】本実施形態に対する他の比較例を例示する説明図。
【
図7】本実施形態に係る転写バイアス制御の例を示す図。
【
図8】本実施形態に係る転写バイアス制御に対応するニップ部を例示する図。
【
図9】本実施形態に係る転写バイアス制御の別例を示す図。
【
図10】本実施形態に係る転写バイアス制御の別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態であるカラープリンタ200の構成を示す図である。
図1においてカラープリンタ200は、制御部210を備える。制御部210は、カラープリンタ200の各構成の動作を制御する制御装置に相当する。制御部210の詳細については、後述する。
【0012】
カラープリンタ200は、像担持体を中間転写体としている。以下、中間転写体を中間転写ベルト10とする。カラープリンタ200は、感光体1を備え、感光体1の周囲には、感光体クリーニングユニット2、帯電器4、露光手段5、中間転写ベルト10などが配置されている。
【0013】
また、現像手段として、例えば、イエロー現像器6、マゼンタ現像器7、シアン現像器8、ブラック現像器9の4個の現像器から構成される。
【0014】
フルカラー画像形成時には、イエロー現像器6、マゼンタ現像器7、シアン現像器8、ブラック現像器9の順で可視像(顕像)を形成し、各色の可視像が中間転写ベルト10に順次重ね転写されることでフルカラー画像が形成される。なお、顕像の形成順はこれに限定されるものではない。
【0015】
感光体クリーニングユニット2にはブレード3が配置されている。
【0016】
中間転写ベルト10は,一次転写バイアスローラ11、二次転写対向ローラ12、従動ローラ15、ベルトクリーニング対向ローラ13により張架されており,それぞれ駆動モータの駆動力を受けて駆動される。これらのプロセス速度は150[mm/sec]に調整されている。なお、二次転写対向ローラ12は中間転写ベルト10の駆動ローラを兼ねている。
【0017】
また、上記の各ローラは中間転写ベルトユニット側版によって中間転写ベルト10の両側より支持されている。一次転写バイアスローラ11は、感光体1と中間転写ベルト10との接触部に配置されており、一次転写バイアスローラ11には所定の転写バイアスが印加される。
【0018】
中間転写ベルト10は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成したものである。中間転写ベルト10は、カーボンブラック等の導電性材料を分散させ、その体積抵抗率を108~1012[Ωcm]、かつ表面抵抗率を109~1013[Ωcm]の範囲になるように調整されている。
【0019】
なお、必要に応じて中間転写ベルト10の表面に離型層をコートしてもよい。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ-フルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できる。なお、ここに列挙したものに、限定されるものではない。
【0020】
中間転写ベルト10の製造方法は、注型法や遠心成形法等があり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。
【0021】
中間転写ベルト10の体積抵抗率が上述した範囲を超えると、転写に必要なバイアス値が高くなるため、電源コストの増大を招くため好ましくない。また、転写工程、転写紙剥離工程などで中間転写ベルト10の帯電電位が高くなり、かつ自己放電が困難になるため除電手段を設ける必要が生じる。また、体積抵抗率および表面抵抗率が上記範囲を下回ると、帯電電位の減衰が早くなるため自己放電による除電には有利となるが、転写時の電流が面方向に流れるためトナー飛び散りが発生してしまう。したがって、本実施形態に係る中間転写ベルト10の体積抵抗率および表面抵抗率は、上記範囲内を前提とする。
【0022】
なお、体積抵抗率および表面抵抗率の測定は抵抗率計(三菱化学社製:ハイレスタIP)にHRSプローブ(内側電極直径が5.9[mm]、リング電極内径が11[mm])を接続し、中間転写ベルト10の表裏に100[V](表面抵抗率は500[V])の電圧を印加して10秒後の測定値を用いた。
【0023】
また、中間転写ベルト10が張架されているベルトクリーニング対向ローラ13の近傍には、中間転写ベルト10をクリーニングするベルトクリーニングユニット19が配置されている。
【0024】
図2は、本実施形態に係るベルトクリーニングユニット19の周辺拡大図である。
図2に示すように。ベルトクリーニングユニット19には、ウレタンゴムよりなる、クリーニングブレード20が配置されており、クリーニングブレード20を中間転写ベルト10に押し当てて、トナーを堰き止めて清掃する構成となっている。
【0025】
クリーニングブレード20は、ブレードホルダ22により保持される。ブレードホルダ22は、クリーニングブレード20により除去された残留トナーが堆積しないよう、端部がテーパ形状となっている。電圧印加装置103から電圧を印加することによって、ブレードホルダ22に付着した廃トナーを落下させる。本実施形態では、+1000[V]及び-1000[V]を印加するよう設定されているものとする。
【0026】
ベルトクリーニングユニット19は、クリーニングしやすくする為に、固形潤滑剤155を潤滑剤塗布部材152により塗布する。潤滑剤には、直鎖状の炭化水素構造を持つ、脂肪酸金属塩を用いる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸から選択される少なくとも1種以上の脂肪酸を含有し、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムから選択される少なくとも一種以上の金属を含有する脂肪酸金属塩が挙げられる。とりわけその中でもステアリン酸亜鉛は、工業的規模で生産されかつ多方面での使用実績があることから、コストと品質安定性とおよび信頼性で、最も好ましい材料である。ただし、一般に工業的に使われている高級脂肪酸金属塩は、その名称の化合物単体組成ではなく、多かれ少なかれ類似の他の脂肪酸金属塩、金属酸化物、および遊離脂肪酸を含むものであり、本発明での脂肪酸金属塩もその例外ではない。
【0027】
これらの潤滑剤は微量ずつ、粉体の形態で供給されるのであるが、その具体的な方法としては、ブラシなどの固形潤滑剤155によりブロック上に固形成形された潤滑剤を削り取って塗布する方法や、トナーに外添して供給する方法等がある。ただし、トナー(顕像材)に外添して潤滑剤を供給する場合、その供給量が出力する画像面積に依存し、常にベルト表面全面に供給することはできない為、簡易な装置構成で、かつ、ベルト表面全面に安定に潤滑剤を供給しようとした場合、本実施形態のように固形潤滑剤をブラシで削り取って塗布する方法がよい。
【0028】
固形潤滑剤155を潤滑剤塗布部材152で削り取る為に、スプリングのような弾性体である潤滑剤加圧手段153により、固形潤滑剤を1[N]~4[N]の力で潤滑剤塗布部材152に圧接する。固形潤滑剤155の幅は、画像幅よりも広く設定する必要があるため、304[mm]以上とする。潤滑剤塗布部材152の幅は、固形潤滑剤155を均一に削り取る為に、固形潤滑剤155の幅よりも大きくとる必要がある。
【0029】
二次転写ローラ21は、SUS等の金属製芯金上に、導電性材料によって106~1010[Ω]の抵抗値に調整されたウレタン等の弾性体を被覆することで構成されている。ここで、二次転写ローラ21の抵抗値が上記範囲を超えると電流が流れ難くなるため、必要な転写性を得る為にはより高電圧を印加しなければならなくなり、電源コストの増大を招く。また、高電圧を印加するため転写部ニップの前後の空隙にて放電が起こる為、ハーフトーン画像上に放電による白ポチ抜けが発生する。
【0030】
逆に、二次転写ローラ21の抵抗値が上記範囲を下回ると同一画像上に存在する複数色画像部(例えば三色重ね像)と単色画像部との転写性が両立できなくなる。これは、二次転写ローラ21の抵抗値が低い為、比較的低電圧で単色画像部を転写するのに十分な電流が流れるが、複数色画像部を転写するには単色画像部に最適な電圧よりも高い電圧値が必要となるため、複数色画像部を転写できる電圧に設定すると単色画像では転写電流過剰となり転写効率の低減を招く。
【0031】
なお、二次転写ローラ21の抵抗値測定は、導電性の金属製板に二次転写ローラ21を設置し、芯金両端部に片側4.9[N](両側で合計9.8[N])の荷重を掛けた状態にて、芯金と前記金属製板との間に1000[V]の電圧を印加した時に流れる電流値から算出した。
【0032】
また、二次転写ローラ21は、駆動ギヤによって駆動力が与えられており、その周速は中間転写ベルト10の周速に対して、略同一となるように調整されている。
【0033】
二次転写ローラ21に対する印加電流は、定電流で制御され、本実施形態では、その設定値を+30[μA]とする。シート状の記録媒体としての用紙Pは給紙ローラ26,用紙搬送ローラ27、レジストローラ28によって,中間転写ベルト10の面に形成された四色重ね画像の先頭が二次転写位置に到達するタイミングに合わせて搬送される。用紙Pに転写された四色重ね画像は、上述したように除電手段によって除電された後に定着入口ガイド44に沿って定着手段30へ搬送され、定着手段30で定着された後に、排紙ローラ32によって排紙される。
【0034】
[制御部210のハードウェア構成]
次に、カラープリンタ200の制御部210について説明する。
図3は、制御部210のハードウェア構成を示す図である。
図3に示すように制御部210は、一般的な情報処理装置と同様の構成を含む。本実施形態に係るカラープリンタ200が備える制御部210は、CPU(Central Processing Unit)211、RAM(Random Access Memory)212、ROM(Read Only Memory)213、HDD(Hard Disk Drive)214及びI/F215を備え、これらがバス219を介して接続されている。また、I/F215には表示部216、操作部217及び専用デバイス218が接続されている。
【0035】
CPU211は演算手段であり、カラープリンタ200全体の動作を制御する。RAM212は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU211が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM213は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD214は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や、画像形成制御プログラムや転写バイアス制御プログラムなどの各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等が格納される。
【0036】
I/F215は、バス219と各種のハードウェアやネットワーク等とを接続している。I/F215を介して外部との情報通信を行う。表示部216は、利用者がカラープリンタ200の状態や設定している動作モードを確認するための視覚的ユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。操作部217は、利用者がカラープリンタ200の動作モードの設定を入力するためのユーザインタフェースである。
【0037】
専用デバイス218は、カラープリンタ200において専用の動作をする機能を実現するためのハードウェアである。専用デバイス218には、例えば、二次転写ローラ21に二次転写バイアスを印加する電源装置としての二次バイアス電源102や、二次バイアスが印加される用紙Pの種類を検知する用紙検知センサ、感光体1の回動を制御する駆動モータなどが含まれる。
【0038】
制御部210は、専用デバイス218に含まれる各ハードウェア構成を用いて、ROM213やHDD214などに格納されたプログラムをRAM212に読み出してCPU211によって実行されることで、所定の機能を実現するソフトウェア制御部を構成する。
【0039】
[制御部210の機能構成]
図4は、本実施形態に係るソフトウェア制御部の構成を例示する機能ブロック図である。
図4に示すように、制御部210のハードウェア資源と、本実施形態に係る制御プログラムによってソフトウェア制御部が実現される。当該ソフトウェア制御部には、画像データ取得部221と、非画像領域判定部222と、バイアス電圧制御部224と、媒体情報記憶部225と、画像形成サイズ変更部226と、画像形成位置変更部227と、画像形成制御部228と、を含む。
【0040】
画像データ取得部221は、カラープリンタ200において画像を形成するためのデータ(画像データ)を、カラープリンタ200に入力するための処理を実行する。画像データには、用紙Pの画像形成領域に形成する画像310(後述する)の元になる情報や、画像310の形成位置を指定する情報が含まれる。
【0041】
非画像領域判定部222は、画像形成対象である用紙Pの画像形成領域302(
図7参照)のうち、画像データに基づいて画像310が形成されない領域である「非画像領域」を取得する。また、非画像領域判定部222は、画像データに含まれる用紙Pの属性情報に基づき、または、媒体情報記憶部225に記憶されている用紙Pの属性情報に基づいて、当該用紙Pに設定される余白領域301の広さを取得する。また、非画像領域判定部222は、余白領域301に続く画像形成領域302であって、所定距離としての距離Dまでの領域である「先頭領域303」の広さも取得する。先頭領域303は、例えば、余白領域301の広さによらず、用紙Pの搬送方向先端から10mmである。さらに非画像領域判定部222は、余白領域301の広さが、後述する分離性を確保するために十分な広さであるか否かを判定し、余白領域301の広さが分離性の確保には不十分であるときは、余白領域301に続く画像形成領域302のうち、先頭領域303に含まれる領域に画像310が含まれる否かを判定する。
【0042】
また、非画像領域判定部222は、余白領域301の広さが分離性の確保に不十分であって先頭領域303に画像310が形成されないときは、先頭領域303を転写バイアスの印加領域に含めない「非画像領域」として判定し、判定結果をバイアス電圧制御部224に通知する。
【0043】
また、非画像領域判定部222は、余白領域301の広さが分離性の確保に不十分であって先頭領域303に画像310が含まれるときは、画像形成サイズ変更部226か画像形成位置変更部227のいずれか一方または両方に対して、画像形成を変更する指示を通知する。また、この場合、画像形成サイズが変更されることで「非画像領域」となる部分を判定し、又は画像形成位置が変更されることで「非画像領域」となる部分を判定して、バイアス電圧制御部224に判定結果を通知する。
【0044】
バイアス電圧制御部224は、非画像領域判定部222の判定結果に基づいて、用紙Pに対する二次転写バイアスの印加タイミングを制御する。なお、二次転写バイアスの印加タイミングとは、「印加開始タイミング」と「印加終了タイミング」と、を含む。「印加開始タイミング」とは、非画像領域判定部222において、分離性の確保のために「非画像領域」として判定された領域が二次転写位置を過ぎるタイミングに応じて用紙Pに二次転写バイアスの印加を開始するタイミングである。また、「印加終了タイミング」とは画像データに基づいてトナー画像としての画像310を形成するために二次バイアスを印加する必要がある位置を過ぎてから二次転写バイアスの印加を終了するタイミングである。
【0045】
なお、印加開始タイミングは、非画像領域の、搬送方向後端が二次転写位置(ニップ)を通過したら、転写バイアスONにし、転写バイアスが所定値まで立ち上がる時間を考慮して、画像310が転写される位置がニップに到達するタイミングよりも早いタイミングである。
【0046】
なお、バイアス電圧制御部224は、媒体情報記憶部225に記憶されている用紙Pに関する情報に基づいて、印加タイミングやバイアス値を制御してもよい。例えば、用紙Pの厚さ(薄さ)に基づいて、より適切な印加タイミング(転写バイアスの印加の開始のタイミング)やバイアス値を選択し、これに基づいて二次バイアス電源102の制御を行ってもよい。なお、バイアス電圧制御部224は、媒体情報記憶部225に記憶されている用紙Pに関する情報から、バイアス制御に必要な情報を認識する媒体情報認識部も構成する。
【0047】
媒体情報記憶部225は、カラープリンタ200における画像形成処理に用いる用紙Pの種別を記憶する。媒体情報記憶部225には、操作部217を介してユーザが設定画面を操作し、使用する用紙Pの厚み(薄さ)を特定可能な情報を入力する。
【0048】
画像形成サイズ変更部226は、用紙Pの搬送方向先端に設定されている余白領域301の広さでは、分離性を確保するには不十分であると非画像領域判定部222で判定されたときに、画像310を搬送方向後端側に縮小するように、画像形成制御部228に通知する。言い換えると、余白領域301が、予め規定した閾値よりも狭いとき、余白領域301を含む先頭領域303まで二次転写バイアスを印加しない領域(非転写領域)を拡張する処理を行うように画像形成制御部228を制御する。そして、非転写領域が先頭領域303まで拡張されても、画像形成領域302の中で画像310が転写されるように、画像310を搬送方向後端側に縮小するように画像形成制御部228の処理を制御する。例えば、トナー画像の縮小処理として、感光体1に形成される静電潜像の大きさを変更するように制御する。
【0049】
静電潜像の大きさが縮小されると、その後の転写プロセスにおいて用紙Pに対する転写バイアスの印加の開始タイミングは、縮小されたトナー像に基づいて決定すればよいので、用紙Pの搬送方向の先頭部分に二次転写バイアスが印加されない「非転写領域」を拡張しても、所定の画像310を用紙Pに形成(転写)することができる。
【0050】
画像形成位置変更部227は、用紙Pの搬送方向先端に設定されている余白領域301の広さでは、分離性を確保するには不十分であると非画像領域判定部222で判定されたときに、画像310の形成位置を搬送方向後端側に変更するように制御する。言い換えると、余白領域301が、予め規定した閾値よりも狭いとき、余白領域301を含む先頭領域303まで二次転写バイアスを印加しない領域(非転写領域)を拡張する処理を行うように画像形成制御部228を制御する。そして、非転写領域が先頭領域303まで拡張されても、画像形成領域302の中で画像310が転写されるように、画像310を搬送方向後端側に移動させるように画像形成制御部228の処理を制御する。例えば、トナー画像の移動処理として、感光体1に形成される静電潜像の位置を変更するように制御する。
【0051】
画像形成制御部228は、画像形成サイズ変更部226や画像形成位置変更部227による、画像310の大きさや位置の変更を行う制御に基づいて、用紙Pへの二次転写タイミングに合うように、感光体1への静電潜像の形成を制御し、顕像や一次転写も制御する。
【0052】
したがって、本実施形態に係るカラープリンタ200によれば、用紙Pの搬送方向の先頭部分において、画像が形成されない領域として二次転写が行なわれない領域(非転写領域)の大きさ(広さ)に応じて、顕像を転写するための転写バイアスの印加タイミングを制御する。これによって、転写後の用紙Pが二次転写部に電気的に密着することを防止できる。また、非転写領域の大きさ(広さ)や位置に応じて、転写バイアスの印加タイミングを制御することにより、より精度よく二次転写プロセスを完了することができる。これによって、用紙Pが転写プロセス時に密着する構造体から剥離しやすくなり、画像形成の品質を向上させることができる。
【0053】
[比較例の説明]
ここで、本実施形態に係るカラープリンタ200による転写バイアス制御の効果をより明確にするため、比較例となる従来技術の例を説明する。
図5は、従来技術に係る転写バイアスの印加方式の例を説明する図である。
図5の例では、本実施形態の二次転写ローラ21に相当する構成に対して用紙Pが通過する時に転写バイアスが印加される(ONになる)。
図5(a)は、用紙Pの搬送方向における転写バイアスの印加領域を示している。また、
図5(b)は、横軸を用紙Pに対する転写バイアスの印加時間とし、縦軸を転写バイアスのバイアス値としている。なお、用紙Pには、画像310が形成されない「余白領域301」と、画像310が形成されうる領域である「画像形成領域302」が、用紙Pの属性(主にサイズ)によって予め設定される。
図5(a)は、画像310が画像形成領域302を埋めるように形成されるものを例示している。
【0054】
図5に示すように、比較例では、画像形成領域302の搬送方向先端(余白領域301との境界)まで画像310が形成されるので、用紙Pが二次転写ローラ21に到達する前に転写バイアスの印加が開始されている。また、用紙Pの後端が二次転写ローラ21を通過してから転写バイアスの印加を終了している。
【0055】
図6は、別の比較例である。
図6の例は、用紙Pの搬送方向の先端が、二次転写対向ローラ12と二次転写ローラ21により転写ニップ部が形成される転写装置に到達した時、転写バイアスが印加(オン)されるように制御される例である。
図6においても、画像310が画像形成領域302を埋めるように形成されるものを例示している。
【0056】
このときに転写バイアスの印加タイミングは
図5の例と同じである。しかし、後述する分離性を考慮すると、用紙Pの搬送方向先端に続く所定の領域は、第1領域として区別し、その転写バイアス値をVa[v]に設定している。その後、用紙Pが搬送されて第1領域に続く領域としての第2領域の場合は、転写バイアス値をVb[v]に設定する。そして、第2領域に続く第3領域では、転写バイアス値をVc[v]に設定し、最後の第4領域への転写バイアス値はVd[v]に設定されている。
【0057】
ここで、Va<Vb<Vcであって、Vd=Vaとする。すなわち、本比較例では、転写部を構成する構成物からの分離に有利なように用紙Pの搬送方向先頭と搬送方向後尾では転写バイアス値は低く設定している。しかし、用紙Pが薄い場合、搬送方向先頭の転写バイアス値を低くしても、分離性は安定しない可能性が高まる。
【0058】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る実施形態において、二次転写時における用紙Pの分離性を向上させ、画像形成品質に貢献する転写バイアスの制御方法の例について、説明する。転写部分を構成する構成物に対する用紙Pの電気的密着に対する分離性を向上させるには、用紙Pの搬送方向における端部、特に、搬送方向の下流側の端部(搬送時の先頭部)の電気的密着力を低下させることが重要となる。
【0059】
そこで、本実施形態では、制御部210の画像データ取得部221において、用紙Pに転写予定のトナー像としての画像310の元になる画像データを取得する。取得された画像データに基づいて、非画像領域判定部222が、当該画像データによる画像形成が行なわれる対象物である用紙Pの先頭部分における余白領域301の広さを判定する。そして、余白領域301が分離性を確保するには十分であれば、通常の画像形成処理を実行すればよい。
【0060】
非画像領域判定部222における判定結果が「不十分である」とき、非画像領域判定部222は、余白領域301に続く画像形成領域302のうち、画像データに基づいて二次転写バイアスが印加される(画像310が転写される)領域が、先頭領域303に含まれるか否かを判定する。先頭領域303は、余白領域301に続く画像形成領域302のうち、余白領域301との境界から搬送方向上流側に向かって距離Dの範囲の領域である。
【0061】
非画像領域判定部222において、余白領域301だけでは「不十分」と判定されたが、先頭領域303には画像310が転写されない判定したときは、余白領域301と先頭領域303を合わせて「非画像領域」として設定する。
【0062】
これによって、画像が形成されない領域(非転写領域)が設定可能になる。例えば
図7(a)に例示するような場合であって、用紙Pに転写されるトナー像としての画像310が、用紙Pの後尾側には形成されるが先頭側には形成されないとき、余白領域301に続く先頭領域303が非画像領域(非写領域)となる。バイアス電圧制御部224は、非転写領域には転写バイアスを印加しないので、この非転写領域が二次転写位置に到達するタイミングに応じて印加タイミングを制御する。
【0063】
この場合の印加タイミングの例を、
図7(b)に示す。すなわち、比較例(
図5、
図6)の場合よりも、転写バイアスの印加開始タイミング(印加開始時)を遅くする。言い換えると、画像310の転写領域が用紙Pの先頭部分に無いことを利用し、用紙Pが二次転写ローラ21による転写ニップ部を通過した後に、転写バイアスを印加(オン)する。このように転写バイアスの印加タイミングを制御することにより、用紙Pの先頭部分には、非転写領域を十分に確保することができ、用紙Pの先頭部分の非帯電領域を十分に確保できるので、感光体1又は中間転写ベルト10からの用紙Pの分離性を向上できる。
【0064】
上記のように転写バイアスの印加を制御した場合、転写バイアスがONになった時の用紙Pと二次転写ローラ21との位置関係の例を
図8に示す。すなわち、二次転写ローラ21の転写ニップ部を用紙Pの先頭が通過した状態で転写バイアスの印加が開始されるので、用紙Pが中間転写ベルト10には電気的に吸着することはなく、搬送方向下流側に搬送されていく。つまり、用紙Pの分離性確保した状態から転写バイアスの印加を開始することになる。
【0065】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る別の実施形態において、二次転写時における用紙Pの分離性を向上させ、画像形成品質に貢献する転写バイアスの制御方法の別の例について説明する。
【0066】
すでに説明をした第一実施形態と同様に、制御部210の画像データ取得部221において、取得された画像データに基づいて、非画像領域判定部222が、余白領域301の広さを判定する。そして、余白領域301が分離性を確保するには十分であれば、通常の画像形成処理を実行すればよい。
【0067】
非画像領域判定部222における判定結果が「不十分である」とき、非画像領域判定部222は、余白領域301に続く画像形成領域302のうち、画像データに基づいて二次転写バイアスが印加される(画像310が転写される)領域が、先頭領域303に含まれるか否かを判定する。
【0068】
非画像領域判定部222において、余白領域301だけでは「不十分」と判定され、先頭領域303には、
図9(a)に例示するように、画像310が転写される判定したとき、非画像領域判定部222は、画像310を縮小するように、画像形成サイズ変更部226に指示を通知する。
【0069】
画像形成サイズ変更部226は、非画像領域判定部222からの指示に基づいて、画像310を搬送方向後端側に縮小するように、画像形成制御部228に通知する。これによって、画像形成制御部228は、例えば、
図9(b)に示すように画像310が形成されるように画像形成処理を実行する。
【0070】
この場合、画像形成制御部228によって、縮小された画像310を用紙Pに転写するように、転写バイアスの印加を開始するタイミングが制御される。この制御によって、
図9(b)に示すように、用紙Pの先頭部分には、十分な非帯電領域が確保されるので、感光体1又は中間転写ベルト10からの用紙Pの分離性を向上できる。
【0071】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る別の実施形態において、二次転写時における用紙Pの分離性を向上させ、画像形成品質に貢献する転写バイアスの制御方法のさらに別の例について説明する。
【0072】
すでに説明をした第一実施形態及び第二実施形態と同様に、制御部210の画像データ取得部221において、取得された画像データに基づいて、非画像領域判定部222が、余白領域301の広さを判定する。そして、余白領域301が分離性を確保するには十分であれば、通常の画像形成処理を実行すればよい。
【0073】
非画像領域判定部222における判定結果が「不十分である」とき、非画像領域判定部222は、余白領域301に続く画像形成領域302のうち、画像データに基づいて二次転写バイアスが印加される(画像310が転写される)領域が、先頭領域303に含まれるか否かを判定する。
【0074】
非画像領域判定部222において、余白領域301だけでは「不十分」と判定され、先頭領域303には、
図10(a)に例示するように、画像310が転写される判定したとき、非画像領域判定部222は、画像310を移動するするように、画像形成位置変更部227に指示を通知する。
【0075】
画像形成位置変更部227は、非画像領域判定部222からの指示に基づいて、画像310を搬送方向後端側に移動させるように、画像形成制御部228に通知する。これによって、画像形成制御部228は、例えば、
図10(b)に示すように画像310が形成されるように画像形成処理を実行する。
【0076】
この場合、画像形成制御部228によって、画像310の用紙Pへの転写位置を変更するように、転写バイアスの印加を開始するタイミングが制御される。この制御によって、
図10(b)に示すように、用紙Pの先頭部分には、十分な非帯電領域が確保されるので、感光体1又は中間転写ベルト10からの用紙Pの分離性を向上できる。
【0077】
以上のように、本実施形態では、転写バイアスの印加タイミングを通常よりも遅らせるために、画像形成制御部228が中間転写ベルト10に転写されるトナー像の転写タイミングを変更するように制御する。これによって、用紙Pが二次転写ローラ21に到達するタイミングに対して画像の到着タイミングを実質的に遅らせることができる。そして、画像の到着タイミングに合わせて二次転写バイアスを印加するようにバイアス電圧制御部224が転写バイアスの印加タイミングを制御する。
【0078】
これによって用紙Pの先頭部分には、非帯電領域が確保されるので、感光体1又は中間転写ベルト10からの用紙Pの分離性を向上できる。
【0079】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 :感光体
2 :感光体クリーニングユニット
3 :ブレード
4 :帯電器
5 :露光手段
6 :イエロー現像器
7 :マゼンタ現像器
8 :シアン現像器
9 :ブラック現像器
10 :中間転写ベルト
11 :一次転写バイアスローラ
12 :二次転写対向ローラ
13 :ベルトクリーニング対向ローラ
15 :従動ローラ
19 :ベルトクリーニングユニット
20 :クリーニングブレード
21 :二次転写ローラ
22 :ブレードホルダ
26 :給紙ローラ
27 :用紙搬送ローラ
28 :レジストローラ
30 :定着手段
32 :排紙ローラ
44 :定着入口ガイド
102 :二次バイアス電源
103 :電圧印加装置
152 :潤滑剤塗布部材
153 :潤滑剤加圧手段
155 :固形潤滑剤
200 :カラープリンタ
210 :制御部
211 :CPU
212 :RAM
213 :ROM
214 :HDD
215 :I/F
216 :表示部
217 :操作部
218 :専用デバイス
219 :バス
221 :画像データ取得部
222 :非画像領域判定部
224 :バイアス電圧制御部
225 :媒体情報記憶部
226 :画像形成サイズ変更部
227 :画像形成位置変更部
228 :画像形成制御部
301 :余白領域
302 :画像形成領域
303 :先頭領域
310 :画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】