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特許7547783情報処理装置、生体情報計測装置、空間領域値の表示方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、生体情報計測装置、空間領域値の表示方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/245 20210101AFI20240903BHJP
   G06T 15/08 20110101ALI20240903BHJP
【FI】
A61B5/245
G06T15/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020090042
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021000435
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019114043
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直之
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0128660(US,A1)
【文献】特開平10-011605(JP,A)
【文献】特開2017-123034(JP,A)
【文献】特開2003-334189(JP,A)
【文献】特表2014-532177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0170791(US,A1)
【文献】Minoshima S,A diagnostic approach in Alzheimer's disease using three-dimensional stereotactic surface projections of fluorine-18-FDG PET,J Nucl Med,1995年07月,Vol.36, No.7,pp.1238-1248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/24 - 5/398
A61B 5/055
A61B 6/00 - 6/14
G01T 1/161- 1/166
G06T 1/00 - 5/50
G06T 11/00 -11/80
G06T 15/00 -15/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳溝における大脳皮質表面の表面形状データ上の任意の点からの単位法線ベクトルの逆方向且つ一定の距離変位した位置における変位位置データを求める変位位置計算処理部と、
前記脳溝の形状を含む空間に形成されたボリュームデータで表現された空間領域値と、前記変位位置データとに基づき、前記変位位置データに格納されている位置に対し空間領域値を取得する空間値取得処理部と、
前記空間領域値に対応する表示素材を、前記表面形状データ上に配置して表示する空間値表示処理部と、
を備え
前記変位位置計算処理部は、自己干渉領域に入ってしまう場合に、当該自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とする、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記変位位置計算処理部は、平均法を用いて単位法線ベクトルを求める、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記空間値表示処理部は、取得した空間領域値に対応する表示素材を色で表現して、前記表面形状データにポリゴンメッシュを用いた場合に、ポリゴンメッシュの各頂点に色を割り当て、頂点以外のポリゴン領域内を補間処理して色を割り当てる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記空間値表示処理部は、前記補間処理についてグーローシェーディング法を用いる、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記空間値表示処理部は、取得した空間領域値に対応する表示素材を色で表現して、前記表面形状データにボリュームデータを用いた場合に、前記ボリュームデータのボクセルに色を属性として割り当て、ボクセルの位置以外の色については補間処理してカラーのボリュームレンダリング画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記空間値表示処理部は、前記補間処理について線形補間法を用いる、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
脳溝における大脳皮質表面の表面形状データ上の任意の点からの単位法線ベクトルの逆方向且つ一定の距離変位した位置における変位位置データを求める変位位置計算処理部と、
前記脳溝の形状を含む空間に形成されたボリュームデータで表現された空間領域値と、前記変位位置データとに基づき、前記変位位置データに格納されている位置に対し空間領域値を取得する空間値取得処理部と、
前記空間領域値に対応する表示素材を、前記表面形状データ上に配置して表示する空間値表示処理部と、
を備え
前記変位位置計算処理部は、自己干渉領域に入ってしまう場合に、当該自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とする、
ことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項8】
脳の活動状況を示す空間領域値を計測する生体情報計測装置における空間領域値の表示方法であって、
前記生体情報計測装置が、脳溝における大脳皮質表面の表面形状データと、前記脳溝の形状を含む空間に形成されたボリュームデータで表現された空間領域値と、前記脳溝における大脳皮質表面上の任意の点からの単位法線ベクトルの逆方向且つ一定の距離変位した位置における変位位置データとに基づき、前記脳溝における大脳皮質表面上の任意の点から変位した位置における前記空間領域値を、前記表面形状データを画像表示する際に、当該脳溝における大脳皮質表面上にそれぞれ表示し、
前記生体情報計測装置は、自己干渉領域に入ってしまう場合に、当該自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とする、
ことを特徴とする空間領域値の表示方法。
【請求項9】
コンピュータを、
脳溝における大脳皮質表面の表面形状データ上の任意の点からの単位法線ベクトルの逆方向且つ一定の距離変位した位置における変位位置データを求める変位位置計算処理部と、
前記脳溝の形状を含む空間に形成されたボリュームデータで表現された空間領域値と、前記変位位置データとに基づき、前記変位位置データに格納されている位置に対し空間領域値を取得する空間値取得処理部と、
前記空間領域値に対応する表示素材を、前記表面形状データ上に配置して表示する空間値表示処理部と、
として機能させ
前記変位位置計算処理部は、自己干渉領域に入ってしまう場合に、当該自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とする、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、生体情報計測装置、空間領域値の表示方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の表面に当該測定対象物の内部の値を投影することが知られている。例えば、特許文献1には、測定対象物である被検者の臓器の内部に存在する可視化対象の特定領域の投影画像を、当該被検者の臓器の3次元画像上に投影して表示する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、被検者の頭部の断層像(MR画像)に対して情報を重ねて表示する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によれば、測定対象物である被検者の臓器に対する視点位置が変わると、当該被検者の臓器の3次元画像の表面に重畳される値も変わってしまい、被検者の臓器の3次元画像の表面上で区分される領域と被検者の臓器の内部とを絶対的に対応づけることができない、という問題がある。
【0005】
また、特許文献2に開示の技術によれば、被検者の脳の表面に脳の内部の信号値を投影することはできないため、脳の表面で区分される領域と対応づけて脳の内部の値を観察することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、測定対象物の内部に位置する空間領域値を測定対象物の表面上で観察可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の情報処理装置は、脳溝における大脳皮質表面の表面形状データ上の任意の点からの単位法線ベクトルの逆方向且つ一定の距離変位した位置における変位位置データを求める変位位置計算処理部と、前記脳溝の形状を含む空間に形成されたボリュームデータで表現された空間領域値と、前記変位位置データとに基づき、前記変位位置データに格納されている位置に対し空間領域値を取得する空間値取得処理部と、前記空間領域値に対応する表示素材を、前記表面形状データ上に配置して表示する空間値表示処理部と、を備え、前記変位位置計算処理部は、自己干渉領域に入ってしまう場合に、当該自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定対象物の内部に位置する空間領域値を測定対象物の表面上で観察可能とすることで、測定対象物の表面上で区分される各領域と対応づけて、測定対象物の内部でどのような活動が生じたかを直感的かつ簡単に把握することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる生体情報計測システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、情報処理装置の機能を説明するブロック図である。
図4図4は、ボリュームデータを例示的に示す図である。
図5図5は、臓器形状の表面を例示的に示す図である。
図6図6は、ポリゴンメッシュを例示的に示す図である。
図7図7は、曲面の単位法線ベクトルを例示的に示す図である。
図8図8は、溝におけるオフセット距離移動について説明する図である。
図9図9は、オフセット位置データを例示的に示す図である。
図10図10は、空間値データを例示的に示す図である。
図11図11は、カラーマップを例示的に示す図である。
図12図12は、第1の表示例を示す図である。
図13図13は、第2の表示例を示す図である。
図14図14は、情報処理装置の機能の変形例を示すブロック図である。
図15図15は、第2の実施の形態にかかる情報処理装置の機能を説明するブロック図である。
図16図16は、オフセット位置データを例示的に示す図である。
図17図17は、空間値データを例示的に示す図である。
図18図18は、第3の実施の形態にかかる情報処理装置の機能を説明するブロック図である。
図19図19は、臓器形状ボクセル情報(ボリュームデータ)の一例を示す図である。
図20図20は、臓器断面画像群を示す図である。
図21図21は、カラーボリュームレンダリング画像の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、情報処理装置、生体情報計測装置、空間領域値の表示方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる生体情報計測システム100のシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、生体情報計測システム100は、生体情報計測装置40と、生体構造取得装置70と、を備えている。生体構造取得装置70は、例えば、MR(Magnetic Resonance)画像を撮像するMR画像装置である。生体構造取得装置70は、MR画像装置に限るものではなく、X線CT(Computed Tomography)画像装置などであってもよい。
【0012】
生体情報計測装置40は、脳磁場計測装置3と、情報処理装置6と、を備えている。
【0013】
脳磁場計測装置3は、測定対象物である被検者の臓器である脳の脳磁図(MEG:Magneto-encephalography)信号を計測する装置である。計測対象である被検者50は、生体情報である生体磁場(脳磁場)計測の際に、頭に脳波計測用の電極(またはセンサ)を付けた状態で脳磁場計測装置3のデュワー2に頭部を入れる。ここで、脳波を同時計測しない場合には、頭に脳波電極用の電極を付ける必要はない。デュワー2は、被検者50の頭部のほぼ全域を取り囲むカバー部材であるヘルメット型のセンサ収納型デュワーである。デュワー2の内側には脳磁計測用の多数の磁気センサ1が配置されている。磁気センサ1として、その動作に極低温環境が必要な超伝導型センサ(例えば、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)センサ)を用いた場合には、デュワー2は、液体ヘリウムを用いた極低温環境の保持容器としての役割も果たす。脳磁場計測装置3は、電極からの脳波信号と、磁気センサ1からの脳磁信号とを収集する。脳磁場計測装置3は、収集された生体信号を情報処理装置6に出力する。
【0014】
なお、一般的に、磁気センサ1を内蔵するデュワー2は磁気シールドルーム内に配置されているが、図示の便宜上、磁気シールドルームを省略している。
【0015】
磁気センサ1としては、地磁気よりも大きさが小さい生体磁気を計測することが可能なSQUIDセンサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサ、OPM(Optically Pumped atomic Magnetometer)センサ、NV(Nitrogen-Vacancy)中心センサといった磁気センサを用いることができる。脳磁場計測装置3は、生体磁場(脳磁場)の発生源を特定できるように、複数の磁気センサ1を備えている。複数の磁気センサ1の相対的な位置は、永久的に固定されていても、計測ごとに適当な配置をとってもどちらでもよい。複数の磁気センサ1の相対的な位置は、少なくとも計測時間内において、ある決まった配置をしている。そして、ある決まった磁気センサ1の配置に対して、センサ座標系が定義される。
【0016】
なお、生体情報計測システム100では、被検者50の脳の神経活動から発せられる信号を磁気センサ1により検出するものとしたが、これに限定されない。生体情報計測システム100では、脳の神経活動から発せられる信号を検出するためのセンサを有していれば良く、且つ、被検者50の生体機能を正確に計測するため、低侵襲であるか、さらに好ましくは非侵襲であると良い。このようなセンサの例として磁気センサ以外に、脳波計測センサ(電位センサ)、光トポグラフィ(近赤外光センサ)などがある。
【0017】
また、本実施の形態のセンサは、これらセンサ(磁気センサ、脳波計測センサ(電位センサ)、光トポグラフィ(近赤外光センサ)など)を複数種類含んでいても構わない。ただし、その場合、1つのセンサの動作が他のセンサによる計測に影響を与えないことが望ましい。特に、センサの1つとして磁気センサを用いる場合、生体と磁気センサが非接触であっても生体から発せられる信号を取得できるという特徴があるため、センサの装着状態が計測結果に影響を与えない。したがって、磁気センサ1は、本発明の実施例として好適である。
【0018】
情報処理装置6は、複数の磁気センサ1からの脳磁信号の波形と、複数の電極からの脳波信号の波形とを、同じ時間軸上に同期させて表示する。脳波信号は、神経細胞の電気的な活動(シナプス伝達の際にニューロンの樹状突起で起きるイオン電荷の流れ)を電極間の電位差として表すものである。脳磁信号は、脳の電気活動により生じた微小な磁場とその変動を表わす。
【0019】
また、情報処理装置6は、生体構造取得装置70で撮像した被検者50の頭部の断層像(MR画像)を入力する。生体構造取得装置70による撮影は脳磁場計測装置3による磁気計測の前でも後でもよく、得られた画像データはオンラインあるいはオフラインで情報処理装置6に送られる。生体内部の形態画像を用いることにより、詳細な生体磁場解析が可能となっている。
【0020】
さらに、情報処理装置6は、脳磁場計測装置3により計測された脳内の活動状況を示す空間領域値を、生体構造取得装置70で撮像した脳形状の表面を表す曲面に投影し、脳表面上において区分される各領域において、脳内部でどのような活動が生じたかを直感的かつ簡単に観察することが可能になっている。詳細は後述するが、情報処理装置6は、脳の形状の表面を表す曲面上の点を脳内部にオフセットした位置における空間領域値を、脳の表面を表す曲面上に表示する。ここで、臓器表面上で区分される領域とは、脳に関するブロードマンの脳地図や、肝臓に関するHealey&SchroyもしくはCouinaudの分類など、解剖学的に区分される臓器の部分領域である。なお、空間領域値としては、脳磁場計測装置3により計測された脳内の活動状況を示すデータに限るものではなく、生体構造取得装置70で撮像した被検者50の頭部の断層像(MR画像)そのものも利用可能である。
【0021】
なお、空間領域値が投影される面は、脳形状の表面に限るものではなく、脳形状の曲面を平均化した平均曲面、脳形状の曲面に外接する外接面、脳形状の曲面に内接する内接面等であってもよい。
【0022】
以下に、情報処理装置6について、さらに説明する。図2は、情報処理装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0023】
情報処理装置6は、それぞれバス29で相互に接続されている入力装置21、出力装置22、ドライブ装置23、曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムを記憶する補助記憶装置24、メモリ装置25、演算処理装置26及びインターフェース装置27を備える。
【0024】
入力装置21は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。出力装置22は、各種の情報の出力を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。インターフェース装置27は、LANカード等を含み、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0025】
曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムは、情報処理装置6を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムは、例えば記憶媒体28の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムを記録した記憶媒体28は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0026】
また、曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムは、曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムを記録した記憶媒体28がドライブ装置23にセットされると、記憶媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。ネットワークからダウンロードされた生体情報計測プログラムは、インターフェース装置27を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0027】
補助記憶装置24は、インストールされた曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムを格納すると共に、必要なファイル、データ等を格納する。メモリ装置25は、情報処理装置6の起動時に補助記憶装置24から曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置26はメモリ装置25に格納された曲面抽出プログラムや生体情報計測プログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0028】
なお、生体構造取得装置70は、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70により撮像された臓器の断面画像を一定間隔で積層して得られるボリュームデータ(臓器断面画像群)を、情報処理装置6に出力する。情報処理装置6は、生体構造取得装置70からのボリュームデータ(臓器断面画像群)を、補助記憶装置24に記憶する。
【0029】
本実施形態の情報処理装置6は、脳の形状の表面を表す曲面上の点を脳内部にオフセットした位置における脳磁場計測装置3からの空間領域値を、脳の表面を表す曲面上に表示する。
【0030】
次に、本実施の形態の情報処理装置6の機能のうち、特徴的な機能について説明する。図3は、情報処理装置6の機能を説明するブロック図である。
【0031】
情報処理装置6は、臓器表面曲面抽出処理部260を有する。臓器表面曲面抽出処理部260は、ボリュームデータ(臓器断面画像群)から臓器表面(脳表面)の表面形状データとしての曲面(ポリゴンメッシュ)を抽出し、補助記憶装置24に記憶する。臓器表面曲面抽出処理部260は、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された曲面抽出プログラムを読み出して実行することで実現される。曲面抽出プログラムは、例えば周知のオープンソースソフトウェア(OSS:Open Source Software)を利用可能である。
【0032】
また、情報処理装置6は、変位位置計算処理部であるオフセット位置計算処理部261と、空間値取得処理部262と、空間値表示処理部263と、を有する。
【0033】
オフセット位置計算処理部261と、空間値取得処理部262と、空間値表示処理部263とは、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された生体情報計測プログラムを読み出して実行することで実現される。以下、各処理部261~263について詳述する。
【0034】
まず、オフセット位置計算処理部261について説明する。オフセット位置計算処理部261は、概略的には、臓器形状の表面を表す曲面上に1つまたは複数のサンプル点を発生させ、サンプル点の位置における曲面の単位法線ベクトルの逆方向(臓器の表面のサンプル点から臓器の内側に向かう方向)に、指定された任意の距離を移動(オフセット距離移動)した点の位置を求めるものである。
【0035】
オフセット位置計算処理部261は、先ず、補助記憶装置24から予め格納された臓器形状の表面を表す表面形状データとしての曲面(ポリゴンメッシュ)を受け取り、入力装置21からユーザーが指定するオフセット距離を受け取る。なお、オフセット距離は、予め補助記憶装置24に格納しておき、入力装置21を用いずに補助記憶装置24から取得してもよい。
【0036】
ここで、臓器形状とは、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70により撮像された臓器の断面画像を、一定間隔で積層して得られるボリュームデータ(臓器断面画像群)から抽出されるデータである。臓器の断面画像は、矩形平面の撮像領域に一定間隔の格子を形成し、各格子点に値を割り当てることで矩形領域に値を設定したラスターデータである。
【0037】
図4は、ボリュームデータを例示的に示す図である。臓器の断面画像を一定間隔で積層することにより直方体空間に一定間隔の格子が形成されるため、図4に示すようなボリュームデータとなる。図4における各格子点の値は画像の輝度を意味する。ラスターデータにおいてはグレースケールのビットマップ画像が得られ、ボリュームデータにおいてはグレースケールのボリュームレンダリング画像が得られる。臓器形状は、格子点の輝度を解析することにより、複数の格子点をグルーピングすることにより抽出される。なお、空間領域値は、直方体空間に形成されるものに限定されるものではない。
【0038】
図5は、臓器形状の表面を例示的に示す図である。図5は、臓器として脳を例示的に示すものである。表面形状データである臓器形状の表面を表す曲面とは、臓器形状を解析して臓器の輪郭を抽出することによって得られるポリゴンメッシュや多項式曲面などのサーフェスデータや、ポイントクラウドデータ、および、ポリゴンメッシュ、多項式曲面、ポイントクラウドデータなどを球面近似したデータなどである。
【0039】
ここで、図6はポリゴンメッシュを例示的に示す図である。図6に示すように、ポリゴンメッシュは、頂点IDリストと三角形IDリストとによって構成されている。頂点IDリストにより各頂点の位置座標が取得でき、三角形IDリストによりポリゴンの形状とポリゴン間の連結情報を取得することができる。
【0040】
ここで、図7は曲面の単位法線ベクトルを例示的に示す図である。図7(a)は臓器断面を示す図、図7(b)は図7(a)の臓器断面を抽象化して曲面の単位法線ベクトルを例示的に示す図である。
【0041】
図7に示すように、次に、オフセット位置計算処理部261は、表面形状データである臓器形状の表面を表す曲面(ポリゴンメッシュ)上に1つまたは複数のサンプル点を発生させ、サンプル点の位置における曲面の単位法線ベクトルの逆方向に、指定された任意の距離を移動(オフセット距離移動)した点の位置を求める。
【0042】
サンプル点を発生させる曲面上の位置は任意であるが、例えば、臓器表面を表す曲面がポリゴンメッシュの場合、ポリゴンメッシュを形成する頂点をサンプル点とすることができる。
【0043】
曲面の単位法線ベクトルとは、曲面上のある点において、その点に接触する平面に対して垂直な方向の単位ベクトルである(図7参照)。具体的には、多項式曲面S(u,v)の場合、単位法線ベクトルN(u,v)は式(1)により計算される。
【0044】
【数1】
【0045】
なお、ポリゴンメッシュの場合、頂点においては接触平面が一意に定義できないため単位法線ベクトルを計算できないが、頂点の周囲にあるポリゴンの幾何学的な状態から擬似的に単位法線ベクトルを定義する方法が幾つか存在するので、それらの方法により求めたベクトルを単位法線ベクトルとする。例えば、平均法では、頂点の周囲にある(頂点を角にもつ)各ポリゴンにおいて、頂点に接続する2辺の外積ベクトルを求め、各ポリゴンの外積ベクトルを平均して擬似的な単位法線ベクトルを定義する。
【0046】
また、ポイントクラウドの場合も接触平面が一意に定義できないため、単位法線ベクトルを計算できないが、ポイントの周囲にある点群の位置から擬似的に単位法線ベクトルを定義する方法が幾つか存在するので、それらの方法により求めたベクトルを単位法線ベクトルとする。
【0047】
多項式曲面、ポリゴンメッシュ、ポイントクラウド、または、その他の形式で表現された曲面を、球面近似する場合は、球中心からサンプル点に向かう方向の単位ベクトルを単位法線ベクトルとする。
【0048】
ところで、脳の表面の灰白質の薄い層(大脳皮質)には、しわ(脳溝)が存在する。ここで、図8は脳溝におけるオフセット距離移動について説明する図である。図8に示すように、脳溝において、単位法線ベクトルの逆方向に、指定された任意の距離を移動(オフセット距離移動)させる場合、脳溝により形成される凸形状の脳回を突き抜けてしまうことも想定される。そこで、臓器として脳を適用する場合においては、脳回を突き抜けてしまう場合(さらに言えば、自己干渉領域に入ってしまう場合)、自己干渉領域に入る寸前の位置をオフセット位置とするようにしてもよい。
【0049】
そして、オフセット位置計算処理部261は、求めたオフセット位置を、オフセット位置データ(変位位置データ)として空間値取得処理部262に渡す。
【0050】
ここで、図9はオフセット位置データを例示的に示す図である。図9に示すように、オフセット位置データは、頂点IDと位置座標との組によって構成されたリストである。頂点IDは、ポリゴンメッシュの頂点IDを意味する。位置座標は、対応する頂点をオフセットした位置座標を意味する。
【0051】
次に、空間値取得処理部262について説明する。空間値取得処理部262は、概略的には、オフセット移動した点の位置における空間領域値を求めるものである。
【0052】
空間値取得処理部262は、先ず、補助記憶装置24から予め格納されたボリュームデータで表現された空間領域値を受け取るとともに、オフセット位置計算処理部261からオフセット位置データを受け取る。
【0053】
空間領域値は、三次元空間上の座標位置に対して値を割り当てたデータである。具体的には、表面形状データである臓器表面曲面を包含する直方体の空間に一定間隔の格子を形成し、各格子点に値を割り当てることで直方体領域に値(実数のスカラー値)を設定したボリュームデータである(図4参照)。格子点以外の位置については、周囲の格子点の値を補間することにより値が計算される。補間計算には、最近傍補間法や線形補間法など複数の方法があるが、どれを用いてもよい。例えば最近傍補間法では、最も距離が近い格子点の値をその地点の値とする。
【0054】
次に、空間値取得処理部262は、オフセット位置データに格納されているすべての位置に対し空間領域値から値を取得する。なお、「すべての位置」は、ポリゴンメッシュの頂点すべてをサンプルしてもよいし、その一部数点だけでもよい。
【0055】
そして、空間値取得処理部262は、求めたすべての値を空間値データとして、空間値表示処理部263に渡す。
【0056】
ここで、図10は空間値データを例示的に示す図である。図10に示すように、空間値データは、頂点IDとスカラー値の組によって構成されたリストである。頂点IDは、ポリゴンメッシュの頂点IDを意味する。スカラー値は、対応する頂点をオフセットした位置において空間領域値から取得された値を意味する。
【0057】
次に、空間値表示処理部263について説明する。空間値表示処理部263は、概略的には、求めた空間領域値を移動元のサンプル点の位置に表示するものである。
【0058】
空間値表示処理部263は、先ず、補助記憶装置24から予め格納されたポリゴンメッシュで表現された臓器表面曲面を受け取り、空間値取得処理部262から空間値データを受け取り、入力装置21からユーザーが指定するカラーマップを受け取る。
【0059】
ここで、図11はカラーマップを例示的に示す図である。図11に示すように、カラーマップは、値とRGB色要素との組によって構成される値で整列されたリストである。値は、空間領域値から取得される値を意味する。RGB色要素は、その値に対応する色を意味する。
【0060】
なお、リストに無い値の色は、その値のリストにおける前後の値の色を線形補間することによって計算される。リストの値の最小値よりも小さい値の色はリストの最小値の色とし、リストの値の最大値よりも大きい値の色はリストの最大値の色とする。
【0061】
次に、空間値表示処理部263は、空間値データに格納されている各値に対応する色をカラーマップから求め、ポリゴンメッシュのすべての頂点に対して色を設定する。
【0062】
空間領域値を移動元のサンプル点の位置に表示素材を割り当てて表示する方法としては、上記のように空間領域値に対応する表示素材を色で表現する方法や、空間領域値に対応する表示素材を図形(例えば、丸印など)で表現する方法など幾つか考えられるが、空間領域値の違いが識別できる表現であればどの方法を用いてもよい。また、サンプル点以外の曲面上の位置について、周囲のサンプル点位置に表示される値を補間した値を表示することにより、ヒートマップのように曲面上の値の変化を把握し易くする方法なども考えられる。補間方法については、例えばグーローシェーディング法などがある。
【0063】
そして、空間値表示処理部263は、設定された色でレンダリングされた画像を生成し出力装置22に渡す。このとき頂点以外のポリゴンの色については、グーローシェーディングに基づき補間処理されレンダリングされる。
【0064】
図12は、第1の表示例を示す図である。図12に示す第1の表示例は、人の脳について、脳表面から15mm内部に位置する空間領域値を脳表面上で観察した例である。脳表面を表す曲面にはポリゴンメッシュを用い、ポリゴンメッシュを形成するすべての頂点について、平均法で求めた擬似的な単位法線ベクトルの逆方向に15mm移動させ、移動位置における各空間領域値を頂点上に色で表現してヒートマップ表示したものである。
【0065】
図13は、第2の表示例を示す図である。図13に示す第2の表示例は、図12に示す第1の表示例に対し移動距離を0mmとした場合、つまり脳表面上における空間領域値を表示した例である。図12に示す第1の表示例と図13に示す第2の表示例を比べると、脳内部の空間領域値は、脳表面上の空間領域値と異なっていることが判る。
【0066】
なお、数値入力のためのバーなどを用いて連続的に移動距離を変更することにより、図12に示す表示例から図13に示す表示例へと変化させることも可能であり、図13に示す表示例から図12に示す表示例へと変化させることも可能である。
【0067】
このように本実施形態によれば、脳表面上のサンプル点から指定距離内部にオフセットした位置における空間領域値が、脳表面上に色で表現されて投影され、サンプル点間の色が補間処理されることで、値の変化をヒートマップのように解り易く表現することが可能となる。これにより、従来のように何枚もの断面図を見て脳表面の位置と値を類推する必要が無くなるため、脳表面において脳内部の値を直感的かつ簡単に観察することが可能となる。
【0068】
すなわち、本実施形態によれば、臓器内部に位置する空間領域値を臓器表面上で観察することが可能となり、臓器表面上で区分される各領域と対応づけて、臓器内部でどのような活動が生じたかを直感的かつ簡単に把握することが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態においては、脳磁場計測装置3により計測された脳内の活動状態を示す空間領域値を、脳表面を表す曲面に投影するようにしたが、これに限るものではない。例えば、脳磁場計測装置3に代えてPET(Positron Emission Tomography)装置により撮像された肝機能状態を示す空間領域値を、臓器である肝臓の表面を表す曲面に投影するようにしてもよい。
【0070】
ここで、図14は情報処理装置6の機能の変形例を示すブロック図である。図14に示すオフセット位置計算処理部261と空間値取得処理部262と空間値表示処理部263とは、図3で説明した各処理部と何ら変わるものではない。
【0071】
これにより、肝臓表面上のサンプル点から指定距離内部にオフセットした位置における空間領域値が、肝臓表面上に色で表現されて投影され、サンプル点間の色が補間処理されることで、値の変化をヒートマップのように解り易く表現することが可能となり、従来のように何枚もの断面図を見て肝臓表面の位置と値を類推する必要が無くなるため、肝臓表面において肝臓内部の値を直感的かつ簡単に観察することが可能となる。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0073】
第2の実施の形態の生体情報計測システム100は、非破壊検査により計測された工業製品の内部状態を示す空間領域値を製品表面に投影する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0074】
図15は、第2の実施の形態にかかる情報処理装置6の機能を説明するブロック図である。図15に示すように、情報処理装置6は、脳磁場計測装置3に代えて非破壊検査装置80を接続している。非破壊検査装置80は、測定対象物となる機械部品や構造物(橋、道路、遺跡など)を破壊することなく有害なきず(デント、クラック、ボイドなど)を検出する。非破壊検査装置80は、検査対象内へ放射線や超音波などを入射して内部きずを検出したり、表面近くへ電流や磁束を流して表面きずを検出したりする。
【0075】
非破壊検査装置80は、検査対象となる機械部品や構造物の断面画像を一定間隔で積層して得られるボリュームデータ(空間領域値)を、情報処理装置6に出力する。情報処理装置6は、非破壊検査装置80からのボリュームデータ(空間領域値)を、補助記憶装置24に記憶する。
【0076】
また、図15に示すように、情報処理装置6は、曲面抽出処理部264を有する。曲面抽出処理部264は、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された三次元CADソフトウェアを読み出して実行することで実現される。
【0077】
また、情報処理装置6は、オフセット位置計算処理部261と、空間値取得処理部262と、空間値表示処理部263と、を有する。
【0078】
オフセット位置計算処理部261と、空間値取得処理部262と、空間値表示処理部263とは、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された生体情報計測プログラムを読み出して実行することで実現される。以下、各処理部261~263について詳述する。
【0079】
まず、オフセット位置計算処理部261について説明する。
【0080】
オフセット位置計算処理部261は、先ず、補助記憶装置24から予め格納された多項式曲面群で表現された製品表面曲面を受け取り、入力装置21からユーザーが指定するオフセット距離を受け取る。多項式曲面群は1枚の多項式曲面ごとにIDが割り振られており(曲面ID)、各多項式曲面は2次元のパラメータ空間(u,v)で定義される。なお、オフセット距離は、予め補助記憶装置24に格納しておき、入力装置21を用いずに補助記憶装置24から取得してもよい。
【0081】
オフセット位置計算処理部261は、次に、各多項式曲面上にサンプル点を発生させ、各サンプル点を多項式曲面の単位法線ベクトルの逆方向に、指定されたオフセット距離移動した位置を求める。このときサンプル点は任意のパラメータ(u,v)において、1つまたは複数発生させる。そして、求めたオフセット位置を、オフセット位置データとして空間値取得処理部262に渡す。
【0082】
ここで、図16はオフセット位置データを例示的に示す図である。図16に示すように、オフセット位置データは、曲面IDとパラメータ(u,v)とオフセット位置座標(X,Y,Z)の組によって構成されたリストである。
【0083】
次に、空間値取得処理部262について説明する。
【0084】
空間値取得処理部262は、先ず、補助記憶装置24から予め格納されたボリュームデータで表現された空間領域値を受け取り、オフセット位置計算処理部261からオフセット位置データを受け取る。空間領域値は格子点の値として実数のスカラー値が格納されており、製品形状を包含する直方体空間に形成されたボリュームデータである。
【0085】
空間値取得処理部262は、次に、オフセット位置データに格納されているすべての位置に対し空間領域値から値を取得する。このとき、空間値取得処理部262は、最近傍補間法を用いて値を取得する。
【0086】
そして、空間値取得処理部262は、求めたすべての値(オフセットした位置における空間領域値)を空間値データとして空間値表示処理部263に渡す。
【0087】
ここで、図17は空間値データを例示的に示す図である。図17に示すように、空間値データは、曲面IDとパラメータ(u,v)と空間領域値から取得された値を意味するスカラー値との組によって構成されたリストである。
【0088】
次に、空間値表示処理部263について説明する。
【0089】
空間値表示処理部263は、先ず、補助記憶装置24から予め格納された多項式曲面群で表現された製品表面曲面を受け取り、空間値取得処理部262から空間値データを受け取り、入力装置21からユーザーが指定するカラーマップを受け取る。
【0090】
カラーマップは、値とRGB色要素との組によって構成される値で整列されたリストである(図11参照)。値は、空間領域値から取得される値を意味する。RGB色要素は、その値に対応する色を意味する。
【0091】
なお、リストに無い値の色は、その値のリストにおける前後の値の色を線形補間することによって計算される。リストの値の最小値よりも小さい値の色はリストの最小値の色とし、リストの値の最大値よりも大きい値の色はリストの最大値の色とする。
【0092】
次に、空間値表示処理部263は、空間値データに格納されている各値に対応する色をカラーマップから求め、対応する多項式曲面のパラメータ(u,v)の位置にマーカーを配置し色を設定する。
【0093】
そして、空間値表示処理部263は、多項式曲面群とマーカーをレンダリングした画像を生成し出力装置22に渡す。
【0094】
このように本実施形態によれば、工業製品の表面上のサンプル点から指定距離内部にオフセットした位置における値であって非破壊検査により計測された工業製品の内部状態を示す空間領域値が、工業製品の表面上に色で表現されて投影されるため、表面のどの位置からどの深さにどのような検査結果が得られたか(任意の表面部位についての内部状態)を直感的かつ簡単に把握することができる。例えば、ドリルで穴をあけて補強剤を注入するなどの補修作業を的確に行うことが可能となる。
【0095】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0096】
第3の実施の形態の生体情報計測システム100は、臓器形状表面の各ボクセルの位置を臓器形状内部にオフセットした位置における空間領域値を、元の臓器形状表面のボクセルの位置に表示する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0097】
図18は、第3の実施の形態にかかる情報処理装置6の機能を説明するブロック図である。図18に示すように、第3の実施の形態にかかる情報処理装置6は、図3に示した機能部に加え、臓器形状ボクセル抽出処理部270と、臓器表面ボクセル抽出処理部271と、を有する。なお、本実施形態においては、情報処理装置6は、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70から得られる臓器形状を含んだ臓器断面画像群を補助記憶装置24に記憶する。
【0098】
臓器形状ボクセル抽出処理部270は、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70から得られる臓器形状を含んだ臓器断面画像群から臓器形状(脳形状)に相当する部分のボクセルの情報である臓器形状ボクセル情報(ボリュームデータ)を抽出し、補助記憶装置24に記憶する。
【0099】
図19は、臓器形状ボクセル情報の一例を示す図である。臓器形状ボクセル抽出処理部270は、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された臓器形状ボクセル抽出プログラムを読み出して実行することで実現される。臓器形状ボクセル抽出プログラムは、例えば周知のオープンソースソフトウェア(OSS:Open Source Software)を利用可能である。
【0100】
臓器形状に相当する部分のボクセルの情報とは、図19に示すように、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70などから得られる臓器形状を含んだボリュームデータを加工し、臓器形状に相当する部分のボクセルの輝度値を1に設定し、それ以外のボクセルの輝度値を0に設定したものである。
【0101】
臓器表面ボクセル抽出処理部271は、演算処理装置26が、補助記憶装置24やメモリ装置25等に格納された生体情報計測プログラムを読み出して実行することで実現される。
【0102】
臓器表面ボクセル抽出処理部271は、まず、補助記憶装置24から臓器形状ボクセル情報(ボリュームデータ)を受け取り、臓器形状(脳形状)を示す各ボクセル、つまりボクセルの輝度値が1である各ボクセルについて、上下左右前後に隣接するボクセルがすべて臓器形状(脳形状)であるかどうかを調べる。このとき、臓器表面ボクセル抽出処理部271は、すべて臓器形状(脳形状)であればそのボクセルを臓器形状(脳形状)の内部とみなし、1つでも臓器形状(脳形状)でなければそのボクセルを臓器形状(脳形状)の表面とみなす。臓器表面ボクセル抽出処理部271は、最後に、臓器形状(脳形状)の内部とみなされたボクセルの輝度値を0に変更し、変更後のボリュームデータを臓器表面ボクセル情報(ボリュームデータ)として空間値表示処理部263に出力する。
【0103】
臓器形状表面のボクセルとは、臓器形状に相当する部分のボクセルのうち、上下左右前後に隣接するボクセルに1つでも臓器形状に相当しないものが存在するボクセルである。なお、上下左右前後に隣接するボクセルがすべて臓器形状に相当する場合は、臓器形状内部のボクセルである。
【0104】
本実施形態の空間値表示処理部263は、空間値取得処理部262で処理した空間値データ(空間領域値)に加え、臓器表面ボクセル抽出処理部271から臓器表面ボクセル情報(ボリュームデータ)を入力するとともに、補助記憶装置24から臓器断面画像群と臓器形状ボクセル情報と臓器表面曲面とを入力する。本実施形態の空間値表示処理部263は、取得した空間値データ(空間領域値)に対応する表示素材を色で表現して、表面形状データにボリュームデータを用いた場合に、ボリュームデータのボクセルに色を属性として割り当て、ボクセルの位置以外の色については補間処理してカラーのボリュームレンダリング画像を生成する。以下において、詳述する。
【0105】
空間値表示処理部263は、先ず、補助記憶装置24から予め格納された臓器断面画像群と臓器形状ボクセル情報と臓器表面曲面とを受け取り、空間値取得処理部262から空間値データ(空間領域値)を受け取り、臓器表面ボクセル抽出処理部271から臓器表面ボクセル情報を受け取り、入力装置21からユーザーが指定するカラーマップを受け取る。なお、カラーマップおよびその用い方については、第1の実施の形態と同様である。
【0106】
次に、空間値表示処理部263は、臓器断面画像群のボリュームデータに対し、臓器形状ボクセル情報から得られる臓器形状(脳形状)以外のボクセルに相当するボクセルの輝度値を0にする。ここで、図20は臓器断面画像群を示す図である。図20(a)は全体像を示す図であり、図20(b)は一部を拡大して示す拡大図である。図20に示すように、臓器断面画像群のボリュームデータは、臓器形状(脳形状)のみが表示されるボリュームデータとなる。
【0107】
次に、空間値表示処理部263は、臓器表面ボクセル情報から得られる臓器形状表面の各ボクセルについて、最も近い位置にあるポリゴンメッシュの頂点を臓器表面曲面から求める。そして、空間値表示処理部263は、空間値データに格納されている各値に対応する色をカラーマップから求め、臓器形状表面の各ボクセルの頂点に対して色を設定する。
【0108】
次に、空間値表示処理部263は、臓器断面画像群のボリュームデータに対し、臓器形状表面の各ボクセルについて求めた色を、臓器形状表面の各ボクセルに対応する臓器断面画像群のボクセルに属性として与える。
【0109】
最後に、空間値表示処理部263は、臓器断面画像群のボリュームデータに対し、カラーのボリュームレンダリング画像を生成し、出力装置22に渡す。このときボクセルの位置以外の色については、補間方法に基づき補間処理されレンダリングされる。なお、補間方法については、例えば線形補間法(tri-linear interpolations)などが挙げられる。
【0110】
ここで、図21はカラーボリュームレンダリング画像の表示例を示す図である。図21(a)は全体像を示す図であり、図21(b)は一部を拡大して示す拡大図である。図12図13に示したサーフェスの場合、レンダリング光源に対する角度によって陰がつけられるが、ポリゴンメッシュを構成する個々の三角形の色の濃淡は一様となる。これに対し、カラーボリュームレンダリング画像の場合、図21に示すように、光源に対する角度によって陰がつけられるだけでなく、ボリュームを構成する各ボクセルに対して個々に輝度という濃淡が与えられる。このため、図21に示すカラーボリュームレンダリング画像の場合は臓器表面を見渡したときに、輝度の強い部分と弱い部分の所謂ムラを観察することができる。図20の拡大図における脳溝のパターンと図21の拡大図における脳溝のパターンとを比較すると、図21に示すカラーボリュームレンダリング画像において輝度の強い部分と弱い部分のムラが表示されていることが分かる。このムラは、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70で撮影するときに臓器の各部位の組成などの状態の違いにより生じるものである。つまり、MR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70が撮影した原画像に対し、より忠実なレンダリング像と言える。
【0111】
このように本実施形態によれば、臓器内部の空間領域の値をMR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70から得られる原画像のボリュームデータ上で観察することが可能となり、臓器表面の質感といったより多くの情報と照らし合わせて空間領域の値を評価することができるようになる。
【0112】
なお、空間領域値をボクセルの位置に表示する方法としては、上記のように空間領域値に対応する表示素材を色で表現する方法や、空間領域値に対応する表示素材を図形(例えば、丸印など)で表現する方法など幾つか考えられるが、空間領域値の違いが識別できる表現であればどの方法を用いてもよい。また、ボクセルの位置以外の位置について、周囲のボクセルの位置に表示される値を補間した値で表示することにより、ヒートマップのように値の変化を把握し易くするようにしてもよい。
【0113】
なお、本実施形態においては、脳磁場計測装置3により計測された脳内の活動状態を示す空間領域値を、元の脳形状表面のボクセルの位置に投影するようにしたが、これに限るものではない。例えば、脳磁場計測装置3に代えてPET(Positron Emission Tomography)装置により撮像された肝機能状態を示す空間領域値を、臓器である肝臓の形状表面のボクセルの位置に投影するようにしてもよい。
【0114】
これにより、肝臓内の空間領域の値をMR画像装置やX線CT画像装置などの生体構造取得装置70から得られる原画像のボリュームデータ上で観察することが可能となり、肝臓表面の質感といったより多くの情報と照らし合わせて空間領域の値を評価することができるようになる。
【符号の説明】
【0115】
6 情報処理装置
40 生体情報計測装置
261 変位位置計算処理部
262 空間値取得処理部
263 空間値表示処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】特許第6026932号公報
【文献】米国特許出願公開第2019/0236824号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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