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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】超高分子量ポリエチレン製微多孔膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20240903BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/00 A CES
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020124270
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022020963
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若林 保武
(72)【発明者】
【氏名】鹿子木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】清水 由惟
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193816(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190487(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031795(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/090340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度([η])が4.7~8.4dL/g、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)が2.5~4の超高分子量ポリエチレンを含んでなり、膜厚が0.001~1mm、105℃,1時間で熱処理した際の熱収縮率が2~3%、引張試験機の圧縮モードにて測定温度23℃,直径1mm,曲率半径0.5mmの針を用いた突刺速度50mm/分の突刺試験により測定した突刺強度(PS)が2~5N/10μmであり、示差走査型熱量計での測定において、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)した際の1stスキャンの融点(Tm )、その後、230℃で5分間放置後、10℃/分の降温速度で-20℃まで降温し、-20℃で5分間放置後、再度、10℃/分の昇温速度で-20℃から230℃まで昇温(2ndスキャン)した際の2ndスキャンの融点(Tm )のそれぞれを測定したときの、該Tm と該Tm の差(ΔTm=Tm -Tm )が2~8℃である、ことを特徴とする超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
【請求項2】
空隙率が10~80%の延伸膜であることを特徴とする請求項1に記載の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
【請求項3】
延伸倍率が縦方向に9~15倍、横方向に9~15倍の逐次二軸延伸膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
【請求項4】
上記突刺強度(PS)と超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(1)を満足することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
PS≧0.5×[η]-1.2 (1)
【請求項5】
前記Tmと超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(2)を満足すること特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
Tm≧1.1×[η]+129 (2)
【請求項6】
前記ΔTmと超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(3)を満足すること特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜。
ΔTm≧0.8×[η]-2.3 (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜に関するものであり、さらに詳細には、強度が高く薄膜化が可能で、かつ延伸性に優れ、特に低収縮性を示すことから耐熱性、耐久性に優れる超高分子量ポリエチレン製微多孔膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量(Mv)で100万以上に相当する極めて高い分子量を有していることから、耐衝撃性、自己潤滑性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性等に優れており、エンジニアリングプラスチックに匹敵する高い物性を有している。このため、各種成形方法により、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、微多孔膜、セパレータ等の用途への適用が試みられている。
【0003】
しかし、超高分子量ポリエチレンは、その高い分子量故に、溶融時の流動性が極めて低く、分子量が数万から約30万の範囲にある通常のポリエチレンのように混練押出により成形することは困難である。そこで、超高分子量ポリエチレンは、重合により得られた重合体粉末を直接焼結する方法、圧縮成形する方法、間歇圧縮させながら押出成形するラム押出機による成形方法、溶媒等に分散させた状態で押出成形した後、溶媒を除去する方法等の方法により成形が行われている。
【0004】
このうち、溶媒等に分散させた状態で押出成形した後、溶媒を除去する成形方法においては、溶媒を除去する前後で、一軸、二軸延伸することで、多孔質膜が製造できることが知られている。そして、この超高分子量ポリエチレン微多孔膜は、超高分子量ポリエチレンの高い分子量により耐熱性、強度、耐衝撃性等の物性が優れたものになることが期待されているが、現在市販されているチーグラー触媒によって製造される超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が4より大きく、分子量分布が広いため、成形体の強度、耐熱性は十分に向上したものとは言えず、期待される性能を発揮するものとは言えないものであった。
【0005】
一方、メタロセン系触媒、ポストメタロセン系触媒を用いて製造した分子量分布の狭い超高分子量エチレン系重合体(例えば特許文献1、2参照。)、成形性を改良するために超高分子量ポリエチレンに高密度ポリエチレンなどの低分子量のポリエチレンを添加する等の方法(例えば特許文献3参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4868853号
【文献】特開2006-36988号公報
【文献】特開2003-105121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2は、単に超高分子量ポリエチレンを提案するにとどまり膜、さらには微多孔膜等については何ら提案されていないものである。そして、これら超高分子量ポリエチレンは、成形加工性に課題を有するものであり、膜を製造した場合、成形性、延伸性に劣り、例え延伸を施すことが可能であっても低延伸倍率の膜の製造にとどまり、その生産性および性能は充分なものではない。
【0008】
また、特許文献3における提案においては、低分子量のポリエチレンを添加しても、延伸倍率の低い膜を与えるのみで生産性は十分に改良されたものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は、力学的強度、耐熱性、耐久性、延伸性に優れる超高分子量ポリエチレン製微多孔膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の分子量、分子量分布を有する超高分子量ポリエチレンにより力学的強度、延伸性に優れ、特に低収縮性を示すことから耐熱性、耐久性に優れる微多孔膜となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、固有粘度(以下、単に[η]と記す場合もある。)が4~10dL/g、重量平均分子量(以下、単にMwと記す場合もある)と数平均分子量(以下、単にMnと記す場合もある。)の比である分子量分布(以下、単にMw/Mnと記す場合もある)が4以下の超高分子量ポリエチレンを含んでなり、膜厚が0.001~1mm、105℃,1時間で熱処理した際の熱収縮率が2~3%、引張試験機の圧縮モードにて測定温度23℃,直径1mm,曲率半径0.5mmの針を用いた突刺速度50mm/分の突刺試験により測定した突刺強度(PS)が2~5N/10μmである、ことを特徴とする超高分子量ポリエチレン製微多孔膜に関するものである。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の微多孔膜を構成する超高分子量ポリエチレンは、[η]が4~10dL/g、Mw/Mnが4以下の超高分子量ポリエチレンである。また、超高分子量ポリエチレンと称されるものとしては、例えば超高分子量エチレン単独重合体;超高分子量エチレン-プロピレン共重合体、超高分子量エチレン-1-ブテン共重合体、超高分子量エチレン-1-ヘキセン共重合体、超高分子量エチレン-1-オクテン共重合体等の超高分子量エチレン-α-オレフィン共重合体;等を挙げることができる。ここで、特に高延伸かつ低熱収縮性に優れる延伸微多孔膜となることから[η]が4~9dL/g、Mw/Mnが2.5~4の超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。そして、[η]が4dL/g未満である場合、得られる微多孔膜は、力学的特性に劣るものとなる。一方、[η]が10dL/gを越える場合、微多孔膜の成形性に劣るものとなる。また、Mw/Mnが4を超えると低分子量成分の比率が多くなり、力学的特性に劣るばかりか、熱収縮が大きくなり耐熱性、耐久性にも劣るものとなる。なお、本発明における[η]は、例えばウベローデ型粘度計を用い、デカヒドロナフタレンを溶媒としたポリマー濃度0.0005~0.01%の溶液にて、135℃において測定する方法により測定することが可能である。また、Mw、Mnは、例えば超高温ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーによる溶出曲線より直鎖状ポリエチレンに換算として算出する方法により測定することが可能である。
【0014】
そして、該超高分子量ポリエチレンとしては、微多孔膜とした際に機械強度、耐熱性、延伸性に優れるMw/Mnの狭いものとなることからメタロセン系超高分子量ポリエチレンであることが好ましく、特に以下に説明する超高分子量ポリエチレン又はその粒子であることが好ましい。
【0015】
該超高分子量ポリエチレンは、微多孔膜を成形する際に粒子の流動性がよく、保管設備、保管容器、ホッパーでの充満率に優れる等、操作性が向上することから、粒子形状を有するものであることが好ましく、その際の嵩密度は130~700kg/mであることが好ましく、微多孔膜とする際、特に加工性に優れるものとなることから200~600kg/mであることが好ましい。なお、嵩密度は、例えばJIS K6760(1995)に準拠した方法で測定することが可能である。
【0016】
さらに、該超高分子量ポリエチレンは、チタンが原因で発生する変色(黄変)や酸化劣化等の抑制が可能で色調が良好なものとなり、耐候性にも優れる微多孔膜を提供することが可能となるから、チタンの含有量が少ないものであることが好ましく、特にチタンの含有量が0.5ppm以下又は検出限界以下のものが好ましい。なお、チタンの含有量は、化学滴定法、蛍光X線分析装置、ICP発光分析装置等による測定等により求めることができる。
【0017】
該超高分子量ポリエチレンは、特に粉体としての流動性に優れ、成形加工性、物性に優れるものとなることから、平均粒径が1~1000μmであるものが好ましい。なお、平均粒径に関しては、例えばJIS Z8801で規定された標準篩を用いたふるい分け試験法等の方法により測定することができる。
【0018】
該超高分子量ポリエチレンの製造方法としては、如何なる方法を用いても良く、例えばポリエチレン製造用触媒を用い、エチレンの単独重合、エチレンと他のオレフィンとの共重合を行う方法を挙げることができ、その際のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を挙げることができる。また、重合方法としては、例えば溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、スラリー重合法等の方法を挙げることができ、その中でも、特に粒子形状が整った超高分子量ポリエチレンの製造が可能となると共に、高融点、高結晶化度を有し、機械強度、耐熱性に優れる微多孔膜を提供しうる超高分子量ポリエチレンを効率よく安定的に製造することが可能となることからスラリー重合法であることが好ましい。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、イソブタン、プロパン等の液化ガス、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0019】
また、該超高分子量ポリエチレンを製造するのに用いるポリエチレン製造用触媒としては、該超高分子量ポリエチレンの製造が可能であれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば少なくとも遷移金属化合物(A)、脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)より得られるメタロセン系触媒を挙げることができる。
【0020】
そして、該遷移金属化合物(A)としては、例えば(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物、(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)インデニル基を有する遷移金属化合物、(置換)インデニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物等を挙げることができ、その際の遷移金属としては、例えばジルコニウム、ハフニウム等を挙げることができ、その中でも特に超高分子量ポリエチレンを効率よく製造することが可能となることから、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するジルコニウム化合物、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するハフニウム化合物であることが好ましい。
【0021】
そして、より具体的には、例えばジフェニルメチレン(1-インデニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(4-フェニル-1-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4-(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7-ビス(ジイソプロピルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7-ビス(ジ-n-ブチル-アミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7-ビス(ジベンジルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6-ビス(ジ-n-プロピル-アミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5-ビス(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5-ビス(ジイソプロピルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物;これらのジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えたジルコニウム化合物、およびこれら化合物のジルコニウムをハフニウムに変えたハフニウム化合物などを例示することができる。
【0022】
該脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)としては、例えばN,N-ジメチル-ベヘニルアミン塩酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン塩酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン塩酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン塩酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミンフッ化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン臭化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミンヨウ化水素酸塩、N,N-ジメチル-ベヘニルアミン硫酸塩、N-メチル-N-エチル-ベヘニルアミン硫酸塩、N-メチル-N-n-プロピル-ベヘニルアミン硫酸塩、N,N-ジオレイル-メチルアミン硫酸塩等の脂肪族アミン塩;P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P-ジメチル-ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P-ジエチル-ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P-ジプロピル-ベヘニルホスフィン硫酸塩等の脂肪族ホスフォニウム塩;等の脂肪族塩により変性された粘土を挙げることができる。
【0023】
また、該有機変性粘土(B)を構成する粘土化合物としては、粘土化合物の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、一般的にシリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1又は2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成され、一部のシリカ四面体のSiがAl、アルミナ八面体のAlがMg、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びており、この負電荷を補償するために層間にはNaやCa2+等の陽イオンが存在しているものとして知られているものである。そして、該粘土化合物としては天然品、または合成品としてのカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在し、これらを用いることが可能であり、その中でも入手のしやすさと有機変性の容易さからスメクタイトが好ましく、特にスメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0024】
該有機変性粘土(B)は、該粘土化合物の層間に該脂肪族塩を導入し、イオン複合体を形成することにより得る事が可能である。該有機変性粘土(B)を調製する際には、粘土化合物の濃度0.1~30重量%、処理温度0~150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、該脂肪族塩は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により該脂肪族塩の溶液を調製してそのまま使用しても良い。該粘土化合物と該脂肪族塩の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の脂肪族塩を用いることが好ましい。処理溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール類;エチルエーテル、n-ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン;1,4-ジオキサン;テトラヒドロフラン;水、等を用いることができる。そして、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0025】
また、ポリエチレン製造用触媒を構成する有機変性粘土(B)の粒径に制限はなく、その中でも触媒調製時の効率、ポリエチレン製造時の効率に優れるものとなることから1~100μmであることが好ましい。その際の粒径を調節する方法にも制限はなく、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は有機変性前の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0026】
該有機アルミニウム化合物(C)としては、有機アルミニウム化合物と称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0027】
該ポリエチレン製造用触媒を構成する該遷移金属化合物(A)(以下(A)成分ということもある。)、該有機変性粘土(B)(以下、(B)成分ということもある。)、および該有機アルミニウム化合物(C)(以下、(C)成分ということもある。)の使用割合に関しては、ポリエチレン製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特に超高分子量ポリエチレンを生産効率よく製造することが可能なポリエチレン製造用触媒となることから、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A)成分:(C)成分=100:1~1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1~1:10000の範囲であることが好ましい。また、(A)成分と(B)成分の重量比が(A)成分:(B)成分=10:1~1:10000にあることが好ましく、特に3:1~1:1000の範囲であることが好ましい。
【0028】
該ポリエチレン製造用触媒の調製方法に関しては、該(A)成分、該(B)成分および該(C)成分を含むポリエチレン製造用触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば各(A)、(B)、(C)成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分のそれぞれを2種類以上用いてポリエチレン製造用触媒を調製することも可能である。
【0029】
該超高分子量ポリエチレンを製造する際の重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件については任意に選択可能であり、その中でも、重合温度0~100℃、重合時間10秒~20時間、重合圧力常圧~100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる超高分子量ポリエチレンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0030】
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、該超高分子量ポリエチレンを含んでなるものであり、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、抗ブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、核剤、顔料等;カーボンブラック、タルク、ガラス粉、ガラス繊維、金属粉等の無機充填剤または補強剤;有機充填剤または補強剤;難燃剤;中性子遮蔽剤等の公知の添加剤、更には、ポリプロピレン系樹脂、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等の樹脂を配合していても良く、このような添加剤の添加方法としては、超高分子量ポリエチレンに配合する方法、超高分子量ポリエチレンと成形の際にブレンドする方法、予めドライブレンドもしくはメルトブレンドする方法、等を挙げることができる。
【0031】
そして、本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、優れた耐熱性、耐久性、力学的特性、低収縮性と共に、優れた延伸性も有するものであることから、特に電池等のセパレータに適したものとなる。
【0032】
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、膜厚が0.001~1mmであり、105℃,1時間で熱処理した際の熱収縮率が2~3%、引張試験機の圧縮モードにて測定温度23℃,直径1mm,曲率半径0.5mmの針を用いた突刺速度50mm/分の突刺試験により測定した突刺強度が2~5N/10μmのものである。ここで、膜厚が0.001mm未満のものである場合、膜強度に劣るものとなる。一方、膜厚が1mmを越えるものである場合、気体等の透過性に劣るものとなる。また、熱収縮率が3%を越えるものである場合、使用時における変形が大きく、耐熱性、耐久性に劣るものとなる。突刺強度が2N/10μm未満のものである場合、力学特性に劣り耐久性に劣るものとなる。そして、耐熱性、耐久性、力学特性に課題を有する場合、セパレータ等としての適応に課題を有するものとなる。なお、膜厚(mm)は、例えば該微多孔膜の30点で接触式膜厚計にて膜厚を測定し、その平均値として求めることができる。
【0033】
また、熱収縮率は、例えば8cm角の微多孔膜を例えば、105℃で1時間加熱した後、24時間放冷し、その後の収縮率を測定することにより測定することができる。突刺強度は、例えば引張試験機等の圧縮モードにより測定できる。その際の測定条件としては、8cm角の微多孔膜を直径1mm、曲率半径0.5mmの針を用いて突刺速度10~200mm/分で突き刺すなどして測定することができる。
【0034】
そして、該超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、膜強度と透過性に影響する膜抵抗とのバランスに優れるものとなることから空隙率10~80%、特に25~70%の微多孔膜であることが好ましい。その際の平均細孔径としては、1~1000nmであることが好ましい。ここで、空隙率は、例えば空隙率(V%)=100-10×(8cm角の微多孔膜の重量)(W、g)/(微多孔膜の真密度(g/cm)×微多孔膜の膜厚(d、mm))により求めることができる。また、平均細孔径は、窒素吸着法、水銀圧入法の他、走査型電子顕微鏡による観察により得られた画像から画像解析により求めることができる。
【0035】
さらに、本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、特に相対的に低分子量の超高分子量ポリエチレンにより構成されるものであっても強度に優れ、薄膜化が可能となることから、上記した突刺強度(PS(N/10μm))と構成する超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(1)を満足するものであることが好ましい。
【0036】
PS≧0.5×[η]-1.2 (1)
該超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、耐熱性、強度等に優れるものとなることから、該微多孔膜の示差走査型熱量計(以下、DSCと記すこともある)での測定において、10℃/分の昇温速度にて230℃まで昇温(以下、1stスキャンと記す場合がある)した際の1stスキャンの融点(以下、Tmと記す場合がある)が135~142℃であることが好ましく、特に相対的に低分子量の超高分子量ポリエチレンにより構成されるものであっても耐熱性、耐久性に優れるものとなることから構成する超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(2)を満足するものであることが好ましい。
【0037】
Tm≧1.1×[η]+129 (2)
また、該超高分子量ポリエチレン製微多孔膜の1stスキャンのTm、その後、230℃で5分間放置後、10℃/分の降温速度で-20℃まで降温し、-20℃で5分間放置後、再度、10℃/分の昇温速度にて昇温(以下、2ndスキャンと記す場合がある)した際の2ndスキャンの融点(以下、Tmと記す場合がある)をそれぞれ測定し、TmとTmの差ΔTm(=Tm-Tm)2~8℃であることが好ましく、特に相対的に低分子量の超高分子量ポリエチレンにより構成されるものであっても耐熱性、耐久性に優れるものとなることから構成する超高分子量ポリエチレンの固有粘度([η])が以下の式(3)を満足するものであることが好ましい。
【0038】
ΔTm≧0.8×[η]-2.3 (3)
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、Mw/Mnが4以下の超高分子量ポリエチレンからなることにより、延伸微多孔膜とした際には同等分子量のMw/Mnが4より大きい超高分子量ポリエチレンにおける延伸微多孔膜と比較すると高い融点(Tm)を有するものである。これは、Mw/Mnが4以下であることから、延伸の際の応力が均一にかかるため、延伸の際に形成される配向結晶の量が多くなることによるものであり、突刺強度等の機械強度の向上、低熱収縮性などの高耐熱性、高延伸倍率の延伸微多孔膜の形成が可能になる等、強度、耐熱性、生産性に優れる微多孔膜とすることができる。
【0039】
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜の製造方法としては特に制限は無く、例えば超高分子量ポリエチレンと有機溶媒とを50~300℃の温度で混合しシート状物とした後、該シート状物から有機溶媒の除去を行う工程、延伸微多孔膜とする際には、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の延伸を施す工程を付する方法を挙げることができる。
【0040】
その際の有機溶媒としては、例えばオクタン、デカン、ドデカン、オクタデンカン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の高沸点の脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素;ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;直鎖もしくは分岐状の流動パラフィン;パラフィンワックス;炭素数5以上の高級アルコール;フタル酸エステル類、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、該超高分子量ポリエチレンと有機溶媒を混合する際には、効率よく均一性、平滑性に優れる微多孔膜が得られることから超高分子量ポリエチレンの濃度が0.5~60wt%であることが好ましく、5~40wt%であることが特に好ましい。そして、超高分子量ポリエチレンと有機溶媒とを混合する際には、例えば攪拌翼を取り付けた反応槽で混合する方法、単軸、二軸等の押出機で押出混練する方法、反応器での混合の後、押出混練をする方法等を挙げることができる。そして、得られた混合物は、例えば圧縮成形、Tダイ、サーキュラーダイ等からの押出法、インフレーション成形等の方法により、有機溶媒を含むシート状物として成形される。
【0041】
さらに、該シート状物から有機溶媒を除去する工程としては、例えば加熱による乾燥法、低融点の脂肪族又は脂環族炭化水素、アルコール、ハロゲン化炭化水素等による溶媒抽出後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0042】
また、延伸工程、特に二軸延伸工程としては、例えば縦方向の延伸と横方向の延伸を同時に延伸する同時二軸延伸法、縦方向の延伸と横方向の延伸をそれぞれ個別に延伸する遂次二軸延伸法等を行う工程を挙げることができ、その際の延伸速度、延伸温度は一定又は変化を伴う多段階であってもよい。延伸倍率が縦方向に2~20倍、横方向に2~20倍のものであることが好ましく、特に薄膜かつ高強度の高延伸微多孔膜となることから延伸倍率が縦方向に5~15倍、横方向に5~15倍であることが好ましいく、さらに、縦方向に9~15倍、横方向に9~15倍であることが好ましい。延伸温度は、0~200℃が好ましい。なお、有機溶媒の除去工程、延伸を行う工程の工程順は任意であり、例えば有機溶媒の除去の後に延伸を行なっても、延伸の後に有機溶媒の除去を行なっても、これらを同時におこなってもよい。また、延伸後、アニーリングを施すこともできる。
【0043】
そして、本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、例えば電池用セパレータ、電解膜等の各種電極セパレータとしての適用が可能であり、中でも、耐熱性、高温時の耐久性、寸法安定性に優れることから、リチウムイオン二次電池用セパレータとして適しており、該微多孔膜をリチウムイオン二次電池に適用した場合には、薄膜化による小型、軽量化のみならず、緊急時のシャットダウン性、安全性にも優れるものとなる。そして、本発明の微多孔膜をリチウムイオン二次電池用セパレータとして用いる際には、膜厚を15μm以下とすることが好ましい。
【0044】
また、リチウムイオン二次電池とする際、正極としてはリチウム金属酸化物、例えばコバルト・マンガン・ニッケル複合酸化物-リチウムを挙げることができ、陰極としては炭素材、例えばグラファイトを挙げることができ、電解液としては、例えば1MのLiPFのエチルカーボネート/ジエチルカーボネート溶液を挙げることができる。そして、これらを用いてリチウムイオン二次電池に適用した際には、全容量の50%に相当する充電状態としたリチウムイオン二次電池に0.5C(リチウムイオン二次電池の放電容量を2時間で放電する電流値)、1C(リチウムイオン二次電池の放電容量を1時間で放電する電流値)、2C(リチウムイオン二次電池の放電容量を0.5時間で放電する電流値)に相当する定電流放電を10秒行った後、電流を停止し、その時の電圧上昇を測定、この電圧降下の電流値依存性(IR損)から算出した直流抵抗値が10Ω・m以下、かつ該リチウムイオン電池の放電容量を2時間で放電する電流値(0.5C)で定電流充放電したとき、500回以上の充放電を行えるリチウムイオン二次電池となるセパレータであることが好ましい。
【0045】
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、強度、耐熱性に優れることから、リチウムイオン電池(LIB)、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、アルカリ電池等のセパレータとして用いることができる。
【発明の効果】
【0046】
膜強度が高く、かつ延伸性に優れ、特に低収縮性を示すことから耐熱性、耐久性に優れる超高分子量ポリエチレン製微多孔膜を提供することで、微多孔膜の生産性向上や、電池の連続使用時間延長、小型化が可能となる。
【実施例
【0047】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0048】
なお、断りのない限り、用いた試薬等は市販品、あるいは既知の方法に従って合成したものを用いた。
【0049】
有機変性粘土の粉砕にはジェットミル(セイシン企業社製、(商品名)CO-JET SYSTEM α MARK III)を用い、粉砕後の粒径はマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装(株)製、(商品名)MT3000)を用いてエタノールを分散剤として測定した。
【0050】
ポリエチレン製造用触媒の調製、ポリエチレンの製造および溶媒精製は全て不活性ガス雰囲気下で行った。トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(20wt%)は東ソーファインケム(株)製を用いた。
【0051】
さらに、製造例における超高分子量ポリエチレンおよび実施例における超高分子量ポリエチレン製微多孔膜の諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0052】
~固有粘度([η])の測定~
ウベローデ型粘度計を用い、デカヒドロナフタレンを溶媒として、135℃において、超高分子量ポリエチレン濃度0.005wt%で測定した。
【0053】
~Mw、Mnの測定~
カラム(東ソー製、(商品名)TSKgel GMHHR-H(S)HT)を装着した超高温ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(センシュー科学製、(商品名)SSC-7110)にて、溶離液として1-クロロナフタレンを用い、カラム温度210℃、試料濃度0.5mg/mL、注入量0.2mLとして測定した。分子量の検量線は、標準ポリスチレン試料を用いて校正し、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレンに換算した。
【0054】
~嵩密度の測定~
JIS K6760(1995)に準拠した方法で測定した。
【0055】
~チタン含有量の測定~
超高分子量ポリエチレンを灰化し、アルカリ溶融して、調製した溶液を用いて、ICP発光分析装置((株)パーキンエルマー製、(商品名)Optima3000XL)により、超高分子量ポリエチレン中のチタン含有量を測定した。
【0056】
~平均粒径の測定~
JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの超高分子量ポリエチレンを分級した際に得られる各篩に残った粒子の重量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の重量になる粒子径を測定することにより平均粒径を求めた。
【0057】
~微多孔膜の膜厚および空隙率の測定~
微多孔膜の膜厚(d、mm)は、微多孔膜の30点で接触式膜厚計にて膜厚を測定し、その平均値とした。空隙率(V%)は8cm角の微多孔膜の重量(W、g)を測定し、微多孔膜の真密度(0.950g/cm)、下記式(4)で算出した。
【0058】
V=100-W/(0.0608×d) (4)
~微多孔膜の細孔径の測定~
自動比表面積/細孔分布測定装置((株)日本ベル製、(商品名)BELSORP-miniII)を用いて、窒素吸着法により体積基準のモード径を測定し、平均細孔径とした。
【0059】
~熱収縮率の測定~
8cm角の微多孔膜を、105℃で1時間加熱し、室温24時間放冷した後の縦横の長さの変化率を算出し、その平均値とした。
【0060】
~TmとTmの測定~
DSC(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、(商品名)DSC6220)を用いて、10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)して1stスキャンのTmの測定を行った。その後は、230℃で5分間放置後、10℃/分の降温速度で-20℃まで降温し、-20℃で5分間放置後、再度、10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(2ndスキャン)して2ndスキャンのTmを測定した。測定の際の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜のサンプル量は2~3mgとした。
【0061】
~突刺強度の測定~
超高分子量ポリエチレン製微多孔膜から8cm角に切り出したサンプルを、23℃にて48時間静置した後、引張試験機((株)東洋精機製作所製、(商品名)ストログラフE3)の圧縮モードにて、測定温度23℃、直径1mm、曲率半径0.5mmの針を用いた突刺速度50mm/分の突刺試験により突刺強度を求めた。
【0062】
製造例1
(1)有機変性粘土の調製
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(BYK Additives Limited社製、(商品名)ラポナイトRDS)100gを分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の温水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより125gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土をジェットミル粉砕して、メジアン径を10μmとした。
【0063】
(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジエチルアミノ)-9-フルオレニル)ハフニウムジクロライドを0.715g、及び20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却後、上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを200mL加えてポリエチレン製造用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:10.9wt%)。
【0064】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を1003mg(固形分109mg相当)加え、60℃にした後、エチレン分圧が0.67MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して9900ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。120分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで340gの超高分子量ポリエチレン(1)を得た(活性:3120g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(1)の物性を表1に示す。
【0065】
製造例2
(1)有機変性粘土の調製及び(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製は、製造例1と同様に実施した。
【0066】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を36.7mg(固形分4.0mg相当)加え、80℃に昇温後、エチレン分圧が0.85MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して11600ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。120分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで81.6gの超高分子量ポリエチレン(2)を得た(活性:20400g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(2)の物性を表1に示す。
【0067】
製造例3
(1)有機変性粘土の調製及び(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製は、製造例1と同様に実施した。
【0068】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を36.7mg(固形分4.0mg相当)加え、80℃に昇温後、エチレン分圧が0.85MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して2900ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。120分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで81.0gの超高分子量ポリエチレン(3)を得た(活性:20250g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(3)の物性を表1に示す。
【0069】
製造例4
(1)有機変性粘土の調製及び(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製は、製造例1と同様に実施した。
【0070】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を383mg(固形分41.7mg相当)加え、60℃に昇温後、エチレン分圧が0.67MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して4500ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。120分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで185gの超高分子量ポリエチレン(4)を得た(活性:4410g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(4)の物性を表1に示す。
【0071】
製造例5
(1)有機変性粘土の調製及び(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製は、製造例1と同様に実施した。
【0072】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を114mg(固形分12.6mg相当)加え、70℃に昇温後、エチレン分圧が0.80MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して3500ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。120分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで111.8gの超高分子量ポリエチレン(5)を得た(活性:8870g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(5)の物性を表1に示す。
【0073】
製造例6
(1)有機変性粘土の調製及び(2)ポリエチレン製造用触媒の懸濁液の調製は、製造例1と同様に実施した。
【0074】
(3)超高分子量ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(2)で得られたポリエチレン製造用触媒の懸濁液を123mg(固形分21.9mg相当)加え、60℃に昇温後、エチレン分圧が0.67MPa、オートクレーブの気相の水素濃度がエチレンに対して3500ppmに維持できるように、エチレン、水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。180分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで103.0gの超高分子量ポリエチレン(6)を得た(活性:4700g/g触媒)。得られた超高分子量ポリエチレン(6)の物性を表1に示す。
【0075】
製造例7
(1)固体触媒成分の調製
温度計と還流管が装着された1リットルのガラス製フラスコに、金属マグネシウム粉末50g(2.1モル)およびチタンテトラブトキシド210g(0.62モル)を入れ、ヨウ素2.5gを溶解したn-ブタノール320g(4.3モル)を90℃で2時間かけて加えた。さらに発生する水素ガスを除去しながら窒素シール下において140℃で2時間撹拌し均一溶液とした。次いで、ヘキサン2100mLを加えて希釈した。この成分90g(マグネシウムで0.095モルに相当)を別途用意した500mLのガラスフラスコに入れ、ヘキサン59mLを加え、45℃でイソブチルアルミニウムジクロライド0.29モルを含むヘキサン溶液106mLを2時間かけて滴下、さらに70℃で1時間撹拌して固体触媒成分を得た。ヘキサンを用いて傾斜法により残存する未反応物および副生成物を除去し、組成を分析したところチタン含有量は8.6wt%であった。
【0076】
(2)ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(1)で得られた固体触媒成分を9.0mg加え、80℃に昇温後、水素を0.15MPaになるように供給し、分圧が0.6MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで246gのポリエチレン(7)を得た(活性:27300g/g触媒)。得られたポリエチレン(7)の物性を表1に示す。
【0077】
製造例8
(1)固体触媒成分の調製は製造例7と同様に実施した。
【0078】
(2)ポリエチレンの製造
2リットルのオートクレーブにヘキサンを1.2リットル、20wt%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を1.0mL、(1)で得られた固体触媒成分を8.3mg加え、80℃に昇温後、水素を0.03MPaになるように供給し、分圧が0.6MPaになるようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで250gのポリエチレン(8)を得た(活性:30120g/g触媒)。得られたポリエチレン(8)の物性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1
製造例1で製造した超高分子量ポリエチレン(1)12.7g、流動パラフィン(MORESCO社製、(商品名)モレスコホワイトP-350P)29.6g及び酸化防止剤として(商品名)Irganox1010(BASF製)0.03gと(商品名)Irgafos168(BASF製)0.03gとを、70mLのバッチ式混練機((株)東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル4C150)に投入し、混練温度190℃、回転数30rpmにて、15分間混練し、超高分子量ポリエチレン混練物を得た。
【0081】
得られた混練物をプレス温度190℃にて圧縮成形し、厚さ0.6mmのシート状物とした。
【0082】
このシート状物を、二軸延伸装置((株)東洋精機製作所製、(商品名)EX10-B)で、延伸倍率が縦方向×横方向=6倍×6倍となるように、115℃で逐次二軸延伸し、塩化メチレンで洗浄し、流動パラフィンの除去を行い、乾燥することにより延伸微多孔膜を製造した。
【0083】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表2に示す。
【0084】
実施例2
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例2で製造した超高分子量ポリエチレン(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0085】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表2に示す。
【0086】
実施例3
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例3で製造した超高分子量ポリエチレン(3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0087】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表2に示す。
【0088】
実施例4
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例4で製造した超高分子量ポリエチレン(4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0089】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表2に示す。
【0090】
比較例1
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例7で製造したポリエチレン(7)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ポリエチレン混練物を調製し、微多孔膜を製造した。
【0091】
得られた微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例5
製造例1で製造した超高分子量ポリエチレン(1)12.7g、流動パラフィン(MORESCO社製、(商品名)モレスコホワイトP-350P)29.6g及び酸化防止剤として(商品名)Irganox1010(BASF製)0.03gと(商品名)Irgafos168(BASF製)0.03gを、70mLのバッチ式混練機((株)東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル4C150)に投入し、混練温度190℃、回転数30rpmにて、15分間混練し、超高分子量ポリエチレン混練物を得た。
【0094】
得られた混練物をプレス温度190℃にて圧縮成形し、厚さ0.8mmのシート状物とした。
【0095】
このシート状物を、二軸延伸装置((株)東洋精機製作所製、(商品名)EX10-B)で、延伸倍率が縦方向×横方向=8倍×8倍となるように、120℃で逐次二軸延伸し、塩化メチレンで洗浄し、流動パラフィンの除去を行い、乾燥することにより延伸微多孔膜を製造した。
【0096】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0097】
実施例6
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例2で製造した超高分子量ポリエチレン(2)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0098】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0099】
実施例7
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例3で製造した超高分子量ポリエチレン(3)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0100】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0101】
実施例8
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例4で製造した超高分子量ポリエチレン(4)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0102】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0103】
実施例9
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例5で製造した超高分子量ポリエチレン(5)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0104】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0105】
実施例10
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例6で製造した超高分子量ポリエチレン(6)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0106】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0107】
比較例2
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例7で製造したポリエチレン(7)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、ポリエチレン混練物を調製し、微多孔膜を製造した。
【0108】
得られた微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0109】
比較例3
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例8で製造したポリエチレン(8)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により、ポリエチレン混練物を調製し、微多孔膜を製造した。
【0110】
得られた微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
実施例11
製造例1で製造した超高分子量ポリエチレン(1)12.7g、流動パラフィン(MORESCO社製、(商品名)モレスコホワイトP-350P)29.6g及び酸化防止剤として(商品名)Irganox1010(BASF製)0.03gと(商品名)Irgafos168(BASF製)0.03gを、70mLのバッチ式混練機((株)東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル4C150)に投入し、混練温度190℃、回転数30rpmにて、15分間混練し、超高分子量ポリエチレン混練物を得た。
【0113】
得られた混練物をプレス温度190℃にて圧縮成形し、厚さ1.0mmのシート状物とした。
【0114】
このシート状物を、二軸延伸装置((株)東洋精機製作所製、(商品名)EX10-B)で、延伸倍率が縦方向×横方向=10倍×10倍となるように、120℃で逐次二軸延伸し、塩化メチレンで洗浄し、流動パラフィンの除去を行い、乾燥することにより延伸微多孔膜を製造した。
【0115】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表4に示す。
【0116】
実施例12
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例2で製造した超高分子量ポリエチレン(2)を用いた以外は、実施例11と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0117】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表4に示す。
【0118】
実施例13
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例3で製造した超高分子量ポリエチレン(3)を用い、延伸温度を122℃とした以外は、実施例11と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0119】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表4に示す。
【0120】
実施例14
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例4で製造した超高分子量ポリエチレン(4)を用い、延伸温度を122℃とした以外は、実施例11と同様の方法により、超高分子量ポリエチレン混練物を調製し、延伸微多孔膜を製造した。
【0121】
得られた延伸微多孔膜には肉眼で確認できるような穴、破れはなかった。この延伸微多孔膜の膜厚、空隙率、平均細孔径、突刺強度、熱収縮率を表4に示す。
【0122】
比較例4
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例7で製造したポリエチレン(7)を用いた以外は、実施例11と同様の方法により、微多孔膜の製造を試みたが、延伸時にシート状物にかかる応力が不均一となったため延伸途中でシートが破断し、微多孔膜は得られなかった。
【0123】
比較例5
超高分子量ポリエチレン(1)の代りに、製造例8で製造したポリエチレン(8)を用いた以外は、実施例11と同様の方法により、微多孔膜の製造を試みたが、延伸時の荷重が高く、延伸途中でシートが破断し、微多孔膜は得られなかった。
【0124】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の超高分子量ポリエチレン製微多孔膜は、機械強度、耐熱性、耐久性、生産性に優れるものであり、リチウムイオン電池(LIB)、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、アルカリ電池、電解槽等のセパレータとして用いることができる。