(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G03G15/20 515
(21)【出願番号】P 2020138701
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2020089585
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-044025(JP,A)
【文献】特開平06-274055(JP,A)
【文献】特開2008-052061(JP,A)
【文献】特開2017-058530(JP,A)
【文献】特開2020-071357(JP,A)
【文献】特開2007-086453(JP,A)
【文献】特開2007-086452(JP,A)
【文献】特開2013-235157(JP,A)
【文献】特開昭62-038489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0034567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有すると共に互いに圧接してニップ部を形成する加熱部材と加圧部材が筐体内に収容され、前記ニップ部を通るシート部材に前記加熱部材から熱伝達する加熱装置において、
前記筐体は
前記加熱部材の外周に沿った円弧状断面を有すると共に、前記加熱部材の長手方向両端部に対向して開口し、エアが通過する、一対の開口部を有し、当該一対の開口部は、
前記筐体の円弧状断面と前記加熱部材の外周との間で前記加熱部材の長手方向に移動可能
であって前記加熱部材の外周に沿った断面円弧状に形成された一対のシャッタ部材によって開閉可能とされ、当該一対のシャッタ部材に前記加熱部材の外周面に対向する保温部材を配設
し、前記シャッタ部材の前記開口部側の端部に前記加熱部材側に突出した仕切壁を形成したことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記一対の開口部間における前記筐体の内側に、前記加熱部材の外周面に対向する第2の保温部材を配設したことを特徴とする請求項
1の加熱装置。
【請求項3】
前記保温部材が板金で構成されていることを特徴とする請求項
1の加熱装置。
【請求項4】
前記保温部材が反射板で構成されていることを特徴とする請求項
1の加熱装置。
【請求項5】
前記仕切壁を、前記保温部材を延長することで形成したことを特徴とする請求項1の加熱装置。
【請求項6】
前記保温部材を前記加熱部材の上方に配設したことを特徴とする請求項
1の加熱装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項の加熱装置を備え、トナー画像を担持した前記シート部材を前記ニップ部に通して加熱定着することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項
7の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置、定着装置および画像形成装置に係り、特に加熱部材と加圧部材を収容する筐体の内側に保温部材を配設した加熱装置と、当該加熱装置を備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られており、その1つに省エネ性に優れウォームアップ時間も短いサーフ定着方式がある。このサーフ定着方式は低熱容量の薄肉定着ベルトを内側から面状ヒータで接触加熱し、定着ニップを通るシート部材を定着ベルトで加熱してシート部材に担持した未定着トナー画像を加熱定着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような定着装置で小サイズ紙を連続印刷すると、定着ベルトの長手方向端部(非通紙部)が過度に温度上昇する場合がある。端部温度が過度に上昇すると、定着ベルトの破損のほか、小サイズ紙の印刷から大サイズ紙の印刷に移行したときに、端部の定着熱供給量過多による端部過昇温で(高温)オフセットや定着ベルトへの用紙巻き付きによるジャムなどの不具合が発生することがある。
【0004】
本発明は加熱部材の長手方向両端部のエア冷却による悪影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の加熱装置は、長手方向を有すると共に互いに圧接してニップ部を形成する加熱部材と加圧部材が筐体内に収容され、前記ニップ部を通るシート部材に前記加熱部材から熱伝達する加熱装置において、前記筐体は前記加熱部材の長手方向両端部に対向して開口し、エアが通過する、一対の開口部を有し、当該一対の開口部間における前記筐体の内側に、前記加熱部材の外周面に対向する保温部材を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保温部材によって、加熱部材の長手方向両端部のエア冷却による悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。
【
図3】定着装置に使用する抵抗部材の平面図である。
【
図4A】第1実施形態に係る定着装置の筐体を外側から見た側面図である。
【
図4E】定着装置の筐体を内側から見た斜視図である。
【
図5A】第2実施形態に係る定着装置の筐体を外側から見た側面図である。
【
図5E】定着装置の筐体を内側から見た斜視図である。
【
図6】保温部材の有無による定着ベルトの端部昇温の相違を示すグラフである。
【
図7】定着ベルトの上方に保温部材を配置した(a)第1実施形態の断面図と(b)第2実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
端部過昇温の抑制策として定着ベルトの長手方向端部(非通紙部)を送風ファンで冷却することが行われている(特許文献1-3)。しかしながら、非通紙部を送風ファンで冷却すると、当該非通紙部の長手方向内側に隣接する領域まで送風の影響で温度が低下することがある。そうすると、低温オフセットや定着強度不足による画像剥がれなどの定着不良が発生する。
【0009】
定着ベルトの定着温度を維持するため、定着装置筐体や定着ベルト周囲に保温部材を設けることが特許文献3-5で提案されているが、前述した定着不良を効果的に防止するには至っていない。
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置と、当該加熱装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0011】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0012】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0013】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0014】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の模様を媒体に付与することも意味する。
【0015】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、本発明の加熱装置ないし定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また
図1Bは当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して図示する。
【0016】
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0017】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0018】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0019】
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0020】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は
図1Bの転写部TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0021】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0022】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0023】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。
【0024】
用紙給送装置200は用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0025】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0026】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0027】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。
図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0028】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。
【0029】
FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0030】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0031】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで
図1Aで左回転するようになっている。
【0032】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(
図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0033】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。
【0034】
定着装置300は、発熱部材を内包する加熱部材としての定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。定着装置300は後述する
図2A~
図2Dのように各種の型式が可能であるが、まず
図2Aの型式に沿って説明する。
【0035】
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0036】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0037】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0038】
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0039】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0040】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について
図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
【0041】
給紙ローラ60は、
図1Aに示すように、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0042】
給紙ローラ60およびローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0043】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0044】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
【0045】
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
【0046】
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0047】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0048】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。
【0049】
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0050】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0051】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0052】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部を画像形成装置100外に搬送する。
【0053】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、
図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0054】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0055】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0056】
定着装置300は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0057】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0058】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0059】
(定着装置)
次に、本発明の実施形態に係る加熱装置と第1~第4の定着装置300について、以下さらに説明する。本実施形態の加熱装置は、定着装置300の定着ベルト310の両端部を冷却するためのものである。
【0060】
第1の定着装置は
図2Aに示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。
【0061】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0062】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0063】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。
【0064】
弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0065】
定着ベルト310の内側に、ステー350及びヒータホルダ340が軸線方向に配設されている。ステー350は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置300の両側板に支持されている。ステー350は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0066】
ヒータホルダ340は定着装置300の基材341を保持するためのもので、ステー350によって支持されている。ヒータホルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりヒータホルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0067】
ヒータホルダ340の形状は、基材341の高温部との接触を回避するために、基材341の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、ヒータホルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0068】
基材341の裏面に、後述する抵抗部材370の温度を検出するためサーミスタTH1、TH2が配設されている。サーミスタTH1、TH2はバネ387によって基材341の裏面に押圧され、これによって抵抗部材370の正確な温度を検出可能にしている。
【0069】
一方のサーミスタTH1は小サイズ用紙の幅方向中央部に配置されている。他方のサーミスタTH2は、大サイズ用紙の幅方向外側の非通紙部に配置されている。両サーミスタTH1、TH2からの温度情報に基づいて、抵抗部材370に供給される電力や、後述するシャッタ部材の駆動機構が制御される。
【0070】
サーミスタTH1又はTH2は、加圧ローラ320の外周面に対向配置したサーミスタTH3で代替することも可能である。サーミスタTH3を定着ベルト310の外側に配設することで、サーミスタTH3のメンテナンスが容易になる。
【0071】
定着装置300は各種の型式が可能であって、前述した
図2Aの第1の定着装置はその一例である。以下、
図2B~
図2Dを参照して第2~第4の定着装置300について説明する。第2の定着装置300は、
図2Bに示すように、加圧ローラ320と反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390と抵抗部材370との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。
【0072】
定着ベルト310の内側に前述した発熱部材が配設されている。ステー350の片側に補助ステー351が取り付けられ、反対側にニップ形成部材381が取り付けられている。発熱部材はこの補助ステー351に保持されている。ニップ形成部材381は定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
【0073】
第3の定着装置300は、
図2Cに示すように、定着ベルト310の内側に発熱部材が配設されてる。この発熱部材は、前述した押圧ローラ390を省略する代わりに、定着ベルト310との周方向接触長さを長くするため、定着ベルト310の曲率に合わせて基材341と絶縁層385の横断面を円弧状に形成している。抵抗部材370は円弧状の基材341の中央に配置されている。その他は
図2Bの第2定着装置と同じである。
【0074】
第4の定着装置300は、
図2Dに示すように、加熱ニップHNと定着ニップSNに分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320の定着ベルト310とは反対側に、ニップ形成部材381と、金属製のチャンネル材で構成されたステー352を配置し、これらニップ形成部材381とステー352を内包するように加圧ベルト334を周回可能に配設している。そして当該加圧ベルト334と加圧ローラ320との間の定着ニップSNに用紙Pを通紙して加熱・定着する。その他は
図2Aの第1の定着装置と同じである。
【0075】
図2A~
図2Dの定着装置300は、抵抗発熱体(面状ヒータ)で構成された抵抗部材370を有する。この抵抗部材370は、
図3(a)(b)に一例を示す抵抗部材330のように、複数のタイプで形成することができる。いずれのタイプでも、抵抗部材370、330は細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材341の上に形成される。面状ヒータによって定着ニップSNを加熱する定着方式では、発熱体である抵抗部材を紙幅方向に複数に分割して個別に加熱制御することで、複数種類の紙幅を均一に加熱することができる。
【0076】
基材341の材料としては低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。基材341は金属製に限定されたものではなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの耐熱性と絶縁性に優れた非金属材料で構成することも可能である。
【0077】
抵抗部材330、370の均熱性を向上し画像品位を高めるため、基材341を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0078】
図3(a)(b)に示すように、抵抗部材330は、PTC素子371~378を電気的に並列接続したマルチタイプで構成することができる。なお、
図3(a)(b)の両端の電極370c、370d間の抵抗値を10Ωとすると、各PTC素子371~378の抵
抗値は並列接続のため80Ωと大きくなる。
【0079】
PTC素子は、正の温度抵抗係数を有する材料で構成され、温度Tが上昇すると抵抗値が上昇する特徴がある(電流Iが低下してヒータ出力が低下)。温度抵抗係数(TCR=Temperature Coefficient of Resistance)は、例えば1500PPM(parts per million)とすることができる。
【0080】
図3(a)(b)のPTC素子371~378は、基材341の長手方向で直線状かつ等間隔に配置されている。各PTC素子371~378の短手方向両側には小抵抗値の給電線370a、370bが直線状に互いに平行に配設され、この給電線370a、370bに各PTC素子371~378の両端が接続されている。そして、給電線370a、370bの各一端部に形成された電極370c、370dに交流電源が供給される。
【0081】
PTC素子371~378と給電線370a、370bは薄い絶縁層385で覆われている。この絶縁層385は例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成することができる。絶縁層385によってPTC素子371~378と給電線370a、370bを絶縁・保護すると共に、定着ベルト310との摺動性を維持する。
【0082】
PTC素子371~378は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材341に塗工し、その後、当該基材341を焼成することによって形成することができる。本実施形態では各PTC素子371~378の抵抗値を常温で80Ωとした(総抵抗値は10Ω)。
【0083】
PTC素子371~378の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線370a、370bや電極37
0c、370dの材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0084】
PTC素子371~378の絶縁層385側が定着ベルト310と接触して加熱し、伝熱により定着ベルト310の温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される未定着画像を加熱して定着する。PTC素子371~378を使用することで、小サイズ通紙などで非通紙領域のPTC素子の温度が上昇した際に、抵抗発熱体の温度抵抗依存性により、当該PTC素子の発熱量が低下し、温度上昇を抑制することができる。
【0085】
この特徴により、例えばPTC素子371~378の全幅よりも狭い紙(例えばPTC素子373~376の幅内)を印刷した場合、紙幅より外側のPTC素子371、372、377、378は紙に熱を奪われないため温度が上昇する。するとそれらPTC素子371、372、377、378の抵抗値が上昇する。
【0086】
PTC素子371~378にかかる電圧は一定なので、用紙幅より外側のPTC素子371、372、377、378の出力が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。PTC素子371~378を電気的に直列に接続した場合、連続印刷において紙幅よりも外側の抵抗発熱体の温度上昇を抑制するには、印刷スピードを低下させる以外に方法がない。PTC素子371~378を電気的に並列接続することで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0087】
PTC素子371~378の相互間に短手方向に続く隙間があると、当該隙間部分で発熱量低下が発生し、それによって定着ムラが発生しやすい。そこで、
図3(a)(b)ではPTC素子371~378の端部同士を長手方向で互いにオーバーラップさせている。
【0088】
図3(a)はPTC素子371~378の端部にL字状の切り欠きによる段部を形成し、当該段部を隣接する抵抗発熱体の端部の段部とオーバーラップさせている。
図3(b)はPTC素子371~378の端部に斜めの切り欠きによる傾斜部を形成し、当該傾斜部を隣接する抵抗発熱体の端部の傾斜部とオーバーラップさせている。このようにPTC素子371~378の端部同士を互いにオーバーラップさせることで、抵抗発熱体間の隙間での発熱量低下の影響を抑制することができる。
【0089】
また電極370c、370dはPTC素子371~378の両端に配置する他、PTC素子371~378の片側に配置することも可能である。このように電極370c、370dを片側配置にすることで長手方向の省スペース化を図ることができる。
【0090】
図3(a)(b)の各PTC素子371~378は短冊状の面状発熱体で構成されているが、所望の出力(抵抗値)を得るために、線幅を細くして蛇行状に形成した複数のPTC素子を電気的に並列接続したもので構成することもできる。
【0091】
(第1実施形態)
次に、
図4A-
図4Eを参照して第1実施形態の定着装置300を説明する。この定着装置300は、前述した加熱部材としての定着ベルト310と、加圧部材としての加圧ローラ320を、
図4B-
図4Cのように筐体(カバー)400内に収容している。
【0092】
筐体400の上下に、入口401と出口402が形成されている。入口401と出口402は、定着ベルト310の長手方向(紙面に垂直な軸線方向)を横断する方向(
図4B-
図4Cで上下方向)で互いに対向している。トナー画像を担持したシート部材が、入口401から入り、定着ニップSNを通って出口402から出ていく。
【0093】
筐体400の片側側面に一対の開口部403が形成されている。この開口部403は、
図4A、
図4Bに示すように、定着ベルト310の長手方向両端部に対向して開口し、エアダクト510が接続されている。開口部403の外側のエアダクト510内には送風ファン520が配設されている。この送風ファン520によって、開口部403に冷却用エアが供給されるようになっている。
【0094】
冷却用エアの供給量は、
図4A、
図4Dのように、開口部403の外側に左右一対で配設されたシャッタ部材410の開度で調節可能に構成されている。このシャッタ部材410は、筐体400の長手方向でスライド移動可能に配設され、ラック・アンド・ピニオン機構などの駆動機構によって長手方向にスライド移動する。ここで、ラック・アンド・ピニオン機構とは、ラックと呼ばれる円筒歯車の直径が無限大となった板状又は棒状の歯車と、ピニオンと呼ばれる小歯車(円筒歯車)を組み合わせたものである。
【0095】
シャッタ部材410は、耐熱性板金のプレス成形品とすることができる。シャッタ部材410をプレス成形品とすることで、シャッタ部材の精度を向上させることができる。
【0096】
シャッタ部材410の内面には、断熱性向上のため、フェルトやスポンジ等の保温部材(断熱部材)を取り付けることが望ましい。またシャッタ部材410を耐熱性樹脂で形成した場合でも、その裏面に保温部材(断熱部材)を取り付けることができる。
【0097】
一対の開口部403の間における筐体400内に、
図4C、
図4Dに示すように、保温部材450が配設されている。この保温部材450は、定着ベルト310の長手方向中央部左半分の外周に沿うように配設されている。保温部材450は、断面円弧状の例えばSUSなどの耐熱性板金などによって構成したり、熱伝導率が低い耐熱性樹脂や発泡ゴムで構成したり、ロックウールやグラスウールなどの無機繊維を圧縮成形したもので構成したりすることができる。
【0098】
保温部材450によって定着ベルト310の長手方向中央部の熱が外部に逃げにくくなるため、
1)定着ベルト310からの発熱量を低減することができる。
2)定着ベルト310の両端部の非通紙領域の温度上昇を抑制することができる。
3)定着装置300のウォームアップ時間を短縮することができる。
4)端部温度上昇による生産性ダウン(印刷枚数制限やマシン休止時間)を抑制することができる。
【0099】
保温部材450は、定着ベルト310側の内面を反射面とする耐熱性の反射板で構成することができる。反射板を使用することで定着ベルト310の保温効果をさらに高め、また定着装置300全体の発熱量をさらに低減することができて、省エネ性の向上を図ることができる。このような反射板は、例えばアルミニウム製の基体と、この基体表面に塗布された銀ペーストと、最上層の酸化防止層とで構成することができる。
【0100】
保温部材450の開口部403側の端部に、
図4Eに示すように、筐体400の内側方向すなわち定着ベルト310側にベルトの径方向で突出した仕切壁450aを形成することができる。当該仕切壁450aによって、エアダクト510から流入する冷却用エアが、保温部材450と対向する定着ベルト310の長手方向中央部の外周面に流入するのを抑制することができる。
【0101】
仕切壁450aによって、エアダクト510から流入する冷却用エアの一部が、定着ベルト310の長手方向中央部に向かって流れようとするのを抑制することで、定着ベルト310の定着温度の低下を防止し、定着不良の発生を防止することができる。また、定着ベルト310の長手方向中央部の定着温度低下を防止するための抵抗部材370の無駄な電力消費をなくすこともできる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、
図5A-
図5Eを参照して第2実施形態の定着装置300を説明する。この定着装置300は、開口部403を開閉する一対のシャッタ部材420を筐体400の内側に備えている。当該シャッタ部材420は
図5Cのように、定着ベルト310の左半分の外周に沿うように、断面円弧状に形成されている。なお、シャッタ部材420を筐体400の外側に配設することも可能である。シャッタ部材420は、耐熱性板金のプレス成形品とすることができる。シャッタ部材420をプレス成形品とすることで、シャッタ部材の精度を向上させることができる。
【0103】
筐体400の形状は、
図4A-4Eと異なり、筐体400の左半分が円弧状断面で形成されている。この円弧状断面の内側に近接して、前述した断面円弧状のシャッタ部材420が配置されている。そして定着ベルト310に対向するシャッタ部材420の内面に、前述した素材の保温部材450が配設されている。
【0104】
当該保温部材450により、
1)シャッタ部材420を開けた時に定着ベルト310の左半分が保温部材450で覆われるので、定着ベルト310からの発熱量を低減することができる。
2)定着ベルト310の両端部の非通紙領域の温度上昇を抑制することができる。
3)定着装置300のウォームアップ時間を短縮することができる。
4)端部温度上昇による生産性ダウン(印刷枚数制限やマシン休止時間)を抑制することができる。
【0105】
シャッタ部材420の開口部403側の端部に、
図5Eに示すように、筐体400の内側方向すなわち定着ベルト310側に突出した仕切壁420aを形成することができる。当該仕切壁420aによって、開口部403から吹き込まれる冷却用エアが、保温部材450と対向する定着ベルト310の外周面に流入するのを抑制することができる。またシャッタ部材420を閉めた時は、仕切壁420aによって定着ベルト310の保温効果を高めることができる。
【0106】
図5Eの仕切壁420aはシャッタ部材420を延長する形で形成しているが、仕切壁420aを保温部材450で形成することも可能である。保温部材450で形成した場合は、前述した冷却用エアの流入抑制だけでなく、定着ベルト310の保温効果をさらに高める効果も期待できる。
【0107】
仕切壁420aによって、開口部403から吹き込まれる冷却用エアの一部が、定着ベルト310の長手方向中央部に向かって流れようとするのを抑制することで、定着ベルト310の定着温度の低下を防止し、定着不良の発生を防止することができる。また、定着ベルト310の長手方向中央部の定着温度低下を防止するための抵抗部材370の無駄な電力消費をなくすこともできる。
【0108】
図5A-
図5Eの第2実施形態は保温部材450をシャッタ部材420の内面に形成したものであるが、第1実施形態の保温部材450すなわち一対の開口部403の間における筐体400内に配設された保温部材450を、第2の保温部材として第2実施形態に追加的に配設してもよい。この場合、シャッタ部材420のスライド移動の邪魔にならないように、一対の開口部403間の筐体400内側面に保温部材450を直接形成する。
【0109】
これにより、シャッタ部材420を閉じた時は筐体400内側面の第2の保温部材450による定着ベルト310の保温効果が得られる。また、シャッタ部材420を開いた時はシャッタ部材420の保温部材450と筐体400内側面の第2の保温部材450が二重になって定着ベルト310の保温効果が高まる。
【0110】
(定着ベルトの温度変化)
次に、小サイズ用紙連続印刷時の定着ベルト310の温度変化について
図6を参照して説明する。通紙領域の定着ベルト温度は150℃をやや上回る定着温度で安定的に推移する。一方、非通紙領域の定着ベルト温度は、従来のように保温部材を備えない定着装置の場合、実線で示すように、定着ベルト310の非通紙領域の温度が印刷開始から約60秒で定着ベルト310の耐熱温度を超える。
【0111】
これに対して、本発明の実施形態のように保温部材450を備えた定着装置300の場合、破線で示すように、定着ベルト310の耐熱温度を超えるまでの時間を約20秒遅らせることができる。これにより、生産性ダウン(印刷枚数制限やマシン休止時間)を抑制することができる。
【0112】
図7(a)(b)は前述した第1実施形態(
図4A-
図4E)と第2実施形態(
図5A-
図5E)の定着装置300を縦型配置にしたものである。定着ベルト310から発生した熱量の大部分は上方に移動するため、前述した保温部材450は、定着ベルト310の上方位置に配置した方が保温効果を高めるうえで望ましい。
【0113】
保温部材450を
図7(a)(b)のように定着ベルト310の上方位置に配置することで、熱が筐体400の外部に逃げるのを効果的に抑制することができる。なお、
図7(a)(b)では筐体400の入口401と出口402が筐体400の左右に位置するので、用紙Pの通紙方向は水平方向となる。
【0114】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば本発明の加熱装置は、前述した定着装置300に使用するほか、インクジェットプリンタの用紙乾燥装置にも使用可能である。また定着ベルト310を加熱する発熱体は、抵抗部材330、370のほか、セラミックヒータなど他の発熱体も使用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1K、1Y、1M、1C:プロセスユニット 2K、2Y、2M、2C:像担持体
3K、3Y、3M、3C:ドラムクリーニング装置 4K、4Y、4M、4C:帯電装置
5K、5Y、5M、5C:現像装置 6K、6Y、6M、6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K、19Y、19M、19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:切り替え部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45:給紙ローラ 46:トレイ
60:給紙ローラ 100:画像形成装置
200:用紙給送装置 210:ローラ対
220:給送ローラ 230:分離ローラ
240:搬送ローラ 250:レジストローラ対
300:定着装置 310:定着ベルト
320:加圧ローラ 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330:抵抗部材 334:加圧ベルト
340:ヒータホルダ 341:基材
350:ステー 352:ステー
351:補助ステー 370:抵抗部材
370c、370d:電極 370a、370b:給電線
371~378:PTC素子 381:ニップ形成部材
385:絶縁層 387:バネ
390:押圧ローラ 400:筐体
401:入口 402:出口
403:開口部 410、420:シャッタ部材
420a:仕切壁 450:保温部材
450a:仕切壁 510:エアダクト
520:送風ファン HN:加熱ニップ
L:レーザ光 N:転写ニップ
P:用紙(シート部材) SN:定着ニップ
TH1~TH3:サーミスタ TM:転写部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】特開昭60-136779号公報
【文献】特開2013-007777号公報
【文献】特開2003-295643号公報
【文献】特許第6333511号公報
【文献】特開2015-072382号公報