(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】岩盤固結用注入薬液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/46 20060101AFI20240903BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20240903BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C09K17/46 P
C09K17/48 P
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2020142339
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸本龍介
(72)【発明者】
【氏名】田中一幸
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155076(JP,A)
【文献】特開2001-303054(JP,A)
【文献】特開平11-116955(JP,A)
【文献】特開平9-183898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/46
C09K 17/48
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とからなる岩盤固結用注入薬液組成物であって、ポリオール成分(A)が、珪酸ナトリウム水溶液(A-1)と、エチレンオキサイドユニットを60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(A-2)と、活性水素を一つ有する3級アミン触媒(A-3)とを含み、ポリイソシアネート成分(B)が、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートとの混合物(B-1)、及びエチレンオキサイドユニットを60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(B-2)と(B-1)との反応生成物を含み、さらに(B-1)のジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートの比率が質量比50/50~75/25であり、ジフェニルメタンジイソシアネート中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計との質量比が70/30~55/45であることを特徴とする岩盤固結用注入薬液組成物。
【請求項2】
ポリオール成分(A)に分散安定剤を含む、請求項1に記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート成分(B)に減粘剤を含む、請求項1、または2に記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネート成分(B)に整泡剤を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の岩盤固結用注入薬液組成物から得られた固結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湧水・漏水の多い環境下でも使用することができる注入薬液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不安定岩盤や不安定地盤の強化方法として、例えばロックボルト工法と呼ばれるトンネル掘削時に周辺地山の安定化を行う工法がある。この工法は、ボルトを薬液にて固定・定着させることによって、トンネル構造物を保護することを目的として行われるものである。このような岩盤固結用の注入薬液としては、従来、高い強度を有するモルタルなどの無機系材料が使用されてきた。しかし、これら無機系材料は、強度発現までに要する時間が長いことから作業効率が悪く、また漏水や湧水が発生する場合では材料が水中に流出してしまうという問題があった。
【0003】
昨今、漏水や湧水が発生しやすい地域でトンネル掘削が行われる中、湧水下で岩盤固結用薬液を注入するケースが増加しており、薬液による湧水の汚染や、薬液注入によっても止水できない漏水が掘削作業の効率や安全面での障害となり、改善が求められている。
【0004】
これらの問題を解決するため、無機-有機複合系の土壌安定化薬液、すなわち水ガラスと称する珪酸塩水溶液とポリイソシアネート組成物とを組み合わせた注入薬液が使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、アミン触媒及び短鎖ジオールを含有する珪酸塩水溶液成分とポリエーテルポリオールで変性されたジフェニルメタンジイソシアネートとを岩盤固結用の注入薬液として用いることにより、無機系の欠点である長い硬化時間及び強度発現時間と地下水や湧水汚染の改善ができることが報告されている。しかしながら、液の粘度が高く、低温時の混合性の悪化等ハンドリング性に懸念があり、さらに発泡時の樹脂流動性が低いことから、注入時の空隙充填性が低くなり、地盤改良範囲の確保ができない懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、低温時のハンドリング性を向上し、発泡時の樹脂流動性確保及び発泡性の向上により、十分な空隙充填性による優れた地盤改良性の確保と漏水や湧水が多い環境下においても安定した作業性及び反応性が得られる、岩盤固結用注入薬液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、珪酸ナトリウム水溶液を含むポリオール成分(A)とジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートと特定のモノオールとの反応生成物を含むポリイソシアネート成分(B)とからなる岩盤固結材用注入薬液組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の[1]~[5]の実施形態を含むものである。
【0010】
[1]ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とからなる岩盤固結用注入薬液組成物であって、ポリオール成分(A)が、珪酸ナトリウム水溶液(A-1)と、エチレンオキサイドユニットを60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(A-2)と、活性水素を一つ有する3級アミン触媒(A-3)とを含み、ポリイソシアネート成分(B)が、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートとの混合物(B-1)、及びエチレンオキサイドユニットを60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(B-2)と(B-1)との反応生成物を含み、さらに(B-1)のジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートの比率が質量比50/50~75/25であり、ジフェニルメタンジイソシアネート中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計との質量比が70/30~55/45であることを特徴とする岩盤固結用注入薬液組成物。
【0011】
[2]ポリオール成分(A)に分散安定剤を含む、上記[1]に記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【0012】
[3]ポリイソシアネート成分(B)に減粘剤を含む、上記[1]、または[2]に記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【0013】
[4]ポリイソシアネート成分(B)に整泡剤を含む、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の岩盤固結用注入薬液組成物。
【0014】
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の岩盤固結用注入薬液組成物から得られた固結体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の岩盤固結用注入薬液組成物によれば、低温時のハンドリング性を向上し、発泡時の樹脂流動性確保及び発泡性の向上により、十分な空隙充填性による優れた地盤改良性の確保と漏水や湧水が多い環境下においても安定した作業性及び反応性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における岩盤固結用注入薬液組成物は、ポリオール成分(A)(以下単に「成分(A)」とも言う。)と、ポリイソシアネート成分(B)(以下単に「成分(B)」とも言う。)からなるものである。
【0017】
まず、ポリオール成分(A)について説明する。
【0018】
ポリオール成分(A)は珪酸ナトリウム水溶液(A-1)(以下単に(A-1)とも言う。)、エチレンオキサイドユニット(以下、EOユニット、またはEOとも言う。)を60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(A-2)(以下単に(A-2)とも言う。)、および活性水素を一つ有する3級アミン触媒(A-3)(以下単に(A-3)とも言う。)を含むものである。
【0019】
本発明における(A-1)としては、通常市販されている珪酸ナトリウム水溶液を用いることができる。この珪酸ナトリウムは一般式でNa2O・xSiO2・nH2Oで表される。ここでxはSiO2(二酸化珪素)とNa2O(酸化ナトリウム)とのモル比を表し、本発明においては2.0~3.0が好ましく、2.0~2.5がより好ましく、2.0~2.4が最も好ましい。xが2.0未満の場合、成分(A)と成分(B)とを混合し硬化させた際に発泡性を確保できず、硬化性が悪化する場合がある。3.0を超えると、珪酸ナトリウム水溶液の粘度が高くなり、成分(B)との混合性が悪化するほか、低温時の作業性が低下する場合がある。
【0020】
また、(A-1)から水を除いた固形分は30~50質量%が好ましく、33~42質量%がより好ましく、34~41質量%がさらに好ましく、35~40質量%が最も好ましい。珪酸ナトリウム水溶液の固形分が高すぎる場合は、水で希釈して調整することができる。固形分が30質量%より低いと成分(A)と成分(B)とを混合し硬化させた際に、発泡性を確保できない上、硬化後の発泡体機械強度が低下する恐れがある。50質量%を超えると、珪酸ナトリウム水溶液の粘度が高くなり、成分(B)との混合性が悪化するほか、低温時での作業性が低下する恐れがある。
【0021】
なお、本発明における(A-1)の固形分とは、(A-1)の水以外の成分の全体中の比率を表わす。
【0022】
本発明における(A-2)としては、数平均分子量が400~2000であってポリエーテルポリオール中のEOユニットが60~90質量%のポリオールを用いる。本発明における(A-2)の数平均分子量は400~1800が好ましく、400~1000がより好ましい。400未満の場合、発泡時の流動性が悪くなり、空隙充填性が悪化する。2000を超えると、発泡時の地下水の汚染性が悪化し、発泡体の強度が低下する。
【0023】
(A-2)のEOユニットは60~90質量%であり、60~85質量%が好ましい。60質量%未満の場合、成分(A)と成分(B)との混合性が悪くなり、発泡体のセルが崩壊し、シュリンクが発生する。90質量%を越えると、成分(A)の粘度が高くなり、低温時での作業性が低下する。
【0024】
なお、ポリエーテルポリオールにおけるEOユニット以外の成分は特に制限はないが、ポリプロピレンオキサイドユニット(以下、POユニット、またはPOとも言う。)であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の主旨を逸脱しない範囲でポリエーテルポリオール以外にもポリエステルポリオールや、グリコールを併用してもよい。
【0026】
(A-2)の含有量は、成分(A)中に1~10質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合、反応時の発泡性が確保できない場合があり、10質量%を超えると成分(A)の粘度が高くなり、作業性の悪化や、薬液注入時の地盤改良性が低下する恐れがある。
【0027】
本発明における(A-3)は、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチル-N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)アミノエタノール、N,N-ジメチルエトキシエタノール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール、N’,N-ジメチルエトキシ-N’-メチル-N’-エチルメタノール、N’’,N’’-ジメチルアミノ-N’-メチルエチルアミノ-N-メチル-2-プロパノール、ビス(2-ジメチルアミノエチルアミノ)-2-プロパノール、N’-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N-ジメチルエチレンジアミン、3,3-イミノビス(N,N-ジメチル-1-プロパンアミン)、N’-[2-(ジメチルアミノ)メチル]-N,N-ジメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルジエチレントリアミン、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]-エタンアミン等が挙げられる。
【0028】
また、反応を補助するために活性水素基を有しない3級アミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ビス-(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルアミノプロピルイミダゾール、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン、N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N-メチル-N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルイミダゾール、等も併用しても良い。
【0029】
(A-3)の含有量は、成分(A)中に0.1~5質量%であることが好ましい。0.1質量%未満の場合、硬化性悪化と発泡性低下の恐れがあり、5質量%を超えると、反応性制御が困難となり、薬液注入時に樹脂の詰まりによる注入不良が発生する恐れがある。
【0030】
本発明において、成分(A)の均一性確保や、成分(A)と成分(B)との相溶性を向上させるために分散安定剤等の添加剤を使用することができる。分散安定剤としては陰イオン系分散安定剤、陽イオン系分散安定剤、非イオン系分散安定剤等が挙げられる。
【0031】
陰イオン系分散安定剤としては、例えばアルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル等を挙げることができる。
【0032】
陽イオン系分散安定剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム等のアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0033】
非イオン系分散安定剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステルや、アルキルポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド等を挙げることができる。
【0034】
これら分散安定剤は単独、または2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
本発明における成分(B)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと言う。)及びポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(以下ポリメリックMDIと言う。)の混合物(B-1)(以下(B-1)とも言う。)、及び(B-1)とEOユニットを60~90質量%の範囲で含む数平均分子量400~2000のポリエーテルポリオール(B-2)(以下(B-2)と言う。)との反応生成物を含むものである。
【0036】
なお、本発明におけるMDIは、4,4’-MDI、2,4’-MDI、2,2’-MDIの各種異性体を含むものであり、ポリメリックMDIは、MDIにさらにイソシアネート基を有するフェニル基がメチレン基を介し一つ以上付加したものを意味する。
【0037】
(B-1)としては、MDIとポリメリックMDIの質量比が、MDI/ポリメリックMDI=50/50~75/25が好ましく、55/45~75/25がより好ましい。MDIの質量比が50%を下回るとポリイソシアネートの粘度が高くなり、ハンドリングが悪化するおそれがあり、75%を越えると、発泡樹脂の強度が低下する恐れがある。
【0038】
また、MDIにおける4,4’-MDIと、2,4’-MDI及び2,2’-MDIとの質量比が、70/30~55/45が好ましく、70/30~60/40がより好ましい。2,4’-MDI及び2,2’-MDIの質量比が30%を下回るとポリイソシアネートの低温安定性が悪くなり固化する恐れがあり、45%を上回ると、発泡樹脂の強度が低下する恐れがある。
【0039】
(B-2)としては、数平均分子量が400~2000であってポリオール中のEOユニットが60~90質量%のポリエーテルポリオールを用いる。本発明における(B-2)の数平均分子量は400~1800が好ましく、400~1000がより好ましい。数平均分子量が400未満の場合、発泡時の流動性が悪くなり、空隙充填性が悪化する。2000を超えると、発泡体の強度が低下する
(B-2)のEOユニットは60~90質量%であり、60~85質量%が好ましい。60質量%未満の場合、成分(A)と成分(B)との混合性が悪くなり、発泡体のセルが崩壊し、シュリンクが発生する。90質量%を越えると、ポリオール成分(A)の粘度が高くなり、低温時での作業性が低下する。
【0040】
なお、ポリエーテルポリオールにおけるEOユニット以外の成分は特に制限はないが、POユニットであることが好ましい。
【0041】
また、本発明の主旨を逸脱しない範囲でポリエーテルポリオール以外にもポリエステルポリオールや、グリコールを併用してもよい。
【0042】
成分(B)の(B-2)による変性率は0.5~10質量%であることが好ましく、0.5~6.0質量%であることがより好ましい。0.5質量%未満の場合、ポリオール成分(A)との相溶性が悪化し、薬液注入時に硬化物の強度が低下する恐れがある。6.0質量%を超えると、親水性が高くなり地下水と接触した場合、水に溶出することで、白濁や泡立ちが起こり、湧水を汚染する恐れがある。
【0043】
なお、前記(A-2)、および(B-2)は、公知の方法で合成、または市販品を使用することができる。
【0044】
本発明において、成分(B)に発泡時のセル径を安定化させるために整泡剤を用いても良く、整泡剤としてはシリコン系整泡剤等が挙げられる。シリコン系整泡剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマー、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
本発明において整泡剤を用いる場合の含有量は成分(B)中に3質量%以下であることが好ましい。3質量%を超えると、樹脂強度が低下する恐れがある。
【0046】
また、成分(B)に粘度調整を目的とした減粘剤を併用してもよい。減粘剤としては、成分(B)との相溶性や減粘性、混合安定性に優れたものとして、例えばプロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキルエーテル類やエステル類が挙げられる。これらは作業環境、安全面の観点から、添加量は成分(B)に対して1~5質量%が好ましい。
【0047】
以上説明した成分(A)、および成分(B)からなる岩盤固結用注入薬液組成物により、優れた空隙充填性を有する固結体を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」は質量基準である。
【0049】
<ポリイソシアネート成分の調製>
<調製例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を525.7g、ジイソシアネート1を381.0g、ポリオール1を47.6g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1a)(NCO含量28.1%、5℃における粘度318mPa・s、25℃における粘度90mPa・s)を得た。
【0050】
<調製例2>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を536.1g、ジイソシアネート1を388.2g、ポリオール1を30.0g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1b)(NCO含量29.0%、5℃における粘度264mPa・s、25℃における粘度70mPa・s)を得た。
【0051】
<調製例3>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を536.1g、ジイソシアネート1を388.2g、ポリオール1を30.0g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1c)(NCO含量29.5%、5℃における粘度342mPa・s、25℃における粘度97mPa・s)を得た。
【0052】
<調製例4>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を525.7g、ジイソシアネート1を381.0g、ポリオール3を47.6g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1d)(NCO含量29.6%、5℃における粘度281mPa・s、25℃における粘度72mPa・s)を得た。
【0053】
<調製例5>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を536.1g、ジイソシアネート1を388.2g、ポリオール2を30.0g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1e)(NCO含量30.6%、5℃における粘度188mPa・s、25℃における粘度61mPa・s)を得た。
【0054】
<調製例6>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を813.9g、ジイソシアネート1を111.2g、ポリオール3を17.8g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1f)(NCO含量28.6%、5℃における粘度711mPa・s、25℃における粘度140mPa・s)を得た。
【0055】
<調製例7>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、ポリイソシアネート1を778.0g、ジイソシアネート1を146.3g、ポリオール1を30.0g仕込み、80℃まで昇温した。温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、希釈剤38.1g、整泡剤7.6gを添加し、30分撹拌を行いポリイソシアネート組成物(B-1g)(NCO含量28.4%、5℃における粘度621mPa・s、25℃における粘度120mPa・s)を得た。
【0056】
【0057】
表1における各原料は以下の通り。
・ポリイソシアネート1:MDI/ポリメリックMDI=40/60(PA比)、MDIにおける2,4’-MDI及び2,2’-MDIと4,4’-MDI比率=3/97、NCO含量31.0%(商品名:MR-200、東ソー社製)
・ジイソシアネート1:MDI/ポリメリックMDI=100/0(PA比)、MDIにおける2,4’-MDI及び2,2’-MDIと4,4’-MDI比率=55/45、NCO含量33.5%(商品名:ミリオネートNM、東ソー社製)
・ポリオール1:PO/EO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、EO含量75%
・ポリオール2:PO/EO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量4000、EO含量20%
・ポリオール3:PO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、EO含量0%
・整泡剤:シロキサン‐ポリアルキレンオキシド共重合体(商品名:NIAX SILICONE Y-16136、MOMENTIVE社製)
・希釈剤:プロピレンカーボネート(商品名:プロピレンカーボネートS、BASF社製)
なお、ポリイソシアネート1、ジイソシアネート1のMDI/ポリメリックMDIの比率は、GPC測定で得られるピーク面積の比率(PA比)であり、(MDIモノマーピーク面積)/(MDIモノマー以外のMDIオリゴマーのピーク面積の総和)を表す。
【0058】
GPC測定条件は以下の通り。
(1)測定器:HLC-8220(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G2500H-XL
・G2000H-XL
・G1000H-XL
(3)キャリア:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:標準ポリスチレン(東ソー社製)
・F-80(分子量:7.06×105、分子量分布:1.05)
・F-20(分子量:1.90×105、分子量分布:1.05)
・F-10(分子量:9.64×104、分子量分布:1.01)
・F-2(分子量:1.81×104、分子量分布:1.01)
・F-1(分子量:1.02×104、分子量分布:1.02)
・A-5000(分子量:5.97×103、分子量分布:1.02)
・A-2500(分子量:2.63×103、分子量分布:1.05)
・A-500(分子量:5.0×102、分子量分布:1.14)
(8)サンプル溶液濃度:0.5%THF溶液。
【0059】
<ポリオール成分の調製>
ポリオール成分を表2に示す配合にて調製した。
【0060】
【0061】
表2における各原料は以下の通り。
・珪酸ナトリウム水溶液1:固形分37.5%、モル比(SiO2/Na2O)=2.0(商品名:1号ケイ酸ソーダQ0、東曹産業社製)
・珪酸ナトリウム水溶液2:固形分36.5%、モル比(SiO2/Na2O)=2.0(商品名:1号ケイ酸ソーダR0、東曹産業社製)
・ポリオール1:PO/EO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、EO含量75%
・ポリオール2:PO/EO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量4000、EO含量20%
・ポリオール3:PO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、EO含量0%
・ポリオール4:EO系ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、EO含量100%
・1,3-BG:1,3-ブタンジオール、分子量90
・MPD:3-メチル-1,5-ペンタンジオール、分子量118
・TMAEE:N-メチル-N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)アミノエタノール(商品名:TOYOCAT RX5、東ソー社製)
・TEDA:トリエチレンジアミン(商品名:TEDA L33、東ソー社製)。
【0062】
<反応挙動および各種評価方法>
上記ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを用い、表3に示す配合にて発泡試験を行った(液温5℃のとき、撹拌条件:スリーワンモーターを使用し300rpm×10秒、液温20℃のとき、撹拌条件:スリーワンモーターを使用し350rpm×10秒、液温25℃のとき、撹拌条件:スリーワンモーターを使用し400rpm×10秒)。結果を表3に示す。
【0063】
【0064】
反応性試験における「自由発泡」とは、成分(A)と成分(B)とを前記条件で1Lカップにて配合、混合撹拌し、そのままカップ内で発泡させたものであり、「水中発泡」とは成分(A)と成分(B)とを前記条件で1Lカップにて配合、混合撹拌した直後、配合液100mLを素早く水500mLの入った別の1Lカップに投入し、撹拌棒で水を30秒強くかき混ぜて発泡させたものである。
【0065】
・クリームタイム :ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを混合撹拌し始めてから、その配合液がクリーム状に白濁し液面が立ち上がってくるまでの時間(秒)を表す。
・ライズタイム :ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを混合撹拌しはじめてから、その配合液が発泡して最高の高さに達するまでの時間(秒)を表す。
【0066】
・発泡倍率 :自由発泡時の発泡倍率を以下の式により算出する。
発泡倍率(倍)=発泡後の成形体体積(cm3)/発泡前の配合液の体積(cm3)
各温度での自由発泡倍率が5.0倍以上であれば良好と言える。水中発泡の場合は4.0倍以上であれば良好と言える。
【0067】
・発泡後の水濁り :水中発泡性試験においてライズタイム終了後の水質汚染の指標として水の濁りを濁度計(TURBIDIMETER 2100N、HACH社製)にて測定した。濁度20NTU以下であれば良好と言える。
【0068】
・発泡後の水泡立ち:水中発泡性試験においてライズタイム終了後の水質汚染の指標として水の泡立ちを測定。水中発泡性試験に用いたライズタイム終了後の水125mLを容量250mLのポリエチレンの瓶に入れ、密栓後10秒間強く振り混ぜてから静置し、泡が水表面から消えるまでの時間(秒)を表す。60秒以下であれば良好と言える。
【0069】
・発泡速度:1Lカップで発泡させた時に、クリームタイム後からカップを満たすまでの時間を以下の式より算出したもの。
【0070】
発泡速度(/秒)= 100/(撹拌開始から1Lカップを満たすまでの反応時間(秒)-クリームタイム(秒))
液温25℃において、発泡速度が14.0以下であれば良好と言える。