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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】脱塩装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240903BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20240903BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20240903BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20240903BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240903BHJP
【FI】
C02F1/44 C
B01D61/10
B01D61/12
C02F1/44 G
C02F1/469
C02F5/00 610G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021010568
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114314
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】石井 一輝
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225306(WO,A1)
【文献】特開2017-221875(JP,A)
【文献】特開2015-231606(JP,A)
【文献】特開2017-202464(JP,A)
【文献】特開2012-192373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44-1/48
C02F5/00-5/14
G01N27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を流す供給路と、
前記供給路によって供給された前記被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜と、
前記第1透過水を流す第1透過水路と、
前記第1濃縮水を流す第1濃縮水路と、
制御部と、
前記供給路に設置され、前記被処理水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C1を測定して前記制御部に出力する第1監視装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C2を測定して前記制御部に出力する第2監視装置と、
前記第1透過水路に設置され、前記第1透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W1を前記制御部に出力する第1計測装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W2を前記制御部に出力する第2計測装置と、を備え、
前記制御部は、
前記濃度C1と前記濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W1と前記測定値W2との比(W1/W2)である濃縮倍数N2を求め、前記荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、前記第1逆浸透膜において前記荷電性物質が析出したと推測する第1推測部と、を有する、脱塩装置。
【請求項2】
前記第1監視装置及び前記第2監視装置は、前記被処理水及び前記第1濃縮水中に含まれる前記荷電性物質を物質毎に分離するキャピラリ電気泳動部と、分離された前記荷電性物質毎にその濃度を測定する検出部と、から構成される、請求項1に記載の脱塩装置。
【請求項3】
前記第1濃縮水路に、前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブが備えられ、
前記制御部には、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になった場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させる調整部が備えられている、請求項1に記載の脱塩装置。
【請求項4】
前記第1濃縮水路に、前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブが備えられ、
前記供給路に、前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置が備えられ、
前記制御部には、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になる場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させるか、前記分散剤添加装置によって前記被処理水に前記分散剤を添加させる調整部が備えられている、請求項1に記載の脱塩装置。
【請求項5】
被処理水を流す供給路と、
前記供給路によって供給された前記被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜と、
前記第1透過水を流す第1透過水路と、
前記第1濃縮水を流す第1濃縮水路と、
制御部と、
検知部と、
前記供給路に設置され、前記被処理水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C1を測定して前記制御部に出力する第1監視装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C2を測定して前記制御部に出力する第2監視装置と、
前記第1透過水路に設置され、前記第1透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W1を前記制御部に出力する第1計測装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W2を前記制御部に出力する第2計測装置と、
前記第1濃縮水路にあって前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブと、
前記第2濃縮水路にあって前記第2濃縮水の流量を調整する第2制御バルブと、を備え、
前記検知部は、
前記供給路から分岐されて前記被処理水の一部を流す分岐路と、
前記分岐路によって供給された前記被処理水の一部を第2透過水及び第2濃縮水に分離する第2逆浸透膜と、
前記第2透過水を流す第2透過水路と、
前記第2濃縮水を流す第2濃縮水路と、
前記第2濃縮水路に設置され、前記第2濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C3を測定して前記制御部に出力する第3監視装置と、
前記第2透過水路に設置され、前記第2透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W3を前記制御部に出力する第3計測装置と、
前記第2濃縮水路に設置され、前記第2濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W4を前記制御部に出力する第4計測装置と、から構成され、
前記制御部は、
前記濃度C1と前記濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W1と前記測定値W2との比(W2/W1)である濃縮倍数N2を求め、前記荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部と、
前記濃度C1と前記濃度C3との比(C3/C1)である濃縮倍数N3を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W3と前記測定値W4との比(W3/W4)である濃縮倍数N4を求め、前記荷電性物質毎にN3及びN4の大小関係を比較する第2演算部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、前記第1逆浸透膜において前記荷電性物質が析出したと推測する第1推測部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブを制御する調整部と、を有する、脱塩装置。
【請求項6】
前記第1監視装置、前記第2監視装置及び前記第3監視装置は、前記被処理水、前記第1濃縮水及び前記第2濃縮水中に含まれる前記荷電性物質を物質毎に分離するキャピラリ電気泳動部と、分離された前記荷電性物質毎にその濃度を測定する検出部と、から構成される、請求項5に記載の脱塩装置。
【請求項7】
前記供給路に、前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置が備えられ、
前記制御部の前記調整部は、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になる場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させるか、前記分散剤添加装置によって前記被処理水に前記分散剤を添加させる、請求項5に記載の脱塩装置。
【請求項8】
前記第1濃縮水路または前記第2濃縮水路のいずれか一方または両方に、前記第1濃縮水または前記第2濃縮水中の非荷電性物質の濃度C4を測定する第4監視装置が備えられ、
前記制御部の前記調整部は、前記濃度C4が閾値を超えた場合に、前記濃縮倍数N2を低下させるように前記第1制御バルブを制御する、請求項5に記載の脱塩装置。
【請求項9】
前記制御部に、回線を介して遠隔監視部が接続されており、
前記遠隔監視部は、前記制御部にて求めた濃縮倍数N1、N2または濃縮倍数N1~N4に基づき、脱塩装置の保守業務または操作業務についての情報を作成するものである、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の脱塩装置。
【請求項10】
前記第1逆浸透膜をフラッシング洗浄するフラッシング洗浄手段が更に備えられている、請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の脱塩装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱塩装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な水供給の不足において、海水、かん水の淡水化また排水回収系で逆浸透膜(以下、RO膜という)を有するシステムを用い、水回収率向上による節水対策が積極的に行われている。高回収率でRO膜システムを運転した場合、多糖類やたんぱく質等の生物代謝物系有機物やフミン酸・フルボ酸といった腐植物質等により有機物ファウリング、スケール障害の問題が発生し、RO膜の透過流束(Flux)を低下することが問題であった。生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛および塩基性炭酸亜鉛等がある。このため、従来においては逆浸透膜装置の運転を監視し、スケールや有機物が析出しないような適切な回収率で運転することが重要である。なお、透過流束(Flux)とは、単位時間あたり単位膜面積を透過する水量である。
【0003】
特許文献1(特開2008-253953号公報)には、膜分離装置の給水側と濃縮水側に分岐ラインを設け、監視セルを用いて、目視で判断することでスケールを検知し、染色剤の添加によって、有機物、菌類等の監視を行うとの記述がある。しかし、染色剤を用いた場合、排水処理に問題が生じる。また平膜セルのみ用いた場合、膜モジュールと濃度分極係数が異なるため、監視セルの性能が低下する場合には、既に実装置の膜性能も低下している場合がある。また目視の観察では閉塞スケール種について特定することができない。
【0004】
特許文献2(特開2015-116538号公報)には、RO濃縮水側に分岐ラインを設け、逆浸透膜等のサブモジュールを設置し、実RO装置の濃縮水をさらに濃縮することで、濃縮水中のスケール成分の析出有無を検知するとの記載がある。この方法の場合、スケールを検知できる可能性あるが、有機物ファウリング起こしている可能性は否定できず、また閉塞スケール種類についても特定できないため、実RO装置の運転状態を正確に診断することは難しい。
【0005】
特許文献3(特開2018-108550号公報)には、RO濃縮水側にスケール検知用のサブモジュールを設置し、実RO装置の濃縮水をさらに濃縮し、検知用の透過水と実装置の電気伝導率をパラメーターとして、スケール付着の有無を検知するとの記載がある。この方法の場合、スケールを検知できる可能性あるが、有機物ファウリング起こしている可能性は否定できず、また閉塞スケール種類についても特定できないため、実RO装置の運転状態を正確に診断することは難しい。
【0006】
特許文献4(特開2013-184157号公報)には、小型の平膜セルを用い、濃縮をかけて透過水量を測定しながら透明セルの上部に設置した顕微鏡等で膜面を観察することで膜ファウリングの程度を測定するとの記載がある。監視セルの性能が低下する場合には、既に実装置の膜性能も低下している場合がある。また目視の観察では閉塞スケール種について特定することができない。さらに有機物ファウリングが生じている場合は、閉塞有機物種を特定することは難しい。
【0007】
以上のように、スケールや有機物が析出しないような適切な回収率で運転するために、逆浸透膜へのスケール付着による膜面における透過流束の低下を事前に察知する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-253953号公報
【文献】特開2015-116538号公報
【文献】特開2018-108550号公報
【文献】特開2013-184157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スケール付着による膜面における透過流束の低下を事前に察知することが可能な脱塩装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 被処理水を流す供給路と、
前記供給路によって供給された前記被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜と、
前記第1透過水を流す第1透過水路と、
前記第1濃縮水を流す第1濃縮水路と、
制御部と、
前記供給路に設置され、前記被処理水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C1を測定して前記制御部に出力する第1監視装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C2を測定して前記制御部に出力する第2監視装置と、
前記第1透過水路に設置され、前記第1透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W1を前記制御部に出力する第1計測装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W2を前記制御部に出力する第2計測装置と、を備え、
前記制御部は、
前記濃度C1と前記濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W1と前記測定値W2との比(W1/W2)である濃縮倍数N2を求め、前記荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、前記第1逆浸透膜において前記荷電性物質が析出したと推測する第1推測部と、を有する、脱塩装置。
[2] 前記第1監視装置及び前記第2監視装置は、前記被処理水及び前記第1濃縮水中に含まれる前記荷電性物質を物質毎に分離するキャピラリ電気泳動部と、分離された前記荷電性物質毎にその濃度を測定する検出部と、から構成される、[1]に記載の脱塩装置。
[3] 前記第1濃縮水路に、前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブが備えられ、
前記制御部には、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になった場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させる調整部が備えられている、[1]に記載の脱塩装置。
[4] 前記第1濃縮水路に、前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブが備えられ、
前記供給路に、前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置が備えられ、
前記制御部には、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になる場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させるか、前記分散剤添加装置によって前記被処理水に前記分散剤を添加させる調整部が備えられている、[1]に記載の脱塩装置。
[5] 被処理水を流す供給路と、
前記供給路によって供給された前記被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜と、
前記第1透過水を流す第1透過水路と、
前記第1濃縮水を流す第1濃縮水路と、
制御部と、
検知部と、
前記供給路に設置され、前記被処理水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C1を測定して前記制御部に出力する第1監視装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C2を測定して前記制御部に出力する第2監視装置と、
前記第1透過水路に設置され、前記第1透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W1を前記制御部に出力する第1計測装置と、
前記第1濃縮水路に設置され、前記第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W2を前記制御部に出力する第2計測装置と、
前記第1濃縮水路にあって前記第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブと、
前記第2濃縮水路にあって前記第2濃縮水の流量を調整する第2制御バルブと、を備え、
前記検知部は、
前記供給路から分岐されて前記被処理水の一部を流す分岐路と、
前記分岐路によって供給された前記被処理水の一部を第2透過水及び第2濃縮水に分離する第2逆浸透膜と、
前記第2透過水を流す第2透過水路と、
前記第2濃縮水を流す第2濃縮水路と、
前記第2濃縮水路に設置され、前記第2濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C3を測定して前記制御部に出力する第3監視装置と、
前記第2透過水路に設置され、前記第2透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W3を前記制御部に出力する第3計測装置と、
前記第2濃縮水路に設置され、前記第2濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W4を前記制御部に出力する第4計測装置と、から構成され、
前記制御部は、
前記濃度C1と前記濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W1と前記測定値W2との比(W2/W1)である濃縮倍数N2を求め、前記荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部と、
前記濃度C1と前記濃度C3との比(C3/C1)である濃縮倍数N3を前記荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、前記測定値W3と前記測定値W4との比(W3/W4)である濃縮倍数N4を求め、前記荷電性物質毎にN3及びN4の大小関係を比較する第2演算部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、前記第1逆浸透膜において前記荷電性物質が析出したと推測する第1推測部と、
前記荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブを制御する調整部と、を有する、脱塩装置。
[6] 前記第1監視装置、前記第2監視装置及び前記第3監視装置は、前記被処理水、前記第1濃縮水及び前記第2濃縮水中に含まれる前記荷電性物質を物質毎に分離するキャピラリ電気泳動部と、分離された前記荷電性物質毎にその濃度を測定する検出部と、から構成される、[5]に記載の脱塩装置。
[7] 前記供給路に、前記被処理水に分散剤を添加する分散剤添加装置が備えられ、
前記制御部の前記調整部は、前記第1演算部において前記荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1になる場合に、濃縮倍数N2及びN1が相等しくなるように、前記第1濃縮水の流量を前記第1制御バルブに調整させるか、前記分散剤添加装置によって前記被処理水に前記分散剤を添加させる、[5]に記載の脱塩装置。
[8] 前記第1濃縮水路または前記第2濃縮水路のいずれか一方または両方に、前記第1濃縮水または前記第2濃縮水中の非荷電性物質の濃度C4を測定する第4監視装置が備えられ、
前記制御部の前記調整部は、前記濃度C4が閾値を超えた場合に、前記濃縮倍数N2を低下させるように前記第1制御バルブを制御する、[5]に記載の脱塩装置。
[9] 前記制御部に、回線を介して遠隔監視部が接続されており、
前記遠隔監視部は、前記制御部にて求めた濃縮倍数N1、N2または濃縮倍数N1~N4に基づき、脱塩装置の保守業務または操作業務についての情報を作成するものである、[1]乃至[8]の何れか一項に記載の脱塩装置。
[10] 前記第1逆浸透膜をフラッシング洗浄するフラッシング洗浄手段が更に備えられている、[1]乃至[9]の何れか一項に記載の脱塩装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スケール付着による膜面における透過流束の低下を事前に察知することが可能な脱塩装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図2図1に示す脱塩装置に備えられた第1、第2監視装置を説明する模式図。
図3図1に示す脱塩装置の動作を説明するフロー図。
図4図1に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の経時変化を示すグラフ。
図5図1に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の経時変化を示すグラフ。
図6図1に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、荷電性物質毎の逆浸透膜に対する許容負荷量を示すグラフ。
図7】本発明の第2実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図8図7に示す脱塩装置の動作を説明するフロー図。
図9図7に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の経時変化を示すブラフ。
図10図7示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束と回収率との関係を示すグラフ。
図11】本発明の第3実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図12図11に示す脱塩装置に備えられた第4監視装置を説明する模式図。
図13】本発明の第4実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図14図13に示す脱塩装置の動作を説明するフロー図。
図15】本発明の第5実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図16】本発明の第6実施形態である脱塩装置を示す模式図。
図17】本発明の第7実施形態である脱塩装置の一例を示す模式図。
図18図17に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の経時変化を示すグラフ。
図19図17に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の経時変化を示すグラフ。
図20】本発明の第8実施形態である脱塩装置の別の例を示す模式図。
図21】本発明の第9実施形態である脱塩装置の他の例を示す模式図。
図22図21に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束と回収率との関係を示すグラフ。
図23】本発明の第10実施形態である脱塩装置の一例を示す模式図。
図24】本発明の第10実施形態である脱塩装置の他の例を示す模式図。
図25】本発明の第10実施形態である脱塩装置の別の例を示す模式図。
図26図23図25に示す脱塩装置の動作を説明する図であって、濃縮倍数及び換算透過流束の系時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の脱塩装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1には、本発明の第1の実施形態である脱塩装置を模式図で示す。
図1に示すように、本実施形態の脱塩装置1は、被処理水を流す供給路L10と、被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜13と、第1透過水を流す第1透過水路L11と、第1濃縮水を流す第1濃縮水路L12と、制御部15と、供給路L10に設置された第1監視装置1aと、第1濃縮水路L12に設置された第2監視装置1cと、第1透過水路L11に設置された第1計測装置S16と、第1濃縮水路L12に設置された第2計測装置S17と、を備えている。
【0015】
供給路L10、第1透過水路L11、第1濃縮水路L12はそれぞれ、被処理水、第1透過水及び第1濃縮水を流す水路である。これらは第1逆浸透膜13に接続されている。
【0016】
また、脱塩装置1の供給路L10には、被処理水を加圧する加圧ポンプ2と、加圧後の被処理水の水圧を測定する圧力計3とが設置されている。また、第1濃縮水路L12には、第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブV14が備えられている。
【0017】
第1逆浸透膜13としては、例えば、芳香族ポリアミド系逆浸透膜が用いられる。
【0018】
供給路L10に設置された第1監視装置1aは、被処理水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C1を測定し、その測定結果を制御部15に出力する。また、第1濃縮水路L12に設置された第2監視装置1cは、第1濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C2を測定し、その測定結果を制御部15に出力する。
【0019】
図2には、第1監視装置1a及び第2監視装置1cの構成を説明するための模式図を示す。図2に示すように、第1監視装置1a及び第2監視装置1cはそれぞれ、キャピラリ電気泳動部21と、キャピラリ電気泳動部21に内蔵された電極に電圧を印加する高電圧部22と、検出部23と、キャピラリ電気泳動部21、高電圧部22及び検出部23を制御する監視装置用制御部24と、を備える。検出部23は、例えば、電気伝導度計や吸光光度計等が用いられる。
【0020】
第1監視装置1a及び第2監視装置1cでは、被処理水または第1濃縮水が試験水としてキャピラリ電気泳動部21に導入される。高電圧部22から電圧が供給されることで、キャピラリ電気泳動部21によって試験水中の荷電性物質が物質毎に分離される。その後、試験水が検出部23に送られ、荷電性物質の濃度がC1、C2が物質毎に測定される。第1監視装置1a及び第2監視装置1cは、時々刻々に被処理水または第1濃縮水の荷電性物質の濃度C1、C2を出力できるようになっている。実際は、1分間毎に1回、1時間毎に1回など、所定の時間毎に測定できるようになっている。
【0021】
また、図1に示すように、第1透過水路L11に設置された第1計測装置S16は、第1透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W1を制御部15に出力する。また、第1濃縮水路L12に設置された第2計測装置S17は、第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W2を制御部15に出力する。
【0022】
制御部15は、濃度C1と濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、測定値W1と測定値W2との比(W1/W2)である濃縮倍数N2を求め、荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部15aと、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜において荷電性物質が析出したと推測する第1推測部15bと、を有する。
【0023】
第1演算部15a及び第1推測部15bは、コンピュータに備えられた中央演算装置の機能として実現される。制御部15の動作は後述する。
【0024】
次に、本実施形態の脱塩装置1の動作を説明する。
まず、被処理水を、加圧ポンプ2により所定の圧力に加圧する。また、第1監視装置1aによって、被処理水中の荷電性物質の濃度C1を物質毎に測定し、その濃度C1を制御部15に出力する。加圧された被処理水は、供給路L10により第1逆浸透膜13に送られる。
【0025】
被処理水は、第1逆浸透膜13によって第1透過水及び第1濃縮水に分離される。被処理水中に含まれる塩分の大部分は、第1逆浸透膜13によって第1濃縮水に濃縮される。一方、第1透過水は、塩分の大部分が除去された淡水とされる。そして、第1透過水は第1透過水路L11に送られ、第1濃縮水は第1濃縮水路L12に送られる。
【0026】
次に、第1透過水路L11を流れる第1透過水の流量または電気伝導度を第1計測装置S16によって測定し、その測定値W1を制御部15に出力する。
【0027】
また、第1濃縮水路L12を流れる第1濃縮水中の荷電性物質の濃度C2を物質毎に第2監視装置1cによって測定し、その濃度C2を制御部15に出力する。
【0028】
更に、第1濃縮水の流量または電気伝導度を第2計測装置S17によって測定し、その測定値W2を制御部15に出力する。なお、本発明はこの順序に限るものではなく、第2監視装置1cと第2計測装置S17の設置場所を入れ替えて、第1濃縮水の流量または電気伝導度を測定した後に、第1濃縮水中の荷電性物質の濃度C2を物質毎に測定するようにしてもよい。
【0029】
被処理水及び第1濃縮水には、様々な荷電性物質が含まれているが、第1監視装置1a及び第2監視装置1cは、荷電性物質毎にそれぞれの濃度を測定することが可能である。荷電性物質としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、ケイ酸、たんぱく質等に起因するアミノ酸、腐植物質等がある。これらは、第1逆浸透膜13においてスケールとして析出するおそれがある。想定されるスケールとしては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛および塩基性炭酸亜鉛等が挙げられる。
【0030】
次に、制御部15では、第1演算部15aが、濃度C1と濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を荷電性物質のそれぞれについて求める。また、測定値W1と測定値W2との比(W2/W1)である濃縮倍数N2を求める。そして、荷電性物質毎に濃縮倍数N1及びN2の大小関係を比較する。
【0031】
次いで、第1推測部15bでは、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜13において荷電性物質に起因するスケールが析出したと推測する。
【0032】
以下、濃縮倍数N1及びN2の大小関係と、スケール発生との関係について説明する。
第1逆浸透膜13においてスケールの発生がない場合、被処理水に含まれる荷電性物質は、第1透過水と第1濃縮水の水量比に応じて、第1透過水及び第1濃縮水にそれぞれ分配される。すなわち、例えば、第1透過水と第1濃縮水の水量比がW1:W2=9:1の場合、被処理水中に含まれる荷電性物質は、スケールとして析出しないためにその大部分が第1濃縮水側に移行する。このため、被処理水中に含まれる荷電性物質の濃度C1と、第1濃縮水中に含まれる荷電性物質の濃度C2との割合は、C2:C1=9:1になる。この場合、濃縮倍数N1はC2/C1=9/1となり、濃縮倍数N2はW1/W2=9/1となり、両者はほぼ一致する。
【0033】
一方、第1逆浸透膜13において、ある特定の荷電性物質に起因するスケールが発生した場合、被処理水に含まれる当該荷電性物質は、その一部が第1逆浸透膜13の膜面にスケールとして析出することになる。そうすると、被処理水中に含まれる荷電性物質はその一部がスケールとして析出し、残りが第1濃縮水に移行する。このため、例えば、第1透過水と第1濃縮水の水量比が9:1(濃縮倍数N1=9/1)であった場合において、被処理水中に含まれる荷電性物質の濃度C1と、第1濃縮水中に含まれる荷電性物質の濃度C2との割合は、C2:C1=(9-α):1になる。αはスケールとして析出した荷電性物質の相当量である(ただし、9>α>0)。そうすると、荷電性物質の濃縮倍数N1はC2/C1=(9-α)/1となり、一方、濃縮倍数N2はW1/W2=9/1であるから、両者はN2>N1の関係になる。
【0034】
このように、第1逆浸透膜13において荷電性物質によるスケール発生がない場合は、濃縮倍数N1、N2の関係がN1=N2のまま維持されるが、荷電性物質によるスケールが発生すると、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1に変化する。
【0035】
一般に、逆浸透膜においてスケールが発生すると、単位時間あたり単位膜面積を透過する水量である透過流束(Flux)が次第に低下するが、その低下幅は最初のうちはごく僅かであり、透過流束の変化に気づきにくい。一方、本実施形態のような濃縮倍数N1、N2の変化は、スケールの発生によって直ちに顕著に現れる。従って、濃縮倍数N1、N2の変化を監視することで、スケールの発生を早期に検知することが可能になる。
【0036】
脱塩装置1の運転中は、図3のフロー図に示すように、濃縮倍数N1及びN2を監視し、N1=N2またはN1>N2の場合はスケールの析出がないと判断して条件を変更せずに運転を継続する。一方、N2>N1に変化した場合は、スケールの析出があると判断し、この場合は、脱塩装置1における回収率(濃縮倍数N2)を下げるように運転条件を変更する。例えば、第1制御バルブV14によって第1濃縮水の流量を増加させることで、濃縮倍数N2を低下させる。
【0037】
図4及び図5には、脱塩装置1における濃縮倍数N1、N2及び換算透過流束の経時変化をグラフで示している。図4に示すように、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1である状態を放置すると、透過流束が次第に低下して、透過水量が大幅に減少する。この場合、脱塩装置1の運転を中断して、第1逆浸透膜13のメンテナンスを行う必要が生じ、脱塩装置1による第1透過水の生産性が大幅に低下する。
【0038】
一方、図5に示すように、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1になった場合に、脱塩装置1における回収率を下げて濃縮倍数N2とN1を近づけることで、換算透過流束の低下を抑制し、換算透過流束を一定に維持できる。回収率を下げることで透過水量が少なくなるが、その状態で運転を継続できるので、第1逆浸透膜13の保守点検の時期が先延ばしされ、結果として第1透過水の生産性を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態では、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1になっている場合において、濃縮倍数N1とN2との差分が大きいほど、第1逆浸透膜13におけるスケールの析出量がより多くなり、第1逆浸透膜13における透過流束が著しく低下するおそれがある。従って、濃縮倍数N1とN2との差分と、第1逆浸透膜13における透過流束との関係を予め把握しておくことで、濃縮倍数N1とN2との差分から第1逆浸透膜13における透過流束の低下速度の予測も可能となる。従って、例えば、濃縮倍数N1とN2との差分の閾値を設定した上で、濃縮倍数N1とN2との差分を監視し、濃縮倍数N1とN2との差分が閾値を超えた場合に、脱塩装置における回収率を下げて濃縮倍数N2とN1を近づける制御を行ってもよい。ここで、濃縮倍数N1、N2の差分の閾値としては、例えば、透過流束の低下速度の許容値に対応する濃縮倍数N1、N2の差分の値とすることが好ましい。
【0040】
更に、スケールが発生しやすく、濃縮倍数N1が変化しやすい荷電性物質としては、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが挙げられる。従って、特にカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンについての濃縮倍数N1とN2との大小関係を監視することで、早期にスケール発生を検知することが可能になる。
【0041】
図6には、荷電性物質毎の、逆浸透膜に対する許容付加量を示すグラフである。図6の横軸は、第1濃縮水中の荷電性物質の濃度(mg/L)と、N2/N1と、運転時間(Hr)との積である。図6には、荷電性物質として、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンについて示している。図6に示すように、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンとも、スケールを発生させやすい荷電性物質であるため、所定の時間の経過後に逆浸透膜の許容負荷量に達することがわかる。このように、特にカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンについての濃縮倍数N1とN2との大小関係を監視することで、早期にスケール発生を検知することが可能になる。
【0042】
また、荷電性物質毎に、濃縮倍数N1及びN2の挙動と、透過流束の挙動とを監視することで、スケールを生成しやすい荷電性物質を特定若しくは発見して、そのような荷電性物質を重点的に監視することもできる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、図7を参照して本発明の第2の実施形態である脱塩装置を説明する。
図7に示す脱塩装置101は、被処理水を流す供給路L10と、被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜13と、第1透過水を流す第1透過水路L11と、第1濃縮水を流す第1濃縮水路L12と、供給路L10に設置された第1監視装置1aと、第1濃縮水路L12に設置された第2監視装置1cと、第1透過水路L11に設置された第1計測装置S16と、第1濃縮水路L12に設置された第2計測装置S17と、制御部115と、検知部102とを備えている。
【0044】
また、脱塩装置101の供給路L10には、被処理水を加圧する加圧ポンプ2と、加圧後の被処理水の水圧を測定する圧力計3とが設置されている。また、第1濃縮水路L12には、第1濃縮水の流量を調整する第1制御バルブV14が備えられている。
【0045】
図7に示す脱塩装置101の構成要素のうち、制御部115及び検知部102を除いた構成要素は、第1の実施形態の脱塩装置の構成要素と同一の構成要素であるため、これらの構成要素については図1に示す脱塩装置1の構成要素の符号と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施形態に係る検知部102について説明する。検知部102は、供給路L10から分岐されて被処理水の一部を流す分岐路L23と、分岐路L23によって供給された被処理水を第2透過水及び第2濃縮水に分離する第2逆浸透膜113と、第2透過水を流す第2透過水路L19と、第2濃縮水を流す第2濃縮水路L22と、第2濃縮水路L22に設置された第3監視装置1bと、第2透過水路L19に設置された第3計測装置S18と、第2濃縮水路L22に設置された第4計測装置S21と、を備えている。更に、第2濃縮水路L22には、第2濃縮水の流量を調整する第2制御バルブV20が備えられている。
【0047】
分岐路L23、第2透過水路L19、第2濃縮水路L22はそれぞれ、被処理水、第2透過水及び第2濃縮水を流す水路である。これらは第2逆浸透膜113に接続されている。
【0048】
第2逆浸透膜113としては、例えば、芳香族ポリアミド系逆浸透膜が用いられる。第2逆浸透膜113と第1逆浸透膜13は、相互に同じ材質とする。
【0049】
第2濃縮水路L22に設置された第3監視装置1bは、第2濃縮水に含まれる荷電性物質それぞれの濃度C3を測定し、その測定結果を制御部115に出力する。第3監視装置1bの構成は、第1実施形態における第1監視装置1a、第2監視装置1cの構成と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0050】
第2透過水路L19に設置された第3計測装置S18は、第2透過水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W3を制御部115に出力する。また、第2濃縮水路L22に設置された第4計測装置S21は、第2濃縮水の流量または電気伝導度を測定してその測定値W4を制御部115に出力する。
【0051】
次に制御部115について説明する。制御部115は、濃度C1と濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、測定値W1と測定値W2との比(W1/W2)である濃縮倍数N2を求め、荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する第1演算部115aと、濃度C1と濃度C3との比(C3/C1)である濃縮倍数N3を荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに、測定値W3と測定値W4との比(W3/W4)である濃縮倍数N4を求め、荷電性物質毎にN3及びN4の大小関係を比較する第2演算部115bと、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜13において荷電性物質が析出したと推測する第1推測部115cと、荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する調整部115dと、を有している。
【0052】
第1演算部115a、第2演算部115b、第1推測部115c及び調整部115dは、コンピュータに備えられた中央演算装置の機能として実現される。制御部115の動作は後述する。
【0053】
次に、本実施形態の脱塩装置101の動作を説明する。
まず、被処理水を、加圧ポンプ2により所定の圧力に加圧する。また、第1監視装置1aによって、被処理水中の荷電性物質の濃度C1を物質毎に測定し、その濃度C1を制御部115に出力する。加圧された被処理水は、供給路L10により第1逆浸透膜13に送られる。また、被処理水の一部は検知部102に送られる。具体的には、被処理水の一部が分岐路L23によって第2逆浸透膜115に送られる。
【0054】
第1逆浸透膜13に送られた被処理水は、第1逆浸透膜13によって第1透過水及び第1濃縮水に分離される。被処理水中に含まれる塩分の大部分は、第1逆浸透膜13によって第1濃縮水に濃縮される。一方、第1透過水は、塩分の大部分が除去された淡水とされる。そして、第1透過水は第1透過水路L11に送られ、第1濃縮水は第1濃縮水路L12に送られる。
【0055】
また、第1透過水路L11を流れる第1透過水の流量または電気伝導度を第1計測装置S16によって測定し、その測定値W1を制御部115に出力する。
【0056】
また、第1濃縮水路L12を流れる第1濃縮水中の荷電性物質の濃度C2を物質毎に第2監視装置1cによって測定し、その濃度C2を制御部115に出力する。
更に、第1濃縮水の流量または電気伝導度を第2計測装置S17によって測定し、その測定値W2を制御部115に出力する。
【0057】
次に、検知部102の第2逆浸透膜113に送られた被処理水は、第2逆浸透膜113によって第2透過水及び第2濃縮水に分離される。第1逆浸透膜13の場合と同様に、被処理水中に含まれる塩分の大部分は、第2逆浸透膜113によって第2濃縮水に濃縮される。第2透過水は、塩分の大部分が除去された淡水とされる。そして、第2透過水は第2透過水路L19に送られ、第2濃縮水は第2濃縮水路L22に送られる。ただし、検知部102の第2逆浸透膜113における回収率は、第1逆浸透膜13における回収率よりも高い回収率とする。すなわち、第2逆浸透膜113の運転条件は、第1逆浸透膜13に比べてスケールが発生しやすい条件とする。より具体的には、濃縮倍数N4、N2が、N4>N2の関係になるようにする。
【0058】
次に、第2透過水路L19を流れる第2透過水の流量または電気伝導度を第3計測装置S18によって測定し、その測定値W3を制御部115に出力する。
【0059】
また、第2濃縮水路L22を流れる第2濃縮水中の荷電性物質の濃度C3を物質毎に第3監視装置1bによって測定し、その濃度C3を制御部115に出力する。
更に、第2濃縮水の流量または電気伝導度を第4計測装置S16によって測定し、その測定値W4を制御部115に出力する。
【0060】
次に、制御部115では、第1演算部115aが、濃度C1と濃度C2との比(C2/C1)である濃縮倍数N1を荷電性物質のそれぞれについて求める。また、測定値W1と測定値W2との比(W1/W2)である濃縮倍数N2を求める。そして、荷電性物質毎に濃縮倍数N1及びN2の大小関係を比較する。
【0061】
また、第2演算部115bが、濃度C3と濃度C1との比(C3/C1)である濃縮倍数N3を荷電性物質のそれぞれについて求める。また、測定値W3と測定値W4との比(W3/W4)である濃縮倍数N4を求める。そして、荷電性物質毎に濃縮倍数N3及びN4の大小関係を比較する。
【0062】
そして、第1推測部115cでは、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜13において荷電性物質に起因するスケールが析出したと推測する。
【0063】
また、調整部115dでは、荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する。
【0064】
第1演算部115a及び第1推測部115cの動作に関して、濃縮倍数N1及びN2の大小関係と、第1逆浸透膜13におけるスケール発生との関係については、第1の実施形態のN1,N2の関係の場合と同様であり、第1逆浸透膜13において荷電性物質によるスケール発生がない場合は、濃縮倍数N1、N2の関係がN1=N2のまま維持されるが、荷電性物質によるスケール発生が起き始めると、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1に変化する。
【0065】
そこで、図8のフロー図に示すように、脱塩装置101の運転中に、濃縮倍数N1及びN2を監視し、N1=N2またはN1>N2の場合は、スケールの析出がないと判断して条件を変更せずに運転を継続する。一方、N2>N1に変化した場合は、スケールの析出があると判断し、この場合は、脱塩装置101における回収率(濃縮倍数N2)を下げるように運転条件を変更する。例えば、第1制御バルブV14によって第1濃縮水の流量を増加させることで、濃縮倍数N2を低下させる。
【0066】
次に、第2演算部115b及び調整部115dの動作に関して詳細に説明する。検知部102側の第2逆浸透膜113は、スケールを早期に検知するために、第1逆浸透膜13に比べて高い回収率で運転している。より具体的には、濃縮倍数N4、N2が、N4>N2の関係になるようにしている。
【0067】
ここで例えば、図9に示すように、脱塩装置101の運転中に、濃縮倍数N1、N2がそれぞれ5倍であってN1=N2の関係のまま維持され、第1逆浸透膜13における透過流束は一定であり、濃縮倍数N3が7倍、N4が10倍であってN4>N3の関係になり、第2逆浸透膜113の透過流束が低下する状況に至っている場合がある。
【0068】
濃縮倍数N3、N4の大小関係と第2逆浸透膜113におけるスケール析出との関係は、濃縮倍数N1、N2の場合と同様であり、第2逆浸透膜113において荷電性物質によるスケール発生がない場合は、濃縮倍数N3、N4の関係がN3=N4のまま維持されるが、第2逆浸透膜113において荷電性物質によるスケールが発生し始めると、濃縮倍数N3、N4の関係がN4>N3に変化する。そこで、図9に示す状況の場合は、検知部102の第2逆浸透膜113における透過流束の低下を抑制するために、検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を下げてN3=N4になるように運転条件を変更する。例えば、第2制御バルブV20によって第2濃縮水の流量を増加させることで、濃縮倍数N4を低下させる。これにより、濃縮倍数N3及びN4は、例えば、7倍以上10倍未満の範囲になる。この濃縮倍数N3、N4は依然として、濃縮倍数N1、N2より高い状態にある。
【0069】
ここで、検知部102において、濃縮倍数N3、N4が例えば7倍以上10倍未満の範囲でスケール析出がなく運転を継続でき、また、第1逆浸透膜13においてN1=N2のまま維持されてスケール析出がない状態であれば、第1逆浸透膜13において濃縮倍数N1、N2を高められる余地がある。よって、濃縮倍数N1~N4が、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合には、図9に示すように、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する。これにより、第1逆浸透膜13による第1透過水の生産量を増加させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1推測部115cにおいて、荷電性物質の少なくとも1種についてN4>N3である場合に、第2逆浸透膜113において荷電性物質に起因するスケールが析出したと推測し、更に、第1逆浸透膜13において荷電性物質に起因するスケールが析出することを事前に予測してもよい。検知部102側の第2逆浸透膜113は、スケールを早期に検知するために、第1逆浸透膜13に比べて高い回収率で運転している。そのため、第1逆浸透膜13において、濃縮倍数N1、N2がN1=N2の状態で維持されていたとしても、荷電性物質の少なくとも1種についてN4>N3に至った場合には、その後に、N2>N1に変化して第1逆浸透膜13においてスケールが生成して透過流束が低下する可能性が高い。従って、濃縮倍数N3、N4の挙動を監視することで、第1逆浸透膜13における透過流束の低下を事前に察知できる。
【0071】
また、本実施形態では、脱塩装置101の運転中に、第2制御バルブV20を操作して検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を0~99%の範囲で上昇させ、その間における荷電性物質の濃縮倍数N3の変化を把握し、濃縮倍数N3がピークになる回収率(濃縮倍数N4)を限界回収率に設定し、この限界回収率を第1逆浸透膜13における回収率(濃縮倍数N2)に反映させてもよい。以下、その理由を説明する。
【0072】
図10には、検知部102の第2逆浸透膜113における透過流束と、検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を上昇させながら検知部102を運転した場合の、濃縮倍数N3の変化を示している。濃縮倍数N3については、2種類の荷電性物質(Aイオン及びBイオン)の濃縮倍数を示している。図10に示すように、検知部102における回収率(濃縮倍数N4)が上昇するにつれて、2種類の荷電性物質(Aイオン及びBイオン)の濃縮倍数N3も上昇し、N3=N4の関係を維持しているが、AイオンはBイオンに比べて、低い回収率においてピークとなり、その後は濃縮倍数N3が減少し始め、N4>N3の状態になることがわかる。一方、BイオンはAイオンよりも高い回収率にてピークを迎える。このように、荷電性物質の種類によって、濃縮倍数N3のピークになる回収率が異なっている。図10に示す例では、検知部102は、Aイオンの濃縮倍数N3がピークになる限界回収率領域の範囲内で運転をすることが好ましいことが判る。そして、検知部102の結果に基づき、第1逆浸透膜13の回収率(濃縮倍数N2)を検知部102における限界回収率の領域に合わせることで、第1逆浸透膜13の回収率を最適な値に設定できるようになる。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、図11を参照して本発明の第3の実施形態である脱塩装置を説明する。
図11に示す脱塩装置201は、被処理水を流す供給路L10と、被処理水を第1透過水及び第1濃縮水に分離する第1逆浸透膜13と、第1透過水を流す第1透過水路L11と、第1濃縮水を流す第1濃縮水路L12と、供給路L10に設置された第1監視装置1aと、第1濃縮水路L12に設置された第2監視装置1cと、第1透過水路L11に設置された第1計測装置S16と、第1濃縮水路L12に設置された第2計測装置S17と、制御部115と、検知部102と、第1濃縮水路L12または第2濃縮水路L22のいずれか一方または両方に設置された第4監視装置203を備えている。
【0074】
図11に示す脱塩装置201の構成要素のうち、第4監視装置203を除いた構成要素は、第2の実施形態の脱塩装置101の構成要素と同一の構成要素であるため、これらの構成要素については図7に示す脱塩装置101の構成要素の符号と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
第4監視装置203について、図11では、第4監視装置203が第1濃縮水路L12及び第2濃縮水路L22の両方に設置されているが、いずれか一方に設置されていてもよく、特に第2濃縮水路L22に設置されているとよい。第4監視装置203は、第1濃縮水または第2濃縮水中の非荷電性物質の濃度C4を測定し、その測定結果を制御部115に出力する。
【0076】
図12に、第4監視装置203の構成を説明するための模式図を示す。図12に示すように、第4監視装置203は、帯状の第3逆浸透膜204と、巻回された第3逆浸透膜204を払い出す第1ロール205と、第3逆浸透膜204を巻き取る第2ロール206と、第1ロール205及び第2ロール206の間にあって第1濃縮水または第2濃縮水に含まれる非荷電性物質を第3逆浸透膜204に付着させる接触部207と、接触部207と第2ロール206の間にあって第3逆浸透膜204に付着された非荷電性物質を抽出液に抽出させる抽出部208と、図示しない検出部と、から構成されている。抽出液としては、酸水溶液、中性水溶液、アルカリ水溶液や、エタノール等の溶媒抽出液であっても構わない。また、第3逆浸透膜204としては、第1、第2逆浸透膜13、113と同種のものがよい。
【0077】
第4監視装置203では、第1ロール205から第3逆浸透膜204を繰り出しつつ、接触部207において第1濃縮水または第2濃縮水に含まれる非荷電性物質を第3逆浸透膜204に付着させ、抽出部208において第3逆浸透膜204に付着された非荷電性物質を抽出液に抽出させ、検出部にて抽出液中の非荷電性物質の量を測定することで、第1濃縮水または第2濃縮水中の非荷電性物質の濃度C4を測定する。
【0078】
非荷電性物質の濃度C4としては、TOC(全有機炭素濃度)または波長260nmの吸光度(紫外吸収スペクトル)が挙げられる。また、非荷電性物質の濃度C4として、ATP(アデノシン三リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、タンパク質、全糖類、酸性糖類、界面活性剤の濃度であってもよい。これらは、スケールや有機物ファウリングの発生の原因となり得る。
【0079】
非荷電性物質の濃度C4は、キャピラリ電気泳動部21を備えた第1監視装置1a、第2監視装置1c及び第3監視装置1bでは検出できない。しかし、非荷電性物質は、荷電性物質と同様に、第1逆浸透膜13及び第2逆浸透膜113における透過流束の低下の原因物質になり得る。そのため、本実施形態では、第4監視装置203を設置して、第1濃縮水または第2濃縮水に含まれる非荷電性物質の濃度C4を監視することとしている。
【0080】
制御部115の調整部には、非荷電性物質の濃度C4が随時入力され、蓄積される。調整部は、濃度C4が閾値を超えた場合に、濃縮倍数N2を低下させるように第1制御バルブV14を制御する。
【0081】
濃縮倍数N1~N4がN1=N2またはN3=N4を維持したままでも、第1逆浸透膜13または第2逆浸透膜113の透過流束が低下する場合がある。このような場合は、第1逆浸透膜13または第2逆浸透膜113に、第1監視装置1a等では検出不能な非荷電性物質に由来する有機物ファウリングが発生し、透過流束を低下させている可能性がある。従って、非荷電性物質の濃度C4が、予め設定された閾値を超えた場合には、調整部が濃縮倍数N2を低下させるように第1制御バルブV14を制御することで、透過流束の低下を防止できるようになる。
【0082】
また、濃縮倍数N1~N4と、濃度C4とを監視することで、第1逆浸透膜13の透過流束が低下した場合に、その原因が、荷電性物質に起因するスケール析出によるものであるか、あるいは、非荷電性物質に由来する有機物ファウリングによるものであるかを推測できるようになる。
【0083】
(第4の実施形態)
次に、図13を参照して本発明の第4の実施形態である脱塩装置を説明する。
図13に示す脱塩装置301は、図1に示した脱塩装置1に、遠隔監視部24を付加したものである。そこで、以下の説明では、図13に示す脱塩装置301の構成要素のうち、遠隔監視部24を除いた構成要素は、第1の実施形態の脱塩装置の構成要素と同一の構成要素であるため、これらの構成要素については図1に示す脱塩装置1の構成要素の符号と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
遠隔操作部24は、透過流束の低下速度の予測や、透過流束が低下した場合に警告を発する機能を有することで、ユーザーによる脱塩装置301の保守業務や操作業務を遂行するために必要な情報を作成する。より詳細に説明すると、本発明に係る脱塩装置では、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1になっている場合において、濃縮倍数N1とN2との差分が大きいほど、第1逆浸透膜13におけるスケールの析出量が多くなり、第1逆浸透膜13における透過流束が著しく低下するおそれがある。また、濃縮倍数N1とN2との差分から、第1逆浸透膜13における透過流束の低下速度の予測も可能になる。そこで、遠隔操作部24は、透過流束の低下速度の予測や、透過流束が低下した場合に警告を発するなどの、ユーザーによる脱塩装置301の保守業務や操作業務に必要な情報を作成する。
【0085】
本実施形態に係る遠隔監視部24は、有線回線または無線回線によって、脱塩装置301の制御部15に接続されている。脱塩装置301の設置場所から離れた場所に遠隔監視部24を設置することで、脱塩装置301を遠方から監視したり、操作したりすることが可能になっている。
【0086】
遠隔監視部24は、図13に示すように、データ取得部、データ記憶部、性能演算部、解析部、データ送信部を有する。また、遠隔監視部24はインターネットを介してユーザー端末に接続されている。遠隔監視部24は、例えば、中央演算装置を備えたコンピュータシステムから構成されており、データ取得部、データ記憶部、性能演算部、解析部及びデータ送信部は、中央演算装置の機能として実現される。
【0087】
データ取得部は、制御部15から濃縮倍数N1、N2、及びこれらの大小関係の情報を取得し、これらの情報を性能演算部に送る機能を有する。
【0088】
また、データ記憶部は、例えば濃縮倍数N1及びN2の差分に基づき、第1逆浸透膜13における透過流束の挙動を予測するための予測データが格納されている。
更に、性能演算部は、例えば、濃縮倍数N1及びN2の差分を計算し、その結果を解析部に出力する機能を有する。
【0089】
解析部は、濃縮倍数N1及びN2の差分に基づき、第1逆浸透膜13における透過流束の挙動を予測し、その結果に基づき、第1制御バルブV14を制御する機能を有する。
【0090】
データ送信部は、解析部における解析結果を出力する。また、データ送信部は、濃縮倍数N1、N2、これらの大小関係の情報、濃縮倍数N1及びN2の差分についても出力する。
【0091】
以下、遠隔監視部24の動作を説明する。
第1の実施形態で説明した様に、制御部15は、濃縮倍数N1を荷電性物質のそれぞれについて求めるとともに濃縮倍数N2を求め、荷電性物質毎にN1及びN2の大小関係を比較する。そして、制御部15は、その結果を、遠隔監視部24のデータ取得部に出力する。データ取得部は、受信した各種のデータを性能演算部に送る。
【0092】
性能演算部は、濃縮倍数N1及びN2の差分を計算し、その結果を解析部に出力する。また、性能演算部は、濃縮倍数N1、N2を解析部に出力する。
【0093】
解析部は、データ記憶部に記憶された予測データを参照しつつ、濃縮倍数N1及びN2がN1>N2の状態になっている場合において、図14のフロー図で示したように、濃縮倍数N1及びN2の差分に基づき、第1逆浸透膜13における透過流束の挙動を予測する。上述したように、濃縮倍数N1とN2との差分が大きいほど、第1逆浸透膜13におけるスケールの析出量が多くなり、第1逆浸透膜13における透過流束の低下速度が大きくなる。そこで、あらかじめ、濃縮倍数N1及びN2の差分と、透過流束の低下速度との関係を求めておき、これを予測データとしてデータ記憶部に記憶させておく。そして、解析部は、解析部に入力された濃縮倍数N1、N2の差分と、データ記憶部に記憶された予測データとに基づき、透過流束の低下速度の予測値を求める。そして、透過流束の低下速度の予測値をデータ送信部に出力する。
【0094】
また、データ記憶部には、先に説明した予測データともに、透過流束の低下速度の閾値を予め記憶させておくことが好ましい。この場合、解析部には、警報機能を設けておくことが好ましい。これにより、解析部において透過流束の低下速度の予測値を求め、その予測値が、低下速度の閾値を超える場合は、警報機能により、透過流束の低下速度が大きくなることについての警報情報を生成できるようになる。解析部において生成された警報情報は、データ送信部に出力することが好ましい。
【0095】
データ送信部は、解析部において生成した透過流束の予測値の情報や、透過流束の低下速度の警報情報を、脱塩装置301の保守業務または操作業務についての情報として、インターネットを介してユーザー端末に出力する。ユーザー端末を通じてこれらの情報に接した脱塩装置301のユーザーは、第1制御バルブV14を操作することによる濃縮倍数N2の調整や、第1逆浸透膜13の保守点検などを行うことができるようになる。
【0096】
また、本実施形態では、第1の実施形態で説明したように、脱塩装置1の運転中に、濃縮倍数N1及びN2を監視し、N1=N2またはN1>N2の場合はスケールの析出がないと判断して条件を変更せずに運転を継続し、N2>N1に変化した場合は、スケールの析出があると判断し、この場合は、脱塩装置1における回収率(濃縮倍数N2)を下げるように運転条件を変更してもよい。具体的には、濃縮倍数N1、N2の挙動を制御部15、データ取得部及びデータ送信部を介してユーザー端末に表示させてもよい。また、第1制御バルブV14によって第1濃縮水の流量を増加させて濃縮倍数N2を低下させることを、ユーザー端末を介して脱塩装置301のユーザーに促してもよい。
【0097】
本実施形態では、第1の実施形態で説明したように、スケールが発生しやすく、濃縮倍数N1が変化しやすい荷電性物質として、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが挙げられるので、特にカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンについての濃縮倍数N1とN2との大小関係をユーザー端末に表示させて、ユーザーに注意を促してもよい。
【0098】
また、第1の実施形態で説明したように、荷電性物質毎に、濃縮倍数N1及びN2の挙動と、透過流束の挙動とを監視することで、スケールを生成しやすい荷電性物質を特定若しくは発見できるので、そのような荷電性物質を重点的に監視するために、ユーザー端末に必要な情報を表示させ、ユーザーに注意を促してもよい。
【0099】
(第5の実施形態)
次に、図15を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。
図15に示す脱塩装置401は、図13に示した脱塩装置301に、バルブ操作部25を付加したものである。そこで、以下の説明では、バルブ操作部25について説明する。
【0100】
バルブ操作部25は、インターネットを介してユーザー端末に接続されている。また、バルブ操作部25は、第1制御バルブV14に接続されており、第1制御バルブV14を制御できるようになっている。脱塩装置401のユーザーは、ユーザー端末からバルブ操作部25を介して第1制御バルブV14を制御することが可能とされており、第1制御バルブV14を遠隔操作できるようになっている。
【0101】
本実施形態では、第4の実施形態と同様に、遠隔監視部24のデータ送信部が、透過流束の予測値の情報や、透過流束の低下速度の警報情報を、保守業務または操作業務についての情報として、インターネットを介してユーザー端末に出力する。ユーザー端末を通じてこれらの情報に接した脱塩装置301のユーザーは、ユーザー端末を操作し、バルブ操作部25を通じて第1制御バルブV14を遠隔操作することにより、濃縮倍数N2の調整を行うことができる。
【0102】
(第6の実施形態)
次に、図16を参照して、本発明の第6の実施形態を説明する。
図16に示す脱塩装置501は、図7に示した脱塩装置101に、第5の実施形態の場合と同様に、遠隔監視部24及びバルブ操作部25を付加したものである。従って、図16に示す脱塩装置501は、第5の実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0103】
また、本実施形態では、第2実施形態で説明したように、脱塩装置101の運転中に、バルブ操作部25を介して第2制御バルブV20を操作して検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を0~99%の範囲で上昇させ、その間における荷電性物質の濃縮倍数N3の変化を把握し、濃縮倍数N3がピークになる回収率(濃縮倍数N4)を限界回収率に設定し、この限界回収率を第1逆浸透膜13における回収率(濃縮倍数N2)に反映させてもよい。この操作を、遠隔監視部24の解析部の機能として実現してもよい。また、限界回収率の調整に必要な情報をユーザー端末に送信できるようにしてもよい。これにより、ユーザー端末を確認したユーザーが、遠隔操作で、バルブ操作部25を制御して第1制御バルブV14を調整し、第1逆浸透膜13の回収率(濃縮倍数N4)を最適な値に設定できるようになる。
【0104】
(第7の実施形態)
次に、図17を参照して、本発明の第7の実施形態を説明する。
図17に示す脱塩装置601は、図1に示した脱塩装置1の供給路L10に、分散剤添加装置26を付加したものである。分散剤添加装置26は、制御部15の指令に基づき、被処理水に対して分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。分散剤としては、生物代謝物系有機物分散剤、腐植物質分散剤、スケール防止剤を例示でき、これらの少なくとも1種または2種以上を添加する。
【0105】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、脱塩装置601の運転中は、図3のフロー図で示したように、濃縮倍数N1及びN2を監視し、N1=N2またはN1>N2の場合はスケールの析出がないと判断して条件を変更せずに運転を継続する。一方、N2>N1に変化した場合は、スケールの析出があると判断し、この場合は、脱塩装置601における回収率(濃縮倍数N2)を下げるように運転条件を変更する。例えば、第1制御バルブV14によって第1濃縮水の流量を増加させることで、濃縮倍数N2を低下させる。
【0106】
更に本実施形態では、脱塩装置601における回収率(濃縮倍数N2)を下げる代わりに、または、脱塩装置601における回収率(濃縮倍数N2)を下げるとともに、制御部15から分散剤添加装置26に指令を発して、被処理水に分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。これにより、荷電性物質に起因するスケール発生や、非荷電性物質に起因する有機物ファウリングの生成を抑制し、第1逆浸透膜13の透過流束の低下を予防できる。
【0107】
特に、透過流束の低下が、荷電性物質に起因するスケール発生が原因である場合は、分散剤を添加することで、スケールの生成が抑制されて第1濃縮水中の荷電性物質の濃度C2が高まり、これにより、図18に示すように、濃縮倍数N1(濃度C2/濃度C1)が高まる。このため、回収率(濃縮倍数N2)を大幅に低下させることなく、N2>N1をN2=N1の状態に戻すことができ、第1逆浸透膜13における透過流束の低下を抑制できる。
【0108】
また、図19に示すように、濃縮倍数N1,N2がN1=N2の状態を維持している場合に、濃縮倍数N1、N2を参照しながら、分散剤の添加量を削減することも可能になる。すなわち、N1=N2の状態を維持するために必要な最小限の分散剤の添加量を、濃縮倍数N1、N2の挙動を見ながら調整できる。これにより、分散剤の添加量を減らすことができ、コスト削減を図ることができる。
【0109】
また、荷電性物質の物質毎の濃縮倍数N1を参照して、スケール生成の原因となる荷電性物質を特定することにより、その荷電性物質に対して有効な分散剤を選択できるようになり、これにより分散剤の選択に迷うことなく、透過流束の低下を防止できるようになる。
【0110】
(第8の実施形態)
次に、図20を参照して、本発明の第8の実施形態を説明する。
図20に示す脱塩装置701は、図7に示した脱塩装置101の供給路L10に、分散剤添加装置26を付加したものである。分散剤添加装置26は、制御部115の指令に基づき、被処理水に対して分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。分散剤としては、生物代謝物系有機物分散剤、腐植物質分散剤、スケール防止剤を例示でき、これらの少なくとも1種または2種以上を添加する。
【0111】
本実施形態では、第2の実施形態と同様に、制御部115の第1推測部において、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜13において荷電性物質に起因するスケールが析出したと推測する。また、制御部115の調整部において、荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する。
【0112】
本実施形態では、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する際に、制御部115から分散剤添加装置26に指令を発して、被処理水に分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。これにより、回収率(濃縮倍数N2、N4)を大幅に下げることなく、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけることができ、第1逆浸透膜13における透過流束の低下を抑制できる。
【0113】
また、第7の実施形態の場合と同様に、N1=N2の状態を維持するために必要な最小限の分散剤の添加量を、濃縮倍数N1、N2の挙動を見ながら調整でき、これにより、分散剤の添加量を減らすことができ、コスト削減を図ることができる。
【0114】
また、第7の実施形態の場合と同様に、荷電性物質の物質毎の濃縮倍数N1を参照して、スケール生成の原因となる荷電性物質を特定することにより、その荷電性物質に対して有効な分散剤を選択できるようになり、これにより分散剤の選択に迷うことなく、透過流束の低下を防止できるようになる。
【0115】
(第9の実施形態)
次に、図21を参照して、本発明の第9の実施形態を説明する。
図21に示す脱塩装置801は、図16に示した脱塩装置201の供給路L10に、分散剤添加装置26を付加し、更に、添加装置操作部28を付加したものである。分散剤添加装置26は、添加装置操作部28の指令に基づき、被処理水に対して分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。分散剤としては、生物代謝物系有機物分散剤、腐植物質分散剤、スケール防止剤を例示でき、これらの少なくとも1種または2種以上を添加する。また、添加装置操作部28は、インターネットに接続されており、遠隔監視部24またはユーザー端末からの指令により、分散剤の添加量を制御する。
【0116】
本実施形態では、第2の実施形態と同様に、制御部115の第1推測部において、荷電性物質の少なくとも1種についてN2>N1である場合に、第1逆浸透膜13において荷電性物質に起因するスケールが析出したと推測する。また、制御部115の調整部において、荷電性物質の少なくとも1種について、N4>N3、N4>N2及びN1=N2である場合に、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する。
【0117】
本実施形態では、濃縮倍数N1、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけるように第1制御バルブV14及び第2制御バルブV20を制御する際に、制御部115から分散剤添加装置26に指令を発して、被処理水に分散剤をその添加量を調整しつつ添加する。これにより、回収率(濃縮倍数N2、N4)を大幅に下げることなく、N2及びN4を濃縮倍数N3に近づけることができ、第1逆浸透膜13における透過流束の低下を抑制できる。
【0118】
また、第7の実施形態の場合と同様に、N1=N2の状態を維持するために必要な最小限の分散剤の添加量を、濃縮倍数N1、N2の挙動を見ながら調整でき、これにより、分散剤の添加量を減らすことができ、コスト削減を図ることができる。
【0119】
また、第7の実施形態の場合と同様に、荷電性物質の物質毎の濃縮倍数N1を参照して、スケール生成の原因となる荷電性物質を特定することにより、その荷電性物質に対して有効な分散剤を選択できるようになり、これにより分散剤の選択に迷うことなく、透過流束の低下を防止できるようになる。
【0120】
更に、本実施形態では、第2実施形態または第6の実施形態で説明したように、脱塩装置801の運転中に、第2制御バルブV20を操作して検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を0~99%の範囲で上昇させ、その間における荷電性物質の濃縮倍数N3の変化を把握し、濃縮倍数N3がピークになる回収率(濃縮倍数N4)を限界回収率に設定し、この限界回収率を第1逆浸透膜13における回収率(濃縮倍数N2)に反映させてもよい。この操作を、遠隔監視部24の解析部の機能として実現してもよい。また、限界回収率の調整に必要な情報をユーザー端末に送信できるようにしてもよい。これにより、ユーザー端末を確認したユーザーが、遠隔操作で、バルブ操作部25を制御して第1制御バルブV14を調整し、第1逆浸透膜13の回収率(濃縮倍数N4)を最適な値に設定できるようになる。
【0121】
また、限界回収率は、分散剤の添加量を増量させることで、限界回収率を高めることも可能である。図22には、検知部102の第2逆浸透膜113における透過流束と、検知部102における回収率(濃縮倍数N4)を上昇させながら検知部102を運転した場合の、荷電性物質の濃縮倍数N3の変化を示している。濃縮倍数N3については、分散剤の添加量をAmg/Lとした場合の濃縮倍数N3と、分散剤の添加量をBmg/L(ただし、B>A)とした場合の濃縮倍数N3とを示している。
【0122】
図22に示すように、検知部102における回収率(濃縮倍数N4)が上昇するにつれて、荷電性物質の濃縮倍数N3も上昇し、N3=N4の関係を維持しているが、分散剤の添加量をAmg/LからBmg/Lに変更することで、濃縮倍数N3のピークが高回収率側にシフトすることがわかる。そして、検知部102の結果に基づき、被処理水に分散剤を添加するとともに、第1逆浸透膜13の回収率(濃縮倍数N2)を検知部102における限界回収率の領域に合わせることで、第1逆浸透膜13の回収率をより高い値に設定できるようになる。
【0123】
(第10の実施形態)
次に、図23図25を参照して、本発明の第10の実施形態を説明する。
図23に示す脱塩装置901Aは、図1に示した脱塩装置1に、フラッシング洗浄手段を付加したものである。また、図24に示す脱塩装置910Bは、図1に示した脱塩装置1に、フラッシング洗浄手段と、分散剤供給部37と、pH調整剤供給部38を付加したものである。更に、図25に示す脱塩装置910Cは、図1に示した脱塩装置1に、フラッシング洗浄手段と、分散剤供給部37と、pH調剤供給整部38と、非荷電性物質の濃度C4を計測する第4監視装置203を付加したものである。第4監視装置203は、図11の脱塩装置201に備えられた第4監視装置と同じものである。
【0124】
図23図25の脱塩装置901A~901Cに備えられたフラッシング洗浄手段は、洗浄水タンク30と、第1透過水路L11から分岐して第1透過水を洗浄水として洗浄水タンク30に送る第1洗浄水路L31aと、洗浄水を洗浄水タンク30から供給路L10に送る第2洗浄水路L31bと、第2洗浄水路L31bの途中に備えられた加圧ポンプ32及び第3制御バルブ34aと、供給路L10に設けられた被処理水タンク29及び第4制御バルブ34bと、第1洗浄水路L31aに設けられた第5制御バルブ34cと、から構成されている。
【0125】
加圧ポンプ32、第3制御バルブ34a、第4制御バルブ34b及び第5制御バルブ34cは制御部15に接続されており、制御部15の指令に基づき作動する。
【0126】
また、図24及び図25に示す脱塩装置901B、901Aには、供給流路L10に分散剤供給部26とpH調整剤供給部40とが付加され、更に洗浄水タンク30にも分散剤供給部37とpH調整剤供給部38とが付加されている。更に図25に示す例では、添加装置操作部28が備えられている。これらは制御部15に接続されており、制御部15の指令に基づき作動する。図24及び図25に示す例では、分散剤供給部37から分散剤を洗浄水に添加しても良いし、pH調整剤供給部37からアルカリ溶液を洗浄水に添加しても良い。分散剤を添加した場合は、分散剤含有水による洗浄が行われる。また、アルカリ溶液を添加した場合は、アルカリ水によるアルカリ洗浄が行われる。
【0127】
図23図25に示すフラッシング洗浄手段は、第1逆浸透膜13にスケールまたは有機物ファウリングが蓄積されて透過流束が著しく低下した場合若しくは低下するおそれがある場合に、これを感知した制御部15の指令によって、第1透過水を洗浄水に利用したフラッシング洗浄を行う。
【0128】
例えば、図23に示す例では、通常は、第1制御バルブV14を開放することにより第1逆浸透膜13を被処理水によりフラッシング洗浄する。一方、第1逆浸透膜13の閉塞が特に激しい場合には、予め、第1洗浄水路L31aを介して第1透過水を洗浄水として洗浄水タンク30に蓄積しておき、また、第3制御バルブ34aを開いて洗浄水を第1逆浸透膜13に供給可能な状態とし、更に、第4制御バルブ34bを閉じて被処理水の第1逆浸透膜13への供給を停止する。そして、加圧ポンプ32により洗浄水を加圧した状態で第1逆浸透膜13に供給し、膜表面に堆積したスケール及び有機物ファウリングの除去を行う。
【0129】
また、図24及び図25に示す例では、被処理水に対して分散剤を添加することで、第7の実施形態にて説明したような分散剤の添加効果が得られる。また、図24及び図25に示す例では、分散剤供給部37から洗浄水に分散剤を添加することで、第1逆浸透膜13のフラッシング洗浄における洗浄効率を高めることができる。更に、pH調整剤供給部38から洗浄水にアルカリ溶液を添加することで、第1逆浸透膜13に対してアルカリ洗浄を行うことができ、特に透過流束の回復が困難な場合にアルカリ洗浄を行うことで、スケールの除去効果を高め、透過流束を回復させることができる。
【0130】
図26には、フラッシング洗浄を実施した場合の、第1逆浸透膜13における透過流束及び濃縮倍数N1、N2と、運転時間との関係を示す。図中の実線は、濃縮倍数N1、N2の関係がN2>N1である場合の透過流束の変動を示している。また、図中の点線は、濃縮倍数N1、N2の差が大きいN2≫N1である場合の透過流束の変動を示している。
【0131】
図26中の実線に示すように、濃縮倍数N1及びN2の関係がN2>N1である場合は、所定の間隔でフラッシング洗浄を行うことにより、スケールや有機物ファウリングを除去することができ、透過流束を回復することができる。一方、図26中の点線に示すように、濃縮倍数N1及びN2の差が大きくN2≫N1である場合は、所定の間隔でフラッシング洗浄を行ったとしても、スケールや有機物ファウリングを完全に除去できず、透過流束が徐々に低下してしまう。そこで、図26中の一点鎖線で示すように、透過流束の閾値を予め設定しておき、透過流束が閾値を下回る場合は、制御部15やユーザー端末にて警報を発するとともに、アルカリ水によるアルカリ洗浄を実施する。これにより、透過流束を回復させることができる。
【符号の説明】
【0132】
1、101、201、301、401、501、601、701、801,901A、901B、901C…脱塩装置、1a…第1監視装置、1b…第3監視装置、1c…第2監視装置、13…第1逆浸透膜、15、115…制御部、15a、115a…第1演算部、15b115c…第1推測部、21…キャピラリ電気泳動部、23…検出部、24…遠隔監視部、26…分散剤添加装置、102…検知部、113…第2逆浸透膜、115d…調整部、115b…第2演算部、203…第4監視装置、L10…供給路、L11…第1透過水路、L12…第1濃縮水路、L19…第2透過水路、L22…第2濃縮水路、L23…分岐路、S16…第1計測装置、S17…第2計測装置、S18…第3計測装置、S21…第4計測装置、V14…第1制御バルブ、V20…第2制御バルブ。
図1
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