(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】塗料組成物および被覆物品
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20240903BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D183/06
(21)【出願番号】P 2021029372
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻生 史拓
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180093(JP,A)
【文献】特開2005-298561(JP,A)
【文献】特開2019-006873(JP,A)
【文献】特開2014-058613(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:100質量部、
(B)下記平均単位式(I)で表されるオルガノポリシロキサン:5~50質量部、および
(C)硬化触媒:0.1~50質量部
を含む塗料組成物。
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表すが、R
1の全数のうち40~43%は置換または非置換の炭素原子数6~12のアリール基であり、R
2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、a=0、0.5≦b≦0.6、0.4≦c≦0.5、d=0、かつ、a+b+c+d=1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。)
【請求項2】
前記式(I)において、R
1が、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数6~10のアリール基または炭素原子数7~10のアラルキル基である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記式(I)において、R
1が、それぞれ独立して、メチル基またはフェニル基である請求項2記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記式(I)において、R
2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合が50%以上である請求項1~3のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記(B)オルガノポリシロキサンのゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1,000~10,000である請求項1~4のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記(B)オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が、50~200mm
2/sである請求項1~5のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記(C)硬化触媒が、有機錫化合物を含む請求項1~6のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項8】
アミノシラン化合物を含まない請求項1~7のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の塗料組成物から形成された硬化膜。
【請求項10】
基材と、この基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して形成された請求項9記載の硬化膜とを有する被覆物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および被覆物品に関し、さらに詳述すると、有機樹脂とオルガノポリシロキサンとを含む塗料組成物、および当該塗料組成物からなる硬化膜を有する被膜物品に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン系樹脂を主成分とした塗料は、塗膜硬度、耐薬品性、耐熱性、耐候性等に優れることから、建築や土木構造物の分野で汎用されている。
このオルガノポリシロキサン系塗料は、上記利点を有している反面、硬化速度が遅く、また得られた塗膜が耐クラック性に劣るという欠点も有している。
【0003】
これらの欠点を改善すべく、従来、オルガノポリシロキサンと、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂とを混合した組成物を塗料として用いる手法が知られている。このような組成物として、例えば、シリル基含有ビニル系重合体、シラノール基含有オルガノポリシロキサンおよびアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンを含む塗料用組成物が提案されている(特許文献1)。
しかし、この組成物は、硬化性や耐クラック性は改善するものの、オルガノポリシロキサン系樹脂塗膜の特徴である、塗膜硬度、耐薬品性、耐熱性、耐候性等が低下してしまうという問題がある。
【0004】
また、特許文献2,3には、有機樹脂とオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンとを反応させて複合化を行う手法が開示されているが、この手法は、樹脂を複合化するための合成設備が必要であるため、汎用性という点で問題がある。
このため、オルガノポリシロキサンと有機樹脂との両者の特性を引き出すための簡便な手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-197548号公報
【文献】特開平11-116683号公報
【文献】特開平5-345877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便に製造可能であり、優れた耐クラック性、塗膜硬度、耐薬品性、耐アルカリ性、耐熱性、耐候性を有する硬化被膜を与える、有機樹脂とオルガノポリシロキサンとを含む塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂と、所定のオルガノポリシロキサンとを所定割合で混合した塗料組成物が、常温で硬化可能であるとともに、当該組成物から得られた塗膜が、耐クラック性等の上記特性を満たすことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)加水分解性シリル基含有アクリル樹脂:100質量部、
(B)下記平均単位式(I)で表されるオルガノポリシロキサン:5~50質量部、および
(C)硬化触媒:0.1~50質量部
を含む塗料組成物、
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表すが、R
1のうち少なくとも1つは置換または非置換の炭素原子数6~12のアリール基であり、R
2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a<1、0<b<1、0<c≦0.5、0≦d<1、かつ、a+b+c+d=1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。)
2. 前記式(I)において、R
1の全数のうち、置換または非置換の炭素原子数6~12のアリール基の占める割合が40%以上である1の塗料組成物、
3. 前記式(I)において、R
1が、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数6~10のアリール基または炭素原子数7~10のアラルキル基である1または2の塗料組成物、
4. 前記式(I)において、R
1が、それぞれ独立して、メチル基またはフェニル基である3の塗料組成物、
5. 前記式(I)において、R
2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合が50%以上である1~4のいずれかの塗料組成物、
6. 前記式(I)において、bおよびcが、0.6≦b+c≦1を満たす数である1~5のいずれかの塗料組成物、
7. 前記式(I)において、aが、0である1~6のいずれかの塗料組成物、
8. 前記式(I)において、dが、0である1~7のいずれかの塗料組成物、
9. 前記(B)オルガノポリシロキサンのゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1,000~10,000である1~8のいずれかの塗料組成物、
10. 前記(B)オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が、50~200mm
2/sである1~9のいずれかの塗料組成物、
11. 前記(C)硬化触媒が、有機錫化合物を含む1~10のいずれかの塗料組成物、12. 1~10のいずれかの塗料組成物から形成された硬化膜、
13. 基材と、この基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して形成された12の硬化膜とを有する被覆物品
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物は、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂と特定のオルガのシロキサンとを混合するだけで製造でき、また上記アクリル樹脂に対し、特定のオルガノシロキサンおよび/またはその縮合物を特定の割合で含んでいるため、塗膜硬度、耐薬品性、耐アルカリ性、耐熱性、耐候性に優れる硬化膜を与えることから、種々の被膜物品の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の塗料組成物は、下記(A)~(C)成分を含む。
(A)加水分解性シリル基含有アクリル樹脂
(B)下記平均単位式(I)で表されるオルガノポリシロキサン
【化2】
(C)硬化触媒
【0011】
(1)(A)加水分解性シリル基含有アクリル樹脂
(A)成分の加水分解性シリル基含有アクリル樹脂は、空気中の湿気および(C)硬化触媒の存在下にて加水分解縮合する成分である。
本発明において、「加水分解性シリル基」は、加水分解によってシラノール基を生成し、当該シラノール基が脱水縮合して、シロキサン結合を形成する基であり、ケイ素原子に直接結合した一価の加水分解性原子(水と反応することでシラノール基を生成する原子)およびケイ素原子に直接結合した一価の加水分解性基(水と反応することでシラノール基を生成する基)の両方または一方を有するシリル基である限り特に限定されない。
【0012】
上記加水分解性シリル基の具体例としては、クロロシリル、ブロモシリル基等のハロゲン化シリル基;メトキシシリル、エトキシシリル、プロポキシシリル、ブトキシシリル基等のアルコキシシリル基、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0013】
加水分解性シリル基含有アクリル樹脂としては、例えば、加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物由来の単量体単位と、(メタ)アクリロイル基含有化合物(ただし、加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物を除く。)由来の単量体単位を含む重合体が挙げられる。
本発明では、塗料組成物の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の硬化性および塗膜物性の観点から、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂中の全単量体単位を基準として、加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物由来の単量体が、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~30質量%であり、(メタ)アクリロイル基含有化合物由来の単量体単位が、好ましくは50~99質量%、より好ましくは70~98質量%である。
【0014】
加水分解性シリル基含有アクリル樹脂は、加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物と、(メタ)アクリロイル基含有化合物とを、例えば、アゾ化合物、過酸化物等を開始剤とする公知のラジカル重合法等により重合して製造することができ、また、市販品を用いてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の双方を含む意味であり、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基との双方を含む意味であり、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を含む意味である。
【0015】
なお、加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物の単量体単位として、加水分解性シリル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する重合性不飽和化合物、例えば、(メタ)アクリロキシアルコキシシラン由来の単量体単位を含んでいてもよい。
加水分解性シリル基含有重合性不飽和化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニルアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン等のビニルクロロシラン;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルコキシシラン;およびこれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリロイル基含有化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状または環状アルキル基含有(メタ)アクリレート;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、リン酸モノ-〔(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸〕エステル等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド等の第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合した化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物等の水酸基含有(メタ)アクリレート等;ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;およびこれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0017】
加水分解性シリル基含有アクリル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、硬化性、耐候性および塗装性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~80,000である。
なお、(A)成分は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(2)(B)加水分解性シリル基含有オルガノポリシロキサン
(B)成分は、下記平均式(I)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【化3】
【0019】
R1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表すが、R1のうち少なくとも1つは置換または非置換の炭素原子数6~12のアリール基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a<1、0<b<1、0<c≦0.5、0≦d<1、かつ、a+b+c+d=1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。
【0020】
R1の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~12、好ましくは炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数6~12、好ましくは炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~12、好ましくは炭素原子数7~10のアラルキル基等が挙げられる。
炭素原子数1~12のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素原子数2~12のアルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル基等挙げられる。
炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。
炭素原子数7~12のアラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェニルエチル基等が挙げられる。
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、クロロフェニル、ブロモフェニル基等のハロゲン置換炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、R1としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、フェニル、ベンジル、ビニル基が好ましく、メチル、フェニル基がより好ましい。
なお、上記R1は、少なくとも1つ、好ましくはR1の全数のうち40%以上が炭素原子数6~12のアリール基、好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基である。
【0022】
一方、R2の炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル、エチル基が好ましい。
また、本発明において、R2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合は、50%以上が好ましい。
【0023】
aは、0≦a<1を満たす数であるが、得られる硬化物のクラック抑制効果の観点から、0≦a≦0.3が好ましい。
bは、0<b<1を満たす数であるが、得られる硬化物の耐擦傷性の観点から、0.2≦b≦1が好ましい。
cは、0<c≦0.5を満たす数であるが、組成物の硬化性および得られる硬化物の硬度の観点から、0<c≦0.4が好ましい。
dは、0≦d<1を満たす数であるが、組成物の硬化性および得られる硬化物の硬度の観点から、0≦d≦0.4が好ましい。
eは、0<e≦4を満たす数であるが、縮合性官能基による縮合反応の抑制に効果的であることや、得られる硬化物の耐クラック性、耐水性および耐候性の観点から、0<e≦3を満たす数が好ましい。
なお、a+b+c+d=1である。
【0024】
(B)成分は、一般的なオルガノポリシロキサンの製造方法に従って製造することができ、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物を加水分解縮合させて得ることができる。
加水分解性基を有するシラン化合物は、加水分解性基であるクロルまたはアルコキシ基をケイ素原子上に1~4個含有し、上記条件を満たす有機置換基を有するシラン化合物であれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、およびこれらの部分加水分解物等が挙げられるが、操作性、副生物の留去のしやすさ、および原料の入手の容易さから、メトキシシラン、エトキシシランが好適である。
なお、上記シラン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
加水分解を実施するに際し、加水分解触媒を使用してもよい。加水分解触媒としては、従来公知の触媒を使用することができ、その水溶液がpH1~7の酸性を示すものが好ましく、特に酸性のハロゲン化水素、スルホン酸、カルボン酸、酸性または弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸等が好ましい。
酸性触媒の具体例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、安息香酸、乳酸、燐酸、表面にスルホン酸またはカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂等が挙げられる。
加水分解触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、反応を速やかに進行させるとともに、反応後の触媒の除去の容易性を考慮すると、加水分解性シラン1モルに対して0.0002~0.5モルの範囲が好ましい。
【0026】
加水分解性シランと、加水分解縮合反応に要する水との量比は、特に限定されるものではないが、触媒の失活を防いで反応を十分に進行させるとともに、反応後の水の除去の容易性を考慮すると、加水分解性シラン1モルに対し、水0.1~10モルの割合が好ましい。
加水分解縮合時の反応温度は、特に限定されるものではないが、反応率を向上させるとともに、加水分解性シランが有する有機官能基の分解を防止することを考慮すると、-10~150℃が好ましい。
【0027】
なお、加水分解縮合の際には、有機溶剤を使用してもよい。使用できる有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0028】
また、(B)成分は、溶剤等を除く不揮発分が90質量%以上であることが好ましい。揮発分が多くなると、組成物を硬化した際のボイド発生による外観の悪化や機械的性質の低下の原因となるおそれがある。
(B)成分の分子量は、特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000であることが好ましい。
(B)成分の動粘度は、特に限定されるものではないが、50~200mm2/sが好ましい。なお、動粘度はJIS-Z-8803に準拠しキャノン-フェンスケ粘度計による25℃での測定値である。
【0029】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、5~50質量部であるが、10~40質量部が好ましい。(B)成分の量が上記範囲より少ないと、形成される塗膜の耐候性、耐熱性が不十分であり、一方、多すぎると耐溶剤性、耐アルカリ性などが不十分となる。
【0030】
なお、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、単一の組成でも、組成の異なる複数の化合物の混合物であってもよい。特に、平均組成の異なる複数の化合物を混合することで好適に製造できる。
【0031】
(3)硬化触媒(C)
(C)成分の硬化触媒としては、オルガノシロキサン系塗料において一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、有機金属化合物が好ましく、例えば、Ti、Al、Zr、Sn等の金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属エステル化合物等が挙げられるが、有機錫化合物を含むものが好ましい。
金属アルコキシド化合物の具体例としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ-s-ブトキシド、アルミニウムトリ-t-ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート等のチタニウムアルコキシド;テトラエチルジルコネート、テトラ-n- プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-s-ブチルジルコネート、テトラ-t-ブチルジルコネート、テトラ- n-ペンチルジルコネート、テトラ-t-ペンチルジルコネート、テトラ-t-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド;ジブチルスズジブトキシド等が挙げられる。
【0032】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ-s-ブチレート、メチルアセトアセテートアルミニウム・ジ-s-ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)アルミニウム・モノ-tert-ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナト・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート等のチタニウムキレート化合物;テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(n-プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2-エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレエート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)等の錫エステル化合物などの錫キレート化合物が挙げられるが、錫キレート化合物を使用することが、形成される塗膜の耐薬品性の点から適している。
【0033】
上記錫エステル化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、ネオスタンU-100、U-130、U-200、U-220H、U-303、U-700、U-810、U-820、U-830(以上、日東化成(株)製)、BT-120S(カネカ(株)製)等が挙げられる。
【0034】
(C)成分の配合量は、組成物を硬化させるのに十分な量であればよいが、通常、(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部であり、好ましくは1~30質量部である。
なお、(C)成分の硬化触媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(4)任意成分
本発明の塗料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜に任意の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の具体例としては、溶剤、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、シランカップリング剤等の密着付与剤、非反応性高分子樹脂、充填剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、脱水剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、染料、顔料、香料、研磨剤、防錆剤、チキソトロピー付与剤等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カーボンブラック、ジルコン粉末等の着色顔料;シリカ、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、タンカル等の体質顔料;リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、亜鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、ホウ酸塩系、メタホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、;カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウムなどのカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ、カチオンをイオン交換によって結合させることにより得られるイオン交換シリカ、ピロリン酸アルミニウム、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム系化合物等の防錆顔料等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明の塗料組成物が顔料を含む場合、その含有量は、形成される塗膜の耐候性の観点から、(A)成分と(B)成分との合計固形分100質量部に対して、固形分質量で5~100質量部が好ましく、30~90質量部がより好ましい。
【0038】
(5)製造方法
本発明の塗料組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および任意成分を、常温で任意の順序で混合し、撹拌して得ることができる。
本発明の塗料組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、成形または塗布作業性を良好にし、スジムラ等の発生を抑制することを考慮すると、回転粘度計により測定される25℃での粘度が、100,000mPa・s以下が好ましく、20,000mPa・s以下がより好ましい。粘度の下限は特に限定されないが、10mPa・s以上が好ましい。
【0039】
(6)塗料組成物の硬化膜および被覆物品
本発明の塗料組成物を被塗物に塗布し、これを硬化させることで硬化膜および被覆物品が得られる。
塗布の方法に制限はなく、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手法を採用できる。
本発明の塗料組成物は、常温で硬化可能であるが、硬化促進のために必要に応じて加熱を行ってもよい。
加熱温度は40~150℃が好ましく、これにより、形成した硬化塗膜が優れた耐候性、耐熱性、耐アルカリ性を発揮することができる。
【0040】
被塗物としては、ガラスや所望により下地処理された金属素材、例えば、鋼板、亜鉛めっき、ステンレス、アルミニウム等、アルカリ性を有する基材、例えば、コンクリート、モルタル、スレート、スレート瓦等、窯業系建材、プラスチック等、およびそれらの上に古い塗膜が形成されているものが挙げられる。
【0041】
本発明の塗料組成物の用途としては、特に制限されるものではないが、橋梁、送電鉄塔、プラント、タンク等の鋼製構造物の重防食塗装用途が挙げられる。
【0042】
本発明の塗料組成物は、長期の耐候性に優れ、当該組成物単独で厳しい環境から被塗物を保護し、美観を維持する硬化膜を与えるが、必要に応じて公知の下塗りおよび/または中塗りによる層を設けてもよい。
【0043】
上記下塗り塗料としては、例えば、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、エポキシ樹脂系ガラスフレーク塗料、エポキシ樹脂被覆材料、超厚膜形エポキシ樹脂塗料、エポキシ樹脂ジンクリッチペイント、無機ジンクリッチペイント、塩化ゴム樹脂系塗料、フタル酸樹脂系塗料、エポキシエステル樹脂塗料等が挙げられ、中塗り塗料の例として、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン系塗料、エポキシ樹脂MIO塗料、フェノール樹脂系MIO塗料、塩化ゴム樹脂系塗料、フタル酸樹脂系塗料等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、HLC-8220 東ソー(株)製)を用いてテトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒として測定した値であり、不揮発分は、アルミシャーレ上で105℃、3時間加熱乾燥後の加熱残量法による測定値であり、動粘度はキャノン・フェンスケ型粘度計を用いて25℃で測定した値である。また、下記ポリシロキサンの平均単位式における各シロキサン単位の構成比は、1H-NMRおよび29Si-NMR測定の結果から算出した。
【0045】
[1]塗料組成物の製造
[実施例1-1~1-4,比較例1-1~1-8]
表1に示す組成比で下記各成分を混合し、塗料組成物(i)~(xii)を製造した。
(A)成分
(A-1):加水分解性シリル基含有アクリル樹脂(ゼムラックYC-5920、カネカ(株)製)
(A-2):加水分解性シリル基含有アクリル樹脂(ゼムラックYC-3623、カネカ(株)製)
(B)成分
(B-1):構成単位比が(R1SiO3/2)0.60(R1
2SiO2/2)0.40(R2O1/2)0.24で表され、R1がフェニル基(43%)、メチル基(57%)であり、R2がメチル基(73%)、水素原子(27%)であり、重量平均分子量1,800、不揮発分96質量%、動粘度100mm2/sのオルガノポリシロキサン
(B-2):構成単位比が(R1SiO3/2)1.00(R2O1/2)0.22で表され、R1がメチル基であり、R2がメチル基(74%)、水素原子(26%)であり、重量平均分子量1,800、不揮発分94質量%、動粘度25mm2/sのオルガノポリシロキサン
(B-3):構成単位比が(SiO4/2)1.00(R2O1/2)0.26で表され、R2がメチル基(90%)、水素原子(10%)であり、重量平均分子量1,000、不揮発分87質量%、動粘度5mm2/sのオルガノポリシロキサン
(B-4):構成単位比が(R1SiO3/2)0.50(R1
2SiO2/2)0.50(R2O1/2)0.19で表され、R1がメチル基であり、R2がメチル基(69%)、水素原子(31%)であり、重量平均分子量4,500、不揮発分87質量%、動粘度80mm2/sのオルガノポリシロキサン
(B-5):構成単位比が(R1SiO3/2)0.40(R1
2SiO2/2)0.60(R2O1/2)0.19で表され、R1がフェニル基(38%)、メチル基(62%)であり、R2がメチル基(12%)、水素原子(88%)であり、重量平均分子量2,500、不揮発分50質量%、動粘度5mm2/sであるオルガノポリシロキサン
(C)成分
有機スズ化合物系硬化触媒(BT-120S、カネカ(株)製)
〔溶剤〕
酢酸エチル/酢酸ブチル=1/1(質量比)の混合物
【0046】
【0047】
[2]被覆物品の製造および評価
[実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-8]
実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-8で得られた塗料組成物(i)~(xii)を、それぞれフローコートにより乾燥塗膜厚が30μmとなるように金属基板上に塗布し、23℃,50%RHの条件下で7日間養生して被膜を得た。
得られた被覆物品について塗膜外観、ラビング試験、鉛筆硬度、耐アルカリ試験、耐熱試験、促進耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)塗膜外観
目視にて、塗膜表面が均一で凝集物による凹凸やクラックが入っていないものを○、塗膜表面が不均一でクラックや凝集物による凹凸やクラックが発生したものを×とした。
(2)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準じて750g荷重にて測定した。
(3)ラビング試験
ベンコットM-3II(旭化成(株)製、面積4cm2)をアセトンに浸し、荷重500gfで表面を往復回数30回塗擦し、目視での塗膜外観を評価した。ラビング試験後に試験前の塗膜外観と比べ変化が見られないものを○、塗膜の剥がれや白色化が見られたものを×とした。
(4)耐アルカリ試験
耐アルカリ性試験は、JIS K5660-6-2に準じ、水酸化カルシウム飽和溶液に、試験片を23℃の条件下で7日間浸せきさせた。浸せき後、試験片を流水で静かに洗い、2時間乾燥させて、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、つやの変化を目視によって観察し、以下の3段階で評価した。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
(5)耐熱試験
耐熱試験は、200℃の乾燥機を用いて行った。試験条件としては200℃の乾燥機で24時間加熱を行った後、室温にて2時間空冷した。試験終了後、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、つやの変化を目視によって観察し、以下の3段階で評価した。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
(6)促進耐候性
促進耐候性試験は、超促進耐候試験機(岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスター)を用いて行った。また、試験片にはポリエステル塗装鋼板(0.8×70×60mm)を用いた。試験条件としては、4時間照射(紫外線照射度90mW、ブラックパネル温度63℃,70%RH)、4時間暗黒(ブラックパネル温度63℃,70%RH)、4時間結露(ブラックパネル温度30℃,90%RH)の12時間を1サイクルとし、50サイクル試験した。試験終了後、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、艶の変化を目視によって観察し、以下の3段階で評価した。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
【0048】
【0049】
表2に示されるように、実施例2-1~2-4で得られた塗膜は、耐クラック性、塗膜硬度、耐薬品性、耐アルカリ性、耐熱性、耐候性に優れていることがわかる。
一方、オルガノポリシロキサンを含まない組成物を用いた比較例2-1、2-2の塗膜および(B)成分の配合量が不足した組成物を用いた比較例2-3の塗膜は、耐アルカリ性、耐熱性、耐候性が不十分であることがわかる。また、(B)成分を過剰に含む組成物を用いた比較例2-4の塗膜は、塗膜硬度、耐薬品性、耐アルカリ性に劣り、本発明の(B)成分以外のオルガノポリシロキサンを含む組成物を用いた比較例2-5~2-8の塗膜は、ラビング試験において剥がれが見られたほか、各種塗膜性能に劣るものであることがわかる。