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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】トナー残量検出装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G03G15/08 322B
G03G15/08 343
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021036450
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136710
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】大里 侑生
(72)【発明者】
【氏名】本美 勝史
(72)【発明者】
【氏名】戸村 有佑
(72)【発明者】
【氏名】今野 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 純一
(72)【発明者】
【氏名】久保 達哉
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-34780(JP,A)
【文献】特開2018-197808(JP,A)
【文献】特開2020-20888(JP,A)
【文献】特開2020-177114(JP,A)
【文献】特開2020-118732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 15/08
G03G 15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がトナーボトルの外周面に沿う円弧形状に形成され、且つ前記トナーボトルを囲むように周方向に所定の間隔を隔てて配置された4つの電極と、
4つの前記電極を用いて、前記トナーボトル内のトナー残量を検出するコントローラとを備えるトナー残量検出装置であって、
前記コントローラは、
互いに隣接する2組の前記電極それぞれの間の静電容量値が閾値範囲に含まれるか否かを判定し、
2つの前記静電容量値の少なくとも一方が前記閾値範囲内だと判定した場合に、静電容量値に基づいて前記トナーボトル内のトナー残量を検出し、
検出したトナー残量を出力することを特徴とするトナー残量検出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
左右方向に隣接する2組の前記電極それぞれの間の静電容量値の少なくとも一方が上下閾値範囲内で、且つ上下方向に隣接する2組の前記電極それぞれの間の静電容量値の少なくとも一方が左右閾値範囲内だと判定した場合に、静電容量値に基づいて前記トナーボトル内のトナー残量を検出することを特徴とする請求項1に記載のトナー残量検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前回計測した前記静電容量値を含む所定の数値範囲を、今回計測した前記静電容量値と比較する前記閾値範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー残量検出装置。
【請求項4】
前記コントローラは、4つの前記電極を用いて計測した複数の静電容量値の代表値に基づいて、前記トナーボトル内のトナー残量を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項5】
4つの前記電極のうち、前記トナーボトルの上方において左右方向に隣接する前記電極の間隔は、その他の前記電極の間隔より狭いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー残量検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー残量検出装置と、
前記トナーボトル内のトナーを用いて媒体に画像を形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記画像形成部によるトナー消費量を積算し、
計測した2つの静電容量値の両方が前記閾値範囲外だと判定した場合に、積算したトナー消費量に基づいて前記トナーボトル内のトナー残量を検出することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー残量検出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の画像形成方式の1つとして、トナーボトルに収容されたトナーで感光体ドラムの表面に画像を現像し、感光体ドラム上に現像された画像を媒体に転写する電子写真方式が従来より知られている。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置において、トナーボトルを挟むように一対の電極を設け、トナーボトル内のトナー残量を電極間の静電容量の変化として検出し、ボトル内のトナー残量を検出する技術がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子写真方式の画像形成装置は、感光体ドラムにトナーを供給するためにトナーボトルを回転させるので、トナーボトルが回転軸線に対して偏芯することがある。その結果、トナーボトルと一対の電極との間隔が変化して、検知した静電容量に基づいてトナー残量を正確に検出することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、画像形成装置に装着されるトナーボトルのトナー残量を正確に検出することが可能なトナー残量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、各々がトナーボトルの外周面に沿う円弧形状に形成され、且つ前記トナーボトルを囲むように周方向に所定の間隔を隔てて配置された4つの電極と、4つの前記電極を用いて、前記トナーボトル内のトナー残量を検出するコントローラとを備えるトナー残量検出装置であって、前記コントローラは、互いに隣接する2組の前記電極それぞれの間の静電容量値が閾値範囲に含まれるか否かを判定し、2つの前記静電容量値の少なくとも一方が前記閾値範囲内だと判定した場合に、静電容量値に基づいて前記トナーボトル内のトナー残量を検出し、検出したトナー残量を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成装置に装着されるトナーボトルのトナー残量を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成装置の内部構成を示す概略図。
図2】画像形成装置の外観斜視図。
図3】トナーボトルを収容したトナー収容部の模式図。
図4】トナーボトル及び4つの電極の配置を示す図。
図5】画像形成装置のハードウェア構成図。
図6】コントローラの機能ブロック図。
図7】トナー残量検出処理のフローチャート。
図8】静電容量値の計測結果と、閾値範囲との関係を示す図。
図9】偏芯したトナーボトル及び電極の位置関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、画像形成装置100の内部構成を示す概略図である。図1に示すように、画像形成装置100は、給紙トレイ101と、排紙トレイ102と、搬送部110と、画像形成部120とを主に備える。給紙トレイ101には、画像が形成される前の複数の用紙Mが積層された状態で収容される。排紙トレイ102には、画像が形成された用紙Mが収容される。
【0010】
用紙Mは、搬送部110によって搬送され、画像形成部120によって画像が形成される媒体の一例である。用紙Mは、例えば、予め所定の大きさ(例えば、A4、B5など)にカットされたカット紙でもよいし、長尺帯状の連帳紙でもよい。また、用紙Mは、紙に限定されず、OHPシートなどであってもよい。また、画像形成装置100の内部には、用紙Mが搬送される空間である搬送路105が形成されている。搬送路105は、給紙トレイ101から画像形成部120を経て排紙トレイ102に至る経路である。
【0011】
搬送部110は、搬送路105に沿って用紙Mを搬送する。具体的には、搬送部110は、給紙トレイ101に収容された用紙Mを、搬送路105に沿って画像形成部120の位置まで搬送する。また、搬送部110は、画像形成部120によって表面に画像が形成された用紙Mを、搬送路105に沿って排紙トレイ102に排出する。
【0012】
搬送部110は、複数の搬送ローラ111、112を含む。搬送ローラ111、112は、例えば、モータの駆動力が伝達されて回転する駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラとで構成される。そして、駆動ローラ及び従動ローラで用紙Mを挟持して回転することによって、搬送路105に沿って用紙Mが搬送される。
【0013】
搬送ローラ111は、画像形成部120より搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ112は、画像形成部120搬送方向の下流に配置されている。但し、搬送ローラの設置位置は、図1の2箇所に限定されない。
【0014】
画像形成部120は、搬送ローラ111、112の間において、搬送路105に対面して配置されている。画像形成部120は、搬送部110によって搬送された用紙Mの表面に画像を形成する。実施形態に係る画像形成部120は、搬送路105に沿って搬送される用紙Mに、電子写真方式で画像を形成する。
【0015】
より詳細には、画像形成部120は、無端状移動手段である転写ベルト122に沿って各色の感光体ドラム121Y、121M、121C、121K(以下、これらを総称して、「感光体ドラム121」と表記する。)が並べられた構成を備える。すなわち、給紙トレイ101から給紙される用紙Mに転写するための中間転写画像が形成される転写ベルト122に沿って、この転写ベルト122の搬送方向の上流側から順に、複数の感光体ドラム121Y、121M、121C、121Kが配列されている。
【0016】
感光体ドラム121には、後述するトナーボトル130に収容されたトナーが供給される。そして、各色の感光体ドラム121の表面にトナーにより現像された各色の画像が、転写ベルト122に重ね合わせられて転写されることにより、フルカラーの画像が形成される。そして、転写ベルト122上に形成されたフルカラー画像は、搬送路105と最も接近する位置において、転写ローラ123で用紙Mに転写される。
【0017】
さらに、画像形成部120は、転写ローラ123より搬送方向の下流側に配置された定着ローラ124を含む。定着ローラ124は、モータによって駆動される駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラとを含む。そして、駆動ローラ及び従動ローラが用紙Mを挟持して回転する過程において、用紙Mを加熱したり押圧することによって、転写ローラ123によって転写された画像が用紙Mに定着する。
【0018】
図2は、画像形成装置100の外観斜視図である。図2に示すように、画像形成装置100の正面には、開閉可能なカバー103が取り付けられている。そして、カバー103を開放すると、トナーボトル130を収容するトナー収容部140が露出する。なお、図2ではトナー収容部140を1つだけ図示しているが、画像形成装置100は、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーボトル130それぞれを収容する4つのトナー収容部を備える。
【0019】
次に、図3及び図4を参照して、トナーボトル130及びトナー収容部140について詳述する。図3は、トナーボトル130を収容したトナー収容部140の模式図である。図4は、トナーボトル130及び4つの電極145、146、147、148の配置を示す図である。
【0020】
図3に示すように、トナーボトル130は、トナーを収容する円筒形状の容器本体131と、容器本体131の先端に取り付けられるキャップ132と、容器本体131の外周面に固定されたギヤ133とを主に備える。また、容器本体131は、キャップ132に対して相対回転可能に構成されている。さらに、容器本体131には、内周面から内側に突出し且つ螺旋状に延びる螺旋状突起134が形成されている。
【0021】
また、トナー収容部140は、トナーボトル130を支持する2つのガイド部141と、キャップ132に接続されてトナーボトル130内のトナーを画像形成部120に供給するホッパ142と、ギヤ133に噛合する駆動ギヤ143と、駆動ギヤ143を駆動する駆動モータ144とを主に備える。
【0022】
トナーボトル130がトナー収容部140に収容されると、容器本体131がガイド部141に支持され、キャップ132がホッパ142に接続され、ギヤ133と駆動ギヤ143とが噛合する。そして、画像形成部120が画像を形成するとき、駆動モータ144が駆動する。
【0023】
これにより、噛合した駆動ギヤ143及びギヤ133を通じて駆動モータ144の回転駆動力が容器本体131に伝達され、容器本体131がキャップ132に対して回転する。その結果、容器本体131内のトナーは、螺旋状突起134に沿ってキャップ132に向けて移動し、キャップ132及びホッパ142を通じて画像形成部120に供給される。すなわち、容器本体131内のトナーは、画像形成部120で消費されることによって、徐々に減少する。
【0024】
図4(A)に示すように、トナー収容部140は、4つの電極145、146、147、148を備える。4つの電極145~148は、導電体(例えば、鉄)の板材で形成されている。4つの電極145~148は、横断面(図3(A)のB-B断面)がトナーボトル130の外周面に沿う円弧形状である。また、4つの電極145~148は、容器本体131の軸方向に沿って延設されている。
【0025】
また、4つの電極145~148は、トナー収容部140に収容されたトナーボトル130を囲むように配置されている。本実施形態では、電極145がトナーボトルの右上隅に位置し、電極146がトナーボトルの左上隅に位置し、電極147がトナーボトルの右下隅に位置し、電極148がトナーボトルの左下隅に位置している。
【0026】
より詳細には、トナー収容部140内でトナーボトル130が偏芯していないとき、4つの電極145~148の内周面は、トナーボトル130の外周面と同心となる円の一部を構成する。すなわち、トナー収容部140内でトナーボトル130が偏芯していないとき、トナーボトル130と4つの電極145~148との距離は同一である。
【0027】
さらに、4つの電極145~148は、周方向に所定の間隔を隔てて配置されている。図4(A)の例では、電極145の左上端と電極146の右上端との間隔、電極145の右下端と電極147の右上端との間隔、電極146の左下端と電極148の左上端との間隔、電極147の左下端と電極148の右下端との間隔は、同一に設定されている。
【0028】
但し、電極145~148の形状及び配置は、図4(A)の例に限定されない。他の例として、図4(B)に示す電極145Aの左上端は、図4(A)に示す電極145の左上端より電極146Aに向けて延長されている。同様に、図4(B)に示す電極146Aの右上端は、図4(A)に示す電極146の右上端より電極145Aに向けて延長されている。その結果、電極145Aの左上端と電極146Aの右上端との間隔は、電極145A、146A、147、148の他の間隔より狭くなる。
【0029】
図5は、画像形成装置100(MFP:Multifunction Peripheral/Product/Printer)のハードウェア構成図である。図5に示されているように、画像形成装置100は、コントローラ210、近距離通信回路220、エンジン制御部230、操作パネル240、ネットワークI/F250を備えている。
【0030】
これらのうち、コントローラ210は、コンピュータの主要部であるCPU201、システムメモリ(MEM-P)202、ノースブリッジ(NB)203、サウスブリッジ(SB)204、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)206、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)207、HDDコントローラ208、及び、記憶部であるHD209を有し、NB203とASIC206との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス221で接続した構成となっている。
【0031】
これらのうち、CPU201は、画像形成装置100の全体制御を行う制御部である。NB203は、CPU201と、MEM-P202、SB204、及びAGPバス221とを接続するためのブリッジであり、MEM-P202に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0032】
MEM-P202は、コントローラ210の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM202a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM202bとからなる。なお、RAM202bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0033】
SB204は、NB203とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC206は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス221、PCIバス222、HDDコントローラ208およびMEM-C207をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC206は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC206の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C207を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、エンジン制御部230との間でPCIバス222を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC206には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0034】
MEM-C207は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD209は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD209は、CPU201の制御にしたがってHD209に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス221は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P202に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0035】
また、近距離通信回路220には、近距離通信回路220aが備わっている。近距離通信回路220は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。さらに、エンジン制御部230には、搬送部110、画像形成部120、及び4つの電極145~148が接続されている。
【0036】
コントローラ210は、エンジン制御部230を介して搬送部110及び画像形成部120を制御することによって、用紙Mに画像を形成する。また、コントローラ210は、4つの電極145~148のうち、互いに隣接する2つの電極間の静電容量値を計測し、計測した静電容量値に基づいてトナーボトル130内のトナー残量を検出する。4つの電極145~148及びコントローラ210は、トナー残量検出装置を構成する。
【0037】
操作パネル240は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部240a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル240bを備えている。
【0038】
ネットワークI/F250は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路220及びネットワークI/F250は、PCIバス222を介して、ASIC206に電気的に接続されている。コントローラ210は、ネットワークI/F250を通じて、外部装置に情報を送信し、外部装置から情報を受信することができる。
【0039】
図6は、コントローラ210の機能ブロック図である。図6に示すように、コントローラ210は、静電容量計測部261と、トナー消費量積算部262と、偏芯判定部263と、第1トナー残量検出部264と、第2トナー残量検出部265とを含む。図5に示す各機能ブロック261~265は、コントローラ210内のCPU201が、HD209に記憶されているプログラムをRAM202bに展開し、演算実行することで実現される機能部である。
【0040】
静電容量計測部261は、4つの電極145~148から選択される2つの電極の間の静電容量値を計測する。より詳細には、静電容量計測部261は、左右方向に隣接する2組の電極145、146及び電極147、148それぞれの間の静電容量値と、上下方向に隣接する2組の電極145、147及び電極146、148それぞれの間の静電容量値とを計測する。静電容量値の計測方法は一般的な方法でよいが、本実施形態では充電法(定電圧・電流を電極間に印加し、充電到達ポイントの時間と電圧・電流の関係から静電容量を測定する)により計測する。
【0041】
トナー消費量積算部262は、画像形成部120が消費したトナーの量(以下、「トナー消費量」と表記する。)を積算する。また、トナー消費量積算部262は、トナーボトル130が交換されたタイミングで、積算したトナー消費量をリセットする。トナー消費量の具体的な積算方法は特に限定されないが、例えば、駆動モータ144のロータリエンコーダから出力されるパルス信号を積算すればよい。
【0042】
偏芯判定部263は、静電容量計測部261によって計測された2つの静電容量値の少なくとも一方が閾値範囲内の場合に、トナーボトル130の偏芯量が許容範囲内だと判定する。一方、偏芯判定部263は、静電容量計測部261によって計測された2つの静電容量値の両方が閾値範囲外の場合に、トナーボトル130の偏芯量が許容範囲を超えていると判定する。
【0043】
より詳細には、偏芯判定部263は、左右方向に隣接する2組の電極145、146及び電極147、148それぞれの間の静電容量値の両方が上下閾値範囲外の場合に、図9(A)に示すように、トナーボトル130の上下方向の偏芯量が許容範囲を超えていると判定する。また、偏芯判定部263は、上下方向に隣接する2組の電極145、147及び電極146、148それぞれの間の静電容量値の両方が左右閾値範囲外の場合に、図9(B)に示すように、トナーボトル130の左右方向の偏芯量が許容範囲を超えていると判定する。
【0044】
そして、偏芯判定部263は、トナーボトル130の偏芯量が許容範囲内だと判定した場合に、第1トナー残量検出部264にトナーボトル130内のトナー残量を検出させる。一方、偏芯判定部263は、トナーボトル130の偏芯量が許容範囲を超えているとは判定した場合に、第2トナー残量検出部265にトナーボトル130内のトナー残量を検出させる。
【0045】
第1トナー残量検出部264は、静電容量計測部261によって計測された静電容量値に基づいて、トナー収容部140に収容されたトナーボトル130内のトナー残量を検出する。静電容量計測部261で静電容量値は、電極間の誘電率により変化するため、トナーボトル130内のトナー(空気に対して誘電率の高い)の量が多いほど、大きな値となる。そこで、第1トナー残量検出部264は、予めHD209(メモリ)に記憶された静電容量値とトナー残量との対応関係に基づいて、静電容量計測部261によって計測された静電容量値に対応するトナー残量を現在のトナー残量として検出する。
【0046】
第1トナー残量検出部264は、静電容量計測部261によって計測された4つの静電容量値の代表値に基づいて、トナー残量を検出する。代表値とは、例えば、4つの静電容量値の1つでもよいし、4つの静電容量値の平均値(単純平均値、重み付け平均値)、中央値、最頻値などでもよい。さらに、第1トナー残量検出部264は、トナーボトル130の偏芯を判定するための静電容量値とは別に、トナー残量を検出するための静電容量値を静電容量計測部261に計測させてもよい。
【0047】
第2トナー残量検出部265は、トナー消費量積算部262によって積算されたトナー消費量に基づいて、トナー収容部140に収容されたトナーボトル130内のトナー残量を検出する。より詳細には、第2トナー残量検出部265は、新品のトナーボトル130内のトナーの量から、トナー消費量積算部262によって現時点で積算されたトナー消費量を減じることによって、トナー残量を検出する。
【0048】
そして、第1トナー残量検出部264及び第2トナー残量検出部265は、検出したトナー残量をパネル表示部240aに表示させる。トナー残量をパネル表示部240aに表示させることは、トナー残量を出力することの一例である。但し、トナー残量を出力する具体的な方法は、前述の例に限定されず、ネットワークI/F250を通じて外部装置に送信してもよいし、トナー残量が所定の量未満の場合にスピーカから警告音を出力することでもよい。
【0049】
次に、図7図9を参照して、トナー残量検出処理を説明する。図7は、トナー残量検出処理のフローチャートである。図8は、静電容量計測部261による静電容量値の計測結果と、閾値範囲との関係を示す図である。図9は、偏芯したトナーボトル130及び電極145~148の位置関係を示す図である。
【0050】
コントローラ210は、例えば、操作パネル240bを通じてオペレータの指示に従ってトナー残量検出処理を実行してもよいし、所定の時間間隔毎にトナー残量検出処理を繰り返し実行してもよい。また、コントローラ210は、各色のトナーボトル130それぞれについて、トナー残量検出処理を実行する。しかしながら、色毎の処理は共通するので、1色の処理について説明する。
【0051】
まず、コントローラ210の静電容量計測部261は、左右方向に隣接する電極145(右上電極)及び電極146(左上電極)の間の静電容量値C1と、左右方向に隣接する電極147(右下電極)及び電極148(左下電極)の間の静電容量値C2とを計測する(S701)。
【0052】
次に、コントローラ210の偏芯判定部263は、ステップS701で計測された静電容量値C1、C2が上下閾値範囲に含まれるか否かを判定する(S702)。上下閾値範囲は、トナー収容部140に収容されたトナーボトル130の上下方向の偏芯量が、許容範囲内か否かを判定するための数値範囲である。上下閾値範囲は、上限値と下限値とで構成される数値範囲である。
【0053】
また、トナーは容器本体131の下部に溜まるので、静電容量値C2は、静電容量値C1より大きくなる傾向がある。そこで図8に示すように、静電容量値C1と比較される上下閾値範囲(第1上下閾値範囲)と、静電容量値C2と比較される上下閾値範囲(第2上下閾値範囲)とを別々の値にしてもよい。一方、図4(B)に示すように、電極145~148の間隔を変えることによって静電容量値C1、C2の差が小さくなるので、この場合は静電容量値C1、C2と比較される上下閾値範囲を同一の値にしてもよい。
【0054】
さらに、上下閾値範囲は、静電容量計測部261で前回計測された静電容量値C1、C2に基づいて決定されてもよい。例えば、偏芯判定部263は、今回計測された静電容量値C1と比較される第1上下閾値範囲を、前回計測された静電容量値C1を含む数値範囲に設定してもよい。静電容量値C1を含む数値範囲とは、例えば、静電容量値C1に±X%を乗じる(すなわち、C1±X%)ことによって得られる。
【0055】
例えば、係数X=10%とすると、0.9C1≦上下閾値範囲≦1.1C1となる。なお、係数Xは、予め定められた固定値でもよいし、静電容量値C1を前回計測してからの経過時間に伴って増加する可変値でもよい。また、第2上下閾値範囲を算出する方法も同様である。但し、閾値範囲の具体的な算出方法は、前述の例に限定されない。
【0056】
そして、図9(A)に示すようにトナーボトル130’が上方に偏芯している場合、図8の〇印で囲まれたプロットのように、静電容量値C1は第1上下閾値範囲の上限値より大きく、静電容量値C2は第2上下閾値範囲の下限値より小さくなる。一方、トナーボトル130が下方に偏芯している場合、静電容量値C1は第1上下閾値範囲の下限値より小さく、静電容量値C2は第2上下閾値範囲の上限値より大きくなる。
【0057】
次に、偏芯判定部263が静電容量値C1、C2の少なくとも一方が上下閾値範囲内だと判定した場合に(S702:Yes)、コントローラ210の静電容量計測部261は、上下方向に隣接する電極145(右上電極)及び電極147(右下電極)の間の静電容量値C3と、上下方向に隣接する電極146(左上電極)及び電極148(左下電極)の間の静電容量値C4とを計測する(S703)。
【0058】
次に、コントローラ210の偏芯判定部263は、ステップS703で計測された静電容量値C3、C4が左右閾値範囲に含まれるか否かを判定する(S704)。左右閾値範囲は、トナー収容部140に収容されたトナーボトル130の左右方向の偏芯量が、許容範囲内か否かを判定するための数値範囲である。左右閾値範囲の詳細は、前述した上下閾値範囲と共通するので、再度の説明は省略する。但し、静電容量値C3、C4と比較される左右閾値範囲は同一の値でよい。
【0059】
そして、図9(B)に示すようにトナーボトル130’’が右方に偏芯している場合、静電容量値C3は左右閾値範囲の上限値より大きく、静電容量値C4は左右閾値範囲の下限値より小さくなる。一方、トナーボトル130が左方に偏芯している場合、静電容量値C3は左右閾値範囲の下限値より小さく、静電容量値C4は左右閾値範囲の上限値より大きくなる。
【0060】
次に、偏芯判定部263が静電容量値C3、C4の少なくとも一方が左右閾値範囲内だと判定した場合に(S704:Yes)、コントローラ210の第1トナー残量検出部264は、静電容量計測部261によって計測された静電容量値に基づいてトナー残量を検出し、検出したトナー残量をパネル表示部240aに表示させる(S705)。
【0061】
一方、偏芯判定部263が静電容量値C1、C2の両方が上下閾値範囲外だと判定した場合に(S702:No)、または偏芯判定部263が静電容量値C3、C4の両方が左右閾値範囲外だと判定した場合に(S704:No)、コントローラ210の第2トナー残量検出部265は、トナー消費量積算部262によって計測されたトナー消費量に基づいてトナー残量を検出し、検出したトナー残量をパネル表示部240aに表示させる(S706)。
【0062】
上記の実施形態によれば、トナー収容部140内におけるトナーボトル130の偏芯量が許容範囲の場合に(S702:Yes&S704:Yes)、静電容量値に基づくトナー残量を検出する。一方、トナー収容部140内におけるトナーボトル130の偏芯量が許容範囲を超えた場合に(S702:No/S704:No)、静電容量値に基づくトナー残量の検出に代えて、ソフトウェア的に積算したトナー消費量に基づいてトナー残量を検出する。これにより、トナーボトル130の姿勢に拘わらず、正確なトナー残量を出力することができる。
【0063】
なお、ステップS701-S702の処理と、ステップS703-S704の処理とは、図7に示す実行順序でもよいし、逆順でもよい。また、最初に静電容量計測部261がステップS701、S703を実行し、次に偏芯判定部263がステップS702、S704を実行してもよい。
【0064】
また、上記の実施形態によれば、トナーボトル130の上下方向の偏芯量と、トナーボトル130の左右方向の偏芯量との両方が許容範囲内の場合に、静電容量値に基づいてトナー残量を検出する。これにより、トナーボトル130の偏芯をさらに正確に把握することができる。但し、ステップS701-S702の処理と、ステップS703-S704の処理とは、いずれか一方のみが実行され、他方は省略されてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態によれば、前回計測した静電容量値に基づいて、今回計測した静電容量値と比較される閾値範囲が決定される。これにより、現在のトナー残量に合わせた閾値範囲でトナーボトル130の偏芯量を判定することができる。
【0066】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
100 :画像形成装置
101 :給紙トレイ
102 :排紙トレイ
103 :カバー
105 :搬送路
110 :搬送部
111,112 :搬送ローラ
120 :画像形成部
121C,121K,121M,121Y :感光体ドラム
122 :転写ベルト
123 :転写ローラ
124 :定着ローラ
130 :トナーボトル
131 :容器本体
132 :キャップ
133 :ギヤ
134 :螺旋状突起
140 :トナー収容部
141 :ガイド部
142 :ホッパ
143 :駆動ギヤ
144 :駆動モータ
145,145A,146,146A,147,148 :電極
201 :CPU
202a :ROM
202b :RAM
206 :ASIC
208 :HDDコントローラ
209 :HD
210 :コントローラ
220 :近距離通信回路
220a :近距離通信回路
221 :AGPバス
222 :PCIバス
230 :エンジン制御部
240 :操作パネル
240a :パネル表示部
240b :操作パネル
250 :ネットワークI/F
261 :静電容量計測部
262 :トナー消費量積算部
263 :偏芯判定部
264 :第1トナー残量検出部
265 :第2トナー残量検出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特開2004-286792号公報
【文献】特開2016-71299号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9