IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08G59/00
C08J5/24 CFC
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021040342
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139803
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156566(JP,A)
【文献】特開2012-126839(JP,A)
【文献】特開2000-344844(JP,A)
【文献】特開2016-188308(JP,A)
【文献】特開平06-313028(JP,A)
【文献】国際公開第2021/010487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂硬化剤及びラジカル重合開始剤を含み、
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートが、下記(i)~(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、硬化性樹脂組成物。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、
前記ポリエーテルモノオールは、水酸基価が1.6~18.1mgKOH/gである、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、
前記ポリエーテルモノオールは、水酸基価が1.6~18.1mgKOH/gである、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、
前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価が1.6~18.1mgKOH/gである、反応生成物。
【請求項2】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、エポキシ化合物100質量部に対して0.1~25質量部である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量が3,000~30,000である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ガラス転移温度が-55℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂硬化剤が光カチオン重合開始剤であり、前記ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂硬化剤が熱カチオン重合開始剤であり、前記ラジカル重合開始剤が熱ラジカル重合開始剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
光学的立体造形用である、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を備えた物品。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含侵させた繊維基材が硬化してなる繊維強化複合材料。
【請求項11】
請求項10に記載の繊維強化複合材料を備えた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物を含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、高い寸法安定性、絶縁性、耐水性、耐薬品性等の特長を有していることから、電子素子における絶縁材料や封止材料等として汎用されており、また、塗料や接着剤、複合材料等にも利用されている。また、3Dプリンタ等を用いた光学的立体造形による成形体を得るための造形材料としても使用されている。
【0003】
一方で、エポキシ樹脂は、靭性が低く、脆性破壊を生じやすいという欠点を有している。このため、エポキシ樹脂の靭性を向上させる技術が検討されており、その一手段として、エポキシ樹脂に靭性を向上させる改質剤を添加することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に、熱硬化性エポキシ樹脂に、靭性向上剤(強化剤)として高分子量のポリプロピレングリコールを添加することが記載されている。
また、特許文献2に、エポキシ化合物及び多官能(メタ)アクリレートを含むゴム靭性化性ベース樹脂に、液状相分離靭性化剤として高分子量のポリプロピレングリコールを添加した付加造形用放射線硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/119216号
【文献】特表2019-513842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ化合物に高分子量のポリプロピレングリコールを添加したエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において、靭性の向上が認められるものの、ブリードアウトが生じやすく、特に、高温環境下において、より生じやすい傾向があった。
【0007】
したがって、靭性の向上のみならず、高温でもブリードが生じ難く、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物が得られる樹脂組成物が求められる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するものであり、高靭性であり、かつ、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物が得られる硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエーテル鎖及びウレタン結合を有する所定のウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、エポキシ樹脂の靭性を向上させることができ、かつ、優れた耐熱性を付与できることを見出したことに基づく。
【0010】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1] エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂硬化剤及びラジカル重合開始剤を含み、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートが、下記(i)~(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、硬化性樹脂組成物。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
[2] 前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、エポキシ化合物100質量部に対して0.1~25質量部である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3] 前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量が3,000~30,000である、[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ガラス転移温度が-55℃以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[5] 前記エポキシ樹脂硬化剤が光カチオン重合開始剤であり、前記ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[6] 前記エポキシ樹脂硬化剤が熱カチオン重合開始剤であり、前記ラジカル重合開始剤が熱ラジカル重合開始剤である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
[7] 光学的立体造形用である、[5]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
[8] [1]~[7]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[9] [8]に記載の硬化物を備えた物品。
[10] [1]~[6]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含侵させた繊維基材が硬化してなる繊維強化複合材料。
[11] [10]に記載の繊維強化複合材料を備えた物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高靭性であり、かつ、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物が得られる硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における用語及び表記についての定義及び意義を以下に示す。
「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の総称である。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
同様に、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「官能基数」とは、特に断りのない限り、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。「平均官能基数」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量又は数平均分子量を1単位とする1分子中の平均の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。
「1官能ウレタン(メタ)アクリレート」とは、1分子中の平均官能基数が実質的に1であるウレタン(メタ)アクリレートを意味し、1分子中の平均官能基数が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるウレタン(メタ)アクリレートを、1分子中に実質的に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート、すなわち、1官能ウレタン(メタ)アクリレートとみなす。
「等モル反応生成物」とは、反応する化合物のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3である反応生成物を、等モル反応生成物とみなす。
同様に、反応する基(又は化合物)の「モル数が等しい」とは、反応する基(又は化合物)のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるとき、反応する基(又は化合物)のモル数が等しいものとみなす。
「水酸基価」は、JIS K 1557:2007に準拠した測定により求められる。「水酸基換算分子量」は、56100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数)の式から算出した値である。
イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物との反応における「NCOインデックス」とは、水酸基含有化合物の水酸基に対するイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基の当量比を百分率で表した値である。
「分子量」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量、又は、分子量分布が存在する化合物の場合は、数平均分子量を意味する。「数平均分子量」は、標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線に基づいて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して求められたポリスチレン換算分子量である。
「硬化性樹脂を構成する単量体成分」とは、エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、及び任意に配合され得る他の単量体を言う。
【0014】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂硬化剤及びラジカル重合開始剤を含み、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートが、下記(i)~(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【0015】
上記のような硬化性樹脂組成物は、高靭性であり、かつ、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物を提供できる。
【0016】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物は、本発明の硬化性樹脂組成物の主成分であり、前記硬化性樹脂組成物を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化物が得られる。硬化性樹脂組成物中のエポキシ化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55~99質量%、さらに好ましくは60~98質量%である。
【0017】
本発明におけるエポキシ化合物としては、カチオン重合性を有し、エポキシ樹脂の公知の原料であるエポキシ化合物を用いることができる。重合性や硬化物の物性等の観点から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。
【0018】
前記エポキシ化合物としては、特表2019-513842号公報の段落[0026]~[0033]に記載されているカチオン重合性化合物を例示することができ、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ化合物;1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、取り扱い容易性等の観点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルが好ましい。
【0019】
〔1官能ウレタン(メタ)アクリレート〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含み、その(メタ)アクリロイルオキシ基により、ラジカル重合させることができる。また、1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、架橋に寄与しない柔軟なグラフト鎖を有していることにより、ガラス転移温度が低く、-20~80℃の広範な温度域での貯蔵弾性率の温度依存性が小さく、また、残留歪が小さいという特長を有している。このため、エポキシ樹脂の靭性及び耐熱性を良好に向上させることができるものと推測される。
1官能ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基は、硬化性樹脂組成物の硬化速度の観点からは、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0020】
本発明における1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、上記(i)~(iii)の反応生成物(以下、「単量体1-1」、「単量体1-2」及び「単量体1-3」とも言う。)から選ばれる1種以上の単量体である。硬化性樹脂組成物中の1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
<単量体1-1>
単量体1-1は、(i)の反応生成物であり、ポリエーテルモノオール(i-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0022】
単量体1-1としては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
式(1)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する一価の有機基である。
12は、好ましくは炭素数2~8のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~4のアルキレン基である。1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R12は、好ましくは、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上である。
【0025】
また、(OR12)は、1分子中に1個のエポキシ基及び該エポキシ基のエーテル結合以外のエーテル結合を有する単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aに基づく単位は、好ましくは、式(11)で表される単位である。単量体aは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
【化2】
【0027】
式(11)中、R101は、-R103-O-R104で表される一価の基であり、R102は、水素原子又は-R105-O-R106で表される一価の基である。R103、R105は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R104、R106は、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
103、R105のアルキレン基としては、それぞれ独立に、好ましくは、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基であり、より好ましくは、メチレン基又はエチレン基、さらに好ましくはメチレン基である。
104、R106の炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは1~14、より好ましくは1~12、さらに好ましくは2~10である。
104、R106の直鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基が挙げられ、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又はn-ブチル基である。分岐のアルキル基は、前記直鎖のアルキル基中の水素原子(ただし、末端の炭素に結合する水素原子は除く。)がアルキル基で置換された構造を有する。置換するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。分岐のアルキル基としては、好ましくは2-エチルヘキシル基である。
【0028】
単量体aとしては、好ましくは、式(12)で表される単量体である。
【化3】
【0029】
式(12)中のR101及びR102は、式(11)中のR101及びR102と同じである。
【0030】
式(12)で表される単量体としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが挙げられ、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、好ましくは、ブチルグリシジルエーテル又は2-エチルヘキシルグリシジルエーテルである。
【0031】
式(1)中、R13は、炭素数1~20のアルキル基である。R13は、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はブチル基、さらに好ましくはブチル基である。
aは、20~600の整数であり、好ましくは35~500の整数、より好ましくは65~250の整数である。
【0032】
(ポリエーテルモノオール(i-1))
単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が1個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。
【0033】
開始剤が有する活性水素含有基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミノ基が挙げられる。前記開始剤が有する活性水素含有基は、好ましくは、水酸基又はカルボキシ基、より好ましくは水酸基、さらに好ましくはアルコール性水酸基である。
【0034】
活性水素の数が1個である開始剤としては、例えば、一価アルコール、一価フェノール、一価カルボン酸、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミン化合物等が挙げられる。前記開始剤は、好ましくは、一価脂肪族アルコール又は一価脂肪族カルボン酸、より好ましくは一価脂肪族アルコールである。また、目的のポリエーテルモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤として使用してもよい。
【0035】
開始剤としての一価脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは2~8である。開始剤としての一価脂肪族アルコールの具体例としては、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール等が挙げられる。
開始剤としての一価脂肪族カルボン酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素原子を含め、好ましくは2~20、より好ましくは2~8である。
【0036】
アルキレンオキシド及び単量体aが開環重合する場合、両者の合計質量に対する単量体aの質量の割合は、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは10~80質量%である。
【0037】
前記アルキレンオキシドの炭素数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~4である。前記アルキレンオキシドの具体例としては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
【0038】
ポリエーテルモノオール(i-1)中のオキシアルキレン基は、好ましくは、オキシプロピレン基のみ、又は、オキシプロピレン基とそれ以外の基との組み合わせからなる。オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基は、好ましくはオキシエチレン基である。
ポリエーテルモノオール(i-1)中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%である。なお、開始剤が目的のポリエーテルモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
【0039】
ポリエーテルモノオール(i-1)において、低水酸基価、すなわち、高分子量のポリオキシアルキレンモノオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、好ましくは、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンモノオールが挙げられる。
オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価、例えば、水酸基価が50mgKOH/g以上のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、好ましくは、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
前記ポリエーテルモノオールにおいて、高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、水酸化カリウム等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0040】
ポリオキシアルキレンモノオールの製造において、反応系内に投入される開始剤及びアルキレンオキシドには、通常、減圧脱気等により水分を除去した水分の少ないものが使用される。通常、ポリオキシアルキレンモノオールの製造における開始剤の水分量は、少ないほど好ましく、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下である。水分量が上記範囲内であると、水から生成するポリオキシアルキレンジオールの生成量が抑制され、結果的に、ポリオキシアルキレンジオールに起因する副生成物の生成量が抑制され、得られるポリオキシアルキレンモノオールの平均水酸基数の上限を1.2以下に調整しやすい。
【0041】
単量体1-1の原料として用いるポリエーテルモノオール(i-1)の水分量は、少ないほど好ましく、ポリエーテルモノオール(i-1)に対して、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは250質量ppm以下、さらに好ましくは50~200質量ppmである。水分量が上記範囲内であると、水分とイソシアネート基含有化合物との副生物の生成が少なく、反応生成物である単量体1-1の安定性が向上する。さらに、硬化性樹脂組成物の経時的な外観の変化を抑制しやすく、また、高靭性の硬化性樹脂組成物の硬化物が得られやすい。
【0042】
ポリエーテルモノオール(i-1)の1分子中の平均の水酸基数は、好ましくは0.80~1.20、より好ましくは0.90~1.10である。
ポリエーテルモノオール(i-1)の水酸基価は、好ましくは1.6~18.1mgKOH/g、より好ましくは2.8~14.0mgKOH/g、さらに好ましくは3.1~11.2mgKOH/gである。
【0043】
単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)は、2種以上のポリエーテルモノオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテルモノオールは、好ましくは、いずれもが上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンモノオールである。
【0044】
ポリエーテルモノオール(i-1)としては、例えば、式(1a)で表されるものが挙げられる。
【0045】
【化4】
【0046】
式(1a)中、R12、R13及びaは、式(1)中の同一の記号と同じである。
【0047】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、好ましくは、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合したイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、より好ましくはイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートである。
イソシアネートアルキル基のイソシアネート基を除くアルキレン基の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。
【0048】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【化5】
【0050】
式(1b)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。
sは、1~4の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0051】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートメチルメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、「カレンズAOI(登録商標;以下、表記省略。)」、「カレンズMOI(登録商標)」(以上、昭和電工株式会社製)が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1c)で表される化合物も挙げられる。
【0053】
【化6】
【0054】
式(1c)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。
14は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
tは、1~8の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~2の整数である。
uは、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0055】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネート及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(商品名「カレンズBEI(登録商標)」、昭和電工株式会社製)が挙げられ、好ましくは1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートである。
【0056】
単量体1-1としては、例えば、ポリエーテルモノオール(i-1)がポリオキシプロピレンモノオールである場合、好ましくは、式(1-1-1)、式(1-1-2)及び式(1-1-3)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
【0057】
【化7】
【0058】
式(1-1-1)、式(1-1-2)及び式(1-1-3)中、m、n1及びn2は、それぞれ独立に、好ましくは20~600の整数、より好ましくは35~500の整数、さらに好ましくは65~250の整数である。
Buは、ブチル基である。
【0059】
<単量体1-2>
単量体1-2は、(ii)の反応生成物であり、ポリエーテルモノオール(ii-1)、ジイソシアネート(ii-2)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0060】
単量体1-2としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化8】
【0062】
式(2)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
22は、好ましくは炭素数2~8のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~4のアルキレン基である。1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R22は、好ましくは、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれ、より好ましくは、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上である。
また、(OR22)は、式(1)における(OR12)と同様に、1分子中に1個のエポキシ基及び該エポキシ基のエーテル結合以外のエーテル結合を有する単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
23は、炭素数1~20のアルキル基であり、好ましくは、炭素数2~8のアルキル基、より好ましくはブチル基である。
24は、ジイソシアネートから2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。ジイソシアネートの例は、後述する。
bは、20~600の整数であり、好ましくは35~500の整数、より好ましくは65~250の整数である。
【0063】
(ポリエーテルモノオール(ii-1))
ポリエーテルモノオール(ii-1)は、単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0064】
ポリエーテルモノオール(ii-1)としては、例えば、式(2a)で表されるものが挙げられる。
【0065】
【化9】
【0066】
式(2a)中、R22、R23及びbは、式(2)中の同一の記号と同じ意味である。
【0067】
(ジイソシアネート(ii-2))
ジイソシアネート(ii-2)は、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物である。
ジイソシアネート(ii-2)としては、無黄変性芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの各種変性体(イソシアネート基を2個有する変性体)が挙げられる。ジイソシアネートは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
ジイソシアネート(ii-2)としては、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上である。
【0068】
無黄変性芳香族ジイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート及び2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0069】
ジイソシアネート(ii-2)としては、例えば、式(2b)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化10】
【0071】
式(2b)中、R24は、式(2)中の同一の記号と同じ意味である。
上記ジイソシアネートとしては、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0072】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
イソシアネート基と反応する基としては、水酸基及び水素原子が結合した窒素原子を有するアミノ基等が挙げられる。イソシアネート基と反応する基における水酸基の数及び窒素原子に結合した水素原子の数は、好ましくは各1個である。また、イソシアネート基と反応する基としては、好ましくは、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合した水酸基である。
【0073】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレートネートが好ましく、ヒドロキシアルキル基の炭素数が8以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0074】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2c)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化11】
【0076】
式(2c)中、R21は、水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。
pは、1~4の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0077】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOP(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP-A(N)、ライトエステルHOB(N)(以上、共栄社化学株式会社製)、4-HBA(大阪有機化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0078】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2d)で表される化合物も挙げられる。
【0079】
【化12】
【0080】
式(2d)中、R21は、水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。
25は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
qは、1~8の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~2の整数である。
rは、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0081】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロパン-1-オール及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールが挙げられ、好ましくは1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールである。
【0082】
<単量体1-3>
単量体1-3は、(iii)の反応生成物であり、ポリエーテルポリオール(iii-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0083】
単量体1-3としては、式(III)で表される化合物が好ましい。
-NH-C(=O)-Z ・・・(III)
式(III)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
は、ポリエーテルポリオールにおける水酸基の1個から、水素原子の1個を除いたポリエーテルポリオールの残基である。
【0084】
単量体1-3としては、より好ましくは、式(3)で表される化合物である。
【0085】
【化13】
【0086】
式(3)中、Rは、式(III)中のRと同じである。
32は、好ましくは炭素数2~8のアルキレン基、より好ましくは炭素数2~4のアルキレン基である。1分子中に存在する複数のR32は、互いに同じであっても、異なってもよい。1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖は、ブロックでもよく、ランダムでもよい。R32は、好ましくは、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上、より好ましくは、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上である。
また、(OR32)は、式(1)における(OR12)と同様に、1分子中に1個のエポキシ基及び該エポキシ基のエーテル結合以外のエーテル結合を有する単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
cは、20~600の整数であり、好ましくは35~500の整数、より好ましくは65~250の整数である。
【0087】
(ポリエーテルポリオール(iii-1))
ポリエーテルポリオール(iii-1)は、活性水素含有基を有し、かつ活性水素の数が2個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は上記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基を有する化合物である。
【0088】
前記アルキレンオキシドは、好ましくは炭素数2~4のアルキレンオキシドである。炭素数2~4のアルキレンオキシドの具体例として、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド及び2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
また、単量体aは、好ましくは、上記式(12)で表される単量体である。式(12)で表される単量体としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが挙げられ、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、好ましくは、ブチルグリシジルエーテル又は2-エチルヘキシルグリシジルエーテルである。
【0089】
アルキレンオキシド及び単量体aが開環重合する場合、両者の合計質量に対する単量体aの質量の割合は、硬化性樹脂組成物の硬化物の靭性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは10~80質量%である。
【0090】
開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシ基及び窒素原子に結合した水素原子を有するアミノ基等が挙げられる。前記開始剤が有する活性水素含有基は、好ましくは水酸基、より好ましくはアルコール性水酸基である。
【0091】
活性水素の数が2個以上である開始剤としては、水、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸及び窒素原子に結合した水素原子を2個以上有するアミン化合物が挙げられる。前記開始剤は、好ましくは、水又は2価脂肪族アルコール、より好ましくは2価脂肪族アルコールである。また、目的ポリエーテルポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールを開始剤として使用してもよい。
【0092】
開始剤としての2価脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは2~8である。開始剤としての2価脂肪族アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングルコール等のポリプロピレングリコール及び1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0093】
ポリエーテルポリオール(iii-1)中のオキシアルキレン基は、好ましくは、オキシプロピレン基のみ、又は、オキシプロピレン基とそれ以外の基との組み合わせからなる。オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基は、好ましくは、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基から選ばれる1種以上である。ポリエーテルポリオールの中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは80~100質量%である。
なお、開始剤が目的ポリエーテルポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルポリオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
【0094】
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、低水酸基価の、すなわち高分子量の、ポリオキシアルキレンポリオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、好ましくは、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価の、例えば水酸基価が50mgKOH/g以上の、ポリオキシアルキレンポリオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、好ましくは、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、水酸化カリウム等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0095】
ポリエーテルポリオール(iii-1)の1分子中の平均の水酸基数は、好ましくは1.60~2.00、より好ましくは1.70~2.00、さらに好ましくは1.80~1.96である。1分子中の平均の水酸基数が1.60~2.00であるポリエーテルポリオールを、ポリエーテルジオールという場合がある。
ポリエーテルポリオール(iii-1)の水酸基価は、好ましくは1.6~18.1mgKOH/g、より好ましくは2.8~14mgKOH/gである。
【0096】
ポリエーテルポリオール(iii-1)は、2種以上のポリエーテルポリオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテルポリオールは、好ましくは、いずれもが上記範疇に含まれるポリエーテルポリオールである。
【0097】
ポリエーテルポリオール(iii-1)としては、例えば、式(3a)で表されるものが挙げられる。
【0098】
【化14】
【0099】
式(3a)中、R32及びcは、式(3)中の同一の記号と同じ意味である。
【0100】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、単量体1-1における(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0101】
硬化性樹脂組成物中の1官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、高靭性であり、かつ、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物を得る観点から、エポキシ化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~15質量部である。
【0102】
1官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量は、硬化性樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化物の靭性及び優れた耐熱性の観点から、好ましくは3,000~30,000、より好ましくは4,000~25,000、さらに好ましくは5,000~20,000である。2種以上の単量体(1官能ウレタン(メタ)アクリレート)が併用される場合は、それぞれの分子量が上記範囲内であることが好ましい。
【0103】
1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、高靭性であり、かつ、耐熱性に優れたエポキシ樹脂の硬化物を得る観点から、ガラス転移温度が、好ましくは-55℃以下、より好ましくは-85~-58℃、さらに好ましくは-80~-60℃である。
なお、本発明における1官能ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移温度とは、1官能ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーの動的粘弾性測定により求められた値である。具体的には実施例に記載の方法により求められる。
【0104】
〔エポキシ樹脂硬化剤〕
エポキシ樹脂硬化剤としては、公知のものを用いることができ、エポキシ化合物の種類及び硬化性樹脂組成物の硬化物の用途等に応じて、例えば、アミン類、イミダゾール類、酸無水物、カチオン重合開始剤等が挙げられる。これらのうち、良好な硬化性等の観点から、好ましくはカチオン重合開始剤が用いられる。
【0105】
カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤又は熱カチオン重合開始剤が好適に用いられる。エポキシ樹脂硬化剤が光カチオン重合開始剤である場合は、後述するラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、また、エポキシ樹脂硬化剤が熱カチオン重合開始剤である場合、ラジカル重合開始剤が熱ラジカル重合開始剤であることが好ましい。すなわち、カチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤が、ともに、光重合開始剤であるか、又は、熱重合開始剤であることが好ましい。カチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤は、重合を開始させるための吸収エネルギー源が共通していることにより、硬化性樹脂組成物の硬化物を効率的に得られる。
【0106】
光重合開始剤を用いる場合、硬化性樹脂組成物を高温にすることなく、迅速に硬化させることができ、該硬化性樹脂組成物の周辺への熱ダメージを与えることがない。光重合開始剤としては、重合反応の制御の観点から、波長380nm以下の紫外照射により使用できるものが好ましい。
一方、熱重合開始剤を用いる場合、紫外線や可視光等の照射が困難な箇所でも、加熱等により硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。熱重合開始剤としては、重合反応の制御の観点から、50~120℃の範囲内での加熱により使用できるものが好ましい。
【0107】
<光カチオン重合開始剤>
光カチオン重合開始剤は、光を吸収するカチオン部と、酸の発生源となるアニオン部とが対になった構成を有し、光酸発生剤とも呼ばれる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
これらのうち、良好な硬化性の観点から、好ましくはスルホニウム塩系化合物が用いられる。スルホニウム塩系化合物としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム塩、トリ-p-トリルスルホニウム塩等のアリールスルホニウム塩等が挙げられ、好ましくはトリアリールスルホニウム塩が用いられる。
【0109】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Y)s1B(Phf)4-s1](式中、Y:フェニル基又はビフェニリル基;Phf:水素原子の1個以上が、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる1種以上により置換されたフェニル基;s1:0~3の整数)、BF 、[(Rf)s2PF6-s2](Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基;s2:0~5の整数)、AsF 、SbF 、SbFOH等が挙げられる。
【0110】
光カチオン重合開始剤の具体例としては、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム] ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
また、例えば、商品名「CPI(登録商標;以下、表記省略。)-101A」、「CPI-100P」、「CPI-110P」、「CPI-200K」(以上、サンアプロ株式会社製)、商品名「CYRACURE UVI-6990」、「CYRACURE UVI-6992」(以上、ダウ・ケミカル社製)、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・オルネクス株式会社製)、商品名「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、アルケマ社製);商品名「イルガキュア(登録商標;以下、表記省略。) 264」(BASF社製)、商品名「CIT-1682」(日本曹達株式会社製)、商品名「PHOTOINITIATOR 2074」(ローディアジャパン株式会社製)等の市販品が好適に用いられる。
【0111】
<熱カチオン重合開始剤>
熱カチオン重合開始剤は、加熱により酸を発生して、エポキシ化合物の重合反応を開始させる化合物であり、熱を吸収するカチオン部と、酸の発生源となるアニオン部とが対になった構成を有する。
【0112】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
熱カチオン重合開始剤のカチオン部としては、例えば、4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニル-メチル-(2-メチルベンジル)スルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウムイオン、p-メトキシカルボニルオキシフェニル-ベンジル-メチルスルホニウムイオン等が挙げられる。
熱カチオン重合開始剤のアニオン部の具体例としては、上述した光カチオン重合開始剤のアニオン部と例と同様のものが挙げられる。
【0114】
熱カチオン重合開始剤の具体例としては、4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-(2-メチルベンジル)スルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、p-メトキシカルボニルオキシフェニル-ベンジル-メチルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0115】
硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、適度な硬化速度の観点から、硬化性樹脂を構成する単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部、さらに好ましくは0.1~7質量部である。
【0116】
〔ラジカル重合開始剤〕
ラジカル重合開始剤により、1官能ウレタン(メタ)アクリレートの付加重合が開始する。ラジカル重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0117】
<光ラジカル重合開始剤>
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等が挙げられる。
また、例えば、商品名「イルガキュア 184」、「イルガキュア 127」、「イルガキュア 149」、「イルガキュア 261」、「イルガキュア 369」、「イルガキュア 500」、「イルガキュア 651」、「イルガキュア 754」、「イルガキュア 784」、「イルガキュア 819」、「イルガキュア 907」、「イルガキュア 1116」、「イルガキュア 1173」、「イルガキュア 1664」、「イルガキュア 1700」、「イルガキュア 1800」、「イルガキュア 1850」、「イルガキュア 2959」、「イルガキュア 4043」、「ダロキュア(登録商標;以下、表記省略。) 1173」、「ダロキュア MBF」(以上、BASF社製)等の市販品が好適に用いられる。
【0118】
<熱ラジカル重合開始剤>
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物;ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジブチルパーオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,4-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0119】
硬化性樹脂組成物中のラジカル重合開始剤の含有量は、適度な重合速度の観点から、1官能ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~18質量部、さらに好ましくは0.1~15質量部である。また、硬化性樹脂を構成する単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001~2質量部、より好ましくは0.005~1質量部、さらに好ましくは0.01~1質量部である。
【0120】
〔他の成分〕
硬化性樹脂組成物は、良好な取り扱い性、硬化物の靭性及び耐熱性の向上等の観点から、エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂硬化剤及びラジカル重合開始剤以外に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、エポキシ化合物及び1官能ウレタン(メタ)アクリレート以外の他の単量体成分、顔料や染料等の着色剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、消泡剤、充填材等が挙げられる。硬化性樹脂組成物中のこれらの他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内の含有量で配合し得る。
なお、硬化性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよいが、乾燥性や硬化時の周辺部材の劣化抑制等の観点から、特に、立体造形用である場合等は、含まないことが好ましい。溶剤の含有量は、硬化性樹脂組成物100質量部中、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0121】
<他の単量体成分>
他の単量体成分は、エポキシ化合物及び1官能ウレタン(メタ)アクリレートと共重合する化合物であり、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
他の単量体成分としては、例えば、特表2019-513842号公報の段落[0036]~[0043]に例示されている単量体成分を任意に用いることができ、2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0122】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂硬化剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて他の成分を、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の公知の混合装置を使用して均一に混合することにより製造できる。硬化性樹脂組成物中の各配合成分は、同時に混合してもよく、逐次添加により混合してもよい。
【0123】
エポキシ樹脂硬化剤が光カチオン重合開始剤であり、ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である場合、前記硬化性樹脂組成物は、光学的立体造形用に好適に用いることができる。
【0124】
[硬化性樹脂組成物の硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の硬化性樹脂組成物に光照射又は加熱処理を施すことにより速やかに硬化し、硬化物が得られる。
【0125】
硬化性樹脂組成物に光を照射して硬化させる場合、光重合開始剤の光吸収能に応じて、光源を適宜設定することができ、例えば、紫外線発光ダイオード(LED)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置等を光源として使用できる。積算光量は、例えば、0.01~5J/cm程度とする。
光を照射した後に、さらに加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、より良好に硬化させることができる。通常、加熱温度は40~200℃程度、加熱時間は1分~15時間程度とする。また、室温(15~25℃程度)で1~48時間程度静置することでも、硬化性が良好になり得る。
【0126】
硬化性樹脂組成物に加熱処理を施して硬化させる場合、通常、加熱温度は40~250℃程度、加熱時間は5分~24時間程度とする。好ましくは、加熱温度が高い場合は加熱時間を短くし、加熱温度が低い場合は加熱時間を長くする。
【0127】
[用途]
硬化性樹脂組成物の用途としては、エポキシ樹脂の公知の用途、例えば、電子素子における絶縁材料や封止材料、接着剤、粘着剤、塗料等が挙げられる。また、3Dプリンタ等を用いた光学的立体造形による成形体を得るための造形材料にも好適に用いることができる。
硬化性樹脂組成物の硬化物を備えた物品及び硬化物の用途としては、例えば、前記塗料による硬化塗膜を備えた金属、樹脂フィルム、ガラス、紙及び木材等の各種基材;半導体素子、有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機薄膜太陽電池素子等の表面保護膜、ハードコート、防汚膜及び反射防止膜等;レンズ、プリズム、フィルター、光導波路、導光板、光拡散板、回折素子等の各種光学部材;層間絶縁体;プリント配向基板用保護絶縁膜;注型材料等が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物を含侵させた繊維基材(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等)が硬化してなる繊維強化複合材料及び繊維強化複合材料を備えた物品等も挙げられる。
このような物品及び用途において、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の優れた特性、すなわち、高靭性、かつ、優れた耐熱性を良好に発揮し得る。
【実施例
【0128】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0129】
[硬化性樹脂組成物の製造]
下記合成例及び例により、硬化性樹脂組成物を製造した。
【0130】
〔合成例1〕1官能ウレタンアクリレートの合成
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応器内に、亜鉛へキサシアノコバルテート-tert-ブチルアルコール錯体0.5g、及び開始剤であるn-ブタノール112gを入れ、窒素雰囲気下、130℃で、プロピレンオキシド(以下、「PO」と略称する。)4887gを一定の速度で投入し、中間体Aを得た。耐圧容器内に、中間体A 1148g、DMC-TBA 0.2gを入れ、窒素雰囲気下、130℃で、PO 1997g、及びエチレンオキシド(以下、「EO」と略称する。)856gを一定の速度で5.5時間かけて投入した。
耐圧反応器の内圧低下が止まったことを確認し、ポリエーテルモノオール(水酸基価5.23mgKOH/g、水酸基価換算分子量10,730、平均水酸基数1.08、EO構成単位:21質量%)を得た。
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、前記ポリエーテルモノオール296.1g、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(「カレンズAOI」、昭和電工株式会社社製)3.90g(NCOインデックス100)、及び2-エチルヘキサン酸ビスマスの25質量%トルエン溶液0.024gを入れ、70℃で3時間撹拌して、1官能ウレタンアクリレート(数平均分子量16,230、ガラス転移温度-74℃)を得た。
【0131】
なお、得られた1官能ウレタンアクリレートの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記の測定条件で測定した。
<測定条件>
・使用機器:「HLC-8120GPC」、東ソー株式会社製
・使用カラム:下記の2種のカラムを順に直列で連結
「TSKgel(登録商標) G7000HXL」、東ソー株式会社製、1本
「TSKgel(登録商標) GMHXL」、東ソー株式会社製、2本
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.8mL/分
・試料濃度:0.5質量%
・試料注入量:100μL
・標準試料:ポリスチレン
【0132】
また、1官能ウレタンアクリレートのガラス転移温度は、以下のようにして、動的粘弾性測定により求めた。
1官能ウレタンアクリレート100質量部に、光ラジカル重合開始剤(「イルガキュア 819」、BASF社製)0.3質量部を加えて遊星式撹拌機で混合した。得られた混合液を、窒素ガス雰囲気下、コンベア型UV照射機(株式会社オーク製作所製;水銀キセノンランプ、照度100mW/cm、積算光量3J/cm)を用いて、1官能ウレタンアクリレートの硬化物試料(ホモポリマー;長さ15mm、幅5mm、厚さ2mm)を得た。
硬化物試料について、動的粘弾性測定装置(「EXSTAR TMA/SS6100」、セイコーインストルメンツ株式会社製;引張モード、温度範囲:-80~130℃、昇温速度:3℃/min、測定周波数:1Hz)にて、損失弾性率を測定し、ピークにおける温度をガラス転移温度とした。
【0133】
〔例1~5〕硬化性樹脂組成物の製造
表1に示す配合組成で各成分を配合し、硬化性樹脂組成物を製造した。例1及び2は実施例であり、例3~5は比較例である。
各成分の詳細は、以下のとおりである。
・エポキシ化合物:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
・1官能ウレタンアクリレート:合成例1で製造したもの
・ポリエーテルポリオール:ポリプロピレングリコール;「プレミノール(登録商標) S4011」、AGC株式会社製;水酸基価換算分子量10,190
・エポキシ樹脂硬化剤:パーフルオロアルキル基を有する特殊リン系アニオンのトリアリールスルホニウム塩;「CPI-200K」、サンアプロ株式会社製;光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)、50質量%プロピレンカーボネート溶液
・ラジカル重合開始剤:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン;「イルガキュア 1173」、BASF社製;光ラジカル重合開始剤
【0134】
[評価]
例1~5で製造した各硬化性樹脂組成物を用いて試験体を作製し、下記の各試験による評価を行った。表1に評価結果を示す。
〔試験体の作製〕
ポリエチレンフィルムを貼り付けた型に、硬化性樹脂組成物を流し込み、ポリエチレンフィルムを貼り付けたガラス板のポリエチレンフィルム側を硬化性樹脂組成物に接するように重ね合わせた。窒素ガス雰囲気下、コンベア型UV照射機(株式会社オーク製作所製;水銀キセノンランプ、照度100mW/cm、積算光量3J/cm)にて、ガラス板側から紫外線を照射し、12時間静置後、両面のポリエチレンフィルムを剥がし、長さ90mm、幅5mm、厚さ200μmの硬化性樹脂組成物の硬化物の試験体を得た。
【0135】
〔引張試験〕
引張試験機(テンシロン万能試験機「RTG-1310」、株式会社エー・アンド・デイ製;引張速度300mm/分、チャック間距離20mm)にて、試験体の引張試験を行い、引張強度(TS)及び破断伸びを測定した。引張強度が大きく、破断伸びが大きいほど、高靭性であると言える。
【0136】
〔耐熱試験〕
試験体を恒温恒湿槽(80℃、1%RH)内に48時間静置した後、試験体の表面におけるブリードアウトの有無を目視観察で確認した。ブリードアウトが生じていなければ、耐熱性に優れていると言える。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示した評価結果から、1官能ウレタンアクリレートを配合した硬化性樹脂組成物(例1及び2)は、未配合の場合(例3)に比べて、硬化体の引張強度及び破断伸びが増大し、かつ、80℃の高温下でもブリードアウトは見られず、靭性が向上し、耐熱性にも優れていることが認められた。一方、ポリエーテルポリオールを配合した硬化性樹脂組成物(例4及び5)は、未配合の場合(例3)よりも、硬化体の引張強度及び破断伸びが低下し、80℃の高温下でブリードアウトが生じ、耐熱性に劣っていた。