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特許7548218光軟化性樹脂組成物、光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにパターン膜及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】光軟化性樹脂組成物、光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにパターン膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20240903BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240903BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20240903BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240903BHJP
   G03F 7/028 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L101/02
C08G18/38 055
C08G75/045
G03F7/004 501
G03F7/004 502
G03F7/028
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021513653
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2020015745
(87)【国際公開番号】W WO2020209268
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019075721
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 博司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】熊木 尚
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-164825(JP,A)
【文献】特開昭55-156940(JP,A)
【文献】特開平02-111950(JP,A)
【文献】特開平11-038621(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030198(WO,A1)
【文献】特開平06-123973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
G03F7/004-7/04
G03F7/06
G03F7/075-7/115
G03F7/16-7/18
C09D1/00-201/10
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジスルフィド結合を有する化合物と、
ラジカル捕捉剤と、
を含有
前記ジスルフィド結合を有する化合物が、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体単位、及び、前記官能基と反応可能な置換基を有する単量体単位を含む共重合体であり、
前記官能基が、チオール基であり、
前記置換基が、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、光軟化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光軟化性樹脂組成物を光照射し、前記光軟化性樹脂組成物の軟化物を得る工程を備える、光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法。
【請求項3】
ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体と、
前記官能基と反応可能な置換基を有する単量体と、
ラジカル捕捉剤と、
を含有
前記官能基が、チオール基であり、
前記置換基が、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化触媒をさらに含有する、請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
パターンを有し、請求項1に記載の光軟化性樹脂組成物又は請求項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン膜。
【請求項7】
請求項1に記載の光軟化性樹脂組成物又は請求項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物の少なくとも一部に光照射することによってパターニングするパターニング工程と、
パターニングされた前記光軟化性樹脂組成物又は前記硬化性樹脂組成物の硬化物を現像する現像工程と、
を備える、パターン膜の製造方法。
【請求項8】
前記現像工程が、水洗することによって現像する工程を含む、請求項に記載のパターン膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軟化性樹脂組成物、光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにパターン膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって軟化する光軟化性樹脂組成物は、様々な用途に用いられている。例えば、特許文献1には、光軟化性樹脂組成物からなる光軟化性樹脂を有する記録部材を備える画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-190883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な光軟化性樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、光軟化性樹脂組成物を提供する。当該光軟化性樹脂組成物は、ジスルフィド結合を有する化合物と、ラジカル捕捉剤とを含有する。このような光軟化性樹脂組成物を光照射すると、ジスルフィド結合を有する化合物におけるジスルフィド結合が分解(開裂)し、チイルラジカルが発生する。このとき、光軟化性樹脂組成物中に、ラジカル捕捉剤が存在すると、チイルラジカルとラジカル捕捉剤とが反応する。これによって、ジスルフィド結合を有する化合物が低分子量化して、光軟化性樹脂組成物が軟化することが推測される。この反応は不可逆反応であるといえる。ラジカル捕捉剤が水素供与体である場合、光軟化性樹脂組成物の軟化物中の主成分は、チイルラジカルが水素供与体から水素を引き抜くことによって生成するチオール(SH)基を有する化合物であることが推測される。一方で、ラジカル捕捉剤が光ラジカル開始剤である場合、光ラジカル開始剤に起因する光誘起ラジカルがジスルフィド結合と直接反応し、光誘起ラジカル-チオエーテル結合の形成とチイルラジカルの生成とが起こり、チイルラジカルと別の光誘起ラジカルとが反応するという、ジスルフィド結合を有する化合物自体が低分子量化する開裂工程を経由しない反応機構も想定される。
【0006】
ジスルフィド結合を有する化合物は、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体単位、及び、官能基と反応可能な置換基を有する単量体単位を含む共重合体であってよい。このような共重合体は、通常、25℃において、固体(固形分)であることから、光軟化性樹脂組成物(のワニス)における溶剤等の揮発成分を除去することによって、フィルム状、ブロック状等の形態で使用することができる。
【0007】
光軟化性樹脂組成物は、増感剤をさらに含有していてもよい。
【0008】
本発明の他の一側面は、光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法に関する。当該軟化物の製造方法は、上記の光軟化性樹脂組成物を光照射し、光軟化性樹脂組成物の軟化物を得る工程を備える。
【0009】
本発明の他の一側面は、硬化性樹脂組成物に関する。当該硬化性樹脂組成物は、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体と、官能基と反応可能な置換基を有する単量体と、ラジカル捕捉剤とを含有する。このような硬化性樹脂組成物は、光照射以外の手法(例えば、加熱等)で、これらの単量体が反応して高分子量化することによって硬化物が形成され得る。得られる硬化物は、フィルム状、ブロック状等の形態で使用することができる。
【0010】
硬化性樹脂組成物は、硬化触媒をさらに含有していてもよい。また、硬化性樹脂組成物は、増感剤をさらに含有していてもよい。
【0011】
本発明の他の一側面は、上記の硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。硬化性樹脂組成物の硬化は、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体と官能基と反応可能な置換基を有する単量体とが反応して高分子量化することによって進行する。当該硬化物は、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体単位、及び、官能基と反応可能な置換基を有する単量体単位を含む共重合体、すなわち、ジスルフィド結合を有する化合物と、ラジカル捕捉剤とを含有している。すなわち、当該硬化物は、上記の光軟化性樹脂組成物の一態様である。そのため、当該硬化物は、光照射によって軟化させることができる。
【0012】
本発明の他の一側面は、パターン膜に関する。当該パターン膜は、パターンを有し、上記の光軟化性樹脂組成物又は上記の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0013】
本発明の他の一側面は、パターン膜の製造方法に関する。当該パターン膜の製造方法は、上記の光軟化性樹脂組成物又は上記の硬化性樹脂組成物の硬化物の少なくとも一部に光照射することによってパターニングするパターニング工程と、パターニングされた光軟化性樹脂組成物又は硬化性樹脂組成物の硬化物を現像する現像工程とを備える。現像工程は、水洗することによって現像する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規な光軟化性樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、このような光軟化性樹脂組成物を用いた光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、新規な硬化性樹脂組成物及びその硬化物が提供される。また、本発明によれば、このような硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いたパターン膜及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の光軟化性樹脂フィルムの光照射時間に対する25℃の弾性率及び損失正接(tanδ)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、「光軟化性樹脂組成物」は、光照射によって軟化する(例えば、弾性率が低下する、損失正接(tanδ)が上昇する、硬度が低下する等)性質を有する樹脂組成物を意味する。本明細書において、「光軟化性樹脂組成物の軟化物」は、光照射前の光軟化性樹脂組成物を基準として、弾性率が低下した状態のもの、損失正接(tanδ)が上昇した状態のもの、硬度が低下した状態のもの等を意味する。
【0018】
また、本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0019】
また、本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0021】
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、その他の類似表現も同様である。「A又はB」とは、AとBとのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0022】
[光軟化性樹脂組成物]
一実施形態の光軟化性樹脂組成物は、ジスルフィド結合を有する化合物(以下、(A)成分という場合がある。)と、ラジカル捕捉剤(以下、(B)成分という場合がある。)とを含有する。
【0023】
(A)成分:ジスルフィド結合を有する化合物
(A)成分は、光照射によってチイルラジカルを発生することが可能なジスルフィド結合を有する。(A)成分は、ジスルフィド結合(-S-S-)を有する化合物であれば特に制限されないが、(A)成分が光照射によって低分子量化することから、ポリマー又はオリゴマーの高分子量成分であってよい。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A)成分は、複数(2個以上)のジスルフィド結合を有していることが好ましい。
【0024】
(A)成分は、例えば、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体(以下、「(A-1)成分」という場合がある。)と、官能基と反応可能な置換基を有する単量体(以下、「(A-2)成分」という場合がある。)とを反応させることによって得られる共重合体、言い換えると、(A-1)成分と(A-2)成分との反応物、すなわち、(A-1)成分の単量体単位及び(A-2)成分の単量体単位を含む共重合体であってよい。
【0025】
(A-1)成分における官能基としては、例えば、チオール基、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。(A-1)成分における官能基は、例えば、チオール基、カルボキシ基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。(A-1)成分の官能基数は、高分子量化の観点から、2個以上であってよい。一方で、(A)成分の架橋度が少なくなるほど、光軟化性樹脂組成物を光照射したときに液状(液体)まで軟化させ易くなる傾向にあることから、(A-1)成分として、官能基数が2個である単量体を使用することが好ましく、官能基数の異なる複数の単量体を使用する場合は、官能基数が2個である単量体の使用割合を多くすることが好ましい。官能基数が2個である単量体の割合は、(A-1)成分全量を基準として、75~100質量%、85~100質量%、又は90~100質量%であってよい。官能基数が3個以上である単量体の割合が、(A-1)成分全量を基準として、0~10質量%、0~15質量%、又は0~25質量%であってよい。
【0026】
(A-1)成分の市販品としては、例えば、チオコールLPシリーズ(ポリサルファイドポリマー、東レ・ファインケミカル株式会社製)、3,3’-ジチオジプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)、ジチオジエタノール(東京化成工業株式会社製)等が挙げられる。これらの(A-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(A-2)成分は、官能基と反応可能な置換基を有する単量体であり、官能基と反応可能な置換基を有しているのであれば特に制限されずに使用することができる。置換基は、環状エーテルを含む基(例えば、グリシジル基等)、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アルデヒド基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基等が挙げられる。(A-2)成分における置換基は、例えば、環状エーテルを含む基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。(A-2)成分における置換基数は、高分子量化の観点から、2個以上であってよい。一方で、(A)成分の架橋度が少なくなるほど、光軟化性樹脂組成物を光照射したときに液状(液体)まで軟化させ易くなる傾向にあることから、(A-2)成分として、置換基数が2個である単量体を使用することが好ましく、置換基数の異なる複数の単量体を使用する場合は、置換基数が2個である単量体の使用割合を多くすることが好ましい。
【0028】
(A-2)成分の一態様において、置換基数が3個以上である単量体の割合は、(A-2)成分全量を基準として、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよく、90質量%以下又は75質量%以下であってよい。置換基数が2個である単量体の割合は、(A-2)成分全量を基準として、10質量%以上又は25質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0029】
(A-2)成分の他の一態様において、置換基数が2個である単量体の割合は、(A-2)成分全量を基準として、75~100質量%、85~100質量%、又は90~100質量%であってよい。置換基数が3個以上である単量体の割合が、(A-2)成分全量を基準として、0~10質量%、0~15質量%、又は0~25質量%であってよい。
【0030】
(A-2)成分としては、例えば、1分子中に2個以上の環状エーテルを含む基を有する単量体;1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する単量体;1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;1分子中に2個以上のアミノ基を有する単量体、1分子中にイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体;1分子中に環状エーテルを含む基及びアルコキシリル基を2個以上有する単量体;1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物又は1分子中に2個以上の環状エーテルを含む基を有する化合物と、1分子中にアミノ基、酸無水物骨格、又はチオール基、及び、アルコキシリル基を有する化合物との組み合わせである単量体;1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、1分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物との組み合わせである単量体;1分子中に2個以上の環状エーテルを含む基を有する化合物と、1分子中にカルボキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物との組み合わせである単量体等が挙げられる。これらの(A-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(A-1)成分と(A-2)成分との好適な組み合わせとしては、例えば、ジスルフィド結合を有しかつチオール基又は水酸基を有する単量体と、1分子中に2個以上の環状エーテルを含む基を有する単量体、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種との組み合わせ;ジスルフィド結合を有しかつカルボキシ基を有する単量体と、1分子中に2個以上の環状エーテルを含む基を有する単量体、1分子中に2個以上のアミノ基を有する単量体、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種との組み合わせ等が挙げられる。
【0032】
(A-1)成分と(A-2)成分とを反応させて(A)成分である共重合体を得る場合、これらの成分の反応割合は、(A-1)成分の官能基当量及び(A-2)成分の置換基当量に基づき、適宜調整することができる。(A-1)成分と(A-2)成分との反応は、加熱しながら行ってもよい。反応温度は、例えば、0~200℃であってよく、反応時間は、例えば、0.1~240時間であってよい。
【0033】
(A-1)成分と(A-2)成分とを反応させる場合、必要に応じて、硬化触媒(以下、「(A-3)成分」という場合がある。)を用いてもよい。(A-3)成分は、(A-1)成分の官能基の種類及び(A-2)成分の置換基の種類に合わせて、任意に選択することができる。(A-1)成分として、チオール基又は水酸基を官能基として有する単量体と、(A-2)成分として、イソシアネート基又は(メタ)アクリロイル基を置換基として有する単量体とを反応させる場合、(A-3)成分は、例えば、錫系触媒又はアミン系触媒であってよい。(A-1)成分として、カルボキシ基を官能基として有する単量体と、(A-2)成分として、環状エーテルを含む基を置換基として有する単量体とを反応させる場合、(A-3)成分は、例えば、アミン系触媒又はリン系触媒であってよい。
【0034】
錫系触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0035】
アミン系触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)等が挙げられる。
【0036】
リン系触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン及びその付加反応物、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
【0037】
(A-3)成分の含有量は、(A-1)成分及び(A-2)成分の合計を基準として、0.005~10質量%、0.01~5質量%、又は0.02~3質量%であってよい。
【0038】
(A)成分の分子量又は重量平均分子量は、200~10000000、1000~2000000、又は2500~1000000であってよい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0039】
(A)成分((A-1)成分及び(A-2)成分の合計)の含有量は、光軟化性樹脂組成物全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよく、99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0040】
(B)成分:ラジカル捕捉剤
(B)成分は、(A)成分の光照射によって発生するチイルラジカルと反応する成分である。このような(B)成分としては、例えば、光照射によってチイルラジカルと反応するラジカルを発生する化合物(例えば、光ラジカル重合開始剤等)等が挙げられる。(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤、水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤;α-ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤;アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;オキシムケトン系光ラジカル重合開始剤;アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤;チタノセン系光ラジカル重合開始剤;チオ安息香酸S-フェニル重合開始剤;これらの高分子量誘導体等が挙げられる。水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アントラキノン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。(B)成分が光ラジカル重合開始剤を含むと、(A)成分のスルフィド結合の切断を促進し、チイルラジカルを発生し易くなる傾向にある。
【0042】
光ラジカル重合開始剤以外の(B)成分としては、例えば、スピン捕捉剤、酸化防止剤、重合禁止剤、水素供与体等が挙げられる。
【0043】
スピン捕捉剤としては、例えば、PBN(N-t-ブチル-α-フェニルニトロン)、DMPO(5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド)等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0045】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ピロガロール等のキノン類などが挙げられる。
【0046】
水素供与体としては、例えば、ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、N-フェニルグリシン、ロイコクリスタルバイオレット、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0047】
(B)成分の含有量は、光軟化性樹脂組成物全量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよい。(B)成分の含有量が多くなるほど、光軟化性樹脂組成物を光照射したときに液状(液体)まで軟化させ易くなる傾向にある。(B)成分の含有量は、光軟化性樹脂組成物全量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0048】
光軟化性樹脂組成物は、さらに増感剤(以下、「(C)成分」という場合がある。)を含有していてもよい。
【0049】
(C)成分:増感剤
増感剤は、特に制限されず、公知の三重項増感剤を用いることができる。増感剤としては、例えば、安息香酸系光増感剤、アミン系光増感剤等が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(C)成分の含有量は、光軟化性樹脂組成物全量を基準として、0.1~10質量%、0.5~8質量%、又は1~5質量%であってよい。
【0051】
光軟化性樹脂組成物は、その他の成分として、例えば、カップリング剤等の密着性向上剤、重合禁止剤、光安定剤、消泡剤、フィラー、連鎖移動剤、チキソトロピー付与剤、難燃剤、離型剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、公知のものを使用することができる。その他の成分の含有量の総量は、光軟化性樹脂組成物全量を基準として、0~95質量%、0.01~50質量%、又は0.1~10質量%であってよい。
【0052】
光軟化性樹脂組成物は、溶剤(以下、「(D)成分」という場合がある。)で希釈された光軟化性樹脂組成物のワニスとして用いてもよい。(D)成分としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサン等の環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミドなどが挙げられる。(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0054】
光軟化性樹脂組成物は、例えば、(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて添加される成分を混合又は混練することによって調製することができる。混合及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル、ビーズミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0055】
(A)成分が、(A-1)成分の単量体単位及び(A-2)成分の単量体単位を含む共重合体である場合、光軟化性樹脂組成物は、例えば、(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分、及び(A-3)成分、並びに必要に応じて添加される成分を混合又は混練し、(A-1)成分と(A-2)成分と反応させて(A)成分((A-1)成分と(A-2)成分との反応物)を合成する工程を備える方法によって調製することができる。このような方法において、反応温度は、例えば、0~200℃であってよく、反応時間は、例えば、0.1~240時間であってよい。このとき、(A-3)成分の種類によっては、(B)成分によって失活してしまう場合がある。そのため、光軟化性樹脂組成物は、例えば、(A-1)成分、(A-2)成分、及び(A-3)成分、並びに必要に応じて添加される成分を混合又は混練して、(A)成分((A-1)成分と(A-2)成分との反応物)を含む混合物を得る第1の工程と、当該混合物に(B)成分を添加し、混合又は混練して光軟化性樹脂組成物を得る第2の工程とを備える方法によっても調製することができる。この場合、混合物は溶剤を含んでいることが好ましい。このような方法において、第1の工程及び第2の工程における反応温度は、例えば、いずれも0~200℃であってよく、反応時間は、例えば、いずれも0.1~240時間であってよい。
【0056】
光軟化性樹脂組成物は、フィルム状に形成して、光軟化性樹脂フィルムとして用いることができる。また、ブロック状に形成して、光軟化性樹脂ブロックとして用いることができる。光軟化性樹脂組成物をフィルム状又はブロック状に形成する方法は、特に制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0057】
光軟化性樹脂組成物(後述の硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃の貯蔵弾性率は、微粘着性又は無粘着性、増粘性、スリット加工性、打ち抜き加工性、遮蔽性等の観点から、0.01MPa(10000Pa)以上であってよく、バリア性、防湿性、接着性等の観点から、0.05MPa(50000Pa)以上であってもよく、作業性等の観点から1MPa(1000000Pa)以上であってもよい。光軟化性樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率は、特に制限されないが、例えば、1000MPa以下であってもよい。本明細書において、25℃の貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定される値を意味する。
【0058】
光軟化性樹脂組成物(後述の硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃の損失正接(tanδ)は、微粘着性又は無粘着性、増粘性、スリット加工性、打ち抜き加工性、作業性等の観点から1.2以下、1.1以下、又は1.0以下であってよい。本明細書において、25℃の貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定される値を意味する。
【0059】
光軟化性樹脂組成物(後述の硬化性樹脂組成物の硬化物)の硬さ(タイプE)は、微粘着性又は無粘着性、増粘性、スリット加工性、打ち抜き加工性、遮蔽性等の観点からE10以上であってよく、バリア性、防湿性、接着性等の観点からE20以上であってもよく、作業性等の観点からE40以上であってもよい。本明細書において、硬さは、実施例に記載の方法で測定される値を意味する。
【0060】
光照射前の光軟化性樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率に対する光照射後の光軟化性樹脂組成物(すなわち、光軟化性樹脂組成物の軟化物)の25℃の貯蔵弾性率の割合(光照射後の光軟化性樹脂組成物/光照射前の光軟化性樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率))は、折り曲げ性、成形性、耐応力性、防湿性、リペア性等の観点から、0.7以下であってよく、濡れ性、埋込性、粘着性、リペア性等の観点から、0.5以下であってもよく、融解性、溶解性、流動性等の観点から、0.3以下であってもよい。
【0061】
光照射前の光軟化性樹脂組成物の25℃の損失正接(tanδ)に対する光照射後の光軟化性樹脂組成物(すなわち、光軟化性樹脂組成物の軟化物)の25℃の損失正接(tanδ)の割合(光照射後の光軟化性樹脂組成物の25℃の損失正接/光照射前の光軟化性樹脂組成物の25℃の損失正接)は、微粘着性又は無粘着性、増粘性、スリット加工性、打ち抜き加工性、作業性等の観点から、1.1以上、1.2以上、又は1.3以上であってよい。
【0062】
光照射後の光軟化性樹脂組成物(後述の硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃における粘度は、濡れ性、埋込性、粘着性、リペア性等の観点から、1000000mPa・s(1000Pa・s)以下であってよく、融解性、溶解性、流動性等の観点から、100000mPa・s(100Pa・s)以下であってもよい。本明細書において、25℃における粘度は、実施例に記載の方法で測定される値を意味する。
【0063】
本実施形態の光軟化性樹脂組成物は、光照射によって、(A)成分中のジスルフィド結合(-S-S-)が切断され、ジスルフィド結合を有する化合物が低分子量化して軟化する性質を有している。本実施形態の光軟化性樹脂組成物は、液体(液状)まで軟化させること可能である。また、本実施形態の光軟化性樹脂組成物は、フィルム状又はブロック状に成形し易いという性質を有している。このような性質を利用することによって、本実施形態の光軟化性樹脂組成物は、例えば、フォトリソグラフィーのフォトレジスト剤の用途に応用することができ、感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムとして使用することができる。感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムは、光照射(露光)によってパターニングが可能となり、さらには光照射(露光)後に水洗で現像が可能となる。本実施形態の光軟化性樹脂組成物は、パターン膜の形成に好適に用いることができる。
【0064】
本実施形態の光軟化性樹脂組成物はまた、例えば、強粘着テープの軟化剤又は易剥離化剤;微粘着又は無粘着フィルムの粘着化剤;コーティング材、粘着剤、又は接着剤の部分軟化剤;成形材の部分軟化剤;打ち抜き後、光照射することで得られる打ち抜き加工可能な超低弾性フィルム;防湿剤;光照射によって軟化、溶解するカプセルの被膜;光照射によって減粘する増粘剤等の様々な用途に応用することができる。
【0065】
[光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法]
一実施形態の光軟化性樹脂組成物の軟化物の製造方法は、上述の光軟化性樹脂組成物を光照射し、光軟化性樹脂組成物の軟化物を得る工程を備える。
【0066】
光照射における光は、特に制限されないが、例えば、紫外光又は可視光であってよい。光照射における光の波長は、150~830nmであってよい。光照射は、例えば、光照射装置を用いて、照射量100mJ/cm以上の条件で行うことができる。なお、照射量とは、照度と照射時間(秒)との積を意味する。また、紫外光又は可視光照射用の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等が挙げられる。光照射は、光軟化性樹脂組成物に対して直接行ってもよく、ガラス等を介して行ってもよい。
【0067】
光軟化性樹脂組成物の光照射は、加熱しながら行ってもよい。加熱条件は、例えば、40~200℃であってよい。
【0068】
[硬化性樹脂組成物及びその硬化物]
一実施形態の硬化性樹脂組成物は、(A-1)成分と、(A-2)成分と、(B)成分とを含有する。本実施形態の硬化性樹脂組成物は、光照射以外の手法(例えば、加熱等)で、(A-1)成分と(A-2)成分とが反応して高分子量化することによって硬化物が形成され得る。(A-1)成分と(A-2)成分との反応を加熱して行う場合、加熱温度は、例えば、40~200℃であってよく、加熱時間は、例えば、0.1~48時間であってよい。得られる硬化物は、フィルム等の形態で使用することができ、これらは、接着剤、コーティング材等の用途で使用することができる。また、得られる硬化物は、(A-1)成分の単量体単位及び(A-2)成分の単量体単位を含む共重合体(すなわち、(A)成分)と、(B)成分とを含有している。すなわち、当該硬化物は、上記の光軟化性樹脂組成物の一態様である。そのため、当該硬化物は、光照射によって軟化させることができる。
【0069】
硬化性樹脂組成物は、硬化触媒をさらに含有していてもよい。また、硬化性樹脂組成物は、増感剤、その他の成分、溶剤等をさらに含有していてもよい。硬化性樹脂組成物に含有される各成分の種類、含有量は、光軟化性樹脂組成物に含有される各成分の種類、含有量と同様である。したがって、重複する記載については省略する。なお、(A)成分の含有量は、(A-1)成分及び(A-2)成分の合計の含有量に対応する。
【0070】
一実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物は、上記の光軟化性樹脂組成物の一態様である。そのため、硬化性樹脂組成物の硬化物は、光照射によって、軟化する性質を有している。本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物は、液体(液状)まで軟化させること可能である。また、本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物は、フィルム状又はブロック状に成形し易いという性質を有している。このような性質を利用することによって、フォトリソグラフィーのフォトレジスト剤の用途に応用することができ、感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムとして使用することができる。感光性樹脂組成物又は感光性樹脂フィルムは、光照射(露光)によってパターニングが可能となり、さらには光照射(露光)後に水洗で現像が可能となる。また、本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物は、上記光軟化性樹脂組成物に例示される様々な用途に用いることができる。
【0071】
[パターン膜及びその製造方法]
一実施形態のパターン膜は、パターンを有し、上記の光軟化性樹脂組成物又は上記の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。上記の光軟化性樹脂組成物又は上記の硬化性樹脂組成物の硬化物は、光照射(露光)によってパターニングが可能であり、さらには光照射(露光)後に水洗で現像が可能であることから、これらを用いて、パターン膜を形成することが可能となる。
【0072】
一実施形態のパターン膜の製造方法は、上記の光軟化性樹脂組成物又は上記の硬化性樹脂組成物の硬化物の少なくとも一部に光照射(露光)することによってパターニングするパターニング工程と、パターニングされた光軟化性樹脂組成物又は硬化性樹脂組成物の硬化物を現像する現像工程とを備える。現像工程は、水洗することによって現像する工程を含んでいてもよい。
【実施例
【0073】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
[硬化性樹脂組成物の調製]
(A-1)成分として、チオコールLP-55(チオール基数:2、東レ・ファインケミカル株式会社製)100質量部、(A-2)成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート基数:2、日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:ミリオネートMT)6.3質量部、並びに(B)成分として、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製、商品名:Omnirad TPO)10質量部及び2-イソプロピルチオキサントン(東京化成工業株式会社製)5質量部を均一に混合して、さらに、撹拌しながら減圧下で1時間脱水した。その後、窒素で常圧に戻し、(A-3)成分として、ジブチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル株式会社製、商品名:LL-101)0.02質量部を加えて均一に混合することによって、硬化性樹脂組成物を得た。
【0075】
[評価サンプル(光軟化性樹脂組成物)の作製]
厚みが50μmの離型ポリエチレンテレフタラート(PET)(藤森工業株式会社製、商品名:BD-50)を2枚用意した。上記で作製した硬化性樹脂組成物を2枚の離型PETを用いて、硬化性樹脂組成物の厚みが300μmとなるように挟み込むことによって、積層体を作製した。得られた積層体を85℃で12時間加熱し、硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、光軟化性樹脂フィルム(硬化性樹脂組成物の硬化物フィルム)である評価サンプルを得た。
【0076】
[評価サンプルの評価]
粘弾性測定装置(アントンパール社製、商品名:MCR-301)を用いて、光透過性の底面から評価サンプルに対して紫外光照射することで光照射時間に対する25℃における弾性率変化及び損失正接(tanδ)変化を測定した。光照射は、LEDランプ(パナソニックデバイスSUNX株式会社製、商品名:Aicure UJ30/ANUJ6187)を用い、波長405nm、照度1000mW/cmの条件で150秒間連続照射することによって行った。図1は、実施例1の光軟化性樹脂フィルムの光照射時間に対する25℃の動的弾性率及び損失正接(tanδ)の変化を示すグラフである。実施例1の光軟化性樹脂フィルムは、50000mJ/cmの照射量(光照射開始から50秒後)でほぼ液状であり、光照射終了後において、高粘度液体であった。表1に、光照射前、光照射開始から50秒後、及び光照射終了後(光照射開始から150秒後)の光軟化性樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率及び損失正接の結果を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
<実施例2>
(実施例2-1)
[硬化性樹脂組成物の調製]
125ml軟膏壺に表2に記載の成分及び量(単位:質量部)の(A-1)成分、(A-2)成分、及び(B)成分を加え、撹拌機(株式会社シンキー製、商品名:泡とり錬太郎ARE-310)を用いて2000rpmで3分間混合した。次いで、軟膏壺ごと100℃で1時間加熱した後、再度撹拌機を用いて、2000rpmで3分間混合して(B)成分が完全に溶解したことを確認した。25℃で軟膏壺に表2に記載の量(単位:質量部)の(A-3)成分を添加し、撹拌機を用いて、2000rpmで3分間混合することによって、硬化性樹脂組成物を得た。
【0079】
[評価サンプル(光軟化性樹脂組成物)の作製]
得られた硬化性樹脂組成物を長さ5cm、幅5cm、及び深さ1cmのシリコン容器に流し入れ、硬化性樹脂組成物を25℃で1週間静置して硬化させ((A-1)成分と(A-2)成分とを反応させ)、シリコン容器から光軟化性樹脂組成物(硬化性樹脂組成物の硬化物)を取り外し、長さ5cm、幅5cm、及び高さ1cmの光軟化性樹脂ブロック(硬化性樹脂組成物の硬化物ブロック)を得た。また、光軟化性樹脂ブロックとは別に、シリコンシート状にアプリケータを用いて硬化性樹脂組成物を長さ10cm、幅10cm、及び膜厚0.01cmとなるよう塗膜し、硬化性樹脂組成物を25℃で1週間静置して硬化させ、光軟化性樹脂フィルム(硬化性樹脂組成物の硬化物フィルム)を得た。
【0080】
[評価サンプルの評価]
(光照射前の硬度)
得られた光軟化性樹脂ブロックを用い、硬度の測定は、JIS K7312に規定された方法(タイプC)及びJIS K6253-3に規定された方法(タイプE)にて行った。デュロメータとしては、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)又はデュロメータタイプE(株式会社テクロック製)を用いた。結果を表2に示す。
【0081】
(光照射後の粘度)
シリコンシート上の光軟化性樹脂フィルムに対してコンベアタイプの365nmのLED露光機を用いて1000mW/cm及び20000mJ/cmの条件で光照射した。光軟化性樹脂フィルムは、光照射によって液体となった。生じた液体を、スパーテルを用いてかき取り、粘弾性測定装置(アントンパール社製、商品名:MCR-301)を用いて25℃における粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
(実施例2-2)
表2に記載の成分及び量(単位:質量部)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。また、実施例2-1と同様にして、評価サンプルを作製し、実施例2-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
(実施例2-3)
表2に記載の成分及び量(単位:質量部)を用い、軟膏壺ごと100℃で1時間加熱する操作を行わなかった以外は、実施例2-1と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。また、実施例2-1と同様にして、評価サンプルを作製し、実施例2-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
(実施例2-4)
表2に記載の成分及び量(単位:質量部)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。また、実施例2-1と同様にして、評価サンプルを作製し、実施例2-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
(実施例2-5)
[光軟化性樹脂組成物の調製]
500mLのフラスコに、表2に記載の成分及び量(単位:質量部)の(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分、及び溶剤を加えて、80℃で24時間撹拌し、(A-1)成分と(A-2)成分とを反応させた。その後、25℃で表2に記載の成分及び量(単位:質量部)の(B)成分を加えて、25℃で30分間撹拌することによって、光軟化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0086】
[評価サンプルの作製]
得られた光軟化性樹脂組成物のワニスをシリコンシート上にアプリケータを用いて膜厚100μmとなるように塗膜し、80℃で5時間乾燥させ、膜厚100μmの光軟化性樹脂フィルムを得た。次いで、膜厚100μmの光軟化性樹脂フィルムを長さ5cm及び幅5cmに切り分け、100枚重ねることで長さ5cm、幅5cm、及び高さ1cmの光軟化性樹脂ブロックを得た。
【0087】
[評価サンプルの評価]
得られた光軟化性樹脂フィルム及び光軟化性樹脂ブロックを用いて、実施例2-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
表2に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
(A-1)成分:ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する単量体
・A-1:チオコールLP-55(チオール基数:2、東レ・ファインケミカル株式会社製)
(A-2)成分:官能基と反応可能な置換基を有する単量体
・A-2-1:1,4-ブタンジオールジアクリレート(アクリロイル基数:2、日立化成株式会社製、商品名:FA-124AS)
・A-2-2:ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート基数:2、東ソー株式会社製、商品名:ミリオネートMT)
(A-3)成分:硬化触媒
・A-3-1:ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製、商品名:DBU)
・A-3-2:ジアザビシクロノネン(サンアプロ株式会社製、商品名:DBN)
(B)成分:硬化触媒
・B-1:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製、商品名:Omnirad TPO)
・B-2:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(IGM Resins B.V.社製、商品名:Omnirad 1173)
(D)成分:溶剤
・D-1:トルエン(東京化成工業株式会社製)
【0089】
【表2】
【0090】
<実施例3>
[感光性樹脂フィルム(光軟化性樹脂フィルム又は硬化性樹脂組成物の硬化物フィルム)の作製]
軟膏壺に、(A-1)成分として、チオコールLP-3(チオール基数:2、東レ・ファインケミカル株式会社製)9.75質量部及び(A-3)成分として、ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製、商品名:DBU)0.25質量部を添加し、撹拌機(株式会社シンキー製、商品名:泡とり錬太郎ARE-310)を用いて2000rpmで3分間混合し、第1の混合液を得た。次いで、別の軟膏壺に、(A-1)成分として、5.30質量部のチオコールLP-3、(A-2)成分として、1.86質量部のポリエチレングリコ-ルジアクリレート(アクリロイル基数:2、日立化成株式会社製、商品名:FA-240S)及び1.69質量部のNKエステルATM-35E(アクリロイル基数:4、新中村化学工業株式会社製、商品名)、並びに(B)成分として、2.5質量部のジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製、商品名:Omnirad TPO)を添加し、上記と同様の撹拌機を用いて2000rpmで3分間混合し、軟膏壺ごと100℃で1時間加熱した後、回転数2000rpmで3分間混合し、第2の混合液を得た。次いで、第2の混合液を含む軟膏壺に、25℃で第1の混合液を0.15質量部加え、回転数2000rpmで1.5分間混合した後、速やかに銅板上にアプリケータを用いて膜厚50μmとなるよう塗膜し、60℃、24時間の条件で硬化させることによって、膜厚50μmの感光性樹脂フィルムを得た。
【0091】
[パターン膜の作製検討]
得られた感光性樹脂フィルムに、1mmΦの円系の開口部を有するフォトマスクを介し、照度5mW/cmの落射式高圧水銀ランプのi線(波長365nmの水銀のスペクトル線)を30分間照射した。その後、i線照射後の感光性樹脂フィルムを、水洗機で25℃、3分間現像した後、乾燥を行った。乾燥後の感光性樹脂フィルムを確認したところ、銅板上に1mmΦの円形状に開口部が形成されていることが判明した。このことから、当該感光性樹脂フィルムを用いることによって、パターン膜が形成できることが示唆された。
図1