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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】分散物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240903BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20240903BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L33/26
G02B5/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018122541
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020002250
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】古海 誓一
(72)【発明者】
【氏名】小池 尊
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-109178(JP,A)
【文献】特開平03-000701(JP,A)
【文献】特開平04-279604(JP,A)
【文献】国際公開第2019/160132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
G02B 5/30
G02B 6/12- 6/14
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子と、
水性溶媒と、
アルカリ金属の無機酸塩、アルカリ金属水酸化物、無機酸、及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる電解質と、を含有し、
前記電解質の含有量が、1.85×10 -4 モル/L以上であり、
前記親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が200nm~300nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が11%以下である、
温度又はイオン濃度の変化に対応して反射光が得られる分散物(平均分子量が1万以上の高分子を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記親水性高分子化合物の粒子の固形分含有率は、分散物の全質量に対して、1質量%~75質量%である、請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
前記親水性高分子化合物は、(メタ)アクリルアミド化合物又は(メタ)アクリル酸の少なくとも一方に由来する構成単位を含む、請求項1又は請求項2に記載の分散物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリルアミド化合物は、疎水性基を有する化合物である、請求項3に記載の分散物。
【請求項5】
疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構成単位の含有比率が、親水性高分子化合物の全構成単位に対して、50質量%~99質量%である、請求項4に記載の分散物。
【請求項6】
水性溶媒の存在下で、親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と、架橋性単量体と、を混合して、混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液と重合開始剤とを混合して、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子の分散物を得る工程と、
前記架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子を精製する工程と、
アルカリ金属の無機酸塩、アルカリ金属水酸化物、無機酸、及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる電解質を添加する工程と、
を含み、
前記電解質の含有量が、1.85×10 -4 モル/L以上であり、
前記親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が200nm~300nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が11%以下である、
温度又はイオン濃度の変化に対応して反射光が得られる分散物(平均分子量が1万以上の高分子を含む場合を除く)の製造方法。
【請求項7】
前記親水性高分子化合物を構成する重合性単量体は、疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を含む、請求項6に記載の分散物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周期構造を持つ媒質中に、前記媒質の周期構造と同程度の波長を持つ光が入射すると媒質と光の相互作用が大きくなることが知られている。この相互作用はフォトニック結晶におけるフォトニックバンドギャップが起因している。フォトニック結晶は、量子光学効果により群速度異常に基づいた光の局在化、微空間における光路の屈折制御さらにはレーザー発振等の誘導放射を誘起することができるので、近年、新しい光デバイスとして期待が高まっている。圧力等の外部刺激等を加えると色彩が変化するコロイドフォトニック結晶が知られている。
【0003】
液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物、前記組成物を硬化させてなる変色性塗装膜及び該塗装膜を基板上に積層してなる変色性積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
観察する側から、ホログラムが形成されたコレステリック液晶層と、周期的にコロイド粒子が配列した高分子ゲルの層とを備えた識別媒体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-107601号公報
【文献】特開2011-253051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトニック結晶は、半導体デバイス作製の微細加工技術を駆使して集積されるが、その煩雑なプロセスの為容易に得ることができない。
特許文献1に記載の刺激応答変色性材料及び特許文献2に記載の識別媒体で使用されたコロイドフォトニック結晶は、外部刺激を与えたときの色調変化について、更なる改良が求められる。
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子の粒子径を特定の範囲に制御し、かつ、粒度分布の変動係数が一定の数値以下である場合、分散液に外部刺激を与えると、分散液中で反射色の変化が見られることを見出した。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、温度又はイオン濃度の変化によって色調変化する分散物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子と、
水性溶媒と、
電解質と、を含有し、
前記親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が16%以下である、分散物。
<2> 前記親水性高分子化合物の粒子の固形分含有率は、分散物の全質量に対して、1質量%~75質量%である、<1>に記載の分散物。
<3> 前記親水性高分子化合物は、(メタ)アクリルアミド化合物又は(メタ)アクリル酸の少なくとも一方に由来する構成単位を含む、<1>又は<2>に記載の分散物。
<4> 前記(メタ)アクリルアミド化合物は、疎水性基を有する化合物である、<3>に記載の分散物。
<5> 疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構成単位の含有比率が、親水性高分子化合物の全構成単位に対して、50質量%~99質量%である、<4>に記載の分散物。
<6> 前記親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が、200nm~300nmである<1>~<5>のいずれか1つに記載の分散物。
<7> 前記電解質の含有量の下限値が、1.85×10-4モル/L以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の分散物。
<8> 水性溶媒の存在下で、親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と、架橋性単量体と、を混合して、混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液と重合開始剤とを混合して、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子の分散物を得る工程と、
前記架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子を精製する工程と、
を含み、
前記親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が16%以下である、分散物の製造方法。
<9> 更に、電解質を添加する工程を含む、<8>に記載の分散物の製造方法。
<10> 前記親水性高分子化合物を構成する重合性単量体は、疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を含む、<9>又は<10>に記載の分散物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度又はイオン濃度の変化によって色調変化する分散物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態において、分散物中の親水性高分子化合物の粒子の濃度変化させたときの最大吸収波長(nm)とその反射率(%)を示す図である。
図2】本実施形態において、各温度における親水性高分子化合物の粒子の体積平均粒子径の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る分散物について説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「固形分」とは、水性溶媒以外の成分を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0014】
《分散物》
本実施形態の分散物は、架橋構造を有する親水性高分子化合物(以下、単に「親水性高分子化合物」とも称する場合がある。)の粒子と、水性溶媒と、電解質と、を含有し、親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が16%以下である。
本実施形態の分散物は、親水性高分子化合物の粒子の体積平均粒子径及び粒度分布の変動係数が特定の範囲に制御されているので、温度又はイオン濃度を変化させることによって、分散物の色調を変化させることができる。
このメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。
【0015】
本実施形態の分散物では、親水性高分子化合物の粒子の体積平均粒子径が特定の範囲に制御されている。この親水性高分子化合物の粒子と、電解質と、水性溶媒と、を含む分散物の温度又はイオン濃度を変化させた場合、粒子の体積平均粒子径に変化が見られる。これは、親水性高分子化合物が有する下限臨界溶液温度付近で、親水性の含水膨潤状態から疎水性の収縮した糸まり状態へと立体構造が変化することで、体積相転移が起こると推察される。
下限臨界溶液温度より低温条件下では、水性溶媒中に分散された水性樹脂の粒子は、膨潤状態で配列しているので、ブラッグ(Bragg)反射を示し(着色状態)、一方、下限臨界溶液温度より高温下では、水性樹脂の粒子が収縮するので、水性溶媒中の粒子の配列が乱れて、ブラッグ(Bragg)反射が消失(白色状態)すると推察される。
このように、本実施形態の分散物の温度又は分散物中のイオン濃度を変化させることによって、本実施形態の分散物の色調を変化させることができる。
以下、本実施形態の分散物の各成分について詳細に説明する
【0016】
<親水性高分子化合物>
本実施形態の分散物は、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子を含有する。
親水性高分子化合物は、後述の電解質を含む水性溶媒に分散させた分散物とした場合に、温度又はイオン濃度を変化させることによって、本実施形態の分散物の色調を変化できれば特に制限はない。
親水性高分子化合物としては、例えばヒドロキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミド基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシ基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、リン酸基などの親水性基を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0017】
親水性高分子化合物は、親水性基を有する単量体を単独重合した単独重合体でもよいし、親水性基を有する単量体を2種以上重合した共重合体であってもよく、親水性基を有する単量体と、親水性基を有さない単量体と重合した共重合体であってもよい。
【0018】
親水性高分子化合物の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、アルギン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートの共重合体及び単独重合体、ヒドロキシブチル(メタ)等のヒドロキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール類、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(N-メチロール(メタ)アクリルアミド)等を挙げることができる。
親水性高分子化合物としては、入手しやすい点から、(メタ)アクリルアミド化合物及び(メタ)アクリル化合物の少なくとも一方に由来する構成単位を有することが好ましく、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0019】
親水性高分子化合物が疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を有する場合、刺激応答性を有する高分子化合物を調製しやすい傾向がある。
上記観点から、親水性高分子化合物は、疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物又は(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有することであることが好ましく、より好ましくは疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構成単位を有する。 疎水性基としては、特に制限はないが、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル基が更に好ましく、分岐鎖の炭素数3~5のアルキル基が特に好ましい。
【0020】
親水性高分子化合物としては、刺激応答性の観点から、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構成単位を有することが好ましく、分岐鎖の炭素数3~5のアルキル基を有するアクリルアミド化合物に由来する構成単位を有することがより好ましく、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(NIPA)であることが更に好ましい。
【0021】
親水性高分子化合物は、疎水性基を有する(メタ)アクリルアミド(好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド、より好ましくは分岐鎖の炭素数3~5のアルキル基を有するアクリルアミド、更に好ましくはN-イソプロピルアクリルアミド)に由来する構成単位の含有比率は、親水性高分子化合物の全構成単位に対して、50質量%~99質量%であることが好ましく、より好ましくは70質量%~99質量%である。
【0022】
親水性高分子化合物は、その他の構成単位を更に含んでいてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等があげられる。
親水性高分子化合物がその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位の含有率としては、親水性高分子化合物の全構成単位に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが更に好ましい。
【0023】
親水性高分子化合物の粒子の固形分含有率は、可視領域において波長反射の確認が可能な点から、分散物の全質量に対し、1質量%~75質量%が好ましく、1質量%~50質量%がより好ましく、1質量%~20質量%が更に好ましく、2質量%~15質量%が特に好ましい。
【0024】
(粒子径)
親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径は100nm~2000nmである。本実施形態の分散物は、20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmの範囲に調製された粒子を任意に選択して使用することができる。
温度又はイオン濃度の変化によるブラッグ反射のスイッチング(切り替え)を制御しやすい観点から、親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径は、100nm~300nmであることが好ましく、より好ましくは、200nm~300nmである。
【0025】
親水性高分子化合物の粒子の体積平均粒子径は、例えば、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置(製品番号;UPA-UT151、日機装株式会社製)を用いて、粒径の温度が20℃に調整した条件で測定することができる。
【0026】
(粒度分布の変動係数)
親水性高分子化合物の粒子の粒度分布の変動係数が16%以下である。粒度分布の変動係数が16%以下であると、温度又はイオン濃度の変化によってブラッグ反射に色調を変化させることができる。上記観点から、粒度分布の変動係数としては、14%以下が好ましく、より好ましくは12%以下である。
【0027】
親水性高分子化合物の粒子の粒度分布の変動係数は、例えば、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置(製品番号;UPA-UT151、日機装株式会社製)を用いて、下記の測定条件で、親水性高分子化合物の粒子(直径)を計測し、下記式より標準偏差を算出し、標準偏差を体積平均粒子径で除することにより、求めることができる。
【0028】
標準偏差=(d(84%)-d(16%))/2
上記式中のd(n%)は、親水性高分子化合物の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブがn%となる点の体積平均粒子径を意味する。
【0029】
粒度分布の変動係数(CV値)(%)=標準偏差/体積平均粒子径×100
【0030】
親水性高分子化合物の粒子の形態は、粒径が測定できれば特に限定されず、球体、楕円体、多面体、星状、中空状などの形態が挙げられる。これらの中でも、刺激応答性の観点から、粒子の形態としては、球体であることが好ましい。
【0031】
親水性高分子化合物の粒子の製造方法としては、特に制限はなく、一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、粒子化方法は、目的用途に応じて種々適宜選択することができる。
粒子化方法としては、例えば、親水性高分子化合物を物理的粉砕法等で粒子化する方法、又は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などが挙げられる。
また、架橋前の親水性高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、又は繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって親水性高分子化合物を製造してもよい。
粒径を制御しやすい観点から、本実施形態の親水性高分子化合物の粒子は、後述の水性溶媒中に既述の親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と後述の架橋性単量体と添加して分散したのち、後述の重合開始剤用いて重合させて得られる親水性高分子化合物の粒子を精製する方法等が好ましい。
【0032】
親水性高分子化合物の架橋は、特に制限はなく、公知公用の方法によって行うことができる。
例えば、既述の親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と、架橋性単量体と、を後述の水性溶媒中に共存させて重合する方法、既述の親水性高分子化合物を架橋性単量体と反応後、後述の水性溶媒に分散する方法等により親水性高分子化合物が架橋して3次元網目構造をもった、架橋された構造を有する親水性高分子化合物を製造することができる。
【0033】
<架橋性単量体>
架橋性単量体としては、特に限定はないが、多官能単量体を好適に用いることができる。
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが好ましく、溶解性、安定性、コスト等の観点から、メチレンビスアクリルアミドがより好ましい。
【0034】
親水性高分子化合物の粒子の体積変化を示す温度(相転移温度)としては、親水性高分子化合物の構造、組成に応じて適宜設計することができる。
相転移温度としては、0℃~100℃の範囲から選択され、中でも、10℃~80℃の範囲が好ましく、より好ましくは10℃~50℃の範囲である。
【0035】
<水性溶媒>
本実施形態の分散物は、水性溶媒を含有する。水性溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、水と混和可能な媒体との混合溶媒;エチレングリコール、グリセリン等のポリオール化合物の水溶液;オリゴ糖類、単糖類、糖アルコール等の水溶液であってもよい。
上記混合溶媒としては、例えば、水と炭素数1~3の低級アルコールとの混合溶媒、が挙げられる。
本明細書において、水性溶媒とは、少なくとも水を70質量%以上含有する溶媒を意味する。
【0036】
水性溶媒の含有率としては、分散物の全質量に対して、25質量%~99質量%であることが好ましく、50質量%~99質量%であることがより好ましく、80質量%~99質量%であることが更に好ましく、85質量%~98質量%であることが特に好ましい。
【0037】
<電解質>
本実施形態の分散物は、電解質を含有する。分散物は、電解質を含有することで、Bragg反射のスイッチング(切り替え)を付与することができる。
電解質としては、既述の水性媒体中で解離して、イオンを形成する化合物であれば特に制限されない。
電解質としては、無機酸及びその塩、無機アルカリ塩、界面活性剤等の有機塩などが挙げられる。電解質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、カルボン酸、スルホン酸等が挙げられる。
また、無機酸塩としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属の無機酸塩、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属の無機酸塩などが挙げられる。
無機アルカリ塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。
【0039】
有機塩としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられ、これらの中でも、イオンを供給する点から、アニオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、公知のものから適宜選択することができ、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、脂肪酸塩、ホルマリン縮合物等が挙げられる。
塩を形成するカチオンとしては、アンモニウムイオン、トリエタノールアミンイオン、金属カチオン等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は、入手しやすい点から、スルホン酸塩及びアルキル硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
スルホン酸塩及びアルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸-ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられるが、ドデシル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0041】
Bragg反射のスイッチング(切り替え)観点から、電解質としては、塩化物、臭化物又はヨウ化物のアルカリ金属塩、無機酸、無機アルカリ塩及びアニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、塩化物のアルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、塩酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であること更に好ましい。
【0042】
電解質の含有量としては、適宜選択することができる。
電解質の含有量としては、刺激応答性の観点から、下限値が1.85×10-4モル/L以上であることが好ましく、1.85×10-4モル/L以上1.85×10-1モル/L以下であることがより好ましい。
なお、電解質の含有量は、キャピラリー電気泳動によって求めることができる。
【0043】
本実施形態の分散物は、必要に応じて、親水性高分子化合物の粒子、水性溶媒及び、電解質以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの各種添加剤が挙げられる。
【0044】
《分散物の製造方法》
本実施形態の分散物の製造方法は、水性溶媒の存在下で、親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と架橋性単量体とを混合して、混合溶液を調製する工程(以下、「混合溶液調製工程」ともいう。)と、混合溶液と重合開始剤と混合して、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子の分散物を得る工程(以下、「高分子ゲル合成工程」ともいう。)と、架橋構造を有する親水性高分子化合物の粒子を精製する工程(以下、「精製工程」ともいう。)と、を含み、親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が16%以下である。
本実施形態の分散物の製造方法では、上記工程を有することで、親水性高分子化合物の粒子の20℃における体積平均粒子径が100nm~2000nmであり、かつ、粒度分布の変動係数が16%以下とすることができ、このような特定の粒子径の粒子を含む分散物は、温度変化又はイオン濃度の変化によって、色調変化(すなわち、Bragg反射)を示すことができる。
以下、本実施形態の分散物の製造方法の各工程について以下に説明するが、これに限定されない。
【0045】
(混合溶液調製工程)
混合溶液調製工程では、水性溶媒の存在下で、親水性高分子化合物を構成する重合性単量体と、架橋性単量体と、を混合して、混合溶液を調製する工程である。
なお、既述の分散物に含まれる成分と同様の成分については詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態の分散物の製造方法では、混合溶液調製工程において、非反応性界面活性剤を含んで調製してもよい。親水性高分子化合物を構成する重合性単量体及び架橋性単量体に加えて、非反応性界面活性剤を添加した場合、後述の高分子ゲル合成工程において親水性高分子化合物を構成する重合性単量体を例えば、乳化重合したときに、乳化安定性が良好となりやすく、親水性高分子化合物の粒子の分散状態が均一になりやすい傾向がある。
なお、本明細書において非反応性界面活性剤とは、エチレン性不飽和基を有さない界面活性剤を意味する。
【0047】
非反応性界面活性剤は、エチレン性不飽和基を有さない界面活性剤であれば特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
非反応性界面活性剤としては、例えば、エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤、エチレン性不飽和基を有さないノニオン性界面活性剤、エチレン性不飽和基を有さないカチオン性界面活性剤及びエチレン性不飽和基を有さない両性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、粒子の安定性の観点から、非反応性界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤及びエチレン性不飽和基を有さないノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましく、エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。
非反応性界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム塩等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ソーダ石けん等の脂肪酸塩、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体などが挙げられる。
重合性の観点から、エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩が好ましく、より好ましくはアルキル硫酸エステルのナトリウム塩であり、更に好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0049】
粒子の安定性の観点から、非反応性界面活性剤の含有率としては、親水性高分子化合物を構成する重合性単量体の合計100質量部に対して、1.0×10-3質量部~8.0質量部が好ましく、1.0×10-2質量部~4.0質量がより好ましく、3.0×10-2質量部~2.0質量部が更に好ましい。
【0050】
混合溶液調製工程において、混合方法としては、各成分を混合することができれば、特に制限されず、公知の方法により混合することができる。
【0051】
混合溶液調製工程における温度は、例えば、40℃~100℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。
【0052】
(高分子ゲル合成工程)
高分子ゲル合成工程は、混合溶液と重合開始剤とを混合して、親水性高分子化合物の粒子の分散物を得る工程である。
【0053】
高分子ゲル合成工程における温度は、例えば、40℃~100℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。
高分子ゲル合成工程における混合溶液と重合開始剤との混合時間は、例えば、1時間~8時間が好ましく、2時間~6時間がより好ましい。
【0054】
重合開始剤としては、通常の重合方法に使用できるものであれば、特に制限なく、公知のものを使用することができる。
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムに代表されるスルホニル基を有する過酸化物、過酸化水素に代表されるスルホニル基を有さない過酸化物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレートに代表されるスルホニル基を有さない有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)に代表されるアゾ化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは過硫酸ナトリウムである。
【0055】
重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合開始剤は2回以上に分けて添加してもよい。
【0056】
(精製工程)
精製工程は、精製により、未反応原料及び副反応生成物の除去を行う工程である。精製方法は、親水性高分子化合物の粒子を精製できれば特に制限はされない。
精製工程の一例としては、親水性高分子化合物の粒子の分散物をメッシュサイズの異なる複数のメンブランフィルターで吸引ろ過し、ろ液を遠心分離した後、イオン交換樹脂による脱塩で精製する態様が挙げられる。
また、精製工程の一例としては、親水性高分子化合物の粒子の分散物をメッシュサイズの異なる複数のメンブランフィルターで吸引ろ過し、ろ液を透析して精製する態様が挙げられる。
【0057】
本実施形態の分散物の製造方法は電解質を添加する工程を更に含んでいてもよい。電解質を添加する工程は、高分子ゲル合成工程の後であることが好ましい。
【0058】
(他の工程)
本実施形態の分散物の製造方法は、必要に応じて、混合溶液調製工程、高分子ゲル合成工程、精製工程及び電解質を添加する工程以外の他の工程を有していてもよい。
【0059】
[分散物の用途]
本実施形態の分散物は、例えば、カプセル膜に被包されている形態で、温度又はイオン濃度の変化を反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するセンサーに利用してもよい。
カプセル膜に分散物を被包する方法としては、特に制限はなく、公知のカプセル化法又はマイクロカプセルの製造方法によって作製することができる。
【0060】
例えば、本実施形態の分散物は、温度又はイオン濃度の変化に対応して反射光が得られるので、本実施形態の分散物を被包したマイクロカプセルを用いた玩具、非常用光源、インテリア(置物、棚等)、建築部材(床、壁、階段等)、食器、容器等を製造してもよい。
【実施例
【0061】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り「%」はすべて質量基準である。
【0062】
(実施例1)
<親水性高分子化合物の粒子の製造>
1Lセパラブルフラスコに超純水600mLを加え250rpm(revolutions per minute)で攪拌しながら、表1に示す添加量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)30g、架橋性単量体としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)2g、を溶解させ、窒素ガスをバブリングさせながら30分間攪拌した。その後、70℃まで昇温させ、1時間攪拌し、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)0.3gを超純水15mLに溶解させ、シリンジで少しずつ加え、4時間反応させた。得られた分散物(サスペンション)をメッシュサイズ5.0μm、1.0μm及び0.45μmのメンブランフィルターで、この順番に吸引ろ過した。その後、さらに得られたろ液の遠心分離を行い、この操作を3回繰り返して精製した後、イオン交換樹脂で脱塩処理を行い、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の粒子(高分子ゲル粒子1)を得た。
【0063】
得られた高分子ゲル粒子1は、動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置(型番;UPA-UT151、日機装株式会社製)を用いて、室温(20℃)における高分子ゲル粒子1の体積平均粒子径とその粒度分布を下記の条件で測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
(測定条件)
測定対象物質の形状:真球
分散媒:水
分散媒の屈折率:1.33
測定対象物質の屈折率:1.508
【0065】
更に下記の式より標準偏差を算出し、標準偏差を体積平均粒子径で除することにより、粒度分布の変動係数(CV値)を求めた。その結果を表1に示す。
【0066】
標準偏差=(d(84%)-d(16%))/2
上記式中のd(n%)は、高分子ゲル粒子1の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブがn%となる点の体積平均粒子径を意味する。
【0067】
粒度分布の変動係数(CV値)(%)=標準偏差/体積平均粒子径×100
【0068】
【表1】
【0069】
高分子ゲル粒子1を下記表2に示す固形分含有率(質量%)になるように水と混合して分散物(サスペンション)を調製した。各分散物をスクリュー管に入れ、側面から白色光源(HALOGEN LITHTSOURCE HL-2000; Ocean Optics社製)を照射し、反射スペクトルを反射スペクトル装置(型番;USB2000+;Ocean Optics社製)で測定した。この時、反射スペクトル測定条件の温度は、室温(約25℃)であった。結果を表2及び図1に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示すとおり、高分子ゲル粒子1の固形分含有率が分散物の全質量に対して3質量%~12質量%の範囲にあると、可視領域における反射スペクトルが確認できることが分かる。
【0072】
<反射スペクトルの測定>
高分子ゲル粒子1に水と、表3~表6に示す濃度(モル/L)になるように塩化ナトリウム(NaCl)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、水酸化ナトリウム(NaOH)又は塩酸(HCl)を添加して、高分子ゲル粒子1の固形分含有率が10質量%の分散物(サスペンション)をそれぞれ調製した。これらの分散物を室温(約25℃)及び湯浴(約60℃)に置いた状態で反射スペクトル測定を行った。結果を表3~表6に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
表3~表6に示すように、塩化ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、水酸化ナトリウム(NaOH)又は塩酸(HCl)、即ち、電解質の濃度(モル/L)が1.85×10-5モル/L以下では、温度変化による反射スペクトルの変化が確認されず、温度変化前後において緑色を呈していた。電解質の濃度が1.85×10-4モル/L以上の分散物では、室温(25℃)でBragg反射を示し緑色を呈し、60℃に昇温すると、Bragg反射を示さず白色を呈していた。これより、分散物中の電解質の濃度が1.85×10-4モル/L以上であるとBragg反射のスイッチング(切り替え)が起きることが分かる。
【0078】
<温度変化させたときの高分子ゲル粒子1の体積平均粒子径の測定>
動的光散乱式(DLS)粒子径分布測定装置(型番;UPA-UT151、日機装株式会社製)を用いて、20℃から60℃の各温度における高分子ゲル粒子1の体積平均粒子径(nm)を測定した。その結果を表7及び図2に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
(実施例2~実施例8)
実施例1において、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を表1に示す添加量に変更した以外は、実施例1と同様にして、高分子ゲル粒子2~8を合成した。この高分子ゲル粒子2~8を用いて、実施例1と同様にして体積平均粒子径(nm)及び粒度分布の変動係数(CV値)を求めた。その結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、20℃から60℃の各温度における高分子ゲル粒子2~8の体積平均粒子径を測定した。その結果を表7及び図2に示す。
【0081】
(実施例9並びに比較例1及び比較例2)
表8に示すような割合(質量比)で上記で合成した高分子ゲル粒子を混合し、高分子ゲル粒子を混合したサンプル(以下、「混合高分子ゲル粒子」ともいう。)を調製した。混合高分子ゲル粒子を実施例1と同様にして、20℃における混合高分子ゲル粒子の体積平均粒子径(nm)及び標準偏差を測定し、CV値を算出した。また、混合高分子ゲル粒子の固形分含有率が10質量%になるように水と混合して、混合高分子ゲル粒子の分散物(サスペンション)を調製した。このサスペンションの反射スペクトルを実施例1と同様にして測定した。その結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
表8に示すとおり、CV値が16%を超える比較例1及び比較例2では、Bragg反射が示されなかった。一方、CV値が16%以下である実施例1及び実施例9では、Bragg反射を示した。
図1
図2