(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20240903BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240903BHJP
B24B 37/34 20120101ALI20240903BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240903BHJP
【FI】
B24B37/30 A
H01L21/304 622P
B24B37/34
B24B41/06 A
(21)【出願番号】P 2020159966
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114468(JP,A)
【文献】特開2015-82586(JP,A)
【文献】特開2008-110471(JP,A)
【文献】特開平7-41169(JP,A)
【文献】特開2006-303249(JP,A)
【文献】特開2006-232468(JP,A)
【文献】特開2014-218324(JP,A)
【文献】特表2005-517613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
H01L 21/677
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨面を下方に向けた状態で基板の裏面を保持するように構成されたトップリングと、
前記トップリングとの間で基板を受け渡しするように構成されたプッシャと、
前記トップリングから前記プッシャへ前記基板を受け渡すときに前記トップリングに保持された基板の側方に配置されるくさび部材、および前記くさび部材を前記基板の裏面に沿った方向に移動させて前記基板の裏面と前記トップリングとの間に挿入させるように構成された駆動部材、を含むくさび機構と、
を含む基板処理装置であって、
前記プッシャは、前記トップリングとの間で前記基板を受け渡しするための第1のステージと、前記第1のステージを昇降させるための第1の昇降機構と、前記第1のステージを傾斜させるための傾斜機構と、を含み、
前記プッシャは、前記トップリングから前記プッシャへ前記基板を受け渡すときに、前記傾斜機構を用いて前記第1のステージを傾斜させることによって前記基板の端部を前記トップリングから剥離させるように構成され、
前記プッシャは、前記基板の端部を前記トップリングから剥離させた後に、前記第1の昇降機構を用いて前記第1のステージを下降させるとともに前記傾斜機構を用いて前記第1のステージを水平にさせるように構成され、
前記第1の昇降機構は、前記第1のステージの底面を支持する第1のピストンと、前記第1のピストンを昇降させるように構成された第1のシリンダと、を含み、
前記傾斜機構は、前記第1のピストンと前記第1のステージとの間に設けられた第1の回転軸と、前記第1のピストンから側方に伸びるシャフトと、前記第1のステージの底面に取り付けられた第2の回転軸と、前記第2の回転軸を介して前記第1のステージを支持する第2のピストンと、前記シャフトの上面に取り付けられた第3の回転軸と、前記第3の回転軸を介して前記シャフトに支持され、前記第2のピストンを昇降させるように構成された第2のシリンダと、を含む、
基板処理装置。
【請求項2】
前記くさび部材は、前記基板の裏面と平行に伸びる第1の面と、前記第1の面に対向す
るとともに前記基板の方向に向けて先細りするように傾斜する第2の面と、を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記くさび部材は、前記くさび部材の内部を通り前記第2の面に開口する穴を有し、
前記くさび機構は、前記穴を介して前記第2の面から流体を噴射可能な流体供給源をさらに含む、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1のステージは、吸着パッドを介して前記基板を支持するための支持面を一方の端部に有する複数の第1の支持柱と、前記複数の第1の支持柱の他方の端部と連結される第1のベースと、を含み、前記複数の第1の支持柱の少なくとも1つには、真空源に連通し前記支持面に開口する吸引路が形成される、
請求項
1から
3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記トップリングとの間で基板を受け渡しするときに前記トップリングを支持するための第2のステージと、前記第1のステージおよび前記第2のステージを昇降させるための第2の昇降機構と、をさらに含み、
前記第2のステージは、前記トップリングとの間で基板を受け渡しするときに前記トップリングを支持するための支持面を一方の端部に有する複数の第2の支持柱と、前記複数の第2の支持柱の他方の端部と連結される第2のベースと、を含み、
前記くさび部材は、前記複数の第2の支持柱の少なくとも1つに設けられる、
請求項
1から
4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に、基板の表面を平坦化するために化学機械研磨(CMP)装置が使用されている。半導体デバイスの製造に使用される基板は、多くの場合、円板形状である。また、半導体デバイスに限らず、CCL基板(Copper Clad Laminate基板)やPCB(Printed Circuit Board)基板、フォトマスク基板、ディスプレイパネルなどの四角形の基板の表面を平坦化する際の平坦度の要求も高まっている。また、PCB基板などの電子デバイスが配置されたパッケージ基板の表面を平坦化することへの要求も高まっている。
【0003】
CMP装置は、基板を保持するトップリングとの間で基板の受け渡しを行うためのプッシャを備えている。例えば特許文献1には、研磨後の基板をトップリングからプッシャに受け渡すときに、基板が表面張力によってトップリングに密着しているために、トップリングから基板を引き剥がせないという問題が開示されている。この問題に対して特許文献1には、プッシャによって基板を吸着しながら基板を傾けることによって基板の端部をトップリングから引き剥がし、基板の端部とトップリングとの間にできた隙間に空気または窒素などのガスを吹き込むことが開示されている。また、特許文献1には、基板の端部とトップリングとの間にできた隙間に板状または棒状の剥離補助部材を挿入することによって、トップリングから基板を引き剥がすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術には、トップリングからプッシャへの基板の受け渡しの確実性を向上させることに関して改善の余地がある。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載された技術は、基板を傾けて基板の端部をトップリングから引き剥がすことによって、基板全体をトップリングから引き剥がすときよりも小さい力で基板を引き剥がすものである。しかしながら、トップリングと基板との間の表面張力が大きい場合には、基板を傾けたとしても基板の端部をトップリングから引き剥がすことができず、プッシャへ基板を受け渡せないおそれがある。
【0007】
そこで、本願は、トップリングからプッシャへの基板の受け渡しの確実性を向上させることを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】一実施形態による研磨モジュールを概略的に示す斜視図である。
【
図3】一実施形態によるトップリングの構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図4】一実施形態による搬送モジュールを模式的に示す側面図である。
【
図5】一実施形態による搬送モジュールを示す斜視図である。
【
図6】一実施形態によるプッシャを示す斜視図である。
【
図7】
図6に示されるプッシャを矢印7の方に見た部分断面図である。
【
図8】一実施形態による第2のステージの支持柱の1つを示す断面図である。
【
図9】一実施形態による第1のステージの支持柱の1つを示す断面図である。
【
図10】一実施形態によるくさび機構を模式的に示す斜視図である。
【
図11】一実施形態によるくさび機構を模式的に示す平面図および断面図である。
【
図12】変形例のくさび機構を模式的に示す断面図である。
【
図13】一実施形態による傾斜機構を模式的に示す断面図である。
【
図14】一実施形態による傾斜機構を模式的に示す断面図である。
【
図15】一実施形態による傾斜機構を模式的に示す断面図である。
【
図16】一実施形態による傾斜機構を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るプッシャ、基板搬送装置、および基板処理装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0011】
図1は、一実施形態による基板処理装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1に示される基板処理装置1000は、ロードモジュール100、搬送モジュール200、研磨モジュール300、乾燥モジュール500、およびアンロードモジュール600を有する。図示の実施形態において、搬送モジュール200は、2つの搬送モジュール200A、200Bを有し、研磨モジュール300は、2つの研磨モジュール300A、300Bを有する。一実施形態において、これらの各モジュールは、独立に形成することができる。これらのモジュールを独立して形成することで、各モジュールの数を任意に組み合わせることで異なる構成の基板処理装置1000を簡易に形成することができる。また、基板処理装置1000は、制御装置900を備え、基板処理装置1000の各構成要素は制御装置900により制御される。一実施形態において、制御装置900は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。
【0012】
<ロードモジュール>
ロードモジュール100は、研磨および洗浄などの処理が行われる前の基板WFを基板処理装置1000内へ導入するためのモジュールである。一実施形態において、ロードモジュール100は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0013】
図示の実施形態において、ロードモジュール100の搬送機構は、複数の搬送ローラ202(第1の搬送ローラ)と、搬送ローラ202が取り付けられる複数のローラシャフト204とを有する。
図1に示される実施形態においては、各ローラシャフト204には3つの搬送ローラ202が取り付けられている。基板WFは、搬送ローラ202上に配置され、搬送ローラ202が回転することで基板WFが搬送される。ローラシャフト204上の搬送ローラ202の取り付け位置は、基板WFを安定的に搬送することができる位置であれば任意とすることができる。ただし、搬送ローラ202は基板WFに接触するので、処理対象である基板WFに接触しても問題の無い領域に搬送ローラ202が接触するように配置すべきである。一実施形態において、ロードモジュール100の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから構成することができる。一実施形態において、搬送ローラ202
は、ローラシャフト204などを介して電気的に接地される。これは、基板WFが帯電して基板WF上の電子デバイス等を損傷することを防止するためである。また、一実施形態において、ロードモジュール100に、基板WFの帯電を防止するためにイオナイザー(図示せず)を設けてもよい。
【0014】
<研磨モジュール>
図2は一実施形態による、研磨モジュール300を概略的に示す斜視図である。
図1に示される基板処理装置1000は、2つの研磨モジュール300A、300Bを備えている。2つの研磨モジュール300A、300Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して研磨モジュール300として説明する。
【0015】
図2に示されるように、研磨モジュール300は、研磨テーブル350と、トップリング302と、を備える。研磨テーブル350は、テーブルシャフト351に支持される。研磨テーブル350は、図示していない駆動部によって、矢印ACで示すように、テーブルシャフト351の軸心周りに回転するようになっている。研磨テーブル350には、研磨パッド352が貼り付けられる。トップリング302は、基板WFを保持して研磨パッド352に押圧する。トップリング302は、図示していない駆動源によって回転駆動される。基板WFは、トップリング302に保持されて研磨パッド352に押圧されることによって研磨される。
【0016】
図2に示されるように、研磨モジュール300は、研磨パッド352に研磨液又はドレッシング液を供給するための研磨液供給ノズル354を備える。研磨液は、例えば、スラリである。ドレッシング液は、例えば、純水である。また、
図2に示されるように、研磨テーブル350およびテーブルシャフト351には、研磨液を供給するための通路353が設けられている。通路353は、研磨テーブル350の表面の開口部355に連通している。研磨テーブル350の開口部355に対応する位置において研磨パッド352は貫通孔357が形成されており、通路353を通る研磨液は、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の表面に供給される。また、研磨モジュール300は、研磨パッド352のコンディショニングを行うためのドレッサ356を備える。また、研磨モジュール300は、液体、又は、液体と気体との混合流体、を研磨パッド352に向けて噴射するためのアトマイザ358を備える。アトマイザ358から噴射される液体は、例えば、純水であり、気体は、例えば、窒素ガスである。
【0017】
トップリング302は、トップリングシャフト304によって支持される。トップリング302は、図示していない駆動部によって、矢印ABで示すように、トップリングシャフト304の軸心周りに回転するようになっている。また、トップリングシャフト304は、図示しない駆動機構により、上下方向に移動可能である。
【0018】
基板WFは、トップリング302の研磨パッド352と対向する面に真空吸着によって保持される。研磨時には、研磨液供給ノズル354から、および/または研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の研磨面に研磨液が供給される。また、研磨時には、研磨テーブル350及びトップリング302が回転駆動される。基板WFは、トップリング302によって研磨パッド352の研磨面に押圧されることによって研磨される。
【0019】
図2に示されるように、トップリングシャフト304は、アーム360に連結されており、アーム360は、回転軸362を中心に揺動可能である。基板WFの研磨中に、トップリング302が研磨パッド352の中心を通過するように、アーム360を固定あるいは揺動させてもよい。また、基板WFの研磨中に、基板WFが研磨パッド352の貫通孔357を覆うようにアーム360を固定または揺動させてもよい。
図1に示されるように、揺動可能なアーム360により、トップリング302は、搬送モジュール200の方へ
移動可能である。トップリング302が後述する搬送モジュール200の基板受け渡し位置に移動することで、トップリング302は、後述するプッシャ230から基板WFを受け取ることができる。また、トップリング302は、研磨モジュール300での基板WFの研磨後に、プッシャ230に基板WFを受け渡すことができる。
【0020】
図3は、一実施形態による、トップリング302の構造を模式的に示す側面断面図である。トップリング302は、トップリングシャフト304の下端に連結されている。トップリング302は、略四角形状のヘッド本体306と、ヘッド本体306の下部に配置された環状のリテーナ部材308と、を備えている。ヘッド本体306は金属やセラミックス等の強度および剛性が高い材料から形成することができる。また、リテーナ部材308は、剛性の高い樹脂材またはセラミックス等から形成することができる。
【0021】
ヘッド本体306およびリテーナ部材308の内側に形成された空間内には、基板WFに当接する弾性パッド310が収容されている。弾性パッド310とヘッド本体306との間には、圧力室(エアバッグ)P1が設けられている。圧力室P1は弾性パッド310とヘッド本体306とによって形成されている。圧力室P1には流体路312を介して加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。
図3に示される実施形態において、圧力室P1は保持する基板WFの全面に渡って形成される。
【0022】
基板WFの周端部はリテーナ部材308に囲まれており、研磨中に基板WFがヘッド本体306から飛び出さないようになっている。リテーナ部材308とヘッド本体306との間には弾性バッグ314が配置されており、その弾性バッグ314の内部には圧力室Prが形成されている。リテーナ部材308は、弾性バッグ314の膨張/収縮によりヘッド本体306に対して相対的に上下動可能となっている。圧力室Prには流体路316が連通しており、加圧空気等の加圧流体が流体路316を通じて圧力室Prに供給されるようになっている。圧力室Prの内部圧力は調整可能となっている。したがって、基板WFの研磨パッド352に対する押圧力とは独立してリテーナ部材308の研磨パッド352に対する押圧力を調整することができる。
【0023】
<乾燥モジュール>
乾燥モジュール500は、基板WFを乾燥させるための装置である。
図1に示される基板処理装置1000においては、乾燥モジュール500は、研磨モジュール300で研磨された後に、搬送モジュール200の洗浄機構で洗浄された基板WFを乾燥させる。
図1に示されるように、乾燥モジュール500は、搬送モジュール200の下流に配置される。
【0024】
乾燥モジュール500は、搬送ローラ202上を搬送される基板WFに向けて気体を噴射するためのノズル530を有する。気体は、たとえば圧縮された空気または窒素とすることができる。搬送される基板WF上の水滴を乾燥モジュール500によって吹き飛ばすことで、基板WFを乾燥させることができる。
【0025】
<アンロードモジュール>
アンロードモジュール600は、研磨および洗浄などの処理が行われた後の基板WFを基板処理装置1000の外へ搬出するためのモジュールである。
図1に示される基板処理装置1000においては、アンロードモジュール600は、乾燥モジュール500で乾燥された後の基板を受け入れる。
図1に示されるように、アンロードモジュール600は、乾燥モジュール500の下流に配置される。一実施形態において、アンロードモジュール600は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0026】
<搬送モジュール>
図4は一実施形態による、搬送モジュール200を模式的に示す側面図である。
図1に示される基板処理装置1000は、2つの搬送モジュール200A、200Bを備えている。2つの搬送モジュール200A、200Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して搬送モジュール200として説明する。
【0027】
図5は、一実施形態による搬送モジュール200を示す斜視図である。なお、
図5においては、図示の明瞭化のために、上搬送ローラ(第2の搬送ローラ)290およびその駆動機構は省略している。図示の搬送モジュール200は、基板WFを搬送するための複数の搬送ローラ(第1の搬送ローラ)202を備えている。搬送ローラ202を回転させることで、搬送ローラ202上の基板WFを所定の方向に搬送することができる。搬送モジュール200の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから形成されても、導電性のないポリマーから形成されてもよい。搬送ローラ202は、ローラシャフト(第1のローラシャフト)204に取り付けられており、ギア206を介して、モータ208により駆動される。一実施形態において、モータ208はサーボモータとすることができ、ギア206は、歯車式とすることができるが、マグネットギアとすることもできる。また、図示の搬送モジュール200は、搬送中の基板WFの側面を支持するガイドローラ212を備える。図示の搬送モジュール200は、搬送ローラ202上の所定の位置における基板WFの存在の有無を検知するためのセンサ216を有する。センサ216は任意の形式のセンサとすることができ、たとえば光学式のセンサとすることができる。
図4に示される実施形態においては、センサ216は搬送モジュール200に7個(216a~216g)設けられている。一実施形態において、これらのセンサ216a~216gによる基板WFの検知に応じて、搬送モジュール200の動作を制御することができる。
図4に示されるように、搬送モジュール200は、搬送モジュール200内に基板WFを受け入れるために開閉可能な入口シャッタ218を有する。
図4に示されるように、プッシャ230による基板WFの受け渡しが行われない領域において、搬送ローラ202の上には上搬送ローラ290が配置されている。上搬送ローラ290は、動力源に接続されており、回転可能に構成されている。一実施形態において、上搬送ローラ290は、搬送ローラ202と同様にギア206およびモータ208により駆動されるように構成される。
【0028】
図4に示されるように、搬送モジュール200は、ストッパ220を有する。ストッパ220は、ストッパ移動機構222に接続されており、ストッパ220は搬送ローラ202上を移動する基板WFの搬送経路内に進入可能である。ストッパ220が基板WFの搬送経路内に位置しているときは、搬送ローラ202上を移動する基板WFの側面がストッパ220に接触し、移動中の基板WFをストッパ220の位置で停止させることができる。また、ストッパ220が基板WFの搬送経路から退避した位置にあるときは、基板WFは、搬送ローラ202上を移動することができる。ストッパ220による基板WFの停止位置は、後述のプッシャ230が搬送ローラ202上の基板WFを受け取ることができる位置(基板受け渡し位置)である。
【0029】
センサ216aは、搬送モジュール200の入口側に設けられる。センサ216aによって基板WFの後ろが通過したことが確認されると、入口シャッタ218を閉じるようにすることができる。その後、センサ216aの下流側に配置されたセンサ216bにより基板WFの位置を監視しながら、搬送ローラ202で基板WFが搬送される。このときストッパ移動機構222によりストッパ220が基板WFの搬送経路内に移動されている。搬送ローラ202上を搬送されてきた基板WFは、ストッパ220に接触して基板WFが停止される。また、センサ216cはストッパ220の位置に配置されており、センサ216cにより基板WFを検知すると搬送ローラ202の動作を停止する。ストッパ220の位置(基板受け渡し位置)で停止した基板WFは、プッシャ230を介して、トップリ
ング302に受け渡される。
【0030】
図4、5に示される搬送モジュール200は、洗浄ノズル284を有する。洗浄ノズル284は、搬送ローラ202の上側に配置される上洗浄ノズル284aと、下側に配置される下洗浄ノズル284bとを有する。上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284bは、図示しない洗浄液の供給源に接続される。上洗浄ノズル284aは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの裏面に洗浄液を供給するように構成される。下洗浄ノズル284bは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの被研磨面に洗浄液を供給するように構成される。上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284bは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの幅と同程度、またはそれ以上の幅を備え、基板WFが搬送ローラ202上を搬送されることで、基板WFの全面が洗浄されるように構成される。
【0031】
<プッシャ>
図4、5に示されるように、搬送モジュール200はプッシャ230を有する。プッシャ230は、複数の搬送ローラ202の上にある基板WFを持ち上げてトップリング302に受け渡すことができるように構成される。またプッシャ230は、トップリング302から受け取った基板WFを搬送モジュール200の搬送ローラ202に受け渡すことができるように構成される。
【0032】
図6は、一実施形態によるプッシャ230を示す斜視図である。
図7は、
図6に示されるプッシャ230を矢印7の方に見た部分断面図である。
図7は、プッシャ230とともに、搬送ローラ202、搬送ローラ202上の基板受け渡し位置に配置された基板WF、および基板WFを受け取るトップリング302を概略的に示している。なお、
図6、7においては、図示の明瞭化のために、後述するくさび機構および傾斜機構を省略している。
【0033】
図6、7に示される実施形態において、プッシャ230は、第1のステージ270および第2のステージ232を備える。第2のステージ232は、基板WFをプッシャ230からトップリング302に受け渡す時に、トップリング302のリテーナ部材308を支持するためのステージである。第2のステージ232は、複数の支持柱(第2の支持柱)234を備える。
図8は、一実施形態による、第2のステージ232の支持柱の1つを示す断面図である。
図8に示されるように、支持柱234の一方の端部は、基板WFをトップリング302に受け渡す際および基板WFをトップリング302から受け取る際にトップリング302のリテーナ部材308を支持する平坦な支持面234a、およびトップリング302を案内するための傾斜面234bを備える。一実施形態において、複数の支持柱234のうちの4つの角部にある支持柱234が
図8に示されるような支持面234aおよび傾斜面234bを備えるようにしてもよい。4つの角部の支持柱234により形成される凹部でリテーナ部材308を位置合わせできる。4つの角部以外の支持柱234は支持面234aのみを備えていてもよい。各支持柱234の他方の端部は、共通のベース(第2のベース)236に連結されている。また、各支持柱234は、搬送ローラ202に干渉しない位置に設けられ、
図7に示される実施形態においては、各支持柱234は、搬送ローラ202の間に配置されている。
【0034】
第1のステージ270は、搬送ローラ202上の基板WFを受け取るように構成される。第1のステージ270は、複数の支持柱(第1の支持柱)272を備える。
図9は、一実施形態による、第1のステージ270の支持柱272の1つを示す断面図である。
図9に示されるように、支持柱272の一方の端部は、基板WFをトップリング302に受け渡す際および基板WFをトップリング302から受け取る際に基板WFを支持する平坦な支持面272aを備える。支持面272aには弾性を有する吸着パッド271が設けられている。支持面272aは吸着パッド271を介して基板WFを支持するようになっている。なお、吸着パッド271は設けられていなくてもよい。また、複数の支持柱272の
少なくとも1つには、支持面272aに開口する吸引路272bが形成される。吸引路272bは、真空源260に連通するようになっている。これにより、複数の支持柱272の少なくとも1つは、基板WFをトップリング302から受け取る際に吸引路272bを介して基板WFを吸引することができるように構成される。各支持柱272の他方の端部は共通のベース(第1のベース)274に連結されている。また、各支持柱272は、搬送ローラ202に干渉しない位置に設けられ、
図7に示される実施形態においては、各支持柱272は、搬送ローラ202の間に配置されている。また、各支持柱272は、基板WFの被研磨面の回路などのパターンが形成されていない領域を支持するように配置される。第1のステージ270および第2のステージ232は、以下で詳述するように、それぞれ昇降機構に連結されており、それぞれ高さ方向(z方向)に移動可能である。
【0035】
第2のステージ232は、高さ方向(z方向)に移動可能に構成される。一実施形態において、プッシャ230は第2の昇降機構231を有する。一実施形態において、
図6、7に示されるように、プッシャ230の第2の昇降機構231は、空圧式の昇降機構であり、シリンダ(第3のシリンダ)240およびピストン(第3のピストン)242を備える。ピストン242の端部は、可動台座244に連結されている。シリンダ240は、固定台座246に連結されている。固定台座246は、搬送モジュール200の全体を覆う筐体201または搬送モジュール200を設置する床面などに固定される。シリンダ240内の空気圧を調整することにより、ピストン242が移動し、可動台座244を高さ方向(z方向)に移動させることができる。可動台座244が高さ方向に移動することで、第1のステージ270および第2のステージ232を高さ方向に移動することができる。図示の実施形態において、可動台座244の上には、第1のステージ270および第2のステージ232を水平面内で移動させることが可能なXYステージ248が搭載されている。XYステージ248は、直動ガイドなどにより直交する2方向に移動可能に構成される公知のXYステージとすることができる。図示の実施形態において、XYステージ248の上には、回転ステージ250が搭載されている。回転ステージ250は、XY平面(水平面)において回転可能に構成される。換言すれば、回転ステージ250はz軸を中心に回転可能に構成される。回転ステージ250は、回転軸受などで構成される公知の回転ステージ250を採用することができる。
【0036】
回転ステージ250の上には、第1の昇降機構233が搭載されている。第1の昇降機構233は、シリンダ(第1のシリンダ)252およびピストン(第1のピストン)254を有する。シリンダ252は第2のステージ232のベース236に連結されている。また、シリンダ252には移動可能なピストン254が連結されており、シリンダ252内の空気圧を調整することで、ピストン254を移動させることができる。ピストン254の端部には、第1のステージ270のベース274が連結されている。そのため、シリンダ252内の空気圧を調整することで、ピストン254および第1のステージ270を高さ方向(z方向)に移動させることができる。これにより、第1の昇降機構233は、基板WFをトップリング302から受け取る際には、ベース274を上昇させて吸着パッド271を介して支持面272aを基板WFに接触させるとともに、吸引路272bを介して基板WFを吸引している状態でベース274を下降させるように構成することができる。さらに、センサ216bは、支持面272a上の基板WFの有無を検知するように構成することができる。この場合、第1の昇降機構233は、基板WFをトップリング302から受け取る際に、ベース274を下降させた状態においてセンサ216bにより基板WFが無いと検知された場合には、ベース274の昇降を繰り返すように構成することができる。すなわち、トップリング302から基板WFの受け取りが正常に行われなかった場合には、第1の昇降機構233は、再度、ベース274を上昇させて支持面272aを基板WFに接触させ、吸引路272bを介して基板WFを吸引している状態でベース274を下降させることができる。
【0037】
上述の構成によれば、第2の昇降機構231は、第1のステージ270および第2のステージ232の両方を高さ方向(z方向)に移動させ、第1の昇降機構233は、第1のステージ270を第2のステージ232に対して高さ方向(z方向)に移動させることができる。また、第1のステージ270および第2のステージ232は、XYステージ248により、水平面内で直交する2方向(xy方向)に移動可能である。さらに、第1のステージ270および第2のステージ232は、回転ステージ250により、水平面内(z軸を中心に)で回転可能である。そのため、プッシャ230とトップリング302との間で基板WFを授受するときに、プッシャ230とトップリング302との位置合わせを行うことができる。なお、図示の実施形態においては、第1の昇降機構233および第2の昇降機構231は、空圧式の昇降機構であるが、これらの昇降機構は液圧式でもよく、またモータおよびボールネジなどを使用した電動式の昇降機構としてもよい。第2の昇降機構231により、第2のステージ232および第1のステージ270は下位置および上位置の間を移動することができる。
【0038】
次に、プッシャ230からトップリング302への基板WFの受け渡しについて説明する。
図7は、第1のステージ270および第2のステージ232が下位置にある状態を示している。基板WFをトップリング302に受け渡す場合、プッシャ230は、
図7に示す状態から第2の昇降機構231により第1のステージ270および第2のステージ232を上昇させる。これにより、プッシャ230は吸着パッド271を基板WFに接触させて基板WFを持ち上げるとともに、支持柱234の支持面234aによってトップリング302のリテーナ部材308を支持する。続いて、プッシャ230は、第1の昇降機構233によって第1のステージ270を第2のステージ232に対して上昇させることによって、基板WFをトップリング302に接触させる。この状態でトップリング302の圧力室P1に対する真空引きを行うことによって基板WFはトップリング302に吸着され、トップリング302に受け渡される。トップリング302に受け渡された基板WFには研磨モジュール300によって研磨処理が施される。基板WFをトップリング302に受け渡した後、プッシャ230は
図7に示す状態に戻る。なお、基板WFをトップリング302に受け渡す際には、真空源260による真空引きは停止されている。
【0039】
次に、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しについて説明する。プッシャ230は、トップリング302から基板WFを受け取る場合には、
図7に示す状態から第2の昇降機構231により第1のステージ270および第2のステージ232を上昇させて、支持柱234の支持面234aによってトップリング302のリテーナ部材308を支持する。続いて、プッシャ230は、第1の昇降機構233によって第1のステージ270を第2のステージ232に対して上昇させることによって、吸着パッド271を基板WFに接触させる。続いて、プッシャ230は、真空源260による真空引きを開始することによって吸着パッド271を介して基板WFを吸着する。一方、トップリング302は、圧力室P1に対する真空引きを停止し、流体路312を介して加圧空気等の加圧流体を圧力室P1へ供給する。この状態で、プッシャ230を下降させることによって基板WFをトップリング302から引き剥がすことが考えられる。しかしながら、基板WFとトップリング302との間の表面張力が強く作用している場合には、プッシャ230を下降させても基板WFをトップリング302から引き剥がせないという問題が生じ得る。
【0040】
<くさび機構>
これに対して、本実施形態では、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの確実性を向上させるためにくさび機構を採用している。
図10は、一実施形態によるくさび機構を模式的に示す斜視図である。
図10は、
図6におけるAA領域を拡大してくさび機構を模式的に示している。
図11は、一実施形態によるくさび機構を模式的に示す平面図および断面図である。
図11(A)は、くさび機構を模式的に示す平面図
であり、
図11(B)は、
図11(A)におけるBB領域を拡大して示しており、
図11(C)は、
図11(B)のC-C断面における断面図を示している。
【0041】
図10,11に示すように、本実施形態の基板処理装置は、支持柱234に設けられた2つのくさび機構235を備える。2つのくさび機構235は、矩形の基板WFの角を挟むように配置される。2つのくさび機構235は同一の構成を有しているので、以下、代表して1つのくさび機構235のみを説明する。なお、本実施形態では、4本の支持柱234のうちの1本に2つのくさび機構235が設けられる例を示すが、これに限らず、複数本の支持柱234にくさび機構235が設けられていてもよい。また、くさび機構235は支持柱234以外の部材に設けられていてもよい。
【0042】
くさび機構235は、基板WFとトップリング302との間に挿入されるくさび部材238を含む。くさび部材238は、トップリング302からプッシャ230へ基板WFを受け渡すときにトップリング302の弾性パッド310に保持された基板WFの側方に配置される。くさび部材238は、基板WFとトップリング302との間に挿入可能なくさび形状を有している。具体的には、くさび部材238は、基板WFの裏面と平行に伸びる第1の面238aと、第1の面238aに対向するとともに基板WFの方向に向けて先細りするように傾斜する第2の面238bと、を有する。第1の面238aと第2の面238bの基板WF側の端部は接続されており、第1の面238aと第2の面238bによって鋭角の先端238eが形成される。くさび部材238は、第1の面238aと第2の面238bの基板WFとは反対側の端部を接続する第3の面238cを有する。本実施形態では、くさび部材238は、支持柱234の支持面234aによってトップリング302のリテーナ部材308を支持した状態で、くさび部材238の鋭角の先端238eが弾性パッド310と基板WFの裏面との接触面の側方に配置されるように、支持柱234に位置決めされている。
【0043】
くさび機構235は、くさび部材238を基板WFの裏面に沿った方向に移動させて基板WFの裏面とトップリング302の弾性パッド310との間に挿入させるように構成された駆動部材237を含む。駆動部材237は、一例では、くさび部材238と接続されたピストンおよびピストンを収容するシリンダを備える空圧式の駆動機構であり、シリンダ内の空気圧を調整することによりピストンを介してくさび部材238を基板WFの裏面に沿った方向に往復移動させることができる。ただし、駆動部材237は、これに限らず公知の機構を採用することができる。
【0044】
くさび機構235は、トップリング302からプッシャ230へ基板WFを受け渡すときに、
図11(C)に示すように、くさび部材238を基板WFの裏面とトップリング302の弾性パッド310との間に挿入させる。これにより、基板WFとトップリング302との間に作用していた表面張力に抗して基板WFの端部を弾性パッド310から剥がすことができる。基板WFの端部を弾性パッド310から剥がすことによって、基板WFとトップリング302との間には周囲の気体(空気)が入り込み易くなる。したがって、プッシャ230は、吸着パッド271を介して基板WFを吸着した状態で第1のステージ270を下降させることにより、基板WFの全体を弾性パッド310から容易に剥がすことができる。本実施形態の基板処理装置によれば、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの確実性を向上させることができる。
【0045】
図12は、変形例のくさび機構を模式的に示す断面図である。
図12に示すように、変形例のくさび部材238は、くさび部材238の内部を通り第2の面238bに開口する穴238dを有する。本実施形態では、穴238dは、くさび部材238の第2の面238bと第3の面238cとを連通するように形成されるが、これに限定されない。くさび機構235は、穴238dを介して第2の面238bから流体(例えば空気または窒素な
どの気体)を噴射可能な流体供給源239を含む。
【0046】
変形例のくさび機構235は、トップリング302からプッシャ230へ基板WFを受け渡すときに、上記と同様に、くさび部材238を基板WFの裏面とトップリング302の弾性パッド310との間に挿入させる。続いて、くさび機構235は、流体供給源239によって穴238dを介して第2の面238bから流体を噴射する。本変形例によれば、基板WFの裏面とトップリング302の弾性パッド310との間にくさび部材238を挿入させることにより基板WFの端部と弾性パッド310との間に隙間を形成するとともに、隙間に対して第2の面238bから流体を噴射することにより基板WF全体を弾性パッド310から剥がれ易くすることができる。したがって、プッシャ230は、吸着パッド271を介して基板WFを吸着した状態で第1のステージ270を下降させることにより、基板WFの全体を弾性パッド310から容易に引き剥がすことができる。本変形例の基板処理装置によれば、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの確実性を向上させることができる。なお、基板処理装置1000は、上述のように、トップリング302からプッシャ230へ基板WFを受け渡すときに、圧力室(エアバッグ)P1に加圧空気等の加圧流体を供給することができる。これにより、弾性パッド310が膨張して弾性パッド310の下面が下向きに突出するように湾曲するので、弾性パッド310と基板WFの外周部裏面との間に、くさび部材238を挿入しやすくするための隙間を作ることができる。これに加えて、圧力室P1と弾性パッド310の基板保持面とを連通する非図示の複数の開口から基板WF裏面に向けて加圧空気等の加圧流体が供給される。その結果、弾性パッド310から基板WFを容易に剥離させることができるので、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの確実性と迅速性を向上させることができる。トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの迅速性を向上させることによって、基板WFの搬送時間が低減されるので、基板処理装置1000のスループットを向上させることができる。
【0047】
<傾斜機構>
次に、プッシャ230の第1のステージ270を傾斜させるための傾斜機構について説明する。
図13から
図16は、一実施形態による傾斜機構を模式的に示す断面図である。
図13から
図16においては、図示の明瞭化のために、第2の昇降機構231およびくさび機構235を省略している。
図13は、
図7に示す状態から第2の昇降機構231により第1のステージ270および第2のステージ232を上昇させ、さらに、第1の昇降機構233によって第1のステージ270を第2のステージ232に対して上昇させ、吸着パッド271を基板WFに接触させた状態を示している。
【0048】
図13に示すように、本実施形態の基板処理装置は、第1のステージ270を傾斜させるための傾斜機構251を含む。傾斜機構251は、第1のステージ270の底面の中央部に取り付けられた第1の回転軸253を含む。第1の回転軸253は、ピストン254と第1のステージ270との間に設けられる。言い換えれば、ピストン254は、第1の回転軸253を介して第1のステージ270を支持するようになっている。傾斜機構251は、ピストン254から側方に伸びるシャフト256と、第1のステージ270の底面の端部に取り付けられた第2の回転軸258と、第2の回転軸258を介して第1のステージ270を支持するピストン(第2のピストン)257と、を含む。また、傾斜機構251は、シャフト256の上面に取り付けられた第3の回転軸259と、ピストン257を昇降させるように構成されたシリンダ(第2のシリンダ)255を含む。シリンダ255は、第3の回転軸259を介してシャフト256に支持される。第1の回転軸253、第2の回転軸258、および第3の回転軸259は、本実施形態ではx軸の方向に伸びるヒンジ状の回転軸であるが、これに限定されない。第1の回転軸253、第2の回転軸258、第3の回転軸259、ピストン254、シャフト256、ピストン257、およびシリンダ255は、リンク機構を形成しており、リンク機構によって第1の回転軸253
周りに第1のステージ270を傾斜させることができるように構成される。なお、本実施形態では、第1の回転軸253が第1のステージ270の底面の中央部に設けられ、第2の回転軸258が第1のステージ270の底面の端部に取り付けられる例を示したが、これに限らず、第1の回転軸253および第2の回転軸258の取り付け位置は任意である。
【0049】
図14は、
図13に示す状態から基板WFの端部を剥離させた状態を示している。
図14に示すように、プッシャ230は、トップリング302からプッシャ230へ基板WFを受け渡すときに、傾斜機構251を用いて第1のステージ270を傾斜させることによって基板WFの端部をトップリング302から剥離させるように構成される。具体的には、プッシャ230は、くさび機構235を用いて基板WFとトップリング302との間にくさび部材238を挿入する。続いて、プッシャ230は、ピストン254を下げることによって第1のステージ270全体を下降させつつピストン257を下げることによって第1のステージ270を第1の回転軸253を中心に時計回りに回転(傾斜)させる。本実施形態によれば、くさび部材238を挿入することによって基板WFの端部とトップリング302との間には隙間が形成される。これに加えて隙間が形成された基板WFの端部を引き剥がすように第1のステージ270を傾斜させることによって、隙間から基板WFの全体に気体が入り込み易くなるので、小さい力で基板WFをトップリング302から容易に剥離することができる。
【0050】
図15は、
図14に示すように基板WFの端部をトップリング302から剥離させた後に、第1の昇降機構233を用いて第1のステージ270を下降させた状態を示している。
図15に示すように、プッシャ230は、ピストン254を下げることによって、第1のステージ270を傾斜させた状態にまま下降させることができる。これにより、
図15に示すように基板WFの全体をトップリング302から引き剥がすことができる。なお、プッシャ230は、基板WFとトップリング302との間にくさび部材238を挿入した後、傾斜機構251および第1の昇降機構233を用いて基板WFをトップリング302から引き剥がす工程の任意のタイミングで、流体供給源239によって穴238dを介して第2の面238bから流体を噴射することができる。これにより、トップリング302と基板WFとの間に流体が噴射されて両者の間の表面張力が弱まるので、トップリング302からプッシャ230への基板WFの受け渡しの確実性をさらに向上させることができる。
【0051】
図16は、
図15に示す状態から傾斜機構251を用いて第1のステージ270を水平にさせた状態を示している。
図16に示すように、プッシャ230は、ピストン257を上げることによって第1のステージ270を第1の回転軸253を中心に反時計回りに回転させ、第1のステージ270および基板WFを水平状態に戻すことができる。プッシャ230は、
図16の状態になった後は、第2の昇降機構231により第1のステージ270および第2のステージ232を下降させることによって、基板WFを搬送ローラ202上に受け渡すことができる。
【0052】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0053】
本願は、一実施形態として、被研磨面を下方に向けた状態で基板の裏面を保持するように構成されたトップリングと、前記トップリングとの間で基板を受け渡しするように構成
されたプッシャと、前記トップリングから前記プッシャへ前記基板を受け渡すときに前記トップリングに保持された基板の側方に配置されるくさび部材、および前記くさび部材を前記基板の裏面に沿った方向に移動させて前記基板の裏面と前記トップリングとの間に挿入させるように構成された駆動部材、を含むくさび機構と、を含む基板処理装置を開示する。
【0054】
さらに本願は、一実施形態として、前記くさび部材は、前記基板の裏面と平行に伸びる第1の面と、前記第1の面に対向するとともに前記基板の方向に向けて先細りするように傾斜する第2の面と、を有する、基板処理装置を開示する。
【0055】
さらに本願は、一実施形態として、前記くさび部材は、前記くさび部材の内部を通り前記第2の面に開口する穴を有し、前記くさび機構は、前記穴を介して前記第2の面から流体を噴射可能な流体供給源をさらに含む、基板処理装置を開示する。
【0056】
さらに本願は、一実施形態として、前記プッシャは、前記トップリングとの間で前記基板を受け渡しするための第1のステージと、前記第1のステージを昇降させるための第1の昇降機構と、前記第1のステージを傾斜させるための傾斜機構と、を含む、基板処理装置を開示する。
【0057】
さらに本願は、一実施形態として、前記プッシャは、前記トップリングから前記プッシャへ前記基板を受け渡すときに、前記傾斜機構を用いて前記第1のステージを傾斜させることによって前記基板の端部を前記トップリングから剥離させるように構成される、基板処理装置を開示する。
【0058】
さらに本願は、一実施形態として、前記プッシャは、前記基板の端部を前記トップリングから剥離させた後に、前記第1の昇降機構を用いて前記第1のステージを下降させるとともに前記傾斜機構を用いて前記第1のステージを水平にさせるように構成される、基板処理装置を開示する。
【0059】
さらに本願は、一実施形態として、前記第1の昇降機構は、前記第1のステージの底面を支持する第1のピストンと、前記第1のピストンを昇降させるように構成された第1のシリンダと、を含み、前記傾斜機構は、前記第1のピストンと前記第1のステージとの間に設けられた第1の回転軸と、前記第1のピストンから側方に伸びるシャフトと、前記第1のステージの底面に取り付けられた第2の回転軸と、前記第2の回転軸を介して前記第1のステージを支持する第2のピストンと、前記シャフトの上面に取り付けられた第3の回転軸と、前記第3の回転軸を介して前記シャフトに支持され、前記第2のピストンを昇降させるように構成された第2のシリンダと、を含む、
基板処理装置を開示する。
【0060】
さらに本願は、一実施形態として、前記第1のステージは、吸着パッドを介して前記基板を支持するための支持面を一方の端部に有する複数の第1の支持柱と、前記複数の第1の支持柱の他方の端部と連結される第1のベースと、を含み、前記複数の第1の支持柱の少なくとも1つには、真空源に連通し前記支持面に開口する吸引路が形成される、基板処理装置を開示する。
【0061】
さらに本願は、一実施形態として、前記トップリングとの間で基板を受け渡しするときに前記トップリングを支持するための第2のステージと、前記第1のステージおよび前記第2のステージを昇降させるための第2の昇降機構と、をさらに含み、前記第2のステージは、前記トップリングとの間で基板を受け渡しするときに前記トップリングを支持するための支持面を一方の端部に有する複数の第2の支持柱と、前記複数の第2の支持柱の他
方の端部と連結される第2のベースと、を含み、前記くさび部材は、前記複数の第2の支持柱の少なくとも1つに設けられる、基板処理装置を開示する。
【符号の説明】
【0062】
230 プッシャ
231 第2の昇降機構
232 第2のステージ
233 第1の昇降機構
234,272 支持柱
234a,272a 支持面
234b 傾斜面
235 くさび機構
236,274 ベース
237 駆動部材
238 くさび部材
238a 第1の面
238b 第2の面
238c 第3の面
238d 穴
239 流体供給源
240 シリンダ
242,254,257 ピストン
251 傾斜機構
252,255 シリンダ
253 第1の回転軸
256 シャフト
258 第2の回転軸
259 第3の回転軸
260 真空源
270 第1のステージ
271 吸着パッド
272b 吸引路
302 トップリング
310 弾性パッド
1000 基板処理装置
WF 基板