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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】疎水性リン酸チタン粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/37 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
C01B25/37 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020569476
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000525
(87)【国際公開番号】W WO2020158332
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019013228
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩國 真弓
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 直也
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180797(WO,A1)
【文献】特開平11-193293(JP,A)
【文献】特開平05-032406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/37
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に、シラン系ゾル-ゲル形成反応法または金属石鹸処理法により疎水化層を形成する工程を有する疎水性リン酸チタン粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸チタン粉体及び化粧料用白色顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リン酸チタンの板状結晶粒子からなるリン酸チタン粉体が記載されている。このリン酸チタン粉体は、板状結晶粒子の平均厚さが0.01μm以上0.10μm未満であり、板状結晶粒子の平均一次粒子径を平均厚さで除した値であるアスペクト比が5以上である。このような薄い板状結晶粒子からなるリン酸チタンは、粒子同士の滑り性が良好であるため、化粧料等に添加される添加剤(例えば、化粧料用白色顔料)や、塗料に添加される顔料として好適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2018/180797パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リン酸チタンは親水性であるため、有機溶媒に対する分散性が低く、分散液となった場合でも粒子の凝集が生じて、リン酸チタン粉体の粒度が大きくなる可能性が高い。つまり、そのままでは、特許文献1のリン酸チタン粉体の良好な物性を発現させた状態で、疎水性液体を溶媒としたリン酸チタンの分散液を得ることができない。リン酸チタンの有機溶媒分散液は、塗料や化粧品のベース液体として有用である。
本発明の課題は、化粧品原料や塗料原料として好適なリン酸チタン粉体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるリン酸チタン粉体は、リン酸チタンの板状結晶粒子からなるリン酸チタン粉体であって、板状結晶粒子の表面に改質層が存在する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、化粧品原料や塗料原料として好適なリン酸チタン粉体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例で得られたサンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、原料(硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸との混合物)のリン濃度[P]と、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均厚さと、の関係を示すグラフである。
図2】実施例で得られたサンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、原料(硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸との混合物)のリン濃度[P]と、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均一次粒子径と、の関係を示すグラフである。
図3】実施例で得られたサンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、リン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均厚さと平均一次粒子径との関係を示すグラフである。
図4】実施例で得られたサンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、リン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均一次粒子径とアスペクト比との関係を示すグラフである。
図5】実施例で原料(硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸との混合物)の濃度比[P]/[Ti]を一定にして得られたリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、原料のリン濃度[P]と、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均一次粒子径と、の関係を示すグラフである。
図6】サンプルNo.2のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。
図7】サンプルNo.11のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。
図8】サンプルNo.13のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。
図9】サンプルNo.14のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。
図10】サンプルNo.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0009】
本実施形態のリン酸チタン粉体は、リン酸チタンの板状結晶粒子からなり、板状結晶粒子の表面に改質層が存在する。本実施形態のリン酸チタン粉体における改質層は疎水化層である。疎水化層以外の疎水化層としては、分散性向上層、付着性向上層、濡れ性向上層、親水性向上層、吸着性向上層、触媒活性層、凝集性向上層などが挙げられる。
リン酸チタンからなる板状結晶粒子の表面に改質層を設ける方法としては、メカノケミカル反応法、粒子複合化法、エッチング法、電気泳動法、物理蒸着法、化学蒸着法、ゾル-ゲル化反応法、沈殿法、金属石鹸処理法等が挙げられる。
【0010】
本実施形態のリン酸チタン粉体を構成する板状結晶粒子の平均厚さは0.01μm以上4μm以下で、板状結晶粒子の平均一次粒子径を平均厚さで除した値であるアスペクト比が5以上である。また、本実施形態のリン酸チタン粉体は、リン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が0.05μm以上20μm以下であり、リン酸チタンの板状結晶粒子が六角形板状結晶粒子である。
【0011】
このような本実施形態のリン酸チタン粉体は、粒子径を厚さで除した値であるアスペクト比が高く、平均厚さが4μm以下の板状結晶粒子からなるリン酸チタン粉体であるため、リン酸チタンの粒子同士の滑り性が良好である。また、本実施形態のリン酸チタン粉体は、板状結晶粒子の表面に疎水化層が存在するため、疎水性液体を溶媒としたリン酸チタンの分散液を得ることができる。
よって、本実施形態のリン酸チタン粉体は、日焼け止め化粧料等の化粧料に添加される添加剤や、塗料に添加される顔料として好適である。また、本実施形態のリン酸チタン粉体は、化粧料用白色顔料としても好適である。
【0012】
本実施形態のリン酸チタン粉体は、チタンとリンとを含有する原料を水熱合成法により反応させてリン酸チタンの板状結晶粒子を製造した後、得られた板状結晶粒子をゾル-ゲル化反応法や金属石鹸処理法で疎水化処理することで得ることができる。
水熱合成法で使用する原料としては、硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸との混合物を用いることができる。チタン源として硫酸チタンを使用することにより、薄くアスペクト比の高いリン酸チタンの板状結晶粒子が得られやすくなる。
【0013】
水熱合成法の反応条件は特に限定されないが、反応温度は例えば100℃以上160℃以下とする。
反応温度が160℃以下であれば、リン酸チタン粉体を製造する際に、汎用設備であるグラスライニング素材製の反応容器を使用することができるため、製造コストが抑制できる。また、160℃以下であれば、第一種圧力容器(圧力1MPa以下)で製造することが可能である。さらに、160℃以下の場合は、製造時の薬品濃度をより広範囲の条件で設定することが可能となる。
【0014】
一方、反応温度が100℃以上であれば、結晶性の高いリン酸チタンの板状結晶粒子が得られやすいことに加えて、生成物の粘度が低いため簡易な製造設備でリン酸チタン粉体を製造することができる。
ただし、反応温度が100℃以下になると、リン酸チタンの板状結晶粒子の結晶性が若干低下するおそれがあることに加えて、生成物の粘度が若干高くなり製造設備の設計に影響が生じるおそれがある。そのため、反応温度を110℃以上160℃以下とすることが、より好ましい。なお、100℃以上160℃以下の範囲内においては、リン酸チタンの板状結晶粒子の結晶性に大差はない。
【0015】
また、原料のチタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]は、例えば3以上21以下とする。比[P]/[Ti]が3以上、好ましくは5以上であれば、リン酸チタンの板状結晶粒子が生成しやすい。一方、原料のチタンの濃度が同一である場合、比[P]/[Ti]が大きいほど、リン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が小さくなる傾向があるが、21超過としても、それ以上の小径化は起こらず平均一次粒子径はほぼ一定となる。
【0016】
さらに、原料のチタンの濃度は、例えば0.05mol/L以上1.0mol/L以下とする。比[P]/[Ti]が同一である場合、原料のチタンの濃度が高いほど、リン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径及び平均二次粒子径が小さくなる傾向がある。また、原料のチタンの濃度を高めることにより、製造コストを抑制することができる。よって、原料のチタンの濃度は0.05mol/L以上であることが好ましく、0.2mol/L以上であることがより好ましい。
ただし、原料のチタンの濃度が高すぎると、生成物の粘度が高くなり、生成物の均一性が低下するおそれがあるため、原料のチタンの濃度は1.0mol/L以下であることが好ましく、0.6mol/L以下であることがより好ましい。
【実施例
【0017】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
[疎水化処理前のリン酸チタン粉体の製造]
硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸を水熱合成法により反応させて、サンプルNo.1~No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を製造した。サンプル毎に、水熱合成の条件、つまり、原料(硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン酸との混合物)のチタン濃度(モル濃度)[Ti]、原料のリン濃度(モル濃度)[P]、両者の濃度比[P]/[Ti]、反応温度、及び反応時間を、表1に示すように変化させた。
【0018】
具体的には、先ず、チタン源である硫酸チタン(IV)または硫酸チタニルとリン源であるリン酸とを混合して混合物を得た。サンプルNo.1~No.10、No.13ではチタン源として硫酸チタン(IV)を用いた。サンプルNo.11、No.12、No.14、No.15ではチタン源として硫酸チタニルを用いた。また、サンプルNo.1~No.3、No.10~No.15では85%リン酸(濃度85質量%のリン酸水溶液)を用い、サンプルNo.4~No.9では75%リン酸(濃度75質量%のリン酸水溶液)を用いた。
【0019】
次に、得られた混合物を反応容器内で所定の温度に加熱した。その際、反応容器の加圧は行わず、容器内の圧力は加熱温度で自然に決まる値とした(自然加圧)。所定時間の反応後に、容器内にスラリー状の生成物が得られた。得られた生成物を冷却し、水洗後に乾燥することで、リン酸チタン粉体(疎水化処理前)を得た。
得られたNo.1~No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)の平均一次粒子径及び平均厚さを測定し、これらの数値からアスペクト比を算出した。なお、平均一次粒子径の測定値は、走査型電子顕微鏡で得られた画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することで得られた値である。これらの値を水熱合成の条件とともに表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
また、サンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、原料のリン濃度[P]と、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均厚さと、の関係を、図1のグラフに示す。サンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、原料のリン濃度[P]と、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均一次粒子径と、の関係を、図2のグラフに示す。
さらに、サンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均厚さと平均一次粒子径との関係を、図3のグラフに示す。サンプルNo.1~12のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)について、得られたリン酸チタンの六角形板状結晶粒子の平均一次粒子径とアスペクト比との関係を、図4のグラフに示す。
【0022】
(チタンの濃度について)
原料の濃度比[P]/[Ti]を一定(16.5)とし、チタンの濃度を0.22mol/L又は0.26mol/Lとして、水熱合成法によりリン酸チタン粉体を製造した。反応温度は、110℃、120℃、130℃、又は160℃とした。
その結果、チタンの濃度が高い方がリン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が小さかった。
【0023】
次に、濃度比[P]/[Ti]を一定(13.4)とし、チタンの濃度を0.39mol/L、0.45mol/L、0.52mol/L、又は0.58mol/Lとして、水熱合成法によりリン酸チタン粉体を製造した。反応温度は一定(110℃)とした。
その結果、チタンの濃度が高い方が製造コストを抑制できることが分かった。また、チタンの濃度と得られたリン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径との関係を、図5にグラフで示す。このグラフから分かるように、チタンの濃度が高い方がリン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が小さかった。
これらの結果から、リンの濃度を低くして、チタンの濃度を高くすることにより、リン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径を所望の大きさに制御することが可能であることが分かる。
【0024】
(リンの濃度について)
チタンの濃度を高濃度化した場合(例えば0.4mol/L以上)のリンの濃度の影響について検討した。チタンの濃度を0.22mol/L、0.41mol/L、又は0.60mol/Lとし、濃度比[P]/[Ti]及びリンの濃度を種々変更して、水熱合成法によりリン酸チタン粉体を製造した。反応温度は、チタンの濃度が0.22mol/Lである場合は160℃、0.41mol/L及び0.60mol/Lである場合は110℃とした。
【0025】
その結果、チタンの濃度がいずれの場合でも、リンの濃度が2.6mol/L以下であると、リン酸チタンの結晶性が低下し板状結晶粒子とならなかったが、リンの濃度が3.3mol/L以上であれば、リン酸チタンの板状結晶粒子が生成した。そして、チタンの濃度が低濃度である場合(例えば0.2mol/L)と同様に、リンの濃度が高いほど、リン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が小さくなる傾向が見られた。
また、チタンの濃度を一定(0.60mol/L)とし、リンの濃度を種々(3.3、4.09、4.91mol/L)変更した検討によって、リンの濃度によってリン酸チタンの板状結晶粒子の平均一次粒子径が変化することが分かった。
【0026】
図6は、No.2のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像であり、図7は、No.11のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像であり、図8は、No.13のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。また、図9は、No.14のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像であり、図10は、No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)のSEM画像である。図6~10から分かるように、No.2、No.11、No.14およびNo.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を構成する粒子は、六角形板状であったが、No.13のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を構成する粒子は、板状ではなく棒状であった。
【0027】
[疎水化処理1]
No.11のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)に対して、以下の方法(ゾル-ゲル化反応法、乾式)で疎水化処理を行うことにより、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層(改質層)が存在するリン酸チタン粉体を得た。
先ず、酢酸濃度が0.05質量%である酢酸エタノール溶液を調製した。次に、この酢酸エタノール溶液3gにトリエトキシ(オクチル)シランを3g入れて、常温で3時間撹拌することで、トリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を得た。次に、得られたトリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を、No.11のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)の乾粉に、この乾粉の質量の3質量%となる量だけ添加して混合して混合物を得た。次に、この混合物を常温で12時間静置した後、180℃で5時間加熱した。
このようにして疎水化処理されたリン酸チタン粉体を水に添加したところ、攪拌しても二層に分離して水に浮いた状態となったため、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層が存在していることが確認できた。
【0028】
[疎水化処理2]
No.14のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)に対して、以下の方法(ゾル-ゲル化反応法、湿式)で疎水化処理を行うことにより、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層(改質層)が存在するリン酸チタン粉体を得た。
先ず、酢酸濃度が0.5質量%である酢酸エタノール溶液を調製した。次に、この酢酸エタノール溶液9.8gにトリエトキシ(オクチル)シランを0.2g入れて、常温で24時間撹拌することで、トリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を得た。
【0029】
次に、得られたトリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を、No.14のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を10質量%含むスラリー20gに、8.87g添加して混合して混合物を得た。次に、この混合物を常温で24時間攪拌した後、固液分離し、固形分を水洗し、100℃で乾燥後、150℃で3時間加熱した。
このようにして疎水化処理されたリン酸チタン粉体を水に添加したところ、攪拌しても二層に分離して水に浮いた状態となった。また、疎水性溶媒のイソドデカンに添加して攪拌したところ、分散状態となった。これらのことから、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層が存在していることが確認できた。なお、疎水化処理前のNo.14のリン酸チタン粉体を水に添加して攪拌したところ、分散状態となり、イソドデカンに添加したところ、攪拌しても二層に分離して下に沈んだ状態となった。
【0030】
[疎水化処理3]
No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)に対して、以下の方法(ゾル-ゲル化反応法、湿式)で疎水化処理を行うことにより、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層(改質層)が存在するリン酸チタン粉体を得た。
先ず、酢酸濃度が0.5質量%である酢酸エタノール溶液を調製した。次に、この酢酸エタノール溶液9.9gにトリエトキシ(オクチル)シランを0.1g入れて、常温で24時間撹拌することで、トリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を得た。
【0031】
次に、得られたトリエトキシ(オクチル)シラン希釈液を、No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を10質量%含むスラリー50gに、3.5g添加して混合して混合物を得た。次に、この混合物を常温で1時間攪拌した後、固液分離し、固形分を水洗し、100℃で乾燥後、150℃で3時間加熱した。
このようにして疎水化処理されたリン酸チタン粉体を水に添加したところ、攪拌しても二層に分離して水に浮いた状態となった。また、疎水性溶媒のイソドデカンに添加して攪拌したところ、分散状態となった。これらのことから、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層が存在していることが確認できた。
なお、疎水化処理前のNo.15のリン酸チタン粉体を水に添加して攪拌したところ、分散状態となり、イソドデカンに添加したところ、攪拌しても二層に分離して下に沈んだ状態となった。
【0032】
[疎水化処理4]
No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)に対して、以下の方法(金属石鹸処理法、複分解法)で疎水化処理を行うことにより、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層(改質層)が存在するリン酸チタン粉体を得た。
先ず、No.15のリン酸チタン粉体(疎水化処理前)を20質量%含むスラリー50gを70℃に加熱した。次に、このスラリーにステアリン酸ナトリウムパウダー1gを徐々に添加して、溶解した。次に、このスラリーに、40質量%の硫酸マグネシウム七水和物水溶液を、2.16g滴下した。次に、この水溶液が滴下された後のスラリーを、10分間撹拌した。ここまでの間、スラリーの温度は70℃に保持した。
【0033】
次に、このスラリーを室温に冷却した後、固液分離し、固形分を水洗した。次に、固形分を110℃で4時間乾燥した。その結果、リン酸チタン粉体の表面に、ステアリン酸マグネシウムからなる石鹸層が形成された状態となった。
このようにして疎水化処理されたリン酸チタン粉体を水に添加したところ、攪拌しても二層に分離して水に浮いた状態となった。また、疎水性溶媒のイソドデカンに添加して攪拌したところ、分散状態となった。これらのことから、リン酸チタンの板状結晶粒子の表面に疎水化層が存在していることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10