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特許7548845表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法、表面処理ゾルゲルシリカ粒子、及び静電荷像現像用トナー外添剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法、表面処理ゾルゲルシリカ粒子、及び静電荷像現像用トナー外添剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240903BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C01B33/18 C
G03G9/097 371
G03G9/097 375
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021027678
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129112
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】松村 和之
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099582(JP,A)
【文献】特開2006-151764(JP,A)
【文献】特開2007-191355(JP,A)
【文献】特開2015-059054(JP,A)
【文献】特開2008-273757(JP,A)
【文献】特開2014-114175(JP,A)
【文献】特開2008-174430(JP,A)
【文献】特開2011-032114(JP,A)
【文献】特開2020-033224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
G03G 9/00-9/113、9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法であって、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子を得る工程、
(A2)前記親水性ゾルゲルシリカ粒子に(CSi-基又はR Si-基(式中、R1は炭素原子数2~8のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素原子数6~8のアリール基であり、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~4のアルキル基である)を有する化合物を添加して、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(式中、R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子を得る工程、及び
(A3)前記予備処理シリカ粒子にR Si-基(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)を有する化合物を添加して、前記予備処理シリカ粒子の表面に更にR SiO1/2単位(式中、Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程を含み、かつ、
前記工程(A2)で前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に導入する単位と、前記工程(A3)で前記予備処理シリカ粒子の表面に導入する単位はそれぞれ異なることを特徴とする表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A1)を、一般式(i):
Si(OR (i)
(式中、各Rは同一又は異種の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)
で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程とし、
前記工程(A2)を、得られた前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(ii):
SiNHSiR (ii)
(式中、R1及びRは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、ヘキサエチルジシラザン、一般式(iii-1):
SiX (iii-1)
(式中、R1及びRは前記の通りであり、XはOH基又は加水分解性基である)
で示される1官能性シラン化合物、一般式(iii-2):
(CSiX (iii-2)
(式中、Xは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子中のSiO単位1モルあたり0.001~1モルを添加して、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程とし、
前記工程(A3)を、得られた前記予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(iv):
SiNHSiR (iv)
(式中、Rは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、一般式(v):
SiX (v)
(式中、R及びXは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を、前記予備処理シリカ粒子中のSiO単位1モルあたり5~50モルを添加して、前記予備処理シリカ粒子の表面にR SiO1/2単位(Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程とする
ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記Rを炭素原子数6~8のアルキル基、フェニル基、又はビニル基とし、前記Rをメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基とし、前記Rをメチル基又はエチル基とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
表面にR SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数6~8のアルキル基もしくはアリール基、又はビニル基であり、Rは同一又は異種の炭素原子数1~4のアルキル基である)及びR SiO1/2単位(式中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である)を有するものである表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、
動的光散乱法におけるメジアン径が5nm~99nmであり、
平均円形度が0.8~1.0であり、
屈折率が1.38~1.42であり、
真密度が1.7g/cm以上1.9g/cm未満であり、
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が0.4~1.9であり、
メタノール疎水化度が67%以上75%以下
のものであることを特徴とする表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
【請求項5】
前記Rが炭素原子数6~8のアルキル基、フェニル基、又はビニル基であり、前記Rがメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基であり、前記Rがメチル基又はエチル基であることを特徴とする請求項4に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子を含有するものであることを特徴とする静電荷像現像用トナー外添剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理ゾルゲルシリカ粒子、その製造方法及び電子写真法、静電記録法等における静電荷像を現像するために使用する静電荷像現像用トナー外添剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等で使用する乾式現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散したトナーそのものを用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別でき、そしてこれらの現像剤を用いてコピー操作を行う場合、プロセス適合性を有するためには、現像剤が流動性、耐ケーキング性、定着性、帯電性、クリーニング性等に優れていることが必要である。そして特に、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるために、無機微粒子をトナー外添剤として使用することがしばしば行われている。
【0003】
しかしながら、無機微粒子の分散性がトナー特性に大きな影響を与え、分散性が不均一な場合、流動性、耐ケーキング性、定着性に所望の特性が得られなかったり、クリーニング性が不十分になって、感光体上にトナー固着等が発生し、黒点状の画像欠陥が生じる原因となることがあった。これらの点を改善する目的で、無機微粒子の表面を疎水化処理したものが種々提案されている。
【0004】
また最近では複写機の高速化、低エネルギー消費が求められており、従来のトナーよりもより高い劣化耐性が求められるにようになってきた。トナーの劣化耐性が高くないと、使用開始直後から終了時までトナーの転写効率を高い状態に維持できない。その対策の一つとして、大粒径トナー外添剤のスペーサ効果を利用したトナーの劣化抑制技術が提案されている(特許文献1、2)。
【0005】
またトナー外添剤として、小粒径トナー外添剤と大粒径トナー外添剤を併用することがしばしば行われている。トナー粒子表面に付着した大粒径トナー外添剤の存在により、その近傍のトナー粒子表面上に付着した小粒径トナー外添剤が直接せん断力や衝撃力などの外力を受ける頻度が低下し、その外力による小粒径トナー外添剤のトナー粒子表面への埋没を防止できる(スペーサ効果)ことから、トナーの劣化を抑制することが可能となる。
【0006】
また、大粒径トナー外添剤を外添することで、感光体からトナーが離れ易くなり、感光体上に乗ったトナーが速やかに紙上に転写され、転写効率を高い状態に維持できることから、大粒径トナー外添剤は転写助剤としても機能すると考えられる。
【0007】
この時使用される小粒径シリカは主に流動化剤として使用される場合が多いが、今までは燃焼法により製造されたフュームドシリカ粒子が主に使用されてきた。しかし従来のフュームドシリカ粒子では確かに流動性は向上するが、昨今の小粒径化したトナーの流動性を向上させるには添加量が多くなるきらいがあった。また高画質化が進むにつれ、転写性、クリーニング性がより厳密に求められるようになり、凝集物がなく、分散性が優れるものが要求されてきた。
【0008】
一方、帯電特性等の改善などを目的として上述したようなフュームドシリカ粒子が用いられるが、一般的に表面疎水化が充分でなく、表面にシラノール基が残存しているため、特に環境変化時に帯電コントロールがしにくいという問題があり、流動性と共に帯電制御も良好な小粒径のシリカ粒子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平06-027718号公報
【文献】特開平11-143118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、トナーに添加された場合に良好な流動性を付与でき、かつ環境変化時の帯電変化が少ない表面処理ゾルゲルシリカ粒子及びその製造方法、並びに該表面処理ゾルゲルシリカ粒子からなるトナー用外添剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、
表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法であって、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子を得る工程、
(A2)前記親水性ゾルゲルシリカ粒子に(CSi-基又はR Si-基(式中、R1は炭素原子数2~8のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素原子数6~8のアリール基であり、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~4のアルキル基である)を有する化合物を添加して、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(式中、R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子を得る工程、及び
(A3)前記予備処理シリカ粒子にR Si-基(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)を有する化合物を添加して、前記予備処理シリカ粒子の表面に更にR SiO1/2単位(式中、Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程を含み、かつ、
前記工程(A2)で前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に導入する単位と、前記工程(A3)で前記予備処理シリカ粒子の表面に導入する単位はそれぞれ異なる表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法を提供する。
【0012】
このような表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法であれば、トナーに添加された場合に良好な流動性を付与でき、かつ環境変化時の帯電変化が少ない表面処理ゾルゲルシリカ粒子を製造することができる。
【0013】
また、前記工程(A1)を、一般式(i):
Si(OR (i)
(式中、各Rは同一又は異種の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)
で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程とし、
前記工程(A2)を、得られた前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(ii):
SiNHSiR (ii)
(式中、R1及びRは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、ヘキサエチルジシラザン、一般式(iii-1):
SiX (iii-1)
(式中、R1及びRは前記の通りであり、XはOH基又は加水分解性基である)
で示される1官能性シラン化合物、一般式(iii-2):
(CSiX (iii-2)
(式中、Xは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子中のSiO単位1モルあたり0.001~1モルを添加して、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程とし、
前記工程(A3)を、得られた前記予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(iv):
SiNHSiR (iv)
(式中、Rは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、一般式(v):
SiX (v)
(式中、R及びXは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を、前記予備処理シリカ粒子中のSiO単位1モルあたり5~50モルを添加して、前記予備処理シリカ粒子の表面にR SiO1/2単位(Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程とすることが好ましい。
【0014】
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法はこのような製造方法とすることができる。
【0015】
また、前記Rを炭素原子数6~8のアルキル基、フェニル基、又はビニル基とし、前記Rをメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基とし、前記Rをメチル基又はエチル基とすることが好ましい。
【0016】
本発明では、親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面処理を、特にこのような化合物を用いて行うことが好ましい。
【0017】
また本発明では、
表面にR SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数6~8のアルキル基もしくはアリール基、又はビニル基であり、Rは同一又は異種の炭素原子数1~4のアルキル基である)及びR SiO1/2単位(式中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である)を有するものである表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、
動的光散乱法におけるメジアン径が5nm~99nmであり、
平均円形度が0.8~1.0であり、
屈折率が1.38~1.42であり、
真密度が1.7g/cm以上1.9g/cm未満であり、
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が0.4~1.9であり、
メタノール疎水化度が67%以上75%以下
のものである表面処理ゾルゲルシリカ粒子を提供する。
【0018】
本発明では、このような特性を有する表面処理ゾルゲルシリカ粒子とすることができる。
【0019】
このとき、前記Rが炭素原子数6~8のアルキル基、フェニル基、又はビニル基であり、前記Rがメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基であり、前記Rがメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0020】
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、特にこのような表面処理が施されたものとすることが好ましい。
【0021】
また本発明では、上記の表面処理ゾルゲルシリカ粒子を含有するものである静電荷像現像用トナー外添剤を提供する。
【0022】
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、トナー外添剤として用いた場合、トナーに良好な流動性および印刷特性を与えることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、外添剤として従来の小粒径フュームドシリカを用いた場合に発生していた環境変化による帯電異常やトナー流動性を改善できる表面処理ゾルゲルシリカ粒子、これからなる静電荷像現像用トナー外添剤、並びに静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述のように、トナーに添加された場合に良好な流動性を付与でき、かつ環境変化時の帯電量変化が少ないトナー用外添剤が求められていた。
【0025】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゾルゲル法から得られる球状シリカ粒子を特定の有機ケイ素化合物により表面処理することで、トナーに添加された場合に良好な流動性を付与でき、環境変化時における帯電量変化が少ない表面処理ゾルゲルシリカ粒子が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
即ち、本発明は、
表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法であって、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子を得る工程、
(A2)前記親水性ゾルゲルシリカ粒子に(CSi-基又はR Si-基(式中、R1は炭素原子数2~8のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素原子数6~8のアリール基であり、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~4のアルキル基である)を有する化合物を添加して、前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(式中、R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子を得る工程、及び
(A3)前記予備処理シリカ粒子にR Si-基(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)を有する化合物を添加して、前記予備処理シリカ粒子の表面に更にR SiO1/2単位(式中、Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程を含み、かつ、
前記工程(A2)で前記親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に導入する単位と、前記工程(A3)で前記予備処理シリカ粒子の表面に導入する単位はそれぞれ異なる表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法である。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法)
・工程(A1):親水性ゾルゲルシリカ粒子の合成工程
工程(A1)は、4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を加水分解及び縮合することによって、表面にシラノール基を有し、かつ実質的にSiO2単位からなる親水性ゾルゲルシリカ粒子を得る工程である。
【0029】
工程(A1)において、親水性ゾルゲルシリカ粒子が「実質的にSiO単位からなる」とは、該粒子は基本的にはSiO単位から構成されているがSiO単位のみから構成されている訳ではなく、少なくとも表面に通常知られているようにシラノール基を多数個有してもよいことを意味する。また、場合によっては、原料である4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物に由来する加水分解性基(ヒドロカルビルオキシ基)が一部シラノール基に転化されずに若干量そのまま粒子表面や内部に残存していてもよいことを意味する。
【0030】
本発明においては、工程(A1)でテトラアルコキシシラン等の4官能性シラン化合物の加水分解によって得られる小粒径ゾルゲル法シリカ粒子をシリカ原体(疎水化処理前のシリカ粒子)として、これに特定の表面処理を行なうことにより、粉体として得たときに、疎水化処理後の粒子径がシリカ原体の一次粒子径を維持しており、凝集しておらず、小粒径であり、トナー用外添剤として良好な表面処理ゾルゲルシリカ粒子が得られる。
【0031】
工程(A1)は、一般式(i):
Si(OR (i)
(式中、各Rは同一又は異種の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)
で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(i)中、Rは、炭素原子数1~6の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1~4、特に好ましくは1~2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基;フェニル基のようなアリール基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
【0033】
上記一般式(i)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;及びテトラフェノキシシランが挙げられ、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(i)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等のアルキルシリケートが挙げられる。
【0034】
上記親水性有機溶媒としては、一般式(i)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類であり、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。該アルコール類としては、一般式(vi):
OH (vi)
(式中、Rは炭素原子数1~6の1価炭化水素基である)
で示されるアルコールが挙げられる。
【0035】
上記一般式(vi)中、Rは、炭素原子数1~6の1価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1~4、特に好ましくは1~2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。一般式(vi)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する親水性ゾルゲルシリカ粒子の粒子径が大きくなる。従って、小粒径のシリカ粒子を得るためには、メタノールが好ましい。
【0036】
上記塩基性物質としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等、好ましくは、アンモニア、ジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を上記親水性有機溶媒と混合すればよい。
【0037】
塩基性物質の使用量は、一般式(i)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01~2モルであることが好ましく、0.02~0.5モルであることがより好ましく、0.04~0.12モルであることが特に好ましい。このとき、塩基性物質の量が少ないほど小粒径のシリカ粒子となる。
【0038】
上記加水分解及び縮合で使用される水の量は、一般式(i)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.1~2モルであることが好ましく、0.1~1モルであることがより好ましい。水に対する上記親水性有機溶媒の比率(親水性有機溶媒の量/水の量)は、質量比で0.2~10であることが好ましく、0.3~5であることがより好ましい。親水性有機溶媒の量が多いほど小粒径のシリカ粒子が得られる。
【0039】
4官能性シラン化合物等の加水分解および縮合は、周知の方法、即ち、親水性有機溶媒と水との混合物中に、4官能性シラン化合物及び塩基性物質を添加することにより行うことができる。
【0040】
加水分解および縮合の際の温度は、20~50℃であることが好ましく、温度が高いほど小粒径のシリカ粒子が得られる。
【0041】
この工程(A1)で得られる親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液中の濃度は一般に、3~15質量%であり、好ましくは5~10質量%である。
【0042】
・工程(A2):予備処理シリカ粒子を得る工程
工程(A2)は、上記工程(A1)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子に(CSi-基又はR Si-基(式中、R1は炭素原子数2~8のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素原子数6~8のアリール基であり、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~4のアルキル基である)を有する化合物を添加して、親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(式中、R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子を得る工程である。本工程により、下記工程(A3)における表面処理がより均一に、且つ高度に進行する。
【0043】
工程(A2)は、得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(ii):
SiNHSiR (ii)
(式中、R1及びRは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、ヘキサエチルジシラザン、一般式(iii-1):
SiX (iii-1)
(式中、R1及びRは前記の通りであり、XはOH基又は加水分解性基である)
で示される1官能性シラン化合物、一般式(iii-2):
(CSiX (iii-2)
(式中、Xは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を添加して、親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面を上記シラザン化合物、上記1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物により処理して、親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位又はR SiO1/2単位(R1及びRは前記の通りである)を導入して予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程であることが好ましい。
【0044】
の炭素原子数2~8のアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基等が挙げらる。炭素原子数2~8のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、n-ブテニル基、n-ヘキセニル基、n-オクテニル基等が挙げらる。炭素原子数6~8のアリール基としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基等が挙げられる。Rは、炭素原子数6~8のアルキル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、n-オクチル基、フェニル基、ビニル基が特に好ましい。
【0045】
で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。これらのアルキル基は、その水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。なお、Rは上記Rとは異なる基である。
【0046】
Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルオキシ基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基又はアミノ基、特に好ましくはアルコキシ基が挙げられる。
【0047】
一般式(ii)で示されるシラザン化合物としては、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-プロピルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-ブチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-ヘキシルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-オクチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニル-テトラメチルジシラザン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジアリルテトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0048】
一般式(iii-1)で示される1官能性シラン化合物としては、エチルジメチルメトキシシラン、n-プロピルジメチルメトキシシラン、イソプロピルジメチルメトキシシラン、n-ブチルジメチルメトキシシラン、n-ヘキシルジメチルメトキシシラン、n-オクチルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシランやそれらのシラノール体やモノクロロ体等が挙げられる。
【0049】
一般式(iii-2)で示される1官能性シラン化合物としては、トリエチルメトキシシラン等のモノアルコキシシランやそれらのシラノール体やモノクロロ体等が挙げられる。
【0050】
一般式(ii)で示されるシラザン化合物、ヘキサエチルジシラザン、および一般式(iii-1)、(iii-2)で示される1官能性シラン化合物の合計の添加量は、親水性ゾルゲルシリカ粒子中のSiO単位1モルあたり0.001~1モルが好ましく、0.02~0.5モルがより好ましく、0.05~0.3モルが特に好ましい。このような範囲であれば、工程(A3)における表面処理効率を向上させることができる。
【0051】
また、工程(A2)における表面処理の反応温度は特に限定されないが、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~60℃である。
【0052】
・工程(A3):表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程
工程(A3)は、(A2)工程で得られた予備処理シリカ粒子にR Si-基(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1~6の一価炭化水素基である)を有する化合物を添加して、予備処理シリカ粒子の表面にR SiO1/2単位(式中、Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程である。この工程では、予備処理シリカ粒子表面に残存するシラノール基をトリオルガノシリル化する形でR SiO1/2単位が導入され、より高度に表面処理されたゾルゲルシリカ粒子が得られる。
【0053】
工程(A3)は、得られた予備処理シリカ粒子の混合溶媒分散液に、一般式(iv):
SiNHSiR (iv)
(式中、Rは前記の通りである)
で示されるシラザン化合物、一般式(v):
SiX (v)
(式中、R及びXは前記の通りである)
で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を添加して、予備処理シリカ粒子の表面を上記シラザン化合物、上記1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物により処理して、予備処理シリカ粒子の表面にR SiO1/2単位(Rは前記の通りである)を導入して表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程であることが好ましい。
【0054】
は、炭素原子数1~6の1価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1~4、特に好ましくは1~2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、より好ましくはメチル基である。また、これらの基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0055】
Xは工程(A2)のところで説明したものと同じものが挙げられる。
【0056】
一般式(iv)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0057】
一般式(v)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン;トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン;トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシランが挙げられ、好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましくは、トリメチルシラノール又はトリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0058】
一般式(iv)で示されるシラザン化合物および一般式(v)で示される1官能性シラン化合物の合計の添加量は、予備処理シリカ粒子中のSiO単位1モルあたり好ましくは5~50モル、より好ましくは10~30モルである。このような範囲であれば、粒子同士の凝集が起こり難く、トナーへの分散性に優れる表面処理ゾルゲルシリカ粒子が得られる。なお、予備処理シリカ粒子中のSiO単位の数は、その原料となった親水性ゾルゲルシリカ粒子中のSiO単位の数と同じである。
【0059】
また、工程(A3)における表面処理の反応温度は特に限定されないが、好ましくは20~80℃、より好ましくは50~70℃である。
【0060】
また、工程(A2)で親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に導入する単位と、工程(A3)で予備処理シリカ粒子の表面に導入する単位はそれぞれ異なる。即ち、工程(A2)で親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面に(CSiO1/2単位を導入した場合には、工程(A3)では予備処理シリカの表面に(CSiO1/2単位以外の単位を導入する。
【0061】
上記表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、常圧乾燥、減圧乾燥等の常法によって粉体として得られる。
【0062】
(表面処理ゾルゲルシリカ粒子)
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法により得られる表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、
表面にR SiO1/2単位(式中、R1は炭素原子数6~8のアルキル基もしくはアリール基、又はビニル基であり、Rは同一又は異種の炭素原子数1~4のアルキル基である)及びR SiO1/2単位(式中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である)を有するものである表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、
(1)動的光散乱法におけるメジアン径が5nm~99nmであり、
(2)平均円形度が0.8~1.0であり、
(3)屈折率が1.38~1.42であり、
(4)真密度が1.7g/cm以上1.9g/cm未満であり、
(5)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が0.4~1.9であり、
(6)メタノール疎水化度が67%以上75%以下
のものである表面処理ゾルゲルシリカ粒子である。
【0063】
~Rの具体例としては、上述のものと同じものが挙げられる。
【0064】
上記物性(1)~(6)を併せ持つことで、トナー外添剤として用いた場合、トナーに良好な流動性および印刷特性を与える。
【0065】
(1)動的光散乱法におけるメジアン径
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の動的光散乱法におけるメジアン径は、好ましくは、10nm~70nmである。メジアン径が5nmを下回ると、トナー粒子中に埋没するシリカ粒子が多くなり、トナー外添剤として用いた場合に、必要な添加量が増えるため好ましくない。また、メジアン径が99nmを超えると、流動性の低下、表面積の減少による帯電量の低下、トナー粒子への付着力が低下する等好ましくない。
【0066】
メジアン径は、動的光散乱法によって測定される表面処理ゾルゲルシリカ粒子の粒度分布から求めることができる。動的光散乱法とは、動的光散乱粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラックベル社製NanotracWave II-Ex150)を用いて、レーザー光をシリカ粒子の分散液に照射し得られた散乱光の散乱強度がシリカ系微粒子の粒径によって変わることを利用して、散乱強度から得られる粒度分布を求める方法である。
【0067】
(2)平均円形度
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の円形度は、粒子を二次元に投影した時の、(粒子面積と等しい面積の円の周囲長/粒子周囲長)で定義され、その平均が0.92~1であることが好ましい。平均円形度が0.8を下回ると不規則形状の粒子の割合が多くなり、トナーの汚染を引き起こしやすくなるため好ましくない。
【0068】
(3)屈折率
屈折率は表面処理ゾルゲルシリカ粒子内部の空隙を示し、屈折率が1.38より小さいと、空隙が多く存在しゾルゲルシリカ粒子の架橋構造が脆いことを意味するため好ましくない。また、屈折率が1.42を超えると空隙が少なく比重が大きくなるため、帯電量が低下したり、トナー粒子への付着力が低下する場合があるため好ましくない。
【0069】
本発明において、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の屈折率は、トルエン(屈折率1.4962)とメチルイソブチルケトン(屈折率1.3958)との混合溶媒に表面処理ゾルゲルシリカ粒子を添加し分散させ、上記溶媒の配合比率により屈折率を調整し、25℃において分散液が透明になる点(混合溶媒と表面処理シリカ微粒子の屈折率が合致する点)での混合溶媒の屈折率とする。
【0070】
(4)真密度
真密度は、好ましくは、1.75g/cm~1.85g/cmである。真密度が1.7g/cm未満であると、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の強度が低下する場合があるため好ましくない。また、真密度が1.9/cm以上であるものは、シリカ粒子1個当たりの重量が重くなるため、トナー外添剤として用いた場合に、トナー粒子へ与える衝撃が大きくなる点で好ましくない。
【0071】
(5)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比は、吸湿性を示す尺度であり、各気体の吸着比表面積はBET法により求めることができる。水分子(約2Å)の方が窒素分子(約3Å)より小さいため、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比が小さいということは、即ち、水分子は通過しにくいが、窒素は通過する程度の空隙があることを示す。
【0072】
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比は好ましくは0.5~1.5である。この比表面積比が1.9より大きいと吸湿性が高すぎて、トナーの帯電量が湿度の影響を大きく受けるため好ましくない。
【0073】
(6)メタノール疎水化度
メタノール疎水化度は表面処理ゾルゲルシリカ粒子の疎水性を示し、メタノール疎水化度が67%未満であると、シリカ表面の残存シラノール基により、静電荷像現像用トナー外添剤としてトナーに添加した場合、トナーの帯電量が湿度の影響を大きく受けるため好ましくない。また、シリカ微粒子同士の凝集が起きやすくなり、トナーへの分散性が劣り、トナーの流動性および印刷画質に劣るものとなる。メタノール疎水化度が75%を超えると、トナーに添加した場合、トナーの帯電量が高くなりすぎる場合がある。なお、本発明におけるメタノール疎水化度は、以下の条件で測定したものを指す。
【0074】
<メタノール疎水化度の測定方法>
体積濃度50%(温度25℃)のメタノール水溶液60mlに表面処理ゾルゲルシリカ粒子を0.2g添加し、撹拌子で攪拌し、次いでシリカ粒子が表面に浮遊した液中にメタノールを滴下しながら、メタノール水溶液に波長780nmの光を照射して透過率を測定し、シリカ粒子が懸濁・沈降して、透過率が80%になったときのメタノール水溶液中のメタノール体積濃度(%)をメタノール疎水化度とする。
【0075】
(静電荷像現像用トナー外添剤)
また本発明では、上記の表面処理ゾルゲルシリカ粒子を含有するものである静電荷像現像用トナー外添剤を提供する。本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、トナー外添剤として用いた場合、トナーに良好な流動性および印刷特性を与える。
【実施例
【0076】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
(表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造)
[実施例1-1]
工程(A1):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール793.0g、水32.1g、28%アンモニア水40.6gを添加して混合した。この溶液を45℃に調整し、撹拌しながら5.5%アンモニア水160.9gおよびテトラメトキシシラン646.5gを同時に滴下を開始し、前者は4時間、後者は6時間かけて滴下した。テトラメトキシシランの滴下が終了した後も、さらに0.5時間撹拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液を得た。
【0078】
工程(A2):上記工程(A1)で得られた懸濁液に25℃で1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン2.0g(SiO1モルに対して0.26モル相当量)を投入後、50℃で1時間撹拌し、表面がジメチルビニルシリル化された予備処理シリカ粒子の分散液を得た。
【0079】
工程(A3):上記工程(A2)で得られた分散液に25℃でヘキサメチルジシラザン205.3g(SiO1モルに対して30モル相当量)を0.5時間かけて滴下後、60℃で8時間反応させることにより、表面が更にトリメチルシリル化された表面処理ゾルゲルシリカ粒子の分散液を得た。次いで、この分散液中の分散媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(I)の白色粉体271gを得た。
【0080】
[実施例1-2]
実施例1-1において、工程(A1)の反応温度を35℃とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(II)の白色粉体272gを得た。
【0081】
[実施例1-3]
実施例1-1において、工程(A1)の反応温度を27℃とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(III)の白色粉体269gを得た。
【0082】
[実施例1-4]
実施例1-1において、工程(A1)の反応温度を25℃とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(IV)の白色粉体273gを得た。
【0083】
[実施例1-5]
実施例1-1において、工程(A2)の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンに代えて1,3-ジフェニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン3.1g(SiO1モルに対して0.26モル相当量)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(V)の白色粉体274gを得た。
【0084】
[実施例1-6]
実施例1-1において、工程(A2)の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンに代えて1,3-ジ-n-オクチル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン3.9g(SiO1モルに対して0.26モル相当量)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(VI)の白色粉体275gを得た。
【0085】
[比較例1-1]
実施例1-1において、工程(A1)を行い、工程(A2)を行わず、工程(A3)として、工程(A1)で得られた懸濁液に25℃でヘキサメチルジシラザン205.3g(SiO1モルに対して30モル相当量)を0.5時間かけて滴下後、60℃で8時間反応させることにより、表面がトリメチルシリル化された表面処理ゾルゲルシリカ粒子の分散液を得た。次いで、この分散液中の分散媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(VII)の白色粉体268gを得た。
【0086】
[比較例1-2]
実施例1-3において、工程(A1)を行い、工程(A2)を行わず、工程(A3)として、工程(A1)で得られた懸濁液に25℃でヘキサメチルジシラザン205.3g(SiO1モルに対して30モル相当量)を0.5時間かけて滴下後、60℃で8時間反応させることにより、表面がトリメチルシリル化された表面処理ゾルゲルシリカ粒子の分散液を得た。次いで、この分散液中の分散媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(VIII)の白色粉体268gを得た。
【0087】
上記工程により得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子(I)~(VIII)について、下記の測定方法(1)~(6)に従って測定を行った結果を表1に示す。
【0088】
[測定方法]
(1)動的光散乱法におけるメジアン径
表面処理ゾルゲルシリカ粒子0.1g及びメタノール19.9gをガラス瓶に入れ、超音波洗浄機に入れて、出力30W/Lの超音波を10分間照射させてメタノール中にシリカ粒子を分散させた。その分散液について動的光散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラックベル社製NanotracWave II-Ex150)を用いてメジアン径を測定した。
【0089】
(2)円形度
表面処理ゾルゲルシリカ粒子を電子顕微鏡(日立製作所製、S-4700、倍率:10万倍)を用いて撮影し、粒子を二次元に投影した時の円形度(粒子面積と等しい面積の円の周囲長/粒子周囲長)を画像解析式粒度分布測定ソフト(株式会社マウンテック製Mac-View Ver.5)で評価した。なお、円形度は1次粒子100個を測定した平均値を用いた。
【0090】
(3)屈折率
トルエン(屈折率1.4962)とメチルイソブチルケトン(屈折率1.3958)との混合溶媒に表面処理ゾルゲルシリカ粒子を添加し分散させ、上記溶媒の配合比率により屈折率を調整し、分散液が透明になる点(混合溶媒と表面処理シリカ微粒子の屈折率が合致する点)における混合溶媒の屈折率を表面処理ゾルゲルシリカ粒子の屈折率とした。なお、混合溶媒の屈折率はデジタル屈折計(株式会社アタゴ製RX-9000α)を用いて測定した25℃における値である。
【0091】
(4)真密度
液相置換法を用いた自動真密度測定装置(株式会社セイシン企業製オートトゥルーデンサーMAT-7000)を用いて、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の真密度を測定した。
【0092】
(5)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比
高精度ガス吸着量測定装置(マイクロトラックベル社製BELSORP MAX II)を用いて、BET1点法により水蒸気媒体及び窒素媒体それぞれに対する表面処理ゾルゲルシリカ粒子の比表面積を測定し、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比を求めた。
【0093】
(6)メタノール疎水化度
粉体濡れ性試験機(株式会社レスカ製WET101P)を用い、体積濃度50%(温度25℃)のメタノール水溶液60mlに表面処理ゾルゲルシリカ粒子を0.2g添加し、撹拌子で攪拌した。次いでシリカ粒子が表面に浮遊した液中にメタノールを滴下しながら、メタノール水溶液に波長780nmの光を照射して透過率を測定した。表面処理ゾルゲルシリカ粒子が懸濁・沈降して、透過率が80%になったときのメタノール水溶液中のメタノール体積濃度(%)をメタノール疎水化度とした。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示されるように、実施例1-1~1-6の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は高いメタノール疎水化度を示し、高度に表面が疎水化されているものであった。一方、比較例1-1,1-2では、表面の疎水化が不足する結果となった。
【0096】
(外添剤混合トナーの製造)
[実施例2-1~2-6、比較例2-1,2-2]
Tg60℃、軟化点110℃のポリエステル樹脂96重量部と色剤としてカーミン6BC(住化カラー(株)製)4重量部を溶融混練、粉砕、分級後、体積メジアン径7μmのトナーを得た。このトナー10gと実施例1-1~1-6、及び比較例1-1、1-2で得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子0.2gとをサンプルミルにて混合し、外添剤混合トナーを得た。これらについて下記(7)の方法による評価を行った。
【0097】
(7)トナー凝集度
20mlポリエチレン容器に、外添剤混合トナー10gを入れ、容器の蓋を開けた状態で60℃、30%RHの恒温恒湿条件に100時間曝露した後、トナー5gを、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-X)を使用して、篩の目開きが上から150μm、75μm、45μm、振動幅1mm、振動数1Hzで60秒間振動させた後、篩上に残った量を測定し、凝集度を下式にて算出した。その結果を表2に示す。
凝集度(%)=(W+0.6×W+0.2×W)/5×100
:150μm目開き篩上の残存量(g)
:75μm目開き篩上の残存量(g)
:45μm目開き篩上の残存量(g)
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示されるように、実施例2-1~2-6の外添剤混合トナーは凝集度が低く、本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子はトナー外添剤として好適に用いられることが分かる。一方、比較例2-1、2-2ではシリカ粒子の表面処理が十分ではないため、凝集度が高い結果となった。
【0100】
(二成分現像剤の製造)
[実施例3-1~3-6、比較例3-1,3-2]
実施例2-1~2-6、比較例2-1、2-2の外添剤混合トナー3質量部と、キャリアである標準フェライトL(日本画像学会)97質量部とを混合して二成分現像剤を調製した。上記工程により得られた二成分現像剤について、下記の方法(8)~(12)に従って測定を行った結果を表3に示す。
【0101】
(8)トナー帯電量
上記二成分現像剤を高温高湿(30℃、90%RH)、中温中湿(25℃、55%RH)及び低温低湿(10℃、15%RH)の各条件下に1日間曝露した後、同一条件下でそれぞれの試料を摩擦帯電した際の帯電量をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製、TB-200)を用いて測定した。
【0102】
(9)感光体へのトナー付着
上記二成分現像剤を、有機感光体を備えた現像機に入れ、25℃、50%RH環境下で30,000枚のプリントテストを実施した。このとき、感光体へのトナーの付着は、全ベタ画像での白抜けとして感知できる。ここで、白抜けの程度は、1cmあたりの白抜け個所の数が10個以上を「多い」、1~9個を「少ない」、0個を「なし」と評価した。
【0103】
(10)感光体摩耗
上記(9)のプリントテストにおいて、画像の乱れとして検出される感光体摩耗について、下記基準で評価した。
A:画像の乱れのないもの
B:大きな画像の乱れのないもの
C:画像の乱れがあるもの
【0104】
(11)画像欠損(白点)評価
上記二成分現像剤を30℃、90%RHの環境に1日間曝露し、その後20cm四方のベタ印刷(画像濃度100%)を5,000枚連続印刷を行った後、再び上記二成分現像剤を30℃、90%RH環境下で静置した。これを60回繰返し、合計300,000枚の印刷を行った。初日の10枚目の印刷物を印刷物1、最終日の最終印刷物を印刷物2とした。
【0105】
上記で得られた印刷物2の画像観察による画像欠損(白点)の有無を下記基準で評価した。
A:目視で画像欠損なし(白点なし)
B:目視で白点(粒子状に白く抜けた画像)が1個以上4個以下
C:目視で白点が5個以上9個以下
D:目視で白点が10個以上
【0106】
(12)濃度変化(ΔE)評価
上記印刷物1に対する印刷物2の濃度変化について、反射濃度計X-rite938(X-rite社製)を使用し、JIS Z 8781-5に準拠してCIE1976(L*a*b*)色空間における色差(ΔE)を測定し、下記基準により評価した。
A:ΔE差が1未満
B:ΔE差が1以上2.5未満
C:ΔE差が2.5以上3.0未満
D:ΔE差が3.0以上
【0107】
【表3】
【0108】
表3に示されるように、実施例1-1~1-6で得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子をトナー外添剤として用いた二成分現像剤は、トナー帯電量の環境による変動が小さく、印刷画像欠陥のないものであった。一方、比較例1-1、1-2で得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子を用いたものは、トナー帯電量の環境による変動が大きく、印刷特性に劣っていた。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。