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特許7548849キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20240903BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113 352
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037150
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137600
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 優樹
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175646(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175326(WO,A1)
【文献】特開2020-144310(JP,A)
【文献】特開2006-17828(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158548(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/107
G03G 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式MnFe3-X(但し、0<X<1)で表される材料を主成分とし、SrとZrとを含有するキャリア芯材であって、
Srの含有量が0.01mol%以上0.50mol%以下で、
Zrの含有量が0.10mol%以上0.50mol%以下で、
飽和磁化σが77Am/kg以上87Am/kg以下で、
残留磁化σが0.2Am/kg以上2.0Am/kg以下で、
磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが63Am/kg以上68Am/kg以下で、
あることを特徴とするキャリア芯材。
【請求項2】
最大高さRzが1.60μm以上で、平均長さRSmが7.0μm以下である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
細孔容積が0.015cm/g以下である請求項1または2に記載のキャリア芯材。
【請求項4】
真密度が4.800g/cm以上5.000g/cm以下である請求項1~3のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項5】
下記式(1)から算出される粒子体積磁化が0.284Am/cm以上0.320Am/cmである請求項1~4のいずれかに記載のキャリア芯材。
粒子体積磁化=磁化σ1k(Am/kg)×真密度(g/cm)×10-3×(100-排除体積(%))/100・・(1)
(式中、磁化σ1k:磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化、排除体積=(1-1/(1+細孔容積×真密度))×100)
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項7】
請求項6記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェライト粒子から構成されるキャリア芯材の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアをトナーと混合して二成分現像剤とした場合、現像ローラの1周前の画像の影響を受けて画像濃度が低下する「現像メモリ」と呼ばれる不具合が生じることがあった。この現像メモリは樹脂被覆キャリアの電気抵抗が高いことに起因するものと推測され、その対策の一つとして、キャリア芯材の表面を凹凸化して樹脂被覆キャリアの表面にキャリア芯材の一部を露出させて樹脂被覆キャリアの電気抵抗を下げることが考えられている。
【0003】
しかしながら、樹脂被覆キャリアの電気抵抗が低くなると、現像領域において樹脂被覆キャリアに電荷が注入されて樹脂被覆キャリアが感光体ドラムに移動する「キャリア付着」が生じるおそれがある。
【0004】
またキャリア芯材を構成するフェライト粒子の表面を凹凸化するには、製造工程における焼成温度を下げてフェライト粒子の焼結を弱めることが考えられるところ、焼成温度を下げるとフェライト粒子内の細孔容積が大きくなって粒子体積当たりの磁化が低下する。この結果、現像ローラへのキャリアの磁気的吸着が弱くなり、回転する現像ローラの遠心力によって現像ローラからキャリアが飛散する「キャリア飛散」が生じるおそれがある。
【0005】
現像メモリやキャリア付着、キャリア飛散の発生を抑制して長期間にわたって安定して使用可能なキャリア芯材として、例えば特許文献1では、特定のコア組成のキャリア芯材であって、キャリア芯材を構成する粒子群の要素の平均長さRSmの平均が特定範囲であって、キャリア芯材を構成する粒子群の歪度(スキューネス)Rskの平均が特定範囲であるキャリア芯材が提案されている。
【0006】
また特許文献2では、特定の組成を有するキャリア芯材であって、Snが特定量含有され、飽和磁化σsが特定範囲であるキャリア芯材が提案されている。そしてまた特許文献3では、RZrO(R:アルカリ土類金属元素)で表されるペロブスカイト型結晶からなる結晶相成分を含むフェライト粒子を含むキャリア芯材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-197133号公報
【文献】特開2020-144310号公報
【文献】特許第6757872号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、現像メモリ、キャリア付着およびキャリア飛散の発生をより一層抑制することが可能なキャリア芯材を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明の一実施形態のキャリア芯材は、組成式MnFe3-X(但し、0<X<1)で表される材料を主成分とし、SrとZrとを含有するキャリア芯材であって、Srの含有量が0.01mol%以上0.50mol%以下で、Zrの含有量が0.10mol%以上0.50mol%以下で、飽和磁化σが77Am/kg以上87Am/kg以下で、残留磁化σが0.2Am/kg以上2.0Am/kg以下で、磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが63Am/kg以上68Am/kg以下であることを特徴とする。
【0011】
前記構成のキャリア芯材において、最大高さRzは1.60μm以上で、平均長さRSmが7.0μm以下であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成のキャリア芯材において、細孔容積は0.015cm/g以下であるのが好ましい。
【0013】
また前記構成のキャリア芯材において、真密度は4.800g/cm以上5.000g/cm以下であるのが好ましい。
【0014】
また前記構成のキャリア芯材において、下記式(1)から算出される粒子体積磁化が0.284Am/cm以上0.320Am/cmであるのが好ましい。
粒子体積磁化=磁化σ1k(Am/kg)×真密度(g/cm)×10-3×(100-排除体積(%))/100・・(1)
(式中、磁化σ1k:磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化、排除体積(%)=(1-1/(1+細孔容積×真密度))×100)
【0015】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0016】
そしてまた本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【0017】
なお、本明細書における飽和磁化σ、残留磁化σ、磁化σ1k、最大高さRz、平均長さRSm、細孔容積、真密度は後述の実施例における測定方法及び測定条件で測定した値である。また、本明細書において「フェライト粒子」、「キャリア芯材」、「電子写真現像用キャリア」、「トナー」は、それぞれ個々の粒子の集合体(粉体)を意味するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るキャリア芯材によれば、現像メモリ、キャリア付着およびキャリア飛散の発生が抑制される。
【0019】
また本発明に係る電子写真現像用キャリアおよび電子写真用現像剤によれば、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1のキャリア芯材および断面のSEM写真
図2】比較例2のキャリア芯材および断面のSEM写真
図3】比較例8のキャリア芯材および断面のSEM写真
図4】本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るキャリア芯材の大きな特徴の一つは、キャリア芯材の主成分がMnFe3-X(但し、0<X<1)で表される材料で、Sr(ストロンチウム)とZr(ジルコニウム)とが所定量含有されていることにある。キャリア芯材にSrとZrが所定量含有されていることによって、フェライト粒子からなるキャリア芯材を製造する際の焼成工程において、Sr成分とZr成分とを含む高融点複合酸化物が結晶粒界に生成される。通常、焼成温度が高くなると過剰焼結によって過大結晶が生成される。キャリア芯材の粒子を構成する結晶が大きくなるとキャリア芯材の粒子表面が樹脂によって被覆された際に樹脂被覆層が不均一になりやすくなる。一方、前記の高融点複合酸化物が結晶粒界に生成されていると、高融点複合酸化物によって結晶の成長が抑制されて高温焼成を行っても過大結晶が生成され難くなる。その結果、キャリア芯材の粒子表面の樹脂被覆層が均一になりやすくなる。
【0022】
キャリア芯材中のSrの含有量は0.01mol%以上0.50mol%以下の範囲である。またZrの含有量は0.10mol%以上0.50mol%以下の範囲である。Sr及びZrの含有量がこの範囲であることによってSr成分とZr成分とを含む高融点複合酸化物が結晶粒界に効果的に生成されるようになる。より好ましいSrの含有量は0.1mol%以上0.30mol%以下の範囲である。また、好ましいZrの含有量は0.15mol%以上0.45mol%以下の範囲である。
【0023】
また本発明に係るキャリア芯材の他の大きな特徴は、残留磁化σが0.2Am/kg以上2.0Am/kg以下であることである。キャリア芯材の残留磁化σがこの範囲であることによってキャリア飛散の発生が抑制される。キャリア芯材の残留磁化σの好ましい上限値は1.1Am/kgである。一方、キャリア芯材の残留磁化σの好ましい下限値は0.7Am/kgである。キャリア芯材の残留磁化σは、例えば、焼成温度や焼成時間、焼成時の酸素濃度などによって調整することができる。
【0024】
また本発明に係るキャリア芯材の他の大きな特徴は、飽和磁化σが77Am/kg以上87Am/kg以下の範囲であることである。キャリア芯材の飽和磁化σがこの範囲であることによってキャリア飛散の発生が抑制される。キャリア芯材の飽和磁化σsの好ましい下限値は80Am/kgである。一方、キャリア芯材の飽和磁化σの好ましい上限値は85Am/kgである。
キャリア芯材の飽和磁化σは、例えばFe成分原料の配合量などによって調整することができる。
【0025】
本発明に係るキャリア芯材の最大高さRzは1.60μm以上で、平均長さRSmは7.0μm以下であるのが好ましい。キャリア芯材の粒子表面に所定の間隔以下で所定以上の高さの凹凸が形成されていることにより、粒子表面を樹脂で被覆した際に、被覆樹脂を均一に塗布することができ、長期間の使用によっても被覆樹脂が剥離しにくくなる。また、被覆樹脂の一部が剥離しても凹部に残る被覆樹脂によってトナーへの帯電付与能力の低下が抑制される。さらに、粒子の割れや欠けも抑えられる。キャリア芯材の最大高さRzのより好ましい下限値は1.80μmである。また最大高さRzの好ましい上限値は2.00μmである。一方、キャリア芯材の平均長さRSmのより好ましい上限値は6.5μmである。また平均長さRSmの好ましい下限値は6.0μmである。キャリア芯材の最大高さRzおよび平均長さRSmは、例えば、焼成温度や焼成時間、Sr成分原料・Zr成分原料の添加量などによって調整することができる。
【0026】
本発明に係るキャリア芯材の細孔容積は0.015cm/g以下であるのが好ましい。キャリア芯材の細孔容積が0.015cm/gを超える、すなわちキャリア芯材の内部空隙が大きくなると、キャリア芯材の一粒子あたりの磁化が小さくなるためキャリア飛散が発生しやすくなる。キャリア芯材の細孔容積のより好ましい上限値は0.014cm/gである。キャリア芯材の細孔容積は、例えば、キャリア芯材の各成分原料の種類、焼成温度や焼成時間などによって調整することができる。キャリア芯材の細孔容積の好ましい下限値は0.001cm/gである。
【0027】
本発明に係るキャリア芯材の真密度は4.800g/cm以上5.000g/cm以下の範囲が好ましい。キャリア芯材の真密度がこの範囲であると、キャリア芯材の一粒子あたりの磁化が大きくなるためキャリア飛散が抑制されやすくなる。キャリア芯材の真密度のより好ましい下限値は4.870g/cmである。一方、キャリア芯材の真密度のより好ましい上限値は4.950g/cmである。キャリア芯材の真密度は、例えば、キャリア芯材の各成分原料の種類などによって調整することができる。
【0028】
本発明に係るキャリア芯材の前記式(1)から算出される粒子体積磁化は0.284Am/cm以上0.320Am/cm以下の範囲が好ましい。キャリア芯材の粒子体積磁化が0.284Am/cm未満であると、キャリア芯材の一粒子あたりの磁化が小さいためキャリア飛散やキャリア付着が発生しやすくなる。一方、粒子体積磁化が0.320Am/cmを超えると現像メモリが発生しやすくなる。キャリア芯材の粒子体積磁化のより好ましい下限値は0.290Am/cmである。キャリア芯材の粒子体積磁化のより好ましい上限値は0.310Am/cmである。キャリア芯材の粒子体積磁化は、例えば、キャリア芯材の各成分原料の種類、焼成温度や焼成時間などによって調整することができる。
【0029】
本発明のキャリア芯材の体積平均粒径としては、25μm以上50μm未満の範囲が好ましく、より好ましくは30μm以上40μm以下の範囲である。
【0030】
なお、本発明のキャリア芯材(およびキャリア)の磁気特性、電気特性および形状、粉体特性を調整するため、副成分をさらに1質量%以下添加して各種特性の改善を図れる。副成分としては、例えば、Na,K,Mg,Ca,Ti,Ba,Cu,Zn,Sn,Ni、Coなどが挙げられる。
【0031】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0032】
まず、Fe成分原料、Mn成分原料、Sr成分原料、Zr成分原料、必要により添加剤を秤量する。Fe成分原料としては、Fe等が好適に使用される。Mn成分原料としてはMnCO、Mn等が好適に使用される。Sr成分原料としては、SrCO、Sr(NOなどが好適に使用される。Zr成分原料としてはZrOなどが好適に使用される。
【0033】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。その他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。その他、カーボンブラックなどの還元剤、アンモニアなどのpH調整剤、潤滑剤、焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%~90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%~80質量%である。60質量%以上であれば、造粒物中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。
【0034】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃~1000℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼成による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、1000℃以下であれば、仮焼成による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0035】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0036】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球形に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃~300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm~200μmの球形の造粒物が得られる。次いで、必要により、得られた造粒物を振動篩を用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0037】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1100℃~1350℃の範囲が好ましい。焼成温度が1100℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1350℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h~500℃/hの範囲が好ましい。焼成温度での保持時間は2時間以上が好ましい。フェライト粒子表面の凹凸は焼成工程における酸素濃度によっても調整可能である。具体的には酸素濃度を0.05%~10%とする。また、冷却時の酸素濃度を焼成時の酸素濃度よりも低くすることによって、フェライト相の酸化状態の調整を図ってもよい。具体的には酸素濃度を0.05%~1.5%の範囲とする。昇温・焼結・冷却における酸素濃度は0.05%~10%の範囲に制御するのが好ましい。
【0038】
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。また解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては25μm以上50μm未満が好ましい。
【0039】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は200℃以上800℃以下の範囲が好ましく、360℃以上550℃以下の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間以上5時間以下の範囲が好ましい。なお、フェライト粒子の表面と内部とを均質化する観点からは加熱温度は低温であるのが望ましい。
【0040】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0041】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0042】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%以上30質量%以下、特に0.001質量%以上2質量%以下の範囲内にあるのがよい。
【0043】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0044】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で25μm以上50μm未満の範囲、特に30μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0045】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0046】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0047】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm以上15μm以下の範囲が好ましく、7μm以上12μm以下の範囲がより好ましい。
【0048】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0050】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図4に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図4に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0051】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0052】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N1、搬送磁極S1、剥離磁極N2、汲み上げ磁極N3、ブレード磁極S2の5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3の筒状体が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極N3の磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0053】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像
ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5kV~5kVの範囲が好ましく、周波数は1kHz~10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0054】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極S1によって装置内部に搬送され、剥離電極N2によって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極N3によって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0055】
なお、図4に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例1
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)115.5gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0058】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて体積平均粒径35μmに分級したのち、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、キャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の見かけ密度AD、流動度FR、体積平均粒子径(平均粒径)D50、細孔容積、比表面積、真密度、磁気特性、電圧1000V印加抵抗、最大高さRz、平均長さRSm、異形率、現像メモリ、キャリア付着、キャリア飛散を下記に示す方法で測定又は評価した。また、以下の実施例及び比較例に係るキャリア芯材についても同様の方法で測定又は評価した。実施例1、比較例2、比較例8のキャリア芯材および芯材断面のSEM写真を図1図2図3に示す。
【0059】
実施例2
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)83.5g、ZrO(平均粒径:1.3μm)55.4gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.4g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて体積平均粒径35μmに分級したのち、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、キャリア芯材を得た。
【0060】
実施例3
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)83.5g、ZrO(平均粒径:1.3μm)62.4gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.4g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0061】
実施例4
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)231gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0062】
実施例5
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)83.5g、ZrO(平均粒径:1.3μm)105.3gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.4g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0063】
実施例6
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)231gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。 この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度2.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~2.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0064】
実施例7
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)231gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0065】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度5.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~5.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0066】
実施例8
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)83.5g、ZrO(平均粒径:1.3μm)69.3gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを68.1g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0067】
実施例9
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)83.5g、ZrO(平均粒径:1.1μm)69.3gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.38g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0068】
実施例10
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)66.8g、ZrO(平均粒径:1.3μm)69.3gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.4g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0069】
実施例11
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)10.89kg、Mn(平均粒径:3.4μm)4.08kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)41.8g、ZrO(平均粒径:1.3μm)69.3gを純水5.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを45.4g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を108.9g、pH調整剤としてアンモニア水を10.62g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0070】
比較例1
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)28.94kg、Mn(平均粒径:2.1μm)11.3kgを純水13.62kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを111.6g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を250.8g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで酸素濃度1.3%で4.5時間かけて昇温した。その後1200℃で酸素濃度1.3%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて体積平均粒径35μmに分級したのち、温度380℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、キャリア芯材を得た。
【0071】
比較例2
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)23.95kg、Mn(平均粒径:3.4μm)8.98kgを純水11.31kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを99.83g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を199.66g、pH調整剤としてアンモニア水を23.12g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0072】
比較例3
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)14.52kg、Mn(平均粒径:3.4μm)5.44kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)111.36gを純水6.628kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを60.5g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を121g、pH調整剤としてアンモニア水を14.09g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0073】
比較例4
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)57.8gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0074】
比較例5
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)24.12kg、Mn(平均粒径:3.4μm)9.42kg、ZrO(平均粒径:1.3μm)62.9gを純水11.37kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを93g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を209g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0075】
比較例6
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)24.12kg、Mn(平均粒径:3.4μm)9.42kg、ZrO(平均粒径:1.3μm)125.9gを純水11.39kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを93g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を209g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0076】
比較例7
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)24.12kg、Mn(平均粒径:3.4μm)9.42kg、ZrO(平均粒径:1.3μm)251.7gを純水11.43kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを93g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を209g添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0077】
比較例8
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)36.29kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.61kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)278.4g、ZrO(平均粒径:1.3μm)231gを純水17.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを151.3g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を363g、pH調整剤としてアンモニア水を35.39g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物を、電気炉に投入し1230℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1230℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0078】
比較例9
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)7.93kg、Mn(平均粒径:3.4μm)3.77kg、SrCO(平均粒径:0.6μm)65.31g、ZrO(平均粒径:1.3μm)54.52gを純水3.88kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを35.49g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を85.17g、pH調整剤としてアンモニア水を6.9g添加して添加して混合物とした以外は実施例2と同様にして体積平均粒径35μmのキャリア芯材を得た。
【0079】
(見かけ密度:AD)
キャリア芯材の見かけ密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0080】
(流動度:FR)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0081】
(体積平均粒子径(平均粒径):D50
キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0082】
(細孔容積)
評価装置は、Quantachrome社製のPOREMASTER-60GTを使用した。具体的には、測定条件としては、Cell Stem Volume:0.5mL、Headpressure:20PSIA、水銀の表面張力:485.00erg/cm、水銀の接触角:130.00degrees、高圧測定モード:Fixed Rate、Moter Speed:1、高圧測定レンジ:20.00~10000.00PSIとし、サンプル1.500gを秤量して0.5mL(cc)のセルに充填して測定を行った。また、10000PSI時の容積B(mL/g)から60PSI時の容積A(mL/g)を差し引いた値を細孔容積とした。
【0083】
(BET比表面積)
BET一点法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、型式:Macsorb HM model-1208)を用いて評価を行った。具体的には、サンプルは、6.000gを秤量して直径12mmの標準セルに充填し、200℃で、30分間脱気して測定を行った。
【0084】
(真密度)
キャリア芯材の真密度は、Quantachrome社製、「ULTRA PYCNOMETER 1000」を用いて測定を行った。
【0085】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM-P7」)を用いて、外部磁場を0~79.58×10A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化σ、磁化σ1k、残留磁化σを測定した。
【0086】
(電気抵抗)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア芯材200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に1000Vの直流電圧を印加し、キャリア芯材を流れる電流値を4端子法により測定し、キャリア芯材の電気抵抗を算出した。
【0087】
(最大山谷深さRz、平均長さRSm)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK-X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100~35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については32~34μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0088】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0089】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。平均長さRSmの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0090】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0091】
(異形率)
注入型画像解析粒度分布計(ジャスコインタナショナル株式会社、型式:IF-3200)を使用した。具体的には、サンプルは0.07gを秤量して、ポリエチレングリコール400を9mL投入したスクリュー管瓶(容量9mL)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95mL
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルタ:0.5
フィルタ条件:
ISO Area Diametere:最小値5、最大値100、内側の範囲
(解析条件)
解析フィルタ条件I:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
解析フィルタ条件II:
ISO Area Diametere:最小値25、最大値55、内側の範囲
ISO Solidity:最小値0.98、最大値1、外側の範囲
Ell.Ratio:最小値0.8、最大値1、内側の範囲
解析フィルタ条件IIでカウントされた粒子数を解析フィルタ条件Iでカウントされた粒子数で割り返して異形粒子の割合となる異形率を算出した。
【0092】
(現像メモリ)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450質量部と、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9質量部とを、溶媒としてのトルエン450質量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000質量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの質量/(トナーおよびキャリアの質量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、図4に示す構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に投入し、感光体ドラムの長手方向にベタ画像部と非画像部とが隣り合い、その後は広い面積の中間調が続く画像を初期と20万枚画像形成後に取得し、現像ローラ2周目の現像ローラ1周目のベタ画像が現像された領域とそうでない領域との画像濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC-6D)を用いて測定し、その差を求め下記基準で評価した。結果を表2に合わせて示す。
「〇」:0.003未満
「△」:0.003以上0.020未満
「×」:0.020以上
【0093】
(キャリア付着)
図4に示す構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入してベタ画像を感光体ドラム表面に形成し、感光体ドラム表面のベタ画像をセロハンテープで剥がし取り、単位面積当たりのキャリア付着による白抜けの個数を下記基準で評価した。
「〇」:キャリア付着が全く見られない、もしくは僅かなキャリア付着が見られるが実使用上問題のない範囲である。
「△」:キャリア付着が見られ使用できない。
「×」:キャリア付着が強く見られ全く使用できない。
【0094】
(キャリア飛散)
図4に示す構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入して撹拌した時の感光体ドラム表面の黒点をセロハンテープで剥がし取り、単位面積当たりの黒点の数を下記基準で評価した。
「〇」:黒点が0~5個
「△」:黒点が6個~10個
「×」:黒点が11個~15個
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1~11のキャリア芯材を用いた電子写真様現像剤では、現像メモリ、キャリア付着およびキャリア飛散の評価はいずれも「○」であった。
【0097】
これに対して、SrおよびZrを含有せず焼成温度が1200℃であった比較例1のキャリア芯材を用いた電子写真様現像剤では現像メモリおよびキャリア付着の評価は「△」であった。
【0098】
SrおよびZrを含有せず焼成温度が1300℃であった比較例2のキャリア芯材では細孔容積が小さく粒子体積磁化は大きかったが粒子表面の凹凸の間隔が大きく、当該キャリア芯材を用いた電子写真様現像剤では現像メモリ及びキャリア飛散の評価は「○」であったがキャリア付着の評価は「△」であった。
【0099】
Srを含有しZrを含有しない比較例3のキャリア芯材を用いた電子写真様現像剤ではキャリア付着の評価が「△」であった。
【0100】
Zrの含有量が0.07mol%と少ない比較例4のキャリア芯材を用いた電子写真様現像剤ではキャリア付着の評価が「△」であった。
【0101】
Srを含有せずZrの含有量を0.12mol%,0.24mol%,0.48mol%と変化させた比較例5~7のキャリア芯材を用いた電子写真様現像剤ではいずれもキャリア付着の評価が「△」であった。
【0102】
焼成温度が1230℃であった比較例8のキャリア芯材では、粒子表面の凹凸が所望の間隔および高さで形成されたが、細孔容積が大きく粒子体積磁化が小さいため、当該キャリア芯材を用いた電子写真様現像剤ではキャリア飛散の評価が「△」であった。
【0103】
Feの組成比率が低い比較例9のキャリア芯材では飽和磁化σが75.8Am/kgと低く、当該キャリア芯材を用いた電子写真様現像剤ではキャリア飛散の評価が「△」であった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るキャリア芯材によれば現像メモリが抑制できると共にキャリア付着も抑制できる。
【符号の説明】
【0105】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
図1
図2
図3
図4