(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20240903BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240903BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240903BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240903BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2021063908
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】稲福 健一
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-136307(JP,A)
【文献】特開2011-148981(JP,A)
【文献】特開2016-121290(JP,A)
【文献】特開2020-169254(JP,A)
【文献】特開2009-269968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10;9/00-201/10
C08G77/00-77/62
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物であって、
(A)下記(A1)及び(A2)
(A1)下記平均組成式(1)で示される1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R
2R
1
2SiO
1/2)
a1(R
3
2SiO
2/2)
b1 (1)
(式中、R
1は
メチル基であり
、R
2はアルケニル基であり、R
3はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、及び炭素数6~12の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、a1およびb1は、0<a1≦1.0、0≦b1<1.0かつ、a1+b1=1.0となる数である。)
(A2)下記平均組成式(2)で示される分岐状オルガノポリシロキサン、
(R
2R
1
2SiO
1/2)
a2(SiO
4/2)
b2 (2)
(式中、R
1
はメチル基であり、R
2は前記と同じであり、a2およびb2は、0<a2<1.0、0<b2<1.0かつ、a2+b2=1.0となる数である。)
からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであって、前記(A1)と前記(A2)の質量比(A1)/(A2)が、1~10の範囲であるオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(3)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R
3
3SiO
1/2)
a3(R
3HSiO
2/2)
b3 (3)
(式中、R
3は前記と同じであり、a3およびb3は、0≦a3<1.0、0<b3≦1.0かつ、a3+b3=1.0となる数である。)
(C)白金族金属系触媒、
(D)分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物、
(E)1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子を少なくとも3個有する、トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー、及び
(F)下記平均組成式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R
4
3SiO
1/2)
a4(R
1HSiO
2/2)
b4 (R
4
2SiO
2/2)
c4 (4)
(式中、R
1は
メチル基であり、R
4はそれぞれ独立して前記R
1または炭素数4~8の脂環式もしくは脂肪族エポキシ基を有する基であり、R
4のうち少なくとも2つはエポキシ基を有する基であり、a4、b4およびc4は、0<a4<1.0、0<b4<1.0、0<c4<1.0かつ、a4+b4+c4=1.0となる数である。)
を含むものであることを特徴とする高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1当量に対しケイ素原子に結合する水素原子が0.1~4.0当量となる量であり、
前記(D)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.05質量部~5質量部であり、
前記(E)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.05質量部~5質量部であり、
前記(F)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.02質量部~3質量部
であることを特徴とする請求項1に記載の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物。
【請求項3】
さらに(G)無機充填剤を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は耐熱、耐光性などの安定性や、伸びや引っ張り強さといったゴム特性に優れた硬化物を得られることから、建築、医療、半導体といった様々な分野で接着剤として用いられている。
【0003】
特に半導体の分野では、パッケージの大型化や積層構造によってストレスが大きくなっていることと、駆動温度が上昇していることに伴い、シリコーン樹脂が接着剤として選択される事例が増えている。
【0004】
しかし、一方で、シリコーン樹脂は高い透湿性を有するため、PCT(プレッシャークッカー試験)やHAST(高速加速寿命試験)といった高圧下での高温高湿試験への耐性が低くなりやすい。
【0005】
そこでシリコーン樹脂の耐湿性を改善するために、脱水剤を添加したり、(メタ)アクリロイル基含有トリメトキシシランを添加したりするといった方法がとられている(特許文献1、2)。
【0006】
しかし、これらの方法で得られる耐湿性は大気圧下でのものであり、高温高圧の水蒸気にさらされた時の耐性には言及されていない。
【0007】
また、縮合硬化型シリコーン樹脂にビス(アルコキシシリル)アルカンを添加することでPCTに耐えうる事が示されているが、縮合硬化は深部硬化性に劣るため、大面積や狭ギャップの接着には不向きである(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-191502号公報
【文献】特開2014-098129号公報
【文献】特開2010-90227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題に鑑み、PCTやHASTといった高圧下での高温高湿試験に耐え得る高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、
高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物であって、
(A)下記(A1)及び(A2)
(A1)下記平均組成式(1)で示される1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a1(R3
2SiO2/2)b1 (1)
(式中、R1はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が置換されていてもよく、R2はアルケニル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、及び炭素数6~12の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、a1およびb1は、0<a1≦1.0、0≦b1<1.0かつ、a1+b1=1.0となる数である。)
(A2)下記平均組成式(2)で示される分岐状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a2(SiO4/2)b2 (2)
(式中、R1、R2は前記と同じであり、a2およびb2は、0<a2<1.0、0<b2<1.0かつ、a2+b2=1.0となる数である。)
からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであって、前記(A1)と前記(A2)の質量比(A1)/(A2)が、1~10の範囲であるオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(3)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R3
3SiO1/2)a3(R3HSiO2/2)b3 (3)
(式中、R3は前記と同じであり、a3およびb3は、0≦a3<1.0、0<b3≦1.0かつ、a3+b3=1.0となる数である。)
(C)白金族金属系触媒、
(D)分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物、
(E)1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子を少なくとも3個有する、トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー、及び
(F)下記平均組成式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R4
3SiO1/2)a4(R1HSiO2/2)b4 (R4
2SiO2/2)c4 (4)
(式中、R1は前記と同じであり、R4はそれぞれ独立して前記R1または炭素数4~8の脂環式もしくは脂肪族エポキシ基を有する基であり、R4のうち少なくとも2つはエポキシ基を有する基であり、a4、b4およびc4は、0<a4<1.0、0<b4<1.0、0<c4<1.0かつ、a4+b4+c4=1.0となる数である。)
を含むものである高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物を提供する。
【0011】
このような高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物であれば、PCTやHASTといった高圧下での高温高湿試験に耐えることができる。
【0012】
また、前記(B)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1当量に対しケイ素原子に結合する水素原子が0.1~4.0当量となる量であり、
前記(D)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.05質量部~5質量部であり、
前記(E)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.05質量部~5質量部であり、
前記(F)成分が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して0.02質量部~3質量部
であることが好ましい。
【0013】
各成分がこのような範囲のものであれば、樹脂特性に悪影響を及ぼすことなく十分な接着性が得られる。
【0014】
また、本発明では、さらに(G)無機充填剤を含むものであることが好ましい。
【0015】
このようなものであれば、高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物の強度の向上や粘度の調整、着色を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物を用いると、PCTやHASTといった高圧下での高温高湿試験等の過酷な環境系信頼性試験においても接着性を損なわず、被着物の長期間の使用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、PCTやHASTといった高圧下での高温高湿試験に耐え得る高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物が求められていた。
【0018】
そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒を含む硬化性のシリコーン樹脂組成物に、分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物、1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子を少なくとも3個有する、トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー、及びエポキシ基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを加えることで、高圧下での高温高湿試験に耐え得る高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
即ち、本発明は、
高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物であって、
(A)下記(A1)及び(A2)
(A1)下記平均組成式(1)で示される1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a1(R3
2SiO2/2)b1 (1)
(式中、R1はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が置換されていてもよく、R2はアルケニル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、及び炭素数6~12の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、a1およびb1は、0<a1≦1.0、0≦b1<1.0かつ、a1+b1=1.0となる数である。)
(A2)下記平均組成式(2)で示される分岐状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a2(SiO4/2)b2 (2)
(式中、R1、R2は前記と同じであり、a2およびb2は、0<a2<1.0、0<b2<1.0かつ、a2+b2=1.0となる数である。)
からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであって、前記(A1)と前記(A2)の質量比(A1)/(A2)が、1~10の範囲であるオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(3)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R3
3SiO1/2)a3(R3HSiO2/2)b3 (3)
(式中、R3は前記と同じであり、a3およびb3は、0≦a3<1.0、0<b3≦1.0かつ、a3+b3=1.0となる数である。)
(C)白金族金属系触媒、
(D)分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物、
(E)1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子を少なくとも3個有する、トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー、及び
(F)下記平均組成式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R4
3SiO1/2)a4(R1HSiO2/2)b4 (R4
2SiO2/2)c4 (4)
(式中、R1は前記と同じであり、R4はそれぞれ独立して前記R1または炭素数4~8の脂環式もしくは脂肪族エポキシ基を有する基であり、R4のうち少なくとも2つはエポキシ基を有する基であり、a4、b4およびc4は、0<a4<1.0、0<b4<1.0、0<c4<1.0かつ、a4+b4+c4=1.0となる数である。)
を含むものである高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物である。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物]
本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は、
(A)下記(A1)及び(A2)
(A1)下記平均組成式(1)で示される1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a1(R3
2SiO2/2)b1 (1)
(A2)下記平均組成式(2)で示される分岐状オルガノポリシロキサン、
(R2R1
2SiO1/2)a2(SiO4/2)b2 (2)
(B)下記平均組成式(3)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R3
3SiO1/2)a3(R3HSiO2/2)b3 (3)
(C)白金族金属系触媒、
(D)分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物、
(E)1分子中にケイ素原子に直接結合する水素原子を少なくとも3個有する、トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー、及び
(F)下記平均組成式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(R4
3SiO1/2)a4(R1HSiO2/2)b4 (R4
2SiO2/2)c4 (4)
を含むものである。
【0022】
このような高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は、例えば、130℃/85%RHの高速加速寿命試験においても接着力の低下を20%以内に抑えることができる。
【0023】
上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及びその他の成分について以下で説明する。
【0024】
[(A)成分]
(A)成分は以下の(A1)成分及び(A2)成分からなるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
【0025】
((A1)成分)
(A1)成分は本発明の組成物に流動性と柔軟性を与える成分であり、下記平均組成式(1)で表される、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。(A1)成分は、後述の(A2)成分と共に本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物のベースポリマーとなる。
(R2R1
2SiO1/2)a1(R3
2SiO2/2)b1 (1)
(式中、R1はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が置換されていてもよく、R2はアルケニル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、及び炭素数6~12の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、a1およびb1は、0<a1≦1.0、0≦b1<1.0かつ、a1+b1=1.0となる数である。)
【0026】
平均組成式(1)におけるR1は、それぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が置換されていてもよいものである。このようなR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等の、ハロゲン置換アルキル基、シアノ置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基などが挙げられる。R1は、炭素原子数が1~10、特に1~6のものが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基;及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。中でもメチル基が特に好ましい。
【0027】
平均組成式(1)におけるR2は、アルケニル基である。このようなR2としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基及びヘキセニル基等の炭素原子数2~8のアルケニル基、及びシクロヘキセニル基等の炭素原子数3~8のシクロアルケニル基が挙げられ、中でも、ビニル基及びアリル基が好ましい。
【0028】
平均組成式(1)におけるR3は、それぞれ独立して炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、及び炭素数6~12の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。このようなR3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基やシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基を挙げることができる。中でも、炭素数1~6のものが好ましく、更に好ましくは、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0029】
(A1)成分の23℃における粘度は、特に限定されないが、高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物に流動性と柔軟性を与える観点から、100~100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に100~50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。粘度がこの範囲内にあると、得られるシリコーン樹脂接着剤組成物の取り扱いが容易である。
【0030】
なお、粘度はJIS K 7117-1:1999記載の方法に従って測定された23℃における絶対粘度である。
【0031】
((A2)成分)
(A2)成分は、下記平均組成式(2)
(R2R1
2SiO1/2)a2(SiO4/2)b2 (2)
(式中、R1、R2は前記と同じであり、a2およびb2は、0<a2<1.0、0<b2<1.0かつ、a2+b2=1.0となる数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサンであり、硬化物の物理的強度及び表面のタック性を改善するために配合される。このように(A2)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するレジン構造のオルガノポリシロキサンであり、本発明の組成物のベースポリマーとして(A1)成分と共に使用される。(A2)成分は、基本的にSiO2単位の繰り返しからなり、末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された分岐状のものである。
【0032】
(A2)成分の分岐状オルガノポリシロキサンは(A)成分中に質量比(A1)/(A2)が、1~10の範囲となる量で配合される。分岐状オルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると、硬化が十分達成されない場合があり、多すぎると組成物の硬度が著しく高くなり、硬化物にクラックが発生しやすくなる場合がある。
【0033】
(A2)成分の平均組成式(2)におけるa2に対するb2の比は、0.1~2.0であることが好ましく、0.1~1.5であることがさらに好ましい。
【0034】
[(B)成分]
(B)成分は硬化剤であり、上記(A)成分と反応するものである。(B)成分は下記平均組成式(3)で表される1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(R3
3SiO1/2)a3(R3HSiO2/2)b3 (3)
(式中、R3は前記と同じであり、a3およびb3は、0≦a3<1.0、0<b3≦1.0かつ、a3+b3=1.0となる数である。)
【0035】
(B)成分の配合量は特に限定されないが、前記(A)成分中のアルケニル基1当量に対しケイ素原子に結合する水素原子が好ましくは0.1~4.0当量となり、より好ましくは1.0~3.0当量となる量である。(B)成分は、直鎖状又は環状(a3=0)のいずれの構造でもよい。
【0036】
平均組成式(3)におけるR3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基やシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基を挙げることができる。中でも、炭素数1~6のものが好ましく、更に好ましくは、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0037】
(B)成分の23℃における粘度は、1~100mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に1~10mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、粘度は上記のように測定されたものである。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分、さらに後述する(E)成分、(F)成分中のSiH基との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進するための白金族金属系触媒であり、周知のヒドロシリル化反応用触媒が使用できる。具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、及びNa2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書及び同第3,775,452号明細書参照);白金黒及びパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ及びカーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。
【0039】
(C)成分の配合量は、所謂触媒量でよく、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、好ましくは白金族金属の質量換算で0.1~1,000ppm、特に好ましくは0.5~500ppm程度である。
【0040】
[(D)成分]
(D)成分は本発明の組成物に接着性を付与する成分であり、分子中にケイ素原子を含まないジ(メタ)アクリレート化合物である。(D)成分は、(A)成分及び(B)成分に相溶する化合物である。
【0041】
このような(D)成分としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、5-エチル-2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサンのジ(メタ)アクリル酸エステル、2-プロペノイック酸(オクタハイドロ-4,7-メタン-1H-インデニディル)ビス(メチレン)エステル(商標名:カヤラッドR-684、日本化薬製)又はその対応メタクリル酸エステル等の2官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(D)成分の配合量としては、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~5質量部、より好ましくは0.5質量部~2質量部である。上記下限値以上であれば十分な接着性を得ることができ、上記上限値以下であれば硬化物の樹脂特性に悪影響を与える恐れがない。
【0043】
[(E)成分]
(E)成分は本発明の組成物に接着性を付与する成分であり、トリメトキシシランあるいはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマーであって、ケイ素原子に直接結合する水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも3個有するオリゴマーである。
【0044】
(E)成分の配合量としては、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~5質量部、より好ましくは0.5質量部~2質量部である。上記下限値以上であれば十分な接着性を得ることができ、上記上限値以下であれば硬化物の樹脂特性に悪影響を与える恐れがない。
【0045】
[(F)成分]
(F)成分は下記平均組成式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(R4
3SiO1/2)a4(R1HSiO2/2)b4 (R4
2SiO2/2)c4 (4)
(式中、R1は前記と同じであり、R4はそれぞれ独立して前記R1または炭素数4~8の脂環式もしくは脂肪族エポキシ基を有する基であり、R4のうち少なくとも2つはエポキシ基を有する基であり、a4、b4およびc4は、0<a4<1.0、0<b4<1.0、0<c4<1.0かつ、a4+b4+c4=1.0となる数である。)
【0046】
このような(F)成分は組成物に接着性を付与する成分であり、1分子中にエポキシ基とケイ素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を含む化合物、(例えば、ポリマー)である。
【0047】
(F)成分として例えば、下記のような構造が挙げられる。
【化1】
【化2】
(上記式中におけるn、mは1以上の整数である)
【0048】
(F)成分の配合量としては、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.02質量部~3質量部、より好ましくは0.02質量部~1質量部である。上記下限値以上であれば十分な接着性を得ることができ、上記上限値以下であれば硬化物の樹脂特性に悪影響を与える恐れがない。
【0049】
[その他の成分]
本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物には、上記(A)成分~(F)成分の他に、必要に応じて以下のものを含むことができる。
【0050】
[(G)成分]
(G)成分は無機充填剤であり、本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物の強度を上げたり着色したり、粘度を調整するために添加することができる。
【0051】
このような(G)成分としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等が挙げられる。
【0052】
[その他の添加物]
上記高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は、必要に応じて上記(A)~(G)成分以外に硬化反応を抑制・制御する効果を有する化合物を含有してもよい。このような化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。当該化合物による硬化遅延効果の度合いは、その化学構造によって大きく異なる。したがって、その添加量は、使用する化合物の個々について最適な量に調整すべきであるが、一般的には、その添加量が十分であれば室温での長期貯蔵安定性が得られ、硬化が阻害される恐れもない。
【0053】
更に、本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物には、例えば、シリコーン硬化物の硬度を調節する目的で、(B)成分、(E)成分、(F)成分以外の1分子中に1個のケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)を含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子およびアルケニル基を含有しない、非架橋性のオルガノポリシロキサン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、防かび剤等を必要に応じて適宜含有させてもよい。
【0054】
[高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物の調製方法]
本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は、上述した各成分を所定の組成比で配合し、プラネタリーミキサーや品川ミキサー等により常法に準じて均一に混合することによって調製される。
【0055】
本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は高圧下での高温高湿試験に耐え得る安定な接着剤であり、PCTやHAST、TCT(温度サイクル試験)、高温保存試験といった半導体部品の信頼性試験に対して優れた耐久性を示す。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。以下において、部は質量部を示す。粘度はJIS K 7117-1:1999記載の方法に従って測定された23℃における絶対粘度(特に指定の無い場合、ブルックフィールド社製 デジタル粘度計DV-II+Proにより測定)である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で測定された。
【0057】
[調製例1~7]
以下の通り各成分を用意し、以下の表1に示した部数で混合して、シリコーン樹脂接着剤組成物1~7を得た。
【0058】
(A1)アルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン
100gあたりのアルケニル基の量が0.005molであり、粘度が10,000mPa・sで分子鎖両末端がビニル基によって封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均組成式(1)において、R1及びR3が全てメチル基であり、R2が全てビニル基であり、b1/a1=260であるポリジメチルシロキサン、信越化学工業(株)製)
【0059】
(A2)アルケニル基含有分岐状(レジン構造)オルガノポリシロキサン
100gあたりのアルケニル基の量が0.1molであり、重量平均分子量が5,500であるレジン構造オルガノポリシロキサン(平均組成式(2)において、R1が全てメチル基であり、R2が全てビニル基であり、a2/b2=1.2であるポリジメチルシロキサン、信越化学工業(株)製)
【0060】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
下記式で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(平均組成式(3)において、R
3が全てメチル基であり、b3/a3=19であるメチルハイドロジェンポリシロキサン、SiH基量:1.56mol/100g、粘度5mPa・s、信越化学工業(株)製)
【化3】
【0061】
(C)白金金属触媒
白金のビニルシロキサン錯体(白金濃度1質量%、信越化学工業(株)製)
【0062】
(D)ジ(メタ)アクリレート化合物
(D)成分として下記式で表される化合物(共栄社化学(株)製)
【化4】
【0063】
(E)トリメトキシシランもしくはトリクロロシランを加水分解して得られるオリゴマー(オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー)
(E)成分として下記式で表される化合物(SiH基量:1.29mol/100g、動粘度1.2mm
2/s(毛細管粘度計により測定)、信越化学工業(株)製)
【化5】
【0064】
(F)エポキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(F)成分として下記式で表される化合物(平均組成式(4)において、R
1が全てメチル基であり、(R
4
3SiO
1/2)単位のR
4のうち1つがエポキシ基を有する基で残り2つがメチル基であり、(R
4
2SiO
2/2)単位のR
4が全てメチル基であり、a4=0.1、b4=0.3、c4=0.6であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、SiH基量:0.0035mol/100g、動粘度64mm
2/s(毛細管粘度計により測定)、信越化学工業(株)製)
【化6】
【0065】
(G)無機充填剤
(G)成分としてヒュームドシリカ(信越化学工業(株)製、Mu-sil 130A)
【0066】
その他成分
硬化抑制剤としてエチニルシクロヘキサノール
【0067】
以上(A)~(G)成分を以下の表1のような質量部数で混合し、シリコーン樹脂接着剤組成物1~7を得た。なお、各組成物のSiH/SiViの比((A)成分中のアルケニル基1モルに対する(B)成分、(E)成分、(F)成分の合計のSiH基のモル比)をH/Viとした。また、各組成物の(B)成分のSiH/SiViの比((A)成分中のアルケニル基1モルに対する(B)成分のSiH基のモル比)をH/Vi(B)とした。
【表1】
【0068】
[実施例1~3,比較例1~4]
上記調製例によって得られたシリコーン樹脂接着剤組成物1~7を、厚さ2mmのシート状になるように、テフロン(登録商標)板に注型し、180℃のオーブンで1時間加熱することによりシート状硬化物を得た。
【0069】
上記シート状硬化物を厚みが6mmとなるように3枚重ね合わせ、JIS K 6249に従って、デュロメータタイプAにて硬さを測定した。測定結果を表2に示す。
【0070】
上記調製例によって得られたシリコーン樹脂接着剤組成物1~7を、厚さ0.3mmのニッケルメッキ銅板と3mm×3mmサイズのシリコンウェハー片との間に厚さ0.2mmとなるように挟み、180℃のオーブンで1時間加熱することにより接着試験片を得た。
【0071】
上記接着試験片をIEC 60749-19に従って、ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製、Dage4000)を用いて接着力を測定した。測定結果を表2に示す。
【0072】
上記接着試験片をHAST装置((株)平山製作所製、 PC-242HSR2)に投入し、130℃/85%RHの条件で168時間処理した。
【0073】
上記処理済み接着試験片を処理前品と同様にして接着力を測定した。測定結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
ここで、破壊モードは凝集破壊を〇、界面剥離を×とした。
【0076】
表2より、本発明のシリコーン樹脂接着剤組成物を硬化させた接着試験片を130℃/85%RHで168時間加湿加熱処理した後の接着力は、初期値の80%以上を保持することができる。このように、本発明の高耐湿性シリコーン樹脂接着剤組成物は(D)成分のジ(メタ)アクリレート化合物と(E)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー(分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン)、(F)成分のエポキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンを全て含有することで、HAST前後における接着性の低下を抑えることができることが分かった。
【0077】
一方、(D)成分のジ(メタ)アクリレート化合物と(E)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー、(F)成分のエポキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのいずれかを含有しなかった比較例1~4は、HAST後の接着力が低下することが確認された。
【0078】
本発明の組成物に接着性を付与する(D)成分、(E)成分、(F)成分を全て配合すると、(A)成分、(B)成分に相溶する(D)成分と、(A)成分の架橋剤(硬化剤)として機能する(E)成分と、活性なエポキシ基を有する(F)成分の組み合わせによる相乗効果により、上記のような高圧下における耐高温高湿性が発現するものといえる。
【0079】
これらの結果から、本発明のシリコーン樹脂接着剤組成物は優れた耐湿性を示すため、車載用半導体や医療機器などといった高い信頼性が求められる部材の接着剤として好適であるといえる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。