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  • -樹脂ペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/88 20190101AFI20240903BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B29C48/88
B29B9/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024518922
(86)(22)【出願日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2024003749
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2023019811
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-003856(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046308(WO,A1)
【文献】特開2015-020427(JP,A)
【文献】特開2016-055568(JP,A)
【文献】特開平07-195477(JP,A)
【文献】特開昭49-017861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 48/00-48/96
B29C 71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂及び強化充填材を含む組成物を押出機先端のダイからストランド状に押し出し、ストランドをガイドローラーを備えた水槽内に導き冷却し、冷却されたストランドを切断して樹脂ペレットを製造する方法であって、
前記ダイとして横方向平ダイを用い、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度を、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低い温度とし、
前記平ダイ中央のダイ穴の中心位置Aからストランドが最初のガイドローラーに接触する位置Cまでの距離(A-C間距離)が7~30cmであり、ストランドが水面に入る位置Bから位置Cまでの距離(B-C間距離)が、A-C間距離の10~60%の範囲にあることを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
水槽内の第1ガイドローラーの下流に第2のガイドローラーを備え、第2ガイドローラーは第1ガイドローラーより水槽内の深い位置にある請求項1に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
第2ガイドローラーにストランドが接触する位置Dとすると、位置Cから位置Dまでの距離が4~30cmである請求項1または2に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
第1ガイドローラー前後でのストランドがなす角度が130°以上180°未満である請求項1~3のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットの製造方法に関し、熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂及び強化材を含む組成物から、断面の真円度が高い、即ち扁平率の小さいペレットを生産性良く製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ペレットを製造するには、樹脂や添加剤などの原料をタンクやホッパーに収容した後、フィーダにより所定の量となるよう計量した上で押出機に供給し、押出機内で各原料が混練、加熱溶融され、押出機先端のダイのノズルからストランドとして押し出され、樹脂ストランドは冷却用の水槽に導入され冷却固化した後、一定の長さのペレットに切断するペレタイザーによって裁断されペレット化される。
【0003】
ペレタイザーでカットされて得られたペレットは、その後、ペレットクーラー、選別機、マグネットロールセパレータ、ペレットへの滑剤添加装置等を経由する、多くの後工程がある。ペレットはこれら後工程で滞留することなくスムーズに移動しなくてはならない。扁平率が大きい楕円柱状ペレットはその楕円断面方向の回転が阻害され、真円度の高い円筒状ペレットに比べ、スムーズに移動できなくなる。それにより、これら後工程で滞留し、生産性が低下する。後工程で滞留なくスムーズにペレットが移動するためには扁平率が小さくある必要がある。ペレットの扁平率は0.2以下が好ましい。より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0004】
扁平率は、楕円柱状ペレットの断面の楕円が、真円度断面の円に比べてどれくらい扁平か(潰れているか)を表す値であり、楕円の長半径をa、短半径をbとすると、扁平率f=(a-b)/a、即ち、1-b/aで定義される。断面が真円の円筒状ペレットでは扁平率は0であり、潰れるに従って値は1に近づく。
【0005】
熱可塑性樹脂の種類や強化材の種類によらず、どのようなペレットであっても、扁平率が小さい方が後工程で滞留し難くなり、好ましい。また、近年ではペレット形状が均一に揃えられることが強く要求されている。例えば、ペレットを射出成形の材料として用いる場合、ペレット形状にバラつきがあると計量不安定となり、射出成形機の安定した運転に支障をきたすからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題(目的)は、扁平率の小さいペレットを、バラつきなく均一に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、扁平率を小さくするには、横方向平ダイを使うことが有効であり、かつ、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度を、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低い温度とすること、そして、ダイ穴からストランドが冷却水槽の水面下にある最初のガイドローラー(第1ガイドローラー)に接触する位置までの距離を7cmから30cmとすること、さらにストランドの入水点から第1ガイドローラーに接触する位置までの距離を特定の範囲とすることにより、ストランドが振動することによる扁平化や張力差が生じるために発生する扁平化を抑制し、扁平率の小さい樹脂ペレットを、バラつきなく均一に製造できることを見出した。
本発明は以下の樹脂ペレットの製造方法に関する。
【0008】
1.熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂及び強化充填材を含む組成物を押出機先端のダイからストランド状に押し出し、ストランドをガイドローラーを備えた水槽内に導き冷却し、冷却されたストランドを切断して樹脂ペレットを製造する方法であって、
前記ダイとして横方向平ダイを用い、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度を、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低い温度とし、
前記平ダイ中央のダイ穴の中心位置Aからストランドが最初のガイドローラーに接触する位置Cまでの距離(A-C間距離)が7~30cmであり、ストランドが水面に入る位置Bから位置Cまでの距離(B-C間距離)が、A-C間距離の10~60%の範囲にあることを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
2.水槽内の第1ガイドローラーの下流に第2のガイドローラーを備え、第2ガイドローラーは第1ガイドローラーより水槽内の深い位置にある上記1に記載の樹脂ペレットの製造方法。
3.第2ガイドローラーにストランドが接触する位置Dとすると、位置Cから位置Dまでの距離が4~30cmである上記1または2に記載の樹脂ペレットの製造方法。
4.第1ガイドローラー前後でのストランドがなす角度が130°以上180°未満である上記1~3のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
5.前記熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である、上記1~4のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
6.上記1~5のいずれかに記載の製造方法により製造された樹脂ペレット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、扁平率の小さい樹脂ペレットを、バラつきなく均一に製造することができる。得られたペレットを使用すると、射出成形等における正確な計量が確保され、安定した成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明での水冷工程の一例を示す概念図である。
図2】本発明での水冷工程の他の例を示す概念図である。
図3】本発明で使用される押出機のダイ部の一例を示す図である。
図4】本発明で使用される横方向平ダイの一例を示す断面図である。
図5】本発明で使用される横方向平ダイの他の例を示す断面図である。
図6】本発明で使用される横方向平ダイの他の例を示す断面図である。
図7】実施例又は比較例で使用した押出機のスクリュー構成の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0012】
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂及び強化充填材を含む組成物を押出機先端のダイからストランド状に押し出し、ストランドをガイドローラーを備えた水槽内の水面下に引き込み冷却し、冷却されたストランドを切断して樹脂ペレットを製造する。
【0013】
使用する押出機は、一軸押出機でもよいが、二軸押出機の方が好ましく、中でもベント式二軸押出機であり、より好ましくはベント式噛合い型同方向回転二軸スクリュー押出機で、バレル内部に同方向に回転する2本のスクリューを有し、そのスクリュー途中には、複数枚のニーディングディスクによって構成される混練部が相互に噛み合う形態で設けられているものが好ましい。
【0014】
本発明では、押出機先端のダイとして横方向平ダイを用い、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度を、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低い温度とする。
図3は、本発明で使用される押出機のダイ部の一例を示す図であり、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0015】
二軸押出機のスクリュー21から、溶融した樹脂組成物はダイ部に送り込まれる。ダイ部は、ブレーカープレート22(あるいはリングプレート)、ダイホルダ23、フランジ24、マニホールド部25、横方向平ダイ1から構成される。場合によりダイホルダはダイプレート、フランジはヒンジプレートと呼ばれることもある。このフランジ24(あるいはヒンジプレート)とダイホルダ23(あるいはダイプレート)を合わせて、一般にダイヘッドと呼ばれている。
フランジには熱電対26、マニホールド部にも熱電対27が挿しこまれていて、フランジとダイホルダの温度を測定できるようになっている。更にシリンダー、フランジやダイホルダにはヒーターが組み込まれていて、温度制御できるようになっている。
【0016】
ブレーカープレート22内にはスクリーンメッシュを装着することができる。
ブレーカープレート22には、所望の径、ランド長の穴が所望の数で設けられる。特にスクリーンメッシュを使用しない場合は、リング状のプレートであるリングプレート22を設置するのが普通である。本願の実施例、比較例ではリングプレートを設置した。このブレーカープレートやリングプレートにより樹脂漏れを防ぐことができる。
【0017】
横方向平ダイ1は、横方向に並んだダイ穴31、32、33を有する。
図4-6は、横方向平ダイ1の一例を示す断面図である。横方向平ダイとは、例えば、図4(a)にあるような横1列に並んだ複数のダイ穴31、32、33を有するダイ、あるいは、図4(b)にあるように千鳥状に横方向に複数のダイ穴31、32、33が並んだダイ、あるいは、図5(a)のように上下2列に横方向にダイ穴31、32、33が並んだダイを意味する。また、図6(a)、(b)に示すようなダイの全体形状が丸くても、マニホールド部25からのダイ穴31、32、33が横方向に並んだダイも横方向平ダイに含まれ、本発明における好ましい実施態様の例として挙げられる。
【0018】
上下2列に横方向に並ぶ場合は、図5(a)にあるように、端部のダイ穴32、33は上ダイ穴の下側に、下ダイ穴の上側に配置されることが多い。これは横方向平ダイの中で上下2列の間に分離板34を設け、上下に樹脂流路を分けた場合、このような配置となる。
横方向平ダイ中央のダイ穴からのストランド温度(ダイ中央のストランド温度、ということもある。)とは、ダイを正面から見たときの幾何学的中心に一番近いダイ穴31から出た直後のストランド温度のことである。横方向に等間隔で並んだダイでダイ穴の本数が奇数であれば、ダイ中央のダイ穴、偶数であればダイ中央の2本のストランドの温度の平均値のことで、ダイから出た直後の温度である。
このダイ中央のストランド温度は熱電対を接触させ直接的に測定することができる。また、赤外線温度測定器により測定することもできる。このダイ中央のストランド温度は、ダイの中の樹脂温度に近いと考えられる。
横方向平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度(ダイ端のストランド温度、ということもある。)とは、ダイに向かって、左右ダイ両端32、33の各1本のストランド温度である。左右のストランドの温度が異なる場合にはその平均値とする。
【0019】
その他、図5(b)のように、横方向にランダムにダイ穴が配置される場合もある。その場合は平ダイの左右端のダイ穴32、33が端部のダイ穴、ダイの正面から見たときの幾何学的中央に一番近いダイ穴31がダイ中央のダイ穴となる。横方向平ダイ1は、樹脂がダイホルダの中で横方向に流路が広がるマニホールド部25の先端に位置するのが一般的であり、横方向に並んだダイ穴を有するダイのことである。各ダイ穴の径dは全てが同じ径である必要はなく、ダイ穴のランド長Lも同じ長さである必要はなく、ダイ穴毎に径dやランド長Lを変えても構わない。
この横方向平ダイ以外にいわゆる丸ダイ、つまり、丸いダイの内周部にダイ穴が円環状に配置したダイもあるが、高吐出を狙った場合はダイ穴の数が多くなる。そうすると、円周の直径が大きくなり、円周の上のダイ穴から出たストランドは水槽までの距離が長くなり、ストランドの扁平率が促進し、かつストランドが不安定化し、ストランドが簡単に切れるようになる。このように品質の確保及び生産安定化のためには丸ダイは不向きで、横方向平ダイが必要となる。ダイ穴が横方向に並ぶのではなく、円周上に配置した丸ダイは本発明の範囲外となる。
【0020】
ダイ穴の径dは所望するペレットの寸法にもよるが、通常2~5mm、好ましくは3~4mm程度である。前述したように、各ダイ穴の径dは全てが同じ径である必要はなく、ダイ穴のランド長Lも同じ長さである必要はなく、ダイ穴毎に径dやランド長Lを変えても構わない。
【0021】
横方向平ダイからストランド状に押し出されたストランドは、ガイドローラーを備えた水槽内に導き冷却される。
図1は、本発明での水冷工程の一例を示す概念図であり、押出機の横方向平ダイ1から押し出されたストランド2を、水槽3内の水中を移動させながら冷却する工程であり、ストランド2は、最初のガイドローラー(以下、第1ガイドローラー)4により水槽3内の水面5下に浸漬されるようになっている。ガイドローラーは、下流側に第2ガイドローラー6、さらにn番目のガイドローラー7を備えていてもよく、最後は位置Eで水槽3を出る。
【0022】
平ダイ1の中央のダイ穴の中心位置Aから水槽3の水面下にストランド2を引き込むが、第1ガイドローラー4にストランド2が接触する位置Cまでの間では空気中も通過するが、空気中ではストランド2はほぼ溶融状態である。そこではストランドの振動が必ず発生する。この振動は主に平ダイ1の中央のダイ穴の中心位置Aと第1ガイドローラーにストランドが接触する位置Cを両端の節とする上下振動(腹が1つの基本振動)である。この振動によりストランドに張力が発生し、ストランドはより引っ張られ扁平になる。この振動による張力は周期性を帯びるためにストランド方向に扁平率の差が発生する。それによりペレットの扁平率のバラつきが多くなる。つまり扁平率の標準偏差が大きくなる。この振動はAとCの距離が大きくなると増大し、振動による張力は増大し、扁平率が増大する。このためにはAとCの距離(A-C間距離)は30cm以下とすることが必要である。好ましくは、28cm以下、より好ましくは25cm以下、更に好ましくは20cm以下である。一方、A-C間距離は短すぎるとストランドが高温の溶融状態で第1ガイドローラーと接触するために扁平率が大きくなりやすいので、A-C間距離は7cm以上とする。好ましくは10cm以上、より好ましくは12cm以上、更に好ましくは15cm以上である。
【0023】
また、ストランド2が水槽3の水面5に入った地点Bから、第1ガイドローラー4にストランド2が接触する位置Cまでの距離(B-C間距離)は、A-C間距離の10~60%の範囲とすることが必要である。10%より短いとストランドが充分冷却されず半溶融の状態で第1ガイドローラーの屈曲を受けるために容易に扁平となる。好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。60%より長いと今度はストランドの水の中の抵抗で張力が発生し、扁平になり易い。好ましくは55%以下である。
【0024】
なお、C、D等の接触位置について補足すると、各ガイドローラーは通常円柱状で直径を有するため、ストランドはガイドローラー上に弧状で接触することになるので、地点C、D等の接触する位置、接触する位置とは、弧状ストランドの弧の中央の位置(則ち、弧の半分の位置)として、定義される。
【0025】
更に、上記のA、B及びCの位置に加え、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度が、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低いことが必要である。当該温度の下限は、好ましくは、4.5℃以上、さらに好ましくは5℃以上である。また、当該温度の上限は、好ましくは113℃以下、さらに好ましくは12℃以下である。14℃より大きい温度差があると、中央のストランドと端の方のストランドに張力の差が発生し、得られるペレットの扁平率のバラつきが大きくなり、扁平率の標準偏差が大きくなる。またペレットの平均の扁平率も大きくなる。温度差が4℃より低いと、扁平率は大きくなる傾向にある。この原因はよくは分かっていないが、平ダイの横方向のストランド温度分布が小さくなると、ストランドに掛かる張力が全て同じになり、横方向ストランドの上下振動周波数が揃い、第1ガイドローラーにその振動が伝わり同調し、全てのストランドの振動が更に増大することによると考えている。
【0026】
上記したA-C間距離及びB-C距離、かつ横方向平ダイを用いそのダイ穴中央と端のストランド温度差をダイホルダ及びフランジの温度設定により上記所定温度とすることにより、後記した実施例に示すように、得られる樹脂ペレットの平均扁平率、扁平率の標準偏差を小さくすることが可能となる。ダイホルダ及びフランジの温度は、ポリカーボネート樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂組成物の場合は250~300℃程度、ポリアセタール樹脂組成物の場合は180~220℃程度である。
ペレットの扁平率は、平均扁平率で0.2以下であることが必要で、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10未満、中でも0.08以下、0.07以下、0.06以下、特には0.05以下が好ましい。
扁平率の標準偏差は、平均扁平率の半分以下が好ましい。それより大きいと、ペレット間の移動度に差が発生し易く、下流工程での滞留を発生しやすくなる。
【0027】
更に扁平率を小さく、バラつきを小さくするには、図2に示すように、第1ガイドローラー4の下流に第2ガイドローラー6を設け、ストランドを2つのガイドローラーにて水槽内の水面下に導入し、その際、第2ガイドローラー6は、第1ガイドローラー4より水槽内の深い位置に設置することが好ましい。これにより第1ガイドローラー4でストランド2が受ける張力は小さくなり、ストランド2の上下振動も抑えられ、扁平率はより小さく、バラつきもより小さくなる。
ストランド2が第2ガイドローラー6に接触する位置をDとすると、第1ガイドローラーにストランドが接触する位置CからDまでの距離(C-D間距離)は4~30cmであることが好ましい。C-D間距離が30cmより大きいと、水槽3の水の抵抗及び第2ガイドローラー6によりストランド2が受ける張力が大きくなり好ましくない。ストランドの扁平率はほぼ第1ガイドローラーの位置で決まるが、第1ガイドローラーでストランドの固化が不十分な場合は、第2ガイドローラー6の張力によっても扁平化が進行するからである。より好ましくは20cm以下である。
【0028】
また、扁平率を更に小さくするには第1ガイドローラー4の前後でストランド2がなす角度Θを大きくすることが必要である。角度Θが小さいと、ストランド2に強い張力が発生し、ローラーからストランド2を押しつぶす方向に強い力が発生する。角度Θは130°以上が好ましく、より好ましくは140°以上、中でも145°以上、150°以上、155°以上、特に好ましくは160°以上であり、180°未満であることが好ましい。ストランド2がなす角度Θを大きくするには、第2ガイドローラー6の位置を第1ガイドローラー4よりも、より深い位置に置くことで可能である。
【0029】
各ガイドローラーの直径は1cm以上が好ましく、10cm以下が好ましい。1cmより小さいと、ストランドに無理な屈曲が加わり、ストランドは扁平に成りやすい。また10cmより大きいと、ガイドローラー間の距離を任意に変更することが難しくなり好ましくない。より好ましくは2~8cm、更に好ましくは3~7cmである。ガイドローラーはストランドに沿って回転する構造が好ましいが、回転しない構造であってもよく、円柱状の棒や丸棒であってもよい。
【0030】
位置Bから位置Eまでの距離は、熱可塑性樹脂が強化充填材を含有する場合は30cm以上2m以下であることが好ましく、より好ましくは、40cm以上1.5m以下である。強化充填材を含まない組成物の場合は熱が伝わりにくいので、40cm以上3m以下であることが好ましく、より好ましくは、50cm以上2m以下である。
【0031】
水槽3を出たストランドは、ペレタイザーに供給され、カットされてペレットになる。ペレットの長さとしては2~5mm、ペレット径は2~5mmが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法が適用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、結晶性熱可塑性樹脂でもよく、非結晶性熱可塑性樹脂でもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD等のポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、また、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。このような熱可塑性樹脂の中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等のエンジニアリングプラスチックスと称される熱可塑性樹脂は、押出機での溶融混練温度が高いため水冷までの温度差が大きく、扁平化が起こりやすく、本発明の効果が大きいので特に好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂に配合してもよい強化充填材とは、熱可塑性樹脂に含有させて強度及び剛性を向上させるものをいい、繊維状、板状、粒状、無定形等いずれの形態のものであってもよい。
【0034】
強化充填材の形態が繊維状である場合、無機質、有機質のいずれであってもよい。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維、ワラストナイト等の無機繊維、フッ素樹脂繊維、アラミド繊維等の有機繊維が含まれる。強化充填材が繊維状の場合、好ましいのは無機質の繊維であり、その中でも特に好ましいのはガラス繊維である。
強化充填材を配合する場合の量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5~50質量部程度が好ましい。強化充填材は、1種でも2種以上を混合して配合してもよい。
【0035】
また、熱可塑性樹脂には強化充填材以外の添加剤を配合してもよく、添加剤の種類は、特に限定されるものでなく、例えば、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、染顔料等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は通常、例えば0.01~50質量%、特に0.01~40質量%であることが好ましい。
【実施例
【0036】
以下、実施例を示して本発明について、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0037】
実施例及び比較例で使用した原料の熱可塑性樹脂および強化充填材は、以下の表1に記載の通りである。
【0038】
【表1】
【0039】
以下の実施例及び比較例で、押出機は、ベント式噛み合い型同方向回転二軸スクリュー押出機(日本製鋼所社製「TEX44αIII」、シリンダー径D=47mm)を使用した。
【0040】
スクリュー構成を図7に示した。
シリンダー位置C1はフィードシリンダー(フィードバレル)、C7とC12はベントシリンダー、C7は開放ベント、C12は減圧ベント、C9はサイドフィードシリンダーとした。熱可塑性樹脂を溶融混練する第1混練部はC5からC6の位置に配置し、そのスクリュー構成を、それぞれ1Ds(1Ds=44mm)で5枚パドルのRRNNL(Rは順送りニーディングディスクエレメント、Nは直交ニーディングディスクエレメント、Lは逆送りスクリュー)の構成とした。強化充填材のガラス繊維はC9からサイドフィードした。ガラス繊維を混練する、C10~C11の位置にある第2混練部は1Dsで5枚パドルのRと、同じく1Dsのバックミキシングスクリュー(リード0.25Ds)を3つで、図7のように配置した。
横方向平ダイは、ダイ穴の穴径3.8mm、ランド長20mm、穴数10穴を横方向に直線状に備えたものを使用した。ストランドの温度は接触式熱電対(理化工業株式会社製 DP-350温度計、熱電対JB-15 ELEMENT:K)により測定した。
【0041】
実施例1
ポリアミド樹脂PA1を80kg/h、ポリアミド樹脂PA2を60kg/hを、押出機(日本製鋼所社製、「TEX44αIII」)のシリンダー位置C1のフィードバレルに供給し、更に、ガラス繊維(GF1)60kg/hをサイドフィードホッパーからC9のサイドフィードシリンダーに供給した。原料のフィード量は合計で200kg/hであり、スクリュー回転数は250rpm、シリンダー設定温度は260℃とした。また、ダイホルダの温度は280℃とし、フランジの温度もダイホルダに合わせた。なお、以下の全ての実施例、比較例においてフランジの温度はダイホルダの温度と同じとした。
横方向平ダイ中央の2本のストランドの平均のストランド温度は321℃、両端の2本のストランドの温度は313℃でその差は8℃であった。
冷却水槽の水面高さと、第1ガイドローラーの位置を調整し、A-C間距離を17cmとし、B-C間距離をその35%とした。第2ガイドローラーの水槽中の高さは、第1ガイドローラーの高さと同じ(後記表中、「横」と記載)にした。第1ガイドローラーにストランドが接触する位置Cからストランドが第2ガイドローラーに接触する位置Dまでの距離(C-D間距離)は20cmとした。
第2ガイドローラーの下流に第3ガイドローラーを設置し、ストランドを水面に上げた。ストランドが水面に入った位置Bから水面に出る位置EまでのB-E間距離を1mとした。全てのガイドローラーは直径5cmのものを使用した。
第1ガイドローラーの前後でストランドがなす角度は140°であった。
水槽冷却されたストランドをペレタイザーでカットし、3mmの長さ、直径3mmのペレットを得た。任意に選んだ20個のペレットから平均扁平率を測定し、平均扁平率は0.10と良好であった。
【0042】
結果を、扁平率の標準偏差、扁平率の標準偏差/平均扁平率、判定の結果を後記表2に示した。
表中の判定は、以下の基準に基づき行った。
A:平均扁平率が0.1未満
B:平均扁平率が0.1以上0.15以下
C:平均扁平率が0.15超0.2以下
D:平均扁平率が0.2超
【0043】
実施例2
A-C間距離を17cmのまま、B-C間距離をその12%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例3
A-C間距離を17cmのまま、B-C間距離をその47%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例4
第2ガイドローラーの位置を第1ガイドローラーより5cm低い位置にした。C-D間距離はそれにより21cmとなり、第1ガイドローラーの前後でストランドがなす角度は155°となった。その他は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例5
第2ガイドローラーを第1ガイドローラーより10cm低い位置にした。C-D間距離はそれにより23cmとなり、第1ガイドローラーの前後でストランドがなす角度は168°となった。その他は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
【0044】
実施例6
A-C間距離を12cmとし、B-C間距離をその50%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例7
A-C間距離を27cmとし、B-C間距離をその22%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
【0045】
実施例8
ポリブチレンテレフタレート樹脂PBT1を160kg/hを押出機(日本製鋼所社製、「TEX44αIII」)のC1フィードバレルに供給し、更に、ガラス繊維(GF2)40kg/hをサイドフィードホッパーからC9のサイドフィードシリンダーに供給した以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例9
ポリブチレンテレフタレート樹脂PBT2を200kg/hを押出機(日本製鋼所社製、「TEX44αIII」)のC1フィードバレルに供給し、ガラス繊維を供給しなかった以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
実施例10
ポリカーボネート樹脂PCを180kg/hを押出機(日本製鋼所社製、「TEX44αIII」)のC1フィードバレルに供給し、更に、ガラス繊維(GF2)20kg/hをサイドフィードホッパーからC9のサイドフィードシリンダーに供給した以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に記載した。
【0046】
比較例1
A-C間距離を17cmのまま、B-C間距離をその6%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に記載した。
比較例2
A-C間距離を17cmのまま、B-C間距離をその71%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に記載した。
比較例3
A-C間距離を5cmとし、B-C間距離をその40%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に記載した。
比較例4
A-C間距離を32cmとし、B-C間距離をその19%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に記載した。
【0047】
比較例5
ダイホルダ及びフランジの温度を310℃とした以外は実施例1と同様に行った。中央のストランド温度は328℃、端のストランドの温度は325℃なり、その差は3℃となった。結果を表3に記載した。
比較例6
ダイホルダ及びフランジの温度を240℃とした以外は実施例1と同様に行った。中央のストランド温度は316℃、端のストランドの温度は299℃なり、その差は17℃となった。結果を表3に記載した。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の製造方法によれば、扁平率の小さい樹脂ペレットをバラつきなく均一に製造することが可能であり、各種の成形において安定した成形を可能とする。
【符号の説明】
【0051】
1:横方向平ダイ
2:ストランド
3:冷却水槽
4:第1ガイドローラー
5:水槽の水面
6:第2ガイドローラー
7:第nガイドローラー
21:押出機スクリュー
22:ブレーカープレート
23:ダイホルダ
24:フランジ
25:マニホールド部
26、27:熱電対
31、32、33:ダイ穴
【要約】
扁平率の小さい樹脂ペレットを、バラつきなく均一に製造する。
熱可塑性樹脂組成物を押出機先端のダイからストランド状に押し出す際、ダイとして横方向平ダイを用い、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度を、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低い温度とし、ストランドが最初のガイドローラーに接触する位置Cまでの距離(A-C)が7~30cmであり、ストランドが水面に入る位置Bから位置Cまでの距離(B-C)が、A-C距離の10~60%として樹脂ペレットを製造する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7