IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許7549292赤外線剥離用接着剤組成物、積層体、積層体の製造方法及び剥離方法
<>
  • 特許-赤外線剥離用接着剤組成物、積層体、積層体の製造方法及び剥離方法 図1
  • 特許-赤外線剥離用接着剤組成物、積層体、積層体の製造方法及び剥離方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】赤外線剥離用接着剤組成物、積層体、積層体の製造方法及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20240904BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20240904BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240904BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20240904BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/08
C09J5/06
B32B27/00 101
B32B27/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020556155
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044642
(87)【国際公開番号】W WO2020100966
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018215863
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】森谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓也
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/087146(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221772(WO,A1)
【文献】特開2016-053107(JP,A)
【文献】特開2016-003270(JP,A)
【文献】特開2016-30823(JP,A)
【文献】特開2001-200162(JP,A)
【文献】特開昭52-24258(JP,A)
【文献】特開昭64-70559(JP,A)
【文献】特開2018-21985(JP,A)
【文献】特開2013-203800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01L 21/304
H01L 21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線照射により剥離可能な赤外線剥離用接着剤組成物であって、
ヒドロシリル化反応により硬化するポリシロキサン(A1)を含む成分(A)と、
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種であり、ヒドロシリル化反応により硬化するものではない成分(B)と、
を含有し、
前記エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位を含み、R11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、
前記メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位を含み、R210およびR220は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、
前記フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位を含むものであり、R31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表す、
ことを特徴とする赤外線剥離用接着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)(前記R乃至Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、
前記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)(前記R’乃至R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、前記R’乃至R’の少なくとも1つは、前記アルケニル基である)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)(前記R”乃至R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、前記R”乃至R”の少なくとも1つは、水素原子である。)とを含む、
請求項1に記載の赤外線剥離用接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ変性ポリオルガノシロキサンが、エポキシ価が0.1~5の範囲であるエポキシ変性ポリオルガノシロキサンである、
請求項1又は2に記載の赤外線剥離用接着剤組成物。
【請求項4】
前記フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、(b1)フェニルメチルシロキサン単位構造又はジフェニルシロキサン単位構造と、(b2)ジメチルシロキサン単位構造とを含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の赤外線剥離用接着剤組成物。
【請求項5】
半導体形成基板からなる第1基体と、赤外線レーザーを透過する支持基板からなる第2基体とが、接着層とを介して接合されている積層体であって、
前記接着層が、請求項1~4の何れか一項に記載の赤外線剥離用接着剤組成物から得られる硬化膜である、
積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体の製造方法であって、
前記第1基体又は前記第2基体の表面に前記赤外線剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する第1工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体と密着させ、その後、後加熱処理を行う第2工程と、
を含む積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体の製造方法により製造した積層体の前記第2基体側から前記赤外線レーザーを照射し、前記第2基体を剥離する、
剥離方法。
【請求項8】
前記赤外線レーザーが、波長が1μm~20μmのレーザーである、
請求項7に記載の剥離方法。
【請求項9】
前記波長が、9.2μm~10.8μmである、
請求項8に記載の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハーや部品を実装するための配線基板などの機能部材を支持体に固定するための仮接着剤である赤外線剥離用接着剤組成物及びそれを用いた積層体、並びに積層体の製造方法及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーが積層される。
【0003】
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)は、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。
この仮接着の取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり、変形したりすることがある。そのようなことが起きないように、仮接着された支持体は、容易に取り外されなければならない。しかし、その一方で、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって仮接着された支持体が外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐えるが、研磨後に容易に取り外されることである。
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
【0004】
このような事情より、研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)と、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)が仮接着には必要となる。これに関連する方法として、接着層と分離層を持ち、分離層がジメチルシロキサンのプラズマ重合によって形成され、研磨後に機械的に分離する方法(例えば特許文献1,2)、支持基板と半導体ウエハーとを接着性組成物で接着し、半導体ウエハーの裏面を研磨した後に接着剤をエッチング液で除去する方法(例えば特許文献3)が報告されている。また、これに関連する支持体と半導体ウエハーを接着する接着層等としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンとを白金触媒で重合した重合層と、熱硬化性ポリシロキサンからなる重合層との組み合わせを含むウエハー加工体(例えば特許文献4~6)が報告されている。さらに、ヒドロシリル化反応の抑制剤として長鎖α-アセチレンアルコールと硬化性シリコーン組成物(例えば特許文献7)が報告されている。しかしながら、昨今の半導体分野における急速な進展に伴い、常に、新技術や改良技術への強い要望が存在し、仮接着に関する新技術や改良技術も求められている。
【0005】
また、上述したような仮接着は、ウエハーの薄化の際だけでなく、半導体部品などの機能性部品を配線基板などの機能性基材に実装する実装プロセスなどにおいても用いられる。すなわち、当初の工程で機能性基材を支持するために仮接着された支持体を用い、部品を実装してモールドした後に支持体を剥離する場合などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2012-510715号公報
【文献】特表2012-513684号公報
【文献】特開2013-179135号公報
【文献】特開2013-232459号公報
【文献】特開2006-508540号公報
【文献】特開2009-528688号公報
【文献】特開平6-329917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、支持体の接合時(硬化時)やウエハー裏面の加工時、さらには部品実装プロセスにおける耐熱性に優れ、支持体の剥離時には容易に剥離できる赤外線剥離用接着剤組成物及びそれを用いた積層体、並びに積層体の製造方法及び剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第1観点として、赤外線照射により剥離可能な赤外線剥離用接着剤組成物であって、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分(B)と、を含有することを特徴とする赤外線剥離用接着剤組成物、
第2観点として、前記成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)(前記R乃至Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、前記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)(前記R’乃至R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、前記R’乃至R’の少なくとも1つは、前記アルケニル基である。)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)(前記R”乃至R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、前記R”乃至R”の少なくとも1つは、水素原子である。)とを含む、第1観点に記載の赤外線剥離用接着剤組成物、
第3観点として、前記エポキシ変性ポリオルガノシロキサンが、エポキシ価が0.1~5の範囲であるエポキシ変性ポリオルガノシロキサンである、第1又は第2観点に記載の赤外線剥離用接着剤組成物、
第4観点として、前記フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、(b1)フェニルメチルシロキサン単位構造又はジフェニルシロキサン単位構造と、(b2)ジメチルシロキサン単位構造とを含む、第1~第3観点の何れかに記載の赤外線剥離用接着剤組成物、
第5観点として、半導体形成基板からなる第1基体と、赤外線レーザーを透過する支持基板からなる第2基体とが、接着層とを介して接合されている積層体であって、前記接着層が第1~第4観点の何れかに記載の赤外線剥離用接着剤組成物から得られる硬化膜である積層体、
第6観点として、第5観点に記載の積層体の製造方法であって、前記第1基体又は前記第2基体の表面に前記赤外線剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する第1工程と、前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体と密着させ、その後、後加熱処理を行う第2工程と、を含む積層体の製造方法、
第7観点として、第6観点に記載の積層体の製造方法により製造した積層体の前記第2基体側から前記赤外線レーザーを照射し、前記第2基体を剥離する、剥離方法、
第8観点として、前記赤外線レーザーが、波長が1~20μmのレーザーである、第7観点に記載の剥離方法、
第9観点として、前記波長が、9.2~10.8μmである、第8観点に記載の剥離方法。
【0009】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分(B)の両方を含むことから、赤外線照射により剥離できる接着層を形成でき、また、ウエハーの回路面へのスピンコート性に優れ、ウエハーの回路面或いは支持体と接着層との接合時やウエハー裏面の加工時における耐熱性に優れた接着層を形成できる、という効果を奏する。
【0010】
ウエハーの回路面の反対側の加工としては、例えば、研磨によるウエハーの薄化が行われる。その後、ウエハーにシリコン貫通電極(TSV)等の形成を行うこともできる。その後に支持体から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が負荷されるが、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物を用いて製造した積層体は、接着層を含め、その負荷に対する耐熱性を有している。
また、ウエハーの裏面の加工後、即ち研磨後には赤外線照射を行うことにより容易に剥離でき、剥離後はウエハーや支持体に付着した接着剤が溶剤又はテープによって簡単に除去できるという効果が得られる。
【0011】
さらに、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物を用いて製造した積層体の剥離方法では、通常、レーザー加工に用いられる赤外線レーザーを照射することにより、容易に剥離でき、特別な装置を設備することなく、一般的にレーザー加工に用いられている設備を使用して剥離することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の積層体の製造方法を説明する概略図である。
図2】本発明の剥離方法の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、例えば、支持体とウエハーの回路面との間で剥離可能に接着しウエハーの裏面を加工するために用いる接着剤であり、前記接着剤がヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分(B)とを含む。
【0014】
かかる本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、赤外線レーザーの照射により剥離可能な接着層を形成するものであり、支持体やウエハーなどに剥離のための過度な荷重をかけることなく、剥離可能であるという利点を有するものである。
【0015】
本発明では赤外線剥離用接着剤組成物によって支持体とウエハーが仮接着され、例えば、ウエハーの回路面とは反対側の裏面が研磨等によって加工されることにより、ウエハーを薄化することができる。
【0016】
また、本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体と、赤外線レーザーを透過する支持基板からなる第2基体とが、前記赤外線剥離用接着剤組成物で形成された接着層とを介して接合されているものである。
かかる積層体は、赤外線レーザーを透過する第2基体側から、赤外線レーザーを照射することにより、剥離のための過度な荷重をかけることなく、剥離可能なものである。
【0017】
よって、第2基体は、剥離のための赤外線を透過可能なものとする必要があるが、第1基体側から赤外線照射が可能な場合には、この限りではない。
ここで、剥離可能とは他の剥離箇所よりも接着強度が低く、すなわち、剥離性に優れ、剥離しやすいことを意味するが、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物を用いて得られる接着層は、赤外線照射により、照射前より接着強度が著しく低下するものである。
【0018】
本発明の積層体における接着層(仮接着層)は、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物によって形成される。赤外線剥離用接着剤組成物は、上述した成分(A)と成分(B)とを含み、更にその他の成分を含むことができる。
本発明の好ましい一態様においては、成分(A)は、ヒドロシリル化反応により硬化する成分として、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、前記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含むものである。
【0019】
乃至Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。
’乃至R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、R’乃至R’の少なくとも1つは、アルケニル基である。
”乃至R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、R”乃至R”の少なくとも1つは、水素原子である。
【0020】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素原子数40以下、より好ましくは炭素原子数30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
【0021】
直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、メチル基が好ましい。
【0022】
環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素原子数40以下、より好ましくは炭素原子数30以下、より一層好ましくは炭素原子数20以下である。
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、エテニル基、2-プロペニル基が好ましい。
【0024】
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。
【0025】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ポリオルガノシロキサン(a1)に包含されるポリオルガノシロキサンを2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0026】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’乃至R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは0.5モル%~30.0モル%であり、残りのR’乃至R’はアルキル基とすることができる。
【0028】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”乃至R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは10.0モル%~40.0モル%であり、残りのR”乃至R”はアルキル基とすることができる。
【0029】
ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)とを含むものであるが、本発明の好ましい一態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
【0030】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の重量平均分子量は、それぞれ、通常500~1,000,000であるが、好ましくは5,000~50,000である。
【0031】
本発明における重量平均分子量は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(昭和電工(株)製Shodex(登録商標),KF-803L、KF-802及びKF-801)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
【0032】
なお、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)が含み得るポリオルガノシロサン(a1)とポリオルガノシロサン(a2)は、後述の通りに、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して硬化膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成する官能基を含む必要はない。
【0033】
本発明の好ましい一態様においては、成分(A)は、上述のポリシロキサン(A1)ともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0034】
成分(A)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキニルアルキルアルコール等が挙げられるが、これに限定されない。
重合抑制剤の量は、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0035】
本発明で用いる成分(B)は、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有する。
特にエポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分が好ましい。
【0036】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0037】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
また、エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ変性ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0038】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
本発明の好ましい一態様においては、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0039】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、その重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
【0040】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(B-1)で表される商品名CMS-227(ゲレスト社製、重量平均分子量27,000)、式(B-2)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)、式(B-3)で表される商品名KF-101(信越化学工業(株)製、重量平均分子量31,800)、式(B-4)で表される商品名KF-1001(信越化学工業(株)製、重量平均分子量55,600)、式(B-5)で表される商品名KF-1005(信越化学工業(株)製、重量平均分子量11,500)、式(B-6)で表される商品名X-22-343(信越化学工業(株)製、重量平均分子量2,400)、式(B-7)で表される商品名BY16-839(ダウコーニング社製、重量平均分子量51,700)、式(B-8)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
【化1】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0042】
【化2】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0043】
【化3】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0044】
【化4】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0045】
【化5】
(m、n及びoはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0046】
【化6】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0047】
【化7】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0048】
【化8】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0049】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0050】
210およびR220は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンとの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0051】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0052】
本発明のある一態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0053】
本発明の好ましい一態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0054】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの粘度は、通常1,000~2,000,000mm/sであるが、好ましくは10,000~1,000,000mm/sである。なお、メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、典型的には、ポリジメチルシロキサンからなるジメチルシリコーンオイルである。この粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス (cSt)=mm/sである。動粘度は、動粘度計で測定することができる。また、粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。すなわち、25℃で測定したE型回転粘度計による粘度と密度から求めることができる。動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)という式から算出することができる。
【0055】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ワッカー社製 WACKER(登録商標) SILICONE FLUID AK シリーズや、信越化学工業(株)製ジメチルシリコーンオイル(KF-96L、KF-96A、KF-96、KF-96H、KF-69、KF-965、KF-968)、環状ジメチルシリコーンオイル(KF-995)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0057】
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0058】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の好ましい一態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0060】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、組成物中での析出抑制の観点等から、好ましくは100,000以下である。
【0061】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(C-1)で表される商品名PMM-1043(Gelest,Inc.製、重量平均分子量67,000、粘度30,000mm/s)、式(C-2)で表される商品名PMM-1025(Gelest,Inc.製、重量平均分子量25,200、粘度500mm/s)、式(C-3)で表される商品名KF50-3000CS(信越化学工業(株)製、重量平均分子量39,400、粘度3000mm/s)、式(C-4)で表される商品名TSF431(MOMENTIVE社製、重量平均分子量1,800、粘度100mm/s)、式(C-5)で表される商品名TSF433(MOMENTIVE社製、重量平均分子量3,000、粘度450mm/s)、式(C-6)で表される商品名PDM-0421(Gelest,Inc.製、重量平均分子量6,200、粘度100mm/s)、式(C-7)で表される商品名PDM-0821(Gelest,Inc.製、重量平均分子量8,600、粘度125mm/s)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
【化9】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0063】
【化10】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0064】
【化11】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0065】
【化12】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0066】
【化13】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0067】
【化14】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0068】
【化15】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0069】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、成分(A)と成分(B)とを任意の比率で含み得るが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量%で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0070】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでいてもよく、その具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メチシレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
【0071】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物は、膜構成成分と溶媒を混合することで製造できる。ただし、溶媒が含まれない場合、膜構成成分を混合することで、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を製造することができる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、膜構成成分の全てを溶媒に溶解させる方法や、膜構成成分の一部を溶媒に溶解させ、膜構成成分の残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられる。この場合において、必要であれば、一部の溶媒や、溶解性に優れる膜構成成分を最後に加えることもできる。
組成物を調製では、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0072】
本発明においては、赤外線剥離用接着剤組成物は、組成物中の異物を除去する目的で、組成物を製造する途中段階でまたは全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0073】
本発明の積層体を製造する方法は、第1基体又は第2基体の表面に前記赤外線剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する第1工程と、前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体と密着させ、その後、後加熱処理を行う第2工程と、を含む方法が挙げられる。第2工程の加熱により、接着剤塗布層が最終的に好適に硬化して接着層となる。
【0074】
ここで、例えば、第1基体がウエハーであり、第2基体が支持体である。赤外線剥離用接着剤組成物を塗布するのは、第1基体又は第2基体の何れか一方でも、又は両者でもよいが、第1基体の表面とするのが好ましい。
ウエハーとしては例えば直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーやガラスウエハーが挙げられるが、これらに限定されない。
支持体(キャリア)は、赤外線レーザーを透過する限り特に限定されるものではないが、その透過率は、通常80%以上、好ましくは90%以上である。例えば直径300mm、厚さ700mm程度のシリコンウエハーを挙げることができるが、これに限定されない。
【0075】
ここで、赤外線レーザーとは、後述する剥離工程で使用するレーザーであり、例えば、波長が1μm~20μmのレーザーを挙げることができる。本発明の好ましい一態様においては、赤外線レーザーの波長は、9.2~10.8μmである。
【0076】
前記接着塗布層の膜厚は、通常5~500μmであるが、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0077】
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法などで塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を貼付する方法を採用してもよく、これも塗布又は塗布膜という。
【0078】
塗布した接着剤組成物の加熱処理の温度は、膜厚等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常80℃以上であり、過度の硬化を防ぐ観点から、好ましくは150℃以下であり、その加熱時間は、仮接着能を確実に発現させる観点から、通常30秒以上であり、好ましくは1分以上であるが、接着層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常5分以下、好ましくは2分以下である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
【0079】
加熱処理の温度は、通常80℃以上であり、過度の硬化を防ぐ観点から、好ましくは150℃以下である。その加熱時間は、仮接着能を確実に発現させる観点から、通常30秒以上であり、好ましくは1分以上であるが、接着層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常10分以下、好ましくは5分以下である。
【0080】
減圧処理は、2つの基体及びそれらの間の接着剤塗布層を10~10,000Paの気圧下にさらせばよい。減圧処理の時間は、通常1~30分である。
【0081】
本発明の好ましい態様においては、2つの基体及びそれらの間の層は、好ましくは加熱処理によって、より好ましくは加熱処理と減圧処理の併用によって、貼り合せられる。
【0082】
前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重は、前記第1基体及び前記第2基体とそれらの間の層に悪影響を及ぼさず、且つこれらをしっかりと密着させることができる荷重である限り特に限定されないが、通常10~1,000Nの範囲内である。
【0083】
後加熱温度は、十分な硬化速度を得る観点から、好ましくは120℃以上であり、基板や接着剤の変質を防ぐ観点から、好ましくは260℃以下である。加熱時間は、硬化によるウエハーの好適な接合を実現する観点から、通常1分以上であり、さらに接着剤の物性安定化の観点等から、好ましくは5分以上であり、過度の加熱による接着層への悪影響等を回避する観点から、通常180分以下、好ましくは120分以下である。加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
なお、後加熱処理の一つの目的は、接着剤組成物をより好適に硬化させることである。
【0084】
図1には、本発明の積層体の製造方法を説明する概略図を示す。図1に示すように、第1基体11と第2基体12を用意し、例えば、第2基体12の表面に前記赤外線剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層13を形成する第1工程を実施する(図1(a))。次に、前記第1基体11と前記第2基体12とを前記接着剤塗布層13を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、第1基体11及び第2基体12の厚さ方向の荷重L1をかけて、第1基体11と第2基体12とこれらの間の層を密着させ、その後、後加熱処理を行うことで、接着層13Aで接着された積層体10を得る第2工程を実施する(図1(b))。
【0085】
本発明の積層体の剥離方法は、前記第2基体側から前記赤外線レーザーを照射し、前記第2基体を剥離するものである。通常、剥離は、本発明の積層体を製造し、それに所定の加工等が行われた後に、実施される。
【0086】
ここで、加工とは、例えば、ウエハーの回路面の反対側の加工であり、ウエハー裏面の研磨によるウエハーの薄化が挙げられる。その後、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、その後に支持体から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が負荷されるが、本発明の積層体は、接着層を含め、その負荷に対する耐熱性を有している。また、加工は上述した加工に限定されず、例えば、半導体部品を実装するための基材をサポートするために支持体と仮接着した場合の半導体部品の実装プロセスの実施なども加工に含まれる。
【0087】
例えば直径300mm、厚さ770μm程度のウエハーは、表面の回路面とは反対の裏面を研磨して、厚さ80μm~4μm程度まで薄化することができる。
【0088】
図2は、本発明の積層体の剥離方法及びその剥離の後に接着層を除去し、プロセスが施された第1基体を得る方法の一例を説明する概略図である。
図2(a)に示すのは加工などのプロセス後の積層体10Aであり、積層体10Aの第2基体12側から赤外線レーザー20を照射する。接着層13Aが赤外線レーザー20の照射を受けると、接着層13Aが熱分解等により変質し、接着力が著しく低下し、剥離可能な状態となる。
次に、図2(b)に示すように、第2基体12を接着層13Aから剥離する。この際、接着層13Aは変質して接着力が著しく低下した状態であるので、第2基体12は、例えば、わずかな外力(L2)を加えて引き上げることによって、第1基体11及び接着層13Aから容易に分離され、その後、第1基体11に残った接着層13Aを、例えば有機溶媒からなるクリーナーで除去することで、薄化などのプロセスが施された第1基体11を得ることができる(図2(c))。
【0089】
以上のように、本発明に係る積層体10は、本発明の赤外線剥離用接着剤組成物で形成した接着層で接着しているので、赤外線レーザーの照射によって、第1基体11及び接着層13Aから第2基体12を容易に剥離することができる。
【0090】
なお、赤外線レーザー20の照射は、必ずしも接着層の全領域に対してなされる必要はない。赤外線レーザー20が照射された領域と照射されていない領域とが混在していても、接着層13A全体としての強度が十分に低下していれば、わずかな外力を加えて第2基体12を引き上げることによって第2基体12を積層体10から剥離することができる。赤外線レーザー20を照射する領域と照射しない領域との比率および位置関係は、接着層13Aを形成する赤外線剥離用接着剤組成物、接着層13Aの厚さ、照射する赤外線レーザー20の強度等によって異なるが、当業者であれば、過度の試験を要することなく、適宜条件を設定できる。たとえば、赤外線の描写線幅と同一幅でもって、赤外線レーザーを照射しない領域を、赤外線レーザーを照射する領域の隣に設けるようにしてもよい。
【0091】
このように、接着層13Aの一部にのみ赤外線レーザーを照射する場合であっても第2基体12を分離することができるため、積層体1つ当たりのレーザーの照射時間を短くでき、その結果、剥離に要する総時間を短縮することができる。
【実施例
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)攪拌機:(株)シンキー製 あわとり練太郎
(2)貼り合せ装置:ズースマイクロテック社製 XBS300又はアユミ工業(株)製 VJ-300
(3)ダイシングマシン:(株)東京精密製 ダイシングマシンSS30
(4)レーザー加工装置(剥離装置):トロテック社製 Speedy300[レーザー波長10.6μm、パワー75W〕(条件:速度100mm/s、1000PPI/Hz)
【0093】
[1]接着剤の製造
[実施例1-1]
ポリシロキサン(a1)として、Mw6,900のビニル基含有のMQ樹脂からなるベースポリマー(ワッカーケミ社製)10.00g、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)7.01g、ポリシロキサン(a2)として、粘度70mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)1.50g、ポリシロキサン(a2)として、粘度40mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)1.08g、重合抑制剤(A3)として、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.049g、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分(B)として、X-22-343(信越化学工業(株)製)0.197gを攪拌機で撹拌し、混合物を得た。
この得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)として、白金触媒(ワッカーケミ社製)1.0gと、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.0gとを攪拌機で5分間撹拌して別途得られた混合物0.118gを加え、さらに5分間撹拌し成分(A)及び成分(B)を含む赤外線剥離用接着剤組成物を得た。
なお、X-22-343の構造は式(B-6):
【0094】
【化16】
である。重量平均分子量は2,400であった。m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。
【0095】
[実施例1-2]
ポリシロキサン(a1)として、Mw6,900のビニル基含有のMQ樹脂からなるベースポリマー(ワッカーケミ社製)141.22g、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)35.30g、ポリシロキサン(a1)として、粘度200mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)4.54g、ポリシロキサン(a2)として、粘度70mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)12.11g、ポリシロキサン(a2)として、粘度40mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)7.57g、重合抑制剤(A3)として、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.504gと、重合抑制剤(A3)として、1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.504g、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分(B)として、X-22-343(信越化学工業(株)製)2.02g、溶媒として、ウンデカン(和光純薬工業(株)(現 富士フイルム和光純薬(株))製)10.69gを攪拌機で撹拌し、混合物を得た。
この得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)として、白金触媒(ワッカーケミ社製)1.0gと、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.0gとを攪拌機で5分間撹拌して別途得られた混合物1.21gを加え、さらに5分間撹拌し成分(A)及び成分(B)を含む赤外線剥離用接着剤組成物を得た。
【0096】
[比較例1-1]
ポリシロキサン(a1)として、Mw6,900のビニル基含有のMQ樹脂からなるベースポリマー(ワッカーケミ社製)10.00g、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)7.01g、ポリシロキサン(a2)として、粘度70mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)1.50gおよびポリシロキサン(a2)として、粘度40mPa・sのSi-H基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)1.08gと、重合抑制剤(A3)として、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.049gとを攪拌機で撹拌し、混合物を得た。
この得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)として、白金触媒(ワッカーケミ社製)1.0gと、ポリシロキサン(a1)として、粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.0gとを攪拌機で5分間撹拌して別途得られた混合物0.118gを加え、さらに5分間撹拌し成分(A)を含む比較接着剤組成物を得た。
【0097】
[3]積層体の製造および剥離試験
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた赤外線剥離用接着剤組成物を、300mm角のガラスウエハーに、最終膜厚が40μm程度となるようにスピンコートを行い、120℃1分間で加熱し、ガラスウエハー上に接着剤塗布層を形成した。
この接着剤塗布層を有するガラスウエハーと、300mm角のシリコンウエハーとを、接着剤塗布層を挟むように貼り合せ装置を用いて貼り合わせ、200℃で10分間加熱(後加熱処理)硬化することにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,000Paで、30Nの荷重をかけて行った。
作製した積層体は、ダイシング装置を用いて1cm角にダイシングし、ダイシングした積層体を評価用サンプルとした
【0098】
[実施例2-2]
実施例1-1で得られた赤外線剥離用接着剤組成物の代わりに、実施例1-2で得られた赤外線剥離用接着剤組成物を用い、貼り合せを、温度50℃、減圧度1,000Paで、500Nの荷重をかけて行った以外は、実施例2-1と同様の方法で、積層体および評価用サンプルを得た。
【0099】
[比較例2-1]
実施例1-1で得られた赤外線剥離用接着剤組成物の代わりに、比較例1-1で得られた比較接着剤組成物を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、積層体および評価用サンプルを得た。
【0100】
レーザー加工器を用いて積層体にレーザーを照射し、剥離を試みた。レーザーは、シリコンウエハー側から全面に亘って走査しながら照射した。その際のレーザーのパワー(出力)とともに、剥離の可否を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明の積層体を用いた場合、レーザー照射の後に剥離可能であったが、比較例の積層体を用いた場合、そのような剥離は困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の赤外線剥離用接着剤組成物を用いて製造した積層体は、通常、レーザー加工に用いられる赤外線レーザーを照射することにより、容易に剥離でき、特別な装置を設備することなく、一般的にレーザー加工に用いられている設備を使用して剥離することができるものであり、種々の用途に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
10、10A 積層体
11 第1基体
12 第2基体
13 接着剤塗布層
13A 接着層
20 赤外線レーザー
図1
図2