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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】積層体及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/42 20100101AFI20240904BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
H01L33/42
B32B9/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021554931
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041005
(87)【国際公開番号】W WO2021090790
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019203232
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笘井 重和
(72)【発明者】
【氏名】上岡 義弘
(72)【発明者】
【氏名】勝又 聡
(72)【発明者】
【氏名】久志本 真希
(72)【発明者】
【氏名】出来 真斗
(72)【発明者】
【氏名】本田 善央
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-128631(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101221830(CN,A)
【文献】国際公開第2016/132681(WO,A1)
【文献】特開2013-120829(JP,A)
【文献】特開2013-110345(JP,A)
【文献】国際公開第2006/028118(WO,A1)
【文献】特開2005-307269(JP,A)
【文献】特開2004-356196(JP,A)
【文献】特開2004-266258(JP,A)
【文献】特開平09-293936(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109599470(CN,A)
【文献】特許第7357883(JP,B2)
【文献】久志本真希、外4名,“RFスパッタ法を用いたMgZnOの熱処理効果”,2019年 第66回応用物理学会春季学術講演会[講演予稿集],2019年02月25日,15-022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、バッファ層及び電極層をこの順で含み、
前記電極層は前記バッファ層に直接接しており、
前記バッファ層がガリウム酸化物及び亜鉛酸化物とを含み、
前記バッファ層におけるGa及びZnの合計に対するGaのモル比[Ga/(Ga+Zn)]が0.001以上0.2以下であり、
前記電極層がマグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物を含み、
前記電極層におけるMg及びZnの合計に対するMgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.25以上0.75以下であり、
前記電極層のX線回折測定において2θ=34.8±0.5degに観測される回折ピークの半値幅が0.43deg以下である、積層体。
【請求項2】
前記電極層及び前記バッファ層からなる積層ユニットの導電率が0.5S/cm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記電極層及び前記バッファ層からなる積層ユニットの波長260nmの光線透過率が4%以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記電極層のc軸配向度が40%以上である、請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記支持体が紫外線透過部材を含む、請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記支持体が半導体層を含む、請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記半導体層がIII-V族窒化物半導体を含む、請求項に記載の積層体。
【請求項8】
前記半導体層がAlN、GaN、InN又はそれらの混晶を含む、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の積層体を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を透過する電極層を有する積層体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム等のような窒化物半導体を用いた深紫外線発光半導体装置は、軽量且つ長寿命な深紫外線光源として注目されている。深紫外線光源は、殺菌やセンシング、工業用途等、様々な分野で応用が可能である。従来の深紫外線光源である水銀ランプは、水銀の環境問題を有するため、深紫外線発光半導体装置はその代替技術として期待されている。
【0003】
ところで、従来、可視光の発光ダイオードでは、スズをドープした酸化インジウム(ITO)が透明電極として広く使用されている。
【0004】
また、特許文献1には、可視光透過性及び導電性に優れる材料として、特定のインジウム酸化物が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、可視光透過性及び導電性を大きく損なうことなく優れた耐薬品性を示す透明導電膜を蒸着法により形成するための材料として、酸化亜鉛とマグネシウムとを含有する特定の酸化物焼結体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-245220号公報
【文献】特開2014-129230号公報
【発明の概要】
【0007】
深紫外線発光半導体装置が紫外線領域において優れた発光効率を達成するために、紫外線透過性及び導電性に優れる電極が求められる。
【0008】
しかし、可視光の発光ダイオードで用いられてきたITOは紫外線透過性に劣るため、紫外線透過性及び導電性を両立できない。特許文献1、2の技術もまた紫外線透過性及び導電性を両立する観点では改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的の一つは、紫外線透過性及び導電性に優れる電極層を含む積層体を提供することである。
本発明の目的の一つは、紫外線領域において優れた発光効率を有する半導体装置を提供することである。
【0010】
本発明によれば、以下の積層体等が提供される。
1.支持体、バッファ層及び電極層をこの順で含み、
前記バッファ層がGa、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素とを含み、
前記電極層がマグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物を含み、
前記電極層のX線回折測定において2θ=34.8±0.5degに観測される回折ピークの半値幅が0.43deg以下である、積層体。
2.前記電極層及び前記バッファ層からなる積層ユニットの導電率が0.5S/cm以上である、1に記載の積層体。
3.前記電極層におけるMg及びZnの合計に対するMgのモル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.25以上0.75以下である、1又は2に記載の積層体。
4.前記電極層及び前記バッファ層からなる積層ユニットの波長260nmの光線透過率が4%以上である、1~3のいずれかに記載の積層体。
5.前記電極層のc軸配向度が40%以上である、1~4のいずれかに記載の積層体。
6.前記バッファ層が亜鉛酸化物を含む、1~5のいずれかに記載の積層体。
7.前記バッファ層がガリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含む、1~6のいずれかに記載の積層体。
8.前記バッファ層におけるGa及びZnの合計に対するGaのモル比[Ga/(Ga+Zn)]が0.000以上0.2以下である、1~7のいずれかに記載の積層体。
9.前記支持体が紫外線透過部材を含む、1~8のいずれかに記載の積層体。
10.前記支持体が半導体層を含む、1~8のいずれかに記載の積層体。
11.前記半導体層がIII-V族窒化物半導体を含む、10に記載の積層体。
12.前記半導体層がAlN、GaN、InN又はそれらの混晶を含む、10又は11に記載の積層体。
13.1~12のいずれかに記載の積層体を含む、半導体装置。
【0011】
本発明の一態様によれば、紫外線透過性及び導電性に優れる電極層を含む積層体を提供できる。
本発明の一態様によれば、紫外線領域において優れた発光効率を有する半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る発光ダイオード(LED)の概略構成図である。
図2】第2実施形態に係るLEDの概略構成図である。
図3】第3実施形態に係るLEDの概略構成図である。
図4】実施例及び比較例で作製した評価試料の概略断面図である。
図5】実施例1の電極層の透過電子顕微鏡(TEM)像である。
図6】実施例1の電極層のX線回折パターンである。
図7】実施例、比較例及び参考例の電極層の移動度μとキャリア濃度nの関係を示すグラフである。
図8】比較例1の電極層のTEM像である。
図9】比較例1の電極層のX線回折パターンである。
図10】比較例3の電極層のX線回折パターンである。
図11】比較例4及び参考例1~3の電極層の光線透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[積層体]
本発明の一態様に係る積層体は、支持体、バッファ層及び電極層をこの順で含む。バッファ層はGa、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素とを含む。電極層はマグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物を含む。電極層のX線回折測定において2θ=34.8±0.5degに観測される回折ピークの半値幅は0.43deg以下である。本態様に係る積層体は、電極層の紫外線透過性(例えば波長400nm以下の領域の透過性)及び導電性に優れる効果を奏する。
【0014】
[支持体]
支持体は格別限定されず、紫外線透過部材及び半導体層からなる群から選択される1以上を含むことが好ましい。
【0015】
紫外線透過部材は、例えばガラス、石英、樹脂等のような紫外線を透過可能な材料を含むことができる。耐熱性の観点から、ガラスや石英が好適である。
【0016】
半導体層に含まれる半導体は格別限定されず、例えばIII-V族窒化物半導体が好適である。そのような半導体として、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、AlN、InN、BN等が挙げられる。半導体層は、AlN、GaN、InN又はそれらの混晶を含むことが好ましい。
【0017】
半導体層はn型半導体であってもよく、また、p型半導体であってもよい。n型ドーパントとしてはSi等が使用できる。p型ドーパントとしてはMg等が使用できる。Si及びMgの他、公知のドーパントを使用できる。
【0018】
半導体層は、例えば、半導体層を形成するための支持基板上にエピタキシャル成長させることにより形成できる。支持基板は格別限定されず、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlN、InN、SiC、Si、サファイア等が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、半導体層は、バッファ層に直接接触するように設けられる。
一実施形態において、支持体は、半導体層と、該半導体層とは異なる材料を含む支持基板とを含んでもよい。例えば、支持体は、GaNを含む半導体層をバッファ層側に含み、Siを含む支持基板を、半導体層から見てバッファ層と反対側に含むことができる。
【0020】
半導体層の厚さは、目的や用途に応じて(例えば所望の電気特性が得られるように)適宜調整することができ、例えば、10nm~2mmの範囲が好ましい。
【0021】
半導体層が、p型半導体又はn型半導体であるかは、ホール効果測定により判定する。半導体層が高抵抗であることによってホール効果測定が困難である場合は、フォトルミネッセンス(PL)によるアクセプタ由来のピーク(385~400nm)の有無や、二次イオン質量分析法(SIMS)によって、アクセプタ元素(Mg等)及びドナー元素(Si等)の含有量を比較し、アクセプタ元素がドナー元素より多く含まれている場合はp型半導体、ドナー元素がアクセプタ元素より多く含まれている場合はn型半導体と判定する。これらのいずれの型においても、半導体層は、アクセプタ元素とドナー元素とを、元素のモル比で1桁以上(10倍以上)の差をもって含み得る。
【0022】
半導体層は、例えば紫外線放射部材を形成するための要素であり得る。紫外線放射部材は、紫外線を放射可能であればよく、半導体層に加えて紫外発光層を含むことができる。一実施形態において、半導体層は、紫外発光層とバッファ層との間に配置される。バッファ層を形成する段階において、あるいは、バッファ層上に電極層を形成する段階において、半導体層に紫外発光層が積層されていてもよいし、半導体層に紫外発光層が積層されていなくてもよい。
【0023】
[バッファ層]
バッファ層は、該バッファ層上に形成される電極層の紫外線透過性及び導電性の向上に寄与する。
本態様において、バッファ層は、Ga、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素とを構成元素として含む。一実施形態において、バッファ層は、Ga及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素とを構成元素として含む。一実施形態にいて、バッファ層は、Ga及びZnと酸素とを構成元素として含む。
【0024】
バッファ層は、亜鉛酸化物を含むことが好ましく、ガリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含むことがより好ましい。なお、ガリウム酸化物及び亜鉛酸化物には、ガリウムと亜鉛の固溶体(GaZnOx)が含まれていてもよく、また、含まれていなくてもよい。
【0025】
バッファ層におけるGa及びZnの合計に対するGaのモル比(原子数比)[Ga/(Ga+Zn)]は、例えば、0.000(Gaを含まない)であってもよく、0.000以上、0.001以上、0.005以上、0.010以上又は0.015以上であり得、また、0.2以下、0.1以下又は0.05以下であり得る。
【0026】
バッファ層はさらに、Ga、Al、In及びZn以外の3価又は4価の元素Zを含んでもよい。バッファ層が元素Zを含む場合、バッファ層における元素Zの全金属元素に対するモル比[元素Z/全金属元素]は、例えば、0.0001以上又は0.001以上であり得、また、0.20以下又は0.10以下であり得る。元素Zとしては、例えば、B、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられる。
【0027】
バッファ層の組成は、例えば、スパッタで形成する場合はスパッタリングターゲットの組成を調製することにより制御できる。また、ガリウム酸化物(GaOx)の焼結体ターゲット及び亜鉛酸化物(ZnOx)の焼結体ターゲットと、任意で元素Zを含む焼結体ターゲットを用いたコスパッタで、それぞれの成膜速度を調整することによっても制御することができる。他の成膜方法についても、バッファ層の組成は蒸着源等、原料の組成を調製することにより制御できる。
また、Ga、In、Al、Znなどの金属ターゲットを用いて酸素を導入する反応性スパッタリングによっても、バッファ層を得ることができる。
なお、スパッタや蒸着によりバッファ層を形成する場合、スパッタリングターゲット及び蒸着源の組成とバッファ層の組成はほぼ一致するが、酸素と結合しやすい元素は基板への堆積速度が低下することがある。その場合は、堆積速度の違いによる組成比のズレを考慮して焼結体ターゲットの組成を適宜選択できる。
バッファ層の各元素のモル比は、例えば、二次イオン質量分析法で測定できる。後述する電極層の各元素のモル比も同様にして測定する。
【0028】
一実施形態において、バッファ層は本質的に、Ga、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素からなるか、又はGa、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素と元素Zからなる。
一実施形態において、バッファ層の90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上が、Ga、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素であるか、又はGa、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素と元素Zである。
一実施形態において、バッファ層は、Ga、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素のみからなるか、又はGa、Al、In及びZnからなる群から選ばれる1以上の金属と酸素と元素Zのみからなる。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0029】
バッファ層の厚さは格別限定されず、例えば、1nm以上、2nm以上又は3nm以上であり得、また、100nm以下、50nm以下、30nm以下又は20nm以下であり得る。厚さ等の断面形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。バッファ層の厚さが小さくなるほど、紫外線透過性がより良好になる。また、バッファ層の厚さは、1nm以上であれば電極膜の結晶配向の効果がより良好に現れ、2.5nm以上であれば導電性もより良好になる。
【0030】
[電極層]
電極層はバッファ層上に形成される。一実施形態において、電極層はバッファ層に直接接触するように形成される。バッファ層によって電極層の配向性が制御され、電極層の紫外線透過性及び導電性が向上する。
電極層はマグネシウム酸化物と亜鉛酸化物とを含む。なお、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物には、マグネシウムと亜鉛の固溶体(MgZnOx)が含まれていてもよく、また、含まれていなくてもよい。
【0031】
本実施形態の電極層は、電極層断面のTEM像である図5に例示されるように、導電性を有するが紫外線透過性を有しない亜鉛酸化物(ZnO等)を主とする領域と、導電性を有しないが紫外線透過性を有するマグネシウム酸化物(MgO等)を主とする領域とが、それぞれ分散した状態になっている。そして、導電性は亜鉛酸化物を主とする領域が担い、紫外線透過性はマグネシウム酸化物を主とする領域が担っていると推定される。これにより、導電性及び紫外線透過性をともに有する電極層となる。本導電現象は、パーコレーション伝導モデルで説明できると考えられる。
【0032】
導電性及び紫外線透過性をより好適に発現させるためには、電極層におけるMg及びZnの合計に対するMgのモル比(原子数比)[Mg/(Mg+Zn)]を0.25以上0.75以下にすることが好ましい。
かかるモル比[Mg/(Mg+Zn)]は、例えば、0.25以上、0.30以上、0.31以上、0.33以上、0.35以上、0.37以上、0.40以上、0.43以上、0.45以上、0.47以上又は0.5以上であり得、また、0.75以下又は0.70以下であり得る。
一実施形態において、かかるモル比[Mg/(Mg+Zn)]は、0.30以上0.75以下、0.33以上0.75以下、0.40以上0.75以下、さらには0.50以上0.75以下であることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、電極層がさらに、Mg及びZn以外の3価又は4価の元素Xを含むことが好ましい。元素Xの全金属元素に対するモル比[元素X/全金属元素]が0.0001以上0.20以下であることが好ましく、0.001以上0.10以下であることがより好ましい。元素Xを含ませることにより、亜鉛酸化物中に元素Xがドーピングされ、導電性がより向上する場合がある。
元素Xとしては、例えば、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられる。好ましくは、B、Al又はGaである。
【0034】
電極層の組成は、例えば、スパッタで形成する場合はスパッタリングターゲットの組成を調製することにより制御できる。また、マグネシウム酸化物(MgOx)の焼結体ターゲット及び亜鉛酸化物(ZnOx)の焼結体ターゲットと、任意に、元素Xを含む焼結体ターゲットを用いたコスパッタで、それぞれの成膜速度を調整することによっても制御することができる。他の成膜方法についても、電極層の組成は蒸着源等、原料の組成を調製することにより制御できる。マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物を含む焼結体ターゲットは、例えば、国際公開第2012/014688号を参照することで作製できる。
なお、スパッタや蒸着により電極層を形成する場合、スパッタリングターゲット及び蒸着源の組成と電極層の組成はほぼ一致する。
【0035】
一実施形態において、電極層は本質的に、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物からなるか、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物からなる。
一実施形態において、電極層の90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上が、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物であるか、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物である。
一実施形態において、電極層は、マグネシウム酸化物及び亜鉛酸化物のみからなるか、又はマグネシウム酸化物、亜鉛酸化物及び元素Xの酸化物のみからなる。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0036】
電極層は熱処理が施されたものであってもよい。これにより、電極層に導電性及び紫外線透過性を発現するモルフォロジーを好適に形成できる。熱処理は、バッファ層上に成膜された電極層に施すことが好ましい。
電極層の熱処理温度は、例えば、750℃以上、800℃以上又は900℃以上であり得、また1200℃以下であり得る。
電極層の熱処理時間は、処理温度、電極層の厚さ等により適宜調整することができる。通常、30秒~1時間である。
熱処理は、窒素雰囲気のような不活性雰囲気や、水素雰囲気のような還元雰囲気で実施することが好ましい。
【0037】
電極層及びバッファ層からなる積層ユニット(積層体のうちの電極層及びバッファ層によって構成される部分構造)の導電率は、例えば、0.01S/cm以上、0.05S/cm以上、0.1S/cm以上、0.2S/cm以上、0.3S/cm以上、0.4S/cm以上又は0.5S/cm以上であり得る。上限は格別限定されず、例えば10000S/cm以下であり得る。ここで、導電率は25℃において測定される値である。電極層及びバッファ層からなる積層ユニットの導電率は実施例に記載の方法で測定する。
電極層及びバッファ層からなる積層ユニットの導電率は、0.5S/cm以上であることが好ましい。これにより、電極層を例えば半導体装置の電極として使用した際に、導電性や電流注入効率を向上できる。電極層は、該電極層及びバッファ層からなる積層ユニットの導電率が任意の値、例えば0.5S/cm以上になるように熱処理することができる。
バッファ層が設けられることによって、上記のような高い導電率を好適に達成できる。バッファ層が設けられ、且つ電極層に熱処理が施されることによって、上記のような高い導電率をより好適に達成できる。一実施形態において、バッファ層が積層された電極層と、バッファ層が積層されていない電極層とを、同じ温度で熱処理した場合、バッファ層が積層された電極層は、より高い紫外線透過性及び導電性を発揮する。
【0038】
電極層のX線回折測定において、2θ=34.8±0.5degに回折ピークが観測される。この回折ピークは、ZnO(0002)面に由来する。当該回折ピークの半値幅、即ちZnO(0002)面の回折強度の半値幅は、0.43deg以下である。これにより、電極層の紫外線透過性及び導電性がさらに向上する。かかる半値幅は、例えば、0.40deg以下、0.38deg以下、0.36deg以下、0.34deg以下、0.33deg以下、0.32deg以下又は0.31deg以下であり得る。下限は格別限定されず、例えば0.001deg以上であり得る。
ZnO(0002)面の回折強度の半値幅は、実施例に記載の方法により測定する。
【0039】
電極層及びバッファ層からなる積層ユニットの波長260nmの光線透過率は4%以上であることが好ましく、10%以上、20%以上であることがより好ましい。上限は格別限定されず、例えば80%以下である。本実施形態では深紫外線である波長260nmの光でも十分に透過することができる。深紫外領域(260nm以下の領域)での光線透過率が高く(あるいは該深紫外領域での透明性を有し)、且つ、良好な導電性を有する本実施形態に係る電極(電極層)は、水銀ランプの代替技術として深紫外線発光半導体装置等に好適に利用できる。光線透過率は、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0040】
電極層の厚さは、所望の光線透過率及び導電性が得られるように、適宜調整することができる。例えば、1nm~10μmの範囲が好ましく、さらに、10nm以上1μm以下であることが好ましい。厚さ等の断面形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
【0041】
電極層は、電子を流す領域が電気的につながっていれば、非晶質層であってもよく、また、多結晶層であってもよい。さらに、非晶質成分と結晶成分が混在した層であってもよい。電極層の結晶性は、TEMの格子像から判別できる。
【0042】
一実施形態において、バッファ層は、該バッファ層上に形成される電極層に含まれる結晶を、該電極層の紫外線透過性及び導電性が向上するように配向させることに寄与する。一実施形態において、バッファ層は、電極層に含まれる結晶を、該電極層の厚さ方向(電極層の形成面に対して垂直方向)に配向させることに寄与する。
【0043】
一実施形態において、電極層は、六方晶のc軸が電極層の厚さ方向に配向したZnOを含む。
一実施形態において、電極層は、六方晶のc軸が電極層の厚さ方向に配向したZnOを含み、該ZnOにMgが固溶している。
【0044】
電極層のc軸配向度は、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上であり得、また、100%未満、99.9%以下又は99.8%以下であり得る。電極層のc軸配向度は40%以上、40%以上99.9%以下、さらには50%以上99.8%以下であることが好ましい。これにより、電極層の導電性がさらに向上する。
電極層のc軸配向度は実施例に記載の方法により測定する。
【0045】
[配線層]
一実施形態において、積層体はさらに配線層を含む。配線層は、電極層の一部に接するように設けることができる。配線層は、電極層の電気伝導を補助するものであり、高電流が必要な半導体装置において有用である。
本実施形態では、電極層を通して紫外線を装置外部に取り出すことから、配線層は可能な限り紫外線を遮断しないように形成することが好ましい。具体的には、電極層の端部付近に線状(ストライプ状)に形成してもよく、また、電極層上に、開口度の大きな格子状に形成してもよい。いずれの形状においても、配線層の幅をなるべく細くすることが好ましい。
【0046】
配線層は、電極層の半導体層と接している反対側の面上に形成することが好ましい。また、電極層よりも高い導電性を有する材料で形成することが好ましい。例えば、Ni、Pd、Pt、Rh、Zn、In、Sn、Ag、Au、Mo、Ti、Cu及びAlから選択される1以上を含む金属(2以上が選択される場合、該金属は合金であり得る。),ITO、SnO、ZnO、In、Ga、RhO、NiO、CoO、PdO、PtO、CuAlO、CuGaO等の酸化物,TiN、TaN、SiNx等の窒化物,poly-Si(ポリシリコン)が挙げられる。
電極層を通過させて紫外線とともに可視光を取り出す場合、配線層は光透過性を有する透明導電性酸化物又は透明導電性窒化物であることが好ましい。
【0047】
配線層は、単層であってもよく、また、2層以上の積層であってもよい。例えば、電極層に接する方に、Niを含む層を形成し、Ni層上に酸化を防ぐために、Au層を積層することができる。また、配線層を構成する各層が、上述した金属、酸化物及び窒化物からなる群より選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0048】
配線層の厚さは、所望の電気特性が得られるように適宜調整することができる。例えば、10nm~10μmの範囲が好ましい。
【0049】
[その他]
以上に説明した各実施形態の構成部材は、公知の成膜技術を適用して製造でき、あるいは公知のものを使用してもよい。
成膜技術は格別限定されず、例えば、抵抗線加熱蒸着、電子ビーム(EB)蒸着、スパッタ、原子層堆積(ALD)成膜、熱化学気相成長(熱CVD)、平行平板型プラズマCVD、有磁場マイクロ波プラズマCVD、又は誘導結合プラズマCVD、スピンコート、イオンプレーティング等が挙げられる。
スパッタによる成膜の場合、酸素含有雰囲気下で、金属ターゲットの反応性スパッタも好適に用いることができる。これにより、絶縁体ターゲットを用いるスパッタに比べて成膜レートが向上する。
【0050】
バッファ層及び電極層を形成する際には、半導体層等の他の層への熱ダメージを低減する観点から、O、Ar及びNから選択される少なくとも一つをスパッタガスに使用したスパッタ、又は、イオンプレーティングを用いることが好ましい。配線層は、例えば、上述したスパッタ又は蒸着によって形成することができる。
【0051】
一実施形態において、積層体の製造方法は、バッファ層上に電極層を形成することを含む。一実施形態において、積層体の製造方法は、支持体上にバッファ層を形成すること、及びバッファ層上に電極層を形成することを含む。
【0052】
一実施形態において、積層体の製造方法は、半導体層を含む支持体上にバッファ層を形成し、次いでバッファ層上に電極層を形成することを含む。
他の実施形態において、積層体の製造方法は、紫外線透過部材を含む支持体上にバッファ層を形成し、次いでバッファ層上に電極層を形成することを含む。さらに、電極層上に、半導体層を形成することを含んでもよい。本実施形態によれば、電極層を熱処理する際に、電極層に半導体層が積層されている必要がないため、後に電極層に積層される半導体層を熱処理による影響から好適に保護できる。
【0053】
[用途]
以上に説明した積層体の用途は格別限定されず、例えば半導体装置の構成部材として使用できる。
本発明の一態様に係る半導体装置は、本発明の一態様に係る積層体を含む。これにより、紫外線領域において優れた発光効率を有する半導体装置が得られる。かかる半導体装置において、電極層は、優れた電流-電圧特性を示し、また優れた紫外線透過性を示し得る。
【0054】
一実施形態において、半導体装置において発せられた紫外線は、電極層を透過する。一実施形態において、半導体装置において発せられた紫外線は、本発明の一態様に係る積層体を、好ましくはバッファ層及び電極層の順で、透過する。電極層を透過した紫外線は、半導体装置の外部に放射されてもよい。一実施形態において、電極層は、紫外線を発光するための電圧を印加するために用いられ得る。
【0055】
半導体装置は格別限定されず、例えば、窒化ガリウム半導体を用いた可視光及び/又は紫外線を発する短波長発光ダイオード、同レーザーダイオード等が挙げられる。一実施形態において、半導体装置は、深紫外領域(260nm以下の領域)の紫外線を発する深紫外線発光半導体装置である。
【0056】
以下、積層体を含む半導体装置として、発光ダイオードの具体例を、図面を用いて説明する。なお、半導体装置は以下の例に限定されない。
【0057】
図1は、第1実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。
本実施形態において、発光ダイオード1は、基板20、n型GaN系半導体層21、紫外発光層22、電極層(陰極)23、半導体層(p型GaN系半導体層)11、バッファ層12、電極層13及び配線層14を含む。
具体的には、基板20上にn型GaN系半導体層21が積層されている。半導体層21上の端部付近の一部には電極層23(陰極)が設けられ、他の一部(電極層23及びその周辺以外の箇所)には紫外発光層22が設けられている。紫外発光層22上には、半導体層(p型GaN系半導体層)11、バッファ層12、電極層13が設けられている。電極層13の上面端部付近には、配線層14が設けられている。
【0058】
図2は、第2実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。図2中、図1と同符号は同構成を示している。
本実施形態において、発光ダイオード1は、電極層23(陰極)、基板20、n型GaN系半導体層21、紫外発光層22、半導体層(p型GaN系半導体層)11、バッファ層12及び電極層13がこの順で積層された構造を含む。その他の構成については、第1実施形態についてした説明が援用される。
【0059】
図3は、第3実施形態に係る発光ダイオードの概略構成図である。図3中、図1と同符号は同構成を示している。
本実施形態において、発光ダイオード1は、基板20、電極層23(陰極)、n型GaN系半導体層21、紫外発光層22、半導体層(p型GaN系半導体層)11、バッファ層12及び電極層13がこの順で積層された構造を含む。その他の構成については、第1実施形態についてした説明が援用される。
【0060】
第1~3実施形態に係る発光ダイオードにおいて、配線層14を介して電極層13と電極23との間に電圧を印加すると、半導体層11にはホールが、n型GaN系半導体層21には電子が注入される。注入されたホール及び電子が紫外発光層22で再結合することにより発光する。
【0061】
第1~3実施形態に係る発光ダイオードにおいて、電極層23に隣接するようにバッファ層が設けられてもよい。これにより、電極層23の紫外線透過性及び導電性を電極層13と同様に向上できる。
【0062】
第1~3実施形態に係る発光ダイオードにおいて、配線層14は省略されてもよい。この場合、配線層を使用せずに電極層13と電極層23との間に電圧を印加する。
【0063】
以上に説明した各実施形態の構成部材は、公知の成膜技術を適用して製造でき、あるいは公知のものを使用してもよい。
【実施例
【0064】
実施例1
実施例及び比較例(但し、比較例3の評価試料において下記バッファ層12の形成は省略した。)で作製した評価試料の概略断面図を図4に示す。
図4に示す評価試料は、支持体30、バッファ層12及び電極層13がこの順で積層された構造を含む。
電極層13上には一対の配線層14が設けられている。
以下に製造方法を説明する。
【0065】
(1)バッファ層12の形成
支持体30であるサファイア基板(厚さ0.5mm)を、超音波洗浄器中に入れ、トリクロロエチレンで5分間、アセトンで5分間、メタノールで5分間、最後に蒸留水で5分間洗浄した。
その後、支持体30をスパッタリング装置(ULVAC製:ACS-4000)にセットし、モル比[Ga/(Ga+Zn)]が0.02(2%)であるガリウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製)を用いて、スパッタガスにArを用い、25℃で支持体30上にバッファ層12を20nm成膜した。
【0066】
(2)電極層13の形成
次いで、モル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.33であるマグネシウム酸化物-亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製;以下、「MZO(1:2)」と表記する場合がある。)を用いて、スパッタガスにArを用い、25℃でバッファ層12上に電極層13を100nm成膜した。
【0067】
(3)熱処理
バッファ層12上に形成された電極層13を、窒素雰囲気にて950℃で5分間熱処理(活性化アニール)した。
【0068】
(4)結晶状態及び配向性の評価
[TEMによる観察]
透過電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-9500」)を用いて、熱処理後の電極層13の垂直方向(厚さ方向)の断面を観察した。
実施例1及び後述の実施例2、3では、アニール(熱処理)によって生じた分相が、コントラストにより観察された。一方、比較例では、実施例ほどの明確な分相がみられなかった。
【0069】
[X線回折(XRD)法]
熱処理後の基板をXRD評価装置にセットし、以下の条件で電極層(薄膜)13の結晶性を評価した。なお、XRD評価は以下の条件にて行った。
装置:(株)リガク製Ultima-III
X線:Cu-Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
出力:40kV-40mA
2θ-θ反射法、連続スキャン(1.0deg/分)、測定範囲 20deg~70deg
サンプリング間隔:0.02deg
スリットDS、SS:2/3deg、RS:0.6mm
【0070】
上記のXRD評価により、電極層のc軸配向度を下記の式により求めた。
c軸配向度(%)={(P-P)/(1-P)}×100
=I(0002)/ΣI(hkil)
P=I(0002)/ΣI(hkil)
ここで、I(0002)は、ICDD(登録商標;International Centre for Diffraction Data)のPDF(登録商標;Powder Diffraction File)カード番号01-075-0576における(0002)面の回折強度(2θ=34.8±0.5degに現れるピークの回折強度)を表す。
(0002)は、電極層(試料)における(0002)面の回折強度(2θ=34.8±0.5degに現れるピークの回折強度)を表す。
ΣI(hkil)は、ICDDのPDFカード番号01-075-0576における(hkil)面の回折強度の積分値(2θ=30deg~60deg)を表す。
ΣI(hkil)は、電極層(試料)における(hkil)面の回折強度の積分値(2θ=30deg~60deg)を表す。
【0071】
また、ZnO(0002)面の回折ピーク(2θ=34.8±0.5degに観測される回折ピーク)の半値幅を半値全幅(FWHM)として求めた。
【0072】
(5)ホール効果測定
熱処理後の基板を比抵抗/ホール測定システム(東陽テクニカ製:ResiTest 8300)にセットし、23℃において、電極層13の移動度μ及びキャリア濃度nを測定した。
【0073】
これらの結果を表1に示す。TEM像を図5に示す。X線回折パターンを図6に示す。移動度μとキャリア濃度nの関係を図7に示す。尚、図7において、「実」は実施例、「比」は比較例、「参」は参考例をそれぞれ表す。
【0074】
(6)配線層14の形成
熱処理後の基板を、エリアマスクとともにEB蒸着装置(アルバック社製)にセットし、図4に示したように、電極層13上にNi層14a(厚さ20nm)及びAu層14b(厚さ200nm)を成膜し、積層構造を有する一対の配線層14を形成した。
【0075】
(7)比抵抗、導電率及び光線透過率の測定
配線層14が形成された評価試料について、比抵抗/ホール測定システム(東陽テクニカ製:ResiTest 8300)を使用して、25℃において、電極層13及びバッファ層12からなる積層ユニットの比抵抗及び導電率を測定した。
また、分光光度計(島津製作所製:UV-2600)を使用し、25℃において、電極層13及びバッファ層12からなる積層ユニットの波長260nmの光線透過率を評価した(尚、後述する実施例5~9、比較例4及び参考例1~3においては波長280nm及び310nmの光線透過率も評価した。)。ここで、積層ユニットの光線透過率は、支持基板(ここではサファイア基板)のみについて測定された光線透過率をバックグラウンドとして除去した値である。
これらの結果を表1に示す。
【0076】
実施例2
実施例1において熱処理温度を1060℃にした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1及び図7に示す。
【0077】
実施例3
実施例1において熱処理温度を1150℃にした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1及び図7に示す。
【0078】
比較例1
実施例1において熱処理を省略した他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1及び図7に示す。TEM像を図8に示す。X線回折パターンを図9に示す。
【0079】
比較例2
実施例1において熱処理温度を600℃にした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1及び図7に示す。
【0080】
比較例3
実施例1においてバッファ層の形成を省略し、支持体(サファイア基板)上に直接、電極層を形成した他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表1及び図7に示す。X線回折パターンを図10に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例4
実施例1において、バッファ層の厚さを1.25nmとし、かつ、電極層に用いるスパッタリングターゲットを、モル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.5であるマグネシウム酸化物―亜鉛酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製;以下、「MZO(1:1)」と表記する場合がある。)に代えた他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2及び図7に示す。
【0083】
実施例5~9
実施例4においてバッファ層の厚さを2.5nm、5.0nm、10nm、20nm、50nmに変化させた他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2及び図7に示す。
【0084】
比較例4
実施例4においてバッファ層の形成を省略し、支持体(サファイア基板)上に直接、電極層を形成した他は、実施例4と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表2及び図7に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
参考例1~3
実施例1において、バッファ層の形成を省略し、支持体(サファイア基板)上に直接、電極層を形成するにあたり、モル比[Mg/(Mg+Zn)]が0.5であるマグネシウム酸化物―亜鉛坂物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製;「MZO(1:1)」)とモル比[Mg:Zn:Al]が49.5:49.5:1であるマグネシウム酸化物―亜鉛-アルミ酸化物スパッタリングターゲット(フルウチ化学製;以下、「AZO」と表記する場合がある。)とのコスパッタでAlの全金属元素に対するモル比[Al/全金属元素]を表3に示す値にそれぞれ調整し、電極層の厚さを表3に示す値に調整し、かつ、熱処理温度を850℃にした他は、実施例1と同様にして評価試料を作製し評価した。結果を表3及び図7に示す。
【0087】
また、比較例4及び参考例1~3の電極層について測定した波長200~400nmの光線透過スペクトルを図11に示す。図11において、点線は熱処理前、実線は熱処理後にそれぞれ対応する。
【0088】
【表3】
【0089】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11