(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】アルデヒド除去材
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20240904BHJP
【FI】
B01J20/22 A
(21)【出願番号】P 2020020677
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】川上 茂樹
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-097869(JP,A)
【文献】特開平08-217619(JP,A)
【文献】登録実用新案第3152443(JP,U)
【文献】特開2003-245543(JP,A)
【文献】特開平05-066291(JP,A)
【文献】特開平03-207484(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110479216(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109224831(CN,A)
【文献】米国特許第05626765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に付着した、タンニン及び酸化物と
を含み、
前記酸化物は
、酸化鉄(III)を含む、アルデヒド除去材。
【請求項2】
前記酸化物は
、アルミナを含む、請求項1に記載のアルデヒド除去材。
【請求項3】
前記酸化物は、酸化鉄(II)を更に含む、請求項
2に記載のアルデヒド除去材。
【請求項4】
前記酸化物は
、シリカを更に含む、請求項
2に記載のアルデヒド除去材。
【請求項5】
基材と、
前記基材の表面に付着した、タンニン及び酸化物と、
前記基材の表面に付着したL-プロリン
と
を含み、
前記酸化物は、アルミナ及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種と
、酸化鉄(III)と、酸化鉄(II)とを含む
、アルデヒド除去材。
【請求項6】
前記L-プロリンの量は、前記基材の前記表面1cm
2あたり50.0ng以上200.0ng以下である、請求項
5に記載のアルデヒド除去材。
【請求項7】
前記タンニンの量は、前記基材の前記表面1cm
2あたり100μg以上500μg以下である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のアルデヒド除去材。
【請求項8】
前記酸化物の量は、前記基材の前記表面1cm
2あたり7.5ng以上50.0ng以下である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のアルデヒド除去材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドを除去する材料(以下、「アルデヒド除去材」と記載する)に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性のアルデヒド(より具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)は、自動車の排気ガス等の燃焼ガス中に含まれており、刺激臭として知覚される。また、一部の青果物は、アセトアルデヒドを発生する。青果物から発生したアセトアルデヒドは、青果物のエチレン発生作用を促進させる。その結果、青果物から発生したエチレンにより、青果物の鮮度が短期間で低下する場合がある。よって、生活環境からアルデヒドを除去することが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン及びアセトアルデヒドを分解して青果物の鮮度を保持する鮮度保持剤が記載されている。特許文献1に記載の鮮度保持剤は、パラジウムを必須成分として含み、エチレン及びアセトアルデヒドを、青果物にとって無害な物質に分解することにより除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、アルデヒドを効率よく除去することついて、改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルデヒドを効率よく除去できるアルデヒド除去材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアルデヒド除去材は、基材と、前記基材の表面に付着した、タンニン及び酸化物とを含む。前記酸化物は、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0008】
ある実施形態では、前記酸化物は、前記アルミナを含む。
【0009】
ある実施形態では、前記酸化物は、前記アルミナ及び前記酸化鉄(III)を含む。
【0010】
ある実施形態では、前記酸化物は、前記アルミナ、前記酸化鉄(III)及び酸化鉄(II)を含む。
【0011】
ある実施形態では、前記酸化物は、前記アルミナ、前記酸化鉄(III)及び前記シリカを含む。
【0012】
ある実施形態に係るアルデヒド除去材は、前記基材の表面に付着したL-プロリンを更に含み、かつ、前記酸化物として、前記アルミナ及び前記シリカからなる群より選択される少なくとも一種と、前記酸化鉄(III)と、酸化鉄(II)とを含む。
【0013】
ある実施形態では、前記L-プロリンの量は、前記基材の前記表面1cm2あたり50.0ng以上200.0ng以下である。
【0014】
ある実施形態では、前記タンニンの量は、前記基材の前記表面1cm2あたり100μg以上500μg以下である。
【0015】
ある実施形態では、前記酸化物の量は、前記基材の前記表面1cm2あたり7.5ng以上50.0ng以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るアルデヒド除去材によれば、アルデヒドを効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の別の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の更に別の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の更に別の一例を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。
【0019】
まず、本明細書中で使用される用語について説明する。「アルデヒド」は、アルデヒド基(-CHO)を有する化合物の総称である。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びプロピオンアルデヒドが挙げられる。
【0020】
「物質が基材の表面に付着する」ことには、「物質が基材の表面に直接的に付着する」こと、及び「物質が基材の表面に間接的に付着する」ことの二通りの場合が含まれる。よって、例えば、「タンニンが基材の表面に付着する」ことには、「タンニンが基材の表面に直接的に付着する」こと、及び「タンニンが基材の表面に、他の物質(例えば、酸化物等)を介して間接的に付着する」ことの二通りの場合が含まれる。
【0021】
質量平均分子量(Mw)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0022】
<アルデヒド除去材>
以下、図面を参照して、本実施形態に係るアルデヒド除去材を説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0023】
図1は、本実施形態に係るアルデヒド除去材の一例を模式的に示す部分断面図である。
図1に示すアルデヒド除去材10は、基材11と、タンニン12と、酸化物13とを含む。タンニン12及び酸化物13は、いずれも基材11の表面11Aに付着している。また、酸化物13は、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0024】
本実施形態に係るアルデヒド除去材10によれば、上述の構成を備えることにより、アルデヒドを効率よく除去できる。その理由は、以下のように推測される。
【0025】
アルデヒド除去材10では、基材11の表面11Aに、タンニン12及び酸化物13が付着している。これにより、例えば、アルデヒドガスが含まれる雰囲気下にアルデヒド除去材10を設置すると、まず、アルデヒドガスがタンニン12に吸着する。次いで、吸着したアルデヒドガスが、酸化物13の触媒作用により分解される。これらのことから、本実施形態に係るアルデヒド除去材10によれば、アルデヒドを効率よく除去できる。なお、本発明のアルデヒド除去材が後述する
図2~
図4のいずれかに示す構成を有している場合も、上記と同じ理由により、アルデヒドを効率よく除去できると考えられる。
【0026】
タンニン12及び酸化物13は、例えばファンデルワールス力により、それぞれ基材11の表面11Aに付着している。アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12と酸化物13とは、互いに密着した状態で基材11の表面11Aに付着していることが好ましい。
【0027】
アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12の量は、基材11の表面11Aの単位面積あたり(1cm2あたり)、100μg以上500μg以下であることが好ましく、155μg以上310μg以下であることがより好ましい。同じ理由から、酸化物13の量(酸化物13として複数種の酸化物を使用する場合は、それら酸化物の合計量)は、基材11の表面11Aの単位面積あたり(1cm2あたり)、7.5ng以上50.0ng以下であることが好ましく、7.8ng以上46.8ng以下であることがより好ましい。
【0028】
なお、タンニン12及び酸化物13は、基材11の表面11Aの全域に付着していなくてもよい。ただし、アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12及び酸化物13の双方が、基材11の表面11Aにおけるアルデヒドと接触する領域の全域に付着していることが好ましい。
【0029】
以下、アルデヒド除去材10を構成する各要素について説明する。
【0030】
[基材]
基材11の構成材料としては、タンニン12及び酸化物13を付着させることができる限り、特に限定されず、例えば、紙(より具体的には、紙製ウエス等)、布及び樹脂が挙げられる。また、基材11の形状についても、特に限定されず、用途に応じて、シート状、袋状等の形状を選択できる。
【0031】
[タンニン]
タンニン12としては、例えば、加水分解性タンニン及び縮合型タンニンが挙げられる。アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12としては、縮合型タンニンが好ましい。縮合型タンニンは、下記式(1)で表される。なお、縮合型タンニンは、通常、重合度(詳しくは、下記式(1)中のnで表される数値)が相違する縮合体の混合物として得られる。
【0032】
【0033】
前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は水酸基を表す。R3は、水素原子又は下記式(2)で示される1価の基を表す。nは、2以上10以下の整数を表す。複数のR1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のR3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
【0035】
前記式(2)中、*は、酸素原子に結合する部位を表す。
【0036】
アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12の質量平均分子量は、1万以上100万以下であることが好ましく、1万以上10万以下であることがより好ましく、1万以上2万以下であることが更に好ましい。
【0037】
[酸化物]
酸化物13は、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)からなる群より選択される少なくとも一種を含む。酸化物13は、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)以外の酸化物を含んでいてもよい。アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)以外の酸化物としては、例えば酸化鉄(II)が挙げられる。アルデヒドをより効率よく除去するためには、アルミナ、シリカ、酸化鉄(III)及び酸化鉄(II)の合計含有率は、酸化物13の全質量に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
酸化物13は、例えば、粒子の状態で基材11の表面11Aに付着している。以下、基材11の表面11Aに付着した粒子状の酸化物13を、特定酸化物粒子と記載する。
【0039】
特定酸化物粒子は、一種の酸化物から構成されていてもよいし、二種以上の酸化物から構成されていてもよい。特定酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、例えば、0.05nm以上100μm以下である。なお、特定酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡及び画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて測定した、100個の特定酸化物粒子(一次粒子)の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。
【0040】
アルデヒドをより効率よく除去するためには、酸化物13は、アルミナを含むことが好ましく、アルミナ及び酸化鉄(III)を含むことがより好ましく、アルミナ、酸化鉄(III)及び酸化鉄(II)を含むことが更に好ましい。
【0041】
また、アルデヒドを短時間で効率よく除去するためには、酸化物13が、アルミナ、酸化鉄(III)及びシリカを含むことが好ましい。
【0042】
酸化物13が、アルミナと、アルミナ以外の酸化物(以下、他の酸化物と記載することがある)とを含む場合、アルデヒドを更に効率よく除去するためには、他の酸化物の合計量は、アルミナ100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。
【0043】
[用途及び除去方法]
アルデヒド除去材10は、生活環境からアルデヒドを除去するための材料として利用することができる。アルデヒド除去材10は、アルデヒドを効率よく除去できるため、青果物(特に、アセトアルデヒドを発生する青果物)の鮮度を保持する鮮度保持材として好適である。
【0044】
アセトアルデヒドを発生する青果物としては、例えば、イチジク、バナナ、みかん、リンゴ、パイナップル、いちご、グレープフルーツ、キウイ、マンゴー、レモン、きゅうり、にんじん、キャベツ及びトマトが挙げられる。
【0045】
アルデヒド除去材10を用いてアルデヒド(アルデヒドガス)を除去する方法は、特に限定されない。例えば、アルデヒドガスが含まれる雰囲気下にアルデヒド除去材10を設置し、上記雰囲気の温度を2℃以上30℃以下の範囲に調整することで、アルデヒドガスを除去することができる。
【0046】
[別の一例]
以上、
図1を参照しながら本実施形態に係るアルデヒド除去材10について説明したが、本発明は、
図1に示されるアルデヒド除去材10に限定されるものではない。以下、本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の別の一例について、
図2~
図4を参照しながら説明する。なお、
図2~
図4において、
図1に示される構成要素と同一の構成要素については、
図1と同一の符号を付している。また、以下において、
図1に示されるアルデヒド除去材10とは異なる構成のみを説明する。
【0047】
図2に示されるアルデヒド除去材20では、タンニン12が、基材11の表面11Aに、酸化物13を介して間接的に付着している。タンニン12は、例えばファンデルワールス力により酸化物13に付着している。
【0048】
図3に示されるアルデヒド除去材30では、酸化物13が、基材11の表面11Aに、タンニン12を介して間接的に付着している。酸化物13は、例えばファンデルワールス力によりタンニン12に付着している。
【0049】
また、本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材では、
図1~
図3に示す態様のうちの2つ以上の態様が混在していてもよい。
【0050】
また、本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材の更に別の一例としては、
図4に示すアルデヒド除去材40も挙げられる。
図4に示されるアルデヒド除去材40は、
図1に示すアルデヒド除去材10に対して、基材11の表面11Aに付着したL-プロリン14を更に含むことが異なる。アルデヒド除去材40において、アルデヒドをより効率よく除去するためには、タンニン12とL-プロリン14とが、互いに密着した状態で、基材11の表面11Aに付着していることが好ましい。同じ理由から、アルデヒド除去材40において、酸化物13とL-プロリン14とが、互いに密着した状態で、基材11の表面11Aに付着していることが好ましい。
【0051】
アルデヒド除去材40において、アルデヒドをより効率よく除去するためには、L-プロリン14の量は、基材11の表面11Aの単位面積あたり(1cm2あたり)、50.0ng以上200.0ng以下であることが好ましく、78.0ng以上156.0ng以下であることがより好ましい。
【0052】
アルデヒド除去材40において、アルデヒドをより効率よく除去するためには、酸化物13が、酸化鉄(III)と、酸化鉄(II)とを含むことが好ましく、アルミナ及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種と、酸化鉄(III)と、酸化鉄(II)とを含むことがより好ましい。アルデヒド除去材40において、アルデヒドを更に効率よく除去するためには、酸化鉄(II)の量は、100質量部の酸化鉄(III)に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。また、アルデヒド除去材40において、アルデヒドを更に効率よく除去するためには、アルミナ及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種の量は、100質量部の酸化鉄(III)に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
アルデヒド除去材40において、アルデヒドを特に効率よく除去するためには、酸化物13が、酸化鉄(III)と、酸化鉄(II)と、アルミナと、シリカとを含むことが好ましい。
【0054】
また、本発明の実施形態に係るアルデヒド除去材は、下記1)~4)に示す態様のいずれか1つであってもよい。
【0055】
1)タンニン12が、基材11の表面11Aに、酸化物13及びL-プロリン14の少なくとも一方を介して間接的に付着している。
2)酸化物13が、基材11の表面11Aに、タンニン12及びL-プロリン14の少なくとも一方を介して間接的に付着している。
3)L-プロリン14が、基材11の表面11Aに、タンニン12及び酸化物13の少なくとも一方を介して間接的に付着している。
4)上記1)~3)に示す態様及び
図4に示す態様からなる群より選択される2つ以上の態様が混在している。
【0056】
なお、上記1)~4)に示す態様のいずれの場合も、異なる成分同士は、例えばファンデルワールス力により付着している。
【0057】
<アルデヒド除去材の製造方法>
次に、上述した実施形態に係るアルデヒド除去材(より具体的には、アルデヒド除去材10、アルデヒド除去材20、アルデヒド除去材30、アルデヒド除去材40等)の好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態と重複する構成要素については説明を省略する。
【0058】
まず、基材11と、アルデヒド除去材を製造するための処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある)とを準備する。処理液には、少なくとも、水性媒体と、タンニン12と、酸化物13とが含まれる。処理液に使用される水性媒体としては、例えば、蒸留水及び酸性水溶液が挙げられる。処理液は、例えば、タンニン12を含む水溶液と、酸化物13を含む懸濁液とを混合することにより得られる。処理液中の各成分(より具体的には、タンニン12、酸化物13等)の濃度を変更することにより、得られるアルデヒド除去材における各成分の付着量を調整できる。
【0059】
次いで、基材11を処理液で処理する。基材11の処理方法としては、例えば、基材11を処理液に浸漬する方法、及び基材11の表面11Aに処理液を塗布する方法が挙げられる。
【0060】
次いで、処理した基材11を乾燥させる。基材11の乾燥方法としては、例えば、温度10℃以上30℃以下の雰囲気下で、処理した基材11を風乾する方法が挙げられる。基材11の乾燥時間としては、12時間以上36時間以下が好ましい。こうして、上述した実施形態に係るアルデヒド除去材が得られる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0062】
<懸濁液の調製>
[懸濁液S-1の調製]
水性媒体としての蒸留水に酸化鉄(II)を加えて、酸化鉄(II)が懸濁した懸濁液S-1(酸化鉄(II)の濃度:0.01g/mL)を得た。
【0063】
[懸濁液S-2~S-8の調製]
懸濁させる材料(以下、懸濁材料と記載する)及び水性媒体を表1に示すとおりとしたこと以外は、懸濁液S-1の調製と同じ方法で、懸濁液S-2~S-8をそれぞれ得た。なお、懸濁液S-2~S-8中の懸濁材料の濃度は、いずれも0.01g/mLであった。
【0064】
【0065】
<処理液の調製>
[処理液PA-1の調製]
まず、縮合型タンニン(株式会社岩本亀太郎製「H-1」、質量平均分子量:11200)を蒸留水に加えて、縮合型タンニン水溶液(縮合型タンニンの濃度:4質量%)を得た。次いで、得られた縮合型タンニン水溶液と、上述の調製方法で得られた懸濁液S-2とを混合し、50mLの処理液PA-1を得た。処理液PA-1を得る際の縮合型タンニン水溶液の配合量及び懸濁液S-2の配合量は、それぞれ49mL及び1mLであった。
【0066】
[処理液PA-2~PA-8及びPB-1~PB-6の調製]
懸濁液の種類、懸濁液の配合量、及び縮合型タンニン水溶液の配合量を、表2に示すとおりとしたこと以外は、処理液PA-1の調製と同じ方法で、処理液PA-2~PA-8及びPB-2~PB-6をそれぞれ得た。例えば、処理液PA-4を調製する場合は、縮合型タンニン水溶液と、懸濁液S-1と、懸濁液S-2と、懸濁液S-7とを混合した。処理液PA-4を得る際の縮合型タンニン水溶液の配合量、懸濁液S-1の配合量、懸濁液S-2の配合量、及び懸濁液S-7の配合量は、それぞれ47mL、1mL、1mL及び1mLであった。
【0067】
また、処理液PB-1として、処理液PA-1の調製に使用した縮合型タンニン水溶液と同じ組成の縮合型タンニン水溶液50mLを準備した。なお、表2において「-」は、懸濁液を配合しなかったことを意味する。
【0068】
【0069】
[処理液PA-9の調製]
まず、縮合型タンニン(株式会社岩本亀太郎製「H-1」、質量平均分子量:11200)を蒸留水に加えて、縮合型タンニン水溶液(縮合型タンニンの濃度:4質量%)を得た。別に、L-プロリン(Sigma-Aldrich社製)を蒸留水に加えて、L-プロリン水溶液(L-プロリンの濃度:0.1g/mL)を得た。次いで、得られた縮合型タンニン水溶液と、得られたL-プロリン水溶液と、上述の調製方法で得られた懸濁液S-1と、上述の調製方法で得られた懸濁液S-2と、上述の調製方法で得られた懸濁液S-4とを混合し、50mLの処理液PA-9を得た。処理液PA-9を得る際の縮合型タンニン水溶液の配合量、L-プロリン水溶液の配合量、懸濁液S-1の配合量、懸濁液S-2の配合量、及び懸濁液S-4の配合量は、それぞれ46mL、1mL、1mL、1mL及び1mLであった。
【0070】
[処理液PA-10及びPA-11の調製]
懸濁液の種類、懸濁液の配合量、縮合型タンニン水溶液の配合量、及びL-プロリン水溶液の配合量を、表3に示すとおりとしたこと以外は、処理液PA-9の調製と同じ方法で、処理液PA-10及びPA-11をそれぞれ得た。
【0071】
【0072】
<アルデヒド除去材の作製又は準備>
[アルデヒド除去材RA-1の作製]
まず、50mLの処理液PA-1(上述の調製方法で得られた処理液PA-1)をビーカーに入れた後、ビーカー内の処理液PA-1に、1枚の紙製ウエス(日本製紙クレシア株式会社製「キムワイプ(登録商標)」、大きさ12.0cm×21.5cm)を浸漬した。次いで、浸漬した紙製ウエスを、ビーカーから取り出した後、温度25℃の雰囲気下で24時間風乾した。その結果、基材としての紙製ウエスと、紙製ウエスの表面に付着した、縮合型タンニン及び酸化鉄(III)とを含むアルデヒド除去材RA-1が得られた。得られたアルデヒド除去材RA-1を電子顕微鏡で観察し、縮合型タンニンと酸化鉄(III)とが互いに密着した状態で紙製ウエスの表面に付着していたことを確認した。また、アルデヒド除去材RA-1では、上述した
図1~
図3に示す態様が混在していた。また、得られたアルデヒド除去材RA-1において、縮合型タンニンの量及び酸化鉄(III)の量は、紙製ウエスの表面1cm
2あたり、それぞれ155μg及び7.8ngであった。
【0073】
[アルデヒド除去材RA-2~RA-11及びRB-1~RB-6の作製]
処理液の種類を後述する表4に示すとおりとしたこと以外は、アルデヒド除去材RA-1の作製と同じ方法でアルデヒド除去材RA-2~RA-11及びRB-1~RB-6をそれぞれ得た。
【0074】
得られたアルデヒド除去材RA-2~RA-11及びRB-1~RB-6において、紙製ウエスの表面1cm2あたりの縮合型タンニンの量は、いずれも155μg以上310μg以下の範囲内であった。また、得られたアルデヒド除去材RA-2~RA-11及びRB-2~RB-6において、紙製ウエスの表面1cm2あたりの酸化物の量(複数種の酸化物を使用した場合は、それらの合計量)は、いずれも7.8ng以上46.8ng以下の範囲内であった。また、得られたアルデヒド除去材RA-9~RA-11において、紙製ウエスの表面1cm2あたりのL-プロリンの量は、いずれも78.0ng以上156.0ng以下の範囲内であった。
【0075】
[アルデヒド除去材RB-7の準備]
アルデヒド除去材RB-7(参考例)として、未処理の紙製ウエス(日本製紙クレシア株式会社製「キムワイプ(登録商標)」、大きさ12.0cm×21.5cm)を準備した。
【0076】
<アルデヒドの除去性能の評価>
容量1Lのテドラー(登録商標)バッグ内に、評価対象のアルデヒド除去材(アルデヒド除去材RA-1~RA-11及びRB-1~RB-7のいずれか)を入れた後、300mLの混合ガスを入れて、テドラーバッグを密閉した。テドラーバッグ内に入れた混合ガスは、窒素と酸素の体積比(窒素:酸素)が4:1の空気中にアセトアルデヒドガスを10体積ppmの割合で混合させたガスであった。次いで、密閉したテドラーバッグを、温度25℃の雰囲気下で24時間にわたって保温した。この際、テドラーバッグの保温開始直後、テドラーバッグの保温開始から3時間後、及びテドラーバッグの保温終了直後(保温開始から24時間後)の各々のタイミングで、テドラーバッグ内の気体を1mLサンプリングした。そして、サンプリングした気体中のアセトアルデヒドガスの濃度を、センサーガスクロマトグラフ(NISSHAエフアイエス株式会社製「SGEA-P3-C2」)を用いて測定した。以下、保温開始直後に測定された上記アセトアルデヒドガスの濃度を、濃度0と記載する。また、保温開始から3時間後に測定された上記アセトアルデヒドガスの濃度を、濃度3と記載する。また、保温開始から24時間後に測定された上記アセトアルデヒドガスの濃度を、濃度24と記載する。
【0077】
得られた濃度0及び濃度3から、下記式(A)に示す算出式により、保温開始から3時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率(単位:%)を求めた。また、得られた濃度0及び濃度24から、下記式(B)に示す算出式により、保温開始から24時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率(単位:%)を求めた。以下、保温開始から3時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率を、減衰率3と記載することがある。また、保温開始から24時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率を、減衰率24と記載することがある。
保温開始から3時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率(減衰率3)=100×濃度3/濃度0・・・(A)
保温開始から24時間後のアセトアルデヒドガスの減衰率(減衰率24)=100×濃度24/濃度0・・・(B)
【0078】
各アルデヒド除去材の減衰率3及び減衰率24を、表4に示す。減衰率24が12.00%以下の場合、「アルデヒドを効率よく除去できている」と評価した。一方、減衰率24が12.00%を超える場合、「アルデヒドを効率よく除去できていない」と評価した。
【0079】
【0080】
アルデヒド除去材RA-1~RA-11は、基材(紙製ウエス)と、基材の表面に付着した、タンニン及び酸化物とを含んでいた。アルデヒド除去材RA-1~RA-11では、基材の表面に付着した酸化物が、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいた。
【0081】
表4に示すように、アルデヒド除去材RA-1~RA-11では、減衰率24が12.00%以下であった。よって、アルデヒド除去材RA-1~RA-11は、アルデヒドを効率よく除去できていた。
【0082】
アルデヒド除去材RB-1~RB-7は、アルミナ、シリカ及び酸化鉄(III)からなる群より選択される少なくとも一種の酸化物を含んでいなかった。
【0083】
表4に示すように、アルデヒド除去材RB-1~RB-7では、減衰率24が12.00%を超えていた。よって、アルデヒド除去材RB-1~RB-7は、アルデヒドを効率よく除去できていなかった。
【0084】
以上の結果から、本発明のアルデヒド除去材によれば、アルデヒドを効率よく除去できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るアルデヒド除去材は、例えば、生活環境からアルデヒドを除去するための材料として利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
10、20、30、40 アルデヒド除去材
11 基材
11A 基材の表面
12 タンニン
13 酸化物
14 L-プロリン