(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】唐揚げの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20240904BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240904BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20240904BHJP
【FI】
A23L5/10 E
A23L5/00 G
A23L7/157
(21)【出願番号】P 2020163939
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020138903
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 実奈
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 和久
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/116299(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188089(WO,A1)
【文献】特開平07-067565(JP,A)
【文献】特開2015-023846(JP,A)
【文献】特開平02-042956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫食前に湯煎により加熱される唐揚げを製造する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、唐揚げの製造方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
【請求項2】
前記包装容器が樹脂製の袋である、請求項1に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項3】
前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、請求項2に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項4】
真空包装する前記工程が密着真空包装する工程である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項5】
前記唐揚げ包装体を冷凍保存する工程をさらに含む、請求項1乃至4いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項6】
前記バッターが、前記酸化澱粉を含む、請求項1乃至5いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項7】
前記バッターが、前記酸処理澱粉および架橋澱粉をさらに含む、請求項6に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項8】
前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、請求項1乃至7いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項9】
前記バッターが、前記成分(A)をさらに含む、請求項1乃至8いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項10】
前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、請求項1乃至9いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項11】
前記第1および第2の穀粉がいずれも小麦粉である、請求項1乃至10いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項12】
前記食材が鶏肉、イカ、タコおよび魚からなる群から選択される1種以上である、請求項1乃至11いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
【請求項13】
喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のサクミを向上する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、前記方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
【請求項14】
前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記包装容器が樹脂製の袋である、請求項13乃至15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のジューシー感を向上する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、前記方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
【請求項19】
前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記包装容器が樹脂製の袋である、請求項18乃至20いずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐揚げの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物の製造に関する技術として、特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1(特開平7-67565号公報)には、小麦粉50~70重量部と、化工澱粉10~30重量部と、粉末卵白、粉末卵黄、粉末植物性たん白、粉末油脂、膨張剤及び増粘多糖類のうちの3種類以上からなる粉体5~25重量部とを含む揚げ物用衣材に、水、又は液卵と水との混合液を加えて衣液とし、これを具材に付着させ、油ちょうする、揚げ物の製造方法について記載されている。また、同文献によれば、上述の衣材を具材に付着させ、油ちょうすることにより、油ちょう後に常温で保存しても、あるいは油ちょう後に冷凍又は冷蔵状態で保存したのち電子レンジ、ボイル又はオーブンで再加熱処理を施しても、揚げ物特有の好ましい衣の食感を失わず、また油分の滲み出しにより外観を損なうことなく、風味の良好な、油ちょう直後の品質を維持した揚げ物およびそれを利用した冷凍食品を製造できるという効果を有するとされている。
【0003】
特許文献2(特開2015-23846号公報)には、中具として、pH調整されたアルカリ水溶液を用いてアルカリ化処理した固形食品を準備し;衣材原料として、増粘性、泡沫生成性、泡沫安定性、pH安定性、油切れ性、離水防止性、だれ防止性、耐酸性、耐塩性、耐酵素性および耐熱性からなる群より選択される1又は2以上の性質を有する異なる複数種の糖類を含む混合物を準備し;中具の表面に衣材原料を付着させ、これにより下拵え品を作製し;下拵え品を油ちょうし、これにより衣材原料を脆性、光沢性、付着性、油切れ性、非糸曳き性および冷凍耐性を有する衣材とし、該衣材により前記中具が覆われた揚物を作製し;揚物を冷凍し;冷凍した揚物を冷凍揚物用包装材により包装する、施設調理用冷凍揚物の製造方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-67565号公報
【文献】特開2015-23846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが上述の技術について検討したところ、製造後、喫食前に湯煎により加熱される唐揚げのサクミを優れたものとするという点で改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の唐揚げの製造方法、喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のサクミを向上する方法、および、喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のジューシー感を向上する方法が提供される。
[1] 喫食前に湯煎により加熱される唐揚げを製造する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、唐揚げの製造方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
[2] 前記包装容器が樹脂製の袋である、[1]に記載の唐揚げの製造方法。
[3] 前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、[2]に記載の唐揚げの製造方法。
[4] 真空包装する前記工程が密着真空包装する工程である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[5] 前記唐揚げ包装体を冷凍保存する工程をさらに含む、[1]乃至[4]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[6] 前記バッターが、前記酸化澱粉を含む、[1]乃至[5]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[7] 前記バッターが、前記酸処理澱粉および架橋澱粉をさらに含む、[6]に記載の唐揚げの製造方法。
[8] 前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、[1]乃至[7]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[9] 前記バッターが、前記成分(A)をさらに含む、[1]乃至[8]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[10] 前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、[1]乃至[9]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[11] 前記第1および第2の穀粉がいずれも小麦粉である、[1]乃至[10]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[12] 前記食材が鶏肉、イカ、タコおよび魚からなる群から選択される1種以上である、[1]乃至[11]いずれか1項に記載の唐揚げの製造方法。
[13] 喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のサクミを向上する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、前記方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
[14] 前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、[13]に記載の方法。
[15] 前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、[13]または[14]に記載の方法。
[16] 前記包装容器が樹脂製の袋である、[13]乃至[15]いずれか1項に記載の方法。
[17] 前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、[16]に記載の方法。
[18] 喫食前に湯煎により加熱される唐揚げの、湯煎後のジューシー感を向上する方法であって、
食材にバッターを付着させる工程と、
バッターが付着した前記食材にブレッダーを付着させる工程と、
前記バッターおよび前記ブレッダーが付着した前記食材を油ちょうして唐揚げを得る工程と、
前記唐揚げを冷凍する工程と、
冷凍する前記工程の後、前記唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程と、
を含み、
前記バッターが、
第1の穀粉と、
酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、
を含み、
前記ブレッダーが、
第2の穀粉と、
以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、
を含む、前記方法。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、前記第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
[19] 前記バッター中の前記第1の穀粉の含有量に対する前記酸化澱粉および前記酸処理澱粉の含有量の合計が、質量比で0.3以上3以下である、[18]に記載の方法。
[20] 前記ブレッダー中の前記第2の穀粉の含有量に対する前記成分(A)および(B)の含有量の合計が、質量比で0.05以上6.0以下である、[18]または[19]に記載の方法。
[21] 前記包装容器が樹脂製の袋である、[18]乃至[20]いずれか1項に記載の方法。
[22] 前記袋の材料がポリアミドを含み、前記袋の厚さが0.05mm以上0.1mm以下である、[21]に記載の方法。
【0007】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、たとえば、前記本発明における製造方法により得られる唐揚げ包装体を提供することもできる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、湯煎後のサクミに優れるから揚げを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。数値範囲を表す「~」は、以上、以下を表し、上限値および下限値をいずれも含む。
【0010】
以下の実施形態において、サクミとは、噛んだ時に衣がサクっとすることをいう。
また、以下の実施形態において、食材のジューシー感とは、唐揚げの食材がパサつかずジューシーであることをいう。またさらに、ヒキが抑制されるとは、衣が噛み切りやすく歯切れが良いことをいう。
【0011】
(唐揚げの製造方法)
本実施形態において、唐揚げの製造方法は、喫食前に湯煎により加熱される唐揚げを製造する方法であって、以下の工程を含む。
(工程1)食材にバッターを付着させる工程
(工程2)バッターが付着した食材にブレッダーを付着させる工程
(工程3)バッターおよびブレッダーが付着した食材を油ちょうして唐揚げを得る工程
(工程4)唐揚げを冷凍する工程
(工程5)冷凍する工程の後、唐揚げを包装容器に収容して真空包装することにより、唐揚げ包装体を得る工程
バッターは、第1の穀粉と、酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、を含む。
ブレッダーは、第2の穀粉と、以下の成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、を含む。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が5質量%以上100質量%以下
成分(B):目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である、α化穀粉(ただし、第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上
【0012】
本実施形態においては、唐揚げの製造工程が工程1~5を含むとともに、バッターおよびブレッダーとしてそれぞれ特定の成分を含むものを選択しこれらを組み合わせて用いるため、湯煎後のサクミに優れるから揚げを得ることができる。また、本実施形態によれば、たとえば、湯煎後のサクミおよび食材のジューシーさに優れるから揚げを得ることも可能となる。
また、本実施形態によれば、たとえば、湯煎後のサクミ、食材のジューシーさ、好ましい硬さおよび衣のヒキのなさの効果のバランスに優れる唐揚げを得ることも可能となる。
【0013】
以下、各工程をさらに具体的に説明する。
工程1~2においては、食材にバッターおよびブレッダーをこの順に付着させる。
食材として、たとえば鶏肉等の肉類;および
魚、イカ、タコ等の魚介類が挙げられる。
湯煎後のサクミをより安定的に優れたものとする観点から、食材は、好ましくは鶏肉、イカ、タコおよび魚からなる群から選択される1種以上である。
【0014】
工程1において、バッターは、具体的には液状の衣材である。バッターは、たとえば粉体成分(バッター粉)に加水して得られる。バッターの構成成分については後述する。
バッターは、食材の一部に付着してもよいし、食材全体に付着してもよい。唐揚げの食感および食材のジューシー感向上の観点から、バッターは食材の一部に付着することが好ましく、食材の外側全体に一様に付着することがより好ましい。
【0015】
また、工程2において、ブレッダーは、具体的には固形状の衣材であり、さらに具体的には粒状の衣材である。ブレッダーの構成成分については後述する。ブレッダーは、食材の一部に付着してもよいし、食材全体に付着してもよい。唐揚げの食感および食材のジューシー感向上の観点から、ブレッダーは食材の一部に付着することが好ましく、食材の外側全体に一様に付着することがより好ましい。
【0016】
工程3においては、バッターおよびブレッダーが付着した食材を油ちょうする。油ちょうに用いられる油脂として、たとえばフライ食品やノンフライ食品に通常用いられる液油を用いることができる。液油は、具体的には、菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、ごま油、オリーブ油、こめ油、グレープシード油、綿実油、落花生油、パームオレイン油から選ばれる1種または2種以上である。
油ちょうの温度および時間は、食材の種類、大きさ等に応じて設定することができ、それぞれ、たとえば100~200℃程度、たとえば1~10分程度である。
【0017】
工程4において、冷凍温度は、たとえば0℃以下、好ましくは-4℃以下、より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-40℃以下である。冷凍時間は、食材の種類、大きさ、冷凍温度等に応じて設定することができ、たとえば30~360分程度である。
【0018】
工程5における真空包装は、食品に使用することが可能な真空包装であれば使用可能であり、真空包装するに際し、たとえばチャンバー式真空包装機や、ノズル式真空包装機などを用いることができる。
唐揚げの湯煎後のサクミを向上する観点から、工程5は好ましくは密着真空包装する工程である。
【0019】
工程5において、包装容器の形状に制限はないが、唐揚げの湯煎後のサクミを向上する観点から、好ましくは袋状であり、より好ましくは包装容器は樹脂性の袋である。袋は、1つの樹脂層から構成されてもよいし2以上の樹脂層を有してもよい。
袋の材料は、耐冷凍性および耐湯煎性に優れるものが好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリアミド(ナイロン等)およびポリプロピレンからなる群から選択される1または2以上の樹脂を含み、好ましくはポリアミドを含み、より好ましくはナイロン層等のポリアミド層を含む積層体(ラミネート)である。
また、袋の厚さは、唐揚げの保存安定性向上の観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、さらに好ましくは0.07mm以上である。
唐揚げの保形性向上の観点から、袋の厚さは、好ましくは0.1mm以下であり、より好ましくは0.09mm以下である。
【0020】
また、唐揚げの製造方法は、唐揚げ包装体を冷凍保存する工程(工程6)をさらに含んでもよい。唐揚げの湯煎後のサクミをより好ましいものとする観点から、工程6は好ましくは工程5の後におこなわれる。
冷凍温度は、たとえば0℃以下、好ましくは-4℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下である。
【0021】
以上の工程により、本実施形態における唐揚げが得られる。
本実施形態において、唐揚げは、唐揚げ包装体として得られ、湯煎により加熱して喫食される。湯煎は、好ましくは唐揚げを包装体の状態で湯に入れておこなわれる。
【0022】
唐揚げの湯煎後のサクミをより向上する観点から、湯煎後、喫食前に、唐揚げ包装体から取り出した唐揚げを油ちょうしてもよい。
【0023】
(方法)
本実施形態における製造方法は、たとえば、湯煎後の唐揚げのサクミを向上する方法として好適である。
また、本実施形態における製造方法は、たとえば、湯煎後の唐揚げのジューシー感を向上する方法として好適である。
【0024】
次に、工程1におけるバッターおよび工程2におけるブレッダーの構成を説明する。
(バッター)
バッターは、第1の穀粉と、酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種以上と、を含む。
第1の穀粉は、たとえば、小麦粉および米粉からなる群から選択される1種以上を含む。唐揚げの湯煎後のサクミ観点から、第1の穀粉は好ましくは小麦粉である。
【0025】
バッター中の第1の穀粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、衣の好ましい硬さ、唐揚げのサクミの向上、食材のジューシー感向上、ヒキ抑制の観点から、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。
また、同様の観点から、バッター中の第1の穀粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0026】
衣の好ましい硬さ、唐揚げのサクミ向上、食材のジューシー向上の観点から、バッターは好ましくは酸化澱粉を含み、より好ましくは酸化澱粉を含むとともに、酸処理澱粉および架橋澱粉をさらに含む。
【0027】
酸化澱粉は、具体的には、澱粉に酸化処理が施された澱粉である。さらに具体的には、酸化澱粉は、澱粉と次亜塩素酸ナトリウムをアルカリ性溶液中で反応させた加工澱粉である。
酸化処理条件は問わないが、たとえば、有効塩素濃度約10%程度の次亜塩素酸ナトリウムをpH8~11、温度を40~60℃に調製したでん粉懸濁液に滴下して、30分~4時間反応をおこなう。
酸化澱粉の原料澱粉として、ワキシーコーンスターチ等のとうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦でん粉、および、これらの加工澱粉(酸処理澱粉を除く。)からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。酸化澱粉は、好ましくは酸化タピオカ澱粉である。
【0028】
バッター中の酸化澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、衣の好ましい硬さ、唐揚げのサクミ向上、食材のジューシー感向上、ヒキ抑制の観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、同様の観点から、バッター中の酸化澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0029】
酸処理澱粉は、その製造方法は問わないが、たとえば、0.5~10%の塩酸や硫酸などの希薄酸溶液にでん粉を懸濁し、20~60℃の温度で、1~100時間攪拌を続け、でん粉を低粘度化する。
酸処理澱粉の原料澱粉として、ワキシーコーンスターチ等のとうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦でん粉、および、これらの加工澱粉(ただし、酸化澱粉を除く。)からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0030】
バッター中の酸処理澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、衣の好ましい硬さ、唐揚げのサクミ向上、食材のジューシー感向上、ヒキ抑制の観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である
また、同様の観点から、バッター中の酸処理澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0031】
また、バッターは、上述の成分以外の成分を含んでもよく、たとえば酸化澱粉および酸処理澱粉以外の澱粉を含んでもよい。かかる澱粉の具体例として、前述の架橋澱粉(酸処理および酸化処理がいずれもなされていないもの)が挙げられる。
架橋澱粉の具体例として、リン酸架橋タピオカ澱粉、アジピン酸架橋タピオカ澱粉が挙げられ、好ましくはリン酸架橋タピオカ澱粉である。
バッター中の架橋澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、衣の好ましい硬さ、唐揚げのサクミ向上、食材のジューシー感向上、ヒキ抑制の観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上である。
また、同様の観点から、バッター中の架橋澱粉の含有量は、バッター中の粉体成分全体に対し、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは32質量%以下、さらに好ましくは28質量%以下である。
【0032】
バッター中の第1の穀粉の含有量に対する酸化澱粉および酸処理澱粉の含有量の合計は、ヒキ抑制の観点から、質量比で好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上である。
また、同様の観点から、バッター中の第1の穀粉の含有量に対する酸化澱粉および酸処理澱粉の含有量の合計は、質量比で好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.8以下、さらにより好ましくは1.4以下、よりいっそう好ましくは1.3以下である。
【0033】
また、バッターは、後述の成分(A)をさらに含んでもよい。
このとき、バッター中の成分(A)の含有量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、バッターの粉体成分全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上である。
また、ヒキを抑制する観点から、バッター中の成分(A)の含有量は、バッターの粉体成分全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0034】
バッター中の成分(A)、酸化澱粉および酸処理澱粉の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、唐揚げのサクミおよび食材のジューシー感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上である。
また、食材のジューシー感を向上する観点から、バッター中の成分(A)、酸化澱粉および酸処理澱粉の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、質量比で好ましくは0.35以下であり、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.19以下である。
【0035】
(ブレッダー)
ブレッダーは、第2の穀粉と、成分(A)および(B)からなる群から選択される1種以上と、を含む。
【0036】
第2の穀粉の具体例としては、第1の穀粉として前述したものが挙げられる。第2および第1の穀粉は同じであってもよいし異なってもよい。
ヒキを抑制する観点から、第2および第1の穀粉は好ましくは同じものであり、より好ましくはいずれも小麦粉である。
【0037】
ブレッダー中の第2の穀粉の含有量は、食材のジューシー感を向上する観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
また、同様の観点から、ブレッダー中の第2の穀粉の含有量は、バッター全体に対し、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0038】
次に、成分(A)および(B)について説明する。
(成分(A))
成分(A)は、澱粉を主成分としてなる造粒物であって、上述した条件(1)~(4)を満たす。成分(A)は、その原料成分を造粒してなるものであればよく、たとえば造粒したままの大きさのものであってもよいし、造粒後、粉砕等により所定の大きさに調整されたものであってもよい。
なお、成分(A)は、粉粒状物それ自体としてブレッダーに配合されてもよいし、成分(A)を含む生地を焼成してなるパンの粉砕物としてブレッダーに配合されてもよい。このとき、パンの粉砕物は、成分(A)と成分(A)以外の材料とから構成され、成分(A)以外の材料が後述の成分(B)に該当する。
【0039】
条件(1)について、成分(A)は、唐揚げのサクミを向上する観点から、澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。
また、成分(A)中の澱粉含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、たとえば99.5質量%以下、また、たとえば99質量%以下としてもよい。
【0040】
条件(2)に関し、成分(A)は、上記澱粉として、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を特定の割合で含み、低分子化澱粉として特定の大きさのものが用いられる。すなわち、成分(A)中の澱粉が、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を成分(A)中に3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下である。
【0041】
低分子化澱粉のピーク分子量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、3×103以上であり、好ましくは8×103以上である。また、同様の観点から、低分子化澱粉のピーク分子量は、5×104以下であり、好ましくは3×104以下であり、さらに好ましくは1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0042】
低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0043】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0044】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0045】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上7N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0046】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。
また、同様の観点から、成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0047】
また、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは22質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは45質量%以上、さらにまた好ましくは55質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0048】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、好ましくはハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量については、たとえば40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0049】
また、成分(A)は、冷水膨潤度について条件(3)を満たす。すなわち、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は、唐揚げのサクミを向上する観点から、5以上であり、好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。
また、同じ観点から、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は20以下であり、好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
ここで、成分(A)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0050】
成分(A)は、大きさについて条件(4)を満たす。
成分(A)において、目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、成分(A)全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上であり、また、上限は、100質量%以下であってよく、たとえば98質量%以下、またたとえば95質量%以下であってもよく、また、85質量%以下とすることも好ましい。
【0051】
成分(A)をバッターに使用する場合において、目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、成分(A)全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、また、上限は、100質量%以下であってよく、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0052】
成分(A)をブレッダーに使用する場合において、目開き1.4mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量は、食材のジューシー感の向上およびヒキ抑制の観点から、成分(A)全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また、上限は、100質量%以下であってよく、98質量%以下であってもよい。
【0053】
本実施形態において、成分(A)は、上記低分子化澱粉以外の澱粉を含む。成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉成分としては、様々な澱粉を使用することができる。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。成分(A)は、好ましくは、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上の澱粉を含有するのがよい。
【0054】
また、成分(A)は、澱粉以外の成分を含んでもよい。澱粉以外の成分の具体例としては、色素や炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩;乳化剤が挙げられる。
【0055】
成分(A)は、成分(A)の粒子内の気泡構造をさらに安定化し、製造安定性を改善する観点から、不溶性塩を配合することが好ましい。同様の観点から、不溶性塩の配合量は、好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下である。
【0056】
乳化剤としては、たとえば食品用の乳化剤が挙げられる。
乳化剤の具体例として、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤;
ジアセチル酒石酸モノグリセリド等のアニオン界面活性剤;および
レシチン等の両性界面活性剤が挙げられる。
唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、乳化剤は、好ましくはノニオン界面活性剤であり、より好ましくはショ糖脂肪酸エステルおよびモノグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である。
【0057】
ノニオン界面活性剤のうち、ショ糖脂肪酸エステルとして、たとえばショ糖と炭素数10以上24以下の脂肪酸とのエステルが挙げられ、さらに具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステルが挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数に制限はないが、たとえば10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上である。
また、制限はないが、ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、たとえば24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。
【0058】
ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、好ましくは飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸であり、より好ましくは飽和脂肪酸である。
ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸のモノ、ジ、トリおよびポリエステルのいずれを含んでもよい。
ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、好ましくは0以上であり、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは4以上、さらにより好ましくは8以上である。
また、同様の観点から、ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは18以下、より好ましくは17以下である。
【0059】
モノグリセリン脂肪酸エステルとして、たとえばグリセリンと炭素数6以上24以下の脂肪酸とのエステルが挙げられ、さらに具体的には、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステルが挙げられる。
モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、たとえば6以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは14以上である。
また、同様の観点から、モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、たとえば24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、同様の観点から、好ましくは飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸であり、より好ましくは飽和脂肪酸である。
モノグリセリン脂肪酸エステルのHLBは同様の観点から、好ましくは0以上であり、より好ましくは1以上である。
また、唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、モノグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは16以下であり、より好ましくは9以下、さらに好ましくは6以下である。
【0060】
成分(A)中の乳化剤の含有量は、唐揚げのサクミを向上する観点から、成分(A)全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは0.6質量%以上、さらに好ましくは0.9質量%以上である。
また、同様の観点から、成分(A)中の乳化剤の含有量は、成分(A)全体に対して好ましくは11質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0061】
次に、成分(A)の製造方法を説明する。成分(A)の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む。
(低分子化澱粉の調製工程)アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程。
(造粒工程)原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料を加熱糊化して造粒する工程。
【0062】
低分子化澱粉の調製工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、好ましくは酸処理である。
【0063】
また、造粒工程には、澱粉の造粒に使用されている一般的な方法を用いることができるが、所定の冷水膨潤度とする点で、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることが好ましい。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(A)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダーがより好ましい。エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10質量%以上60質量%以下程度に調整した後、たとえばバレル温度30℃以上200℃以下、出口温度80℃以上180℃以下、スクリュー回転数100rpm以上1,000rpm以下、熱処理時間5秒以上60秒以下の条件で、加熱膨化させる。
【0064】
本実施形態において、造粒工程にて加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整することができる。また、これにより、条件(4)を満たす成分(A)を得てもよい。
【0065】
ブレッダー中の成分(A)の含有量は、ブレッダー全体に対し、衣の好ましい硬さおよび唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、同様の観点から、ブレッダー中の成分(A)の含有量は、ブレッダー全体に対し、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以下である。
【0066】
ブレッダー中の第2の穀粉および成分(A)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、衣の好ましい硬さおよび唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制する観点から、質量比で好ましくは0.04以上であり、より好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.3以上である。
また、同様の観点から、ブレッダー中の第2の穀粉および成分(A)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、質量比で好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0067】
(成分(B))
成分(B)は、目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量が80質量%以上100質量%以下である粒状物である。成分(B)は、α化穀粉(ただし、第1および第2の穀粉を除く。)、米菓粉砕物およびパン粉からなる群から選択される1種以上である。
【0068】
α化穀粉は、具体的には、第1および第2の穀粉以外の成分であり、穀粉にα化処理が施されたものである。
α化穀粉における穀粉の具体例として、コーングリッツ、コーンフラワー等のとうもろこし粉;馬鈴薯粉;が挙げられる。
α化穀粉は、さらに具体的には、コーングリッツ、コーンフラワー等のとうもろこし粉からなる群から選択される1以上の穀粉である。
α化穀粉の市販品の具体例として、ソフトコートEL(コーングリッツ加工品、J-オイルミルズ社製)が挙げられる。
【0069】
米菓粉砕物における米菓は、煎餅、おかき、柿の種、あられ等である。米菓粉砕物は、上述の粒度に粉砕されていればよく、粉砕方法に制限はない。
パン粉についても、上述の粒度に粉砕されたものであればよい。
【0070】
成分(B)の粒度については、唐揚げのサクミ向上の観点から、目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(B)全体に対して80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上である。また、目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量は、たとえば100質量%以下であってもよい。
【0071】
ブレッダー中の成分(B)の含有量は、ブレッダー全体に対し、衣の好ましい硬さおよび唐揚げのサクミを向上し、衣のヒキを抑制するの観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、食材のジューシー感を向上する観点から、ブレッダー中の成分(B)の含有量は、ブレッダー全体に対し、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0072】
ブレッダー中の第2の穀粉および成分(B)の含有量の合計に対する成分(B)の含有量は、衣の好ましい硬さおよび唐揚げのサクミを向上し、食材のジューシー感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.28以上である。
また、食材のジューシー感を向上する観点から、ブレッダー中の第2の穀粉および成分(B)の含有量の合計に対する成分(B)の含有量は、質量比で好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0073】
ブレッダー中の成分(A)および(B)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、食材のジューシー感の向上およびヒキ抑制の観点から、質量比で好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。
また、食材のジューシー感を向上する観点から、ブレッダー中の成分(A)および(B)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、質量比で好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.6以下である。
【0074】
ブレッダー中の第2の穀粉の含有量に対する成分(A)および(B)の含有量の合計は、衣の好ましい硬さおよび唐揚げのサクミを向上し、食材のジューシー感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは2.0以上である。
また、ヒキ抑制の観点から、第2の穀粉の含有量に対する成分(A)および(B)の含有量の合計は、質量比で好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、さらにより好ましくは3.0以下である。
【0075】
また、ブレッダーは、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
【実施例】
【0076】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0077】
(原材料)
原材料として、主に以下のものを使用した。
ハイアミロースコーンスターチ:J-オイルミルズ社製、コーンスターチY
ハイアミロースコーンスターチ:J-オイルミルズ社製、HS-7、アミロース含量70質量%
モノグリセリン脂肪酸エステル:ポエムP(V)S、構成脂肪酸C16(60%)、C18(40%)、理研ビタミン社製
小麦粉:フラワー、日清製粉社製
リン酸架橋タピオカ澱粉:アクトボディーTP-4W、J-オイルミルズ社製
酸処理澱粉:ジェルコールR-100、J-オイルミルズ社製
酸化タピオカ澱粉:ジェルコールSP-3、J-オイルミルズ社製
(A)-1:製造例1で得られた粉粒状物
(A)-2:製造例2で得られた粉粒状物
(A)-3:製造例3で得られた粉粒状物
(A)-4:製造例4で得られた粉粒状物
(A)-5:製造例5で得られた粉粒状物
(B)α化穀粉1:コーングリッツ加工品、ソフトコートEL、J-オイルミルズ社製、目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量100質量%
(B)パン粉:パン粉、共栄フード社製を粉砕し篩分けしたもの。(目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量100質量%)
(B)米菓粉砕物:亀田の柿の種、亀田製菓社製を粉砕し篩分けしたもの。(目開き2.8mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上の画分の含有量100質量%)
市販の唐揚げ粉:厨房王ジューシー唐揚げ粉、ダイショー社製
畜肉加工用品質改良剤製剤:ハイトラストTC-200、J-オイルミルズ社製
強力粉:オーション、日清製粉社製
生地改良剤:ジョーカーキモ、ピュラトス社製
生イースト:レギュラーイースト、オリエンタル酵母工業社製
ショートニング:アトランタSS、J-オイルミルズ社製
【0078】
(製造例1~3)
本例では、粉粒状物(A)-1、(A)-2および(A)-3を製造した。
まず、酸処理ハイアミロースコーンスターチを以下の手順で調製した。すなわち、ハイアミロースコーンスターチを水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0079】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過をおこない、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM NaNO3含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工社製)を使用した。
【0080】
次に、得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチを用いて粉粒状物を製造した。すなわち、コーンスターチ 77質量部、酸処理ハイアミロースコーンスターチ 20質量部、炭酸カルシウム 1質量部およびモノグリセリン脂肪酸エステル 2質量部を充分に均一になるまで袋内で混合し、混合物を得た。2軸エクストルーダー(幸和工業社製、KEI-45)を用いて、上記混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:275g/分
加水:各表に示した数量
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃、100℃および130℃
出口温度:130~150℃
スクリューの回転数230rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。
【0081】
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けして、表1に示す粒度分布になるように各画分を混合し、粉粒状物(A)-1(製造例1)、(A)-2(製造例2)および(A)-3(製造例3)を得た。
【0082】
(製造例4および5)
製造例1において、粉粒状物を製造する際の配合を、コーンスターチ 79質量部、酸処理ハイアミロースコーンスターチ 20質量部、および炭酸カルシウム 1質量部とした他は、製造例1に準じて粉粒状物(A)-4(製造例4)および(A)-5(製造例5)を製造した。
【0083】
製造例1~5で得られた粉粒状物(A)-1~(A)-5の粒度および冷水膨潤度を表1に示す。各粉粒状物の冷水膨潤度は以下の方法で測定した。
【0084】
(冷水膨潤度の測定方法)
1.試料1g(A)を50mLファルコンチューブに秤量した。
2.ボルテックスミキサーで撹拌しながら、チューブ目盛り50mLまで水を加えた。
3.5回転倒混和させ、沈殿を分散させた後、10秒ボルテックスミキサーで撹拌し、室温で30分静置した。
4.4000rpmで30分間遠心分離を行い、沈殿層と上澄み層に分けた。
(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)
5.上澄みをピペットで取り除いて、沈殿層の質量を測定し、これをBとした。
6.沈殿層を乾固(105℃、24時間)した時の質量を測定し、これをCとした。
7.B/Cを、粉粒状物の冷水膨潤度とした。
【0085】
【0086】
(実施例1~29、対照例1)
本例では、唐揚げを製造し、評価した。バッターおよびブレッダーの配合ならびに唐揚げの評価結果を表2~表5に示す。
実施例16以外の例については、鶏唐揚げを作製し、実施例16については、タコの唐揚げを作製した。
【0087】
(唐揚げの製造方法)
1.鶏モモ肉(皮なし)を25~30gにカットし、ピックル液(対肉40%)中、タンブラー(VACONA社、ESK-60)に加え、5℃、90分間、真空率80%でタンブリングを行った。
2.ピックル液をきり、各例のバッターに肉を入れ、良く混合した。
3.バッターの付いた肉に、各例のブレッダーを付けた(鶏モモ肉25~30g当たり約5~8g)。
4.180℃で3分油ちょうし、唐揚げを得た。
5.得られた唐揚げの粗熱除去後、-50℃にて1時間急速冷凍した。
6.包装袋(フレームノバ マジックバック専用 カット袋、型番ACO1059、材質:ポリアミド・ナイロン、ポリエチレン、厚さ0.085mm、20×30cm)に凍結した唐揚げを入れ(5~6個/袋)、真空包装機(ホットテンプ、型番LYNX32、ニチワ電機社製)のP1真空設定スタンダードモードにて真空包装し、唐揚げ包装体を得た。
7.唐揚げ包装体を-18℃にて2週間冷凍保存した。
【0088】
実施例16においては、上記唐揚げの製造方法において、1.の鶏モモ肉をタコとした他は、上記方法に準じてタコの唐揚げを得た。
【0089】
(ピックル液の配合)
成分 配合(質量%)
畜肉加工用品質改良剤製剤 10.00
上白糖 4.00
食塩 1.00
胡椒 0.30
グルタミン酸Na 2.70
醤油 10.00
氷水 72.00
合計 100.00
【0090】
(評価方法)
各例で得られた冷凍保存後の唐揚げ包装体を100℃にて10分湯煎した。湯煎後の唐揚げを袋から取り出し、唐揚げの「好ましい硬さ」、「サクミ」、「食材のジューシー感」および「ヒキ」を2名のパネラーが官能評価した。2名のパネラーの合議により以下の基準で評点を付した。各項目について、3点以上を合格とした。
また、実施例21については、上述の評価に加え、湯煎後再油ちょうした唐揚げについても官能評価をおこなった。具体的には、冷凍保存後の唐揚げ包装体を100℃の湯の中に1時間静置した後、袋から唐揚げを取り出し、180℃にて1分油ちょうした。油ちょうした唐揚げの「好ましい硬さ」、「サクミ」、「食材のジューシー感」および「ヒキ」を上述方法で評価した。
評価結果を表2~表5に示す。
【0091】
(好ましい硬さ)
5:適度な硬さがある
4:ほぼ適度な硬さがある、またはわずかに硬すぎる
3:やや適度な硬さがある、またはやや硬すぎるが許容範囲である
2:あまり硬さがない、または硬すぎる
1:全く硬さがない、またはかなり硬すぎる
【0092】
(サクミ)
5:非常にサクミあり
4:サクミあり
3:ややサクミあり
2:あまりサクミなし
1:全くサクミなし
【0093】
(食材のジューシー感)
5:非常にジューシーさに優れる
4:かなりジューシーさに優れる
3:ジューシーさに優れる
2:ややジューシーさにに劣る
1:ジューシーさに劣る
【0094】
(衣のヒキ)
5:全くヒキなし
4:ほとんどヒキなし
3:少しヒキあり
2:ややヒキあり
1:ヒキあり
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
(製造例6)
本例では、粉粒状物(A)-3が配合されたパン粉(「粉粒状物(A)-3配合パン粉」)を以下の手順で製造した。
【0100】
(パン粉用パンおよびパン粉の製造方法)
以下の手順で、表6に記載の配合に従いパン粉用パンを製造し、それを粉砕してパン粉を得た。
1.表6に記載のすべての材料をミキサーボウルに入れ、パン用ミキサー(カントーミキサー HP-20M、関東混合社製)にて以下の条件でミキシングした。
ミキシング条件:フックにて1速で3分、2速で9分混捏
2.ミキシング後、ミキサーから生地を出して、26℃で70分間発酵させた。
3.生地を215gに分割し15分間休ませた後、モルダーで棒状にし3本でツイスト状にあわせた物を型に2本づつ入れ、成形した。
4.成形した生地を38℃相対湿度85%のホイロで50分間発酵させた。
5.発酵後、オーブンにて以下の条件と時間で焼成した。
焼成条件:上段180℃/下段190℃
焼成時間:50分
6.焼成後、室温(20℃)にて焼成したパンの粗熱を除去した。
7.冷凍庫(-18℃)に保存した。
8.得られた冷凍パンを室温(20℃)に戻し、パンの中身部分をミキサー(製品名:MiNi-PANKO PK-3、冨士島工機社製)で粉砕した。この時のパン粉1gを水分計(研精工業社製、型番MX-50)で、130℃に加熱乾燥させて水分測定をおこなったところ、水分量は39.8質量%であった。
9.粉砕したパン粉を篩にかけ、目開き2.8mm篩下、0.15mm篩上の画分を回収し、ブレッダーへの配合試験に供した。
【0101】
【0102】
(実施例30)
バッターおよびブレッダーの配合を表7に記載の内容とした他は、実施例1に準じて唐揚げを製造し、評価した。バッターおよびブレッダーの配合ならびに唐揚げの評価結果を表7に示す。表7中、「(A)-3の粉粒状物配合パン粉(製造例6)」35質量部中の成分(A)の量は1.1質量部であり、成分(B)の量は33.9質量部である。
【0103】