(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-03
(45)【発行日】2024-09-11
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08C 19/25 20060101AFI20240904BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240904BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240904BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240904BHJP
【FI】
C08C19/25
C08K3/013
C08L9/06
C08L15/00
(21)【出願番号】P 2022523217
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002463
(87)【国際公開番号】W WO2021172938
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0025512
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ、チョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ-ソン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/128291(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128583(KR,A)
【文献】特開2018-172548(JP,A)
【文献】特表2018-518473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
B60C 1/00-19/12
C08F 4/00-4/58
C08F 4/72-4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、
下記条件(i)~(vii)を満たし、
芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含み、
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレンからなる群から選択される1つ以上であり、
下記化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位をさらに含み、
前記変性剤は、下記化学式2~化学式6のいずれか1つで表される化合物である、
変性共役ジエン系重合体。
(i)ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布曲線が単峰形であり、
(ii)分子量分布が2.0以上であり、
(iii)重量平均分子量が100,000g/mol~2,000,000g/molであり、
(iv)変性率が70%以上であり、
(v)100℃で測定されたムーニー応力緩和率が0.7以上3.0以下であり、
(vi)下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー緩和面積(MLRA)が1500MU-s以下であり、
(vii)窒素原子の含量が、前記重合体の重量を基準として100ppm以上であり、
【数8】
前記数学式1中、
Aはムーニー緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータの作動を止めて1秒後のムーニー切片であり、
aはムーニー緩和率であり、
t
oはムーニー緩和開始時点であり、
t
fはムーニー緩和完了時点である。
【化14】
(前記化学式1中、
R
1は、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
R
2は、単結合、または置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキレン基であり、
R
3およびR
4は、互いに独立して、置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、
前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択される1つ以上である。)
【化15】
(前記化学式2中、
R
1は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R
4は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数2~10のヘテロ環基であり、
R
21は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または-[R
42O]
j-であり、
R
42は、炭素数1~10のアルキレン基であり、
aおよびmは、それぞれ独立して、1~3から選択される整数であり、
nは0、1、または2の整数であり、
jは1~30から選択される整数であ
り、
m+n=3である。)
【化16】
(前記化学式3中、
R
5、R
6、およびR
9は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
7、R
8、R
10、およびR
11は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R
12は、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、
bおよびcは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であって、b+c≧1であり、
Aは、
【化17】
であり、この際、R
13、R
14、R
15、およびR
16は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキル基である。)
【化18】
(前記化学式4中、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、酸素原子を含むかまたは含まない炭素数1~20の2価の炭化水素基であり、
R
17~R
20は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、L
1およびL
2と、L
3およびL
4は、互いに連結されて炭素数1~5の環を形成してもよく、
L
1およびL
2と、L
3およびL
4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。)
【化19】
(前記化学式5中、
R
22およびR
23は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、または-R
28[OR
29]
f-であり、
R
24~R
27は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
R
28およびR
29は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
R
47およびR
48は、それぞれ独立して、炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、
dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であり、
fは1~30の整数である。)
【化20】
(前記化学式6中、
R
30は、炭素数1~30の1価の炭化水素基であり、
R
31~R
33は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
34~R
37は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
gおよびhは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、g+hは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記化学式1中、R
1は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、
R
2は、単結合、または置換されていない炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
3およびR
4は、互いに独立して、置換されていない炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
炭化水素溶媒中で、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、
前記(S1)ステップで製造された前記活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、
前記(S1)ステップにおける重合は、第1重合開始剤の存在下で重合を開始し、重合転換率が50%以上95%以下である時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入して重合反応を行い、
前記第1および第2重合開始剤は、それぞれ有機金属化合物、共役ジエン系単量体、および下記化学式1で表される化合物を反応させて製造された、アニオン活性末端を有するオリゴマーであり、
前記(S1)ステップは少なくとも2器の重合反応器で連続的に行い、前記重合反応器のうち第1反応器での重合転換率が10%~50%であり、
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレンからなる群から選択される1つ以上であり、
前記変性剤は、下記化学式2~化学式6のいずれか1つで表される化合物である、
請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化21】
(前記化学式1中、
R
1は、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
R
2は、単結合、または置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキレン基であり、
R
3およびR
4は、互いに独立して、置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、
前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択される1つ以上である。)
【化22】
(前記化学式2中、
R
1は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R
4は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数2~10のヘテロ環基であり、
R
21は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または-[R
42O]
j-であり、
R
42は、炭素数1~10のアルキレン基であり、
aおよびmは、それぞれ独立して、1~3から選択される整数であり、
nは0、1、または2の整数であり、
jは1~30から選択される整数であ
り、
m+n=3である。)
【化23】
(前記化学式3中、
R
5、R
6、およびR
9は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
7、R
8、R
10、およびR
11は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R
12は、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、
bおよびcは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であって、b+c≧1であり、
Aは、
【化24】
であり、この際、R
13、R
14、R
15、およびR
16は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキル基である。)
【化25】
(前記化学式4中、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、酸素原子を含むかまたは含まない炭素数1~20の2価の炭化水素基であり、
R
17~R
20は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、L
1およびL
2と、L
3およびL
4は、互いに連結されて炭素数1~5の環を形成してもよく、
L
1およびL
2と、L
3およびL
4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。)
【化26】
(前記化学式5中、
R
22およびR
23は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、または-R
28[OR
29]
f-であり、
R
24~R
27は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
R
28およびR
29は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、
R
47およびR
48は、それぞれ独立して、炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、
dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であり、
fは1~30の整数である。)
【化27】
(前記化学式6中、
R
30は、炭素数1~30の1価の炭化水素基であり、
R
31~R
33は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
34~R
37は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
gおよびhは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、g+hは1以上の整数である。)
【請求項4】
前記オリゴマーは、重量平均分子量が100g/mol~30,000g/molである、請求項3に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記(S1)ステップは、前記単量体の総100gに対して0.01mmol~10mmolの重合開始剤を用い、前記重合開始剤は第1および第2重合開始剤を含む、請求項3または4に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2重合開始剤は、前記第1重合開始剤1molに対して0.01mol~10molで用いる、請求項3~5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記分割投入は、前記第2重合開始剤の全量のうち一部を、重合転換率が50%以上80%未満である時点の間に1次分割連続投入し、全量のうち残りを、重合転換率が80%以上95%以下である時点の間に2次分割連続投入することであり、
前記1次分割連続投入および2次分割連続投入は、それぞれ投入開始から投入終了まで一定速度で前記第2重合開始剤を投入することである、請求項3~6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記(S1)ステップにおける重合は、極性添加剤をさらに含んで行う、請求項3~7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物。
【請求項10】
前記変性共役ジエン系重合体100重量部を基準として、0.1重量部~200重量部の充填剤を含む、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
加硫剤をさらに含む、請求項9または10に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年2月28日付の韓国特許出願第10-2020-0025512号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、回転抵抗性に優れるとともに、加工性が改善された変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、回転抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの回転抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させることで、末端に官能基を導入する技術が利用されている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
また、前記溶液重合によるSBRは、一般に、配合加工性を改善する点から、広い分子量分布を有することが有利である。そこで、高温重合により製造したり、カップリング剤を用いて長鎖分岐を導入する方式が試されたが、高温重合は、分子量分布は広くなるが、変性率が低下し、カップリング剤を用いた場合には、カップリング剤と充填剤との間の立体障害(steric hindrance)により回転抵抗性が低下するという問題がある。
【0008】
したがって、分子量分布が広く、かつ高い変性率を有することで、回転抵抗性に優れるとともに、加工性が改善された変性共役ジエン系重合体の開発が必要とされている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、条件(i)~(vii)を満たす、充填剤との親和性および加工性に優れた変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、アニオン活性末端を有するオリゴマーを重合開始剤として用い、活性重合体の製造時に、前記重合開始剤を重合転換率によって少なくとも2回に分割投入して重合反応を行うことで、条件(i)~(vii)を同時に満たす前記変性共役ジエン系重合体を容易に製造できる変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することをその目的とする。
【0012】
なお、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、下記条件(i)~(vii)を満たす、変性共役ジエン系重合体を提供する。
(i)ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布曲線が単峰形であり、
(ii)分子量分布が2.0以上であり、
(iii)重量平均分子量が100,000g/mol~2,000,000g/molであり、
(iv)変性率が70%以上であり、
(v)100℃で測定されたムーニー応力緩和率が0.7以上であり、
(vi)下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー緩和面積(MLRA)が1500MU-sであり、
(vii)窒素原子の含量が、重合体の重量を基準として100ppm以上であり、
【0014】
【0015】
前記数学式1中、
Aはムーニー緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータの作動を止めて1秒後のムーニー切片であり、
aはムーニー緩和率であり、
toはムーニー緩和開始時点であり、
tfはムーニー緩和完了時点である。
【0016】
また、本発明は、炭化水素溶媒中で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、前記(S1)ステップにおける重合は、第1重合開始剤の存在下で重合を開始し、重合転換率が50%以上95%以下である時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入して重合反応を行い、前記第1および第2重合開始剤は、それぞれ有機金属化合物、共役ジエン系単量体、および下記化学式1で表される化合物を反応させて製造された、アニオン活性末端を有するオリゴマーであり、前記(S1)ステップは少なくとも2器の重合反応器で連続的に行い、前記重合反応器のうち第1反応器での重合転換率が10%~50%である、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0017】
【0018】
前記化学式1中、
R1は、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、R2は、単結合、または置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキレン基であり、R3およびR4は、互いに独立して、置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択される1つ以上である。
【0019】
なお、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、本明細書で提示する製造方法により製造され、広い分子量分布を有し、かつ高変性率を有することができ、2-arm構造の低分岐化構造を有することで、充填剤との親和性に優れるとともに、加工性に優れることができる。
【0021】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体の製造方法は、アニオン活性末端を有するオリゴマーを重合開始剤として用いて活性重合体を製造する(S1)ステップの重合時に、前記重合開始剤を、重合転換率によって少なくとも2回に分割投入して重合反応を行うことで、高温条件ではなくても広い分子量分布を有する活性重合体を容易に製造することができ、高変性率を有する共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。
【0022】
また、本発明に係るゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を含むことで、走行抵抗性および加工性がバランスよく優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0024】
発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0025】
用語の定義
本明細書において、用語「ムーニー緩和面積(MLRA、Mooney Large Relaxation Area)」は、溶融された重合体中の鎖弛緩の測定値(尺度)であり、加えられた変形の除去後に、さらに長いもしくは分岐化された重合体鎖がさらに多くのエネルギーを貯蔵することができ、弛緩にさらに長い時間が必要であるということを示唆するものである。例えば、超高分子量または長鎖分岐化重合体のムーニー緩和面積は、同一のムーニー粘度を有する重合体と比較した時に、広いもしくは狭い分子量の重合体よりも大きいことがある。
【0026】
本明細書において、用語「重合体」は、一種の単量体または2種以上の異種の単量体を重合することで製造された単独重合体化合物または共重合体化合物を指す。
【0027】
本明細書において、用語「1,2-ビニル結合の含量」は、共重合体中の共役ジエン系単量体(ブタジエンなど)由来の部分(重合されたブタジエンの総量)に基づく、前記共重合体の重合体鎖中の1,2番位置に内包されるブタジエンの質量(もしくは重量)パーセントを意味する。
【0028】
本明細書において、用語「スチレン結合の含量」は、共重合体中の芳香族ビニル系単量体(スチレンなど)に由来の前記共重合体の鎖に内包されるスチレンの質量(もしくは重量)パーセントを意味する。
【0029】
本明細書において、用語「変性率(%)」は、重合活性部位が存在する共重合体に対して変性剤(modifier)で変性させた場合、未変性共重合体鎖に対する変性共重合体鎖の割合(ratio)を意味し、これは、変性共重合体鎖および未変性共重合体鎖を含む共重合体の全体に対する百分率(%)で表示する。
【0030】
本明細書において、用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されることを意味し、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合、前記官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて、1個または2個以上の複数の置換基が存在し得る。複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0031】
本明細書において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基;イソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基;および環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1つまたは2つ以上含む環状の不飽和炭化水素を何れも含む意味であり得る。
【0032】
本明細書において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどのような2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0033】
本発明において、用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0034】
本明細書において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0035】
本明細書において、用語「アルアルキル基(aralkyl)」は、アラルキルとも呼ばれるものであって、アルキル基を構成する炭素に結合された水素原子がアリール基で置換されて形成されたアルキル基とアリール基の組み合わせ基を意味し得る。
【0036】
本明細書において、用語「単結合」は、別の原子または分子団を含まない単一共有結合自体を意味し得る。
【0037】
本明細書において、用語「由来の単位」、「由来の繰り返し単位」、および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0038】
本明細書において、用語「含む」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているかいないかを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤、もしくは化合物を含み得る。これと対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0039】
測定方法および条件
本明細書において、「1,2-ビニル結合の含量」および「スチレン結合の含量」は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて、共重合体および第1および第2共重合体単位中のビニル(Vinyl)の含量およびスチレンの含量を測定して分析したものである。NMR測定時に、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用し、試料は、前記溶媒に重合体が0.02Mとなるように溶解させて準備した。溶媒ピーク(solvent peak)は6.0ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして、全重合体中の1,2-ビニル結合の含量とスチレン結合の含量をそれぞれ計算して測定した。
【0040】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「分子量分布(MWD)」、および「単峰形特性」は、GPC(Gel permeation chromatograph)分析により分子量を測定し、分子量分布曲線を得て測定したものである。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、GPC(Gel permeation chromatohraph)(PL GPC220、Agilent Technologies)により、下記の条件で重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布曲線を得て、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。
-カラム: PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用
-溶媒:テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合して使用
-流速:1mL/min
-試料濃度:1~2mg/ml(THFに希釈)
-注入量:100μl
-カラム温度:40℃
-Detector:Refractive index
-Standard:Polystyrene(三次関数で補正)
【0041】
本明細書において、「変性率(%)」は、クロマトグラフィー測定から得られたクロマトグラムを用いて、下記数学式2により計算された値である。前記クロマトグラフィー測定として、例えば、GPC(Gel permeation chromatohraph)(PL GPC220、Agilent Technologies)を用いて、共重合体をシクロヘキサン(cyclohexane)に溶解させて試料(1.0mg/ml製造)移動相貯蔵器に貯蔵し、他の移動相貯蔵器にテトラヒドロフラン(THF)を貯蔵した。前記移動相貯蔵器をデュアル-ヘッドポンプにそれぞれ連結し、先ず、共重合体が溶解されている移動相貯蔵器の溶液を、前記ポンプおよびループの体積が100μlである注入器により、シリカ吸着剤が充填されたカラムに注入した。この際、ポンプの圧力は450psiであり、注入流速は0.7ml/minであった。次に、検出器(ELSD、Waters社)から、共重合体中の未変性共重合体単位がそれ以上検出されないことを確認し、注入開始5分を基準として、前記テトラヒドロフランをポンプにより前記カラムに注入した。この際、ポンプの圧力は380psiであり、注入流速は0.7ml/minであった。検出器から、テトラヒドロフランの注入によって重合体中の変性共重合体単位がそれ以上検出されないことを確認し、第2溶媒の注入を終了した。次に、検出されたクロマトグラムの結果から、下記数学式2により変性率(%)を計算した。
【0042】
【0043】
前記数学式2中、前記未変性共重合体単位のピーク面積は、前記検出器に移送された第1溶液に対するクロマトグラムのピーク面積であり、前記変性共重合体単位のピーク面積は、前記検出器に移送された第2溶液に対するクロマトグラムのピーク面積である。
【0044】
本明細書において、「窒素原子の含量」、NSX分析方法により測定することができる。前記NSX分析方法では、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定する。具体的に、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得た。得られた試料のareaと前記検量線を用いて窒素原子の含量を計算した。
【0045】
この際、前記NSX分析方法に用いられる試料は、スチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体試料であって、残留モノマーおよび残留変性剤を除去した試料であってもよい。また、前記試料にオイルが添加されている場合、オイルが抽出(除去)された後の試料であってもよい。
【0046】
本明細書において、「ムーニー応力緩和率(-S/R)」は、Alpha Technologies社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定した。具体的には、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しながら4分間測定してムーニー粘度を得た後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、絶対値で示した。
【0047】
本明細書において、「ムーニー緩和面積(MLRA)」は、時間によるムーニートルクグラフをプロットし、前記数学式1から算出する値であり、ムーニー粘度の測定後、ロータを停止してトルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、その絶対値であるムーニー緩和率(a)を得、ロータが停止してから1秒後(to)から120秒(tf)間のムーニー緩和曲線の積分値から得ることができる。この積分値は、前記数学式1から算出したものである。
【0048】
変性共役ジエン系重合体
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、後述の製造方法により製造され、広い分子量分布を有し、かつ末端が高変性されたものである。
【0049】
具体的に、本発明に係る前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および変性剤由来の官能基を含み、下記条件(i)~(vii)を満たすことを特徴とする。
(i)ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布曲線が単峰形であり、
(ii)分子量分布が2.0以上であり、
(iii)重量平均分子量が100,000g/mol~2,000,000g/molであり、
(iv)変性率が70%以上であり、
(v)100℃で測定されたムーニー応力緩和率が0.7以上であり、
(vi)下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー緩和面積(MLRA)が1500MU-sであり、
(vii)窒素原子の含量が、重合体の重量を基準として100ppm以上であり、
【0050】
【0051】
前記数学式1中、
Aはムーニー緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータの作動を止めて1秒後のムーニー切片であり、
aはムーニー緩和率であり、
toはムーニー緩和開始時点であり、
tfはムーニー緩和完了時点である。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、後述の(S1)ステップの重合時に、アニオン活性末端を有するオリゴマーを重合開始剤として適用し、第1反応器での重合転換率を10%~50%に調節しながら行う(S1)ステップを含み、前記重合開始剤を少なくとも2回に分割投入して重合反応を行い、その後、変性剤を用いた変性反応を行う製造方法により製造されるものである。かかる製造方法により製造されることで、前記条件(i)~(vii)を同時に満たすことができる。
【0053】
また、前記オリゴマーは、有機金属化合物、共役ジエン系単量体、および化学式1で表される化合物を反応させて製造されたものであって、分子中に化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位を含むことができ、これにより、変性剤と別に前記重合体中に前記化学式1で表される化合物由来単位を導入させることで、前記条件(vii)もより容易に満たすことができる。
【0054】
その結果として、前記変性共役ジエン系重合体は、条件(i)~(vii)を同時に満たすことで、引張特性のような機械的物性、粘弾性および配合加工性が同時に優れることができ、これにより、引張特性、ウェットスキッド抵抗性、回転抵抗性、および加工性がバランスよく優れることができる。
【0055】
変性共役ジエン系重合体の主要パラメータ
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)であり、分子量分布が2.0以上であることができる。ここで、前記単峰形の曲線形態と分子量分布は、後述の製造方法により同時に満たすことができる。具体的に、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布曲線が単峰形であり、かつ分子量分布が2.0以上5.0以下、または2.0以上3.0以下であってもよい。
【0056】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)により測定された重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~2,000,000g/mol、150,000g/mol~1,800,000g/mol、または200,000g/mol~1,600,000g/molであってもよく、この範囲内である場合、回転抵抗性およびウェットスキッド抵抗性がよりバランスよく優れる効果がある。
【0057】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、変性剤由来の官能基を含んでもよく、変性率が70%以上、または90%以上であることができる。ここで、前記変性剤由来の官能基は、活性重合体と変性剤との反応またはカップリングにより活性重合体の一方の末端に存在する変性剤に由来した官能基を意味し得る。
【0058】
また、前記変性率は、変性反応において、変性剤による変性またはカップリングがどの位起こるかによって影響され得て、製造時に投入する変性剤の量、極性添加剤の量、反応時間、変性剤と活性重合体の混合時間、および混合程度などによって制御されることができる。
【0059】
また、前記変性率は、前記変性共役ジエン系重合体の製造時に用いられた重合開始剤、その反応投入時点、およびその使用量にも影響され得る。
【0060】
一方、前記変性共役ジエン系重合体は、少なくとも2器の重合反応器で連続的に行われ、第1反応器での重合転換率を10%~50%に調節し、重合開始剤を少なくとも2回に分割投入して活性重合体を製造する重合ステップと、活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせる変性ステップと、を含む後述の製造方法により製造されることができる。かかる製造方法により、分子量分布曲線が単峰形であり、かつ分子量分布が2.0以上と広く、前述のような数値の変性率を満たすことができる。
【0061】
具体的に、連続式重合方法は、原料の投入と、反応が完了された生成物の排出が連続的に行われることであり、反応の開始時点から投入されて反応して形成された重合鎖、反応中間から投入されて反応して形成された重合鎖、および重合末期に投入されて反応して形成された重合鎖など、排出される生成物に、反応程度が異なる多様な分子量を有する重合体鎖が混合されていると考えられ得るが、同一時点で反応器に投入された原料は、大体、類似の反応速度で重合が進行されて生成物として排出され、これにより、生成物中の重合体鎖は類似レベルの分子量を有し、予想よりも狭い分子量分布の単峰形であり得る。その後、変性剤を投入して変性反応させる場合、変性剤によって変性および/またはカップリングされた重合体鎖、もしくは変性および/またはカップリングされない重合体鎖が生じ、これにより、分子量の差が大きい2つ以上のグループが形成され、分子量分布曲線のピークが2個以上である多峰の分子量分布曲線が形成される。しかし、本発明に係る製造方法は、連続式重合方法であって、第1反応器での重合転換率を10%~50%に調節し、重合開始剤を少なくとも2回に分割投入する重合ステップにより活性重合体を製造することで、重合初期に反応して消尽される原料(単量体)を調節し、分割投入される重合開始剤と新しい重合鎖を形成するように調節させることができるため、多様な分子量の重合体鎖を含む重合生成物を得ることができる。これにより、後で変性剤との反応により変性および/またはカップリングされた重合体鎖も多様な分子量を有することができるため、特定のピークが優勢に現れることなく、単一のピークとして分子量分布曲線が広く単峰形で現れることができるとともに、分子量分布が広いことができる。
【0062】
さらに、重合開始剤の分割投入により、変性剤との活性部位を有する多様な大きさの分子量を有する重合体鎖の個数が、一般的な連続式重合から製造された活性重合体中の重合体鎖の個数に比べて絶対的に多いしかなく、これにより、同じ変性剤を適用した一般的な連続式重合により製造された変性共役ジエン系重合体に比べて高変性率を示すことができるのである。
【0063】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー応力緩和率(Mooney Stress Relaxation Ratio)が0.7以上3.0以下であり、0.8以上2.0以下、より具体的には0.9以上1.5以下であってもよい。
【0064】
ここで、ムーニー応力緩和率は、該当重合体の分岐構造(もしくはリニアリティ)の指標として用いることができ、例えば、ムーニー粘度が同等である重合体を比較する場合、分岐が多いほどムーニー応力緩和率が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。本発明に係る前記変性共役ジエン系重合体は、条件(i)~(iv)、(vi)および(vii)を満たすとともに、前述の範囲のムーニー応力緩和率を有することで、加工性に優れるとともに、引張特性および粘弾性特性に優れることができる。
【0065】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、ASTM D1646条件で測定したムーニー粘度(Mooney viscosity)が50~100を満たす必要があり、具体的に、70~100であってもよく、好ましくは70~90であってもよい。加工性を評価する尺度は多様であり得るが、ムーニー粘度が上記の範囲を満たす場合、非常に優れた加工性を示すことができる。
【0066】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー緩和面積(MLRA)が1500MU-s以下であってもよい。
【0067】
【0068】
前記数学式1中、
Aはムーニー緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータの作動を止めて1秒後のムーニー切片であり、
aはムーニー緩和率であり、
toはムーニー緩和開始時点であり、
tfはムーニー緩和完了時点である。
【0069】
ここで、ムーニー緩和開始時点は、ロータの作動を止めて1秒後の時点を表し、これは、ムーニートルクがk値を有する時の時点を意味し得る。また、ムーニー緩和完了時点は、ムーニー緩和測定試験においてムーニー緩和の測定が完了された時点を表す。すなわち、tf-toは、ムーニー緩和時間を表す。
【0070】
また、本発明の一実施形態によると、前記toは1秒であり、tfは80秒~150秒であってもよい。換言すれば、本発明の一実施形態に係るムーニー緩和面積は、1秒から、80秒~150秒までのムーニートルク-緩和時間の曲線下の積分面積である。また、前記tfは、具体的に90秒~130秒、または100秒~120秒であってもよい。
【0071】
本発明の変性共役ジエン系重合体において、ムーニー緩和面積が1500MU-s以下であることは、引張特性および粘弾性特性に優れ、かつ加工性に優れる特性を持たせる一技術手段であり、前記ムーニー緩和面積が上記の範囲内であると、本発明で目的とする効果を発現することができる。また、前記ムーニー緩和面積が非常に小さい値を有する場合、引張特性のような機械的特性が低下する恐れがある。より優れた加工性を有し、かつ引張特性および粘弾性特性の両方がバランスよく優れる特性を発現するようにする点から、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体のムーニー緩和面積は300MU-s以上であってもよい。
【0072】
一方、一般に、重合体の分子量とムーニー粘度の物性は、比例関系にある物性であり、互いに等しい傾向性を示す。高分子量の重合体は、ムーニー粘度が高く、これにより加工性は良くないという問題があり、低分子量の重合体は、ムーニー粘度も低く、相対的に加工性は良いが、引張特性のような機械的特性に劣るという問題がある。しかし、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、ムーニー緩和面積が1500MU-s以下の値を有することで、加工性および引張特性がバランスよく優れる効果がある。
【0073】
また、ムーニー緩和面積は、ムーニー粘度が同等である重合体を比較する際に、分岐が多いほどムーニー緩和面積が大きくなる傾向を示すため、分岐度(もしくはリニアリティ)の指標として用いられるが、重合体の分岐度だけでなく、該当重合体の分子量によっても影響され得るため、同一の分岐度(もしくはリニアリティ)を有するとしても、ムーニー緩和面積は異なり得る。
【0074】
一方、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、後述の製造方法により製造されることで、分子量、変性率、および分岐度が同時に調節されることができ、これにより、分子量分布曲線が単峰形であり、分子量分布が広く、ムーニー応力緩和率およびムーニー緩和面積が同時に調節されることができ、結果として、条件(i)~(vii)が同時に満たされることができる。
【0075】
前記ムーニー緩和面積は、時間によるムーニートルクグラフをプロットし、前記数学式1から算出する値である。この際、前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)を用いて、100℃でRotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定し、この際に用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて4分間測定した値である。
【0076】
また、ムーニー粘度の測定後、ロータを停止してトルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、その絶対値であるムーニー緩和率(a)を得ることができる。また、ムーニー緩和面積は、ロータが停止してから1秒後(to)から120秒(tf)間のムーニー緩和曲線の積分値から得ることができ、この積分値は、前記数学式1から算出されることができる。前記ムーニー緩和面積が上記の範囲を満たす場合、ゴム組成物の配合時に、粘弾性特性、特に、回転抵抗性(RR)が向上する効果を得ることができる。特に、ムーニー粘度が80以上、好ましくは90以上である条件下でムーニー緩和面積が上記の範囲を満たす場合、さらに大きい回転抵抗性の改善効果を得ることができる。
【0077】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、窒素原子の含量が、重合体の重量を基準として100ppm以上、100ppm以上1,000ppm以下、または200ppm以上500ppm以下であってもよい。この範囲内である場合、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる効果がある。一方、前記窒素原子は、後述のオリゴマーに由来のものであるか、前記オリゴマーおよび変性剤に由来のものであってもよく、後述の製造方法により製造されることで、窒素原子の含量が相対的に高いことができる。
【0078】
具体的に、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、後述の製造方法に製造されることで、重合初期に反応して消尽される原料(単量体)を調節し、分割投入される重合開始剤と新しい重合鎖を形成することにより、重合開始剤由来の窒素原子を有し、変性剤との反応活性部位を有する活性重合体鎖が多量存在することができる。これにより、重合体中の窒素原子の含量が、通常の片末端および/または両末端に比べて高いことができる。一般的な連続式または回分式重合方法による変性共役ジエン系重合体の製造においては、重合開始剤の存在下で単量体を重合して活性重合体を製造し、その後、変性剤と反応またはカップリングさせることで変性共役ジエン系重合体が製造されるが、この際、前記活性重合体は、重合開始剤と単量体が反応して重合が開始され、その後、末端アニオンが単量体と反応し続けながら重合体鎖が成長する過程を経て生成される。結局、重合開始剤が重合開始前の一時点のみに投入されて重合が進行される一般的な連続式または回分式重合方法は、生成される重合体鎖の個数が、重合開始剤を特定時点によって分割投入して新しい鎖を持続的に生成する本発明に係る製造方法に比べて限定されるしかない。
【0079】
また、一般的な連続式または回分式重合方法で重合開始剤を分割投入するとしても、分割投入された重合開始剤と反応し得る単量体がないか、極少量である場合には、新しく形成される重合体鎖がないか、非常に限定され、結果として、活性重合体中における重合体鎖の個数が事実上増加しない。しかし、本発明に係る製造方法は、重合開始剤を特定時点で分割投入するとともに、第1重合反応器での重合転換率を10%~50%、すなわち、重合初期の重合程度を特定範囲に調節することで、後で分割投入される重合開始剤と反応して新しい重合体鎖を十分に生成するように単量体の量も調節することにより、製造される活性重合体中における重合体鎖の個数を著しく増加させることができる。ここで、活性重合体中における重合体鎖は、後で変性剤と反応またはカップリングするものであり、前記重合体鎖の個数が増加するということは、その分、変性剤と反応またはカップリングして変性される重合体鎖の個数も増加することを意味する。
【0080】
かかる製造方法により製造されることで、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、重合開始剤に含まれているオリゴマーに由来の窒素原子を含む重合体鎖が非常に多量で含まれていることができ、同一の重合開始剤および/または変性剤を使用した他の重合方法により製造された重合体に比べて、絶対的に増加された窒素原子の含量を有することができる。
【0081】
変性共役ジエン系重合体の構成
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体鎖と、前記重合体鎖の少なくとも一末端に含まれる変性剤由来の官能基と、を含んでもよく、ここで、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し、前記変性剤由来の官能基は、共役ジエン系単量体が重合して製造される活性重合体と変性剤の反応またはカップリングにより、活性重合体の一方の末端に存在する変性剤に由来の官能基を意味し得る。
【0082】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0083】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、下記化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位、および変性剤由来の官能基を含んでもよい。また、前記化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体鎖中および前記重合体鎖の少なくとも一末端に含まれることができる。
【0084】
【0085】
前記化学式1中、
R1は、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
R2は、単結合、または置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキレン基であり、R3およびR4は、互いに独立して、置換基で置換されているかもしくは置換されていない炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択される1つ以上である。
【0086】
ここで、前記化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位は、後述の製造方法で用いられた重合開始剤であるオリゴマーに起因したものであってもよい。
【0087】
具体的に、前記化学式1中、R1は、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であり、R2は、単結合、または置換されていない炭素数1~10のアルキレン基であり、R3およびR4は、互いに独立して、置換されていない炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であってもよい。
【0088】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位、化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位、および変性剤由来の官能基を含んでもよい。
【0089】
本発明の一実施形態によると、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0090】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来の繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよく、この範囲内である場合、ゲルの生成を防止する効果がある。
【0091】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体からなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0092】
変性剤
また、前記変性剤は、重合体の末端を変性させるための変性剤であってもよく、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。 前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し得て、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特に、シリカ系充填剤との親和性に優れ、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0093】
前記変性剤は、一例として、アルコキシシラン系化合物であってもよく、具体的な例として、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子などのヘテロ原子を1個以上含有するアルコキシシラン系化合物であってもよい。前記アルコキシシラン系化合物を変性剤として用いる場合、活性重合体の一方の末端に位置したアニオン活性部位と、アルコキシシラン系化合物のアルコキシ基との置換反応により、活性重合体の一方の末端がシリル基と結合した形態に変性が行われることができ、これにより、第1共重合体単位の一方の末端に存在する前記変性剤由来の官能基から、前記第1共重合体単位を含む変性共役ジエン系重合体の無機充填剤などとの親和性が向上することができ、これにより、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の粘弾性がより向上する効果がある。なお、前記アルコキシシラン系化合物が窒素原子を含有する場合には、前記シリル基に由来する効果の他にも、窒素原子に由来する、付加的な物性向上の効果が期待される。
【0094】
本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、下記化学式2で表される化合物を含んでもよい。
【0095】
【0096】
前記化学式2中、R1は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R4は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数2~10のヘテロ環基であってもよく、R21は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または-[R42O]j-であってもよく、R42は、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、aおよびmは、それぞれ独立して、1~3から選択される整数であってもよく、nは0、1、または2の整数であってもよく、jは1~30から選択される整数であってもよい。
【0097】
具体的な例として、前記化学式2中、R1は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基であってもよく、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、R4は、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基、または炭素数2~5のヘテロ環基であってもよく、R21は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基、または-[R42O]jであってもよく、R42は、炭素数1~5のアルキレン基であってもよく、aは2または3の整数であってもよく、mは1~3から選択される整数であってもよく、nは0、1、または2の整数であってもよく、この際、m+n=3であってもよく、jは1~10から選択される整数であってもよい。
【0098】
前記化学式2中、R4がヘテロ環基である場合、前記ヘテロ環基は、3置換アルコキシシリル基で置換されているかまたは置換されていないものであってもよく、前記ヘテロ環基が3置換アルコキシシリル基で置換された場合、前記3置換アルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルキレン基により前記ヘテロ環基に連結されて置換されたものであってもよく、前記3置換アルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルコキシ基で置換されたアルコキシシリル基を意味し得る。
【0099】
より具体的な例として、前記化学式2で表される化合物は、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-1,1,1-trimethlysilanamine)、N,N-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-(トリエトキシシリル)メタン-1-アミン(N,N-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-(triethoxysilyl)methan-1-amine)、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(N-(3-(1H-1,2,4-triazole-1-yl)propyl)-3-(trimethoxysilyl)-N-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)、3-(トリメトキシシリル)-N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(3-(1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)-N-(3-(1-(3-(trimehtoxysilyl)propyl)-1H-1,2,4-triazol-3-yl)propyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-bis(2-(2-methoxyethoxy)ethyl)-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、N-(2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-イル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N-(2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-yl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、およびN-(3,6,9,12-テトラオキサヘキサデシル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3,6,9,12-テトラオキサヘキサデカン-1-アミン(N-(3,6,9,12-tetraoxahexadecyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-3,6,9,12-tetraoxahexadecan-1-amine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0100】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式3で表される化合物を含んでもよい。
【0101】
【0102】
前記化学式3中、R5、R6、およびR9は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R7、R8、R10、およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R12は、水素または炭素数1~10のアルキル基であってもよく、bおよびcは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であって、b+c≧1であってもよく、Aは、
【0103】
【0104】
であってもよく、この際、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0105】
具体的な例として、前記化学式3で表される化合物は、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリエトキシシリル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルプロパン-1-アミン(N-(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-3-(triethoxysilyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)、および3-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-1-イル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(4,5-dihydro-1H-imidazol-1-yl)-N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0106】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式4で表される化合物を含んでもよい。
【0107】
【0108】
前記化学式4中、A1およびA2は、それぞれ独立して、酸素原子を含むかまたは含まない炭素数1~20の2価の炭化水素基であってもよく、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であってもよく、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~5の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0109】
具体的な例として、前記化学式4中、A1およびA2は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であってもよく、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基、炭素数1~10のアルキル基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~3の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0110】
より具体的な例として、前記化学式4で表される化合物は、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane)、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane)、および1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0111】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式5で表される化合物を含んでもよい。
【0112】
【0113】
前記化学式5中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、または-R28[OR29]f-であり、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であってもよく、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であってもよく、R47およびR48は、それぞれ独立して、炭素数1~6の2価の炭化水素基であってもよく、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であり、fは1~30の整数であってもよい。
【0114】
具体的に、前記化学式5中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、または-R28[OR29]f-であってもよく、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であってもよく、fは1~30から選択される整数であってもよい。
【0115】
より具体的に、前記化学式5で表される化合物は、下記化学式5a、化学式5b、または化学式5cで表される化合物であってもよい。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
前記化学式5a、化学式5b、および化学式5c中、R22~R27、dおよびeは、上述のとおりである。
【0120】
より具体的な例として、前記化学式5で表される化合物は、1,4-ビス(3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(3-(triethoxysilyl)propoxy)propyl)piperazine、1,4-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(dimethoxymethylsilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチルシリル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethylsilyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)メチル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)methyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)メチル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)methyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(ジメトキシエチルシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-ビス(3-(dimethoxyethylsilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、および1,3-ビス(3-(トリブトキシシリル)プロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(tributoxysilyl)propyl)-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0121】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式6で表される化合物を含んでもよい。
【0122】
【0123】
前記化学式6中、R30は、炭素数1~30の1価の炭化水素基であってもよく、R31~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、gおよびhは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、g+hは1以上の整数であってもよい。
【0124】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式7で表される化合物を含んでもよい。
【0125】
【0126】
前記化学式7中、A3およびA4は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であってもよく、R38~R41は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であってもよく、iは、1~30から選択される整数であってもよい。
【0127】
他の例として、前記変性剤は、前記変性剤は、3,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-N-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アニリン(3,4-bis(2-methoxyethoxy)-N-(4-(triethoxysilyl)butyl)aniline)、N,N-ジエチル-3-(7-メチル-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン-7-イル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(7-methyl-3,6,8,11-tetraoxa-7-silatridecan-7-yl)propan-1-amine)、2,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-6-((トリメチルシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン(2,4-bis(2-methoxyethoxy)-6-((trimethylsilyl)methyl)-1,3,5-triazine)、および3,14-ジメトキシ-3,8,8,13-テトラメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,8,13-トリシラペンタデカン(3,14-dimethoxy-3,8,8,13-tetramethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,8,13-trisilapentadecane)からなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0128】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式8で表される化合物を含んでもよい。
【0129】
【0130】
前記化学式8中、R43、R45、およびR46は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R44は、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、kは、1~4から選択される整数であってもよい。
【0131】
より具体的な例として、前記化学式8で表される化合物は、8,8-ジブチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dibutyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジメチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dimetyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dibutyl-3,3,13,13-tetramethoxy-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、および8-ブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-8-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)チオ)-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8-butyl-3,3,13,13-tetramethoxy-8-((3-(trimehtoxysilyl)propyl)thio)-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0132】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
本発明は、前記条件(i)~(vii)を同時に満たす変性共役ジエン系重合体を製造可能な変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0133】
本発明に係る前記製造方法は、アニオン活性末端を有するオリゴマーを重合開始剤として適用し、活性重合体の重合中に、少なくとも2回に分割投入して重合反応を行うことで、高温条件ではない条件で広い分子量分布を有する活性重合体を製造することができ、高温による活性重合体の活性部位が不活性される問題が発生することがなく、これにより、活性重合体と変性剤との変性反応が容易になされるため、結果として、分子量分布が広く、高変性率を有する変性共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。
【0134】
前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、炭化水素溶媒中で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、前記(S1)ステップにおける重合は、第1重合開始剤の存在下で重合を開始し、重合転換率が50%以上95%以下である時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入して重合反応を行い、前記第1および第2重合開始剤は、それぞれ有機金属化合物、共役ジエン系単量体、および化学式1で表される化合物を反応させて製造された、アニオン活性末端を有するオリゴマーであり、前記(S1)ステップは少なくとも2器の重合反応器で連続的に行い、前記重合反応器のうち第1反応器での重合転換率が10%~50%であることを特徴とする。
【0135】
前記製造方法で用いられた共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、および化学式1で表される化合物は、前述のとおりであるため、具体的な記載を省略する。
【0136】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0137】
S1ステップ
前記(S1)ステップにおける重合は、一例として、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップにおける重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記重合開始剤を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0138】
また、前記(S1)ステップにおける重合は、炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体を反応させて行い、具体的には、第1重合開始剤の存在下で重合を開始し、重合転換率が50%以上95%以下である時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入して重合反応を行うことができる。前記(S1)ステップの重合では、前述の重合転換率の時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入することで、初期に生成された重合体鎖とは別に単量体と反応して新しい重合体鎖を容易に形成することができ、これにより、製造された活性重合体中に分子量が異なる多量の重合体鎖が存在することができる。これにより、前記活性重合体は広い分子量分布を有することができる。
【0139】
ここで、前記第1および第2重合開始剤は同一でも異なっていてもよく、同一である場合、「第1」および「第2」は反応に投入される順序を意味し得る。
【0140】
また、前記第1および第2重合開始剤は、それぞれ有機金属化合物、共役ジエン系単量体、および化学式1で表される化合物を反応させて製造された、アニオン活性末端を有するオリゴマーであり、重量平均分子量が100g/mol~30,000g/mol、または150g/mol~15,000g/molであってもよい。
【0141】
他の例として、前記オリゴマーは、分子中に共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位を含むものであって、この際、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、前記化学式1で表される化合物由来の繰り返し単位のそれぞれの繰り返し数は、前記オリゴマーが前述の重量平均分子量の範囲を満たす範囲内に調節されることができる。
【0142】
また、前記アニオン活性末端を有するオリゴマーは、有機金属化合物の存在下で、共役ジエン系単量体と、化学式1で表される化合物をアニオン重合して製造されることができ、この際、共役ジエン系単量体と、化学式1で表される化合物は、前述のような重量平均分子量の範囲を満たすようにその使用量を調節することができ、例示的に、前記有機金属化合物は、共役ジエン系単量体1モルに対して0.001モル~1.0モル、または0.01モル~1.0モルで用いてもく、前記化学式1で表される化合物は、共役ジエン系単量体1モルに対して0.001モル~100モル、または0.01モル~10モルで用いてもよい。
【0143】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップは、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmolの重合開始剤を使用し、ここで、前記重合開始剤は第1および第2重合開始剤を含むものであってもよい。具体的に、前記重合開始剤は、単量体の総100gを基準として、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。
【0144】
また、前記第2重合開始剤は、第1重合開始剤1モルに対して、0.001モル~100モル、または0.1モル~10モルで用いてもよい。
【0145】
本発明において、前記有機金属化合物は、一例として、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0146】
また、前記第2重合開始剤の分割投入は、分割一括投入または分割連続投入であってもよく、具体的に、前記分割投入は、第2重合開始剤の全量のうち一部を、重合転換率が50%以上80%未満である時点の間に1次分割連続投入し、全量のうち残りを、重合転換率が80%以上95%以下である時点の間に2次分割連続投入することであり、分割連続投入は、投入開始から投入完了まで投入される全量を一定速度、一定量で投入することであることができる。
【0147】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおける重合は2器以上の重合反応器で行われ、前記重合反応器のうち第1重合反応器での重合転換率は10%以上50%以下、または20%~50%であってもよい。すなわち、前記(S1)ステップにおける重合は、第1重合反応器での重合転換率が10%以上50%以下、または20%以上50%以下になるまでのみ重合を行うことができる。この範囲内である場合、重合反応が開始された後、重合体が形成されながら発生する副反応を抑え、重合時に、線状(linear)構造の重合体を誘導することができ、反応初期に消尽される単量体を調節し、分割投入される第2重合開始剤と反応し得る単量体の量を容易に調節することができる。これにより、前述のような単峰形の分子量分布曲線を有し、かつ分子量分布が前述の範囲を満たすことができる。この際、前記重合転換率は、反応温度、反応器滞留時間などによって調節されることができる。
【0148】
より具体的に、前記(S1)ステップにおける重合は2器以上の重合反応器で行われ、第1重合反応器で、炭化水素溶媒中で、第1重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合転換率10%~50%になるまで重合することで、上記の重合転換率を有する活性重合体を製造し、第2重合反応器およびその後の重合反応器で、重合を進行し続けて活性重合体を製造することができ、この際、重合中に重合転換率が50%以上95%以下である時点で第2重合開始剤を少なくとも1回分割投入することができる。ここで、前記第2重合開始剤の分割投入は、投入される重合転換率の時点によって、第1反応器に投入されるか、もしくは第2反応器およびその後の重合反応器に投入されることができる。
【0149】
一方、前記(S1)ステップにおける重合は、必要に応じて、極性添加剤をさらに含んで行うことができ、この際、用いられる極性添加剤の総使用量は、単量体の総100gを基準として、0.001g~50g、または0.002g~1.0gの割合で用いてもよい。他の例として、前記極性添加剤の総使用量は、重合開始剤の総100gを基準として、0g超過~1g、0.01g~1g、または0.1g~0.9gの割合で用いてもよい。
【0150】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択される1つ以上であってもよく、具体的には、トリエチルアミンまたはテトラメチルエチレンジアミンであってもよい。
【0151】
一方、前記重合転換率は、一例として、重合時に、共重合体を含む共重合体溶液中の固体濃度を測定することで決定することができ、具体的な例として、前記共重合体溶液を確保するために、各重合反応器の出口にシリンダ型容器を取り付けて一定量の共重合体溶液をシリンダ型容器に満たし、前記シリンダ型容器を反応器から取り外し、共重合体溶液が満たされているシリンダの重量(A)を測定した後、シリンダ型容器に満たされている共重合体溶液を、アルミニウム容器、例えば、アルミニウム皿に移し、共重合体溶液が除去されたシリンダ型容器の重量(B)を測定し、共重合体溶液が入ったアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥された共重合体の重量(C)を測定した後、下記数学式3により計算したものであってもよい。
【0152】
【0153】
前記数学式3中、総固形分の含量は、各反応器から分離した共重合体溶液中の総固形分の含量であり、共重合体溶液100%に対する固形分の重量百分率である。例示的に、総固形分の含量が20重量%である場合、前記数学式3にこれを適用する時には、20/100、すなわち、0.2を代入して計算することができる。
【0154】
一方、前記第1反応器で重合された重合物は、変性反応器の前の重合反応器まで順に移送され、最終的に重合転換率が95%超過となるまで重合が行われてもよい。第1反応器で重合された後、第2反応器、または第2反応器から変性反応器の前の重合反応器までの各反応器毎の重合転換率は、分子量分布の調節のために、各反応器毎に適宜調節して行われてもよい。
【0155】
また、前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと、重合開始剤の有機金属カチオンとが結合された重合体を意味し得る。
【0156】
また、前記(S1)ステップにおける重合は、一例として、100℃以下、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度範囲で行われることができ、この範囲内である場合、重合反応の転換率を高めることができる。
【0157】
本発明において、用語「重合物」は、(S1)ステップまたは(S2)ステップが完了され、活性重合体または変性共役ジエン系重合体が得られる前に、(S1)ステップを行っている中に、各反応器内で重合が行われている重合体形態の中間体を意味し得て、反応器内で重合が行われている、重合転換率が95%以下の重合体を意味し得る。
【0158】
S2ステップ
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの反応において、前記変性剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmolの量で用いてもよい。他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップにおける重合開始剤1モルを基準として、1:0.1~10、1:0.1~5、または1:0.1~1:3のモル比で用いてもよい。
【0159】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は変性反応器に投入してもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器で行ってもよい。他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を、(S2)ステップを行うための変性反応器に移送するための移送部に投入してもよく、前記移送部内で、活性重合体と変性剤の混合により反応が進行されることができる。この際、前記反応は、変性剤が活性重合体に単純結合される変性反応であるか、変性剤を基準として活性重合体が連結されるカップリング反応であってもよい。
【0160】
ゴム組成物
本発明によると、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【0161】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内である場合、引張強度、耐磨耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れる効果がある。
【0162】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよい。この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0163】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0164】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であり、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も高い湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含んでもよい。
【0165】
他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するためのシランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0166】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量が通常の場合よりも低減されることができる。したがって、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内である場合、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化が防止される効果がある。
【0167】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内である場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れる効果がある。
【0168】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0169】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能であり、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0170】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、この範囲内である場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0171】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0172】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0173】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0174】
尚、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0175】
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0176】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0177】
[製造例1]
窒素雰囲気下で、5Lの加圧反応器にn-ブチルリチウム100g(10wt% in n-hexane)を入れ、n-ヘキサン2,000g、1,3-ブタジエン337g、および4-(ジメチルアミノ)スチレン23.0gを添加した後、40℃で20分間反応させることで、重量平均分子量3,100g/molの、アニオン活性末端を有するオリゴマーを14.9重量%含むオリゴマー溶液を製造した。
【0178】
[製造例2]
製造例1において、4-(ジメチルアミノ)スチレンの代わりにN,N-ジメチルビニルベンジルアミン25gを使用したことを除き、前記製造例1と同様に反応させることで、重量平均分子量3,200g/molの、アニオン活性末端を有するオリゴマーを15.1重量%含むオリゴマー溶液を製造した。
【0179】
[実施例1]
3つの連続撹拌液相反応器(CSTR)のうち第1反応器に、n-ヘキサンを4kg/hr、n-ヘキサンに単量体混合物(1,3-ブタジエン80重量%およびスチレン20重量%)が60重量%で溶解された単量体溶液を1.6kg/hr、重合開始剤として、n-ヘキサンに前記製造例1で製造されたオリゴマー溶液を139g/hr、極性添加剤として、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を0.5g/hr、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが15重量%で溶解された溶液を1g/hrの流速で連続的に投入した。この際、反応器の内部温度が50℃になるように維持し、重合転換率が45%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0180】
次いで、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が85%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、前記製造例1で製造されたオリゴマー溶液を146g/hの速度で配管に注入した。
【0181】
その後、第3反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が98%以上となった時に、移送配管を介して第3反応器から第4反応器へ重合物を連続的に供給し、変性剤として、n-ヘキサンにN,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に供給して変性反応を進行した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0182】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を100g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0183】
[実施例2]
実施例1において、第2反応器の重合転換率が95%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、製造例1で製造されたオリゴマー溶液を147g/hの速度で前記配管に投入した点を除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0184】
[実施例3]
実施例1において、第2反応器の重合転換率が75%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、製造例1で製造されたオリゴマー溶液を147g/hの速度で前記配管に投入した点を除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0185】
[実施例4]
実施例1において、第2反応器の重合転換率が80%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、製造例1で製造されたオリゴマー溶液を147g/hの速度で前記配管に投入し、第4反応器に、変性剤として、N-(4-メチルピペラジニル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に投入した点を除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0186】
[実施例5]
3つの連続撹拌液相反応器(CSTR)のうち第1反応器に、n-ヘキサンを4kg/hr、n-ヘキサンに単量体混合物(1,3-ブタジエン80重量%およびスチレン20重量%)が60重量%で溶解された単量体溶液を1.6kg/hr、重合開始剤として、n-ヘキサンに前記製造例2で製造されたオリゴマー溶液を156g/hr、極性添加剤として、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を0.5g/hr、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが15重量%で溶解された溶液を1g/hrの流速で連続的に投入した。この際、反応器の内部温度が50℃になるように維持し、重合転換率が45%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0187】
次いで、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が85%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、前記製造例2で製造されたオリゴマー溶液を147g/hの速度で配管に注入した。
【0188】
その後、第3反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が98%以上となった時に、移送配管を介して第3反応器から第4反応器へ重合物を連続的に供給し、変性剤として、n-ヘキサンにN-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に供給して変性反応を進行した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0189】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を100g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0190】
[実施例6]
実施例5において、第2反応器の重合転換率が70%となった時点で、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ、製造例2で製造されたオリゴマー溶液を147g/hの速度で前記配管に投入し、第4反応器に、変性剤として、n-ヘキサンにN,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に投入した点を除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0191】
[実施例7]
実施例2において、第4反応器に、変性剤として、n-ヘキサンにN-(4-メチルピペラジニル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に投入した点を除き、前記実施例2と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0192】
[比較例1]
実施例1において、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつオリゴマー溶液を投入しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0193】
[比較例2]
実施例6において、第1反応器に、重合開始剤として、オリゴマー溶液の代りにn-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を6.0g/hの速度で投入し、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ重合開始剤を投入しなかったことを除き、実施例6と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0194】
[比較例3]
実施例1において、第1反応器に、重合開始剤として、オリゴマー溶液の代わりにn-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を6.0g/hの速度で投入し、重合転換率が43%となった時点で、前記n-ブチルリチウム溶液を3.0g/hで投入したことを除き、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0195】
[比較例4]
実施例1において、第1反応器に、重合開始剤として、オリゴマー溶液の代わりにn-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を6.0g/hの速度で投入し、第2反応器の重合転換率が80%となった時点で、前記n-ブチルリチウム溶液を2.4g/hで投入したことを除き、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0196】
[比較例5]
実施例5において、第4反応器に、変性剤として、n-ヘキサンに四塩化スズ(SnCl4)が20重量%で溶解された溶液を連続的に投入したことを除き、実施例5と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0197】
[比較例6]
実施例5において、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送しつつ重合開始剤を投入せず、第4反応器に、変性剤として、n-ヘキサンにトリス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に投入したことを除き、実施例5と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(act.Li:変性剤=1:0.5モル比)。
【0198】
実験例
<実験例1>
前記実施例および比較例で製造された各共重合体に対して、スチレン結合の含量および1,2-ビニル結合の含量、重量平均分子量(Mw、X103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、分子量分布曲線、収縮因子、窒素原子の含量、および変性率をそれぞれ測定し、それを下記表1に示した。
【0199】
1)微細構造の分析(スチレン結合の含量(SM)および1,2-ビニル結合の含量(1,2-vinyl))
前記各変性共役ジエン系重合体中のスチレンおよび1,2-ビニル結合の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0200】
NMR測定時に、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用し、試料は、前記溶媒に重合体が0.02Mになるように溶解させて準備した。溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとしてスチレン結合の含量(重量%)と1,2-ビニル結合の含量(重量%)を計算した。
【0201】
2)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(MWD)、分子量分布曲線
GPC(Gel permeation chromatohraph)(PL GPC220、Agilent Technologies)により、下記の条件で重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布曲線を得た。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。
【0202】
-カラム: PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用
-溶媒:テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合して使用
-流速:1mL/min
-試料濃度:1~2mg/ml(THFに希釈)
-注入量:100μl
-カラム温度:40℃
-Detector:Refractive index
【0203】
3)ムーニー応力緩和率(-S/R)およびムーニー緩和面積(MLRA)
Alpha Technologies社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定した。具体的には、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定し、ムーニー粘度を得た。その後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、その絶対値であるムーニー応力緩和率を得た。また、ムーニー緩和面積は、ロータが停止してから1秒後から120秒間のムーニー緩和曲線の積分値であり、下記数学式1により計算した。
【0204】
【0205】
前記数学式1中、
Aはムーニー緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータの作動を止めて1秒後のムーニー切片であり、
aはムーニー緩和率であり、
toはムーニー緩和開始時点であり、
tfはムーニー緩和完了時点である。
【0206】
4)窒素原子の含量(Nの含量)
NSX分析方法により測定した。NSX分析方法は、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定した。
【0207】
具体的に、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得た。得られた試料のareaと前記検量線を用いて窒素原子の含量を計算した。
【0208】
5)変性率(%)
変性率(%)は、クロマトグラフィー測定から得られたクロマトグラムを用いて、下記数学式2により計算した。前記クロマトグラフィー測定として、GPC(Gel permeation chromatohraph)(PL GPC220、Agilent Technologies)を用いて、各共重合体をシクロヘキサン(cyclohexane)に溶解させて試料(1.0mg/ml製造)を製造して移動相貯蔵器に貯蔵し、他の移動相貯蔵器にテトラヒドロフラン(THF)を貯蔵した。前記移動相貯蔵器をデュアル-ヘッドポンプにそれぞれ連結し、先ず、共重合体が溶解されている移動相貯蔵器の溶液を、前記ポンプおよびループの体積が100μlである注入器により、シリカ吸着剤が充填されたカラムに注入した。この際、ポンプの圧力は450psiであり、注入流速は0.7ml/minであった。次に、検出器(ELSD、Waters社)から、共重合体中の未変性共重合体単位がそれ以上検出されないことを確認し、注入開始5分を基準として、前記テトラヒドロフランをポンプにより前記カラムに注入した。この際、ポンプの圧力は380psiであり、注入流速は0.7ml/minであった。検出器から、テトラヒドロフランの注入によって重合体中の変性共重合体単位がそれ以上検出されないことを確認し、第2溶媒の注入を終了した。次に、検出されたクロマトグラムの結果から、下記数学式2により変性率(%)を計算した。
【0209】
【0210】
前記数学式2中、前記未変性共重合体単位のピーク面積は、前記検出器に移送された第1溶液に対するクロマトグラムのピーク面積であり、前記変性共重合体単位のピーク面積は、前記検出器に移送された第2溶液に対するクロマトグラムのピーク面積である。
【0211】
【0212】
前記表1に示されたように、実施例1~7は、本明細書で提示する条件(i)~(vii)を同時に満たしている。
【0213】
しかし、比較例1~6は、分子量分布が2.0以下であるか、窒素原子の含量が100ppm以下、またはムーニー応力緩和率が0.7未満であって、本明細書で提示する条件(i)~(vii)を同時に満たすことができなかった。
【0214】
ここで、比較例1は、実施例1と比較して、重合開始剤を分割投入するステップを行わない製造方法により製造されたものであり、比較例3は、重合開始剤を分割投入するが、重合転換率が50%未満である、43%の時点で投入する製造方法により製造されたものであって、広い分子量分布特性を示すことができず、特に、比較例1は、実施例1と同一の重合開始剤および変性剤を使用したにもかかわらず、重合体中の窒素原子の含量が65%のレベルに急激に減少し、比較例3は、変性率が87%のレベルに著しく減少した。
【0215】
また、比較例6は、実施例5と同一の重合開始剤を使用し、窒素含有変性剤を使用して製造され、重合体中の窒素原子の含量は実施例のレベルに高かったが、分子量分布が2.0未満と狭く、ムーニー応力緩和率が0.7未満であって高分岐化を示した。この際、比較例6は、重合開始剤を分割投入しない製造方法により製造されたものである。
【0216】
上記の結果から、本発明に係る条件(i)~(vii)を同時に満たす変性共役ジエン系重合体は、本明細書で提示する、第1重合反応器での重合転換率を特定時点に調節し、重合開始剤を特定時点で分割投入する重合ステップを含む製造方法により製造されることで、前記条件が同時に調節されて得られることが確認できる。
【0217】
<実験例2>
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、およびそれから製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性、粘弾性特性、および加工性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0218】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとして、下記表2示した配合条件で配合した。表3中の原料は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0219】
【0220】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃~155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機に1次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPG(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して2次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0221】
2)引張特性
引張特性は、ASTM412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時における引張強度および300%伸び時の引張応力(300%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machine 4204(Instron社)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0222】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。この際、低温0℃でのtanδ値が高いほど、ウェットスキッド抵抗性に優れることを意味し、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性(燃費性)に優れることを意味する。下記表3における結果値は、比較例1の測定結果値を基準として指数化して示したものであるため、その数値が高いほど優れることを意味する。
【0223】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた2次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度の測定値が低いほど、加工性特性に優れることを意味する。
【0224】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを使用し、各2次配合物は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて4分間測定した。
【0225】
【0226】
前記表3中、実施例1~7、比較例1および比較例3~6の引張特性および0℃でのtanδは、比較例2の測定値を基準として下記数学式4により計算し、60℃でのtanδは、比較例2の測定値を基準値として下記数学式5により計算した。
【0227】
[数学式4]
INDEX(%)=(測定値/基準値)X100
【0228】
[数学式5]
Index(%)=(基準値/測定値)X100
【0229】
前記表3に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1~7は、比較例1~6に比べて引張特性、ウェットスキッド抵抗性、回転抵抗性、および加工性が何れもバランスよく著しく優れていた。
【0230】
この際、実施例1~7は、本発明で提示する条件(i)~(vii)をすべて満たし、比較例1~6は、上記の条件のうち何れか1つ以上を満たすことができなかった。
【0231】
上記の表1および表3の結果は、本発明の変性共役ジエン系重合体は、本明細書で提示する製造方法により製造されることで、(i)~(vii)で定義される特定条件を同時に満たすことができ、これにより、引張特性、ウェットスキッド抵抗性、回転抵抗性、および加工性がバランスよく改善される効果があることを意味する。