(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】高速打撃による解体装置
(51)【国際特許分類】
B02C 13/06 20060101AFI20240905BHJP
B02C 23/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B02C13/06 ZAB
B02C23/08 A
(21)【出願番号】P 2020169688
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】上田 高生
(72)【発明者】
【氏名】古屋仲 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 達也
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/00-13/31
B02C 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、
ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、該ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段
であって、該回転駆動手段が、該回転軸を回転可能な回転駆動源と、該回転軸を回転方向に付勢する付勢部材とを有する、該回転打撃手段と、
を備え、
前記回転駆動手段により駆動された前記回転軸の周りに前記ハンマー本体が回動して、前記打撃部が前記保持部に保持された前記対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して該対象物を解体
し、
前記付勢部材の付勢力により前記回転軸の回転速度を高めることによって前記ハンマー本体の打撃部の速度を高めて前記対象物を打撃する、解体装置。
【請求項2】
対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、
ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、該ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段と、を備え、
前記回転駆動手段により駆動された前記回転軸の周りに前記ハンマー本体が回動して、前記打撃部が前記保持部に保持された前記対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して該対象物を解体し、
前記対象物を前記保持部に供給する供給手段をさらに備え、
前記保持部は、前記供給手段から第1の位置で前記対象物が受け渡され、前記打撃部が前記保持部に載置された前記対象物を打撃することになる第2の位置に移動し、
前記保持部の第2の位置への移動完了に応じて、前記打撃部を前記対象物に打撃させる、解体装置。
【請求項3】
対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、
ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、該ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段と、を備え、
前記回転駆動手段により駆動された前記回転軸の周りに前記ハンマー本体が回動して、前記打撃部が前記保持部に保持された前記対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して該対象物を解体し、
前記対象物は本体部と蓋部とが相対した構造を有し、該本体部と該蓋部との締結状態を解除する解除手段をさらに備え、
前記対象物は前記解除手段により解除された状態で前記保持部に載置される、解体装置。
【請求項4】
前記打撃部は、前記対象物の打撃時に、前記保持部とは接触しないように構成されてなる、請求項1~3のうちいずれか一項記載の解体装置。
【請求項5】
対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、
ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、該ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段と、を備え、
前記回転駆動手段により駆動された前記回転軸の周りに前記ハンマー本体が回動して、前記打撃部が前記保持部に保持された前記対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して該対象物を解体し、
前記打撃部は、前記打撃部の回転軌跡面に対して垂直の第1の方向に第1の所定の間隙をもって離隔され、前記打撃部の回転軌跡面の径方向に延在する2つの棒状打撃部材を有し、該2つの棒状打撃部材の各々が前記対象物の両端を打撃可能な、解体装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記打撃部の回転軌跡面に対して垂直の第1の方向の長さが、前記打撃部の前記2つの棒状打撃部材の前記第1の所定の間隙よりも小さく、かつ、前記対象物を前記所定の姿勢に載置した場合の該第1の方向の長さよりも小さい、請求項5記載の解体装置。
【請求項7】
前記対象物はその長手方向が前記第1の方向になるように前記保持部に積置され、
前記2つの棒状打撃部材は、前記対象物の長手方向の両端を打撃する、請求項5または6記載の解体装置。
【請求項8】
対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、
ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、該ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段と、を備え、
前記回転駆動手段により駆動された前記回転軸の周りに前記ハンマー本体が回動して、前記打撃部が前記保持部に保持された前記対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して該対象物を解体し、
前記打撃部は、前記対象物の中央部を打撃可能な板状打撃部材を有し、
前記保持部は、前記打撃部の回転軌跡面に対して垂直の第1の方向に第2の所定の間隙をもって離隔された2つの棒状保持部材を有し、
前記第2の所定の間隙は、前記打撃部の板状打撃部材の前記第1の方向の長さよりも大きい、解体装置。
【請求項9】
前記打撃部により打撃された前記対象物が飛翔する方向に、前記対象物が衝突する被衝突部材をさらに備える、請求項1~8のうちいずれか一項記載の解体装置。
【請求項10】
前記対象物が携帯端末である、請求項1~9のうちいずれか一項記載の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等のリサイクル技術に係り、特に、電子機器等を解体する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末の普及により、その廃製品の処理が問題となっている。携帯端末には、電子部品が多数使用されており、それらには金、銀、銅等の貴金属、パラジウム、インジウム、コバルト等のレアメタルが多く含まれている。この回収には、廃製品を粉砕して粉末状にして金属類を選別した後、溶解または溶融して金属イオンや金属として回収する方法がある。
【0003】
しかし、回収費用を低減しつつ回収率を高めるために、粉砕をせずに解体して電池など特定の部品を仕分けして回収することが望ましい。
【0004】
携帯端末では、液晶表示パネルと筐体とが接着剤による接合やネジによる締結によって固定されている。ヘラの先端を接合部分に差し込んで分離したり、回転ドラム内で回転させ繰り返し落下させて衝撃力を加えることにより締結ネジを緩ませたりして解体する方法が知られている(例えば、特許文献1または2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-204514号公報
【文献】特開2013-255901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、接合部分にヘラを順次差し込んで解体しており、特許文献2では、回転ドラム内で繰り返し落下させて衝撃力を加えているので、1台当たりの解体時間を短時間化、つまり高速解体処理が難しいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述した問題を解決するもので、高速解体処理が可能な解体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、対象物を所定の姿勢に載置可能な保持部と、ハンマー本体の基部が回転駆動手段に駆動される回転軸に固定され、上記ハンマー本体の先端に打撃部が設けられた回転打撃手段と、上記回転駆動手段により駆動された上記回転軸の周りに上記ハンマー本体が回動して、上記打撃部が上記保持部に保持された上記対象物の上記主面または側面の所定の位置を打撃して上記対象物を解体する、解体装置が提供される。
【0009】
上記態様によれば、解体装置は保持部に所定の姿勢で載置した対象物を、回転軸に基部が固定されたハンマー本体の打撃部が回動して対象物の主面または側面の所定の位置を打撃して叩き出して解体する。すなわち、解体装置はピンポイントで対象物を打撃して解体することができる。さらに、回転軸の回転速度を調節可能であるので、打撃1回の時間周期も調節可能であり、高速で多数の対象物を解体することができる。また、ピンポイントで打撃することで、内蔵されているバッテリーや電子回路板を破損することなく解体できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る解体装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】一実施形態に係る解体装置の概略構成を示す側面図である。
【
図3】打撃部およびワーク受部の概略構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る解体装置の制御部およびセンサの概略ブロック図である。
【
図5A】一実施形態に係る解体装置の動作の説明図(その1)である。
【
図5B】一実施形態に係る解体装置の動作の説明図(その2)である。
【
図5C】一実施形態に係る解体装置の動作の説明図(その3)である。
【
図5D】一実施形態に係る解体装置の動作の説明図(その4)である。
【
図5E】一実施形態に係る解体装置の動作の説明図(その5)である。
【
図6】打撃部およびワーク受部の変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。なお、複数の図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る解体装置の概略構成を示す平面図である。
図2は、一実施形態に係る解体装置の概略構成を示す側面図であり、(a)は解体室および駆動室の回転軸駆動部の一部の概略構成を示し、(b)は駆動室の回転付勢部の概略構成を示す側面図である。図示の便宜のため一部を省略して示す。構成要素は、図面に示した相対的なサイズを有するものではない。
【0013】
図1および
図2を参照するに、解体装置10は、解体対象物であるワーク11をハンマー12で打撃して解体する解体室13と、ハンマー12を回転駆動するための駆動室14とを含む。解体室13と駆動室14とはそれぞれの架台に設けられ、アンカーボルト等で床面に固定されていることが好ましい。駆動室14の電動モータの振動が解体室13に悪影響を与え難くできる。ワーク11は、フィーチャーフォン、スマートフォン、タブレット等の携帯端末を想定しているが、蓋部と本体部とが相対した構造、例えば、表示部または操作部と本体部とが接合または締結された直方体状の形態を有する電子機器であってもよく、蓋部と筐体とが接合または締結された箱状の電子機器でもよく、複数の部材により筐体と本体部とが構成されている電子機器でもよい。本実施形態では、ワーク11は、表示部と筐体とを有する携帯端末を例として説明する。
【0014】
解体室13は、ワーク11を供給し、矢印の方向に移動するベルトコンベア15と、ベルトコンベア15から受渡し位置でワーク11を受け取り、ワーク11を保持したまま打撃位置に移動するワーク受部16と、ハンマー12の基部が固定された回転軸18と、ハンマー12の打撃部17に打撃されたワーク11が空中に叩き出されて衝突する被衝突板19と、被衝突板19から落下したワーク11を受け止めて矢印の方向に移動して排出するベルトコンベア20とを含む。アクチュエータ27は、ワーク受部16の受渡し位置と打撃位置との移動を行う。アクチュエータ27は、その駆動軸27aをパルスモータやカム等(いずれも不図示)により動作させることができる。
【0015】
駆動室14は、回転軸18を所定の回転位置まで回転駆動する回転駆動部21と、回転軸18を付勢力により高速回転させる回転付勢部22とを含む。回転駆動部21は、電動モータ23により回転軸18を回転駆動する。具体的には、回転駆動部21は、電動モータ23の回転を伝達しプーリ24を回転するギア25と、回転軸18と同軸で独立に回転自在のプーリ26と、プーリ24および26に懸架されたベルト28と、プーリ26の回転面上に突出するように設けられプーリ26とともに回転する片持ちピン29と、回転軸18に固定され、片持ちピン29に押接されて回転軸18を回転可能な受け部材30とを含む。回転軸18は
図2(a)において時計回りのみ回転可能に構成されており、反時計回りには回転しないように構成される。
【0016】
回転付勢部22は、引張りバネ31を含む。引張りバネ31の一端がバネ受部材32を介してブラケット33に固定され、他端がバネ受け部材34を介して回転軸18に固定されたプーリ35の軸心から離れた位置にロッドエンドベアリング36を用いて接続されている。回転軸18、プーリ35およびロッドエンドベアリング36によりクランクを構成する。回転軸18、ハンマー12、受け部材30および回転付勢部22のプーリ35は一体となっている。ブラケット33には、引張りバネ31の初期引張り長さの調整用ボルト33aを設けてもよく、引張りバネ31の本数を変更できるようにしてもよい。これにより、伸張時の引張りバネ31に蓄える引張エネルギを調整することで、ハンマー12の打撃速度を調整できる。
【0017】
このような構成により、回転駆動部21は、電動モータ23の回転駆動力をベルト28によってプーリ26に伝達して片持ちピン29を回動させることによって、片持ちピン29に押接された受け部材30によって回転軸18を回転させる。回転軸18の回転により、回転付勢部22のプーリ35の回転を介して引張りバネ31が伸長される。引張りバネ31が最も伸長した位置(上死点)を過ぎると、引張りバネ31が勢いよく収縮してプーリ35を介して回転軸18を回転させる。これにより、ハンマー12が高速で回転してその先端にある打撃部17がワーク11を打撃する。また、電動モータ23の回転数により、ハンマー12の回転周期を決めることができ、例えば、ハンマー12の回転周期を1回/秒に設定可能である。
【0018】
図3は、打撃部およびワーク受部の概略構成を示す図であり、打撃時の位置関係を示す。
図3の(a)は打撃方向から視た正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図3(a)~(c)を
図1および
図2と合わせて参照するに、ハンマー12は、腕部12aの一端が回転軸18に固定され、他端にワーク11を打撃する打撃部17が設けられる。打撃部17は、基部17aと、基部17aに固定され打撃部17の回転軌跡面に対して垂直方向に間隙D1をもって離隔され、回転軌跡面の径方向に延在する2つの棒状打撃部材17bを有する。
【0019】
ワーク受部16は、ワーク受部材16a、16bの各々が板状部材からなり、側面から視ると(
図3(c))、L字型の形状を形成する。ワーク受部材16a、16bがワーク11の主面11aおよび側面11bを保持する。
【0020】
ワーク受部材16a、16bは、打撃部17の回転軌跡面に対して垂直方向の長さL1が、打撃部17の2つの棒状打撃部材17bの間隙D1よりも小さく(L1<D1)、さらに、間隙D1はワーク11の長辺11cの長さWLよりも小さい(D1<WL)。これにより、2つの棒状打撃部材17bは、ワーク受部16に接触せずにワーク11を打撃することができる。
【0021】
ワーク11は、ワーク受部16にワーク11の長辺11cがハンマー12の回転軌跡面に対して垂直となるように載置される。ワーク11がこのような姿勢に載置されることで、2つの棒状打撃部材17bがワーク11の主面11aの長辺11cの両側の端部付近を短辺11dに沿って確実に打撃して、ワーク11を空中に叩き出すことができる。
【0022】
2つの棒状打撃部材17bは、丸棒でも角棒でもよく特に限定されてない。
図3(c)に示すように、棒状打撃部材17bは、長手方向に垂直の断面形状が、ワーク11に向かって次第に両側に細くなる形状であることが好ましい。これにより、長辺11cの長さが異なるワーク11でもワーク11の長辺11cの両側の端部付近を確実に打撃することができる。
【0023】
図4は、一実施形態に係る解体装置の制御部およびセンサの概略ブロック図である。解体装置10には、ワーク受部16にワーク11が載置されていることを検知するワーク検出用センサ41とハンマー12が打撃待機位置に到達したことを検知するハンマー位置検出用センサ42を有する。各センサ41,42は制御部43と電気的に接続されている。制御部43は、センサがワーク11の検知に応じて供給用のベルトコンベア15の動作開始および停止を行う。制御部43は、センサ42がハンマー12が打撃待機位置に到達したことを検知すると、電動モータ23の回転開始/停止を制御する。
【0024】
図5A~
図5Eは、一実施形態に係る解体装置の動作の説明図であり、各々の図の(a)は解体室および駆動室の回転軸駆動部の一部の概略構成を示す側面図であり、(b)は駆動室の回転付勢部の概略構成を示す側面図である。以下、
図5A~
図5E、
図1、
図2および
図4を参照して解体装置10がワーク11を供給して解体し排出するまでの動作を順に説明する。
【0025】
図5Aは、ワーク11がワーク受部16に載置される際の解体装置10の各要素の配置を示す図である。解体室13では、ワーク受部16がワーク11の受渡し位置で待機する。ベルトコンベア15には、ロボット(不図示)によりワーク11が載置される。ワーク11はベルトコンベア15により搬送され、ワーク受部16にワーク11が載置される。センサ41がワーク受部16にワーク11があることを検知したら、制御部43がベルトコンベア15を停止して次のワーク11を待機させる。
【0026】
駆動室14では、回転駆動部21の電動モータ23の回転動力がギア25、プーリ24およびベルト28により伝達されたプーリ26が回転する。プーリ26の回転により片持ちピン29が受け部材30を押接して回転軸18を回転させる。これにより、ハンマー12が回転しはじめるとともに、回転付勢部22のプーリ35の回転により引張りバネ31が、最も収縮した位置から次第に伸張される。
【0027】
図5Bは、ハンマー12が打撃待機位置に到達した際の解体装置10の各要素の配置を示す図である。ワーク受部16は、ワーク11の受渡し位置から、アクチュエータ27によりワーク11を積置したまま打撃位置に移動する。
【0028】
電動モータ23が回転を続け、これによりハンマー12が回転するとともに、引張りバネ31が伸張される。解体室13の壁面等(不図示)に設置されたセンサ42がハンマー12を検知した場合、制御部43は電動モータ23を停止またはブレーキ(不図示)により回転軸18の回転を停止させて、ハンマー12を停止する。この時、引張りバネ31は、最大限に伸張される上死点TDPの手前の位置に停止する。引張りバネ31は、引張エネルギが最大に蓄えられた状態になる。
【0029】
図5Cは、打撃部17がワーク11を打撃する直前の解体装置10の各要素の配置を示す図である。解体装置10は、
図5Bの配置において、ワーク受部16に設置されたセンサ41がワーク11がワーク受部16にあることを検知し、センサ42がハンマー12を検知した場合、制御部43は打撃準備完了と判断して、制御部43が電動モータ23の回転を開始させる。これにより、回転軸18の回転に応じてプーリ35が回転し回転付勢部22は上死点を過ぎて引張りバネ31が急激に収縮する。これによってプーリ35に連結された回転軸18が高速で回転し、ハンマー12が高速で回動する。打撃部17がワーク受部16に積置されたワーク11を高速で打撃する。この時、打撃部17は、ワーク受部16には接触せずに、2つの棒状打撃部材17bがワーク11の長辺の両端部を打撃する。
【0030】
図5Dは、打撃部17がワーク11を打撃した直後の解体装置10の各要素の配置を示す図である。打撃部17に叩き出されたワーク11は、飛出して被衝突部材19に衝突する。この衝突の衝撃及び
図5Cにおける打撃部17による打撃により、ワーク11は、筐体、表示部、バッテリーおよび基板等に分離して解体される。引張りバネ31は最も収縮した位置まで収縮する。電動モータ23は、回転を続ける。
【0031】
図5Eは、解体したワーク11e,11fの排出と次のワーク11の供給時の解体装置10の各要素の配置を示す図である。ワーク11は、解体され排出のためのベルトコンベア20に落下する。解体されたワーク11は、通常、筐体、表示部、バッテリーおよび基板に解体される。これらを図示の便宜のため省略して、表示部11eと筐体11fとを示している。解体された表示部11e、筐体11f等は、ベルトコンベア20により解体室13から排出され、次の工程、例えば粉砕室(不図示)に移される。また、ワーク受部16がワーク11の受渡し位置移動し待機する。次のワーク11がベルトコンベア15により供給され、ワーク受部16に載置される。回転付勢部22は引張りバネ31が、最も収縮した位置(下死点BDP)で停止し、プーリ35および回転軸18は停止し、ハンマー12も停止する。この後、電動モータ23は回転を続け、プーリ26が回転して片持ちピン29が回動し、受け部材30を押接し始めると、回転軸18が回転し始め、ハンマー12も回動し始める。
図5Aに示す解体装置の各要素の配置に戻る。
図5A~
図5Eで説明した動作を繰り返すことで、ワーク11の所定の位置を打撃して高速で確実に解体することができる。
【0032】
図6は、打撃部およびワーク受部の変形例の概略構成を示す図であり、打撃時の位置関係を示す。
図6の(a)は打撃方向から視た正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図6(a)~(c)を参照するに、ハンマー12は、腕部12aの一端が回転軸18に固定され、他端にワーク11を打撃する打撃部117が設けられる。打撃部117は、その回転軌跡面に対して垂直な主面を有する板状部材であり、ワーク11の側面の中央部を打撃可能である。
【0033】
ワーク受部116は、2組のワーク受部材116b,116cとそれを支持するワーク受部材116aから形成される。ワーク受部材116b,116cは、側面から視る(
図6(c))とL字型の形状を形成する。2つのL字型のワーク受部材116b,116cは、打撃部117の回転軌跡面に対して垂直な方向に間隙D2をもって離隔される。ワーク受部材116b,116cは、丸棒でも角棒でもよく特に限定されない。間隙D2は、ワーク11の短辺WSの長さよりも小さく設定される。ワーク受部116は、2組のワーク受部材116b,116cがワーク11の主面11aおよび側面11bの端部付近を保持する。打撃部117は、その回転軌跡面に対して垂直な方向の長さL2を有し、ワーク受部材116bの間隙D2は、長さL2よりも大きく(つまりD2>L2)形成される。これにより、打撃部117は、ワーク受部116に接触せずにワーク11を打撃することができる。
【0034】
本実施形態によれば、解体装置10は、ワーク受部16に所定の姿勢で載置したワーク11を、回転軸18に基部が固定されたハンマー12の打撃部17,117が回動してワーク11の所定の位置を打撃して叩き出して解体する。すなわち、解体装置10はピンポイントでワーク11を打撃することができる。これにより、内蔵されたバッテリーや電子回路板を破損することなく、解体できる。また、電動モータ23の回転により引張りバネ31を伸張して引張エネルギを蓄積して、打撃のタイミングで引張エネルギを解放してハンマー12を急速に回動させることで、高速度でワーク11を打撃できる。打撃部17,117は、打撃時にワーク11を載置するワーク受部16に接触しないように構成されているので、打撃部17,117の運動エネルギを打撃力(衝撃力)として無駄なく利用できる。さらに、ハンマー12による打撃周期は、電動モータ23の回転数、ギア25等により調整可能で、毎秒1回の打撃による毎秒1台の解体が可能である。
【0035】
なお、ワーク11は、供給用のベルトコンベア15に供給される際に表示部と筐体との締結状態または接合状態を解除されていることが、解体装置10で解体し易い点で好ましい。
【0036】
解体装置10は、供給用のベルトコンベア15の前段に、ワーク11の本体部と蓋部との締結状態または接合状態を解除する解除部を設けることが好ましい。以下、図示を省略する。解除部は、ワーク11を所定の姿勢となるように位置決めする位置決め機構と、位置決めされたワーク11の各辺をその端部から締結状態または接合状態を解除するのに十分な所定の位置で切断する切断機構を備える。所定の位置は、安全に切断可能な点で、ワーク内部のリチウム電池等の電池を干渉しない位置であることが好ましい。
【0037】
[実施例]
実施例の解体装置として、上記実施形態の解体装置10の引張りバネ31として、2本のバネ定数30N/mmを用い、初期張力を410Nに設定した。
図3に示した打撃部17を用いて、ハンマー12は、回転軸18中心から打撃部17による打撃点までの長さを355mmに設定した。打撃部17の重量を40gとした。高速度カメラによる分析の結果、打撃時のハンマー12の打撃部17の速度は、20.0m/秒であった。
【0038】
スマートフォン(Apple社製iPhone(登録商標)4、4S、5、5S、6;SHARP社製203SH;TCL社製ALCATEL(登録商標) one touch IDOL2;HTC社製J One HTL22)の両長辺の端部から2~3mmの位置で切断したワーク計20台を用いて、本実施例の解体装置によりワークの両短辺の端部付近に沿って打撃を加えたところ、ワーク20台の全てを内部の電池が損傷なく解体することができた。つまり、解体成功率100%であった。
【0039】
[参考例]
参考例の解体装置として、チェーンの回転により対象物に打撃を与えて破砕するクロスフローシュレッダ(佐藤鉄工社製筐体破壊試験装置解砕機(12B-4))を用いてスマートフォンを解体する実験を行った。参考例の解体装置は、内寸法(径496mm、高さ250mm)の破砕室を有するクロスフローシュレッダの破砕室側面に、幅250mm、高さ190mmの蓋のない排出部を設けて、チェーンにより投入したスマートフォンが1~2回の打撃が与えられて排出され、過粉砕されないように改造したものである。スマートフォンは、側部両端から2~3mmの位置を切断したものを用いた。参考例の解体装置により、44台のスマートフォンを解体したところ19台(43%)が内部の電池が損傷なく解体でき(つまり解体成功)、残りのスマートフォンは電池が損傷し、または電池が筐体から分離されなかった(つまり解体失敗)。
【0040】
以上の結果により、実施例の解体成功率は参考例の解体成功率の2倍以上であり、かつ全て解体できたことから、実施例の解体装置が従来の解体装置よりも極めて優れていることが分かる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。実施形態では、1本の回転軸18が駆動室14から解体室13に亘って設けられていたが、それぞれに回転軸を設け、ジョイント等で連結するようにしてもよい。また、例えば、本発明の解体装置は、解体の対象としては、上記のワーク11に加えて、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン等のデジタル機器にも適用できる。本発明の解体装置は、リサイクルプラントに組み込むことができ、携帯端末等の廃棄された製品の自動解体処理に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 解体装置
11 ワーク
12 ハンマー
13 解体室
14 駆動室
16 ワーク受部
17 打撃部
18 回転軸
21 回転駆動部
22 回転付勢部
23 電動モータ
31 引張りバネ