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  • 特許-基板保持装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240905BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C14/50 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023535151
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2022019727
(87)【国際公開番号】W WO2023286427
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021118302
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】高橋 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】阪上 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041903(JP,A)
【文献】特開2002-141332(JP,A)
【文献】特開平09-283608(JP,A)
【文献】特開2020-102619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の真空処理が実施される真空雰囲気中の真空チャンバ内にて被処理基板を保持する基板保持装置であって、
被処理基板の外周縁部が当接する第1の環状壁及びこの第1の環状壁の内方に配置される第2の環状壁が突設されたサセプタと、
第1及び第2の各環状壁に夫々当接した被処理基板に対し第1及び第2の各環状壁に向けて面圧を印加する面圧印加手段と、
被処理基板と第1及び第2の各環状壁とで区画されるサセプタ内の外方空間と、被処理基板と第2の環状壁とで区画されるサセプタ内の内方空間とに所定のガスを導入して外方空間と内方空間とを夫々ガス雰囲気とするガス導入手段とを備えるものにおいて、
第2の環状壁に、外方空間と内方空間とのガス雰囲気分離が可能なコンダクタンス値を有して外方空間と内方空間とを連通する連通路が形成され
被処理基板に当接する第2の環状壁の上面に凹溝が形成され、この凹溝で連通路が形成されることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記凹溝の内側面は、凹凸を非接触で噛み合わせてラビリンス構造を持つことを特徴とする請求項記載の基板保持装置。
【請求項3】
所定の真空処理が実施される真空雰囲気中の真空チャンバ内にて被処理基板を保持する基板保持装置であって、
被処理基板の外周縁部が当接する第1の環状壁及びこの第1の環状壁の内方に配置される第2の環状壁が突設されたサセプタと、
第1及び第2の各環状壁に夫々当接した被処理基板に対し第1及び第2の各環状壁に向けて面圧を印加する面圧印加手段と、
被処理基板と第1及び第2の各環状壁とで区画されるサセプタ内の外方空間と、被処理基板と第2の環状壁とで区画されるサセプタ内の内方空間とに所定のガスを導入して外方空間と内方空間とを夫々ガス雰囲気とするガス導入手段とを備えるものにおいて、
第2の環状壁に、外方空間と内方空間とのガス雰囲気分離が可能なコンダクタンス値を有して外方空間と内方空間とを連通する連通路が形成され、
処理基板に当接する第2の環状壁の少なくとも上端部分は、所定幅を持つ環状領域内に林立させた複数本の支柱を有し、互いに隣接する支柱間の隙間で連通路が形成されることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
前記外方空間と前記内方空間とを夫々臨む前記サセプタの表面部分に、前記第1及び第2の各環状壁と同等以下の高さで複数本の支持片が林立されることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載の基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の真空処理が実施される真空雰囲気中の真空チャンバ内にて被処理基板を保持する基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板保持装置として、真空雰囲気中での真空処理の間、ガラス基板やシリコンウエハといった被処理基板を吸着保持するために静電チャックを備えるものが一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。このものは、チャック用の電極と加熱冷却手段とを組み付けた基台と、基台の上面に設けられるサセプタとしてのチャックプレートとを有する。チャックプレートは、ベース板部とベース板部の外周縁部に突設された環状壁(リブ部)と、環状壁より内方に位置するベース板部の上面部分に林立される複数本の支持片とで構成される。そして、被処理基板を環状壁の上面にその外周縁部が当接するように設置した後、チャック用の電極に給電することで発生する静電気力により、外周縁部に対し環状壁に向けて面圧が印加されて被処理基板がチャックプレートに(吸着)保持される。
【0003】
また、上記従来例の基板保持装置では、基台からチャックプレートに通じるガス通路が形成され、ガス通路を介してアルゴンガスやヘリウムガスといったアシストガス(所定のガス)を被処理基板の裏面とベース板部の上面と環状壁とで区画される空間に導入し、この空間を所定圧力のガス雰囲気にすることができる。これにより、被処理基板と基台との間の熱抵抗を下げて、効率よく被処理基板を加熱または冷却することができる。通常は、被処理基板の外周縁部と環状壁の上面との間にOリングなどのシール部材を何ら設けていない。このため、面圧を印加して被処理基板の外周縁部を環状壁の上面にその全周に亘って面接触させた(吸着)保持状態でも、真空処理時の真空チャンバ内の圧力との差圧でアシストガスが漏洩することとなる。このことは、被処理基板が、比較的高い吸着力を作用させることができないガラス基板である場合、より顕著になる。
【0004】
そこで、被処理基板の外周縁部を当接する環状壁を第1の環状壁とし、この第1の環状壁の内方に、被処理基板の部分が更に当接する第2の環状壁を少なくとも1個突設したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。そして、真空雰囲気中での真空処理の間、被処理基板と第1及び第2の各環状壁とで区画されるチャックプレート内の外方空間と、被処理基板と第2の環状壁とで区画されるチャックプレート内の内方空間とにアシストガスを夫々導入して外方空間と内方空間とを同等の圧力範囲のガス雰囲気とする。これにより、外方空間と内方空間との間に圧力差が殆どないことで、特に内方空間からのアシストガスの漏洩が抑制され、アシストガスの漏洩量を可及的に少なくすることができる(言い換えると、チャックプレートに対する被処理基板のシール性が向上する)。
【0005】
然しながら、上記従来例のような構成を採用すると、真空雰囲気中での真空処理完了後に、外方空間及び内方空間へのアシストガスの導入を停止しても、内方空間に残るアシストガスが円滑に排出されないという問題を招来する。このような場合、被処理基板に印加した面圧を開放しても、チャックプレートに被処理基板が貼り付き、チャックプレートから被処理基板を取り外すとき(例えば、リフトピンで持上げるとき)に、被処理基板が振動したり、破損したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-123810号公報
【文献】特表2020-512692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、被処理基板と環状壁のシール性が向上するという機能を損なうことなく、導入されたアシストガスを円滑に排出できるようにした基板保持装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、所定の真空処理が実施される真空雰囲気中の真空チャンバ内にて被処理基板を保持する本発明の基板保持装置は、被処理基板の外周縁部が当接する第1の環状壁及びこの第1の環状壁の内方に配置される第2の環状壁が突設されたサセプタと、第1及び第2の各環状壁に夫々当接した被処理基板に対し第1及び第2の各環状壁に向けて面圧を印加する面圧印加手段と、被処理基板と第1及び第2の各環状壁とで区画されるサセプタ内の外方空間と、被処理基板と第2の環状壁とで区画されるサセプタ内の内方空間とにアシストガスを導入して外方空間と内方空間とを夫々ガス雰囲気とするガス導入手段とを備え、第2の環状壁に、外方空間と内方空間とのガス雰囲気分離が可能なコンダクタンス値を有して外方空間と内方空間とを連通する連通路が形成されることを前提としている。
【0009】
以上によれば、被処理基板の外周縁部が第1の環状壁の上面に当接すると共に、その内方に位置する被処理基板の部分が第2の環状壁の上面に当接する姿勢で被処理基板を設置した後、第1及び第2の各環状壁に向けて被処理基板に対して面圧を印加することで、被処理基板をサセプタに保持させる。真空雰囲気中での真空処理中には、ガス導入手段により外方空間と内方空間とにアシストガスを導入して外方空間と内方空間とを互いに同等の圧力範囲としたガス雰囲気とする。このとき、真空チャンバ内の圧力との差圧で、外方空間に導入されるアシストガスの真空チャンバ内への漏洩は完全に防止できないため、この外方空間が所定の圧力範囲に維持されるようにアシストガスを導入し続ける。一方、外方空間と内方空間とが互いに雰囲気分離された同等の圧力範囲のガス雰囲気になると、内方空間からのアシストガスの漏洩が殆ど抑制されるため、内方空間へのガスの導入は停止することができる。そして、真空雰囲気中での真空処理完了後には、外方空間(場合によっては、内方空間)へのアシストガスの導入を停止する。すると、真空チャンバ内の圧力との差圧で外方空間に残るガスが排出されていき、これに伴って外方空間内の圧力が低下することで外方空間と内方空間との間の圧力差で、内方空間に残るガスが連通路を通って外方空間へと積極的に排出されるようになる。
【0010】
このように本発明では、第2の環状壁に外方空間と内方空間とを連通する連通路を設けたことで、内方空間に残るガスを円滑に排出でき、被処理基板に印加した面圧を開放したときの被処理基板の貼り付きといった不具合を解消することができる。しかも、連通路のコンダクタンス値を外方空間と内方空間とのガス雰囲気分離が可能なものに設定されているため、被処理基板と環状壁のシール性が向上するという機能が損なわれない。
【0011】
ここで、本発明は、被処理基板に当接する第2の環状壁の上面に凹溝が形成され、この凹溝で連通路が形成されることを特徴とする。このような構成を採用したことで、外方空間と内方空間とのガス雰囲気分離が可能なコンダクタンス値を有する連通路を実現することができる。この場合、凹溝の内側面は、凹凸を非接触で噛み合わせてラビリンス構造を持つ構成としてもよい。これによれば、連通路を長く設定できることで、例えば、連通路の幅(断面積)を大きくし、内方空間に残るガスをより一層円滑に排出でき、有利である。他方で、本発明は、被処理基板に当接する第2の環状壁の少なくとも上端部分は、所定幅を持つ環状領域内に林立させた複数本の支柱を有し、互いに隣接する支柱間の隙間で連通路が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記外方空間と前記内方空間とを夫々臨む前記サセプタの表面部分に、前記第1及び第2の各環状壁と同等以下の高さで複数本の支持片が林立される構成を採用すれば、外方空間と内方空間とに導入されるガスを拡散させて、被処理基板をその全面に亘って略均等に加熱または冷却でき、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の基板保持装置を備えるスパッタリング装置の模式断面図。
図2図1中に一点鎖線で示す拡大部の平面図。
図3】変形例に係る連通路を示す、図2に対応する平面図。
図4】(a)及び(b)は、他の変形例に係る連通路の断面図及び平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、被処理基板を矩形の輪郭を持つガラス基板(以下、「基板Sw」という)、面圧印加手段を静電気力により吸着力を加える静電チャック、サセプタをチャックプレート、また、真空処理を基板Swの一方の面に所定の薄膜をスパッタリング法による成膜処理とし、真空雰囲気中の真空チャンバ内にて基板Swを保持する本発明の基板保持装置の実施形態を説明する。以下において、上、下といった方向を示す用語は、成膜処理時の基板Swの姿勢を示す図1を基準にする。
【0015】
図1を参照して、スパッタリング装置Smは、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の上面開口には、カソードユニット2が着脱自在に取付けられている。カソードユニット2は、ターゲット21と、ターゲット21の上方に配置される磁石ユニット22とで構成されている。ターゲット21は、バッキングプレート21aに装着した状態で、そのスパッタ面21bを下方に向けた姿勢で、真空チャンバ1の上壁に設けた真空シール兼用の絶縁体31を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。ターゲット21にはまた、スパッタ電源21cからの出力21dが接続され、ターゲット21のスパッタリング時、ターゲット種に応じて負の電位を持つ所定電力や交流電力が投入できるようにしている。磁石ユニット22は、ターゲット21のスパッタ面21bの下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面21bの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
真空チャンバ1の側壁にはガス導入口11が開設され、ガス導入口11には、スパッタガスを導入するガス管4が接続され、ガス管4がマスフローコントローラ41を介して図示省略のガス源に連通している。スパッタガスとしては、真空チャンバ1にプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスや、反応性スパッタリングの際に導入される反応ガスが挙げられる。真空チャンバ1の下壁13にはまた、排気口12が形成され、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどで構成される真空ポンプPからの排気管P1が接続されている。真空ポンプPにより真空チャンバ1内を一定速度で真空排気し、スパッタリング時にはスパッタガスを導入した状態で真空チャンバ1を所定圧力に保持できるようにしている。そして、真空チャンバ1の下部には、ターゲット21に対向させて本実施形態の基板保持装置SHが配置されている。
【0017】
基板保持装置SHは、真空チャンバ1の下壁13に設けた絶縁体32を介して設置される、基板Swに対応する矩形の上面を持つ金属製の基台5と、この基台5上に設けられ、基板Swより一回り小さい輪郭を持つチャックプレート6とを有する。基台5には、静電チャック用の電極51が設けられ、図外のチャック電源から電極51に所定の直流電圧を印加すると、チャックプレート6上に基板Swが静電吸着される。基台5にはまた、図外のチラーユニットに接続されて冷媒の循環が可能な冷媒循環路52が形成されると共に、ホットプレートや電熱線などの加熱機構53が組み付けられ、基板Swの加熱または冷却により基板Swを室温以上の所定温度範囲に制御することができる。
【0018】
図2も参照して、チャックプレート6は、例えば窒化アルミ製であり、その外周端部に所定高さで突設され、基板Swの下面外周縁部がその全長に亘って当接する第1の環状壁61と、第1の環状壁61から等間隔を置いたその内方の所定位置に、第1の環状壁61と同等の高さで突設され、下面外周縁部より内方に位置する基板Swの部分がその全長に亘って当接する第2の環状壁62とを備える。この場合、第2の環状壁62は、チャックプレート6の中心から、チャックプレート6の中心から第1の環状壁61までの距離の50%以上離れた位置に設けることが好ましい。そして、チャックプレート6上に基板Swをその成膜面を上側に向けて設置し、チャックプレート6上に基板Swを静電吸着すると、基板Swと第1及び第2の各環状壁61,62とで区画されるチャックプレート6内の外方空間63と、基板Swと第2の環状壁62とで区画されるチャックプレート6内の内方空間64とが画成される。なお、第2の環状壁62の更に内方に後述の連通路を設けた少なくとも1個の環状壁を設けることもできるが、ここでは説明は省略する。
【0019】
基台5には、外方空間63と内方空間64とに夫々通じるガス通路71,72が形成され、マスフローコントローラ71a,72aで流量制御されたヘリウムガスやアルゴンガスといったアシストガスを導入することができ、外方空間63と内方空間64とを所定圧力のガス雰囲気にすることができる。この場合、ガス通路71,72やマスフローコントローラ71a,72aが本実施形態のガス導入手段を構成する。これにより、基板Swと基台5との間の熱抵抗を下げて、効率よく基板Swを加熱または冷却することができる。また、外方空間63と内方空間64とを夫々臨むチャックプレート6の表面(上面)部分には、第1及び第2の各環状壁61,62と同等以下の高さで複数本の支持片65が林立され、チャックプレート6上に基板Swを静電吸着したときに、基板Swが各支持片65で支持されると共に、外方空間63と内方空間64とに後述のアシストガスが夫々導入されたとき、全体に亘ってアシストガスが拡散されるようにしている。また、第2の環状壁62の上面には、外方空間63と内方空間64とを線状に結ぶように同一形態の凹溝62aが複数個形成されている。本実施形態の連通路を構成する各凹溝62aの横幅や深さは、外方空間63と内方空間64とのガス雰囲気分離が可能なコンダクタンス値を有するように適宜設定される。
【0020】
以上によれば、基板Swの外周縁部が第1の環状壁61の上面に当接すると共に、その内方に位置する基板Swの部分が第2の環状壁62の上面に当接する姿勢で基板Swを設置した後、図外のチャック電源から電極51に所定の直流電圧を印加すると、チャックプレート6上に基板Swが静電吸着(保持)される。スパッタガスを所定流量で導入した真空雰囲気の真空チャンバ1内でターゲット21に電力投入して基板Swに所定の薄膜を成膜する場合には、ガス通路71,72を介して外方空間63と内方空間64とにアシストガスを夫々導入して外方空間63と内方空間64とを互いに同等の圧力範囲としたガス雰囲気とする。このとき、真空チャンバ内1の圧力との差圧で、外方空間63に導入されるガスの真空チャンバ1内への漏洩は完全に防止できないため、この外方空間63が所定の圧力範囲に維持されるように、一方のマスフローコントローラ71aを制御してアシストガスを導入し続ける。
【0021】
一方、外方空間63と内方空間64とが互いに雰囲気分離された同等の圧力範囲のガス雰囲気になると、内方空間64からのアシストガスの漏洩が殆ど抑制されるため、内方空間64へのガスの導入は停止してもよい。そして、真空雰囲気中での真空処理完了後には、外方空間63(場合によっては、内方空間64)へのガスの導入を停止する。すると、真空チャンバ1内の圧力との差圧で外方空間63に残るガスが排出されていき、これに伴って外方空間63内の圧力が低下することで、外方空間63と内方空間64との間の圧力差で、内方空間64に残るガスが各凹溝62aを通って外方空間63へと積極的に排出されるようになる。その結果、内方空間64に残るガスを円滑に排出でき、基板Swに印加された静電気力を開放したときの基板Swの貼り付きといった不具合を解消することができる。しかも、各凹溝62aのコンダクタンス値は外方空間63と内方空間64とのガス雰囲気分離が可能なものに設定されているため、基板Swと第1及び第2の各環状壁61,62のシール性が向上するという機能が損なわれない。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、面圧印加手段を静電気力により吸着力を加える静電チャック、サセプタをチャックプレート6としたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、所謂メッカチャックなどでサセプタに対して基板Swに面圧を印加するものにも本発明は適用することができる。また、上記実施形態では、連通路として、第2の環状壁62の上面に外方空間63と内方空間64とを線状に結ぶ各凹溝62aを形成したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0023】
同一の部材、要素に同一の符号を付した図3に示すように、変形例に係る連通路は、第2の環状壁62の上面に形成される凹溝62bで構成されるが、平面方向にて凹凸を非接触で噛み合わせてラビリンス構造としている。これによれば、外方空間63から内方空間64に至る連通路を長く設定できることで、例えば、連通路の幅(断面積)を大きくし、内方空間64に残るガスをより一層円滑に排出でき、有利である。他方で、図4に示すように、第2の環状壁62の上端部分は、所定幅を持つ環状領域内に千鳥状に林立させた複数本の円柱状の支柱62cを有し(言い換えると、第2の環状壁62の上面を上下方向に凹凸を繰り返す形状とし、凹部62dが外方空間63と内方空間64とに夫々連通するようにする)、互いに隣接する支柱62c間の隙間62dで連通路が形成されるようにしてもよい。この場合、各支柱62cの上面の面積や各支柱62c相互の間隔は、基板Swとのシール性や、外方空間63と内方空間64とのガス雰囲気を考慮して適宜設定され、このとき、支柱62cの上面は、支持片65の上面より高い位置に設定され、各支柱62c上面と基板Swとのシール性が確実に確保されるようにしている。また、凹溝62a,62bや支柱62cを第2の環状壁62の上面に形成せず、特に図示して説明しないが、第2の環状壁62の上面を第1の環状壁61の上面より粗い表面粗さとし、第2の環状壁62の上面とこれに当接する基板Swの部分との間の隙間で連通路が形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
SH…基板保持装置、Sw…基板(被処理基板)、1…真空チャンバ、51…静電チャック用の電極(面圧印加手段)、6…(サセプタ)、61…第1の環状壁、62…第2の環状壁、6…外方空間、64…内方空間、62a,62b…凹溝(連通路)、62c…支柱、62d…支柱間の隙間(連通路)、65…支持片、71,72…ガス通路(ガス導入手段)、71a,72a…マスフローコントローラ(ガス導入手段)。
図1
図2
図3
図4