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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240906BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240906BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240906BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240906BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20240906BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02J7/34 A
H02J1/00 304H
H02J7/00 A
H02J7/00 303A
H02J7/35 E
H02M3/07
H02M3/155 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021552389
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038596
(87)【国際公開番号】W WO2021075419
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019190049
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】丹沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀樹
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195651(JP,A)
【文献】特開2003-284249(JP,A)
【文献】特開2013-27140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 1/00
H02J 7/00
H02J 7/35
H02M 3/07
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部エネルギを電気エネルギに変換して第1電圧として出力する発電素子と、
前記発電素子に対して直列に接続されると共に第2電圧を出力する二次電池と、
前記第1電圧及び前記第2電圧を受けて、負荷回路に電力を出力する電力変換部と、を備え、
前記電力変換部は、
前記発電素子及び前記二次電池に対して直列に接続される電圧変換部と、
前記電圧変換部に接続される蓄電部と、
前記蓄電部を前記負荷回路に接続する第1出力端子と、
前記蓄電部を前記二次電池に接続する第2出力端子と、を有する、電源装置。
【請求項2】
前記電圧変換部は、前記発電素子から前記第1電圧を受けると共に前記二次電池から前記第2電圧を受けて、前記第1電圧と前記第2電圧とを足し合わせた第3電圧を前記第2電圧以上前記第3電圧以下である第4電圧に変換する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記蓄電部は、前記第4電圧に基づく電力を蓄積する請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電力変換部は、前記蓄電部から前記二次電池へ電力を供給する充電状態と、前記蓄電部から前記二次電池への電力の供給を停止する非充電状態と、を相互に切替可能である、請求項1~3の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記二次電池の一端は、接地電位に接続され、
前記二次電池の他端は、前記発電素子及び前記電力変換部に接続され、
前記発電素子の一端は、前記二次電池に接続され、
前記発電素子の他端は、前記電力変換部に接続される、請求項1~4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記発電素子から前記電力変換部へ電力を受け渡すインピーダンス調整部をさらに備え、
前記インピーダンス調整部は、
前記発電素子に接続される入力端子と前記電力変換部に接続される出力端子とを有する第1回路部と、
前記第1回路部に接続される第1接続点と、接地電位に接続される第2接続点と、前記第1接続点及び前記第2接続点の間に接続されるキャパシタと、を有する第2回路部と、を有し、
前記第2回路部が含む出力抵抗の大きさは、前記発電素子が含む出力抵抗の大きさより小さい、請求項5に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今までに利用されることのなかった振動または熱といった環境エネルギを活用する技術が注目されている。このような技術は、エナジー・ハーベストと呼ばれる。エナジー・ハーベストは、いわゆるIoT(物のインターネット:Internet of Things)のためのセンサに適用する電源技術として注目を集めている。例えば、エナジー・ハーベスト技術を適用したセンサは、装置が設置された環境に存在する振動または熱から回収されたエネルギを利用して駆動する。エナジー・ハーベストに関する技術として、特許文献1~3及び非特許文献1、2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-172377号公報
【文献】特許第534052号
【文献】特許第588008号
【非特許文献】
【0004】
【文献】アントニオ・カルロス 著(Antonio Carlos M.de Queiroz)、「ベネットダブラー誘導起電機の応用を用いた静電振動エナジーハーベスティング」(Electrostatic Vibrational Energy Harvesting Using a Variation Bennet’s Doubler)、アイ・トリプル・イー(IEEE)、2010年、pp. 404-407。
【文献】丹沢徹 著、「スイッチトキャパシタ電圧増倍器の革新」、アイ・トリプル・イー ソリッドステート サーキット マガジン(IEEE SOLID STATE CIRCUITES MAGAZINE)、アイ・トリプル・イー(IEEE)、2016年9月2日、pp. 63-73。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にエナジー・ハーベスト技術を用いて得られた電力は、微弱である。従って、センサまたは通信ICといった機器を動作させるためには、電力が不足する。そこで、例えば、昇圧回路を用いて機器が要求する電圧まで昇圧する。しかし、昇圧回路は、半導体素子により構成されるスイッチング回路である。従って、昇圧回路に与えられる電圧が低すぎる場合には、昇圧回路の変換効率が著しく低下することがある。例えば、非特許文献1に開示された技術は、発電素子が発生した低電圧の電力をICが要求する電圧の電力に変換するとき、変換効率が低いという問題がある。その結果、要求される電圧を効率よく出力できない場合が生じ得る。
【0006】
さらに、エナジー・ハーベスト技術は、周囲の環境からエネルギを回収することにより、継続的な外部電力の供給又は定期的な電池交換を必要とせず、長期間動作し続けることも望まれる。非特許文献2に開示された技術は、振動発電素子が発生した電力をバッテリの電圧を用いて昇圧することによってエネルギを増加させている。バッテリの電力を他のICが用いる場合、バッテリの出力電圧は、一定であることが望ましい。従って、非特許文献2に開示された技術は、バッテリの長寿命化には寄与しない。
【0007】
そこで、本発明は、所望の電力を長期間に亘って出力可能な電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態である電源装置は、外部エネルギを電気エネルギに変換して第1電圧として出力する発電素子と、発電素子に対して直列に接続されると共に第2電圧を出力する二次電池と、第1電圧及び第2電圧を受けて、負荷回路に電力を出力する電力変換部と、を備える。電力変換部は、発電素子及び二次電池に対して直列に接続される電圧変換部と、電圧変換部に接続される蓄電部と、蓄電部を負荷回路に接続する第1出力端子と、蓄電部を二次電池に接続する第2出力端子と、を有する。
【0009】
電源装置は、発電素子が出力する第1電圧と二次電池が出力する第2電圧とを電力変換部が受ける。電力変換部は、電圧変換部を有する。従って、第1電圧と第2電圧とが足し合わされた第3電圧を降圧することが可能になる。その結果、電圧の降下に応じて、電力変換部が受けた電流を増やすことができる。電圧を降下させると共に電流を増加させることによって、電力変換部は、負荷回路に出力用電力を出力すると共に、二次電池に充電用電力を出力することが可能になる。蓄積部が蓄積する電力は、第1電圧と第2電圧とが足し合わされた電圧に基づいている。その結果、蓄積部が蓄積する電力から配分される出力用電力は、第1電圧よりも高い電圧として出力することが可能である。従って、電源装置は、所望の電力を負荷回路に対して出力することができる。そのうえ、二次電池には、充電用電力が出力される。従って、発電素子の電圧を高めるために要する電力が実質的に低減する。つまり、二次電池による電圧をアシスト(補助)する機能を長期間に亘って維持することができる。
【0010】
一形態の電源装置の電圧変換部は、発電素子から第1電圧を受けると共に二次電池から第2電圧を受けて、第1電圧と第2電圧とを足し合わせた第3電圧を第2電圧以上第3電圧以下である第4電圧に変換してもよい。この構成によれば、第2電圧以上第3電圧以下である第4電圧を負荷回路に出力することができる。
【0011】
一形態の電源装置の蓄電部は、第4電圧に基づく電力を蓄積してもよい。この構成によれば、蓄電部から負荷回路に第4電圧を出力することができる。
【0012】
一形態の電源装置の電力変換部は、蓄電部から二次電池へ電力を供給する充電状態と、蓄電部から二次電池への電力の供給を停止する非充電状態と、を相互に切替可能であってもよい。この構成によれば、負荷回路が電力を要求しないタイミングであるとき、二次電池へ電力を送ることにより二次電池を充電する動作と、二次電池へ電力を送らず蓄電部に電力を蓄積する動作と、を行うことができる。
【0013】
一形態の電源装置の二次電池の一端は、接地電位に接続されてもよい。二次電池の他端は、発電素子及び電力変換部に接続されてもよい。発電素子の一端は、二次電池に接続されてもよい。発電素子の他端は、電力変換部に接続されてもよい。この構成によれば、二次電池を好適に充電することができる。
【0014】
一形態の電源装置は、発電素子から電力変換部へ電力を受け渡すインピーダンス調整部をさらに備えてもよい。インピーダンス調整部は、発電素子に接続される入力端子と電力変換部に接続される出力端子とを有する第1回路部と、第1回路部に接続される接続点と、接地電位に接続される接地点と、接続点及び接地点の間に接続されるキャパシタと、を有する第2回路部と、を有してもよい。第2回路部が含む出力抵抗の大きさは、発電素子が含む出力抵抗の大きさより小さくてもよい。この構成によれば、インピーダンス調整回路が有する第2回路部のキャパシタは、第1回路部の入力端子を介して発電素子から受ける電力によって充電される。キャパシタは、第1回路部の出力端子を介して電力変換部に電力を伝送する。その結果、電力変換部に電力が伝送される態様であるとき、発電素子ではなく、キャパシタが電力源として見える。キャパシタから出力端子の間に存在する出力抵抗は、発電素子の出力抵抗よりも小さい。その結果、発電素子を電力変換部に直結する構成と比較して、電力変換部に伝送される電力に発生する電圧降下を抑制できる。従って、効率のよい電力の伝送を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の電力を長期間に亘って出力可能な電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図2図2(a)、図2(b)及び図2(c)は、図1に示す電源装置の動作を説明するための図である。
図3図3は、変形例1の電源装置の構成を示す図である。
図4図4は、第2実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、図4に示す電源装置の動作を説明するための図である。
図6図6は、第3実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、図6に示す電源装置が出力する電圧と制御部が出力する制御信号との例示である。
図8図8は、第4実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図9図9(a)は、キャパシタの充電動作を説明するための図である。図9(b)は、二次電池の充電動作を説明するための図である。
図10図10は、図8に示す電源装置の動作を説明するための図である。
図11図11(a)、図11(b)及び図11(c)は、変形例2の電源装置の動作を説明するための図である。
図12図12は、第5実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、図12に示す電源装置の制御部が出力する制御信号の例示である。
図14図14(a)は、変形例3の電源装置の構成の一部を示す図である。図14(b)は、変形例4の電源装置の構成の一部を示す図である。
図15図15は、変形例5の電源装置の構成の一部を示す図である。
図16図16は、検討例の電源装置の構成の一部を示す図である。
図17図17は、比較例の回路構成の一部を示す図である。
図18図18は、二次電池の寿命に関する検討の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
<第1実施形態>
図1に示すように、電源装置1は、負荷回路101に対して電力を供給する。負荷回路101は、IoTを構成する装置であってよい。このような装置として、例えば、周囲環境の計測を行うセンサが挙げられる。センサは、温度、湿度または照度など所望の計測パラメータに関する計測値を得る。負荷回路101は、数ワット程度の電力を要求する。例えば、負荷回路101が要求する電圧は、3V程度である。電源装置1は、負荷回路101が要求するタイミングで、負荷回路101に所定の電力を供給する。負荷回路101は、継続的に電源装置1に電力を要求するものでなくてもよい。例えば、負荷回路101は、周囲の温度を計測する動作と無線ICなどを通じて送信する動作とを予め定められた時間間隔で行う。負荷回路101は、温度計測及び通信が行われるタイミングで、電源装置1から電力の供給を受ける。
【0019】
電源装置1は、出力端子1aと、接地端子1bと、を有する。出力端子1aは、負荷回路101に接続される。出力端子1aは、負荷回路101に電力(POUT)を出力する。接地端子1bは、接地電位GNDに接続される。接地端子1bは、接地電位GNDから基準となる電位を受ける。
【0020】
電源装置1は、二次電池10と、発電素子20と、電力変換部50と、を有する。電源装置1は、必要に応じて上記の構成要素に加えて付加的な要素を含んでもよい。
【0021】
二次電池10は、充電動作及び放電動作を行う。二次電池10は、例えば、3Vまたは5Vといった直流電圧を出力する。二次電池10が出力する電圧は、負荷回路101が要求する電圧に対応してよい。例えば、負荷回路101が3Vの直流電圧を要求する場合には、二次電池10が出力する電圧は、少なくとも3V以上であるとしてよい。以下の説明において、二次電池10が出力する電圧を、VBAT(第2電圧)として示す。二次電池10の負極は、接地端子1bに接続される。二次電池10の正極は、発電素子20に接続される。
【0022】
発電素子20は、外部エネルギを受ける。そして、発電素子20は、受けた外部エネルギを電気エネルギに変換する。発電素子20は、外部エネルギを電気エネルギに変換可能な種々の素子を用いてよい。
【0023】
直流電圧の発電素子としては、太陽光エネルギを利用した太陽電池及び温度差による電荷の偏りを利用した熱電変換素子などが挙げられる。交流電圧の発電素子としては、振動による双極子モーメントの乱れを利用した圧電素子、電磁誘導電圧を利用した振動素子、焦電効果を利用した焦電素子及び電波の受信によって発電するRF素子などが挙げられる。
【0024】
特に熱電変換素子は、もっともありふれたエネルギである熱エネルギを使用するという点で、今後、応用可能な範囲が拡大することが期待されている。熱電変換素子に用いられる材料は、無機半導体または有機導電性高分子などがある。カーボンナノチューブ(CNT)を使った素子は、柔軟性(フレキシビリティ)を有するとともに軽量である。さらに、カーボンナノチューブ(CNT)を使った素子は、薄膜を使った素子である。従って、発電素子20としてカーボンナノチューブ(CNT)を利用した素子を採用することにより、同一の環境でも他の材料よりも温度差を拡大できる構造を実現することができる。その結果、発電素子20を取り付けることが可能な使用環境が大きく広がる。従って、応用範囲を広げることができる。
【0025】
カーボンナノチューブ(CNT)としては、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)、及び、多層カーボンナノチューブ(多層CNT)を用いることができる。カーボンナノチューブ(CNT)として、単層CNTを用いることが好ましい。CNTは、単層CNTまたは多層CNTをそれぞれ単独で用いてもよい。CNTは、混合して用いてもよい。混合して用いる場合、単層CNTの含有割合は、50質量%以上であることが好ましい。さらに、単層CNTの含有割合は、70質量%以上であることがより好ましい。さらに、単層CNTの含有割合は、90質量%以上であることが好ましい。単層CNTの平均直径は、0.7nm以上15nm以下である。単層CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。単層CNTは、合成時における繊維状の炭素ナノ構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。単層CNTのBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましい。BET比表面積は、800m/g以上であることが更に好ましい。BET比表面積は、2500m/g以下であることが好ましい。BET比表面積は、1200m/g以下であることが更に好ましい。
【0026】
単層CNTの製造には、例えば、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)を採用してよい。スーパーグロース法は、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるものである。例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給する。つまり、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させる。この方法によれば、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うために、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。SGCNT(Super Growth Carbon nanotube)は、他のCNTに比べて、純度が高い。さらに、SGCNTは、ドーピングの効果が高いため発電能力(ゼーベック係数)が大きい。従って、SGCNTは、熱電変換素子としての適性が高い。SGCNTは、低コストおよび材料純度が高いという特徴を有する。さらにSGCNTは、ドーピングがしやすいという特徴も有する。
【0027】
発電素子20は、二次電池10に対して直列に接続される。発電素子20の出力端子20bは、電力変換部50に接続される。発電素子20は、発電体21と、出力抵抗22と、を有する。発電体21は、入力端子20aを介して二次電池10に接続される。発電体21は、出力抵抗22及び出力端子20bを介して電力変換部50に接続される。
【0028】
発電素子20の出力電圧を、記号(VEH:第1電圧)として示す。発電素子20の出力電圧(VEH)は、直流電圧であってもよい。発電素子20の出力電圧(VEH)は、交流電圧であってもよい。例えば、発電素子20が振動エネルギを電気エネルギに変換するものであるとき、発電素子20は、入力された振動の周波数に応じた周波数を有する交流電圧を出力する。発電素子20は、二次電池10に対して直列に接続される。
【0029】
電力変換部50は、発電素子20から電力を受ける。電力変換部50は、発電素子20から受けた電力の一部または全部を負荷回路101に出力する。電力変換部50は、負荷回路101に出力されなかった電力を二次電池10に出力する。電力変換部50は、受け入れた電力を負荷回路101及び二次電池10に再配分する。
【0030】
例えば、電力変換部50は、電力を蓄える蓄電部51として、キャパシタ51fを有する。電力変換部50は、キャパシタ51fに蓄積された電力を振り分ける配分部52を有する。電力変換部50は、4個の接続端子を有する。具体的には、電力変換部50は、入力端子50aと、出力端子50b(第1出力端子)と、出力端子50c(第2出力端子)と、接地端子50dと、を有する。回路構成によっては、電力変換部50は、接地端子50dを省略してもよい。
【0031】
入力端子50aは、発電素子20の出力端子20bに接続される。入力端子50aは、電圧(VIN=VBAT+VEH)<VIN:第3電圧>を受ける。入力端子50aは、キャパシタ51fにも接続される。入力端子50aは、受けた電圧(VIN)をキャパシタ51fに出力する。出力端子50bは、配分部52に接続される。出力端子50bは、配分部52から出力用電力を受ける。出力端子50bは、キャパシタ51fに直接に接続されてもよい。つまり、出力端子50bは、キャパシタ51fから直接に出力用電力を受けてもよい。出力端子50bは、さらに、負荷回路101に接続される。出力端子50bは、受けた出力用電圧を負荷回路101に出力する。別の出力端子50cは、配分部52に接続される。出力端子50cは、配分部52から充電用電力を受ける。なお、出力端子50cも、出力端子50bと同様にキャパシタ51fに直接に接続されてもよい。つまり、出力端子50cは、キャパシタ51fから直接に充電用電力を受けてもよい。出力端子50cは、二次電池10に接続される。出力端子50cは、受けた充電用電圧を二次電池10に出力する。接地端子50dは、電源装置1の接地端子1bに接続される。
【0032】
配分部52は、負荷回路101からの要求に応じてキャパシタ51fに蓄積された電力を負荷回路101に出力する動作を行う。配分部52は、所定の期間においてキャパシタ51fに蓄積された電力を二次電池10に出力する動作を行う。配分部52は、負荷回路101及び二次電池10のいずれにも電力を出力しない動作を行う。この動作によれば、時間の経過と共にキャパシタ51fに電力が蓄積される。
【0033】
次に、図2を参照しながら電源装置1の動作原理について説明する。
【0034】
図2(a)は、電力変換部50に入力される電力を示す。いま、二次電池10は、電圧(VBAT)を出力する。発電素子20は、電圧(VEH)を出力する。電力変換部50に入力される電流は、電流(IIN)である。二次電池10、発電素子20及び電力変換部50は直列に接続される。従って、二次電池10が出力する電流は、(IIN)である。発電素子20が出力する電流も、(IIN)である。
【0035】
二次電池10が出力する電力(PBAT)は、矩形R1により示される。矩形R1の横は、電流(IIN)を示す。矩形R1の縦は、電圧(VBAT)を示す。矩形R1の面積(VBAT×IIN)は、二次電池10が出力する電力(PBAT)を示す。
【0036】
発電素子20が出力する電力(PEH)は、矩形R2により示される。矩形R2の横は、電流(IIN)を示す。矩形R2の縦は、電圧(VEH)を示す。矩形R2の面積(VEH×IIN)は、発電素子20が出力する電力(PEH)を示す。
【0037】
図2(b)は、電力変換部50のキャパシタ51fに蓄積された総合電力(PIN)を示す。総合電力(PIN)は、電力(PBAT)と電力(PEH)との和である。二次電池10は、発電素子20に対して直列に接続される。従って、電力変換部50のキャパシタ51fには、電圧(VBAT)と電圧(VEH)との和である総合電圧(VIN)が入力される。電流は、電流(IIN)である。従って、総合電力(PIN)は、PIN=(VBAT+VEH)×IINとして示すこともできる。
【0038】
図2(c)は、電力変換部50の配分部52の動作によって出力される電力を示す。配分部52は、キャパシタ51fに蓄積された総合電力(PIN)を出力用電力(POUT)と、充電用電力(PCHG)に配分する。
【0039】
出力用電力(POUT)は、出力用電圧(VOUT)と出力用電流(IOUT)との積である。出力用電力(VOUT)は、総合電圧(VIN=VBAT+VEH)と等しい。出力用電圧(VOUT)は、発電素子20が出力する電圧(VEH)よりも高い。電力変換部50は、発電素子20が出力する電力(PEH)に二次電池10が出力する電力(PBAT)を加える。その結果、電力変換部50は、発電素子20が出力する電圧(VEH)よりも高い出力用電圧(VOUT)を出力することができる。出力用電流(IOUT)が電流(IIN)よりも小さい場合には、電力変換部50は、発電素子20が出力する電力(PEH)と出力用電力(POUT)とを互いに等しくすることもできる。
【0040】
総合電力(PIN)から出力用電力(POUT)を差し引いた残りの電力は、充電用電力(PCHG)として二次電池10へ充電のために戻すことが可能である。
【0041】
その結果、電源装置1が出力する出力用電力(POUT)は、見かけ上、発電素子20が出力する電力(PEH)と等しく、かつ、発電素子20が出力する電圧(VEH)よりも高い電圧(VOUT)を有する。この動作は、二次電池10によるアシストと、電力変換部50の配分部52の機能と、によって実現される。アシストのために出力した二次電池10の電力(PBAT)は、出力用電力(POUT)の大きさによっては、回収することが可能である。回収動作を実現可能な条件とは、出力用電力(POUT)が発電素子20の出力する電力(PEH)以下であるというものである。
【0042】
従って、電源装置1は、発電素子20の出力電圧を、負荷回路101が要求する電圧まで高めることができる。この発電素子20の出力電圧を、負荷回路101が要求する電圧まで高める動作(かさ上げ動作)を、本実施形態では「アシスト」と称する。つまり、二次電池10は、電圧のかさ上げのための追加電源又は調整電源であるとも言える。
【0043】
電源装置1は、外部エネルギを電気エネルギに変換して電圧(VEH)として出力する発電素子20と、発電素子20に対して直列に接続されると共に、電圧(VEH)より大きい電圧(VBAT)を出力する二次電池10と、電圧(VEH)及び電圧(VBAT)を受けて、負荷回路101に電力(POUT)を出力する電力変換部50と、を備える。電力変換部50は、電圧(VEH)及び電圧(VBAT)が足し合わされた電圧(VIN)に基づく総合電力(PIN)を蓄積する。電力変換部50は、総合電力(PIN)を、出力用電力(POUT)と充電用電力(PCHG)とに配分する。電力変換部50は、出力用電力(POUT)を負荷回路101に出力すると共に充電用電力(PCHG)を二次電池10に出力する。
【0044】
電源装置1の電力変換部50は、発電素子20が出力する電圧(VEH)と二次電池10が出力する電圧(VBAT)とを受ける。電力変換部50は、総合電力(PIN)を蓄積する。そして、電力変換部50は、蓄積した電力の一部を出力用電力(POUT)として分配する。総合電力(PIN)は、電圧(VEH)と電圧(VBAT)とが足し合わされた電圧(VIN)に基づいている。その結果、総合電力(PIN)から配分される出力用電力(VOUT)は、電圧(VEH)よりも高い電圧として出力することが可能である。従って、電源装置1は、所望の電力を負荷回路101に対して出力することができる。
【0045】
電力変換部50は、電圧(VIN)を受ける入力端子50aと、負荷回路101に接続されることにより出力用電力(POUT)を出力する出力端子50bと、二次電池10に接続されることにより充電用電力(PCHG)を出力する出力端子50cと、を有する。この構成によれば、総合電力(PIN)から得た充電用電力(PCHG)によって二次電池10を充電することが可能である。従って、発電素子20の電圧(VEH)を高めるために用いた電力(PBAT)を回収することができる。その結果、発電素子20の電圧(VEH)を高めるために要する電力(PBAT)が実質的に低減する。従って、二次電池10による電圧(VBAT)をアシスト(補助)する機能を長期間に亘って維持することができる。
【0046】
出力用電力(POUT)を規定する出力電圧(VOUT)は、電圧(VEH)より大きく、かつ、電圧(VIN)以下である。この構成によれば、電圧(VEH)より大きく、かつ、電圧(VIN)以下である出力電圧(VOUT)を負荷回路101に出力することができる。
【0047】
発電素子20は、出力用電力(POUT)を出力する。出力用電力(POUT)は、電圧(VEH)によって規定される電力(PEH)より小さい。この構成によれば、発電素子20が出力した電力(PEH)よりも消費される出力用電力(POUT)が小さい。その結果、二次電池10の充電に供する充電用電力(PCHG)が増加する。従って、二次電池10による電圧(VEH)をアシスト(補助)する機能をさらに長期間に亘って維持することができる。
【0048】
電力変換部50は、入力端子50aに接続されることにより総合電力(PIN)を蓄積するキャパシタ51fを有する。この構成によれば、電力変換部50は、総合電力(PIN)を好適に蓄積することができる。
【0049】
<変形例1>
第1実施形態の電源装置1は、上記の構成に限定されない。
【0050】
例えば、電源装置1Aは、図3に示す構成としてもよい。変形例1の電源装置1Aは、第1実施形態の電源装置1に対して、二次電池10の構成が異なる。電源装置1Aは、二次電池11、12を有する充放電部10Aと、スイッチ部30と、を有する。充放電部10Aの一方の二次電池11は、駆動用(アシスト用)の電源として用いられる。他方の二次電池12は、充電用の蓄電池として用いられる。スイッチ部30は、発電素子20に電力を供給する回路と、二次電池10を充電するための回路と、を、スイッチ31、32によって相互に切り替える。この構成によっても、第1実施形態の電源装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図4に示す第2実施形態の電源装置1Bについて説明する。第2実施形態の電源装置1Bは、第1実施形態の電源装置1と同様に、発電素子20の出力を二次電池10の出力によってアシスト(補助)する。その結果、電源装置1Bは、出力として所定の電力及び電圧を出力可能な電池として捉えることができる。電源装置1Bは、アシスト(補助)のために用いた二次電池10の出力を回収する。その結果、理想的には二次電池10のエネルギの消費がないとみなせる。実質的には、ごくわずかな二次電池10のエネルギの消費によって、発電素子20のアシスト(補助)が可能である。つまり、電源装置1Bは、全体として寿命が延びた電池として捉えることができる。
【0052】
第2実施形態の電源装置1Bは、二次電池10と、発電素子20と、インピーダンス調整部40と、電力変換部50Bと、制御部90Bと、を有する。第2実施形態の電力変換部50Bは、第1実施形態の電力変換部50の具体的な実施態様の一例である。第2実施形態の電源装置1Bは、付加的な要素として、インピーダンス調整部40を有する。インピーダンス調整部40は、発電素子20から電力変換部50Bへの電力の伝送効率を改善する。二次電池10及び発電素子20の構成及び動作は第1実施形態と同様である。従って、詳細な説明は省略する。インピーダンス調整部40、電力変換部50B及び制御部90Bについて詳細に説明する。
【0053】
インピーダンス調整部40は、入力端子40aと、出力端子40bと、線路L1と、キャパシタ41と、を有する。入力端子40aは、発電素子20の出力端子20bに接続される。入力端子40aは、線路L1を介して出力端子40bに接続される。出力端子40bは、電力変換部50Bの入力端子50aに接続される。キャパシタ41は、線路L1と接地電位GNDとの間に接続される。
【0054】
インピーダンス調整部40は、必要に応じて設けることとしてよい。電源装置1Bは、二次電池10と、発電素子20と、電力変換部50Bと、制御部90Bと、を有してもよい。
【0055】
インピーダンス調整部40は、構成要素としてキャパシタ41を有する。その結果、インピーダンス調整部40は、理想的には出力抵抗を考慮しなくてよい。実際の回路構成では出力抵抗42が存在する。しかし、出力抵抗42は、極めて小さいのでゼロと考えてよい。
【0056】
制御部90Bは、電力変換部50Bの動作を制御する。具体的には、制御部90Bは、電力変換部50Bの変圧動作の開始と停止とを制御する。電力変換部50Bの動作を制御することにより、インピーダンス調整部40の充電動作と放電動作とを切り替えることができる。具体的には、制御部90Bが電力変換部50Bの動作を停止すると、発電素子20から出力される電力は、キャパシタ41に充電される(充電動作)。電力変換部50Bの動作が停止した状態では、電力変換部50Bの入力インピーダンスは、ほぼ無限大とみなせる。換言すると、電力変換部50Bの入力インピーダンスは、高インピーダンス状態である。一方、制御部90Bが電力変換部50Bの動作を開始すると、キャパシタ41から電力変換部50Bに電力が供給される(放電動作)。電力変換部50Bが動作している状態では、電力変換部50Bの入力インピーダンスは、低インピーダンス状態とみなせる。なお、放電動作中に、発電素子20から電力が出力されることがある。この場合には、発電素子20からの電力も電力変換部50Bに出力される。しかし、電力変換部50Bの動作は、キャパシタ41から出力される電力によって支配される。
【0057】
電力変換部50Bは、電圧変換部53と、蓄電部51と、スイッチ部54と、を有する。
【0058】
電圧変換部53は、インピーダンス調整部40から出力される電圧を異なる電圧に変換する。電圧変換部53は、DC/DCコンバータである。具体的には、電圧変換部53は、インピーダンス調整部40から出力される電圧よりも低い電圧に降圧する。電圧変換部53は、制御部90Bから出力される制御信号φに応じて、電圧変換動作の開始と停止とを相互に切り替える。電圧変換部53の入力端子53aは、電力変換部50Bの入力端子50aに接続される。電圧変換部53の出力端子53bは、蓄電部51に接続される。電圧変換部53の出力端子53bは、スイッチ部54にも接続される。そのうえ、出力端子53bは、電力変換部50Bの出力端子50bにも接続される。
【0059】
蓄電部51は、降圧された電圧を電圧変換部53から受ける。蓄電部51は、負荷回路101の求めに応じて負荷回路101に電力を出力する。蓄電部51は、構成要素としてキャパシタ51fを有する。キャパシタ51fの一方の端子51aは、電圧変換部53に接続される。キャパシタ51fの一方の端子51bは、スイッチ部54にも接続される。さらに、一方の端子51bは、出力端子50bにも接続される。蓄電部51の他方の端部は、接地端子50dに接続される。
【0060】
スイッチ部54は、蓄電部51から二次電池10への電流の供給を許す。スイッチ部54は、二次電池10から蓄電部51へ向かう電流の流れを禁止する。スイッチ部54は、所定の条件を満たす場合に、蓄電部51に蓄積された電力を二次電池10へ出力する。スイッチ部54は、構成要素としてダイオード54dを有する。例えば、ダイオード54dの順方向電圧は、電圧(VBAT+ΔV)と等しくてもよい。スイッチ部54の入力端子54aは、蓄電部51に接続される。スイッチ部54の入力端子54aは、電圧変換部53に接続される。そのうえ、入力端子54aは、出力端子50bにも接続される。スイッチ部54の出力端子54bは、電力変換部50の出力端子50cに接続される。
【0061】
電源装置1Bは、充電と出力とを相互に切り替えながら動作する。電圧変換部53は、電圧(VIN)を電圧(VBAT+ΔV)に下げる。電圧(VBAT+ΔV)は、電圧(VBAT)以上であり、かつ、電圧(VBAT+VEH)以下である。
【0062】
負荷回路101が電力(POUT)を要求しないとき、蓄電部51は、電圧変換部53が出力する電力を蓄える。その結果、端子51aにおける電圧が上昇する。端子51aにおける電圧が、ダイオード54dの順方向電圧より高くなると、蓄電部51から二次電池10に電流が流れる。換言すると、二次電池10が充電される。端子51aにおける電圧がダイオード54dの順方向電圧より低くなると、蓄電部51から二次電池10への電力の回収が止まる。再び、電圧変換部53が出力する電力が蓄電部51に蓄えられるので、端子51aにおける電圧が上昇する。
【0063】
負荷回路101が電力を要求するとき、蓄電部51は、蓄えた電力を負荷回路101に出力する。電力を供給している間は、端子51aの電圧は、VBAT以上VOUT以下である。この場合には、ダイオード54dはオフ状態である。このとき、二次電池10への電力の回収は行われない。電力を供給している間も、端子51aの電圧がVOUTを保持できる場合には、ダイオード54dはオン状態である。このとき、二次電池10への電力の回収は行われる。
【0064】
図5を参照しながら電源装置1Bの動作原理について説明する。
【0065】
電圧変換部53は、電圧(VBAT)と電圧(VEH)とを受ける。電圧変換部53は、電流(IIN)を受ける。図5の(a)部に示すように電圧変換部53は、総合電力(PIN)を受ける。総合電力(PIN)の内訳は、第1実施形態で説明した内容と同様である。総合電力(PIN)は、二次電池10が出力する電力(PBAT)と発電素子20が出力する電力(PEH)との和である。総合電力(PIN)の定義は、PIN=(VBAT+VEH)×IINである。
【0066】
図5(b)に示すように、電圧変換部53は、総合電力(PIN)に関する電圧(VBAT+VEH)を下げる。電圧変換部53が出力する電圧は、電源装置1Bが出力する電圧(VOUT)である。電圧(VOUT)は、二次電池10が出力する電圧(VBAT)より高い。電圧(VOUT)は、総合電圧(VBAT+VEH)より低い。電圧(VOUT)は、VOUT=VBAT+ΔVとして示す。電圧(ΔV)は、ゼロ以上である。電圧(ΔV)は、電圧(VEH)以下である。設計上は、負荷回路101が要求する電圧が先に設定される。換言すると、電源装置1Bが出力すべき電圧(VOUT)が先に設定される。従って、要求電圧に応じて、二次電池10の電圧を設定すればよい。
【0067】
電力変換部50Bの電力変換効率(η)が100%であると仮定する。そうすると、電圧変換部53に入力される電力(PIN)と出力される電力(PCNV)とは互いに等しい。例えば、図5(a)に示す矩形の面積と、図5(b)に示す矩形の面積とは互いに等しい。一方、電圧に注目すると、電圧変換部53に入力される電圧(VBAT+VEH)は、電圧(VBAT+ΔV)に下がる。変換による電力の損失がない(η=100%)とすると、電圧の降下に対応して電流が増加する。出力される電力(PCNV)は、PCNV=Vout×(ICHG+IEH_CV)として示すことができる。
【0068】
発電素子20が出力する電力(PEH)に注目する。電力変換効率(η)が100%であるとすれば、電圧変換部53が出力する電力(PCNV)のうち、電力(PEH)に起因する電力(PEH_CV)が設定できる。電圧変換部53は、電圧(VOUT)を出力する。従って、電力(PEH_CV)を構成する電流(IEH_CV)は、IEH_CV=PEH_CV/VOUTである。
【0069】
負荷回路101が電力(POUT)を要求するとき、電源装置1Bは、負荷回路101に対して電流(IOUT=POUT/VOUT)を提供する。電流(IOUT)が電流(IEH_CV)より小さいとき(IOUT<IEH_CV)、電力変換部50Bは、電力変換部50Bに入力された電流(IIN)よりも大きい電流(ICHG)を二次電池10に戻すことができる。つまり、発電素子20のアシスト(補助)に用いた二次電池10の電力を回収することができる。
【0070】
要するに、電源装置1Bの動作のポイントは、電圧変換部53に入力した電圧(VBAT+VEH)を下げることによって、電流を増加させる。電流の一部を負荷回路101に出力する。電流の残りを二次電池10に戻す。電力変換効率(η)と、負荷回路101が要求する電力(POUT)と、に応じて、二次電池10に回収可能な電力(PCHG)が決まる。負荷回路101が要求する電力(POUT)によっては、アシスト(補助)に用いた電力(PBAT)よりも大きい電力を回収することが可能である。つまり、二次電池10は、出力した電力(PBAT)と回収した電力(PCHG)の差分が正味の消費電力である。回収した電力(PCHG)が多くなるほど正味の消費電力は小さくなる。その結果、二次電池10の寿命は延びる。
【0071】
電源装置1Bは、外部エネルギを電気エネルギに変換することにより電圧(VEH)として出力する発電素子20と、発電素子20に対して直列に接続されると共に、電圧(VEH)より大きい電圧(VBAT)を出力する二次電池10と、電圧(VEH)及び電圧(VBAT)を受けて、負荷回路101に電力(POUT)を出力する電力変換部50Bと、を備える。電力変換部50Bは、発電素子20及び二次電池10に対して直列に接続される電圧変換部53と、電圧変換部53に接続される蓄電部51と、蓄電部51を負荷回路101に接続する出力端子50bと、蓄電部51を二次電池10に接続する出力端子50cと、を有する。電圧(VBAT)は電圧(VEH)より低くてもよい。すなわち、電源装置1Bの効果は、電圧(VBAT)及び電圧(VEH)の大小関係に関係なく奏される。
【0072】
電源装置1Bの電力変換部50Bは、発電素子20が出力する電圧(VEH)と二次電池10が出力する電圧(VBAT)とを受ける。電力変換部50Bは、電圧変換部53を有する。従って、電圧(VEH)と電圧(VBAT)とが足し合わされた総合電圧(VIN)を下げることが可能になる。その結果、総合電圧(VIN)の降圧に応じて、電力変換部50Bが受けた電流(IIN)を増やすことができる。総合電圧(VIN)を下げると共に電流を増加させることによって、電力変換部50Bは、負荷回路101に電力(POUT)を出力すると共に、二次電池10に電力(PCHG)を出力することが可能になる。蓄電部51が蓄積する電力(PIN)は、電圧(VEH)と電圧(VBAT)とが足し合わされた総合電圧(VIN)に基づいている。その結果、蓄電部51が蓄積する電力(PIN)から配分される出力用の電力(POUT)は、電圧(VEH)よりも高い電圧(VBAT+ΔV)とすることが可能である。従って、電源装置1Bは、所望の電力を負荷回路101に対して出力することができる。そのうえ、二次電池10には、充電用の電力(PCHG)が出力される。その結果、発電素子20の電圧(VEH)を高めるために実質的に要する電力が低減する。つまり、二次電池10によって、電圧(VEH)をアシスト(補助)する機能を長期間に亘って維持することができる。
【0073】
電圧変換部53は、発電素子20から電圧(VEH)を受けると共に二次電池10から電圧(VBAT)を受ける。電圧変換部53は、電圧(VEH)と電圧(VBAT)とを足し合わせた総合電圧(VIN)を電圧(VBAT)以上であり電圧(VIN)以下である出力用の電圧(VBAT+ΔV)に変換する。この構成によれば、電圧(VBAT)以上であり総合電圧(VIN)以下である出力用の電圧(VBAT+ΔV)を負荷回路101に出力することができる。
【0074】
蓄電部51は、出力用の電圧(VBAT+ΔV)に基づく電力(PCNV)を蓄積する。この構成によれば、蓄電部51から負荷回路101に出力用の電圧(VBAT+ΔV)を出力することができる。
【0075】
スイッチ部54は、蓄電部51から二次電池10へ電力(POUT)を供給する充電状態と、蓄電部51から二次電池10への電力の供給を停止する非充電状態と、を相互に切替可能である。この構成によれば、負荷回路101に電力(POUT)を供給する動作に加えて、発電素子20から出力される電力(PEH)が小さい場合に、時間の経過と共に蓄電部51に蓄積される電力を増加させる動作を行うことができる。
【0076】
二次電池10の一端は、接地電位GNDに接続される。二次電池10の他端は、発電素子20に接続される。二次電池10の他端は、電力変換部50Bにも接続される。発電素子20の一端は、二次電池10に接続される。発電素子20の他端は、電力変換部50Bに接続される。この構成によれば、二次電池10を好適に充電できる。
【0077】
電源装置1Bは、電力変換部50Bの前に設置されるインピーダンス調整部40をさらに備える。インピーダンス調整部40は、発電素子20に接続される入力端子40aと電力変換部50Bに接続される出力端子40bとを有する第1回路部Sb1と、第1回路部Sb1に接続される接続点43(第1接続点)と、接地電位GNDに接続される接続点44(第2接続点)と、接続点43及び接続点44の間に接続されるキャパシタ41と、を有する第2回路部Sb2と、を有する。第2回路部Sb2が含む出力抵抗42の大きさは、発電素子20が含む出力抵抗22の大きさより小さい。
【0078】
この構成によれば、インピーダンス調整部40が有する第2回路部Sb2のキャパシタ41は、第1回路部Sb1の入力端子40aを介して発電素子20から受ける電力によって充電される。キャパシタ41は、第1回路部Sb1の出力端子40bを介して電力変換部50Bに電力を伝送する。その結果、電力変換部50Bに電力が伝送されるとき、発電素子20ではなく、キャパシタ41が電力源として見える。キャパシタ41から出力端子40bの間に存在する出力抵抗42は、発電素子20の出力抵抗22よりも小さい。その結果、発電素子20を電力変換部50Bに直結する構成と比較して、電力変換部50Bに伝送される電力に生じる電圧の降下を抑制できる。従って、効率のよい電力(PIN)の伝送を行うことができる。
【0079】
換言すると、電力変換部50Bを動作させるためには、負荷回路101が要求する所定の電圧によって、所定の電流を発生させる必要がある。発電素子20を電力変換部50Bに直結すると、発電素子20の高い出力インピーダンス(出力抵抗22)によって電力変換部50Bに出力される電圧が低下してしまう。その結果、電圧降下がなければ出力可能であった出力電流は、著しく低下してしまう。一方、インピーダンス調整部40を用いることにより、インピーダンスがゼロという理想状態を実現することができる。その結果、理想的な状態において電力変換部50Bに電力を出力することが可能になる。
【0080】
<第3実施形態>
図6に示す第3実施形態の電源装置1Cについて説明する。第3実施形態の電源装置1Cは、スイッチ部54Cがトランジスタ54tによって構成される点で、第2実施形態の電源装置1Bと相違する。蓄電部51から二次電池10への電力を伝送する制御をダイオード54dに代えて、トランジスタ54tによって行う。二次電池10、発電素子20、インピーダンス調整部40、電圧変換部53及び蓄電部51の構成及び動作は、第2実施形態と同様である。従って、詳細な説明は省略する。以下、スイッチ部54Cについて詳細に説明する。
【0081】
スイッチ部54Cのトランジスタ54tは、電界効果トランジスタ(MOSFET)を用いてよい。トランジスタ54tのソースは、スイッチ部54Cの入力端子54aである。トランジスタ54tのソースは、蓄電部51に接続される。トランジスタ54tのドレインは、スイッチ部54の出力端子54bである。トランジスタ54tのドレインは、電力変換部50Cの出力端子50cに接続される。トランジスタ54tのゲートは、制御部90Cから制御信号θを受ける。トランジスタ54tは、ゲートに出力される制御信号θに応じて、二次電池10への充電の開始と停止とを制御する。
【0082】
制御部90Cは、図7に示す制御信号θをトランジスタ54tのゲートに出力する。期間TONであるとき、制御部90Cは、二次電池10へ電力を供給させる。期間TOFFであるとき、制御部90Cは、二次電池10への電力の供給を停止する。
【0083】
例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、制御部90Cは、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)に基づいて制御信号θを生成する。図7(a)は、出力端子50bの電圧(VOUT)を示す。図7(b)は、制御部90Cが出力する制御信号θを示す。
【0084】
負荷回路101が電力を要求しない場合について説明する。以下の説明は、電圧変換部53が動作していることを前提にする。時間の経過と共に、蓄電部51に蓄えられる電力が増加する。その結果、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)は、次第に高まる。この期間において、制御部90Cは、制御信号θ<LOW>をトランジスタ54tに出力する。制御部90Cは、電圧(VOUT)が電圧(VBAT+ΔV)に達したことを検知した場合に、制御信号θ<HIGH>をトランジスタ54tに出力する。その結果、蓄電部51から二次電池10への充電が開始される。その後、時間の経過と共に、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)が低下する。この期間において、制御部90Cは、制御信号θ<HIGH>の出力を継続する。制御部90Cは、電圧(VOUT)が電圧(VBAT)まで低下したことを検知した場合に、制御信号θ<LOW>をトランジスタ54tに出力する。その結果、蓄電部51から二次電池10への充電が停止される。その後、時間の経過と共に、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)が次第に高まる。
【0085】
負荷回路101が電力を要求する場合の動作は、第2実施形態の場合と同様である。負荷回路101が電力を要求する場合には、制御部90Cは、トランジスタ54tのゲートに制御信号θ<LOW>を出力する。従って、トランジスタ54tは、オフ状態である。つまり、二次電池10への電力の回収は行われない。
【0086】
第3実施形態の電源装置1Cも、第2実施形態の電源装置1Bと同様に、所望の電力を長期間に亘って出力し続けることができる。
【0087】
第3実施形態の電源装置1Cは、トランジスタ54tによって二次電池10への充電動作と、蓄電部51への充電動作と、を切り替える。従って、回路内において取得可能な所望のパラメータを用いた切り替え制御を行うことができる。回路内において取得可能な所望のパラメータには、例えば、出力端子50bに生じる電圧が例示できる。
【0088】
<第4実施形態>
図8に示す第4実施形態の電源装置1Dについて説明する。第4実施形態の電源装置1Dは、二次電池10と、発電素子20と、インピーダンス調整部40と、電力変換部50Dと、制御部90Dと、を有する。第4実施形態の電源装置1Dの制御部90Dは、電力変換部50Dの出力端子50bに生じる電圧(VOUT)を用いて、電圧変換部53Dを制御する。二次電池10、発電素子20及びインピーダンス調整部40の構成及び動作は、第2実施形態と同様である。従って、詳細な説明は省略する。以下、電圧変換部53D及び制御部90Dについて詳細に説明する。
【0089】
電圧変換部53Dは、入力端子53aから受け入れた電圧を出力端子53bに間欠的に送る。その結果、出力端子53bには送られた電圧の平均として、降圧された電圧が生じる。電圧変換部53Dは、入力端子53a、出力端子53b、53cを有する。入力端子53aは、電力変換部50Dの入力端子50aに接続される。出力端子53bは、電力変換部50Dの出力端子50bに接続される。
出力端子53bは、キャパシタ51fにも接続される。出力端子53cは、電力変換部50Dの出力端子50cに接続される。
【0090】
電圧変換部53Dの入力端子53aは、電圧(VIN)を受ける。電圧変換部53Dは、受けた電圧(VIN)を電圧(VCNV:第4電圧)に下げる。電圧変換部53Dは、電圧(VCNV)を出力端子53b、53cのいずれか一方に出力する。電圧変換部53Dにおける降圧動作と、出力端子53b、53cの選択動作とは、制御部90Dから出力される制御信号φ1、φ2、φ3、φ4によって制御される。
【0091】
具体的には、電圧変換部53Dは、降圧型のDC/DCコンバータ53vと、スイッチ53s3、53s4と、を有する。DC/DCコンバータ53vは、チョッパ方式の回路である。DC/DCコンバータ53vは、スイッチ53s1、53s2と、コイル53hと、キャパシタ53fとを有する。スイッチ53s1、53s2のON/OFF動作によって、入力端子53aから受け入れた電圧が下がる。スイッチ53s1、53s2の動作は、制御部90Dから出力される制御信号φ1、φ2に従う。DC/DCコンバータ53vは、スイッチ53s3及びスイッチ53s4のいずれか一方に電圧を出力する。スイッチ53s3は、DC/DCコンバータ53vに接続される。スイッチ53s3は、出力端子53bにも接続される。スイッチ53s4は、DC/DCコンバータ53vに接続される。スイッチ53s4は、出力端子53cにも接続される。スイッチ53s3、53s4の動作は、電圧の出力先を選択する動作である。スイッチ53s3、53s4の動作は、制御部90Dから出力される制御信号φ3、φ4に従う。
【0092】
図8に示す電圧変換部53Dの回路構成は例示である。電圧変換部53Dの回路構成は、図8に示す回路構成に限定されない。
【0093】
制御部90Dは、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)を監視する。制御部90Dは、電圧(VOUT)に基づいて制御信号φ1、φ2、φ3、φ4を生成する。制御部90Dは、電圧変換部53に制御信号φ1、φ2、φ3、φ4を出力する。
【0094】
電圧変換部53Dは、出力端子50bに生じる電圧(VOUT)に応じて、キャパシタ51fの充電動作と、二次電池10の充電動作と、のいずれか一方を選択する。
【0095】
電圧(VOUT)が低い場合には、制御部90Dは、図9(a)に示すキャパシタ51fの充電動作を行う。制御部90Dは、スイッチ53s3を導通にする制御信号φ3と、スイッチ53s4を切断にする制御信号φ4と、を出力する。制御部90Dは、降圧動作のための制御信号φ1、φ2をスイッチ53s1、53s2に出力する。その結果、出力端子53bを介してキャパシタ51fに降圧された電圧(VCNV)が出力される。つまり、キャパシタ51fが充電される。
【0096】
電圧(VOUT)が高い場合には、制御部90Dは、図9(b)に示す二次電池10の充電動作を行う。制御部90Dは、スイッチ53s4を導通にする制御信号φ4と、スイッチ53s3を切断にする制御信号φ3と、を出力する。制御部90Dは、降圧動作のための制御信号φ1、φ2をスイッチ53s1、53s2に出力する。その結果、出力端子53cを介して二次電池10に降圧された電圧(VCNV)が出力される。つまり、二次電池10が充電される。
【0097】
図10に示すように、制御部90Dは、電圧(VOUT)が要求電圧(V)より低い場合には、キャパシタ51fの充電動作M1(第1動作モード:図9の(a)部参照)を継続する(動作A1)。そして、キャパシタ51fの充電動作により、電圧(VOUT)が要求電圧(V)より高くなったとき、制御部90Dは、キャパシタ51fの充電動作M1(第1動作モード)から二次電池10の充電動作M2(第2動作モード:図9(b)参照)に切り替える(動作A2)。その後、制御部90Dは、電圧(VOUT)が要求電圧(V)より高い場合には、二次電池10の充電動作M2(第2動作モード)を継続する。電圧(VOUT)が要求電圧(V)より低くなったとき、制御部90Dは、二次電池10の充電動作M2(第2動作モード)からキャパシタ51fの充電動作M1(第1動作モード)に切り替える(動作A3)。
【0098】
第4実施形態の電源装置1Dも、第2実施形態の電源装置1Bと同様に、所望の電力を長期間に亘って出力し続けることができる。
【0099】
<変形例2>
第4実施形態では、二次電池10の充電動作は、発電素子20から出力される電圧を利用していた。例えば、二次電池10の充電動作には、キャパシタ51fにから出力される電圧を利用してもよい。この場合には、電圧変換部53Eは、3つの接続構成を取り得る。図11(a)、図11(b)及び図11(c)は、3つの接続構成の一例を示す。
【0100】
変形例2の電圧変換部53Eは、第4実施形態の電圧変換部53Dの回路構成に対して、スイッチ53s5、53s6を追加したものである。スイッチ53s5は、入力端子53aとスイッチ53s1との間に配置される。スイッチ53s6は、キャパシタ51fとスイッチ53s1との間に配置される。
【0101】
図11(a)は、キャパシタ51fの充電動作における接続構成である。この場合には、制御部90Eは、スイッチ53s3、53s5を導通とする制御信号φ3、φ5を出力する。制御部90Eは、スイッチ53s4、53s6を切断とする制御信号φ4、φ6を出力する。
【0102】
図11(b)は、二次電池10の充電動作における接続構成である。この接続構成では、発電素子20からの入力を利用する。制御部90Eは、スイッチ53s4、53s5を導通とする制御信号φ4、φ5を出力する。制御部90Eは、スイッチ53s3、53s6を切断とする制御信号φ3、φ6を出力する。
【0103】
図11(c)は、二次電池10の充電動作における接続構成である。この接続構成では、キャパシタ51fからの入力を利用する。制御部90Eは、スイッチ53s4、53s6を導通とする制御信号φ4、φ6を出力する。制御部90Eは、スイッチ53s3、53s5を切断とする制御信号φ3、φ5を出力する。
【0104】
変形例の電源装置1Eも、第2実施形態の電源装置1Bと同様に、所望の電力を長期間に亘って出力し続けることができる。
【0105】
<第5実施形態>
図12に示す第5実施形態の電源装置1Fについて説明する。第5実施形態の電源装置1Fは、二次電池10と、発電素子20と、インピーダンス調整部40と、電力変換部50Fと、制御部90Fと、を有する。第5実施形態の電源装置1Fの制御部90Fは、二次電池10から電力を受ける。第5実施形態では、電圧変換部53Fの具体的な回路例を示す。二次電池10、発電素子20、インピーダンス調整部40、スイッチ部54及び蓄電部51の構成及び動作は、第2実施形態と同様である。従って、詳細な説明は省略する。制御部90F及び電圧変換部53Fについて詳細に説明する。
【0106】
第5実施形態の電圧変換部53Fは、降圧型のDC/DCコンバータ53wである。電圧変換部53Fは、スイッチ素子としてのトランジスタ53t1、53t2と、コイル53hと、を有する。トランジスタ53t1は、コイル53hに対して直列に接続されている。トランジスタ53t1は、コイル53hへのエネルギ(電力)の転送を制御する。トランジスタ53t1を制御することによって、転送される電圧のデューティー比の調整が可能になる。従って、降下させる電圧の高さを制御することができる。トランジスタ53t1、53t2の動作は、制御部90Fから出力される制御信号φ7、φ8によって制御される。
【0107】
制御部90Fは、電圧変換部53Fのトランジスタ53t1、53t2に制御信号φ7、φ8を出力する。例えば、制御部90Fは、図13(a)に示す制御信号φ7及び図13(b)に示す制御信号φ8を出力する。それぞれの制御信号φ7、φ8において、期間TONであるとき、電圧変換部53Fは降圧動作を行う。期間TOFFであるとき、電圧変換部53Fは、降圧動作を停止する。制御信号φ7、φ8の内容は、受ける電圧(VIN)と出力する電圧(VCNV)との関係に応じて、適宜変更してよい。
【0108】
制御部90Fは、その動作に要する電力を、二次電池10から受ける。制御部90Fは、二次電池10に接続される。発電素子20は、外部エネルギの入力に応じて電力を出力する。二次電池10は、予め蓄えられている電力を出力する。従って、二次電池10は、外部の要因に左右されることなく、制御部90Fに電力を安定して供給することができる。
【0109】
第5実施形態では、制御部90Fは、電圧変換部53Fを構成する要素として説明した。制御部90Fは、電圧変換部53Fを構成する要素でなくてもよい。制御部90Fは、電源装置1Fが有する電圧変換部53Fとは別の構成要素としてもよい。
【0110】
第5実施形態の電源装置1Fも、第2実施形態の電源装置1Bと同様に、所望の電力を長期間に亘って出力し続けることができる。
【0111】
第5実施形態の電源装置1Fでは、電圧変換部53Fを制御する制御部90Fが二次電池10から電力を受ける。二次電池10は、安定した電力供給が可能である。従って、制御部90Fは確実に動作する。その結果、電圧変換部53Fを確実に動作させることができる。
【0112】
本発明の電源装置は、上記の実施形態に限定されない。例えば、インピーダンス調整部は、以下の変形例3~5に示す回路構成を採用してもよい。
【0113】
<変形例3>
図14(a)に示すように、変形例3の電源装置1Gのインピーダンス調整部40Gは、スイッチ43a、43bを有する。スイッチ43a、43bは、入力端子40aと出力端子40bとの間に配置されている。スイッチ43aは、入力端子40aに接続される。スイッチ43aは、スイッチ43bにも接続される。スイッチ43bは、スイッチ43aに接続される。スイッチ43bは、出力端子40bにも接続される。入力端子40a、出力端子40b及びスイッチ43a、43bは、第1回路部Sg1を構成する。スイッチ43a、43bは、キャパシタ41にそれぞれ接続される。換言すると、スイッチ43a、43bを互いに接続する線路L1は、キャパシタ41に接続される線路との接続点43を有する。
【0114】
入力端子40aは、出力端子40bに接続される。入力端子40a及び出力端子40bを互いに接続する線路L1は、キャパシタ41の一端が接続される接続点43を有する。接続点43、44及びキャパシタ41は、第2回路部Sg2を構成する。
【0115】
制御部90Gは、充電動作のための制御信号λ1、λ2をインピーダンス調整部40Gに出力する。具体的には、制御部90Gは、制御信号λ1をHIGHとする。制御信号λ2をLOWとする。インピーダンス調整部40Gは、制御信号λ1<HIGH>を受けたとき、スイッチ43aによって入力端子40aをキャパシタ41に接続する。その結果、発電素子20が発生する電力によって、キャパシタ41が充電される。さらに、インピーダンス調整部40Gは、制御信号λ2<LOW>を受けたとき、スイッチ43bによって出力端子40bとキャパシタ41とを切断する。その結果、出力端子40bには何らの電力も出力されない。換言すると、電力変換部50Gは、インピーダンス調整部40から切り離されている。電力変換部50Gは、発電素子20から切り離されている。従って、充電動作では、電力変換部50Gは、電力を出力しない。
【0116】
制御部90Gは、充電動作のための制御信号を出力したタイミングから所定時間が経過した後に、放電動作のための制御信号をインピーダンス調整部40Gに出力する。具体的には、制御部90Gは、制御信号λ1<LOW>と、制御信号λ2<HIGH>と、を出力する。インピーダンス調整部40Gは、制御信号λ1<LOW>を受けたとき、スイッチ43aによって入力端子40aとキャパシタ41とを切断する。その結果、入力端子40aからキャパシタ41が切り離される。この状態は、インピーダンス調整部40Gから発電素子20が切り離された状態である。換言すると、電力変換部50Gから発電素子20が切り離された状態である。インピーダンス調整部40Gは、制御信号λ2<HIGH>を受けたとき、スイッチ43bによって出力端子40bをキャパシタ41に接続する。換言すると、インピーダンス調整部40Gは、電力変換部50Gに接続されている。その結果、出力端子40bにはキャパシタ41から電圧が出力される。発電素子20のインピーダンス(出力抵抗22)は、電力変換部50Gからは見えない。従って、電力変換部50Gは、発電素子20のオープン電圧に近い電圧を受けることが可能である。その結果、電力変換部50Gには電圧降下の影響が小さいまたは影響がない電圧が出力される。電力変換部50Gは当該電圧によって動作を開始する。その結果、電力変換部50Gは、昇圧した電圧を出力する。
【0117】
制御部90Gは、充電動作の期間と、放電動作の期間と、のそれぞれの長さを予め設定した。つまり、充電動作の期間及び放電動作の期間は、固定された時間である。例えば、充電動作の期間は、放電動作の期間よりも長い。電力変換部50Gは、放電動作の期間だけ電力変換を行う。電力変換部50Gは、放電動作の期間にのみ出力端子40bに出力電流を出力する。
【0118】
放電動作を行うとき、電力変換部50Gは、発電素子20から切り離されている。インピーダンス調整部40Gは、構成要素として、スイッチ43a、43bとキャパシタ41とを有している。従って、インピーダンス調整部40Gは、理想的には出力抵抗を考慮しなくてよい。実際の回路構成では出力抵抗42が存在する。しかし、出力抵抗42は、極めて小さいのでゼロと考えてよい。図14(a)には、出力抵抗42を明示している。しかし、インピーダンス調整部40Gは、出力抵抗42を抵抗素子として備えるものではない。出力抵抗42は、例えば、キャパシタ41をスイッチ43bに接続する線路の抵抗という通常は無視するような抵抗成分を明示的に示したものである。この回路構成では、出力インピーダンスがゼロであるか、または極めて低い電源を、電力変換部50Gに接続した状態である。従って、電源側(インピーダンス調整部40G)と負荷側(電力変換部50G)のインピーダンスの不調整により、電源側の電圧が下がることがない。その結果、電力変換部50Gに対して電力を効率よく受け渡すことができる。
【0119】
電力変換部50Gを動作させるためには、電力変換部50Gの負荷となる集積回路が要求する所定の電圧によって、所定の電流を発生させる必要がある。発電素子20を電力変換部50Gに直結した場合には、発電素子20の高い出力インピーダンス(出力抵抗22)によって電力変換部50Gに出力される電圧が低下してしまう。電圧降下がなければ出力できていた出力電流は、著しく低下してしまう。そこで、インピーダンス調整部40Gを用いることにより、インピーダンスがゼロという理想状態を実現する。この理想的な状態によれば、電力変換部50Gに電力を出力することが可能になる。その結果、例えば、インピーダンス調整部40Gを電力変換部50Gに接続する期間を、発電素子20から電力を出力している期間の1/3とした場合でも、出力電流の1/3を電力変換部50Gに出力することができる。
【0120】
インピーダンス調整部40Gによれば、低いオープン電圧であっても、電力変換を行うことが可能となる。従って、発電素子20に入力されるエネルギが低い場合でも、エネルギを電力として回収することができる。
【0121】
<変形例4>
図14(b)に示すように、変形例4に係る電源装置1Hの制御部90Hは、インピーダンス調整部40Hの出力端子40bに出力される電圧を利用して、制御を行ってもよい。変形例4の電源装置1Hは、変形例3のインピーダンス調整部40Gの構成に加えて、出力端子40bに接続された制御部90Hを有する。放電動作によって出力端子40bに出力される電圧は、時間の経過とともに低下する。制御部90Hは、出力端子40bに出力される電圧を監視する。制御部90Hは、放電動作を開始したときの電圧を基準として、所定の割合だけ電圧が低下したとき、放電動作から充電動作に切り替える。例えば、放電動作を開始したときの電圧を100%と規定する。放電動作を開始したときの電圧に対して出力端子40bの電圧が90%以下に低下したとき、放電動作から充電動作に切り替えてもよい。
【0122】
<変形例5>
図15に示すように、変形例5の電源装置1Jは、インピーダンス調整部40Jと、制御部90Jと、を有する。変形例5のインピーダンス調整部40Jは、4個のスイッチ43a、43b、43c、43dと、2個のキャパシタ41a、41bと、をさらに有する。この構成は、変形例3のインピーダンス調整部40Gを並列に接続したものである。
【0123】
具体的には、スイッチ43aは、入力端子40aとスイッチ43bとキャパシタ41aとに接続される。スイッチ43bは、スイッチ43aとキャパシタ41aと出力端子40bとに接続される。キャパシタ41aは、スイッチ43a、43bと接地電位GNDとに接続される。スイッチ43cは、入力端子40aとスイッチ43dとキャパシタ41bとに接続される。スイッチ43dは、スイッチ43cとキャパシタ41bと出力端子40bとに接続される。キャパシタ41bは、スイッチ43c、43dと接地電位GNDとに接続される。スイッチ43a、43dは、制御信号λ1によって制御される。スイッチ43b、43cは、制御信号λ2によって制御される。制御部90Jは、インピーダンス調整部40Jの出力端子40bの電圧を用いて充電動作と放電動作とを切り替える。制御部90Jは、予め設定した期間に基づいて、定期的に動作を切り替えてもよい。
【0124】
インピーダンス調整部40Jは、一方のキャパシタ41aを充電するとき、他方のキャパシタ41bを放電させる。例えば、制御信号λ1<HIGH>及び制御信号λ2<LOW>が出力されたとき、キャパシタ41aは発電素子20に接続されるとともに電力変換部50Jから切断される。キャパシタ41bは、発電素子20から切断されるとともに電力変換部50Jに接続される。つまり、キャパシタ41aは充電される。キャパシタ41bは放電する。制御信号λ1<LOW>及び制御信号λ2<HIGH>が出力されたとき、キャパシタ41aは発電素子20から切断されると共に電力変換部50Jに接続される。キャパシタ41bは、発電素子20に接続されると共に電力変換部50Jから切断される。つまり、キャパシタ41aは放電する。キャパシタ41bは充電される。
【0125】
変形例5のインピーダンス調整部40Jは、2個のキャパシタ41a、41bを含んでいる。その結果、電力変換部50Jに電力を出力する期間を増加させることができる。従って、電力変換部50Jから電圧を出力させる期間(電圧変換期間)を増加させることができる。換言すると、電圧変換期間を増加させることができる。
【0126】
<変形例6>
上記の説明では、スイッチ部54をダイオード54dによって構成する例と、スイッチ部54をトランジスタ54tによって構成する例と、を説明した。スイッチ部54は、ダイオード及びトランジスタに限定されない。例えば、スイッチ部54は、電気抵抗素子によって構成することも可能である。
【0127】
<検討例>
検討例では、図16に示す電源装置1Kにおいて、二次電池10への電力の回収が二次電池10の寿命に及ぼす影響を確認した。電源装置1Kは、第3実施形態の電源装置1Cと類似した構成を有する。具体的には、電源装置1Kは、第3実施形態の電源装置1Cからインピーダンス調整部40を省略したものである。
【0128】
比較例として図17に示す回路200を提示する。回路200は、電池201と、負荷回路202と、を有している。電池201は、放電するのみである。電池201は、充電されない。電池201は、電圧(VBAT)を出力する。その結果、負荷回路202には電流(ICKT)が出力される。このとき、電流(ICKT)に起因するエネルギの喪失をΔECONVとして定義する。喪失エネルギ(ΔECONV)は、式(1)によって定義される。
【数1】
【0129】
二次電池10への電力の回収が二次電池10の寿命に及ぼす影響を評価する指標として、指標BLE(Battery Life Extension)を提示する。指標BLEは、式(2)によって定義される。
【数2】
ΔECONV:比較例の回路における喪失エネルギ。
ΔEPROP:検討例の回路のおける喪失エネルギ。
【0130】
電源装置1Kの喪失エネルギ(ΔEPROP)を得る。喪失エネルギ(ΔEPROP)は、式(3)によって定義される。
【数3】
ΔE:電圧変換部53に入力される電流(IDIS)に起因する喪失エネルギ。
ΔE:蓄電部51から二次電池10に出力される回収エネルギ。
【0131】
喪失エネルギ(ΔE)は、式(4)により定義される。
【数4】
【0132】
回収エネルギ(ΔE)は、式(5)により定義される。
【数5】
【0133】
なお、図16に示されるその他の変数は、式(6)~(8)によって定義される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0134】
上述した式に対して、現実的な値を代入し、二次電池10の寿命を評価した。評価に用いた値は、以下のとおりである。
【0135】
電圧(VBAT):3V
電流(IDIS):1×10-4
電圧(VTEG):0.6V
抵抗(RTEG):1×10Ω
キャパシタ容量(C):1×10-6
電圧(ΔV):0.1V
変換効率(η):0.94
電流(ICHG):1.06×10-4
電流(ICKT):1.00×10-5
電流(I):9.61×10-5
時間(T):1.04×10-3
【0136】
図18は、評価の結果を示すグラフである。横軸は、DC/DCコンバータの効率を示す。縦軸は、バッテリ寿命の延びの指標(BLE)を示す。グラフG17aは、負荷回路101、202が消費する電流(ICKT)を20μAとした場合の結果である。グラフG17bは、負荷回路101、202が消費する電流(ICKT)を10μAとした場合の結果である。グラフG17cは、負荷回路101、202が消費する電流(ICKT)を5μAとした場合の結果である。
【0137】
負荷回路101、202が消費する電流(ICKT)の値によらず、DC/DCコンバータの変換効率が90%以上であるとき、指標(BLE)は、1より大きいことがわかった。つまり、二次電池10への電力の回収によって、二次電池10の寿命が延びることがわかった。例えば、電流(ICKT)が5μAであり変換効率(η)が92%である場合には、負荷回路101が消費する電力は、全て発電素子20が出力する電力によって賄えることがわかった。換言すると、理論的には、二次電池10において電力の消耗は発生しない。実際には、二次電池10における自然放電などの特性によって、二次電池10の寿命は有限である。つまり、二次電池10の寿命は、自然放電特性によって決まる。DC/DCコンバータの変換効率(η)は、市販の部品によって90%を超えることは可能である。従って、現実的な動作変数によれば、二次電池10への電力回収によって、二次電池10の寿命は数倍から10倍にまで延長できることが明らかになった。
【符号の説明】
【0138】
1…電源装置、10…二次電池、20…発電素子、22…出力抵抗、30…スイッチ部、40…インピーダンス調整部、41…キャパシタ、42…出力抵抗、50…電力変換部、50a…入力端子、50b…出力端子(第1出力端子)、50c…出力端子(第2出力端子)、51…蓄電部、51f…キャパシタ、52…配分部、53…電圧変換部、54…スイッチ部、54d…ダイオード、54t…トランジスタ、101…負荷回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18