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特許7550572受信端末、配信サーバ、受信方法及び受信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】受信端末、配信サーバ、受信方法及び受信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/462 20110101AFI20240906BHJP
   H04L 67/02 20220101ALI20240906BHJP
   H04N 21/2662 20110101ALI20240906BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20240906BHJP
【FI】
H04N21/462
H04L67/02
H04N21/2662
H04N21/442
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020144474
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039452
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】西出 彩花
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518350(JP,A)
【文献】特開2014-192589(JP,A)
【文献】特開2017-028622(JP,A)
【文献】特開2015-019329(JP,A)
【文献】特開2014-225810(JP,A)
【文献】特開2017-175597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04L 67/00 - 67/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のビットレート毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームが格納された配信サーバから、前記メインストリームのいずれかを選択しつつ前記セグメントを受信する受信端末であって、
視聴状況に応じて前記メインストリームのいずれかを選択し、受信対象のセグメントを決定する選択部と、
前記選択部により決定されたセグメントを前記配信サーバから取得する取得部と、を備え、
前記配信サーバには、ビットレートが相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、ビットレートが相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームがさらに格納され、
前記選択部は、前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへ選択を変更した際に、受信対象として、前記画質遷移用ストリームのセグメントを決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定する受信端末。
【請求項2】
前記選択部は、受信対象として、複数の前記画質遷移用ストリームから複数のセグメントを連続して決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定する請求項1に記載の受信端末。
【請求項3】
前記選択部は、前記第1メインストリームと前記第2メインストリームとの間に中間のビットレートのメインストリームが一つ以上存在する場合、当該中間のビットレートを経由する前記複数のセグメントを決定する請求項2に記載の受信端末。
【請求項4】
前記第1メインストリームのビットレートから、前記第2メインストリームのビットレートまでの範囲を分割した複数の範囲それぞれに対応して前記画質遷移用ストリームが設けられる請求項2に記載の受信端末。
【請求項5】
前記選択部は、前記取得部により取得されるセグメントを保存するバッファ長が所定以上の場合に、複数の前記画質遷移用ストリームから複数のセグメントを連続して決定する請求項2から請求項4のいずれかに記載の受信端末。
【請求項6】
複数の映像品質毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームと、映像品質が相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、映像品質が相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームと、を格納し、
受信端末における前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへの遷移要求に応じて、前記画質遷移用ストリームのセグメントの後、前記第2メインストリームのセグメントを配信する配信サーバ。
【請求項7】
複数のビットレート毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームが格納された配信サーバから、受信端末が前記メインストリームのいずれかを選択しつつ前記セグメントを受信する受信方法であって、
視聴状況に応じて前記メインストリームのいずれかを選択し、受信対象のセグメントを決定する選択ステップと、
前記選択ステップにおいて決定されたセグメントを前記配信サーバから取得する取得ステップと、を実行し、
前記配信サーバには、ビットレートが相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、ビットレートが相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームがさらに格納され、
前記選択ステップにおいて、前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへ選択を変更した際に、受信対象として、前記画質遷移用ストリームのセグメントを決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定する受信方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の受信端末としてコンピュータを機能させるための受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプティブストリーミング配信を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットにおけるストリーミング動画配信では、専用のサーバ及び専用のプロトコルによる配信方式から、汎用的なWebサーバによりHTTPプロトコルを用いて配信する方式への移行が進んでおり、多様なデバイス向けの配信において主流の方式となっている。HTTPプロトコルによるストリーミング配信方式、特にアダプティブストリーミングの方式としては、ITベンダによる独自技術が普及している他、ストリーミング配信方式の統一を意図した国際標準規格であるMPEG-DASH(ISO/IEC23009-1)が策定された。
【0003】
いずれの技術も基本的なコンセプトは同様であり、Webサーバには、動画コンテンツを一つ又は複数の品質(解像度又はビットレート)でエンコードしたストリームを、それぞれ数秒から数十秒程度のファイルに分割したセグメントと、動画コンテンツの属性及びURLを記述したマニフェストファイルが用意される。受信端末は、マニフェストファイルから、自端末の画面の解像度及び伝送路の帯域の状態などを考慮して品質を選択すると、次々とセグメントを受信し、1本の動画コンテンツにつなぎ合わせて再生する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
品質の選択手法については、規格上の決まりはなく、ネットワークの状況や受信端末のバッファ残量などを用いて制御する手法が広く用いられている(例えば、非特許文献2参照)。また、特許文献1では、受信端末がセグメントを受信する度に現在の伝送速度を決定し、期待される将来の伝送速度に関係する統計情報を現在の伝送速度の関数として取得し、統計情報から目標伝送速度を導出し、目標伝送速度に従って後続のセグメントを受信する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-506644号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】“次世代動画配信技術「MPEG-DASH」技術概要と標準化・関連技術動向”,映像情報メディア学会誌,Vol. 67,No. 2,2013,pp. 109-115
【文献】“Neural Adaptive Video Streaming with Pensieve”,SIGCOMM,Aug. 2017,pp. 197-210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のアダプティブストリーミングの手法では、例えば通信状況の悪化により高ビットレートのストリームから低ビットレートのストリームに変更する際に、変更前後のビットレートの差が大きいと、視聴者が知覚する画質の低下が大きくなる課題があった。
これに対して、ビットレートが異なる多数のストリームを用意し、高ビットレートから低ビットレートまでストリームを段階的に変更していく方法もあるが、ストリームを生成する処理負荷、及びストリームを保存するストレージの負荷が増大する。
【0008】
本発明は、動画のストリーミング再生において、ビットレート変更時の急激な画質低下を抑制できる受信端末、配信サーバ、受信方法及び受信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る受信端末は、複数のビットレート毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームが格納された配信サーバから、前記メインストリームのいずれかを選択しつつ前記セグメントを受信する受信端末であって、視聴状況に応じて前記メインストリームのいずれかを選択し、受信対象のセグメントを決定する選択部と、前記選択部により決定されたセグメントを前記配信サーバから取得する取得部と、を備え、前記配信サーバには、ビットレートが相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、ビットレートが相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームがさらに格納され、前記選択部は、前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへ選択を変更した際に、受信対象として、前記画質遷移用ストリームのセグメントを決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定する。
【0010】
前記選択部は、受信対象として、複数の前記画質遷移用ストリームから複数のセグメントを連続して決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定してもよい。
【0011】
前記選択部は、前記第1メインストリームと前記第2メインストリームとの間に中間のビットレートのメインストリームが一つ以上存在する場合、当該中間のビットレートを経由する前記複数のセグメントを決定してもよい。
【0012】
前記第1メインストリームのビットレートから、前記第2メインストリームのビットレートまでの範囲を分割した複数の範囲それぞれに対応して前記画質遷移用ストリームが設けられてもよい。
【0013】
前記選択部は、前記取得部により取得されるセグメントを保存するバッファ長が所定以上の場合に、複数の前記画質遷移用ストリームから複数のセグメントを連続して決定してもよい。
【0014】
本発明に係る配信サーバは、複数の映像品質毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームと、映像品質が相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、映像品質が相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームと、を格納し、受信端末における前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへの遷移要求に応じて、前記画質遷移用ストリームのセグメントの後、前記第2メインストリームのセグメントを配信する。
【0015】
本発明に係る受信方法は、複数のビットレート毎にセグメントに時分割された複数のメインストリームが格納された配信サーバから、受信端末が前記メインストリームのいずれかを選択しつつ前記セグメントを受信する受信方法であって、視聴状況に応じて前記メインストリームのいずれかを選択し、受信対象のセグメントを決定する選択ステップと、前記選択ステップにおいて決定されたセグメントを前記配信サーバから取得する取得ステップと、を実行し、前記配信サーバには、ビットレートが相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、ビットレートが相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームがさらに格納され、前記選択ステップにおいて、前記第1メインストリームから前記第2メインストリームへ選択を変更した際に、受信対象として、前記画質遷移用ストリームのセグメントを決定した後、前記第2メインストリームのセグメントを決定する。
【0016】
本発明に係る受信プログラムは、前記受信端末としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、動画のストリーミング再生において、ビットレート変更時の急激な画質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態が前提とするアダプティブストリーミングを実現するためのシステム構成を示す図である。
図2】実施形態における受信端末の機能構成を示す図である。
図3】実施形態における映像品質リストを例示する図である。
図4】高品質及び低品質の2種類のメインストリームからなる従来のアダプティブストリーミング方式を例示する図である。
図5】実施形態におけるストリーミング方式を例示する図である。
図6A】実施形態における画質遷移用ストリームのセグメントが連続して挿入される第1の例を示す図である。
図6B】実施形態における画質遷移用ストリームのセグメントが連続して挿入される第2の例を示す図である。
図7】実施形態における受信端末によるセグメントの受信方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態が前提とするアダプティブストリーミングを実現するためのシステム構成を示す図である。
【0020】
映像データは、エンコーダによって複数の映像品質で別々にエンコードされ、品質毎に数秒単位に時分割されたセグメントが生成される。図の例では、低品質な映像ストリームのセグメント1~4、中品質な映像ストリームのセグメント1’~4’、高品質な映像ストリームのセグメント1”~4”が生成されている。
また、マニフェストファイルには、各セグメントのURL、品質毎のビットレート及び解像度などの属性情報が登録される。
生成されたセグメント及びマニフェストファイルは、Webサーバに供給される。
【0021】
受信端末は、Webサーバからマニフェストファイルを受信し、マニフェストファイルからビットレート及びセグメントの構成を把握する(1)。次に、受信端末は、自端末における視聴画面の解像度及びネットワークの受信帯域の状況に基づいて、セグメント単位で映像品質を選択し、HTTPプロトコルにより受信する(2)。続いて、受信端末は、受信したセグメントをマニフェストファイルに従って順番通りにつなぎ合わせ、例えば、1”、2’、3、4”の順に再生する(3)。
このように、受信端末は、(2)と(3)の処理を繰り返すことにより、一連の動画コンテンツを受信し再生を継続することができる。
【0022】
これに対して、本実施形態における配信システム1では、品質毎の複数のメインストリームに加えて、画質遷移用ストリームが設けられ、後述の受信方法により、いずれかのストリームのセグメントが選択される。
【0023】
図2は、本実施形態における受信端末10の機能構成を示す図である。
配信システム1は、受信端末10と配信サーバ20とを備える。受信端末10と配信サーバ20とは、インターネットを介して接続されている。
配信サーバ20は、受信端末10によって指定されたセグメントを配信するサーバであり、一般的なWebサーバであってよい。
【0024】
受信端末10は、制御部11及び記憶部12の他、画像及び音声の出力部13、通信インタフェース(I/F)14を含む各種インタフェースを備えた情報処理装置であり、記憶部12に格納されたソフトウェア(制御プログラム)を制御部11が実行することにより、本実施形態の各種機能が実現される。
【0025】
受信端末10の制御部11は、マニフェスト取得部111と、セグメント選択部112と、セグメント取得部113と、バッファ制御部114と、再生部115と、スループット計測部116とを備える。
また、記憶部12は、映像品質リスト121と、バッファ122とを備える。
【0026】
マニフェスト取得部111は、ユーザが所望した番組のリクエストを配信サーバ20に送信し、このリクエストへのレスポンスとしてマニフェストファイルを受信する。マニフェスト取得部111は、受信したマニフェストファイルを解析し、番組映像をエンコードした複数のストリームの映像品質の識別子毎に、ストリームのビットレート、及び再生時刻とセグメントのURLとを対応付けたセグメントURLリストを記述した映像品質リスト121を作成する。
映像品質リスト121は、ストリーム種別(通常の動画再生に用いるメインストリーム、又は画質遷移用ストリーム)毎に分類して記憶部12に記憶される。
【0027】
図3は、本実施形態における映像品質リスト121を例示する図である。
この例では、映像品質識別子が1、2、1-2の3種類の映像品質のストリームが存在し、それぞれの映像品質識別子に、ビットレート及びセグメントURLリストが対応付けられ、ストリーム種別毎に保存されている。
ここで、映像品質識別子1-2の画質遷移用ストリームは、ビットレートが12Mbpsである映像識別子1のメインストリームから、ビットレートが2Mbpsである映像識別子2のメインストリームに、再生するストリームを変更する際に挿入するためのセグメントで構成されたストリームを表す。
【0028】
セグメント選択部112は、視聴状況に応じて、例えば、再生部115から入力される現在再生時刻(例えば、番組の再生開始からの経過時間)と、バッファ制御部114から入力されるバッファリング情報とに基づいて、バッファ122に挿入されているセグメントの最終時刻に続く取得対象のセグメントを決定する。
具体的には、セグメント選択部112は、バッファ残量、すなわちバッファ122に挿入されているセグメントの最終時刻と現在再生時刻との差分がバッファ閾値(例えば1秒)を低下した場合に、スループット計測部116から入力されるスループット値に基づいて、映像品質リスト121から、メインストリームのいずれかを選択して取得対象のセグメントを決定し、このセグメントのURLをセグメント取得部113に出力する。
【0029】
セグメント取得部113は、セグメント選択部112から取得対象のセグメントのURLが入力されると、このURLを含むリクエストを配信サーバ20に送信し、リクエストへのレスポンスとして配信サーバ20から対象のセグメントを受信する。
また、セグメント取得部113は、受信したセグメントをバッファ制御部114に出力すると共に、リクエストに要した時間、及び取得したセグメントのバイト数の情報をスループット計測部116に出力する。
【0030】
バッファ制御部114は、セグメント取得部113からセグメントが入力されると、このセグメントの再生開始時刻と再生継続時間(セグメント長)とを対応付けてバッファ122に保存し、再生部115から要求された再生開始時刻のセグメントを順次出力する。
また、バッファ制御部114は、現在の保存中の全セグメントについての再生開始時刻及び再生継続時間を含むバッファリング情報を、セグメント選択部112に出力する。
【0031】
再生部115は、現在再生時刻に応じてバッファ制御部114から順次セグメントを取得し、取得したセグメントをセグメントのメディア形式(映像、音声、テキストなど)に従ってデコードして出力部13に提供する。
また、再生部115は、現在再生時刻の情報と、現在選択されている映像品質の情報をセグメント選択部112に出力する。
出力部13は、再生部115から入力されたデコード済みのメディアデータを、このメディアの形式に従って提示(例えば、映像表示)する。
【0032】
スループット計測部116は、セグメント取得部113から入力されたリクエストに要した時間、及び取得したセグメントのバイト数の情報からスループット値を算出する。例えば、スループット値=(セグメントのバイト数)/(リクエストに要した時間)としてもよいし、過去のN(例えば3)回分の算出結果の平均値としてもよい。
【0033】
ここで、本実施形態における画質遷移用ストリームの概念を説明する。
配信サーバ20には、ビットレートが相対的に高い第1メインストリームのビットレートから、ビットレートが相対的に低い第2メインストリームのビットレートまでの範囲で、ビットレートを段階的に下げていくセグメントが連続した画質遷移用ストリームがさらに格納される。
そして、セグメント選択部112は、第1メインストリームから第2メインストリームへ選択を変更した際に、受信対象として、画質遷移用ストリームのセグメントを決定した後、第2メインストリームのセグメントを決定する。
【0034】
図4は、高品質及び低品質の2種類のメインストリームからなる従来のアダプティブストリーミング方式を例示する図である。
従来は、高品質から低品質に映像品質を変更する際には、ある時点t1で、高品質なストリームのセグメントA1から、低品質なストリームのセグメントB2に切り替わる。このため、映像品質(ビットレート)が大きく変動するため急激に画質が低下する。
【0035】
図5は、本実施形態におけるストリーミング方式を例示する図である。
この例では、図4に示した2種類のメインストリームに加えて、これらのストリームの間でビットレートを段階的に下げていく画質遷移用ストリームが用意されている。
【0036】
画質遷移用ストリームは、例えば、1セグメント当たり、高品質ストリームのビットレート(例えば、12Mbps)と低品質ストリームのビットレート(例えば、2Mbps)の間で、等間隔に4段階のビットレートを設けて、段階的にビットレートを下げていくストリームである。図の例では、2秒のセグメントの中で、0.5秒毎に4段階のビットレート(例えば、10Mbps、8Mbps、6Mbps、4Mbps)が設けられている。
【0037】
このとき、セグメント選択部112は、高品質から低品質に映像品質を変更する際には、高品質(高ビットレート)なメインストリームのセグメントA1と低品質(低ビットレート)なメインストリームのセグメントB3の間に、画質遷移用ストリームのセグメントC2を挟むことで、画質の低下を緩やかにする。
【0038】
ここで、例えば、高品質なメインストリームの画質(ビットレート)と低品質なメインストリームの画質の差が大きいとき、又はセグメント長が長いときには、4段階よりも多い段階を設けてもよい。
また、所定以上に十分なバッファ長が確保されている際には、複数種類の画質遷移用ストリームのセグメントが連続で挿入されてもよい。
【0039】
図6Aは、本実施形態における画質遷移用ストリームのセグメントが連続して挿入される第1の例を示す図である。
この例では、高品質なメインストリームと低品質なメインストリームとの間に、中間品質のメインストリームが一つ以上存在する。
【0040】
この場合、セグメント選択部112は、中間品質のメインストリームのビットレートを経由する複数のセグメントを決定する。すなわち、高品質から中品質へストリームを変更するための画質遷移用ストリームからセグメントD2が、中品質から低品質へストリームを変更するための画質遷移用ストリームからセグメントE3が、それぞれ選択され、高品質なメインストリームのセグメントA1と低品質なメインストリームのセグメントB4との間に、セグメントD2及びE3が挿入される。これにより、1セグメントでストリームを遷移させる場合に比べて、画質の変化が緩やかになる。
【0041】
図6Bは、本実施形態における画質遷移用ストリームのセグメントが連続して挿入される第2の例を示す図である。
この例では、中間品質のメインストリームは存在しないが、配信サーバ20には、高品質なメインストリームのビットレートから、低品質なメインストリームのビットレートまでの範囲を分割した複数の範囲それぞれに対応して画質遷移用ストリームが設けられる。なお、範囲の分割は等分割でなくてもよい。
【0042】
この場合も、図6Aの第1の例と同様に、高品質なメインストリームのセグメントA1と低品質なメインストリームのセグメントB4との間に、複数のセグメントD2及びE3が挿入されることで、画質の変化が緩やかになる。
【0043】
図7は、本実施形態における受信端末10によるセグメントの受信方法を示すフローチャートである。
なお、本フローチャートの処理に先立って、受信端末10は、既にマニフェストファイルを取得しており、映像品質リスト121を作成済みであることとする。また、映像品質リスト121のうち、初期値としての映像品質が選択されていることとする。
【0044】
ステップS1において、セグメント選択部112は、再生部115から入力される現在再生時刻と、バッファ制御部114から入力されるバッファリング情報とに基づいて、バッファ残量がバッファ閾値より低下しているか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS2に移る。一方、判定がNOの場合、十分なバッファ残量があるため、セグメントの受信はスキップされ、処理はステップS11に移る。
【0045】
ステップS2において、セグメント選択部112は、記憶部12から映像品質リスト121を取得し、スループット計測部116から入力されたスループット値よりもビットレートが小さく、かつ、最大のビットレートのメインストリームを選択し、映像品質識別子を保存する。
【0046】
ステップS3において、セグメント選択部112は、選択した映像品質(ビットレート)がバッファ122に保存された最終セグメントの映像品質より低いか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS4に移り、判定がNOの場合、処理はステップS8に移る。
【0047】
ステップS4において、セグメント選択部112は、バッファ122に保存された最終セグメントの映像品質から、ステップS2で選択された映像品質へ変更するための画質遷移用ストリームを選択する。
【0048】
ステップS5において、セグメント選択部112は、選択した画質遷移用ストリームのセグメントURLリストから、バッファ122に保存されたセグメントの最終時刻に続くセグメントのURLを、取得対象セグメントのURLとして抽出し、セグメント取得部113に通知する。
【0049】
ステップS6において、セグメント取得部113は、抽出された取得対象セグメントのURLを含むセグメント要求を配信サーバ20に送信し、要求に対するセグメントを受信する。
【0050】
ステップS7において、バッファ制御部114は、ステップS6で受信されたセグメントをバッファ122に挿入する。
【0051】
ステップS8において、セグメント選択部112は、選択した映像品質のセグメントURLリストから、バッファ122に保存されたセグメントの最終時刻に続くセグメントのURLを、取得対象セグメントのURLとして抽出し、セグメント取得部113に通知する。
例えば、図3の映像品質リスト121において、選択された映像品質の映像品質識別子が2で、バッファ122に0~4秒のセグメントが存在する場合、セグメントの再生開始時刻が4秒であるv2_3.mp4が抽出される。
【0052】
ステップS9において、セグメント取得部113は、抽出された取得対象セグメントのURLを含むセグメント要求を配信サーバ20に送信し、要求に対するセグメントを受信する。
【0053】
ステップS10において、バッファ制御部114は、ステップS9で受信されたセグメントをバッファ122に挿入する。
【0054】
ステップS11において、制御部11は、再生を終了するか否か、すなわち、現在再生時刻が番組の終了時刻に到達したか、又は停止ボタンの押下などにより停止が指示されたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理は終了し、判定がNOの場合、処理はステップS1に戻り番組の再生が継続される。
【0055】
本実施形態によれば、受信端末10は、動画のストリーミング再生中に、スループットの低下など、視聴状況の変化に応じて、映像品質、すなわちビットレートを下げたストリームへの変更が見込まれる際には、別途設けられた画質遷移用ストリームのセグメントを挿入してから低ビットレートのストリームに変更する。これにより、受信端末10は、メインストリーム間でビットレートを段階的に下げていくことができ、急激な画質低下を抑制できる。この結果、視聴者は、映像品質の低下に気付き難くなり、安定した視聴が可能となる。
【0056】
また、受信端末10は、画質遷移用ストリームのセグメントを複数連続して挿入してもよい。これにより、受信端末10は、所定以上にビットレートの差が大きいストリーム間を遷移する場合にも、急激な画質低下を抑制できる。
【0057】
具体的には、変更前後のメインストリームに対して、中間品質のメインストリームが一つ以上存在する場合には、これらのメインストリーム間の画質遷移用ストリームから複数のセグメントが挿入される。
これにより、受信端末10は、一つの画質遷移用ストリームのみからセグメントを決定する場合に比べて、ビットレートの変化を緩やかにし、急激な画質低下を抑制できる。
【0058】
また、中間品質のメインストリームが用意されていない場合にも、メインストリーム間のビットレート差を分割した複数の範囲に対応した画質遷移用ストリームが複数設けられることにより、同様に、画質遷移用ストリームから複数のセグメントが挿入される。
これにより、受信端末10は、一つの画質遷移用ストリームのみからセグメントを決定する場合に比べて、ビットレートの変化を緩やかにし、急激な画質低下を抑制できる。
【0059】
受信端末10は、バッファ長が所定以上に確保されている場合に、複数の画質遷移用ストリームから複数のセグメントを連続して決定するように制御することで、受信環境に応じた適切な数のセグメントを用いてビットレートを制御できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0061】
前述の実施形態では、スループットとビットレートとを比較することにより取得対象のメインストリームが選択されたが、アダプティブストリーミングにおけるストリームの選択手法はこれに限られない。通信品質の状況を含む視聴状況に応じた、従来の様々な選択手法を適用することができる。
【0062】
また、前述の実施形態では、画質遷移用ストリームから挿入されるセグメントの数が一つ又は二つの場合を例示したが、バッファ長に応じて、三つ以上のセグメントが連続して挿入されてもよい。
さらに、画質遷移用ストリームを構成するセグメントにおいて、ビットレートを下げる時間間隔、及びビットレートの差分は、等間隔でなくてもよい。
【0063】
本実施形態では、主に受信端末10の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、セグメントを受信するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0064】
さらに、受信端末10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0065】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置のことをいう。
【0066】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 配信システム
10 受信端末
11 制御部
12 記憶部
13 出力部
20 配信サーバ
111 マニフェスト取得部
112 セグメント選択部
113 セグメント取得部
114 バッファ制御部
115 再生部
116 スループット計測部
121 映像品質リスト
122 バッファ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7