IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱輻射光源 図1
  • 特許-熱輻射光源 図2
  • 特許-熱輻射光源 図3
  • 特許-熱輻射光源 図4
  • 特許-熱輻射光源 図5
  • 特許-熱輻射光源 図6
  • 特許-熱輻射光源 図7
  • 特許-熱輻射光源 図8
  • 特許-熱輻射光源 図9
  • 特許-熱輻射光源 図10
  • 特許-熱輻射光源 図11
  • 特許-熱輻射光源 図12
  • 特許-熱輻射光源 図13
  • 特許-熱輻射光源 図14
  • 特許-熱輻射光源 図15
  • 特許-熱輻射光源 図16
  • 特許-熱輻射光源 図17
  • 特許-熱輻射光源 図18
  • 特許-熱輻射光源 図19
  • 特許-熱輻射光源 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】熱輻射光源
(51)【国際特許分類】
   H01K 7/00 20060101AFI20240906BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240906BHJP
   H01K 1/06 20060101ALI20240906BHJP
   H01K 1/08 20060101ALI20240906BHJP
   H01K 1/18 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01K7/00 B
G01N21/01 D
H01K1/06
H01K1/08
H01K1/18 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020155719
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049491
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 晃士
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0171120(US,A1)
【文献】特開2013-083478(JP,A)
【文献】特開2018-136576(JP,A)
【文献】特開2015-064532(JP,A)
【文献】特開2014-123476(JP,A)
【文献】国際公開第2007/139022(WO,A1)
【文献】特開2017-146192(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225726(WO,A1)
【文献】特開2004-271518(JP,A)
【文献】特開2009-042166(JP,A)
【文献】特開2014-053088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/01,21/3504
H01K 1/00-1/18
H05B 3/02,3/10
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を流すことでジュール熱を発生する電熱変換部と、
前記電熱変換部の片面上に設けられ、深さ又は開口部の寸法が異なる複数のキャビティを有し、前記ジュール熱を直接又は間接的に外界に赤外線を含む光として放出する放射部と、を備え、
隣接するキャビティの開口部の中心位置の距離をL、前記放射部の誘電率をεとしたとき、1μm<L*(ε/(ε+1)) 1/2 <20μmを満たす、熱輻射光源。
【請求項2】
前記複数のキャビティが並進対称性を持って配列される、請求項1に記載の熱輻射光源。
【請求項3】
前記放射部は、異なるサイズのキャビティが隣接した構造を含む単位格子を周期的に複数配列して構成される、請求項1又は2に記載の熱輻射光源。
【請求項4】
前記放射部は、同じサイズのキャビティを複数含んで構成されるセグメントを複数配列して構成される、請求項1又は2に記載の熱輻射光源。
【請求項5】
キャビティの開口部の形状に内含される最大の円の直径Dが500nm~20μmであり、キャビティの深さHとDが0.1<H/D<10.0を満たす、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項6】
前記電熱変換部上又は前記放射部上に、外界と接する保護部をさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項7】
前記電熱変換部を支持する基板をさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項8】
前記基板が貫通部又はキャビティを有する請求項に記載の熱輻射光源。
【請求項9】
前記電熱変換部に電気的に接続する電極部をさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項10】
前記電熱変換部がMo、T、Cu、Au、Cr、Pt、W、Hf、Nのいずれかを含む請求項1からのいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項11】
前記電熱変換部が二ケイ化モリブデン、窒化ハフニウム、窒化チタン、白金、タングステンのいずれかを含む請求項1から10のいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項12】
前記放射部の材料が前記電熱変換部の材料と同一である、請求項1から11のいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項13】
前記放射部がSi、O、N、Ce、Hfのいずれかを含む請求項1から12のいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項14】
前記放射部が酸化セリウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウムのいずれかを含む請求項1から13のいずれか一項に記載の熱輻射光源。
【請求項15】
前記保護部が酸化セリウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンのいずれかを含む請求項6に記載の熱輻射光源。
【請求項16】
前記電極部がAu、Cu、Ti、Ag、Al、Ni、W、V、Ptのいずれかを2種以上含む請求項に記載の熱輻射光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱輻射光源に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体を加熱すると、物体の温度、放射率、表面状態等に応じた放射スペクトルを有する電磁波が放出される熱輻射が生じる。このように熱輻射を利用した光源の利用法としては、光源と受光部とを隔てて配置し、光源と受光部との間に気体を導入することで、気体中の特定成分による赤外線吸収量を測定し、気体中の特定成分の濃度を算出する非分散赤外吸収型(NDIR:non-dispersive infrared)ガスセンサなどが知られている(例えば特許文献1)。例えば、呼気中の検出対象ガスの濃度を検出するために、検出対象ガスの他に、異なる波長帯に赤外線の吸収率のピークを持つ酸素の濃度をリファレンスとして測定することで、呼気中の検出対象ガスの濃度を検出する技術が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-271518号公報
【文献】特開2009-42166号公報
【文献】特開2014-53088号公報
【文献】特開2014-123476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱輻射を利用した小型の光源として、MEMS型ヒータが知られている。しかし、MEMS型ヒータを光源として用いた場合、測定には不要な波長を含む赤外線が放射されてしまい、エネルギー損失が大きい。
【0005】
上記のエネルギー損失を低減させる手段として、波長選択性を有する熱輻射光源が注目されている。波長選択性を有する熱輻射光源として、放射部に同一のサイズのキャビティが配列された熱輻射光源が知られている(例えば特許文献3及び特許文献4)。しかし、同一サイズのキャビティを周期的に配列する方法では、複数の波長帯における放射率を向上することはできないため、光源から放射された光の利用方法が限定されてしまう。例えば上記のガスセンサように複数の種類のガス濃度を測定するためには、波長選択性を有する熱輻射光源が複数必要となるため、ガスセンサの小型化と低消費電力化の両立が困難となる。
【0006】
本開示の目的は、複数の波長の赤外線を選択的に効率よく取り出すことができ、小型化及び低消費電力化が容易な熱輻射光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る熱輻射光源は、
電流を流すことでジュール熱を発生する電熱変換部と、
前記電熱変換部の片面上に設けられ、深さ又は開口部の寸法が異なる複数のキャビティを有し、前記ジュール熱を直接又は間接的に外界に赤外線を含む光として放出する放射部と、を備える。
【0008】
上記の熱輻射光源の概要は、本開示の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションは本開示に含まれ得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数の波長の赤外線を選択的に効率よく取り出すことができ、小型化及び低消費電力化が容易な熱輻射光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。
図2】第2の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。
図3】第3の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。
図4】第4の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。
図5】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図6】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図7】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図8】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図9】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図10】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図11】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図12】熱輻射光源の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図13】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図14】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図15】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図16】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図17】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図18】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図19】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図20】熱輻射光源の第2の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は本開示を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが必須であるとは限らない。
【0012】
[熱輻射光源]
本実施形態の熱輻射光源は、電熱変換部と、放射部を備える。
【0013】
一般に物体を加熱すると、温度、放射率、表面状態等に応じた放射スペクトルを有する電磁波が放出される熱輻射が生じる。
【0014】
本実施形態の熱輻射光源は、電流を流すことでジュール熱を発生する電熱変換部と、電熱変換部の片面上に形成された放射部を有し、熱を、直接又は間接的に外界に赤外線を含む光として放出する。放射部は、深さ又は開口部の寸法が異なる複数のキャビティ(凹部)を有する。本実施形態の熱輻射光源は、ガスセンサの用途に好適に用いることが出来る。また、本実施形態の熱輻射光源は、ガスセンサ以外の用途に用いることも出来る。本実施形態の熱輻射光源は、特に制限されないが、一例として液中成分濃度センサ及び膜厚測定器に使用され得る。
【0015】
[電熱変換部]
電熱変換部の全体としての形状は特に制限されないが、電流を流すことでジュール熱を発生する膜状、板状、棒状又は線状の形状となり得る。
【0016】
電熱変換部の材料に特に制限はないが、電流への耐性の観点から、Mo、Si、C、Ti、Ge、Al、Cu、Au、Cr、Pt、W、Hf、Nのいずれかを含むことが好ましい。高温における耐久性の観点から、MoSi2、SiC、HfN、TiN、Pt又はWを含むことがより好ましい。
【0017】
[放射部]
放射部の材料に特に制限はないが、放射部を高い温度に到達させる観点から、電熱変換部と同じ材料であることが好ましい。また、電熱変換部における電流密度を均一にし、電熱変換部全体の温度を均一にする観点から、放射部は25℃において電熱変換部よりも電気抵抗率が低い材料であることも好ましい。さらに波長選択性、耐酸化性、耐薬品性、耐摩耗性及びガスバリア性向上の観点から、放射部はSi、O、N、Ti、Al、Ce、Hfのいずれかを含むことが好ましい。さらに波長選択性、耐酸化性、耐薬品性、耐摩耗性及びガスバリア性を向上する観点から、酸化セリウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウムのいずれかであることがより好ましい。
【0018】
平面上に設けられ、片側が閉口端、もう片側が開口端である直方体型のキャビティでは、l、m、nを整数(l,m,n=0,1,2,...)、Lx,Lyをキャビティの開口部の一辺の長さ、Lzをキャビティの深さとしたとき、式(1)の波長において共鳴モードが発生する。
λlmn=2/((l/Lx)2+(m/Ly)2+((2n+1)/2Lz)21/2・・・(1)
【0019】
また、導電体上に設けられたキャビティが周期的な構造を持つとき、表面プラズモンポラリトン(SPP)の共鳴モードは、Λを配列の周期、εを導電体の誘電率、iとjを整数とすると、式(2)の波長において共鳴モードが発生する。
λSPP=Λ*(ε/(ε+1)/(i2+j2))1/2・・・(2)
【0020】
ジュール熱を直接又は間接的に外界に赤外線を含む光として放出するとは、電熱変換部に電流を流すことでジュール熱を直接光として外界に放出することを意味してよく、電熱変換部に接した固体が熱伝導によって加熱されることで間接的に固体から発生する赤外線を含む光を外界に放出することを意味してよい。
【0021】
選択的に放射強度が向上する赤外線の波長は特に制限されないが、例えばガスセンサとして使用する場合、測定対象が炭酸ガスの場合に4.3μm、メタンの場合に3.3μm、エタノールの場合に9.5μmであることが好ましい。
【0022】
赤外の波長領域において放射強度を増大させる観点から、キャビティの開口部の形状に内含される最大の円の直径Dは500nm~20μmであることが好ましく、1μm~10μmであることがさらに好ましい。また、キャビティの深さHとDは、0.1<H/D<10.0を満たすことが好ましく、0.3<H/D<5.0を満たすことがさらに好ましい。
【0023】
キャビティの配列方法に特に制限はないが、キャビティ間において表面プラズモンを共振させ、放射率が向上する波長を増やす観点から、複数のキャビティが並進対称性を持つことが好ましい。放射部に生じる応力を均一にし、機械的強度を向上する観点から、異なるサイズのキャビティが隣接する単位格子を周期的に複数配列する方法が好ましい。また、異なる波長を持つ光を分離して利用することを可能とする制御性の観点から、同じサイズのキャビティを複数含んで構成されるセグメントを複数配列して構成する方法が好ましい。隣接するキャビティの開口部の中心位置の距離をLとしたとき、赤外の波長領域において放射強度を増大させる観点から、1μm<L*(ε/(ε+1))1/2<20μmを満たすことが好ましい。ここで、この式において、εは放射部の誘電率である。
【0024】
[保護部]
本実施形態の熱輻射光源は、電熱変換部上又は放射部上に、外界と接する保護部をさらに備えることが好ましい。保護部の材料に特に制限はないが、耐酸化性、耐薬品性、耐摩耗性及びガスバリア性向上の観点からSi、O、N、Ti、Al、Ceのいずれかを含むことが好ましい。さらに耐酸化性、耐薬品性、耐摩耗性、ガスバリア性を向上する観点から、酸化セリウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンであることがより好ましい。
【0025】
[基板]
本実施形態の熱輻射光源は、電熱変換部を支持する基板をさらに備えることが好ましい。電熱変換部の急峻な温度変化を実現するための観点から、基板は貫通部又はキャビティを有することが好ましい。基板の材料に特に制限はないが、高温動作時の耐久性の観点から、シリコン、ガリウムひ素、アルミナ、サファイア、酸化アルミニウムのいずれかであることが好ましい。
【0026】
[電極部]
本実施形態の熱輻射光源は、電熱変換部に電気的に接続する電極部をさらに備えることが好ましい。電極部の材料に特に制限はないが、コンタクト抵抗抑制の観点から、Au、Cu、Ti、Ag、Al、Ni、W、V、Ptのいずれかを含むことが好ましく、Ni/V合金、Au、Cu、Ti、W、Ptのうち2元素以上を有する積層構造がより好ましい。
【0027】
次に、図面を用いて本実施形態の熱輻射光源が詳細に説明される。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。本実施形態の熱輻射光源では、キャビティ構造を有する電熱変換部30上に誘電体の放射部20が設けられている。このように、熱輻射光源は、放射部20が深さと開口部の寸法が異なる複数のキャビティを有し、小型化及び低消費電力化が容易であり、複数の特定の波長において高い放射率を有する。また、キャビティ構造を有する電熱変換部30上に、キャビティ構造を有する放射部20を備えることよって、熱輻射光源から放射される赤外線を含む光の強度が向上し、高温動作時における電熱変換部30の酸化及びキャビティ構造の変形を低減することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図2は第2の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。本実施形態の熱輻射光源では、異なる深さ及び開口部の寸法を持つ2つのキャビティの単位格子が、並進対称性を持って配列されている。これにより、放射部20に発生する応力が均一になり、機械的強度を向上することができる。
【0030】
[第3の実施形態]
図3は第3の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。本実施形態の熱輻射光源では、平坦な電熱変換部30の上に、キャビティ構造を持つ放射部20が形成されている。電熱変換部30が平坦であることで、電熱変換部30における電流密度が均一になり、電熱変換部30が局所的に高温になることによる劣化を低減することができる。第3の実施形態の変形例として、電熱変換部30と放射部20とが同一の材料で構成されてよい。熱輻射光源は、小型化及び低消費電力化が容易であり、複数の特定の波長において高い放射率を有する。
【0031】
[第4の実施形態]
図4は第4の実施形態の熱輻射光源の構成を説明するための模式図である。本実施形態の熱輻射光源では、平坦な電熱変換部30の上に形成された放射部20において、異なる深さ及び開口部の寸法を持つ2つのキャビティの単位格子が、並進対称性を持って配列されている。これにより、放射部20に発生する応力が均一になり、機械的強度を向上できる。
【0032】
[熱輻射光源の製造方法]
次に、図面を使って本実施形態の熱輻射光源の第1の製造方法の例が説明される。図5図12は第1の製造方法を説明するための模式図である。まず、基板50の上にLP-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)、PE-CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)又はスパッタリング法などの公知の方法で保護部40が形成される(図5参照)。次に、保護部40の上に電熱変換部30の材料がスパッタリング法などの公知の方法で蒸着される(図6参照)。次に、電熱変換部30の一部がエッチング等の公知の方法で除去される(図7参照)。次に、電熱変換部30の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、第1の寸法のキャビティが形成される(図8参照)。次に、電熱変換部30の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、第2の寸法のキャビティが形成される(図9参照)。次に、電熱変換部30の周囲に放射部20がLP-CVD、PE-CVD又はスパッタリング法などの公知の方法で形成される(図10参照)。次に、放射部20の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、電極部60の材料が蒸着される(図11参照)。最後に、必要に応じて基板50の一部がエッチングされることにより、上記の実施形態(例えば第1の実施形態)の熱輻射光源が得られる(図12参照)。
【0033】
上記の工程において、電熱変換部30の一部の除去は必須ではないが、これにより電熱変換部30が露出しない構造となるため、動作安定性の観点から好ましい場合がある。電熱変換部30の一部の除去は、電熱変換部30の材料を形成する際にリフトオフ法などの公知の方法で特定の領域に蒸着されないようにしても同様の結果が得られる。
【0034】
次に、図面を使って本実施形態の熱輻射光源の第2の製造方法の例が説明される。図13図20は第2の製造方法を説明するための模式図である。まず、基板50の上にLP-CVD、PE-CVD又はスパッタリング法などの公知の方法で保護部40が形成される(図13参照)。次に、保護部40の上に電熱変換部30の材料がスパッタリング法などの公知の方法で蒸着される(図14参照)。次に、電熱変換部30の一部がエッチング等の公知の方法で除去される(図15参照)。次に、電熱変換部30の周囲に放射部20がLP-CVD、PE-CVD又はスパッタリング法などの公知の方法で形成される(図16参照)。次に、放射部20の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、第1の寸法のキャビティが形成される(図17参照)。次に、放射部20の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、第2の寸法のキャビティが形成される(図18参照)。次に、放射部20の一部がエッチング等の公知の方法で除去されて、電極部60の材料が蒸着される(図19参照)。最後に、必要に応じて基板50の一部がエッチングされることにより、上記の実施形態(例えば第3の実施形態)の熱輻射光源が得られる(図20参照)。
【0035】
以上、本開示を実施の形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0036】
特許請求の範囲、明細書及び図面中において示した装置、システム、プログラム及び方法における動作、手順、ステップ及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0037】
20 放射部
30 電熱変換部
40 保護部
50 基板
60 電極部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20