(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240906BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240906BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240906BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/78 V
H01L21/304 631
B23K26/53
B23K26/364
(21)【出願番号】P 2020212933
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130516(JP,A)
【文献】特開2016-157892(JP,A)
【文献】特開2006-087673(JP,A)
【文献】特開2017-107921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B23K 26/53
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に積層された機能層によってデバイスが形成されたウェーハを、該デバイスを区画する複数のストリートに沿って分割しデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、
デバイスが形成されたウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、
該保護部材が貼着されたウェーハに、該基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から照射し、該基板の内部に該ストリートに沿った改質層を形成するとともに、該改質層から伸展してウェーハの表面側に至る該ストリートに沿った亀裂を形成する亀裂形成ステップと、
該亀裂形成ステップ実施後、環状フレームの開口を塞ぐテープにウェーハの裏面側を固定し、ウェーハの表面側から該保護部材が剥離する貼り替えステップと、
該環状フレームに固定されたウェーハの表面に液状の保護膜を被覆する保護膜被覆ステップと、
該保護膜が被覆されたウェーハの表面側に、基板に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を該亀裂に沿って照射し、該ストリートに沿ったレーザー加工溝を形成して該機能層を分割する機能層分割ステップと、
該レーザー加工溝が形成されたウェーハから該保護膜を洗浄して除去する保護膜除去ステップと、
ウェーハに対して外力を付与し、該改質層を破断起点にしてウェーハを分割し、複数のデバイスチップを形成する分割ステップと、を備え、
該保護膜被覆ステップでは、ウェーハの表面側に露出した該亀裂の周辺は該保護膜の厚さが薄くなっていることを特徴とするデバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該分割ステップは、ウェーハを裏面側から研削砥石で研削することを含む請求項1に記載のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられる半導体デバイスチップは、シリコンやガリウムヒ素等の各種半導体ウェーハの表面にデバイスを形成し、ウェーハを薄化し、デバイスを区画するストリートに沿ってウェーハを分割してデバイスチップを製造する。デバイスチップは、ウェーハ1枚当たりのチップの個数を増やすために、ストリートを狭く細くする傾向にあり、従来用いられてきた切削ブレードによるダイシングからレーザー加工による加工が用いられるようになってきている。
【0003】
レーザーによる加工は、デバイスを形成する機能層(Low-k層等)を基板からの剥離無く分割するアブレーション加工(例えば、特許文献1参照)や、基板の内部に集光点を位置付けて基板の内部に破断起点となる改質層を形成する加工が使われる。
【0004】
また、チップの抗折強度を上げるため、所謂DBG(Dicing Before Grinding)やSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)といった、ストリートに沿って溝や改質層を形成してから研削して分割する方法が採用されることもある。とくに、SDBGは、レーザー加工により挟ストリートに対応でき、裏面チッピングがほぼ無いため抗折強度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、機能層を分割するためにアブレーション加工を行う場合、基板から出るデブリがデバイスに付着する事があり、それを防ぐ目的でウェーハの表面に、例えば水溶性の液状樹脂からなる保護層を被覆する。保護層はレーザー光線を遮ったり拡散させるため、保護層が無い場合に比べ高いパワーのレーザー光線を照射することになり、熱の影響によってレーザー加工溝周辺に歪みが発生し、抗折強度を下げてしまうという課題が有った。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、機能層が剥離することを抑制しながらもデバイスチップの抗折強度の低下を抑制することができるデバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のデバイスチップの製造方法は、基板の表面に積層された機能層によってデバイスが形成されたウェーハを、該デバイスを区画する複数のストリートに沿って分割しデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、デバイスが形成されたウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、該保護部材が貼着されたウェーハに、該基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から照射し、該基板の内部に該ストリートに沿った改質層を形成するとともに、該改質層から伸展してウェーハの表面側に至る該ストリートに沿った亀裂を形成する亀裂形成ステップと、該亀裂形成ステップ実施後、環状フレームの開口を塞ぐテープにウェーハの裏面側を固定し、ウェーハの表面側から該保護部材が剥離する貼り替えステップと、該環状フレームに固定されたウェーハの表面に液状の保護膜を被覆する保護膜被覆ステップと、該保護膜が被覆されたウェーハの表面側に、基板に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を該亀裂に沿って照射し、該ストリートに沿ったレーザー加工溝を形成して該機能層を分割する機能層分割ステップと、該レーザー加工溝が形成されたウェーハから該保護膜を洗浄して除去する保護膜除去ステップと、ウェーハに対して外力を付与し、該改質層を破断起点にしてウェーハを分割し、複数のデバイスチップを形成する分割ステップと、を備え、該保護膜被覆ステップでは、ウェーハの表面側に露出した該亀裂の周辺は該保護膜の厚さが薄くなっていることを特徴とする。
【0009】
前記デバイスチップの製造方法において、該分割ステップは、ウェーハを裏面側から研削砥石で研削することを含んでも良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のデバイスチップの製造方法は、機能層が剥離することを抑制しながらもデバイスチップの抗折強度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護部材貼着ステップを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護部材貼着ステップ後のウェーハの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の亀裂形成ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の亀裂形成ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の貼り替えステップ後のウェーハの斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜被覆ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜被覆ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の機能層分割ステップを一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の機能層分割ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図12】
図12は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜除去ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図13】
図13は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の第2貼り替えステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【
図14】
図14は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の分割ステップの要部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の分割ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るデバイスチップの製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、
図1に示されたウェーハ1を加工する方法である。実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の加工対象のウェーハ1は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板2とする円板状の半導体ウェーハ、又は光デバイスウェーハなどのウェーハである。
【0015】
ウェーハ1は、
図1に示すように、交差する複数のストリート3で区画された表面4の各領域それぞれにデバイス5が形成されている。デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等である。
【0016】
実施形態1において、ウェーハ1は、基板2の表面に機能層6が積層されている。機能層6は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(以下、Low-k膜と呼ぶ)と、導電性の金属により構成された導電体膜とを備えている。Low-k膜は、導電体膜と積層されて、デバイス5を形成する。導電体膜は、デバイス5の回路を構成する。このために、デバイス5は、基板2の表面に積層された機能層6の互いに積層されたLow-k膜と、Low-k膜間に積層された導電体膜とによって形成される。なお、ストリート3の機能層6は、Low-k膜により形成され、TEG(Test Element Group)を除いて導電体膜を備えていない。TEGは、デバイス5に発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用の素子である。
【0017】
実施形態1において、ウェーハ1は、ストリート3に沿って切断されて、複数のデバイスチップ7に分割される。なお、デバイスチップ7は、基板2の一部分とデバイス5とにより構成される。
【0018】
実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、基板2の表面に積層された機能層6によってデバイス5が形成されたウェーハ1を、デバイス5を区画する複数のストリート3に沿って分割し、デバイスチップ7を製造する方法である。実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、
図2に示すように、保護部材貼着ステップ101と、亀裂形成ステップ102と、貼り替えステップ103と、保護膜被覆ステップ104と、機能層分割ステップ105と、保護膜除去ステップ106と、第2貼り替えステップ107と、分割ステップ108と、を備える。
【0019】
(保護部材貼着ステップ)
図3は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護部材貼着ステップを示す斜視図である。
図4は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護部材貼着ステップ後のウェーハの斜視図である。保護部材貼着ステップ101は、デバイス5が形成されたウェーハ1の表面4側に保護部材である保護テープ10を貼着するステップである。
【0020】
実施形態1において、保護部材貼着ステップ101では、
図3に示すように、ウェーハ1と同径の円板状の保護テープ10の糊層をウェーハ1の表面4側に対向させて、
図4に示すように、保護テープ10をウェーハ1の表面4に貼着する。なお、保護テープ10は、可撓性と非粘着性を有する合成樹脂により構成された基材層と、基材層に積層された可撓性と粘着性とを有する合成樹脂により構成された糊層とを含む。実施形態1では、保護部材として保護テープ10を用いるが、本発明では、保護部材は、保護テープ10に限定されない。
【0021】
(亀裂形成ステップ)
図5は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の亀裂形成ステップを一部断面で示す側面図である。
図6は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の亀裂形成ステップ後のウェーハの要部の断面図である。亀裂形成ステップ102は、保護テープ10が貼着されたウェーハ1に、基板2に対して透過性を有する波長のレーザー光線24(
図5に示す)をウェーハ1の裏面8側から照射し、基板2の内部にストリート3に沿った改質層11を形成するとともに、改質層11から伸展してウェーハ1の表面4側に至るストリート3に沿った亀裂12を形成するステップである。
【0022】
なお、改質層11とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。また、改質層11は、ウェーハ1の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0023】
実施形態1において、亀裂形成ステップ102では、レーザー加工装置20が保護テープ10を介してウェーハ1の表面4側をチャックテーブル21の保持面22に吸引保持する。亀裂形成ステップ102では、レーザー光線照射ユニット23が照射する基板2に対して透過性を有する波長のレーザー光線24の集光点を基板2の内部の表面4側の表層に設定して、レーザー加工装置20が、チャックテーブル21とレーザー光線照射ユニット23とをストリート3に沿って相対的に移動させながらパルス状のレーザー光線24をストリート3に沿って照射する。
【0024】
実施形態1において、亀裂形成ステップ102では、レーザー加工装置20が、レーザー光線照射ユニット23をチャックテーブル21に吸引保持されたウェーハ1に対して相対的に
図5中に点線で示す位置から
図5中に実線で示す位置に向かうように、チャックテーブル21を移動させながらレーザー光線24を照射する。亀裂形成ステップ102では、レーザー加工装置20が、ウェーハ1の基板2に対して透過性を有する波長を有するレーザー光線24を照射するために、
図6に示すように、基板2の内部の表層にストリート3に沿って改質層11を形成する。
【0025】
また、亀裂形成ステップ102では、レーザー加工装置20が、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が30μm以上でかつ150μm以下となる位置に設定して、レーザー光線24を裏面8側からウェーハ1に照射する。即ち、本発明でいうウェーハ1の表層とは、ウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が30μm以上でかつ150μm以下となる位置をいう。
【0026】
このために、改質層11が形成された部分は改質層11の形成前より膨張するため、
図6に示すように、改質層11から亀裂12が厚さ方向に伸展し、ウェーハ1表面4に近い位置に形成された改質層11からの亀裂12がウェーハ1の表面4に到達する。こうして、亀裂形成ステップ102では、レーザー加工装置20が、ウェーハ1の基板2の内部に改質層11を形成し、改質層11から伸展して表面4側まで至る亀裂12を形成する。
【0027】
なお、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が30μm以上とするのは、30μm未満となる位置に集光点を設定することが困難であるからである。また、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が150μm以下とするのは、150μmを超える位置に集光点を設定すると、亀裂12が表面4まで到達しないからである。また、本発明は、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の基板2の内部に設定できかつ改質層11から伸展した亀裂12を表面4に至らせることができるために、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が50μm以上でかつ100μm以下となる位置に設定するのが望ましく、レーザー光線24の集光点をウェーハ1の表面4からの厚さ方向の距離が70μmとなる位置に設定するのが更に望ましい。
【0028】
なお、本発明において、亀裂形成ステップ102では、ストリート3の表面4に亀裂12を到達させた後、集光点の位置を基板2の裏面8寄りの位置に設定して、再度、レーザー光線24をストリート3に沿って照射して、各ストリート3に沿って基板2の内部に改質層11を厚さ方向に複数形成しても良い。実施形態において、亀裂形成ステップ102では、各ストリート3に沿って基板2の内部に改質層11を厚さ方向に2つ形成する。
【0029】
(貼り替えステップ)
図7は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の貼り替えステップ後のウェーハの斜視図である。貼り替えステップ103は、亀裂形成ステップ102実施後、環状フレーム13の内側の開口14を塞ぐテープ15にウェーハ1の裏面8側を固定し、ウェーハ1の表面4側から保護テープ10が剥離するステップである。なお、テープ15は、保護テープ10と同様に、可撓性と非粘着性を有する合成樹脂により構成された基材層と、基材層に積層された可撓性と粘着性とを有する合成樹脂により構成された糊層とを含む。
【0030】
貼り替えステップ103では、周知のマウンタが、保護テープ10を介してウェーハ1の表面4側と、内径がウェーハ1の外径よりも大径なリング状の環状フレーム13とを保持テーブル上に互いに同軸となる位置に保持し、円板状のテープ15を環状フレーム13及びウェーハ1の裏面8側に送り出して、テープ15の糊層の外縁部を環状フレーム13に貼着し、テープ15の糊層の中央部をウェーハ1の裏面8に貼着する。貼り替えステップ103では、マウンタが、テープ15を環状フレーム13及びウェーハ1の裏面8側に貼着した後、
図7に示すように、保護テープ10をウェーハ1の表面4側から剥がす。
【0031】
(保護膜被覆ステップ)
図8は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜被覆ステップを一部断面で示す側面図である。
図9は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜被覆ステップ後のウェーハの要部の断面図である。保護膜被覆ステップ104は、環状フレーム13に固定されたウェーハ1の表面4に液状の保護膜16を被覆するステップである。なお、
図8は、改質層11及び亀裂12を省略している。
【0032】
保護膜被覆ステップ104では、保護膜形成装置30が、テープ15を介してウェーハ1の裏面8側をスピンナーテーブル31の保持面32に吸引保持し、環状フレーム13をクランプ部33でクランプする。保護膜被覆ステップ104では、保護膜形成装置30は、スピンナーテーブル31を軸心回りに回転させた状態で、水溶性樹脂供給ノズル34から水溶性の液状の樹脂35をウェーハ1の表面4に滴下するとともに、水溶性樹脂供給ノズル34をウェーハ1の表面4に沿って移動する。滴下された水溶性の液状の樹脂35は、スピンナーテーブル31の回転により発生する遠心力によって、ウェーハ1の表面4上を中心側から外周側に向けて流れていき、ウェーハ1の表面4の全面に塗布される。
【0033】
水溶性の液状の樹脂35は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)またはポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂である。なお、本発明では、樹脂35として、例えば、株式会社ディスコ社製のHogomax(登録商標)を用いることができる。保護膜被覆ステップ104では、ウェーハ1の表面4の全面に塗布された樹脂35を乾燥させて、ウェーハ1の表面4に水溶性の樹脂35で構成される保護膜16をウェーハ1の表面4上に形成する。
【0034】
実施形態1では、保護膜被覆ステップ104前の亀裂形成ステップ102において、ウェーハ1の表面4にストリート3に沿って亀裂12が形成されている。このために、表面張力等によって、ウェーハ1の表面4に塗布された液状の樹脂35は、亀裂12上の厚さが亀裂12から離れた位置に厚さよりも薄く(実施形態1では、亀裂12上では、樹脂35が塗布されていない又は厚さが非常に薄く)なっている。また、ウェーハ1の表面4に塗布された液状の樹脂35の亀裂12から離れた位置の厚さは、従来から用いられてきた保護膜と同等の所定の厚さとなっている。このために、保護膜被覆ステップ104において、ウェーハ1の表面4に形成された保護膜16は、
図9に示すように、亀裂12上の厚さが亀裂12から離れた位置に厚さよりも薄く(実施形態1では、亀裂12上では、保護膜16が形成されていない又は厚さが非常に薄く)なっている。こうして、保護膜被覆ステップ104では、ウェーハ1の表面4側に露出した亀裂12の周辺は、保護膜16の厚さが亀裂12の周辺よりも亀裂12から離れた位置よりも薄くなっている。
【0035】
(機能層分割ステップ)
図10は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の機能層分割ステップを一部断面で示す側面図である。
図11は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の機能層分割ステップ後のウェーハの要部の断面図である。機能層分割ステップ105は、保護膜16が被覆されたウェーハ1の表面4側に、基板2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線44(
図10に示す)を亀裂12に沿って照射し、ストリート3に沿ったレーザー加工溝17(
図11に示す)を形成して機能層6を分割するステップである。
【0036】
実施形態1において、機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40がテープ15を介してウェーハ1の表面4側をチャックテーブル41の保持面42に吸引保持し、環状フレーム13をクランプ部45でクランプする。機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が、チャックテーブル41とレーザー光線照射ユニット43とを亀裂12に沿って相対的に移動させながらパルス状の基板2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線44をレーザー光線照射ユニット43からストリート3に沿って照射する。
【0037】
実施形態1において、機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が、レーザー光線照射ユニット43をチャックテーブル41に吸引保持されたウェーハ1に対して相対的に
図10中に点線で示す位置から
図10中に実線で示す位置に向かうように、チャックテーブル41を移動させながらレーザー光線44を照射する。機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が、ウェーハ1の基板2に対して吸収性を有する波長を有するレーザー光線44を亀裂12に沿って照射するために、
図11に示すように、亀裂12に沿ってウェーハ1にアブレーション加工を施して水溶性の保護膜16及び機能層6を除去する。
【0038】
機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が、
図11に示すように、溝底に基板2及び亀裂12を露出させて機能層6をストリート3に沿って分割するレーザー加工溝17を形成する。また、機能層分割ステップ105では、アブレーション加工により生じたデブリ18が、保護膜16に付着する。
【0039】
また、機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が照射するレーザー光線44の出力は、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法のレーザー光線の出力の20%以上でかつ80%以下である。このために、機能層分割ステップ105においてウェーハ1の基板2のレーザー光線44の熱等の影響を受ける領域は、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法においてウェーハ1の基板2のレーザー光線44の熱等の影響を受ける領域よりも狭くなる。
【0040】
なお、機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が照射するレーザー光線44の出力を、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法のレーザー光線の出力の20%以上とするのは、20%未満であると機能層6を分割することが困難であるからである。また、機能層分割ステップ105では、レーザー加工装置40が照射するレーザー光線44の出力を、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法のレーザー光線の出力の80%以下とするのは、80%を超えると基板2のレーザー光線44の熱等の影響を受ける領域が従来の製造方法と同等の大きさになるからである。また、本発明は、機能層6を分割できかつ基板2のレーザー光線44の熱等の影響を受ける領域を抑制するために、レーザー加工装置40が照射するレーザー光線44の出力を、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法のレーザー光線の出力の40%以上でかつ60%以下とするのが望ましい。
【0041】
(保護膜除去ステップ)
図12は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の保護膜除去ステップ後のウェーハの要部の断面図である。保護膜除去ステップ106は、レーザー加工溝17が形成されたウェーハ1から保護膜16を洗浄して除去するステップである。
【0042】
保護膜除去ステップ106では、洗浄装置が、テープ15を介してウェーハ1の裏面8側をスピンナーテーブルの保持面に吸引保持し、環状フレーム13をクランプ部でクランプする。保護膜除去ステップ106では、洗浄装置は、スピンナーテーブルを軸心回りに回転させた状態で、洗浄液供給ノズルから純水からなる洗浄液をウェーハ1の表面4に供給するとともに、洗浄液供給ノズルをウェーハ1の表面4に沿って移動する。ウェーハ1の表面4に供給された洗浄液は、スピンナーテーブルの回転により発生する遠心力によって、ウェーハ1の表面4上を中心側から外周側に向けて流れてウェーハ1の表面4を洗浄して、デブリ18とともに保護膜16をウェーハ1の表面4上から除去する。
【0043】
(第2貼り替えステップ)
図13は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の第2貼り替えステップ後のウェーハの要部の断面図である。第2貼り替えステップ107は、ウェーハ1の表面4に保護部材である保護テープ10を貼着するとともに、ウェーハ1の裏面8からテープ15が剥離するステップである。
【0044】
第2貼り替えステップ107では、
図13に示すように、ウェーハ1と同径の円板状の保護テープ10の糊層をウェーハ1の表面4側に貼着して、ウェーハ1の裏面8からテープ15が剥離する。
【0045】
(分割ステップ)
図14は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の分割ステップの要部を示す断面図である。
図15は、
図2に示されたデバイスチップの製造方法の分割ステップ後のウェーハの要部の断面図である。分割ステップ108は、ウェーハ1に対して外力を付与し、改質層11を破断起点にしてウェーハ1をストリート3に沿って分割し、複数のデバイスチップ7を形成するステップである。
【0046】
分割ステップ108では、研削装置50は、保護テープ10を介してチャックテーブル51の保持面52にウェーハ1を吸引保持し、
図14に示すように、研削水供給ノズルから研削液を供給しつつ軸心回りに回転する研削ホイールの研削砥石53をウェーハ1の裏面8側に鉛直方向に沿って押圧して、ウェーハ1を裏面8側から研削する。分割ステップ108では、ウェーハ1は、研削砥石53により薄化させて
図15に示す所定の仕上げ厚さ19まで薄化されるとともに、研削砥石53から外力である押圧力が作用する。すると、ウェーハ1は、基板2の内部に改質層11が形成されているので、改質層11を破断起点にして破断して、
図15に示すように、ストリート3に沿って個々のデバイスチップ7に分割される。こうして、実施形態1において、分割ステップ108は、ウェーハ1を裏面8側から研削砥石53で研削して、ウェーハ1をデバイスチップ7に分割する。
【0047】
以上説明した実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、レーザー加工溝17を形成する機能層分割ステップ105の前に予めウェーハ1の内部に改質層11を形成してウェーハ1の表面4側まで伸展する亀裂12を形成しておくことで、保護膜被覆ステップ104においてウェーハ1の表面4に被覆した保護膜16を亀裂12の周辺部分のみ薄くする。これにより、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、機能層分割ステップ105においてアブレーション加工で照射するレーザー光線44の出力を亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法のレーザー光線44の出力よりも小さくしても溝底に基板2を露出させる所望の深さのレーザー加工溝17が形成できる。
【0048】
実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、レーザー加工溝17を形成する前に保護膜16を形成するので、機能層6が剥離することを抑制できる。また、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、レーザー加工溝17を形成するためのレーザー光線44の出力よりも小さくするので、ウェーハ1の基板2のレーザー光線44の熱等の影響を受ける領域を抑制することができる。その結果、デバイスチップの製造方法は、機能層6が剥離することを抑制しながらもウェーハ1を個々のデバイスチップ7に分割でき、デバイスチップ7の抗折強度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0049】
また、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法は、デバイス5に被覆された保護膜16の厚さは所定の厚さであるため、デバイス5へのデブリ18の付着も抑えられる。
【0050】
次に、本発明の発明者らは前述した実施形態1に係るデバイスチップの製造方法の効果を製造したデバイスチップ7の抗折強度を測定することで確認した。結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1の本発明品1と比較例1とは同じ加工対象のウェーハ1から分割したデバイスチップ7の抗折強度を測定した。表1の本発明品1は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法でデバイスチップ7を製造し、比較例1は、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法でデバイスチップ7を製造した。表1の本発明品1と比較例1とは、亀裂形成ステップ102の有無、機能層分割ステップ105のレーザー光線44の出力を除いて加工条件を同じにした。
【0053】
表1の本発明品2と比較例2とは同じ加工対象のウェーハ1から分割したデバイスチップ7の抗折強度を測定した。表1の本発明品2は、実施形態1に係るデバイスチップの製造方法でデバイスチップ7を製造し、比較例2は、亀裂12を形成することなく保護膜16を形成したウェーハ1にレーザー加工溝17を形成する従来の製造方法でデバイスチップ7を製造した。表1の本発明品2と比較例2とは、亀裂形成ステップ102の有無、機能層分割ステップ105のレーザー光線44の出力を除いて加工条件を同じにした。
【0054】
本発明品1、本発明品2、比較例1及び比較例2それぞれにおいて、複数のデバイスチップ7の抗折強度を測定し、表1は、本発明品1、本発明品2、比較例1及び比較例2は、それぞれ、複数のデバイスチップ7の抗折強度の平均値を示している。
【0055】
表1によれは、比較例1の抗折強度が236.23Mpaであるのに対し、本発明品1の抗折強度が251.22Mpaであった。
【0056】
また、表1によれは、比較例2の抗折強度が255.51Mpaであるのに対し、本発明品2の抗折強度が260.12Mpaであった。
【0057】
よって、表1によれは、レーザー加工溝17を形成する機能層分割ステップ105の前に予めウェーハ1の内部に改質層11を形成してウェーハ1の表面4側まで伸展する亀裂12を形成しておくことで、機能層6が剥離することを抑制しながらもウェーハ1を個々のデバイスチップ7に分割でき、デバイスチップ7の抗折強度の低下を抑制することができることが明らかとなった。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明は、第2貼り替えステップ107を実施することなく、分割ステップ108において、テープ15を拡張して、ウェーハ1を改質層11を破断起点に破断して、個々のデバイスチップ7に分割しても良い。この場合、本発明は、レーザー加工溝17を形成する機能層分割ステップ105の実施前に、研削装置50を用いてウェーハ1を仕上げ厚さ19まで薄化するのが望ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 ウェーハ
2 基板
3 ストリート
4 表面
5 デバイス
6 機能層
7 デバイスチップ
8 裏面
10 保護テープ(保護部材)
11 改質層
12 亀裂
13 環状フレーム
14 開口
15 テープ
16 保護膜
17 レーザー加工溝
24 レーザー光線
35 液状の樹脂
44 レーザー光線
53 研削砥石
101 保護部材貼着ステップ
102 亀裂形成ステップ
103 貼り替えステップ
104 保護膜被覆ステップ
105 機能層分割ステップ
106 保護膜除去ステップ
108 分割ステップ